特許第5886021号(P5886021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886021
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20160303BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B60H1/34 611A
   F24F13/15 B
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-273711(P2011-273711)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-123996(P2013-123996A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595115581
【氏名又は名称】株式会社浜名プラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】長坂 春樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 廣人
(72)【発明者】
【氏名】菅 幹善
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−285640(JP,A)
【文献】 特開平08−136041(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3153445(JP,U)
【文献】 実開平07−028710(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間が空調用空気の通風路とされ、前記通風路を取り囲む壁部の一部が、互いに対向する一対の対向壁部により構成され、さらに、前記両対向壁部の相対向する箇所に円筒状の軸孔が設けられた筒状のケースと、
前記ケース内に配置された板状のフィン部、及び前記フィン部から互いに反対方向へ延びて前記対向壁部毎の前記軸孔に挿通される一対の軸部が設けられ、前記軸部において前記対向壁部に傾動可能に支持されたフィンと
を備え、前記傾動により前記フィンの傾きが変えられることで、前記ケースからの前記空調用空気の吹出し方向が変更される空調用レジスタであって、
前記一対の前記軸部の少なくとも一方は、前記軸孔よりも細く形成された柱状の軸本体と、前記軸本体のうち前記軸孔内に位置する外周面の一部から径方向外方へ膨出して、前記軸孔の内壁面に接触する膨出部とを備える特定軸部により構成されており、
前記対向壁部において前記特定軸部の挿通された前記軸孔の少なくとも周辺部分、及び前記特定軸部は硬質の樹脂材料により形成されており、
前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記膨出部に隣接する箇所には、前記フィンの傾動により生じた削りカスの通過を許容する又は同削りカスを収容する削りカス処理部が設けられており、
前記膨出部は、前記軸本体の外周面の全周にわたって円環状に設けられた環状突部により構成されており、前記軸本体の前記外周面から最も多く膨出した箇所において前記軸孔の前記内壁面の全周にわたって線接触するものであることを特徴とする空調用レジスタ。
【請求項2】
前記一対の前記軸部の一方は前記特定軸部により構成され、他方は前記膨出部を有しない通常軸部により構成されており、
前記対向壁部において、前記通常軸部の挿通された前記軸孔の少なくとも周辺部分は、前記通常軸部よりも軟質の樹脂材料により形成されている請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記環状突部の外周面は、前記特定軸部の軸線を中心とする球面の一部により構成されている請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
前記一対の対向壁部は、上下方向に対向した状態で配置され、
前記軸孔は、前記各対向壁部において上下方向に延びており、
前記特定軸部は、上下方向へ延びて前記軸孔に挿通されており、
前記削りカス処理部は、前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記環状突部よりも下側の空間により構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
内部空間が空調用空気の通風路とされ、前記通風路を取り囲む壁部の一部が、互いに対向する一対の対向壁部により構成され、さらに、前記両対向壁部の相対向する箇所に円筒状の軸孔が設けられた筒状のケースと、
前記ケース内に配置された板状のフィン部、及び前記フィン部から互いに反対方向へ延びて前記対向壁部毎の前記軸孔に挿通される一対の軸部が設けられ、前記軸部において前記対向壁部に傾動可能に支持されたフィンと
を備え、前記傾動により前記フィンの傾きが変えられることで、前記ケースからの前記空調用空気の吹出し方向が変更される空調用レジスタであって、
前記一対の前記軸部の少なくとも一方は、前記軸孔よりも細く形成された柱状の軸本体と、前記軸本体のうち前記軸孔内に位置する外周面の一部から径方向外方へ膨出して、前記軸孔の内壁面に接触する膨出部とを備える特定軸部により構成されており、
前記対向壁部において前記特定軸部の挿通された前記軸孔の少なくとも周辺部分、及び前記特定軸部は硬質の樹脂材料により形成されており、
前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記膨出部に隣接する箇所には、前記フィンの傾動により生じた削りカスの通過を許容する又は同削りカスを収容する削りカス処理部が設けられており、
前記軸本体は円柱状をなし、
前記膨出部は、前記軸本体の外周面上であって、周方向に互いに離間した箇所に設けられた一対の突条により構成されており、
前記削りカス処理部は、前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記軸本体の周方向に隣り合う突条間の空間により構成されており、
前記両突条は、前記軸本体の前記外周面上において、周方向に等角度毎に設けられているとともに、前記特定軸部の軸線を挟んで相対向した状態で螺旋状に形成されていることを特徴とする空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて室内に吹出される空調用空気の向きを変更等する空調用レジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてきて車室内に吹出される空調用空気の向きを変更等するための空調用レジスタが組込まれている(例えば、特許文献1参照)。この空調用レジスタは、ケース及びフィンを基本的な構成要素として備えている。ケースは、筒状をなし、その内部空間を空調用空気の通風路としている。このケースでは、上記通風路を取り囲む壁部の一部が、互いに対向する一対の対向壁部によって構成されている。両対向壁部の相対向する箇所には、円筒状の軸孔が設けられている。
【0003】
フィンは、フィン部及び一対の軸部を備えている。フィン部は板状をなし、上記ケース内に配置されている。両軸部は、フィン部から互いに反対方向へ延びて上記対向壁部毎の軸孔に挿通されている。フィンは、上記両軸部において上記両対向壁部に傾動可能に支持されている。そして、上記傾動によりフィンの傾きが変えられることで、空調用空気のケースからの吹出し方向が変更される。
【0004】
この空調用レジスタでは、軸部と軸孔の内壁面との隙間の管理が重要であり、通常は、軸孔内でフィンの軸部ががたつくのを抑制するために、上記隙間が小さく設定されている。
【0005】
なお、特許文献2には、軸部及び軸孔について、関連する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−99527号公報
【特許文献2】特開2002−139019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記ケースにおいて軸部の挿通された軸孔の少なくとも周辺部分、及び軸部は硬質の樹脂材料によって形成されている。そのため、上記のような隙間の管理が行なわれると、がたつきを抑制できる反面、空調用レジスタの使用初期には、フィンを傾動させたときに軸部と軸孔の内壁面とが擦れあって異音を生ずる。この異音は、フィンの傾動が繰り返されることで次第に小さくなっていく。しかし、フィンの傾動により樹脂の削りカスが生じ、フィンの傾動に伴い削りカスが軸部と軸孔の内壁面との間に巻き込まれて、再び異音を生ずる。
【0008】
これの対策としては、軸部と軸孔の内壁面との間にグリースを介在させたり、ケースにおいて、軸孔の少なくとも周辺部分を、軸部よりも軟質の樹脂材料によって形成したりすることが行なわれる。
【0009】
ただし、こうした対策は空調用レジスタのコストアップを伴うため、多くの場合、一対の軸部の一方に対してのみ行なわれる。そのため、対策の講じられない側の軸部では依然として異音を生ずる。
【0010】
また、上記特許文献1では、軸部が先細となるようにテーパ状に形成されていて、軸部と軸孔の内壁面との接触面積が小さく、使用初期における異音発生の抑制効果を期待できるが、削りカスの巻き込みによる異音の発生は抑制困難である。
【0011】
なお、特許文献2には、軸孔に、軸部の中心方向に突出するリブを形成することが記載されているが、このリブは、操作力を低減するために設けられたものであり、軸部と軸孔の内壁面との僅かな隙間を高い精度で管理するものにおいて、異音の発生を抑制するために設けられたものではない。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、使用初期の異音の発生、及び削りカスの巻き込みに起因する異音の発生をともに抑制することのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内部空間が空調用空気の通風路とされ、前記通風路を取り囲む壁部の一部が、互いに対向する一対の対向壁部により構成され、さらに、前記両対向壁部の相対向する箇所に円筒状の軸孔が設けられた筒状のケースと、前記ケース内に配置された板状のフィン部、及び前記フィン部から互いに反対方向へ延びて前記対向壁部毎の前記軸孔に挿通される一対の軸部が設けられ、前記軸部において前記対向壁部に傾動可能に支持されたフィンとを備え、前記傾動により前記フィンの傾きが変えられることで、前記ケースからの前記空調用空気の吹出し方向が変更される空調用レジスタであって、前記一対の前記軸部の少なくとも一方は、前記軸孔よりも細く形成された柱状の軸本体と、前記軸本体のうち前記軸孔内に位置する外周面の一部から径方向外方へ膨出して、前記軸孔の内壁面に接触する膨出部とを備える特定軸部により構成されており、前記対向壁部において前記特定軸部の挿通された前記軸孔の少なくとも周辺部分、及び前記特定軸部は硬質の樹脂材料により形成されており、前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記膨出部に隣接する箇所には、前記フィンの傾動により生じた削りカスの通過を許容する又は同削りカスを収容する削りカス処理部が設けられており、前記膨出部は、前記軸本体の外周面の全周にわたって円環状に設けられた環状突部により構成されており、前記軸本体の前記外周面から最も多く膨出した箇所において前記軸孔の前記内壁面の全周にわたって線接触するものであることを要旨とする。
【0014】
上記の構成によれば、空調用レジスタでは、ケースの対向壁部における軸孔の内壁面と、フィンにおける特定軸部の膨出部との隙間が僅かとなっている。そのため、軸孔内での特定軸部の動きが内壁面によって規制される。この規制により、軸孔内での特定軸部のがたつきが抑制される。
【0015】
上記空調用レジスタでは、空調用空気はケース内の通風路を通過する際に、フィンに沿って流れた後、ケースの外部へ吹出される。一方、フィンは軸孔に挿通された軸部を支点として傾動されると、傾きを変える。この傾動の際、特定軸部では、膨出部が軸孔の内壁面を摺動する。膨出部は、軸本体のうち軸孔内に位置する外周面の一部から径方向外方へ膨出している。そのため、膨出部が設けられず、軸部のうち軸孔内に位置する外周面の全部が軸孔の内壁面に接触する場合に比べ、同内壁面に対する特定軸部の接触面積が小さい。
【0016】
そして、フィンが傾動されることで傾きを変えると、空調用空気はフィンの傾きに応じた方向へ流れて、ケースから吹出される。
ここで、対向壁部において特定軸部の挿通された軸孔の少なくとも周辺部分も特定軸部も硬質の樹脂材料によって形成されている。そのため、上記軸孔内での特定軸部の摺動に際しては、硬質の部材同士が擦れあって異音を生じやすい。
【0017】
しかし、請求項1に記載の発明では、上述したように、軸孔の内壁面に対する特定軸部の接触面積が小さい。そのため、フィンの傾動が、空調用レジスタの使用初期におけるものである場合には、硬質の部材同士が擦れあうにも拘らず、異音が発生しにくい。
【0018】
また、フィンの傾動が繰り返されることで樹脂の削りカスが生じた場合、その削りカスは、特定軸部と軸孔の内壁面との間であって、膨出部に隣接する箇所に設けられた削りカス処理部を通過する、又は削りカス処理部に収容される。そのため、削りカスが、フィンの傾動に伴い膨出部と軸孔の内壁面との間に巻き込まれにくく、巻き込みに起因する異音の発生が起こりにくい。
さらに、軸本体の外周面の全周にわたって円環状に設けられた環状突部(膨出部)は、軸本体の外周面から最も多く膨出した箇所において軸孔の内壁面の全周にわたって線接触することから、軸孔の内壁面に対する特定軸部の接触面積は非常に小さい。そのため、空調用レジスタの使用初期には、軸孔内での特定軸部の摺動に際し異音が発生しにくい。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記一対の前記軸部の一方は前記特定軸部により構成され、他方は前記膨出部を有しない通常軸部により構成されており、前記対向壁部において、前記通常軸部の挿通された前記軸孔の少なくとも周辺部分は、前記通常軸部よりも軟質の樹脂材料により形成されていることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、フィンの傾動の際、通常軸部では、軸孔内に位置する外周面の全部が同軸孔の内壁面を摺動する。このとき、通常軸部の内壁面との接触面積は、上記特定軸部の内壁面との接触面積よりも大きい。しかし、軸孔の少なくとも周辺部分は、通常軸部よりも軟質の樹脂材料により形成されている。そのため、軸孔内での通常軸部の摺動に際しては、通常軸部と、同通常軸部よりも軟質の軸孔の内壁面とが擦れ合うこととなり、異音を発生しにくい。
【0021】
また、上記フィンの傾動時には、通常軸部と軸孔の内壁面との間に摺動抵抗が生ずる。このため、フィンを傾動させるための操作が行なわれる際には、上記摺動抵抗による操作荷重が付与され、操作フィーリングが向上する。
【0024】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記環状突部の外周面は、前記特定軸部の軸線を中心とする球面の一部により構成されていることを要旨とする。
環状突部の外周面が請求項に記載の発明によるように、特定軸部の軸線を中心とする球面の一部により構成されれば、環状突部は、その外周面のうち、軸本体の外周面から最も多く膨出した箇所において軸孔の内壁面の全周にわたって線接触する。
【0025】
請求項に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記一対の対向壁部は、上下方向に対向した状態で配置され、前記軸孔は、前記各対向壁部において上下方向に延びており、前記特定軸部は、上下方向へ延びて前記軸孔に挿通されており、前記削りカス処理部は、前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記環状突部よりも下側の空間により構成されていることを要旨とする。
【0026】
上記の構成によれば、フィンの傾動が繰り返されることで削りカスが生じた場合、その削りカスは、自重により、特定軸部と軸孔の内壁面との間であって、環状突部よりも下側の削りカス処理部を通り、軸孔の外部へ排出される。そのため、削りカスが、フィンの傾動に伴い環状突部(膨出部)と軸孔の内壁面との間に巻き込まれにくい。
【0027】
請求項に記載の発明は、内部空間が空調用空気の通風路とされ、前記通風路を取り囲む壁部の一部が、互いに対向する一対の対向壁部により構成され、さらに、前記両対向壁部の相対向する箇所に円筒状の軸孔が設けられた筒状のケースと、前記ケース内に配置された板状のフィン部、及び前記フィン部から互いに反対方向へ延びて前記対向壁部毎の前記軸孔に挿通される一対の軸部が設けられ、前記軸部において前記対向壁部に傾動可能に支持されたフィンとを備え、前記傾動により前記フィンの傾きが変えられることで、前記ケースからの前記空調用空気の吹出し方向が変更される空調用レジスタであって、前記一対の前記軸部の少なくとも一方は、前記軸孔よりも細く形成された柱状の軸本体と、前記軸本体のうち前記軸孔内に位置する外周面の一部から径方向外方へ膨出して、前記軸孔の内壁面に接触する膨出部とを備える特定軸部により構成されており、前記対向壁部において前記特定軸部の挿通された前記軸孔の少なくとも周辺部分、及び前記特定軸部は硬質の樹脂材料により形成されており、前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記膨出部に隣接する箇所には、前記フィンの傾動により生じた削りカスの通過を許容する又は同削りカスを収容する削りカス処理部が設けられており、前記軸本体は円柱状をなし、前記膨出部は、前記軸本体の外周面上であって、周方向に互いに離間した箇所に設けられた一対の突条により構成されており、前記削りカス処理部は、前記特定軸部と前記軸孔の前記内壁面との間であって、前記軸本体の周方向に隣り合う突条間の空間により構成されており、前記両突条は、前記軸本体の前記外周面上において、周方向に等角度毎に設けられているとともに、前記特定軸部の軸線を挟んで相対向した状態で螺旋状に形成されていることを要旨とする。
【0028】
上記の構成によれば、軸孔に挿通された特定軸部は、軸本体の外周面上であって、周方向に互いに離間した箇所に設けられた複数の突条(膨出部)において軸孔の内壁面に接触する。これらの接触により、特定軸部を軸孔の中心部に位置決めしやすくなり、特定軸部と軸孔の内壁面との僅かな隙間を高い精度で管理することが可能である。
【0029】
また、フィンの傾動が繰り返されることで削りカスが生じた場合、その削りカスは、特定軸部と軸孔の内壁面との間であって、軸本体の周方向に隣り合う突条間の削りカス処理部に収容される。そのため、削りカスは、フィンの傾動に伴い突条(膨出部)と軸孔の内壁面との間に巻き込まれにくい。
【0030】
さらに、軸孔に挿通された特定軸部は、軸本体の外周面上であって、周方向に等角度毎に設けられた複数の突条において軸孔の内壁面に接触する。これらの接触により、突条が等角度毎に設けられていない場合に比べ、特定軸部をより軸孔の中心部に位置決めしやすくなり、特定軸部と軸孔の内壁面との僅かな隙間をより高い精度で管理することが可能である。
【0032】
また、膨出部は、軸本体の外周面上において特定軸部の軸線を挟んで相対向する、一対という少ない突条によって構成される。しかし、螺旋状に形成された一対の突条は、特定軸部の軸線に平行である場合に比べ、周方向について多くの箇所で軸孔の内壁面に接触する。そのため、膨出部が最小数の突条によって構成されるものの、特定軸部をより軸孔の中心部に位置決めしやすくなり、特定軸部と軸孔の内壁面との僅かな隙間を高い精度で管理することが可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の空調用レジスタによれば、フィン毎の一対の軸部の少なくとも一方を、軸本体及び膨出部を備える特定軸部により構成するとともに、特定軸部と軸孔の内壁面との間であって膨出部に隣接する箇所に削りカス処理部を設けたため、使用初期の異音の発生、及び削りカスの巻き込みに起因する異音の発生をともに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明を具体化した一実施形態を示す図であり、(A)は空調用レジスタの概略構成を示す部分側断面図、(B)は(A)における要部を拡大して示す部分拡大側断面図。
図2】特定軸部の変更例を示す図であり、(A)は特定軸部の部分斜視図、(B)は特定軸部及び軸孔の周辺部分を示す部分平面図。
図3】特定軸部の変更例を示す図であり、(A)は特定軸部の部分斜視図、(B)は特定軸部及び軸孔の周辺部分を示す部分平面図。
図4】特定軸部の変更例を示す図であり、(A)は特定軸部の部分斜視図、(B)は特定軸部及び軸孔の周辺部分を示す部分平断面図。
図5】特定軸部の変更例を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態について、図1(A),(B)を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として左右方向を規定する。
【0036】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その車幅方向についての中央部、両側部等には本実施形態の空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタの主たる機能の1つに、空調装置から送られてきて車室内に吹出される空調用空気の向きを調整することがある。
【0037】
空調用レジスタは、図1(A)に示すように、ケース10及びフィンを基本的な構成要素として備えるほか、操作ノブ、伝達機構等を備えている。次に、これら各部の基本的な構成について説明する。
【0038】
<ケース10>
ケース10は、空調装置の通風ダクト(図示略)と、インストルメントパネル(図示略)に設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものであり、複数の部材によって、両端が開放された筒状に形成されている。ケース10の大部分は、硬質の樹脂材料によって形成されている。ケース10の内部空間は、空調装置から通風ダクトを通じて図1(A)中左側から送られてくる空調用空気Aの流路(以下「通風路11」という)とされている。ケース10は、自身の下流端(図1(A)の右端)に空調用空気Aの吹出口12を有している。
【0039】
通風路11は、ケース10の2組の対向壁部によって取り囲まれている。一方の組の対向壁部は、上下方向に相対向する一対の横壁部13,14によって構成されている。他方の組の対向壁部は、車幅方向に相対向する一対の縦壁部15によって構成されている。
【0040】
各横壁部13,14において、車幅方向へ互いに離間した複数箇所には、それぞれ円筒状をなす軸孔16,17が貫通した状態で設けられている。
上側の横壁部13における軸孔16と、下側の横壁部14における軸孔17とは、下側ほど下流側に位置するように傾斜する直線L1に沿って延びていて、傾斜した状態で相対向している。これらの軸孔16,17は、後述する上流側フィン20を傾動可能に支持するためのものである。
【0041】
ここで、本実施形態では、空調用レジスタ及びその構成部材について「上下方向」というときは、上記直線L1を基準としている。この直線L1が上述したように傾斜していることから、「上下方向」は、厳密には車両の上下方向に合致しておらず(鉛直方向ではなく)、多少傾斜している。
【0042】
上側の横壁部13において、軸孔16の少なくも周辺部分(本実施形態では横壁部13の全体)は硬質の樹脂材料によって形成されている。これに対し、下側の横壁部14であって、軸孔17の少なくとも周辺部分は、後述する通常軸部22よりも軟質の樹脂材料によって形成された軸受部材18によって構成されている。
【0043】
両縦壁部15において、吹出口12と上記軸孔16,17との間にも、後述する下流側フィン30を傾動可能に支持するための軸孔が設けられているが、これの図示及び説明については割愛する。
【0044】
<フィン>
フィンは、複数の上流側フィン20及び複数の下流側フィン30からなる。各上流側フィン20は、特許請求の範囲におけるフィンに該当するものであり、互いに同様の構成を有している。また、各下流側フィン30は互いに同様の構成を有している。これらの上流側フィン20及び下流側フィン30は、いずれも上記ケース10において軸受部材18を除く部分と同一又は同程度の硬度を有する硬質の樹脂材料によって形成されている。
【0045】
各上流側フィン20は、フィン部21と、フィン部21から互いに反対方向へ延びる一対の軸部とを備えている。複数の上流側フィン20は、互いに車幅方向へ平行に離間した状態で配設されている。上流側フィン20毎のフィン部21は、上記直線L1に沿って空調用レジスタの上下方向に延びる板状体からなる。
【0046】
一方(下方)の軸部は、フィン部21の下端面から直線L1に沿って空調用レジスタの下方へ延びる通常軸部22によって構成されている。通常軸部22は、上記軸孔17よりも若干小径の円柱状に形成されていて、同軸孔17内に摺動及び回動可能に挿通されている。通常軸部22は、後述する特定軸部23とは異なり環状突部25を有していない。
【0047】
他方(上方)の軸部は、図1(B)に示すように、フィン部21の上端面から直線L1に沿って空調用レジスタの上方へ延びる特定軸部23によって構成されている。特定軸部23は、軸本体24と、膨出部としての環状突部25とを備えている。軸本体24は、上記軸孔16よりも細い円柱状に形成されている。本実施形態では、軸本体24の半径R1は、軸孔16の半径R2よりも0.1mm程度小さくなるように設定されている。
【0048】
環状突部25は、軸本体24のうち軸孔16内に位置する外周面24Aの一部から径方向外方へ膨出している。環状突部25は、軸本体24の外周面24Aの全周にわたって円環状に設けられている。環状突部25の外周面25Aは、特定軸部23の軸線L2(上記直線L1と合致)を中心とする球面の一部により構成されている。
【0049】
そして、特定軸部23は、上側の軸孔16に摺動及び回動可能に挿通されている。このように特定軸部23が軸孔16に挿通された状態では、環状突部25と軸孔16の内壁面16Aとの隙間は、環状突部25が軸本体24の外周面24Aから最も多く膨出した箇所において最小(0.05mm程度)となっている。
【0050】
各上流側フィン20は、上記のように軸孔17に挿通された通常軸部22、及び軸孔16に挿通された特定軸部23を支点として車幅方向へ傾動可能である。
各特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、上記環状突部25に隣接する箇所には、上流側フィン20の傾動により生じた樹脂の削りカスの通過を許容する削りカス処理部26が設けられている。特定軸部23がフィン部21から空調用レジスタの上方へ延びる本実施形態では、環状突部25よりも下側の円環状の空間によって削りカス処理部26が構成されている。
【0051】
なお、図1(A)に示すように、上流側フィン20毎のフィン部21において、上記特定軸部23及び通常軸部22から上流側へ偏倚した箇所には連結軸27が設けられている。フィン部21毎の連結軸27は、車幅方向に延びる長尺状の連結ロッド28に連結されている。これらのフィン部21、軸部(通常軸部22、特定軸部23)、連結軸27、連結ロッド28等により、全ての上流側フィン20を同期した状態で傾動させる平行リンク機構29が構成されている。
【0052】
各下流側フィン30は、フィン部31と、同フィン部31から互いに反対の方向へ延びる一対の軸部(図示略)とを備えている。複数の下流側フィン30は、互いに空調用レジスタの上下方向へ平行に離間した状態で配設されている。下流側フィン30毎のフィン部31は、車幅方向に延びる板状体からなる。両軸部は、フィン部31の車幅方向についての両端面から同方向外方(フィン部31から遠ざかる方向)へ延びている。各軸部は、上記縦壁部15の軸孔に摺動及び回動可能に挿通されている。そのため、各下流側フィン30は、軸部を支点として空調用レジスタの上下方向へ傾動可能である。なお、特に図示はしないが、各下流側フィン30についても、上述した上流側フィン20と同様に、同期した状態で傾動させるための平行リンク機構が設けられている。
【0053】
<操作ノブ>
操作ノブは、空調用空気Aの吹出し方向を変える場合に車両の乗員によって操作される部材であり、図示はしないが、複数の下流側フィン30のうちの1つ、例えば、上下方向についての中央の下流側フィン30に対し、車幅方向へのスライド可能に設けられている。
【0054】
<伝達機構>
伝達機構は、上記操作ノブの車幅方向の動きを上流側フィン20に伝達して、同上流側フィン20を同方向へ傾動させるが、操作ノブの上下方向の動きを同上流側フィン20に伝達しないようにするための機構である。伝達機構は、例えば、操作ノブに設けられた駆動ギヤ(ラックギヤ)と、複数の上流側フィン20のうちの1つ、例えば、車幅方向についての中央の上流側フィン20に対し、上記駆動ギヤに噛み合わされた被動ギヤ(ピニオンギヤ)とによって構成される。
【0055】
次に、上記のように構成された本実施形態の空調用レジスタの作用について、上流側フィン20が傾動されるときの作用を中心に説明する。
空調用レジスタでは、ケース10の横壁部13における各軸孔16の内壁面16Aと、各上流側フィン20における各特定軸部23の環状突部25との隙間が僅か(0.05mm程度)となっている。そのため、各軸孔16内での特定軸部23の動きが内壁面16Aによって規制される。この規制により、各軸孔16内での特定軸部23のがたつきが抑制される。
【0056】
上記空調用レジスタでは、空調用空気Aは、ケース10内の通風路11を通過する際に、フィン(上流側フィン20及び下流側フィン30)に沿って流れた後、吹出口12からケース10の外部(下流側)へ吹出される。一方、上流側フィン20は、下流側フィン30上での操作ノブのスライド操作により、特定軸部23及び通常軸部22を支点として車幅方向へ傾動されると、同方向についての傾きを変える。下流側フィン30は、操作ノブの上下方向への操作により、軸部を支点として上下方向へ傾動されると、同方向についての傾きを変える。
【0057】
上流側フィン20の上記車幅方向への傾動の際、特定軸部23では、環状突部25が軸孔16の内壁面16Aを摺動する。環状突部25は、軸本体24のうち軸孔16内に位置する外周面24Aの一部から径方向外方へ膨出している。そのため、環状突部25(膨出部)が設けられず、軸部のうち軸孔16内に位置する外周面の全部が軸孔16の内壁面16Aに接触する場合に比べ、接触面積が小さい。
【0058】
特に、環状突部25が特定軸部23の軸線L2を中心とする球面の一部によって構成される本実施形態では、同環状突部25は、外周面25Aのうち、軸本体24の外周面24Aから最も多く膨出した箇所において軸孔16の内壁面16Aの全周にわたって線接触する。そのため、軸孔16の内壁面16Aに対する特定軸部23の接触面積は非常に小さい。
【0059】
そして、各フィン(上流側フィン20、下流側フィン30)が傾動されることで傾きを変えられると、空調用空気Aは各フィン(上流側フィン20、下流側フィン30)の傾きに応じた方向へ流れて、ケース10の吹出口12から吹出される。
【0060】
ここで、上側の横壁部13における各軸孔16の少なくとも周辺部分も特定軸部23も硬質の樹脂材料によって形成されている。そのため、上記軸孔16内での特定軸部23の摺動に際しては、硬質の部材同士が擦れあって異音を生じやすい。
【0061】
しかし、本実施形態では、上述したように、軸孔16の内壁面16Aに対する特定軸部23の接触面積が小さい。そのため、上記上流側フィン20の傾動が、空調用レジスタの使用初期におけるものである場合には、軸孔16内での特定軸部23の摺動に際し、硬質の部材同士が擦れあうにも拘らず、異音を発生しにくい。
【0062】
また、各上流側フィン20の傾動が繰り返されることで削りカスが生じた場合、その削りカスは、自重により、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、環状突部25に隣接する箇所、この場合、環状突部25よりも下側の削りカス処理部26を通り(落下し)、軸孔16の外部へ排出される。そのため、削りカスが、上流側フィン20の傾動に伴い環状突部25と軸孔16の内壁面16Aとの間に巻き込まれにくい。
【0063】
なお、上流側フィン20の上記傾動の際、通常軸部22では、軸孔17内に位置する外周面の全部が同軸孔17の内壁面を摺動する。このとき、軸孔17の内壁面に対する通常軸部22の接触面積は、軸孔16の内壁面16Aに対する特定軸部23の接触面積よりも大きい。しかし、軸孔17の少なくとも周辺部分を構成する軸受部材18は、通常軸部22よりも軟質の樹脂材料によって形成されている。そのため、軸孔17内での通常軸部22の摺動に際しては、通常軸部22と、同通常軸部22よりも軟質の軸孔17の内壁面とが擦れ合うこととなる。このときには、通常軸部22と上記軸孔17の内壁面との間に摺動抵抗が生ずる。この摺動抵抗は、操作ノブを通じて上流側フィン20を傾動させるためのスライド操作を行なう際の操作荷重となる。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)各上流側フィン20における上側の軸部を、軸孔16よりも細く形成された柱状の軸本体24と、軸本体24のうち軸孔16内に位置する外周面24Aの一部から径方向外方へ膨出して、軸孔16の内壁面16Aに接触する膨出部(環状突部25)とを備える特定軸部23によって構成する。横壁部13において特定軸部23の挿通された軸孔16の少なくとも周辺部分、及び特定軸部23を硬質の樹脂材料によって形成している。
【0065】
そのため、軸孔16の内壁面16Aに対する特定軸部23の接触面積を小さくし、空調用レジスタの使用初期には、上流側フィン20の傾動時に硬質の部材同士が擦れあうにも拘らず、異音が発生するのを抑制することができる。
【0066】
(2)ここで、上側の軸部と軸孔16の内壁面16Aとの間にグリースを介在させる方法でも、上側の横壁部13において、軸孔16の少なくとも周辺部分を、上側の軸部よりも軟質の樹脂材料によって形成する方法でも、上側の軸部及び軸孔16間での異音の発生を抑制することは可能である。しかし、前者の方法では、上流側フィン20(上側の軸部)毎にグリースを塗布する作業が必要となり、コストアップを伴う。また、後者の方法では、軟質の樹脂材料によって別部材(軸受部材18と同様のもの)を形成し、組付ける作業が必要となり、コストアップを伴う。
【0067】
これに対し、本実施形態では、特定軸部23は、上流側フィン20の樹脂成形時にフィン部21と一緒に形成される。そのため、特定軸部23の形成に伴うコストアップは、上述したグリースを塗布する方法や、軟質の別部材を用いる方法に比べ少なくてすむ。
【0068】
(3)特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、環状突部25に隣接する箇所に削りカス処理部26を設けている。
そのため、上流側フィン20の傾動が繰り返されることで生じた削りカスが、上流側フィン20の傾動に伴い環状突部25(膨出部)と軸孔16の内壁面16Aとの間に巻き込まれるのを抑制し、巻き込みに起因する異音の発生を抑制することができる。
【0069】
(4)上流側フィン20における下側の軸部を、環状突部を有しない通常軸部22によって構成する。また、下側の横壁部14において、軸孔17の少なくとも周辺部分を、通常軸部22よりも軟質の樹脂材料によって形成された軸受部材18によって構成している。
【0070】
そのため、軸孔17内での通常軸部22の摺動に際しては、硬質の通常軸部22と、同通常軸部22よりも軟質の軸孔17の内壁面とを擦れ合せることで、異音が発生するのを抑制することができる。 また、上記の構成を、上下一対の軸部のうち下側の軸部にのみ適用しているため、この構成を採用することによるコストアップを最小限にとどめることができる。
【0071】
さらに、上流側フィン20を傾動させるための操作を行なう際には、通常軸部22と軸孔17の内壁面との間に生ずる摺動抵抗によって操作荷重を作り出すことができ、操作フィーリングの向上を図ることができる。
【0072】
(5)膨出部を、軸本体24の外周面24Aの全周にわたって円環状に設けられた環状突部25によって構成する。この環状突部25を、軸本体24の外周面24Aから最も多く膨出した箇所において軸孔16の内壁面16Aの全周にわたって線接触させている。
【0073】
そのため、軸孔16の内壁面16Aに対する特定軸部23(環状突部25)の接触面積を非常に小さくすることができる。従って、空調用レジスタの使用初期には、軸孔16内での特定軸部23の摺動に際し異音が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0074】
(6)環状突部25の外周面25Aを、特定軸部23の軸線L2を中心とする球面の一部によって構成している。
そのため、環状突部25を、外周面25Aのうち、軸本体24の外周面24Aから最も多く膨出した箇所において軸孔16の内壁面16Aに線接触させることができ、上記(5)の効果を得ることができる。
【0075】
(7)車両の上下方向に対向する一対の横壁部13,14のそれぞれに対し、空調用レジスタの上下方向に延びる軸孔16,17を設ける。上流側フィン20のフィン部21から空調用レジスタの上方へ延びる特定軸部23を上記軸孔16に挿通する。特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、環状突部25(膨出部)よりも下側の空間によって削りカス処理部26を構成している。
【0076】
そのため、上流側フィン20の傾動が繰り返されることで削りカスが生じた場合、その削りカスを、自重により、環状突部25よりも下側の削りカス処理部26から軸孔16の外部へ排出させることができる。削りカスが、上流側フィン20の傾動に伴い環状突部25(膨出部)と軸孔16の内壁面16Aとの間に巻き込まれるのを抑制し、上記(3)の効果を得ることができる。
【0077】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<特定軸部23及び削りカス処理部26について>
・下記の事項(i)〜(iii )を満たすことを条件として、特定軸部23及び削りカス処理部26が下記のように変更されてもよい。
【0078】
(i)特定軸部23における軸本体24が円柱状をなしている。
(ii)膨出部が、軸本体24の外周面24A上であって、周方向に互いに離間した複数箇所に設けられた突条によって構成されている。
【0079】
(iii )削りカス処理部26が、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、軸本体24の周方向に隣り合う突条間の空間によって構成されている。
図2(A),(B)は、それぞれ特定軸部23の軸線L2に沿って延びる複数(4つ)の突条41が、円柱状の軸本体24の外周面24A上において、周方向に等角度(90度)毎に設けられた変更例を示している。各突条41の外周面41Aは、上記軸線L2を中心とする円筒面の一部によって構成されている。特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、軸本体24の周方向に隣り合う突条41間の空間によって複数(4つ)の削りカス処理部26が構成されている。
【0080】
こうした構成によれば、軸孔16に挿通された特定軸部23は、複数(4つ)の突条41の外周面41Aにおいて軸孔16の内壁面16Aに面接触する。これらの面接触により、軸孔16の内壁面16Aに対する特定軸部23の接触面積を小さくすることができ、異音の発生を抑制する上記(1)の効果を得ることができる。
【0081】
また、軸本体24の周りの複数の突条41と、軸孔16の内壁面16Aとの接触により、特定軸部23を軸孔16の中心部に位置決めしやすくなり、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの僅かな隙間を高い精度で管理することが可能となる。
【0082】
特に、複数(4つ)の突条41は等角度(90度)毎に設けられているため、等角度毎に設けられていない場合に比べ、特定軸部23を軸孔16の中心部に位置決めしやすい。従って、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの僅かな隙間をより高い精度で管理することが可能となる。
【0083】
また、上流側フィン20の傾動が繰り返されることで削りカスが生じた場合、その削りカスはいずれかの削りカス処理部26に収容される。そのため、削りカスが突条41(膨出部)と軸孔16の内壁面16Aとの間に巻き込まれるのを抑制し、上記(3)の効果を得ることができる。
【0084】
なお、上記図2(A),(B)において、複数であることを条件に突条41の数が、「4」とは異なる数に変更されてもよい。この数の最小値は2つである。このように数が変更された場合、複数の突条41は、周方向に等角度毎に設けられることが好ましいが、必ずしも等角度毎に設けられなくてもよい。
【0085】
図3(A),(B)は、一対の突条42が、軸本体24の外周面24A上において特定軸部23の軸線L2を挟んで相対向した状態で螺旋状に形成された変更例を示している。各突条42の外周面42Aは、上記軸線L2を中心とする円筒面の一部によって構成されている。特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、軸本体24の周方向に隣り合う突条42間の空間によって複数(一対)の削りカス処理部26が構成されている。
【0086】
こうした構成によれば、図2(A),(B)に記載した上記変更例と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
膨出部は、軸本体24の外周面24A上において特定軸部23の軸線L2を挟んで相対向する、一対という少ない突条42によって構成される。しかし、螺旋状に形成された一対の突条42は、特定軸部23の軸線L2に平行である場合に比べ、周方向について多くの箇所で軸孔16の内壁面16Aに面接触する。そのため、最小数の突条42であるものの、特定軸部23をより軸孔16の中心部に位置決めしやすくなり、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間の僅かな隙間を高い精度で管理することが可能である。
【0087】
図4(A),(B)は、円柱状の軸本体24の外周面24A上において、特定軸部23の軸線L2を中心とする同一円上に、複数の突条43が、周方向に互いに離間した状態で等角度毎に設けられた変更例を示している。各突条43の外周面43Aは、上記軸線L2を中心とする円筒面の一部によって構成されている。このように複数の突条43からなる膨出部は、同図4(A)に示すように、上記軸線L2に沿う方向の複数箇所(図4(A)では2箇所)に設けられてもよい。
【0088】
そして、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、軸本体24の周方向に隣り合う突条43間の空間によって複数の削りカス処理部26が構成されている。
従って、この場合には、上述した突条41,42とは突条43の形態が異なるものの、同様の効果が得られる。
【0089】
図5は、円柱状の軸本体24の外周面24A上に設けられた複数の突条44,45が、同外周面24Aの母線に対し、2種類の角度で斜めに交差するように設けられた変更例を示している。各突条44,45の外周面44A,45Aは、上記軸線L2を中心とする円筒面の一部によって構成されている。軸孔16及びその周辺部分の図示については割愛するが、特定軸部23と軸孔16の内壁面16Aとの間であって、隣り合う突条44,45によって囲まれた空間によって複数の削りカス処理部26が構成されている。
【0090】
従って、この場合には、上述した突条41〜43とは突条44,45の形態が異なるものの、同様の効果が得られる。
<特定軸部23の対象となる軸部について>
・上流側フィン20において、上記実施形態とは逆に、上側の軸部が通常軸部によって構成され、下側の軸部が特定軸部によって構成されてもよい。
【0091】
・上流側フィン20において、上側の軸部についても下側の軸部についても特定軸部によって構成されてもよい。
・上流側フィン20に加え下流側フィン30についても、上流側フィン20と同様に、一対の軸部の少なくとも一方が特定軸部によって構成されてもよい。
【0092】
・上流側フィン20に代え、下流側フィン30のみについて、一対の軸部の少なくとも一方が特定軸部によって構成されてもよい。
<軸孔16,17について>
・軸孔16,17は、車両の上下方向(鉛直方向)へ延びるものであってもよい。
【0093】
・軸孔16,17の内径は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
<材料について>
・横壁部13は、特定軸部23の挿通された軸孔の少なくとも周辺部分が硬質の樹脂材料によって形成されていればよく、必ずしも横壁部13の全体が硬質の樹脂材料によって形成されていなくてもよい。
【0094】
・一対の軸部の一方が通常軸部22によって構成される場合、ケース10は、少なくとも軸孔17の周辺部分が、通常軸部22よりも軟質の樹脂材料によって形成されていればよく、上記実施形態よりも広い箇所が軟質の樹脂によって形成されてもよい。
【0095】
・通常軸部22及び軸孔17間での異音の発生を抑制するために、少なくとも軸孔17の周辺部分を軟質の樹脂材料によって形成することに代え、又は加え、通常軸部22及び軸孔17の内壁面間にグリースが介在されてもよい。
【0096】
<フィンの配置態様について>
・本発明は、各上流側フィンが車幅方向に延びるように配置され、各下流側フィンが上下方向に延びるように配置される空調用レジスタにも適用可能である。
【0097】
<空調用レジスタの適用箇所について>
・本発明は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に配設される空調用レジスタにも適用可能である。
【0098】
・本発明の空調用レジスタは、空調装置から送られてきて室内に吹出す空調用空気の向きを調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
10…ケース、11…通風路、13,14…横壁部(対向壁部)、16,17…軸孔、16A…内壁面、20…上流側フィン(フィン)、21…フィン部、22…通常軸部(軸部)、23…特定軸部(軸部)、24…軸本体、24A,25A…外周面、25…環状突部(膨出部)、26…削りカス処理部、30…下流側フィン、41,42,43,44,45…突条(膨出部)、A…空調用空気、L2…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5