特許第5886052号(P5886052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石福金属興業株式会社の特許一覧 ▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886052
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】殺菌水生成用電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/08 20060101AFI20160303BHJP
   C25B 11/04 20060101ALI20160303BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C25B11/08 Z
   C25B11/04 A
   C25B1/26 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-2341(P2012-2341)
(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-142166(P2013-142166A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 祐二
(72)【発明者】
【氏名】亀ケ谷 洋一
(72)【発明者】
【氏名】添田 博史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】梅本 歩
(72)【発明者】
【氏名】松下 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱北 明希
(72)【発明者】
【氏名】西山 修二
(72)【発明者】
【氏名】石井 克典
(72)【発明者】
【氏名】豊田 弘一
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−052069(JP,A)
【文献】 特開2007−239040(JP,A)
【文献】 特開平02−263989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/00 − 11/18
C25B 1/00 − 9/20
C25B 13/00 − 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に酸化チタンからなる中間層を介して電極触媒層を設けてなる、希薄塩水を電解し、殺菌水を生成するための電極であって、該電極触媒層が、金属換算で、白金4〜11モル%、酸化イリジウム37〜60モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル22〜53モル%の複合体からなることを特徴とする電解用電極。
【請求項2】
チタン又はチタン合金よりなる基体の表面に形成させた水素化チタン層を熱酸化により酸化チタンの中間層に変化させた後、該酸化チタンの中間層上に白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物を含有する溶液を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理して、金属換算で、白金4〜11モル%、酸化イリジウム37〜60モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル22〜53モル%の複合体からなる電極触媒層を形成することを特徴とする請求項1に記載の電解用電極の製造方法。
【請求項3】
チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に酸化チタンからなる中間層を介して電極触媒層を設けてなる電極を用いて、希薄塩水を電解し、殺菌水を生成せしめる方法において、電極として請求項1に記載の電解用電極を用い、電流密度6〜20A/dm2で電解することを特徴とする殺菌水の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水のような希薄塩水を直接電解し殺菌能力の高い電解水を生成せしめるのに有用な、比較的高い電流密度で一定時間毎に極性を切替える条件下において、消耗速度が小さく且つ安定性に優れた特性を有する電解用電極及びその製造方法ならびに該電極を用いて、比較的高い電流密度で電解し、殺菌水を生成せしめる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水のような希薄塩水を直接電解して、陽極に塩素を発生させ、この塩素と水の反応により生成する次亜塩素酸の殺菌性を利用して、例えば一般家庭の設備に機能を付帯させ、手、加湿用の水、風呂水、温水便座洗浄ノズル等を殺菌することは知られている。このような電解では、通常水道水が使用されるため、水道水中のカルシウムが電解時に陰極側で生成するOHと反応して、陰極表面に水酸化物として付着し、狭い極間を詰まらせてしまうことがある。この付着物を除去するために定期的に極性を切替えて使用すること、例えば、2枚以上の同様の電極を使用し、陽極としての使用と陰極としての使用を繰り返すことが一般的に行われている。
【0003】
水道水のような希薄塩水中で使用される電極としては、チタン及びチタン合金基体上に白金を電気めっきした電極が広く使用されており、この電極は、極性切替え時の安定性が高く、白金の消耗量が少ないが、塩素発生効率が低いため、電解水を殺菌用として使用する場合、所定の有効塩素濃度を得るために、水道水に食塩を添加し、塩素イオン濃度を高くしなければならず、装置の維持費が高くなるという問題がある。
【0004】
また、希薄な食塩水中で安定且つ高い塩素発生効率特性を得るため、導電性基体上に白金、酸化イリジウム、酸化ロジウム及び酸化タンタルの複合体からなる電極触媒層を形成させた電極が提案されている。(特許文献1参照)。この提案の電極は、白金めっき電極やそれまでの酸化イリジウム系電極と比較して、高い塩素発生効率特性を長期間維持することができるという利点があるものの、比較的高い電流密度で陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返すと、電極の消耗が大きく、電極寿命が短くなってしまい、電解槽の縮小化ができないという問題がある。
【0005】
一方、上記したように、一般家庭の設備、例えば、温水便座に殺菌水生成装置を取付けるには、塩を添加することなく、水道水を直接電解することにより所定の殺菌水濃度が得られること及び限られた空間に収めることが不可欠であり、電解槽の小型化が可能で、従来の電流密度(5A/dm以下)に比べて高電流密度化を可能にする高耐久性の電極の開発が強く要望されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−052069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水道水のような希薄塩水を比較的高い電流密度で陽極と陰極の極性切替えを繰返しながら電解を行う条件下でも、安定且つ高い塩素発生効率特性を有し、電解槽を小型化することができる高耐久性の電解用電極及びその製造方法ならびに該電解用電極を用いて、比較的高い電流密度で電解することにより、殺菌水を生成せしめる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、
1.チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に中間層を介して電極触媒層を設けてなる、希薄塩水を電解し、殺菌水を生成するための電極であって、該電極触媒層が、金属換算で、白金4〜11モル%、酸化イリジウム37〜60モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル22〜53モル%の複合体からなることを特徴とする電解用電極
2.チタン又はチタン合金よりなる基体の表面に形成させた水素化チタン層を熱酸化により酸化チタンの中間層に変化させた後、該酸化チタンの中間層上に白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物を含有する溶液を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理して、金属換算で、白金4〜11モル%、酸化イリジウム37〜60モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル22〜53モル%の複合体からなる電極触媒層を形成することを特徴とする上記1に記載の電解用電極の製造方法
3.チタン又はチタン合金よりなる電極基体上に中間層を介して電極触媒層を設けてなる電極を用いて、希薄塩水を電解し、殺菌水を生成せしめる方法において、電極として上記1に記載の電解用電極を用い、電流密度6〜20A/dmで電解することを特徴とする殺菌水の生成方法
により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電極は、水道水のような希薄塩水中で、比較的高い電流密度といった限られた電解条件下で、電極触媒層を構成する上記4つの成分の相互作用が高められる範囲を究明し、水道水のような希薄塩水を比較的高い電流密度(6A/dm以上)で陽極と陰極の極性切替えを繰返し行う電解条件下でも、電極触媒層を構成する4つの成分の相互作用により、電極触媒層が脱落することがなく、消耗が少なく電極寿命の著しい延長を図ることができるという優れた効果を奏する。加えて、本発明によれば、電極及び電解槽の小型化を可能にすることができるという優れた効果を奏する。
【0010】
以下、本発明の電極及びその製造法についてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に使用される電極基体の材質としては、チタンまたはチタン基合金が挙げられる。チタン合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金を使用することができる。例えば、Ti−Ta−Nb、Ti−Pd、Ti−Zr、Ti−Al等の組み合わせからなる、通常電極材料として使用されているTi基合金が挙げられる。これらの電極材料は板状、有孔板状、棒状、網板状等の所望形状に加工して電極基材として用いることができる。
【0012】
上記の如き電極基体には、通常行われているように、予め前処理するのが望ましい。そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず、前述したチタン又はチタン基合金よりなる電極基体(以下、チタン基体という)表面を、常法に従い、例えば、アルコール等で洗浄し及び/又はアルカリ溶液中での電解により脱脂した後、フッ化水素濃度が1〜20重量%のフッ化水素酸又はフッ化水素酸と硝酸、硫酸等の他の酸との混酸で処理することにより、チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は、チタン基体の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。なお、粗面化を十分行うためにブラスト処理を併用してもよい。
【0013】
このように酸処理されたチタン基体表面を熱濃硫酸と接触させて、該チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに、該チタン基体表面に水素化チタンの薄い層
を形成せしめる。使用する濃硫酸は一般に40〜80重量%、好ましくは50〜60重量%の濃度を有するものが適しており、濃硫酸には、必要により、処理の安定化を図る目的で、少量の硫酸塩等を添加してもよい。該熱濃硫酸との接触は、通常、チタン基体を濃硫酸の浴中に浸漬することにより行うことができ、その際の浴温は一般に約100〜約150℃、好ましくは約110〜約130℃の範囲内の温度とすることができ、また、浸漬時間は通常約0.5〜約10分間、好ましくは約1分〜約3分間で十分である。この熱濃硫酸処理により、チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに、チタン基体の表面にごく薄い水素化チタンの被膜を形成せしめることができる。熱濃硫酸処理されたチタン基体は、硫酸槽から取り出し、好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で急冷して、チタン基体の表面温度を約60℃以下に低下させる。この急冷には洗浄も兼ねて大量の冷水を用いるのが適当である。
【0014】
以上の如くして前処理されたチタン基体は、大気中で焼成することにより水素化チタンの被膜層を熱分解して、該層中の水素化チタンを実質的にほとんどチタン金属に戻し、さらにチタン基体表面近傍のチタンを低酸化状態の酸化チタンに変えることができる。この焼成は一般に約300〜約600℃、好ましくは約300〜約400℃の温度で約10分〜4時間程度加熱することにより行うことができる。これにより、チタン基体表面にごく薄い導電性の酸化チタン層が形成される。この酸化チタン層の厚さは一般に100〜1、000オングストローム、好ましくは200〜600オングストロームの範囲内にあるものが好適であり、また、酸化チタンの組成はTiOxとしてxが一般に1<x<2、特に1.9<x<2の範囲内にあるのが望ましい。また別法として、前処理を行ったチタン基体は、上記の如き焼成処理を行わずに直接次の工程に付してもよい。この場合には、次工程での熱分解処理時にチタン基体表面の水素化チタンの被膜の層は、チタン金属及び低酸化状態の酸化チタンに変換される。
【0015】
しかる後、このようにして焼成されたチタン基体上の酸化チタン面を、金属換算で、白金4〜11モル%、酸化イリジウム37〜60モル%、酸化ロジウム3〜11モル%及び酸化タンタル22〜53モル%からなる複合体で被覆する。
【0016】
該複合体を形成するために使用される白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物としては、以下に述べる条件下で分解して、それぞれ、白金、酸化イリジウム、酸化ロジウム及び酸化タンタルに転化しうる化合物が包含され、具体的には、白金化合物としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金等が挙げられ、特に塩化白金酸が好適である。また、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、硝酸イリジウム等が挙げられ、特に塩化イリジウム酸が好適である。さらに、ロジウム化合物としては、例えば、塩化ロジウム、硝酸ロジウム等が挙げられ、特に塩化ロジウムが好適である。タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられ、特にタンタルエトキシドが好適である。
【0017】
これら白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物は溶媒に溶解して、溶液状でチタン基体上の酸化チタン層に塗布することができる。
【0018】
これら白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物を溶解して溶液を調製するための溶媒としては低級アルコールが好適である。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等又はこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
低級アルコール溶液中における白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物の合計の濃度は、合計金属濃度換算で、一般に20〜200g/L、好ましくは40〜150g/Lの範囲内とすることができる。該金属濃度が20g/Lより低いと、触媒担持効率が悪くなり、また、200g/Lを超えると、触媒活性、担持強度、担
持量の不均一性等の問題が生ずる可能性がある。また、白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物の相対的使用割合は、金属換算で、白金化合物は一般に4〜11モル%、好ましくは5〜10モル%、イリジウム化合物は一般に37〜60モル%、好ましくは42〜50モル%、ロジウム化合物は一般に3〜11モル%、好ましくは4〜9モル%、そしてタンタル化合物は一般に22〜53モル%、好ましくは35〜53モル%の範囲内とすることができる。
【0020】
チタン基体上の酸化チタン層に白金化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物及びタンタル化合物を含む溶液が塗布された基体は、必要により、約20〜約150℃の範囲内の温度で乾燥させた後、酸素含有ガス雰囲気中、例えば空気中で焼成される。焼成は、例えば、電気炉、ガス炉、赤外線炉等の適当な加熱炉中で、一般に約450℃〜約600℃、好ましくは約500〜約550℃の範囲内の温度に加熱することによって行うことができる。加熱時間は、焼成すべき基体の大きさに等に応じて、大体5分間〜30分間程度とすることができる。この焼成により、該酸化チタン層の表面に白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体を形成担持させることができる。1回の担持操作で十分量の白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体を担持することができない場合には、以上に述べた溶液の塗布−乾燥−焼成の工程を所望の回数繰り返し行うことができる。
【0021】
ここで、「白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体」とは、白金と酸化イリジウムと酸化ロジウムと酸化タンタルの4成分が相互作用を及ぼすように混合又は緊密に接触した状態にある組成物をいう。
【0022】
該酸化チタン層上に担持させる白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体における各成分の割合は、金属換算で、白金4〜11モル%、好ましくは5〜10%、酸化イリジウム37〜60モル%、好ましくは42〜50%、酸化ロジウム3〜11モル%、好ましくは4〜9%及び酸化タンタル22〜53モル%、好ましくは35〜53%の範囲内とすることができる。複合体中の白金の割合が4モル%未満では塩素発生効率の低下が大きくなり、反対に11モル%を超えると触媒の消耗が大きくなり、電極寿命が短くなる。また、酸化イリジウムの割合が37モル%未満では塩素発生効率の低下が大きくなり、反対に60モル%を超えると触媒の消耗が大きくなり、電極寿命が短くなる。更に、酸化ロジウムの割合が3モル%未満では塩素発生効率の低下が大きくなり、他方11モル%を超えると触媒の消耗が大きくなり、電極寿命が短くなる。更にまた、酸化タンタルの割合が22モル%未満では触媒の消耗が大きくなり、電極寿命が短くなり、他方53モル%を超えると塩素発生効率の低下が大きくなる。
【0023】
このようにして製造される本発明の電解用電極は、水道水のような希薄塩水を比較的高い電流密度6A/dm以上で陽極と陰極の極性切替えを繰返し行う電解条件下でも、触媒の消耗量が少なく耐久性に優れており、電極及び電解槽の小型化を可能にすることができるという優れた効果を奏する。なお、電流密度を高くしていくと、電極寿命は反比例的に減少するので、実用的な電極寿命を考慮すると、電流密度は6A/dmから20A/dmの範囲内にするのが好ましい。
【実施例】
【0024】
JIS1種相当のチタン板素材(t0.5mm×w100mm×l100mm)をアルコール洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間、そして120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いで、チタン基体を硫酸水溶液から取り出し、冷水を噴霧し急冷した。さらに、20℃の0.3重量%フッ化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。水洗後、400℃の大気中で1時間加熱処理して、チタン基体表面に薄い酸化チタンの中間層を形成させた。
【0025】
次いで、ロジウム濃度100g/Lに調整した塩化ロジウムのブタノール溶液とイリジウム濃度200g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液とタンタル濃度200g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液と白金濃度200g/Lに調整した塩化白金酸のブタノール溶液をPt−Ir−Rh−Taの組成比が下記表−1に示すモル%となるようにそれぞれ秤量し、次いでIrの金属換算濃度が50g/Lとなるようにブタノールにて希釈し、表−1に示す実施例1〜5及び比較例1〜3の塗布液を調製した。
【0026】
この溶液をピペットで0.27ml秤量し、それを該酸化チタンの中間層に塗布した後、室温で20分間乾燥し、さらに550℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を6回繰返し、該酸化チタンの中間層上に白金−酸化イリジウム−酸化ロジウム−酸化タンタル複合体が担持された表−1に示す実施例電極1〜5及び比較例電極1〜3を作製した。
【0027】
このようにして得られた電極を、室温、水道水中にて15A/dmで60秒間電解した後、極性を切替えて−15A/dmで60秒間電解する操作を繰返す電解を100時間行い、極性切替え頻度を多くして被覆物を加速的に消耗させた。電解後の各電極の塩素発生効率を、標準水(Na2+=5.75ppm、Ca2+=10.02ppm、Mg2+=6.08ppm、K=0.98ppm、Cl=17.75ppm、SO2−=24.5ppm、CO=16.5ppm)150ml中で12クーロン(0.5A,24sec)電解し、ヨウ素法により求めた。電解後の消耗量と塩素発生効率を表−1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表−1に示すとおり、比較例電極の消耗量は、いずれも多く、100時間の電解で48〜68%の電極触媒が消耗してしまっていた。一方、実施例電極の消耗量は、いずれも20%以下と小さく、特に電流密度が高い上記電解条件下での消耗速度が小さく、安定性に優れた特性を有している。
【0030】
また、実施例電極の塩素発生効率は、比較例電極1及び2とほぼ同じで、高い値を有している。