特許第5886031号(P5886031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886031
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】バイオマス燃料燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/00 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   F23C1/00 301
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-282803(P2011-282803)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133944(P2013-133944A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104341
【弁理士】
【氏名又は名称】関 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】谷口 孝二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】矢原 俊
(72)【発明者】
【氏名】田部 裕
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−333232(JP,A)
【文献】 特開平09−026112(JP,A)
【文献】 特開2005−140480(JP,A)
【文献】 特開2005−291534(JP,A)
【文献】 特開平04−020702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベント部を有し一次空気に搬送されたバイオマス燃料を噴出する燃料噴出口を備えたバイオマス燃料噴出ノズルと、前記燃料噴出口の開口を囲繞する二次空気噴出口を備えて二次空気を噴出する二次空気ノズルと、前記二次空気噴出口を囲繞する三次空気噴出口を備えて三次空気の旋回流を噴出する三次空気ノズルとを設けたバイオマス専焼バーナーであって、前記バイオマス燃料噴出ノズルの内部中央に前記ベント部で偏流したバイオマス燃料流を軸周りに旋回する旋回流に変成して燃料濃度を管軸側に薄く外周部側に濃く分布させる旋回羽根と、前記燃料噴出口の直ぐ上流の管内壁に該燃料噴出口から噴出する燃料流の旋回を抑制する旋回度調整板とを備えて燃料濃度分布を適正化すると共に、前記二次空気噴出口と前記三次空気噴出口の開口を調整して二次空気量を抑制することにより燃料流と三次空気流の間に緩衝流を形成させるバイオマス専焼バーナーに、粒子分布が2mmアンダーになった木質バイオマス燃料を一次空気に搬送させて流速が15m/sから25m/sになるような燃料流を供給し、A/C0.8以上、かつバーナー定格の燃料量におけるA/C2.5とバーナー定格の60%の燃料量におけるA/C1.5との間を比例配分したA/Cの値以下になるように、一次空気と二次空気と三次空気を供給して、バイオマス燃料を燃焼させることを特徴とするバイオマス燃料燃焼方法
【請求項2】
前記一次空気、前記バイオマス燃料噴出ノズルの管内で燃料搬送流の速度を15m/sから25m/sの範囲内に収める量だけ供給することを特徴とする請求項1記載のバイオマス燃料燃焼方法
【請求項3】
前記バイオマス専焼バーナーを設備した微粉炭焚きボイラにおいて、微粉炭と異なる微粉砕機で処理したバイオマス燃料を該バイオマス専焼バーナーに供給することを特徴とする請求項1または2記載のバイオマス燃料燃焼方法
【請求項4】
前記バイオマス専焼バーナーは、前記微粉炭焚きボイラの炉後であって高い位置に設置された微粉炭バーナーと同じあるいはより高い位置に設けたことを特徴とする請求項3記載のバイオマス燃料燃焼方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス燃料を補助燃料として石炭焚きボイラに使用するバイオマス専焼バーナーおよびバイオマス専焼バーナーを設備したバイオマス混焼ボイラ、ならびにバイオマス燃料の燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策の計画的な推進実行が望まれている中、我が国において排出される温室効果ガスのうち、最近では、エネルギー起源のCO2が約9割を占め、さらに全発電における石炭火力発電が50%のCO2を排出する状況であり、石炭焚き火力発電設備についても環境負荷の低い新エネルギーの利用促進が求められる。
【0003】
このような状況の下、我が国では「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(以下、「RPS法」という。)が制定され、電気事業者に対して、毎年、その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等を利用して得られる電気を利用することを義務付けることにより、新エネルギー等の利用を推進する施策が採用されている。
RPS法により、電気事業者は、石炭焚き火力発電設備において、バイオマスを補助燃料として利用した混焼方式でなければ新設ができず、既設の設備においてもバイオマス混焼方式の導入が求められている。
【0004】
有機物は地球上で自然に分解・吸収・放出を繰り返して循環しているため、バイオマスエネルギーによって排出されるCO2は、同量のCO2吸収源を確保することで、収支を均衡させることができる。したがって、循環資源である木質バイオマスを燃料としたバイオマス発電は大気中のCO2負荷を実質的に増大させるものにならず、新エネルギーとして大きな期待を担っている。収集が容易な木質バイオマスとして、木質ペレット、木質チップなどがある。
【0005】
また、石炭焚きボイラにおいてバイオマス燃料を補助燃料として利用すれば、化石燃料の節約とCO2排出量の削減ばかりでなく、バイオマス燃料は窒素成分の含有量が少ないため燃焼排ガスの低NOx化を図ることができる。
【0006】
従来から用いられている混焼式の石炭焚きボイラとして、従来の微粉炭バーナーあるいは石炭とバイオマス燃料を同時に供給する混焼バーナーで、微粉炭とバイオマス燃料を混合した粉体燃料を燃焼させる混焼ボイラがある。代表的な方式は、従来の微粉炭焚きボイラを利用して、たとえばローラミルなど石炭を微粉砕するミルに木質バイオマス原料を加えて微粉炭とバイオマスの混合燃料を製造し、これを搬送空気に載せて微粉炭バーナーで燃焼させるものである。
【0007】
ローラミルでは、バーナーの燃焼効率を上げるため、石炭を通常200μm以下、好ましくは70μm程度の微粉炭にするが、ここでは、バイオマス燃料も一緒に極微細に粉砕する。また、ローラミルに石炭と木質バイオマスを同時に投入して処理すると、製品粒度が悪化して100μm以上の粗い成分が増加する。図7は、ローラミルに対して、木質バイオマスを5%混入したときの粉砕粒度分布を石炭のみを処理したときと比較したものである。グラフは、製品燃料の粒度について、横軸に篩い目を対数目盛で表し、縦軸に篩いの通過重量百分率をとったものである。木質バイオマスの混入により、製品燃料の粒度分布が粗い方と細かい方の両方に広がっていることが分かる。
【0008】
さらに、木質バイオマス燃料と微粉炭では燃焼特性が異なり、たとえば揮発分が石炭の2倍で、発熱量が木質ペレットでは石炭の2/3、木質チップでは1/2、また灰分は木質ペレットや木質チップで石炭の1/10以下である。したがって、微粉炭バーナーとして設計されたバーナーでバイオマス燃料を混焼するには混合比に限界がある。
微粉炭ボイラにおけるバイオマス燃料混合比の工業的実績値は3%であり、限界は5%程度と推定される。
【0009】
今後の趨勢を勘案すると、微粉炭に木質バイオマス燃料を補助燃料として加えて混焼する混焼ボイラとして、混焼率が重量比で30%程度になると活用可能性が大きく増大することが期待される。微粉炭バーナーを利用する場合は、バイオマス燃料の高い混焼率を得ることができないので、バイオマス専焼バーナーを導入することが考えられる。
【0010】
木質バイオマス燃料は、細かく粉砕するほど粉砕に要する動力が増大し、原単位を増加させる。また、木質バイオマス燃料は、同じ粒径であれば石炭より燃えやすいため、粉砕粒を小さくする必要がない。さらに、木質バイオマス燃料の燃焼特性が微粉炭と異なるため、木質バイオマス燃料を効率的に燃焼させるには木質バイオマス燃料に特化したバイオマス専焼バーナーを使用することが望ましい。
【0011】
バイオマス専焼バーナーを使用する場合は、微粉炭と独立して、木質バイオマス燃料に適した条件で微粉砕機を運転し、微粉炭バーナーを使う石炭に対して適宜な混焼割合を選んで混焼ボイラを運転することができる。
ボイラとしての混焼率は、微粉炭燃焼バーナーとバイオマス専焼バーナーの設置数と燃焼効率にしたがって決められる。
【0012】
特許文献1には、微粉炭とバイオマス燃料を別系統でそれぞれ火炉に投入して燃焼させる混焼ボイラに適用するバイオマス専焼バーナーが開示されている。開示されたバイオマス専焼バーナーのバイオマス燃料噴出ノズルは、ノズル内の中心部中央にバイオマス燃料の偏流を防止する分散装置を設け、ノズル内の上流部に燃料の流速を上昇させ分散装置にバイオマス燃料粒子を衝突させるためのベンチュリーを備え、ノズルの先端にバイオマス燃料の流れを急拡大させる階段状拡大構造の保炎器を設け、ノズルの外側に二次空気の旋回流を供給する燃焼用空気ノズルを設けたものである。
【0013】
バイオマス専焼バーナーは、所定量のバイオマス燃料を燃焼させるために最適化したもので、適用する火炉において求められるバイオマス燃料処理量に応じて設置数を決めることができる。特許文献1には、混焼率15%の実施例が記載されている。
なお、バイオマス専焼バーナーは、微粉炭専焼バーナーと二段燃焼用空気噴出口の間に設置することが好ましい。
【0014】
また、特許文献2には、微粉炭とバイオマス燃料の混焼バーナーを使用したボイラと、起動用または補助用バーナーを流用してバイオマス燃料を間欠供給して燃焼させるバイオマス燃料燃焼用バーナーとして使用したボイラが開示されている。ただし、特許文献2には、バイオマス専焼バーナーの具体的形態、使用上の問題点、解決方法などが記載されていない。
特許文献3は、微粉炭専焼バーナーを開示したものである。開示されたバーナーは、バイオマス燃料と比較して発熱量が大きく、燃焼に必要な空気量が大きく、比重が大きく、最適な粒度が小さい微粉炭に適合するもので、木質バイオマス燃料を高い効率で燃焼させるためには木質バイオマス燃料に対応して最適化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−291534号公報
【特許文献2】特開2005−291524号公報
【特許文献3】特開平9−26112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
微粉炭焚きボイラでバイオマス燃料を混焼して、大量の木質バイオマス燃焼を可能とするバイオマス専焼バーナーを利用した、化石燃料起源のCO2量を削減することができるバイオマス混焼ボイラに係る、バイオマス燃料燃焼方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るバイオマス専焼バーナーは、ベント部を有し一次空気に搬送されたバイオマス燃料を噴出する燃料噴出口を備えたバイオマス燃料噴出ノズルと、燃料噴出口の開口を囲繞する二次空気噴出口を備えて二次空気を噴出する二次空気ノズルと、二次空気ノズル噴出口の開口を囲繞する三次空気噴出口を備えて三次空気の旋回流を噴出する三次空気ノズルとを設けたバイオマス燃焼バーナーである。
【0018】
本発明のバイオマス燃焼バーナーは、バイオマス燃料噴出ノズルの内部中央にベント部で偏流したバイオマス燃料流を軸周りに旋回する旋回流に変成して燃料濃度を管軸側に薄く外周部側に濃く分布させる旋回羽根を備え、燃料噴出口から噴出する燃料流の旋回を抑制する整流板を燃料噴出口の直ぐ上流側の内壁に備え、二次空気噴出口と三次空気噴出口の開口を調整して二次空気量を抑制することにより燃料流と三次空気流の間に緩衝流を形成させることを特徴とする。
【0019】
本発明のバイオマス専焼バーナーは、バイオマス燃料噴出ノズルのベント部下流の直管部に管軸を貫いて液体燃料を供給するオイル供給配管を備えてもよい。
本発明のバイオマス専焼バーナーには、微粉炭と独立に、衝撃式破砕機(たとえば、株式会社アーステクニカ製TSX型シュレッダ)などの二次粉砕機を使って木質バイオマス原料を2mmアンダーの粒子に形成したバイオマス燃料を一次空気に載せた燃料流が供給され、炉内で燃焼させる。
【0020】
バイオマス専焼バーナーを設置した火炉における燃焼ガスのNOxを減少させるため、バイオマス燃料を還元雰囲気中で燃焼させることが好ましい。
本発明のバイオマス専焼バーナーでは、バイオマス燃料搬送のために15〜25m/s程度の流速が必要であるため一次空気量に一定の制約がある。さらに、バイオマス燃料を還元雰囲気中で効率よく燃焼させるために、一次空気量がバイオマス燃料の重量に対するA/C値(Nm/kg)で0.8以上2.5以下になるようにして運転することが好ましい。
【0021】
本発明のバイオマス専焼バーナーは、定格燃料流量においてはA/C値が2.5以下、定格に対して60%負荷状態ではA/C値が1.5以下で運転することができる。
燃料量が60%以上の場合は、バーナー定格の燃料量におけるA/C2.5とバーナー定格に対して60%の燃料量におけるA/C1.5との間を比例配分したA/Cの値以下になるようにして運転することができる。
【0022】
本発明のバイオマス専焼バーナーでは、三次空気流より小さな二次空気流が炉内に放出されたバイオマス燃料をノズル軸方向に巻き返して噴出口周辺に渦を形成することにより、保炎性を向上させると共に、還元雰囲気中の燃焼をより長時間継続させてNOx抑制効果を高める作用を有する。
【0023】
また、本発明のバイオマス混焼ボイラは、本発明のバイオマス専焼バーナーを微粉炭焚きボイラに設備し、微粉炭と異なる微粉砕機で処理したバイオマス燃料をバイオマス専焼バーナーに供給するように構成したことを特徴とする。
なお、バイオマス専焼バーナーは、微粉炭焚きボイラの炉後であって、高い位置に設置された微粉炭バーナーと同じあるいはより高い位置に設けることができる。また、バイオマス専焼バーナーは微粉炭ボイラの炉前に設けても良い。
本発明のバイオマス混焼ボイラは、バイオマス燃料を大量に燃焼させて、石炭の節約とCO2の放出抑制とNOx低減を行うことができる。
【0024】
上記課題を解決するため、本発明のバイオマス燃料燃焼方法は、本発明のバイオマス専焼バーナーに対して、粒子分布が2mmアンダーになった木質バイオマス燃料を一次空気に搬送させて流速が15m/sから25m/sになるような燃料流を供給し、さらに、A/C0.8以上、かつバーナー定格の燃料量におけるA/C2.5とバーナー定格の60%の燃料量におけるA/C1.5との間を比例配分したA/Cの値以下になるように、一次空気と二次空気と三次空気を供給して、バイオマス燃料を燃焼させることを特徴とする。
本発明のバイオマス燃料燃焼方法により、本発明のバイオマス専焼バーナーを適切に稼働させて、効果的に大量のバイオマス燃料を燃焼させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のバイオマス燃料燃焼方法により、微粉炭と独立にバイオマス燃料を大量に燃焼させることができる。
なお、新設及び既設の微粉炭焚きボイラに対してバイオマス専焼バーナーを適当数設置してバイオマス混焼ボイラとすれば、バイオマス燃料を燃焼させ石炭燃焼量を削減し排ガス中のNOxを低減しかつ化石燃料起源のCO2排出量を削減する効果が大きい。


【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の1実施例に係るバイオマス専焼バーナーの概略断面図である。
図2】本実施例のバイオマス専焼バーナーに用いる旋回羽根の例を示す図面である。
図3】本実施例におけるバイオマス燃焼プロセスを説明するプラント系統図である。
図4】本実施例のバイオマス専焼バーナーのボイラへの設置例を示す概念図である。
図5】本実施例のバイオマス専焼バーナーに供給するバイオマス燃料の粒度分布図である。
図6】本実施例のバイオマス専焼バーナーの運転範囲を示すバーナー負荷・A/C関係図である。
図7】従来の微粉炭バーナーで燃焼させる石炭とバイオマスの混合燃料の粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の1実施例に係るバイオマス専焼バーナーの概略断面図、図2はバイオマス専焼バーナーに使う旋回羽根の例を示す図面である。図2(a)図は旋回羽根を管軸の方向から見た正面図、図2(b)図は管軸に垂直の方向から見た側面図である。
【0028】
本実施例のバイオマス専焼バーナー100は、図1に示すように、バイオマス燃料噴出ノズル10と二次空気ノズル20と三次空気ノズル25を備える。バイオマス燃料噴出ノズル10の管軸に、補助燃料供給管31を設けても良い。
【0029】
バイオマス燃料噴出ノズル10は、一次空気に搬送されたバイオマス燃料を炉内に供給するもので、バイオマス燃料が配管中に滞留しない15〜25m/s程度の風速になる量の一次空気が用いられる。バイオマス燃料噴出ノズル10は、水平方向に配置されたバイオマス燃料供給管11に対して導入管12をベンド部の位置でほぼ垂直の方向に会合させてあって、導入管12から流入する燃料流をベンド部に設けた反転板13に衝突させてほぼ90°曲げさせる。ベンド部で燃料流を曲管によって滑らかに曲げると遠心力で流れ中の燃料粒子が曲管の外周側に偏在して、曲管出口では配管内の周方向の燃料分布が不均等になるが、本発明のノズルでは平板の反転板13に燃料流を衝突させることにより流れを乱して配管内の燃料分布を周方向に均等にするようにしている。
【0030】
一次空気で搬送されたバイオマス燃料流は、ベンド部を通過することにより流れの断面におけるバイオマス燃料の濃度分布が偏るので、その下流であるバイオマス燃料噴出ノズル11の内部中央に、燃料濃度調整部15を設けて、バイオマス燃料流における燃料濃度を調整する。
燃料濃度調整部15は、図2に示すように、バイオマス燃料噴出ノズル11の流路中に旋回羽根16を複数設けることで構成される。旋回羽根16は羽根が管軸に対して傾いていて、流入するバイオマス燃料流を軸周りに旋回する旋回流にすることにより、燃料濃度を中心に薄く外周部に濃く分布させると共に、濃度分布が周方向にほぼ同一になるように整える。
【0031】
さらに、炉内に燃料を噴出させる燃料噴出口19の直ぐ上流の管内壁に、旋回度調整板17を備えて、旋回羽根16で与えられた燃料流の旋回力を殺いで、噴出後の燃料流の広がりを抑えるようにしている。旋回度調整板17は周方向に複数配置された、管軸にほぼ平行な平板で構成される。旋回度調整板17の大きさや向きは、燃料流の旋回力と噴出後の拡大角に応じて適宜に決めることができる。
【0032】
バイオマス燃料噴出ノズル10を囲繞するように二次空気ノズル20が設けられ、さらに二次空気ノズル20を囲繞するように三次空気ノズル25が設けられる。
二次空気ノズル20は、旋回器21を介して風箱から二次空気を取り込み、燃料噴出口19の周囲に形成した二次空気供給口23から炉内に供給する。また、三次空気ノズル25は、旋回器26を介して風箱から三次空気を取り込み、二次空気供給口23の周囲に形成した三次空気供給口27から炉内に供給する。
【0033】
二次空気と三次空気は燃焼用空気の一部として、燃料噴出口19から炉内に拡がるバイオマス燃料流に混ざってバイオマス燃料を燃焼させる。
二次空気は、三次空気の内側にあって、バイオマス燃料流と初めに接触してこれを内側に屈曲させて燃料流が三次空気流と会合するの遅らせ、燃料濃度が高い状態を持続させることにより安定した着火性能を確保し保炎性を向上させる作用を有する。また、低酸素での燃焼時間を確保して、より効果的にNOxを低減させることができる。
【0034】
図1に示すバイオマス専焼バーナー100においては、燃料噴出口19の周囲を旋回する燃焼用空気の旋回流を形成するために、旋回器21と旋回器26が風箱からの取り入れ口近傍に設けられているが、これら旋回器21,26は、それぞれ二次空気供給口23と三次空気供給口27の直ぐ上流に設けても良い。なお、二次空気は、旋回を強くすると効果が弱くなるので、二次空気用の旋回器21を設備しない場合もある。
【0035】
補助燃料供給管31は、バイオマス燃料が不足する場合などに代替して使用する補助用あるいは起動用の液体燃料やガス燃料を供給する燃料供給管である。安定した運転には有効であるが、必須ではない。
また、図示しないが、本実施例のバイオマス専焼バーナー100にも、パイロットバーナーや火炎検知器が設置されている。
【0036】
図3は、本実施例のバイオマス専焼バーナー100を適用した微粉炭ボイラにおけるバイオマス燃料供給系統の例を説明するプラント系統図である。
従来型の微粉炭ボイラ61の側壁にバイオマス専焼バーナー100が設置されている。バイオマス専焼バーナー100は、既設の微粉炭バーナーあるいは二段燃焼空気供給ノズルの一部を入れ替えて設置しても良い。
バイオマス燃料は、微粉炭と異なる専用の微粉砕機により微粉炭と異なる粒度を持つ粒体に加工されて、微粉炭と独立した空気流に搬送されて、バイオマス専焼バーナー100に供給される。
【0037】
バイオマス燃料供給系統は、木質バイオマス原料を受け入れる受入れホッパ51、受入れホッパ51の底から所定量の原料を搬出するベルトコンベア52、コンベア52から原料を受け入れて所定の大きさの粒子にする微粉砕機53、微粉砕機53からバイオマス燃料を搬送する空気を供給する送風ファン54、バイオマス粒子から極微細な粒子を取り除くサイクロン55、サイクロン55から排出される空気から微粉体を除去して清浄な空気を大気に放出するバグフィルタ57、サイクロン55の底から木質バイオマス燃料を所定量ずつ取り出して供給する計量供給機56、所定流量で供給されるバイオマス燃料を搬送するための一次空気を供給する搬送ファン59を備える。
【0038】
受入れホッパ51に供給された一次粉砕後の木質バイオマス原料は、微粉砕機53で所定の粒度分布を持つまで二次粉砕され、サイクロン55に風送され極微細な成分を除去した状態でサイクロン55の底に溜まり、計量供給機56で所定量ずつバイオマス燃料供給管63に供給される。
【0039】
計量供給機56からバイオマス燃料供給管63に供給されたバイオマス燃料は、搬送ファン59から圧送される一次空気に搬送され、燃料搬送流供給管65を介して、バイオマス専焼バーナー100に供給される。
搬送給気量は、燃料搬送流供給管65とバイオマス専焼バーナー100の中で燃料粒子の停滞や極度な高速流が生じないように、15m/sから25m/s程度の流速を持たせるように決められる。
【0040】
図4は、既設の微粉炭焚きボイラに本実施例のバイオマス専焼バーナーを設置したときの配置例を示す図面である。
図4の配置例は、炉前下方(燃焼ガス流の上流側)に4本ずつ4列合わせて16本の微粉炭バーナー、炉前上方(燃焼ガス流の下流側)に4本ずつ2列合わせて8本のTSポートが設けられていた既設の微粉炭焚きボイラに対して、背面側の炉後における、最上列の微粉炭バーナーの高さにほぼ対応する位置に、1列4本のバイオマス専焼バーナーを付設したものである。バイオマス専焼バーナーの数は、バイオマス専焼バーナーの容量とボイラで処理したいバイオマス燃料の量に応じて決めることができる。
【0041】
バイオマス燃料中の粒径が大きく重い燃料粒子が、燃焼ガスの上昇気流により適当時間浮遊させて燃焼させて未燃焼状態で炉底に落下するのを防ぐため、バイオマス専焼バーナーの下に微粉炭バーナーが位置するように配置することが好ましい。
なお、既設のボイラを改装するときには、既設の微粉炭バーナーあるいはTSポートの適宜な一部をバイオマス専焼バーナーに交換するようにしても良いことはいうまでもない。
【0042】
従来の微粉炭バーナーでは、通常、燃焼効率を上げるため石炭を微粉砕する必要があり、通常200μm以下、好ましくは70μm程度の微粉体として使用されている。本実施例の微粉炭バーナーにおいては、燃料の粒子径が74μm以下で80%を占めるように処理された微粉炭燃料が使われ、A/C(燃料(kg/h)に対する燃料搬送空気量(Nm/h))が0.8〜3.0の範囲に調整することにより、定格値に対する負荷率が35%〜100%の範囲で微粉炭を燃焼させることができる。
【0043】
ところが、木質バイオマス燃料では、原料を粉砕するときは粒度が小さくなるにつれて粉砕電力が急激に増大し経済性が悪くなる。また、木質バイオマス燃料は、同じ粒径であれば石炭よりも燃えやすいので粉砕粒を大きくすることができる。このため、木質バイオマス燃料は、ほぼ2mmアンダーの粒度分布を有するまで粉砕して使用することが好ましい。
【0044】
このように、最適な燃焼条件が異なるため、本実施例においては微粉炭と異なるバイオマス専焼バーナー100を用いて、バイオマス燃料を微粉炭と異なる条件で燃焼させるので、微粉炭の粉砕機とは独立に選択した、たとえば、株式会社アーステクニカ製TSX型シュレッダなど、適宜な微粉砕機53を使って、一次粉砕された状態で供給される木質バイオマス原料を二次粉砕して専焼に最も適したサイズの粒子に形成する。また、搬送用の一次空気も別途独立した搬送ファン59を使って、バイオマス専焼バーナー100に適化した風量や風圧を備えるようにすることが好ましい。
【0045】
図5は、木質ペレット、木質チップの各種木質バイオマス原料について、微粉砕機で処理する前と後の粒度分布を示したグラフである。たとえば、微粉砕機53で2mmアンダーに粉砕した木質ペレットは、700μm以下が80%を占めるような粒子分布を示し、本実施例のバイオマス専焼バーナー100により容易に還元燃焼させることができる。
また、上記粒子分布を示すバイオマス燃料は、バイオマス燃料噴出ノズル10の燃料噴出口19から炉内に放出されたときに全ての粒子が炉内の燃焼ガス上昇気流に乗って浮遊燃焼し、未燃成分が炉底に沈降しないことが、実機ボイラに適用した場合における木質バイオマス熱流動解析により確認されている。
【0046】
図6は、本実施例のバイオマス専焼バーナー100に係るバーナー負荷・A/C関係図である。図は、横軸に定格に対する割合(%)で燃料量を表し、縦軸にA/C(Nm/h)を表す。図に示した、ハッチングを入れた領域は、運転推奨領域である。
本実施例のバイオマス専焼バーナー100は、図6に示すように、負荷率100%でA/C0.8から2.5まで、負荷率60%でA/C0.8から1.5まで、工業的に使用ができる。
【0047】
負荷率100%のときに高いA/Cまで使用できるのに、負荷率60%では比較的小さなA/Cで使えなくなるのは、燃料流中の燃料成分が小さくなって着火性や保炎性が低下する上、燃料が減少して燃焼用空気量が減るのに燃料の搬送に必要な一次空気量は余り変わらないため二次空気と三次空気が不足して、本バーナー機構に特有の保炎作用を減退させるためと考えられる。
なお、負荷率60%以下では、バイオマス燃料流中の燃料成分の割合が小さくなりすぎて、良好な着火や保炎が難しくなるので、勧められない。
【0048】
図6には、定格値300kg/hの燃料を燃焼させるバイオマス専焼バーナーを使って、運転可能な範囲を確認した結果が記入されている。図中の黒丸印は着火性と保炎性が良好で火炎が安定していたケース、バツ印は保炎性等が悪く燃焼が不良であったケースを示す。図から、運転推奨領域内における運転可能性が確認できる。
【0049】
本実施例のバイオマス専焼バーナーを適用したバイオマス混焼ボイラでは、大量の木質バイオマス燃料を燃焼させることにより、石炭消費量の節減ができ、化石燃料起源のCO2放散を抑制することができる。バイオマス専焼バーナーは、微粉炭と独立にバイオマス燃料を燃焼するので、設置数により燃焼量を調整することができ、所定の容量を有するバーナーを適当数設置することで、大量のバイオマス燃料を安定して混焼させることができる。
また、バイオマス混焼ボイラでは、バイオマス燃料に窒素成分が少ないため、燃焼排ガスの低NOx化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のバイオマス専焼バーナーを新設のあるいは既存の微粉炭焚きボイラに適用することにより、高いバイオマス混焼率で燃焼させるバイオマス混焼ボイラを得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 バイオマス燃料噴出ノズル
11 バイオマス燃料供給管
12 導入管
13 反転板
15 燃料濃度調整部
16 旋回羽根
17 旋回度調整板
19 燃料噴出口
20 二次空気ノズル
21 旋回器
23 二次空気供給口
25 三次空気ノズル
26 旋回器
27 三次空気供給口
31 補助燃料供給管
51 受入れホッパ
52 ベルトコンベア
53 微粉砕機
54 送風ファン
55 サイクロン
56 定量供給機
57 バグフィルタ
59 搬送ファン
61 微粉炭ボイラ
63 バイオマス燃料供給管
65 燃料搬送流供給管
100 バイオマス専焼バーナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7