【実施例1】
【0017】
先ず、
図14に、本発明が適用される液晶表示装置の等化回路の一例を示す。基板102上に走査線104と信号線103がマトリクス状に配線され、走査線104と信号線103の各交点にはTFT(Thin Film Transistor )素子110を介して画素106が接続されている。走査線104と信号線103には、それぞれ走査駆動回路108および信号駆動回路107が接続され、走査線104および信号線103に電圧を印加する。基板102上には信号線103に平行にコモン線105を配設し、全ての画素にコモン電圧発生回路109からコモン電圧を印加できるようになっている。基板102と基板101との間には液晶組成物が封入されており、全体として液晶表示装置を構成している。
【0018】
図1に本発明の実施例1に係わる1画素の平面構造を示し、
図2には
図1の6画素分の平面構造を示す。また、
図3、
図4(
図5)、
図6(
図7)、
図8は、
図1のそれぞれA−A’面、B−B’面、C−C’面、D−D’面で切った断面構造である。
図1に示すように、本発明の画素の平面構造は、画素の中央部(A−A’面)と端部で異なる断面構造を持つ。なお、以下に記載の平面構造の図面は液晶層から見た電極についての構造である。
【0019】
まず、画素の中央部であるA−A’面について説明する。
図3に示すように、A−A’面の断面構造は、画素両端に配置した大きい壁構造(以下、大きい壁14とい
う)を備え、この大きい壁14の側面を電極で覆った壁状電極211と、壁状電極が基板に接する面から平面方向に伸びた平面電極212を形成する。この壁状電極と平面電極が電気的に繋がっており、壁状電極211と平面電極212を併せて壁電極21という。画素境界の大きい壁構造の間には大きい壁構造よりも高さが低い壁構造(以下、小さい壁15という。)を設ける。この小さい壁15を覆うようにコモン電極が形成され(以下、TFT側電極16とい
う)、同時に小さい壁15の基板に接する面から平面方向にコモン電極(以下、保持容量電極17とい
う)が形成される。
TFT側電極16は、小さい壁15の上面に形成されており、TFT側電極16と連続して、小さい壁の側面に形成された電極は、TFT側電極16と保持容量電極17を接続するものである。上記壁電極21の平面電極212は、保持容量電極17の上層に、層間絶縁膜20を介して形成される。また、平面電極212と液晶層24との間に絶縁膜22および配向膜23を配置する。また、画素境界の壁電極21間には一対の電極(TFT側電極16とCF側電極26(以下、両者を併せて擬似壁電極という。))を配置する。本実施例では画素両端の壁電極21をソース電極とし擬似壁電極をコモン電極とするが、画素両端の壁電極をコモン電極、擬似壁電極をソース電極としてもよい。なお、小さい壁は少なくとも1μm以上の高さを有する壁とし、一画素内に、大きい壁14と小さい壁15の二種類の高さの壁構造を配置する。
【0020】
次に、
図4のB−B’断面について説明する。
図4に示すように、画素中央部のA−A’面ではドレイン線13上層に大きな壁14を形成しているのに対し、B−B’面ではドレイン線13及びゲート線11の上層に小さい壁18を介してコモン電極19を配置する。画素の長辺方向の画素間を小さい壁18にする理由としては、液晶層が画素の長辺方向だけでなく短辺方向の隣接画素にも繋がるため、液晶を封入しやすくできるからである。また、B−B’面のドレイン線の上層が薄い層間絶縁膜ではなく小さい壁である理由は二つある。一つは、ドレイン線13及びゲート線11上層に小さい壁18を形成することで、ドレイン線及びゲート線とコモン電極19を大きく離すことができるため、ドレイン線及びゲート線に寄生する容量(以下、寄生容量という。)を小さくでき、信号を伝送しやすくできるからである。もう一つは、小さい壁18は画素両端の大きい壁の間に設けた小さい壁15と同様に形成できることから、他の層を追加する必要がないからである。これらのことから、画素端部のB−B’面のドレイン線及びゲート線上層に小さい壁を配置することで、容易な液晶封入、ドレイン線及びゲート線の寄生容量の抑制及び層数増加抑制を実現できる。
【0021】
コモン電極19に関しては、
図2に示したように、画素の長辺方向及び短辺方向で繋がる構造にする。壁電極21となるソース電極はコモン電極上層に層間絶縁膜20を介して形成され、コモン電極18はドレイン線13及びゲート線11上に配置した小さい壁18の上層に形成される。この電極構造であれば、ドレイン線及びゲート線の上層に必ずコモン電極もしくはソース電極が存在することになるため、これらの電極によってドレイン線及びゲート線の電位の影響が必ず遮蔽されることになる。これ以外にも画素の周辺電位に関して、画素の長辺方向で白黒表示を交互に行う場合の隣接画素の電位の影響を考慮する必要がある。この課題に対しても、本発明の構造ではコモン電極19が隣接画素と繋がるため、画素の長辺方向で白黒表示を交互に行っても、黒表示画素が白表示画素の電位の影響(以下、隣接画素の電位の影響とする)をコモン電極によって遮蔽でき、隣接画素の電位の影響による黒透過率増大を抑制できる。また、コモン電極が画素の長辺方向及び短辺方向の隣接画素と繋がっていることから、一箇所で断線しても信号が供給できないことはないため、歩留まりの向上に繋がる。以上のことから、本発明は容易な液晶封入、ドレイン線及びゲート線の寄生容量の抑制、層数増加抑制、及び隣接画素の電位の影響抑制を実現でき、製造工程における歩留まりが向上する。
【0022】
また、B−B’面を、
図4の構造に代えて
図5の構造としても、同様の効果が得られる。
図5は、
図1のB−B’面を切った断面図であり、小さい壁18をドレイン線13上層に配置し、小さい壁18上層およびゲート線11上層にコモン電極19を形成する構造である。この構造でも、液晶層24が画素の長辺方向だけでなく短辺方向の隣接画素にも繋がるため液晶が封入しやすくなる。また、コモン電極19はドレイン線13との間に小さい壁18を配置することから、ドレイン線との距離を離せるため、ドレイン線13の寄生容量を抑制できる。ゲート線11上層に関しては、ゲート線がドレイン線より下の層に形成されることから小さい壁がなくてもコモン電極19とゲート線11の間の膜厚が厚く、大きな寄生容量にはならないと考えられる。更に、
図2に示すように、小さい壁18上層に形成したコモン電極19は画素の長辺方向及び短辺方向の画素と繋げることから、画素の長辺方向における隣接画素の電位の影響を画素間のコモン電極19によって遮蔽できる。これによって、画素の長辺方向で白黒表示を交互に行った場合でも、隣接画素の電位の影響を遮蔽でき、隣接画素の電位の影響による黒透過率増大を抑制できる。また、コモン電極19をゲート線11及びドレイン線13の上層に形成することから、ゲート線及びドレイン線などの画素周辺電位の影響も完全に遮蔽できる。更に、コモン電極19が画素の長辺方向及び短辺方向の隣接画素と繋がっていることから、一箇所で断線しても信号が供給できないことはないため、歩留まりの向上に繋がる。以上のことから、
図5の構造でも容易な液晶封入、ドレイン線の寄生容量の抑制、層数増加抑制、及び隣接画素の電位の影響抑制を実現し、歩留まりが向上する。
【0023】
もう一方で、画素の端部では、ドメインが発生するとドメイン発生部の透過率が低下するため、ドメイン抑制についても考慮しなければならない。ドメイン抑制には、画素の端部の構造であるC−C’面及びD−D’面を考慮する必要がある。
図6及び
図7はC−C’面の一例である。
図7は、画素両端間に連続する小さい壁18を配置した例である。これに対して、
図6のC−C’面には、画素両端に配置した小さい壁18の間に小さい壁を配置していないが、
図7のように小さい壁をパターニングしなくてもよい。
【0024】
また、
図8に、D−D’面の断面構造を示す。
図8に示すように、画素両端の大きい壁14の間に形成した小さい壁15の幅を広くする構造であり、
図9は前述した画素端部のC−C’面及びD−D’面を考慮した画素の拡大図である。この理由について、
図9を用いて説明する。
図9に本発明における画素端部の拡大図を示し、電界の方向と液晶の初期配向方向を併記した。なお、液晶は初期配向方向に対して−θ方向に捩れる場合順捩れ、θ方向に捩れる場合逆捩れとなり、液晶に電界を印加すると電界の方向に配向する。ドメインの発生はこの順捩れと逆捩れが画素内で混在することが原因である。
【0025】
図9に示すように、信号電位を供給しやすいように屈曲した小さい壁の周辺をソース電極で囲うと、コモン電極の先端に逆捩れ方向の電界が生じ、先端部以外では順捩れ方向の電界が発生する。このことを考慮してドメイン抑制について検討したところ、ドメイン抑制には、逆捩れ方向の電界が生じる領域の周辺に、強い順捩れ方向の電界を印加することが重要であることを見出した。
図9のように、画素端部の小さい壁上層に形成したコモン電極が屈曲構造であると、壁電極であるソース電極とコモン電極との間隔が短くなるため、屈曲部を設けない場合よりも壁電極とコモン電極間の順捩れ方向の電界が強くなる。屈曲部を形成しても一部で逆捩れ方向の電界が生じるが、この順捩れ方向の強い電界によって、画素端部における逆捩れの液晶の伝播を抑制しドメインを抑制できる。このことは、C−C’面の断面構造が
図6、
図7の両方の場合でも、ソース電極とコモン電極の位置関係は同じであることから、ドメイン抑制効果が得られる。なお、壁電極であるソース電極とコモン電極との間隔は壁電極側面と屈曲部の先端との距離とする。
【0026】
これらの屈曲部30は、
図8に示すように小さい壁15の上層であることが好ましい。この理由としては、小さい壁がない場合、コモン電極と液晶層24との間に絶縁膜22が存在することになり、絶縁膜の膜厚分電圧降下が生じ、順捩れ方向の電界が弱くなる。これに対し、小さい壁15上層にコモン電極を配置すれば電圧降下がなく、コモン電極と壁電極であるソース電極間に強い順捩れ方向の電界を印加できる。従って、ドメイン抑制にはコモン電極の屈曲部30が小さい壁15上層に形成されることが有効である。
【0027】
表1に、本発明のドメイン抑制効果を示す。表1は、小さい壁の屈曲部長さをパラメータとした場合の画素の観察結果である。表1に示すように、画素端部に屈曲部がない場合、ソース電極とコモン電極との距離が長くなり順捩れ方向の電界が弱くなるためドメインが大きくなった。これに対し、屈曲部長さに関わらず屈曲部を設けることで、画素端部に発生するドメインを小さくできることを確認した。従って、ソース電極とコモン電極間隔を狭くし、発生するドメイン周辺に順捩れ方向の強い電界をかけることでドメインを抑制できることを確認した。一方、屈曲部長さが長い場合、ドメインは小さくなるが、長辺方向に伸びたコモン電極と屈曲部のコモン電極によって囲まれる領域で暗くなることが判明した。この理由は、コモン電極で囲まれる領域に電界が行き届きにくくなり液晶が動きにくくなるからである。
【0028】
図10に、画素端部における透過率の屈曲部長さ依存性を示す。なお、規格化した透過率は屈曲部がない場合の透過率で規格化したものである。画素の短辺方向の中心(小さい壁15の中心)と大きい壁の側面との間隔をkとすると、屈曲部長さがk/4になると、屈曲部がない場合よりも大幅に高くなり、屈曲部長さが3k/4以上になると小さくなった。従って、屈曲部30の長さは、ドメインが発生しない程度の長さ以上で、暗い領域が増大しない長さ以下にすることが重要である。すなわち、屈曲部長さLは、k/4 < L < 3k/4とすることが好ましい。屈曲部長さをこの範囲にすることで、ドメインの抑制と暗い領域の低減を両立し、画素端部においても高い透過率を実現でき、画素全体で高い透過率を実現できる。
【0029】
【表1】
【0030】
図11、
図12、
図13に、コモン電極の屈曲部の先端形状の例を示す。
図11は屈曲部の先端形状を鋭角としたもの、
図12は屈曲部の先端形状をより鋭角としたもの、
図13は屈曲部の先端形状を丸い形状としたものである。何れの形状であっても、ドメイン抑制の効果が得られる。従って、ドメインの抑制と暗い領域の抑制を両立し、画素端部においても高い透過率を実現できる。
【0031】
以上のことから、本発明によれば、容易な液晶封入、ドレイン線及びゲート線の寄生容量の抑制、層数増加抑制、および隣接画素の電位の影響抑制を実現でき、画素端部のドメイン抑制と暗い領域の抑制を両立し、画素全体で高い透過率を実現できる。