特許第5886039号(P5886039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 朝日電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5886039-操作装置 図000002
  • 特許5886039-操作装置 図000003
  • 特許5886039-操作装置 図000004
  • 特許5886039-操作装置 図000005
  • 特許5886039-操作装置 図000006
  • 特許5886039-操作装置 図000007
  • 特許5886039-操作装置 図000008
  • 特許5886039-操作装置 図000009
  • 特許5886039-操作装置 図000010
  • 特許5886039-操作装置 図000011
  • 特許5886039-操作装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886039
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/12 20060101AFI20160303BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20160303BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B63H21/26 H
   B63H21/26 N
   B63H21/21
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-289142(P2011-289142)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136348(P2013-136348A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通之
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−255770(JP,A)
【文献】 特開2010−280303(JP,A)
【文献】 特開2008−201337(JP,A)
【文献】 特開昭63−269795(JP,A)
【文献】 特開2009−073348(JP,A)
【文献】 特開2011−080214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/12
B63H 20/00
B63H 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機に取り付けられた操舵ハンドルの先端部に形成され、運転者が把持しつつ回転操作可能とされた操作用グリップと、
該操作用グリップの回転角度を非接触にて検出し、当該回転角度に応じた検出信号を発生させる検出センサと、
を具備し、前記検出センサで得られた検出信号を船外機側に送信して当該船外機の駆動速度を制御させる操作装置であって、
前記操作用グリップが中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際、節度を付与する節度付与部材と、
前記操作用グリップが中立位置にあるとき、当該操作用グリップを係止してその回転を規制するとともに、前記操作用グリップを把持しつつ操作可能な操作手段にて操作されることにより、前記操作用グリップに対する係止が解除されて当該操作用グリップの一方向又は他方向の回転を許容する係止部材と、
を具備したことを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記節度付与部材は、前記把持用グリップと共に回転し得る部材から成り、当該把持用グリップ内に固定された固定部材内で回転自在に保持されるとともに、当該節度付与手段及び固定部材の何れか一方の所定部位には、嵌合凹部が形成され、他方には、前記把持用グリップが中立位置にあるとき前記嵌合凹部と合致して嵌合し得る嵌合凸部が形成されたことを特徴とする請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
前記操作手段は、前記操作用グリップが中立位置にあるとき操作されると、前記係止部材による係止を解除させるとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回転操作された状態で操作されると、船外機の駆動を強制的に停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に取り付けられた操舵ハンドルの先端部に形成され、運転者が把持しつつ回転操作可能とされた操作用グリップを有した操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、船舶(具体的には船体後方のトランサム)に連結された船外機は、エンジン又はモータ等の駆動源を内部に有するとともに、当該駆動源の駆動力で回転可能なプロペラを有して構成されており、かかるプロペラの回転駆動により船舶の推進力を得るものとされている。このような船外機には、揺動軸を中心に上下方向に揺動可能とされた操舵ハンドルが取り付けられており、当該操舵ハンドルの先端部には、運転者が把持しつつ回転操作可能とされた操作用グリップ(スロットルグリップ)が形成されている。
【0003】
通常、操作用グリップには、船外機まで延設された操作ワイヤが接続されており、操作用グリップを回転操作すると、操作ワイヤが引っ張られて船外機側のスロットルが操作され、当該操作グリップの回転角度に応じた速度で船舶を前進させ得るよう構成されていた。一方、モータを駆動源とする船外機においては、ポテンショメータ等の検出器が当該船外機内に配設され、当該ポテンショメータ等にて操作ワイヤの引っ張り量を検出するとともに、その検出に応じてモータの駆動速度を制御するよう構成されていた。
【0004】
ところで、モータを駆動源とする船外機においては、操作用グリップが中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るよう構成されている。すなわち、上記従来の操作装置においては、中立位置にある操作用グリップを一方向又は他方向に回転操作すると、その回転操作方向に応じた操作ワイヤが引っ張られ、ポテンショメータ等の検出器がその引っ張り量を検出することにより、船舶の前進、停止、後進を制御し得るようになっているのである。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の操作装置においては、以下の如き問題があった。
操作用グリップの回転角度を精度よく検出し、かつ、操作ワイヤが海水等に曝されて操作不良が生じてしまう不具合等を回避すべく、本出願人は、操作用グリップの回転角度を非接触にて検出する検出センサを当該操作用グリップ内に配設し、その検出センサによる検出信号を配線を介して船外機側に送信して駆動速度を制御させる技術を鋭意検討するに至った。
【0006】
しかしながら、上記従来の操作装置の如く操作ワイヤを介して操作用グリップの回転操作が船外機側の検出器に伝達されるものにおいては、当該操作ワイヤの張力等により操作用グリップの中立位置が保持されるものの、検出センサを操作用グリップ内に配設したものの場合、操作ワイヤの如き張力が操作用グリップに対して付与されない。したがって、操作用グリップを中立位置にて保持させるのが困難とされるので、操作感が悪化してしまうとともに、船舶の停止、前進、後進のための操作を確実に行わせることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、操作用グリップの回転角度を精度よく検出することができ、かつ、操作感を向上させることができるとともに、船舶の停止、前進、後進のための操作を確実に行わせることができる操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、船外機に取り付けられた操舵ハンドルの先端部に形成され、運転者が把持しつつ回転操作可能とされた操作用グリップと、該操作用グリップの回転角度を非接触にて検出し、当該回転角度に応じた検出信号を発生させる検出センサとを具備し、前記検出センサで得られた検出信号を船外機側に送信して当該船外機の駆動速度を制御させる操作装置であって、前記操作用グリップが中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際、節度を付与する節度付与部材と、前記操作用グリップが中立位置にあるとき、当該操作用グリップを係止してその回転を規制するとともに、前記操作用グリップを把持しつつ操作可能な操作手段にて操作されることにより、前記操作用グリップに対する係止が解除されて当該操作用グリップの一方向又は他方向の回転を許容する係止部材とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の操作装置において、前記節度付与部材は、前記把持用グリップと共に回転し得る部材から成り、当該把持用グリップ内に固定された固定部材内で回転自在に保持されるとともに、当該節度付与手段及び固定部材の何れか一方の所定部位には、嵌合凹部が形成され、他方には、前記把持用グリップが中立位置にあるとき前記嵌合凹部と合致して嵌合し得る嵌合凸部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の操作装置において、前記操作手段は、前記操作用グリップが中立位置にあるとき操作されると、前記係止部材による係止を解除させるとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回転操作された状態で操作されると、船外機の駆動を強制的に停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、操作用グリップが中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際、節度を付与する節度付与部材を具備したので、操作用グリップの回転角度を精度よく検出することができ、かつ、操作感を向上させることができるとともに、船舶の停止、前進、後進のための操作を確実に行わせることができる。
さらに、操作用グリップが中立位置にあるとき、当該操作用グリップを係止してその回転を規制するとともに、操作用グリップを把持しつつ操作可能な操作手段にて操作されることにより、操作用グリップに対する係止が解除されて当該操作用グリップの一方向又は他方向の回転を許容する係止部材を具備したので、不用意に中立位置からの回動操作が行われてしまうのを回避することができ、より安全性を向上させることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、節度付与手段及び固定部材の何れか一方の所定部位には、嵌合凹部が形成され、他方には、把持用グリップが中立位置にあるとき嵌合凹部と合致して嵌合し得る嵌合凸部が形成されたので、操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際に任意の節度をより確実且つ円滑に付与させることができる。
【0015】
請求項の発明によれば、操作手段は、操作用グリップが中立位置にあるとき操作されると、係止部材による係止を解除させるとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回転操作された状態で操作されると、船外機の駆動を強制的に停止させるので、それぞれの操作手段を配設させるものに比べ、部品点数を削減することができるとともに、構成を簡素化して操作装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る操作装置の外観を示す斜視図
図2】同操作装置における操作用グリップの突端面を示す正面図
図3図2におけるIII−III線断面図
図4図2におけるIV−IV線断面図
図5図3におけるV−V線断面図
図6図3におけるVI−VI線断面図
図7】同操作装置における伝達部材を示す平面図及び側面図
図8】同操作装置における係止部材及びその周囲を示す拡大図
図9】同操作装置における節度付与部材を示す平面図及び側面図
図10】同操作装置における検出センサの出力特性(回転角度と出力電圧の関係)を示すグラフ
図11】同操作装置が適用される船外機を示す模式
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る操作装置は、図1〜6に示すように、操作用グリップGと、磁石4と、検出センサ6と、節度付与部材8と、操作スイッチとしてのマイクロスイッチ10と、操作手段としての操作ボタン11と、伝達部材12と、係止部材13とを有して構成されており、図11に示すように、船外機Kに取り付けられた操舵ハンドル(D、H)の先端部に配設されている。
【0018】
船外機Kは、同図に示すように、プロペラPを具備した本体K1と、本体K1上に配設された駆動源としてのモータMと、スイベルブラケットB1及びクランプブラケットB2と、操舵ハンドル(D、H)とを具備している。本体K1は、スイベルブラケットB1に対して水平方向に操舵可能に軸支されるとともに、当該スイベルブラケットB1は、クランプブラケットB2にチルト軸L2を介して鉛直方向に傾斜可能に軸支されている。そして、船外機Kは、クランプブラケットB2にて船体Fに取付可能に構成され、モータMの出力をプロペラPに伝達することにより、船体Fを前進、停止、後進可能としている。
【0019】
操舵ハンドル(D、H)は、本体K1から船体Fの前方に向かって延設されたもので、当該操舵ハンドル(D、H)を左右方向に揺動させることにより本体K1を同方向(左右方向)に操舵可能とされている。この操舵ハンドルの部位Dと部位Hとの間には、揺動軸L1が設けられており、部位Hの先端部に操作用グリップGが取り付けられるとともに、当該部位Hが部位Dに対して揺動軸L1を中心に上下方向に揺動(同図の状態から上方に跳ね上げ可能)とされている。
【0020】
操舵ハンドルHの先端には、固定ケースCが固定されており、この固定ケースCを介して当該操舵ハンドルHの先端に金属製の円筒状部材から成るパイプ体Aが連結されているとともに、当該パイプ体A内に固定部材5が固定されている。また、固定ケースCには、操作用グリップGが軸回りに回転可能に取り付けられている。なお、本実施形態においては、パイプ体Aは、操舵ハンドルHの先端に連結された別体の部材とされているが、操舵ハンドルHの先端部であってもよい。
【0021】
操作用グリップGは、操舵ハンドルHの先端部に形成され、運転者が把持しつつ中立位置から一方向又は他方向に回転操作可能とされたもので、中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るよう構成されている。
【0022】
さらに、操作用グリップGの内部には、連動部材2が形成されている。この連動部材2は、操作用グリップGと嵌合して取り付けられており、当該操作用グリップGの回転操作と共に回転し得るとともに、回転部材3の一端3aを係止する係止凹部2aが形成されている。回転部材3は、操作用グリップGの回転軸に沿って延びる軸状の部材から成り、固定部材5内で回転自在とされている。なお、図中符号s2は、連動部材2と回転部材3との間をシールするシール部材を示している。
【0023】
さらに、回転部材3には、その先端に磁石4が取り付けられているとともに、途中の所定部位にバネ受板7が固定されており、これら磁石4とバネ受板7との間にコイルスプリングS3が介装されている。一方、磁石4は、後述する基板f及び検出センサ6を収容した収容ケース15の外面15aに当接して組み付けられており、コイルスプリングS3の付勢力により当該外面15aに常時押圧された状態とされている。
【0024】
かかる構成により、操作用グリップGを回転操作すると、当該操作用グリップGと共に連動部材2及び回転部材3が回転するとともに、回転部材3と共に磁石4が外面15aに押圧されつつ回転することとなる。すなわち、操作用グリップGを回転操作すると、連動部材2及び回転部材3と共に磁石4も回転し、その対向する部位(収容ケース15内の検出センサ6側)に生じた磁界が回転角度に応じて変化し得るようになっている。尚、かかる磁石4は、永久磁石であっても、他の磁界を生じ得るもの(例えばプラスチック磁石等)であってもよい。
【0025】
また、回転部材3には、節度付与部材8が取り付けられており、当該回転部材3と共に節度付与部材8も回転するようになっている。この節度付与部材8は、固定部材5内で回転自在に保持されるとともに、バネ受板7との間に介装されたコイルスプリングS2にて常時付勢力が図3、4中左方向に付与されている。また、節度付与部材8は、図9に示すように、その回転中心部に回転部材3を挿通させる挿通孔8bが形成されるとともに、挿通孔8bから外縁に向かって延びる一対の嵌合凹部8aが形成されている。
【0026】
嵌合凹部8aは、溝状に形成された凹部から成り、固定部材5における節度付与部8が押圧される面に形成された嵌合凸部5aと合致して嵌合し得るようになっている。嵌合凸部5aは、操作用グリップGが中立位置にあるとき節度付与部材8の嵌合凹部8aと合致して嵌合し得る位置に形成されている。これにより、操作用グリップGが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際、嵌合凸部5aが嵌合凹部8aを乗り上げて嵌合が外れる過程で節度付与部8がコイルスプリングS2の付勢力に抗して移動し、所定の負荷が生じることで節度が付与されることとなる。
【0027】
なお、本実施形態においては、節度付与部材8に嵌合凹部8aが形成され、固定部材5に嵌合凸部5aが形成されて所定の節度を付与するよう構成されているが、節度付与部材8に嵌合凸部が形成され、固定部材5に嵌合凹部が形成されたものとしてもよい。すなわち、節度付与手段8及び固定部材5の何れか一方の所定部位には、嵌合凹部が形成され、他方には、操作用グリップGが中立位置にあるとき嵌合凹部と合致して嵌合し得る嵌合凸部が形成されたものであればよい。また、嵌合凹部8aの形状及び深さ寸法(それと対応させる嵌合凸部5aも同様)を任意とすることにより、所望の節度を付与することができる。
【0028】
一方、パイプ体A内には、収容ケース15が固定されている。この収容ケース15内は、基板f及び該基板fに形成されたチップ状部材から成る検出センサ6が収容されるとともに、当該基板fからは船外機K側に向かって配線Tが延設されている。また、収容ケース15内には、検出センサ6が形成された基板fを収容した状態にて所定の樹脂を充填して成り、当該基板f及び検出センサ6が樹脂モールドされるよう構成されている。なお、図3、4中符号s3は、収容ケース15とパイプ体Aとの間をシールするシール部材を示している。
【0029】
検出センサ6は、操作用グリップGの回転角度を非接触にて検出し、当該回転角度に応じた検出信号を発生させる角度センサから成り、磁石4から生じる磁界の変化により出力電圧を増減させ得るよう構成されている。なお、基板fには、角度センサから成る検出センサ6の他、該検出センサ6の出力信号を増幅するためのアンプ部やその他の回路が形成されている。
【0030】
さらに、本実施形態に係る検出センサ6は、同一チップ内に角度センサを構成する回路が2つ形成されており、図10に示すように、磁石4から生じる磁界の変化により2つの出力信号(出力1及び出力2)が発生されるようになっている。すなわち、出力1及び出力2は、互いに180度位相がずれた出力信号から成るものとされ、当該出力1と出力2との和を検出信号として送信し得るので、フェールセーフ機能が発揮可能とされている。なお、本実施形態においては、操作用グリップGの回転角度が中立位置から一方向又は他方向に所定角度α回転するまでは出力電圧が変化せず、所定角度α回転した後、それぞれの出力電圧が変動するようになっている。
【0031】
そして、操作用グリップGの回転に伴い磁石4が回転すると、該磁石4から生じる磁界の変化により検出センサ6の出力信号が増減するので、その出力信号に基づいて操作用グリップGの回転角度を検出し得るようになっている。かかる検出信号(電気信号)は、配線Tを介して船外機KにおけるモータMの駆動を制御する駆動制御部に送られ、当該検出信号に基づいた駆動速度の制御(操作用グリップGの回転角度に基づいた出力制御)が行われる。
【0032】
ここで、本実施形態に係る操作用グリップGの先端側には、当該操作用グリップGを把持しつつ操作可能な操作手段としての操作ボタン11が形成されている。この操作ボタン11は、コイルスプリングS1により常時図3、4中左方向に付勢されたもので、当該コイルスプリングS1の付勢力に抗して押圧操作すると、伝達部材12を介して係止部材13及びマイクロスイッチ10(操作スイッチ)を作動させ得るよう構成されている。なお、図3、4中符号s1は、操作ボタン11と連動部材2との間をシールするシール手段を示している。
【0033】
より具体的に説明すると、伝達部材12は、図3、7に示すように、操作ボタン11(操作手段)からマイクロスイッチ10(操作スイッチ)側まで延設された板状部材から成るとともに、その両端部には、操作ボタン11の所定部位と係止可能な係止孔12a、及び保持部14及び円環状部材9と係止可能な係止孔12bがそれぞれ形成されている。また、伝達部材12は、連動部材2の内周壁面に沿って複数(本実施形態においては、図5に示すように同一円周上において等間隔に3つ)形成されており、操作ボタン11の押圧操作に伴って同押圧操作方向に移動することで、係止部材13を同方向に移動させるとともに、円環状部材9を介してマイクロスイッチ10の作動部10aを押圧させるようになっている。
【0034】
係止部材13は、操作用グリップGが中立位置にあるとき、当該操作用グリップGを係止してその回転を規制するとともに、操作ボタン11にて操作されることにより、操作用グリップGに対する係止が解除されて当該操作用グリップGの一方向又は他方向の回転を許容するものである。すなわち、係止部材13は、図8に示すように、連動部材2の突出部2bに形成された挿通孔2baに挿通されつつコイルスプリングS4にて付勢されて保持部14に取り付けられており、操作用グリップGが中立位置にあるとき、その先端部が固定ケースCに形成された係止孔Caに嵌入されて係止されるようになっている。
【0035】
このように、係止部材13の先端部が係止孔Caに嵌入された状態においては、固定ケースCに対して連動部材2が係止されることから、操作用グリップGの回動が規制されることとなる。そして、操作ボタン11の押圧操作に伴って伝達部材12が同押圧操作方向(図8中右方向)に移動することで、係止部材13をコイルスプリングS4の付勢力に抗して同方向に移動させ、当該係止部材13の先端を係止孔Caから離間させることができる。これにより、操作ボタン11を押圧操作することで、中立位置にある操作用グリップGに対する係止が解除されて当該操作用グリップGの一方向又は他方向の回転が許容される。
【0036】
マイクロスイッチ10(操作スイッチ)は、作動部10aを有した接触型スイッチから成るもので、操作ボタン11(操作手段)の操作により電気的にオン、オフして船舶(搭乗手段)に搭載された所望の電装品を操作し得るもので、本実施形態においては船外機Kの駆動を強制的に停止させるよう構成されている。すなわち、操作用グリップGが中立位置から一方向又は他方向に回転操作された状態で操作ボタン11を押圧操作すると、伝達部材12及び円環状部材9が同押圧操作方向に移動するので、作動部10aが円環状部材9にて押圧されてマイクロスイッチ10をオンし、船外機Kの駆動(即ち、駆動源であるモータMの駆動)を強制的に停止させる信号(電気信号)を送信し得るのである。
【0037】
このように、本実施形態においては、操作ボタン11(操作手段)は、操作用グリップGの先端部に配設され、マイクロスイッチ10(操作スイッチ)は、当該操作用グリップGの基端側に配設されるとともに、これら操作ボタン11及びマイクロスイッチ10の間には、当該操作ボタン11に対する操作をマイクロスイッチ10に伝達するための板状部材から成る伝達部材12が配設されており、当該伝達部材12に連結された円環状部材9を介してマイクロスイッチ10の作動部10aを押圧可能とされている。
【0038】
上記のように、本実施形態によれば、操作用グリップGが一方向又は他方向に回転操作された状態で操作すると船外機Kの駆動を強制的に停止させる操作ボタン11(操作手段)が当該操作用グリップGの先端側に配設されたので、緊急停止をより確実かつ円滑に行わせることができ、安全性をより向上させることができる。また、操作用グリップGが中立位置にあるとき、当該操作用グリップGを係止してその回転を規制するとともに、操作ボタン11(操作手段)にて操作されることにより、操作用グリップGに対する係止が解除されて当該操作用グリップGの一方向又は他方向の回転を許容する係止部材13を具備したので、不用意に中立位置からの回動操作が行われてしまうのを回避することができ、より安全性を向上させることができる。
【0039】
特に、本実施形態に係る操作ボタン11(操作手段)においては、操作用グリップGが中立位置にあるとき操作されると、係止部材13による係止を解除させるとともに、当該操作用グリップGが中立位置から一方向又は他方向に回転操作された状態で操作されると、船外機Kの駆動を強制的に停止させるよう構成されている。これにより、それぞれの操作ボタン(係止解除の操作ボタン及び緊急停止の操作ボタン)を配設させるものに比べ、部品点数を削減することができるとともに、構成を簡素化して操作装置の小型化を図ることができる。
【0040】
上記のように、本実施形態によれば、操作用グリップGが中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るとともに、当該操作用グリップGが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際、節度を付与する節度付与部材8を具備したので、操作感を向上させることができるとともに、船舶の停止、前進、後進のための操作を確実に行わせることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、節度付与手段8及び固定部材5の何れか一方の所定部位に嵌合凹部を形成し、他方に操作用グリップGが中立位置にあるとき嵌合凹部と合致して嵌合し得る嵌合凸部を形成するので、嵌合凹部8a及び嵌合凸部5aの形状及び深さ寸法等を任意とすることができ、操作用グリップGが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際に任意の節度をより確実且つ円滑に付与させることができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る操作装置1においては、検出センサ6は、操舵ハンドル(H、D)の揺動軸L1より操作用グリップG側(操舵ハンドルHの先端側)に配設されて船外機K側に延びる配線Tが接続されている。これにより、操作ワイヤを介して操作用グリップGの回転操作を伝達させるものに比べ、操作用グリップGの回転角度を精度よく検出することができるとともに、良好かつ円滑に船外機KのモータM(駆動源)を制御することができる。
【0043】
また、操作用グリップGと共に回転する磁石4が当該操作用グリップG内に配設されるとともに、検出センサ6は、当該磁石4の磁界変化に応じた電気信号を発生して操作用グリップGの回転角度を検出可能とされた角度センサから成るので、操作用グリップGの回転角度をより精度よく且つ安定して検出することができる。さらに、磁石4及び検出センサ6は、操舵ハンドルHを構成するパイプ体又は当該操舵ハンドルHの先端に連結されるパイプ体A内に配設されたので、外部から付与された衝撃から磁石4及び検出センサ6を保護することができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0044】
また、操作ボタン11(操作手段)は、操作用グリップGの先端部に配設され、マイクロスイッチ10(操作スイッチ)は、当該操作用グリップGの基端側に配設されるとともに、これら操作ボタン11及びマイクロスイッチ10の間には、当該操作ボタン11に対する操作をマイクロスイッチ10に伝達するための伝達部材12が配設されたので、検出センサ6等で構成される回転角度検出機構が操作用グリップG内に配設されていても、操作用グリップGの回転角度を確実に検出することができ、かつ、操作ボタン11の操作をマイクロスイッチ10に確実に伝達させることができる。
【0045】
すなわち、操作ボタン11側にマイクロスイッチ10等の操作スイッチを形成した場合、回転角度検出機構の配設部位に、当該操作スイッチからの配線を延設させる必要があることから、検出センサ6の配設箇所や磁石4の形状及び大きさが制限される可能性があるのに対し、本実施形態によれば、任意の伝達部材12にて操作ボタン11の操作をマイクロスイッチ10に確実に伝達させることができ、かつ、検出センサ6の配設箇所や磁石4の形状及び大きさが制限されてしまうのを抑制することができるのである。
【0046】
特に、本実施形態によれば、伝達部材12は、操作ボタン11(操作手段)からマイクロスイッチ10(操作スイッチ)側まで延設された板状部材から成るので、より一層、操作ボタン11の操作をマイクロスイッチ10に確実に伝達させることができ、かつ、検出センサ6の配設箇所や磁石4の形状及び大きさが制限されてしまうのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る操作手段は、操作用グリップGを把持しつつ押圧操作が可能な操作ボタン11から成るとともに、伝達部材12の先端側に円環状部材9を連結させ、当該円環状部材9を介して操作ボタン11の押圧操作をマイクロスイッチ10(操作スイッチ)に伝達させるよう構成されているので、操作ボタン11及び伝達部材12が操作用グリップGと共に回転する構成であっても、円環状部材9が常にマイクロスイッチ10の作動部10aを押圧可能とすることができ、より確実に操作ボタン11の押圧操作をマイクロスイッチ10に伝達させることができる。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、操作ボタン11の如き操作手段が配設されないものとしてもよい。また、操作ボタン11に代えて揺動式又はスライド式の操作ノブとしてもよい。またさらに、本実施形態においては、嵌合凹部8a及び嵌合凸部5aから成る節度付与手段8が配設されているが、他の形態の節度付与手段を具備したものとしてもよい。
【0054】
なお、本実施形態においては、配線Tにて電気信号が送信されるものとされているが、光信号等の他の形態の検出信号を送信し得るものとしてもよい。また、本実施形態においては、船外機Kの駆動源がモータMとされているが、エンジン等の他の駆動源を搭載した船外機に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
操作用グリップが中立位置から一方向に回転操作されると船舶を前進させ、当該中立位置から他方向に回転操作されると船舶を後進させ得るとともに、当該操作用グリップが中立位置から一方向又は他方向に回動操作される際、節度を付与する節度付与部材と、操作用グリップが中立位置にあるとき、当該操作用グリップを係止してその回転を規制するとともに、操作用グリップを把持しつつ操作可能な操作手段にて操作されることにより、操作用グリップに対する係止が解除されて当該操作用グリップの一方向又は他方向の回転を許容する係止部材とを具備した操作装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 操作装置
2 連動部材
3 回転部材
4 磁石
5 固定部材
5a 嵌合凸部
6 検出センサ
7 バネ受板
8 節度付与部材
8a 嵌合凹部
9 円環状部材
10 マイクロスイッチ(操作スイッチ)
11 操作ボタン(操作手段)
12 伝達部材
13 係止部材
14 保持部
15 収容ケース
16 スプリングピン
17 操作ボタン(操作手段)
18 固定接点
A パイプ体
C 固定ケース
T 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11