(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記(1)と(2)の段階を含むコア−シェルコポリマーの製造方法:
(1)粒子の懸濁液を形成するコア−シェル型のコポリマーのコアを製造する段階であって、
上記コアは架橋したエラストマーのコアであり、この架橋したエラストマーのコアは、ラジカル重合開始剤と下記式(I)に対応する硫黄含有添加剤との存在下で、少なくとも一種のエチレンエラストマーモノマーと架橋剤とをラジカル乳化重合して作られ:
【化1】
[ここで、
Rは−CH
2R
1,−CHR
1R
'1および−CR
1R
'1R
''1の中から選択され、(ここで、R
1、R
'1およびR
''1は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基、飽和または不飽和の芳香族であってもよい炭素環式基または複素環式基の中から選択される置換されていてもよい基を表し、この基は置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいジアルキルアミノ基、有機金属基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基およびこれらの塩、カルボン酸エステル基、スルホン酸基およびこれらの塩、スルホン酸エステル基、アルコキシ−またはアリールオキシカルボニル基およびポリマー基にすることができ、
ZはH、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい−SR
2基、置換されていてもよいアルコキシルカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基COOH、アシルオキシ基OCOR
2、置換されていてもよいカルバモイル基(式CONHR
2またはCONR
2R
3)、シアノ基CN、P(=O)OR
22基、P(=O)R
22基、ポリマー基、OR
2基およびNR
2R
3基の中から選択され、
R
2およびR
3は互いに同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
18アルキル基、C
2〜C
18アルケニル基、C
6〜C
18アリール基、複素環式基、アラルキル基およびアルカリル基から成る群の中から選択され、これらの基はそれぞれエポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基およびこれらの塩、カルボン酸エステル基、スルホン酸基およびその塩、スルホン酸エステル基、アルコキシ−またはアリールオキシ−カルボニル基、イソシアネート基、シアノ基、シリル基、ハロゲン基またはジアルキルアミノ基の中から選択される少なくとも一種の置換基によって置換されていてもよい]
上記硫黄含有添加剤は重合段階で100部のモノマーに対して0.005重量部〜5重量部の含有量で存在し、
(2)前段階で得られたコアを、シェルの形成に関与する少なくとも一種のモノマーと接触させてシェルを製造する段階。
エラストマーモノマーがイソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
連鎖移動剤が、ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンおよびt−ドデシルメルカプタンの中から選択される少なくとも4つの炭素原子を含むメルカプタン化合物である請求項9に記載の方法。
シェルの形成に関与するモノマーが、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、アクリロニトリルおよびこれらの混合物の中から選択される請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記定義のR基は、フリーラジカルによって重合を開始するラジカルR
・の形で遊離される。
【0013】
硫黄含有添加剤としては特にジチオエステル(少なくとも一つの−C(=S)S−基を含む化合物)、ジチオカーボネートまたはキサンテート(少なくとも一つの−O−C(=S)S−基を含む化合物)、ジチオカルバメート(少なくとも一つの−N−C(=S)S−基を含む化合物)およびトリチオカーボネート(少なくとも一つの−S−C(=S)S−基を含む化合物)が挙げられる。
【0014】
本発明者達は、重合媒体中の上記定義の硫黄含有添加剤を提供することによって、このような添加剤を含まない重合媒体中で得られる平均粒径より小さい平均粒径を有する粒子(この粒子はコア−シェルコポリマーのコアを形成するためのものである)の懸濁液、特に平均粒径が50nm以下の粒子の懸濁液を得ることができるということを確認した。
【0015】
特定の理論に縛られるものではないが、粒径の減少は上記定義の硫黄含有添加剤が成長粒子にグラフトされ、それによってコロイドの安定性が向上し、粒径が減少することによると著者達は考える。
【0016】
全ての光散乱現象は極めて小さな粒径を用いることで阻止できる。従って、上記モノマーの重合によって得られる粒子に起因する屈折率を心配せずに、エラストマーモノマーの大きなパネルを用いてコアを形成することができる。
【0017】
本発明方法はラジカル乳化重合の周知な原理に基づいているので実施が容易な方法である。この方法は工業的環境で容易に実施でき、高収率である。
【0018】
式(I)の硫黄含有添加剤の詳細な説明に入る前に、下記の定義を示すのが適切である。
【0019】
「アルキル基」とは一般に1〜18の炭素原子を含むことができる直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0020】
「アルキルチオ基」とは一般に−S−アルキル基を意味し、アルキルは上記と同じ定義に対応させることができ、残りの分子への結合は硫黄原子を介して起こる。
【0021】
「アルコキシ基」とは一般に−O−アルキル基を意味し、アルキルは上記と同じ定義に対応させることができ、残りの分子への結合は酸素原子を介して起こる。
【0022】
「カルボン酸エステル基」とは一般にカルボキシル基−COOH(ここで、−OH基は炭化水素基で置換されている)で得られる基を意味する。
【0023】
「スルホン酸エステル基」とは一般にスルホン酸基−SO
3H(ここで、−OH基は炭化水素基で置換されている)で得られる基を意味する。
「ポリマー基」とは一般に一種以上のモノマーの重合で得られる一連の反復単位を含む基を意味する。この場合は、全ての重合機構を用いることができる。
【0024】
「アラルキル基」とは一般に少なくとも一種のアルキレン基で置換されたアリール基を意味する。このアルキレン基はアリール基と残りの分子との間を架橋する。アラルキル基の例はベンジル基である。
【0025】
「アルカリル基」とは一般に少なくとも一種のアルキル基で置換されたアリール基を意味する。残りの分子への結合はアリール基を介して起こる。アルカリル基の例はトリル基である。
【0026】
式(I)に定義された基の一部は置換されていてもよく、その置換基は一般にエポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基。アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基(およびこれらの塩)、カルボン酸エステル基、−SO
3H(およびこれらの塩)、スルホン酸エステル基、アルコキシ−およびアリールオキシカルボニル基、イソシアネート基、シアノ基、シリル基、ハロゲン基およびジアルキルアミノ基の中から選択できる。
【0027】
本発明で有利に使用可能な硫黄含有添加剤は下記式(II)に対応する添加剤である:
【化2】
【0028】
(ここで、R
1およびR
2は上記と同じ定義に対応する)
特に、R
1はアリール基、例えばフェニル基に対応でき、R
2はアラルキル基、例えばベンジル基に対応できる。
特に有利な硫黄含有添加剤は下記式(III)に対応するジベンジルトリチオカーボネート(DBTTC)である:
【化3】
【0029】
用いる硫黄含有添加剤はDBTTC(CAS番号26505−29−0)であるのが好ましい。
本発明で使用可能な硫黄含有添加剤は式(I)の添加剤にすることができ、その場合、式(I)のRは−CHR
1R
'1基であり、R
1はアルキル基、例えばメチル基を表し、R
'1はカルボキシル基であり、Zは−SR
2基を表す(ここで、R
2はカルボキシル基で置換されたアルキル基、例えばカルボキシプロプ−2−イル基を表す)。
【0030】
上記定義に対応する硫黄含有添加剤は下記式(IV)に対応するジプロピルトリチオカーボネート(DPTTC)(CAS番号6332−91−8)またはその塩、特にナトリウム塩(CAS番号86470−33−2)である:
【化4】
【0031】
硫黄含有添加剤は、重合段階で100部のモノマーに対して0.005重量部〜5重量部の含有量、好ましくは100部のモノマーに対して0.01〜2重量部の含有量で導入するのが有利である。
【0032】
本発明方法で重合可能なエラストマーエチレンモノマーは当業者に周知の任意のタイプにすることができる。上記モノマーの重合で得られるポリマーは一般にガラス転移温度(Tg)が周囲温度以下、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下であることは理解できよう。本発明の有利な実施例では、モノマーはイソプレン、ブタジエン(例えば1,4−ブタジエン)、スチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物の中から選択できる。モノマーの混合物の例としては、スチレン/アルキルアクリレート、スチレン/アルキルメタクリレートまたはスチレン/ブタジエン混合物を使用できる。
【0033】
特に、エラストマーモノマーはアルキルアクリレート、例えばn−ブチルアクリレートにすることができる。
架橋剤は一般に、少なくとも2種のエチレン官能基を含むモノマーである。架橋剤はビニル、アリル、アクリルまたはメタクリル官能基およびこれらの混合物の中から選択されるエチレン官能基を含むのが好ましい。特に、架橋剤はジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、CH
2=C(CH
3)COOCH
2CH=CH
2、ビニルメタクリレートCH
2=C(CH
3)COOCH2CH
2、ポリオールのポリ(メタ)アクリルエステル、例えばブタジエンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、PEGジアクリレート(PEGはポリエチレングリコールを意味する)、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよびこれらの混合物にすることができる。
【0034】
エラストマーモノマーがアルキル(メタ)アクリレートである場合、架橋剤をアリルメタクリレートに対応させるのが有利である。
架橋剤は重合媒体中に一種以上のモノマー100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは一種以上のモノマー100重量部に対して0.1〜2重量部の比率で含むのが有利である。
本発明の重合開始剤はモノマーと反応させることによってフリーラジカルを発生できるラジカル重合開始剤であり、このフリーラジカルから重合反応が伝播する。
【0035】
このラジカル重合開始剤は任意タイプ、例えば下記タイプにすることができる:
アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、
有機過酸化物、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドまたはラウロイルペルオキシド、
過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウム。
【0036】
重合開始剤はモノマーがn−ブチルアクリレートのときは過硫酸塩、例えば過硫酸カリウムにすることができる。
【0037】
ラジカル乳化重合段階は少なくとも一種の界面活性剤および任意成分としての少なくとも一種の連鎖移動剤の存在下で行うのが有利である。連鎖移動剤は重合段階で作られた鎖の分子量を調節できる。
【0038】
使用可能な界面活性剤としては下記が挙げられる:陰イオン界面活性剤、例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、リン酸アルキル塩またはスルホコハク酸ジエステル塩、非イオン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレン脂肪酸エステル、陽イオン界面活性剤、例えばハロゲン化第4級アルキル−および/またはアリールアンモニウム、または両性イオンまたは両性界面活性剤、例えばベタイン基を含む界面活性剤。
【0039】
連鎖移動剤としては、少なくとも4つの炭素原子を含むメルカプタン化合物、例えばブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンまたはt−ドデシルメルカプタンが挙げられるのが有利である。
本発明では一般に乳化重合段階を水性分散媒体中で行う。
このような分散媒体を用いて操作する利点は、プロセスがクリーンプロセスである点にあり、この利点は工業的環境で特に有利である。
【0040】
実用的な観点から、ラジカル乳化重合段階は下記のように行うことができる:
(1)表面活性剤と分散媒体(この分散媒体は水であるのが好ましい)を接触させて第1の混合物を調製する段階、
(2)上記エチレンエラストマーモノマーと上記架橋剤を、上記硫黄含有添加剤の存在下で、必要に応じてさらに連鎖移動剤の存在下で接触させて第2の混合物を調製する段階、
(3)第1混合物と第2混合物を接触させる段階;第2混合物を第1混合物中にバッチ式で(すなわち、遅延のない単一段階で)導入することができる、あるいは、半連続的または連続的に導入することができる(この導入は、半連続方法では数分〜数時間にすることができる時間をかける段階で、または、数分〜数時間にすることができる時間をかける単一段階で行う)
(4)得られた混合物に重合開始剤を添加する段階;添加段階はバッチ式で(すなわち、遅延のない単一段階で)行うことができる、あるいは、半連続的または連続的に行うことができる(この導入は、半連続方法では数分〜数時間にすることができる時間をかける段階で、または、数分〜数時間にすることができる時間をかける単一段階で行う)
【0041】
下記は本発明の特定実施例である:
エチレンエラストマーモノマーはn−ブチルアクリレートである、
架橋剤はアリルメタクリレートである、
硫黄含有添加剤はジベンジルトリチオカーボネートである、
重合開始剤は過硫酸カリウム塩である。
【0042】
本発明方法の目的はコア−シェル型のコポリマーのコアを製造することにある。すなわち、本発明の対象はコア粒子の平均粒径が50nm以下、好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下である上記定義の方法で得られるコア−シェルコポリマーにある。
コアの製造方法はコア−シェルコポリマーの製造の一環である段階を含む。従って、本発明の別の対象は下記の段階を含むコア−シェルコポリマーの製造方法にある:
上記定義のコア−シェルコポリマーのコアの製造方法を実施する段階、
前段階で得られたコアを、シェルの形成に関与する少なくとも一種のモノマーと接触させることによってシェルを製造する段階。
【0043】
シェルの形成で使用するモノマーは任意タイプにすることができるが、特に、モノマーの重合で得られるポリマーのガラス転移温度(Tg)が周囲温度以上であり、且つ、得られたモノマーが、コア−シェルコポリマーが混和されるマトリックスと相溶性があるように選択される。「周囲温度以上のTg」とは、Tgが25℃以上、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜140℃のポリマーまたはコポリマーを意味する。アルキル(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、アクリロニトリルおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、シェルはポリメチルメタクリレート、ポリスチレンまたはメチルメタクリレート/スチレンコポリマーで作ることができる。特に、シェルの形成に関与するモノマーはメチルメタクリレートにすることができる。
【0044】
実際の観点から、シェルの製造段階は下記のように行うことができる:
(1)予め形成されたコアに、シェルの形成に関与するモノマーまたは予め調製されたこれらのモノマーの混合物を添加する段階;この添加はバッチ式で(すなわち、遅延のない単一段階で)行うことができる、あるいは、半連続的または連続的に行うことができる(この導入は、半連続方法では数分〜数時間にすることができる時間をかける段階で、または、数分〜数時間にすることができる時間をかける単一段階で行う)、
(2)この添加段階と同時にまたはこれに続いて、上記のバッチ式法または半連続法または連続法に従って重合開始剤を導入する段階。
【0045】
上記方法は、シェルの製造段階の終了時に、ラテックスの回収で一般的な技術(例えば噴霧化または凝固)によって、得られたコア−シェルコポリマー粒子を回収し、粉末を回収する段階を含む。このコア−シェルコポリマーは、平均粒径が60nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下であるコア−シェル粒子の懸濁液を形成する。
【0046】
既に述べたように、上記硫黄含有添加剤の使用によってコア粒子の平均粒径が50nm以下で、コア−シェル粒子の平均粒径が60nm以下であるコア−シェルコポリマーの形成に関与する懸濁液中のポリマーコアを得ることができる。
【0047】
すなわち、本発明の対象は、コアの粒子の平均粒径が50nm以下になるように、エチレンエラストマーモノマーと架橋剤とのラジカル乳化重合によってコア−シェルコポリマーを形成するのに関与するコア粒子の製造での、上記定義の硫黄含有添加剤の使用にある。
【0048】
粒径分布測定に用いられる装置は、5〜3000nm範囲で運転される「Zetasizer 5000」(Malvern Instruments Ltd)である。この装置で用いられる技術は光子相関分光法(略語PCS、ISO 13321規格)である。
【0049】
メジアンは分布を面積が等しい2つの部分に分ける径で、D
50で示される。体積による分布の場合、粒子の全体積の50%はD
50以下の径を有する粒子の体積に対応するといえる。数による分布の場合、粒子の50%はD
50以下の径を有するといえる。「D
50平均粒径」または「平均粒径」とは粒子の50重量%がこの直径以下の径を有することを意味する。
【0050】
粒子の形をした上記コア−シェルコポリマーはポリマーマトリックスに混和することを目的としている。コア−シェル粒子の径が小さく、特にコアの寸法、シェルはマトリックスと相溶性があるため、一般にマトリックス中に分散されるので、上記コポリマーの効果は、ポリマーマトリックスの変形の主要な機構が剪断降伏として知られる塑性流動機構であるときは、これによって発生する応力場の被覆によって一層大きくなる。
【0051】
すなわち、本発明方法で得られるコア−シェルコポリマーは、ポリマーマトリックスの形成に関与する衝撃改質剤として使用できる。このコポリマーのさらに顕著な特徴は、このコポリマーを含むマトリックスの光透明性が保護されることである。ポリマーマトリックス熱可塑性または熱硬化性にすることができる。このコア−シェルコポリマーはポリマーマトリックス中に、マトリックスの重量に対して1〜50重量%、好ましくは2〜20重量%の比率で含むことができる。
【0052】
本発明では、熱可塑性マトリックスはポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー)、ASA(アクリレート/スチレン/アクリロニトリルコポリマー)、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリカーボネート/ABS、ポリカーボネート/ASAまたはこれらの混合物をベースにしたマトリックスにすることができる。特に、上記コア−シェルコポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステルまたはエポキシ樹脂から成るマトリックスに特に適している。
【0053】
「衝撃改質剤」とは、混和されたポリマーマトリックスの衝撃特性および/または衝撃強度特性および/または強度特性を衝撃改質剤が高めることができる添加剤を意味するものとする。
本発明の別の対象は、上記定義の少なくとも一種のコア−シェルコポリマーを含むポリマーマトリックスにある。このマトリックスは上記定義の熱可塑性マトリックスにすることができる。
【0054】
本発明の別の対象は、上記定義のポリマーマトリックスを含む製品にある。この製品は射出成形、成形、押出または押出ブロー成形によって製造できる。製品の例としては建設資材、例えば窓部分または日用品の包装材料、コンピュータまたは電話ケーシングが挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
実施例1(比較例)
0.24gのNaHCO
3(pH緩衝液の役目をする)と、10.14gの界面活性剤SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)と、485gの蒸留水とを含む溶液を調製する。混合物を撹拌および加熱する(最大で約50℃、界面活性剤が完全に溶けるまで)。
同時に、0.11gの連鎖移動剤であるt−ドデシルメルカプタン(TDM)と、220gのn−ブチルアクリレートと、1.33gのアリルメタクリレートとを含む混合物を調製する。
2つの上記混合物を150回転/分および65℃で撹拌しながら、予め真空下に配置した1リットル容のジャケット付き反応器に導入する。
この媒体を真空下に、次いで窒素下にして反応器の雰囲気を不活性にするサイクルを3サイクル行って脱酸素化し、次いで、この媒体を65℃で真空下に放置した後、開始剤を導入する。
重合開始剤である過硫酸カリウムを15gの水に0.22gの比率で含む溶液を調製する。
【0056】
得られた溶液を窒素フラッシング下でエアロックに導入し、次いで、窒素圧によって反応器に注入する。エアロックを40gの水で窒素下に洗浄し、この洗浄水も反応器に注入する。
反応器の圧力は窒素を用いて1.5バールに調節する。この瞬間を次いで、重合開始時間T=0とみなす。変換後に、抜き出したサンプルを直ぐに氷で冷却し、140℃の熱天秤(Mettler Toledo HB43)を用いて固体含有量によってモニターする。
3時間後に重合を停止する。抜き出したサンプルを100℃の換気オーブン内で一晩乾燥させる。
最終ラテックスの粒径分布は、測定セル中に必要な濃度をラテックスの希釈によって調整した後に、Zetasizer 5000装置を用いて測定する。
3時間の重合後に得られた結果は以下の通り:
【表1】
【0057】
固体の量は、3時間の重合後の重合媒体の全重量に対する固体材料の重量パーセンテージに対応する。この量は熱天秤を用いて測定する。
量D
50は、粒子の50重量%が表に示す径以下である寸法を有するような径に対応する。
コアが得られたら、シェルを合成する。そのために、上記の得られたコアラテックスを、150回転/分で撹拌しながら、予め真空下に配置した1リットル容のジャケット付き反応器に導入する。
この媒体を、真空下に、次いで窒素下に配置して反応器の雰囲気を不活性にするサイクルを3サイクル行って脱酸素化し、次いで、この媒体を真空下に放置した後、反応媒体を80℃に加熱する。
88gのメチルメタクリレートをポンプを用いて導入する。
反応器内の温度が80℃に戻ったら、開始剤の溶液(0.088gの過硫酸カリウムを15gの水に溶かしたもの)を導入する。温度を80℃に1時間維持し、次いで、反応媒体を冷却する。
衝撃改質剤として用いるために、一般的な方法(噴霧化、凝固/濾過/乾燥)によって乾燥粉末の形でコア−シェルコポリマーを回収する。
【0058】
実施例1
0.24gのNaHCO
3(緩衝液の役目をする)と、8.77gの界面活性剤SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)と、485gの蒸留水とを含む溶液を調製する。混合物を撹拌および加熱する(最大で約50℃、界面活性剤が完全に溶けるまで)。
同時に、0.10g、すなわち、(n−ブチルアクリレート+アリルメタクリレート)モノマーの重量に対して0.05重量%)の連鎖移動剤であるt−ドデシルメルカプタン(TDM)と、0.36g、すなわち、(n−ブチルアクリレート+アリルメタクリレート)モノマーの重量に対して0.18重量%)の硫黄含有剤である下記式(III)のジベンジルトリチオカーボネート(DBTTC):
【化5】
【0059】
と、n−ブチルアクリレートとアリルメタクリレートとをそれぞれ99.4/0.6の比率で含む200gの混合物とを含む混合物を調製する。
2つの上記混合物を、150回転/分および65℃で撹拌しながら、予め真空下に配置した1リットル容のジャケット付き反応器に導入する。
この媒体を、真空下に次いで窒素下に配置して反応器の雰囲気を不活性にするサイクルを3サイクル行って脱酸素化し、次いで、この媒体を65℃で真空下に放置した後、開始剤を導入する。
重合開始剤である過硫酸カリウムを15gの水に0.2gの比率で含む溶液を調製する。
【0060】
得られた溶液を窒素フラッシング下でエアロック(反応器に接続された小さな容器に対応する)に導入し、次いで、窒素圧によって反応器に注入する。エアロックを40gの水で依然として窒素下に洗浄し、この洗浄水も反応器に注入する。
反応器の圧力は窒素を用いて1.5バールに調節する。この瞬間を次いで、重合開始時間T=0とみなす。変換後に、抜き出したサンプルを直ぐに氷で冷却し、140℃の熱天秤(Mettler Toledo HB43)を用いて固体含有量によってモニターする。
3時間後に重合を停止する。抜き出したサンプルを100℃の換気オーブン内で一晩乾燥させる。
最終ラテックスの粒径分布は、測定セル中に必要な濃度をラテックスの希釈によって調整した後に、Zetasizer 5000装置を用いて測定する。
3時間の重合後に得られた結果は以下の通り:
【表2】
【0061】
硫黄含有剤の存在下では量D
50の大きな減少が見られる。
コアが得られたら、シェルを合成する。そのために、上記の得られたコアラテックスを、150回転/分で撹拌しながら、予め真空下に配置した1リットル容のジャケット付き反応器に導入する。
この媒体を、真空下に次いで窒素下に配置して反応器の雰囲気を不活性にするサイクルを3サイクル行って脱酸素化し、次いで、この媒体を真空下に放置した後、反応媒体を80℃に加熱する。
88gのメチルメタクリレートをポンプを用いて導入する。
反応器内の温度が80℃に戻ったら、開始剤の溶液(0.088gの過硫酸カリウムを15gの水に溶かしたもの)を導入する。温度を80℃に1時間維持し、次いで、反応媒体を冷却する。
衝撃改質剤として用いるために、一般的な方法(噴霧化、凝固/濾過/乾燥)によって乾燥粉末の形でコア−シェルコポリマーを回収する。