特許第5886057号(P5886057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886057
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20160303BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B60C15/06 B
   B60C15/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-7222(P2012-7222)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-147068(P2013-147068A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 邦彦
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−260804(JP,A)
【文献】 特開平10−309911(JP,A)
【文献】 特開2001−097011(JP,A)
【文献】 特開2004−182021(JP,A)
【文献】 特開2009−292309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/06
B60C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードフィラーのタイヤ軸方向外側面を通り前記ビードコアの回りで外側から内側に巻き上げられたカーカスプライとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードフィラーは、前記ビードコアに隣接して配置された第1ビードフィラーと、前記第1ビードフィラーのタイヤ径方向外側に配置された第2ビードフィラーとで構成され、
前記カーカスプライは、タイヤ赤道面から前記ビードコアに向かって延びる本体部と、前記ビードコアで巻上げられて前記第1ビードフィラーと前記第2ビードフィラーの間に沿って延びる巻上げ部とから構成されており、
前記巻上げ部の巻上げ端は、前記第1ビードフィラーと前記第2ビードフィラーとの間又は前記第2ビードフィラーと前記本体部との間に位置し、
前記第2ビードフィラーの前記第1ビードフィラーに対向する面又は前記第1ビードフィラーの前記第2ビードフィラーに対向する面に、タイヤ周方向に沿って延びる突起が形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第2ビードフィラーのゴム硬度は、前記第1ビードフィラーのゴム硬度以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードフィラーのタイヤ軸方向外側面を通り前記ビードコアの回りで外側から内側に巻き上げられたカーカスプライとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードフィラーは、前記ビードコアに隣接して配置された第1ビードフィラーと、前記第1ビードフィラーのタイヤ径方向外側に配置された第2ビードフィラーとで構成され、
前記カーカスプライは、タイヤ赤道面から前記ビードコアに向かって延びる本体部と、前記ビードコアで巻上げられて前記第1ビードフィラーと前記第2ビードフィラーの間に沿って延びる巻上げ部とから構成されており、
前記巻上げ部の巻上げ端は、前記第1ビードフィラーと前記第2ビードフィラーとの間又は前記第2ビードフィラーと前記本体部との間に位置し、
前記第2ビードフィラーの前記第1ビードフィラーに対向する面又は前記第1ビードフィラーの前記第2ビードフィラーに対向する面に、タイヤ軸方向から見てタイヤ径方向又はタイヤ径方向に対して傾斜する方向に沿って延びる凹条と凸条とがタイヤ周方向に交互に形成されており、
前記凹条は前記カーカスプライの前記巻上げ部のプライコードに対応する位置に形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードフィラーのタイヤ軸方向外側面を通り前記ビードコアの回りで外側から内側に巻き上げられたカーカスプライとを備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤでは、操縦安定性能などの運動性能を向上させるため、タイヤ剛性を高める工夫がなされている。具体的には、ビードフィラーの高さや幅を増加させたり、サイドウォール部に補強層を設けたりしてタイヤ剛性を高めている。しかしながら、これらの方法では、タイヤの重量が増加して車両の燃費が悪化したり、タイヤの縦剛性が高くなり乗り心地が悪化したりするなどの問題がある。
【0003】
そのため、下記特許文献1には、タイヤの重量を軽減しつつ、タイヤの横剛性を高めて操縦安定性を向上させる目的で、カーカスプライがビードフィラーのタイヤ軸方向外側面を通り、ビードコアのタイヤ径方向内側でタイヤ軸方向外側から内側へ延びる空気入りタイヤが記載されている。この空気入りタイヤによれば、タイヤの変形時においてビード部の外側面側、すなわち引張力が作用する位置にカーカスプライが存在することによって、タイヤの横剛性を高めることができるため操縦安定性を向上し得る。
【0004】
しかし、特許文献1の空気入りタイヤは、カーカスプライの端部がビードコアのタイヤ径方向内側のビードコア下面に沿ってタイヤ軸方向内側に延びて係止される構成であり、加硫成型時の内圧によりプライコードに張力が掛かった際、係止力が弱いため、カーカスプライがビードコアから外れる可能性がある。
【0005】
また、下記特許文献2には、カーカスプライが、ビードコアの外側面かつその半径方向外縁に至るプライ本体部、及び該プライ本体部に連なり、前記外縁からビードコアのタイヤ軸方向外側面を垂下しかつビードコアのタイヤ周方向内周面を経てビードコアのタイヤ軸方向内側面を立ち上がるコア周回部分に、ビードフィラーの底面とタイヤ軸方向外側面と内側面を囲むビードフィラー周回部分を連設することによりビードコアとビードフィラーとを囲んでビード部に係止されるプライ折り返し部を備える空気入りタイヤが記載されている。
【0006】
特許文献2の空気入りタイヤによれば、カーカスプライがビード部に強固に係止されるため、加硫成型時にカーカスプライが外れるのを抑制することができる。しかし、カーカスプライの端部、すなわちプライ折り返し部の端部が、ビードフィラーの内側面のタイヤ径方向中央部に位置して段差を生み出しているため、応力集中によるクラックの起因となりやすい。
【0007】
また、下記特許文献3の空気入りタイヤは、ビードコアのタイヤ径方向外方に径内側ビードフィラー及び径外側ビードフィラーを有し、カーカスプライがビードコアの回りで内側から外側へ巻き上げられた後、その巻上げ端が径内側ビードフィラーと径外側ビードフィラーとの間へ挟まれている。この構成によれば、カーカスプライの係止力を高めて、加硫成型時にカーカスプライが外れるのを抑制することができるとともに、カーカスプライの巻上げ端でのセパレーションの発生を防止して、ビード部まわりの耐久性を高めることができる。
【0008】
ただし、特許文献3の空気入りタイヤは、カーカスプライをビードコアの回りで内側から外側へ巻き上げる構成のため、ビード部の外側面側にカーカスプライが存在せず、タイヤの横剛性を十分に高めることができない。さらに、径外側ビードフィラーによる重量の増加のため、運動性能への悪影響も懸念させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−260804号公報
【特許文献2】特開2004−130860号公報
【特許文献3】特開平10−309911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫成型時にカーカスプライがビードコアから外れるのを抑制できるとともに、タイヤの重量増加を抑えつつ運動性能及び耐久性能を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラーと、前記ビードフィラーのタイヤ軸方向外側面を通り前記ビードコアの回りで外側から内側に巻き上げられたカーカスプライとを備える空気入りタイヤにおいて、前記ビードフィラーは、前記ビードコアに隣接して配置された第1ビードフィラーと、前記第1ビードフィラーのタイヤ径方向外側に配置された第2ビードフィラーとで構成され、前記カーカスプライは、タイヤ赤道面から前記ビードコアに向かって延びる本体部と、前記ビードコアで巻上げられて前記第1ビードフィラーと前記第2ビードフィラーの間に沿って延びる巻上げ部とから構成されており、前記巻上げ部の巻上げ端は、前記第1ビードフィラーと前記第2ビードフィラーとの間又は前記第2ビードフィラーと前記本体部との間に位置するものである。
【0012】
本発明の空気入りタイヤは、カーカスプライがビードフィラーのタイヤ軸方向外側面を通りビードコアの回りで外側から内側へ巻き上げられており、タイヤ変形時の引張力をカーカスプライが適切に負担できるため、タイヤの横剛性を高めて運動性能を向上できる。また、カーカスプライは、ビードコアの回りで巻上げられた巻上げ部が第1ビードフィラーと第2ビードフィラーの間に挟み込まれる構造となるため、係止力が高まり加硫成型時にカーカスプライがビードコアから外れるのを抑制できる。さらに、カーカスプライの巻上げ端は、第1ビードフィラーと第2ビードフィラーとの間又は第2ビードフィラーと本体部との間に位置することにより、第2ビードフィラーにより覆われるため、段差が生じにくく、巻上げ端でのクラックを抑制して耐久性能を向上できる。また、本発明では、ビードフィラーを第1ビードフィラーと第2ビードフィラーとで構成するため、ビードフィラー以外の別部材を用いてカーカスプライの巻上げ部を挟み込む必要がなく、タイヤの重量増加を抑えることができる。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2ビードフィラーのゴム硬度は、前記第1ビードフィラーのゴム硬度以下であることが好ましい。第2ビードフィラーのゴム硬度を低くすることで、カーカスプライの巻上げ部を第1ビードフィラーとの間で挟み込む際に、第2ビードフィラーを圧着しやすいため、カーカスプライの係止力を効果的に高めることができる。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2ビードフィラーは、前記第1ビードフィラーに対向する面にタイヤ周方向に沿って延びる突起が形成されていることが好ましい。この構成によれば、加硫成型時に第1ビードフィラー及び第2ビードフィラーはタイヤ軸方向外側に押されるため、カーカスプライの巻上げ部が第2ビードフィラーの突起に押圧されて係止力がより一層高まる。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2ビードフィラーは、前記第1ビードフィラーに対向する面にタイヤ径方向に沿って延びる凹条と凸条とがタイヤ周方向に交互に形成されており、前記凹条は前記カーカスプライの前記巻上げ部のプライコードに対応する位置に形成されていることが好ましい。この構成によれば、第2ビードフィラーとカーカスプライとの接着性が良好となるため、カーカスプライの係止力がより一層高まる。
【0016】
本発明において、前記凹条と凸条は、タイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びることが好ましい。通常、カーカスプライの巻上げ部のプライコードは、タイヤ径方向に対して傾斜する方向に配置されているため、凹条と凸条をタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びるように形成することで、第2ビードフィラーとカーカスプライとの接着性がさらに良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図
図2】本発明の空気入りタイヤの要部を示す拡大図
図3】第2ビードフィラー122の断面図
図4】第2ビードフィラーの一部を示す斜視図
図5】空気入りタイヤの成型工程の一部を模式的に示す説明図
図6】本発明の別実施形態における空気入りタイヤの要部を示す断面図
図7】本発明の別実施形態におけるビードコア及びビードフィラーの断面図
図8】本発明の別実施形態における第2ビードフィラーの斜視図及び断面図
図9】比較例1及び2における空気入りタイヤの要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。図2は、図1の空気入りタイヤの要部を示す拡大図である。
【0019】
この空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、ビード部1からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部3とを備える。ビード部1には、ゴム被覆したビードワイヤを積層巻回した収束体よりなる環状のビードコア11が埋設され、そのビードコア11のタイヤ径方向外側にビードフィラー12が配置されている。
【0020】
カーカスプライ4は、一対のビード部1に配設されたビードコア11間で延在しており、ビードフィラー12のタイヤ軸方向外側面を通りビードコア11の回りで外側から内側に巻き上げられている。カーカスプライ4は、タイヤ周方向に対して略直交する方向に配列したプライコードを、トッピングゴムで被覆して形成されている。プライコードとしては、スチールコードや有機繊維コードが好適に使用される。
【0021】
カーカスプライ4の内側には、空気入りタイヤTの内周面を構成するインナーライナーゴム5が設けられている。インナーライナーゴム5は、タイヤ内に充填された気体の透過を阻止する機能を有する。また、サイドウォール部2では、カーカスプライ4の外側に、空気入りタイヤTの外壁面を構成するサイドウォールゴム6が設けられている。また、サイドウォールゴム6のタイヤ径方向内側には、少なくともリムフランジに接触する部分にリムストリップゴムを設けてもよい。
【0022】
ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外端からタイヤ径方向外側に先細状に延びている。本発明のビードフィラー12は、ビードコア11に隣接して配置された第1ビードフィラー121と、第1ビードフィラー121のタイヤ径方向外側に配置された第2ビードフィラー122とで構成されている。第1ビードフィラー121及び第2ビードフィラー122は、それぞれ略三角形状の断面をしている。本実施形態では、第1ビードフィラー121が第2ビードフィラー122に対向する面121a、第2ビードフィラー122が第1ビードフィラー121に対向する面122aはそれぞれ平面であって、ビードコア11のタイヤ径方向外端かつタイヤ軸方向内端からタイヤ径方向外方であってタイヤ軸方向外方へ向かって形成されている。
【0023】
第2ビードフィラー122の第1ビードフィラー121に対向する面122aには、タイヤ周方向に沿って延びる突起123が形成されていることが好ましい。図3は第2ビードフィラー122の断面図である。図4は第2ビードフィラー122の一部を示す斜視図であり、第1ビードフィラー121から面122aを見た図である。突起123の断面は、先端が第1ビードフィラー121の方向を向いた三角形状をしている。突起123の面122aからの高さhは、第2ビードフィラー122の最大厚みHの10〜30%とするのが好ましい。突起123の高さhを第2ビードフィラー122の最大厚みHの10%よりも小さくすると、突起123による係止力の増大効果が得られにくくなり、30%よりも大きくすると、重量の増加により、転がり抵抗の悪化を招く。
【0024】
第2ビードフィラー122のゴム硬度は、第1ビードフィラー121のゴム硬度以下であることが好ましい。具体的には、第1ビードフィラー121のゴム硬度は80〜100°が好ましく、第2ビードフィラー122のゴム硬度は60〜80°が好ましい。本発明のゴム硬度は、JIS−A硬度である。
【0025】
第1ビードフィラー121のモジュラスは、第2ビードフィラー122のモジュラスよりも大きいことが好ましい。第2ビードフィラー122のモジュラスが第1ビードフィラー121のモジュラスよりも大きいと、剛性バランスの悪化を招き、乗り心地性能や操縦安定性が悪化する傾向がある。具体的には、第1ビードフィラー121のモジュラスは5.0〜15.0MPaが好ましく、第2ビードフィラー122のモジュラスは1.0〜12.0MPaが好ましい。本発明のモジュラスは、JIS K6251に準拠して引張試験機を用い、100%伸張時の引張応力をいう。ここで、試験に用いた試験片は、ダンベル3号であり、雰囲気温度が23℃の条件で計測したものである。
【0026】
カーカスプライ4は、タイヤ赤道面Cからビードコア11に向かって延びる本体部41と、ビードコア11で巻上げられて第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122の間に沿って延びる巻上げ部42とから構成されている。これにより、カーカスプライ4の巻上げ部42が第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122の間に挟み込まれる構造となるため、係止力が高まり加硫成型時にカーカスプライ4がビードコア11から外れるのを抑制できる。
【0027】
本体部41は、第2ビードフィラー122及び第1ビードフィラー121のタイヤ軸方向外側面を通り、ビードコア11のタイヤ軸方向外側まで達している。巻上げ部42は、ビードコア11及び第1ビードフィラー121のタイヤ軸方向内側に配置されている。カーカスプライ4の本体部41を、ビードフィラー12、すなわち第1ビードフィラー121及び第2ビードフィラー122のタイヤ軸方向外側面に配置することで、タイヤ変形時の引張力をカーカスプライ4に適切に負担させることができるため、空気入りタイヤTの横剛性を高めて運動性能を向上できる。
【0028】
巻上げ部42の巻上げ端42Eは、第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122の間又は第2ビードフィラー122と本体部41との間に位置する。本実施形態では、巻上げ端42Eが第1ビードフィラー121の面121aと第2ビードフィラー122の面122aとの間に位置する例を示す。このように、カーカスプライ4の巻上げ端42Eを第2ビードフィラー122により覆うことで、巻上げ端42Eで段差が生じにくく、巻上げ端42Eでのクラックを抑制して耐久性能を向上できる。
【0029】
本発明の空気入りタイヤは、ビードフィラー12とカーカスプライ4を上記の如く構成すること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
【0030】
図5は、本発明の空気入りタイヤTの成型工程の一部を模式的に示す説明図である。図5(a)に示すように、ドラムDの周囲にビードコア11と第1ビードフィラー121を嵌める。次いで、図5(b)に示すように、ビードステッチャーSにより第1ビードフィラー121を押圧する。次いで、図5(c)に示すように、カーカスプライ4を配置する。次いで、図5(d)に示すように、サイドウォールゴム6、リムストリップゴム7、第2ビードフィラー122を所定位置に配置する。次いで、図5(e)に示すように、ドラムDから外して、ビードコア11よりもタイヤ径方向内側のカーカスプライ4、サイドウォールゴム6、リムストリップゴム7、第2ビードフィラー122を巻き込みツールRを用いてタイヤ幅方向外側から内側へ巻き込む。
【0031】
<別実施形態>
(1)前述の実施形態では、カーカスプライ4の巻上げ端42Eを第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122との間に位置する例を示したが、図6に示すようにカーカスプライ4の巻上げ端42Eは第2ビードフィラー122と本体部41との間に位置することが好ましい。この構成によれば、カーカスプライ4の係止力がより一層高まる。
【0032】
(2)前述の実施形態では、第2ビードフィラー122の第1ビードフィラー121に対向する面122aに形成された突起123の断面は、先端が第1ビードフィラー121の方向を向いた三角形状としているが、突起123の断面形状はこれに限定されない。突起123の断面は、図7(a)に示すような四角形状であってもよい。
【0033】
また、タイヤ周方向に沿って延びる突起123は、図7(b)に示すように第1ビードフィラー121の第2ビードフィラー122に対向する面121aに形成されてもよい。さらに、タイヤ周方向に沿って延びる突起123は、図7(c)に示すように第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122の両方に形成されてもよい。
【0034】
突起123の高さhは、タイヤ周方向に沿って周期的に変動させてもよい。このとき、高さhの振幅は、突起の高さの50%を中心に突起高さの0〜100%の範囲で、タイヤの中心軸を基点に30°以下の範囲で周期的に振幅させることが好ましい。
【0035】
(3)第2ビードフィラー122は、図8に示すように、第1ビードフィラー121に対向する面122aにタイヤ径方向に沿って延びる凹条124と凸条125とがタイヤ周方向に交互に形成されてもよい。図8(a)は第2ビードフィラー122を第1ビードフィラー121から見た斜視図である。このとき、凹条124はカーカスプライ4のプライコード4aに対応する位置に形成されていることが好ましい。図8(b)は図8(a)のA−A断面図であり、カーカスプライ4のプライコード4aを破線で示している。この構成によれば、第2ビードフィラー122とカーカスプライ4との接着性が良好となるため、カーカスプライ4の係止力がより一層高まるとともに、タイヤ周方向のせん断歪みを低減できる。なお、この実施形態において、凹条124と凸条125は、第1ビードフィラー121に形成されてもよく、また、第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122の両方に形成されてもよい。
【0036】
図8に示す例では、凹条124と凸条125はタイヤ径方向に延びているが、凹条124と凸条125は、タイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びることが好ましい。カーカスプライ4の巻上げ部42のプライコード4aは、タイヤ径方向に対して傾斜する方向に配置されているため、凹条124と凸条125をタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びるように形成することで、第2ビードフィラー122とカーカスプライ4との接着性がさらに良好となる。例えば、タイヤ径方向に対する凹条124と凸条125の傾斜角度は0〜15°である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は、下記のようにして測定を行った。試験に供したタイヤのサイズは195/65R15であり、JATMA規定のリムサイズのリムに装着した。
【0038】
(1)重量
従来例を100として各例の重量を指数評価した。
【0039】
(2)係止力
加硫成型時の内圧により、カーカスプライがビードコアから外れるか否かを判定した。表1の「○」はカーカスプライの外れが無く、「×」はカーカスプライの外れが発生したことを示す。
【0040】
(3)操縦安定性能
実車にテストタイヤを装着して走行させ、ドライバーの官能評価により100点満点における採点を行った。従来例を100として指数評価し、点数が多いほど操縦安定性能に優れることを示す。
【0041】
(4)耐久性能
JIS D4230に規定する方法に準拠して耐久性能試験を行い、カーカスプライの巻上げ端でクラックの発生有無を判定した。表1の「○」は巻上げ端でクラックが発生せず、「×」は巻上げ端でクラックが発生したことを示す。
【0042】
従来例
カーカスプライをビードコアの回りで内側から外側に巻き上げた空気入りタイヤを製造した。ビードフィラーは、第1ビードフィラーと第2ビードフィラーとから構成されておらず、単一の構造とした。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0043】
比較例1
図9(a)に示すように、カーカスプライ4がビードフィラー12のタイヤ軸方向外側面を通り、ビードコア11のタイヤ径方向内側でタイヤ軸方向外側から内側へ延びる空気入りタイヤを製造した。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0044】
比較例2
図9(b)に示すように、カーカスプライ4が第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122のタイヤ軸方向内側面を通りビードコア11の回りで内側から外側に巻き上げられ、カーカスプライ4の巻上げ部42が第1ビードフィラー121と第2ビードフィラー122の間に挟み込まれた空気入りタイヤを製造した。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0045】
実施例1
図1及び図2に示す構造を有する空気入りタイヤを製造した。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0046】
実施例2
実施例1の第2ビードフィラー122の面122aにタイヤ周方向に沿って延びる突起123を形成した空気入りタイヤを製造した。かかる空気入りタイヤを用いて、上記評価を行った結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すとおり、実施例1,2に係る空気入りタイヤは、加硫成型時にカーカスプライがビードコアから外れることはなく、また、従来例に比べ、タイヤの重量増加を抑えつつ操縦安定性能及び耐久性能を向上している。比較例1は、従来例に比べ、操縦安定性能は向上しているが、加硫成型時にカーカスプライがビードコアから外れ、また、カーカスプライの巻上げ端でクラックが発生した。比較例2は、加硫成型時にカーカスプライがビードコアから外れることはなく、また、カーカスプライの巻上げ端でクラックも発生しなかったが、従来例に比べ操縦安定性能が悪化した。
【符号の説明】
【0049】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカスプライ
4a プライコード
11 ビードコア
12 ビードフィラー
41 本体部
42E 巻上げ端
42 巻上げ部
121 第1ビードフィラー
121a 面
122 第2ビードフィラー
122a 面
123 突起
124 凹条
125 凸条
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9