特許第5886076号(P5886076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886076床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造及びその構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886076
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20160303BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20160303BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20160303BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   E01D19/12
   E01D19/10
   E01D22/00 A
   E01D21/00 Z
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-39994(P2012-39994)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-174099(P2013-174099A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕二
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−171730(JP,A)
【文献】 特開2004−068587(JP,A)
【文献】 特開2002−227134(JP,A)
【文献】 特開2001−132149(JP,A)
【文献】 特開昭61−117312(JP,A)
【文献】 特開平01−094144(JP,A)
【文献】 特開2002−081021(JP,A)
【文献】 特開平08−184012(JP,A)
【文献】 特開2006−183404(JP,A)
【文献】 特開2003−171906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 19/10
E01D 21/00
E01D 22/00
E01C 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部保護材(1)と防水工(2)を包含し、
該端部保護材(1)は床版(3)と壁高欄(4)の打継ぎ目(5)の路面(6)側の境界部分(7)に配設されるもので、互いに角度をなして張出する底版部(8)と立上げ部(9)を一体に有し、
該底版部(8)は該床版(3)上に両者の上面が面一となって位置し、
該立上げ部(9)は該壁高欄(4)の内壁面(10)に形成された凹所(11)に該壁高欄(4)と一体となって収まっており、
該防水工(2)は、該路面(6)の路幅方向の端部(12)が該底版部(8)を覆い、該端部(12)に続く施工部(13)は該立上げ部(9)の内側面(14)に添着されている
ことを特徴とする床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項2】
該端部保護材(1)は非発錆性素材で構成されている請求項1に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項3】
該底版部(8)は底面(21)に定着用部材(22)を備えている請求項1又は2に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項4】
該底版部(8)は張出端に、該立上げ部(9)側と反対側へ突き出た、該床版(3)と係合する凸条(23)を備えている請求項1、2又は3に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項5】
該立上げ部(9)は背面(31)に定着用部材(32)を備えている請求項1、2、3又は4に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項6】
該立上げ部(9)は上端の該背面(31)に、該壁高欄(4)と係合する凸条(33)を備えている請求項1から5の一つの項に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項7】
該立上げ部(9)は上端に該内側面(14)側へ突き出た庇(34)を備えている請求項1から6の一つの項に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項8】
該庇(34)は上面に該路面(6)方向へ下る勾配部(35)を備えている請求項7に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項9】
該端部保護材(1)は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材(41)をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっている請求項1から8の一つの項に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項10】
互いに角度をなして張出する底版部(8)と立上げ部(9)を一体に有する端部保護材(1)を、床版(3)と壁高欄(4)の打継ぎ目(5)の路面(6)側の境界部分(7)に、該底版部(8)を該床版(3)上に両者の上面を面一として、また該立上げ部(9)を該壁高欄(4)の位置内にそれぞれ配置して、設置し、
路肩端部(51)に型枠(52)を、該立上げ部(9)の内側面(14)との間に空隙(53)を保って配置し、
該型枠(52)内にコンクリート(54)を打設して該壁高欄(4)を形成し、
該型枠(52)を外して防水工(2)を該底版部(8)の上面と該立上げ部(9)の該内側面(14)に渡設する
ことを特徴とする床版防水工の施工部の保護構造の構築法。
【請求項11】
端部保護材(1)と防水工(2)を包含し、
該端部保護材(1)は床版(3)と壁高欄(4)の打継ぎ目(5)の路面(6)側の境界部分(7)に配設されるもので互いに角度をなして張出する底版部(8)と立上げ部(9)を一体に有し、
該底版部(8)は該床版(3)上に位置し、
該立上げ部(9)は上端に路面(6)側へ突き出た庇(34)を備え、背面(31)で該壁高欄(4)の内壁面(10)に添設されており、
該防水工(2)は、該路面(6)の路幅方向の端部(12)が該底版部(8)を覆い、該端部(12)に続く施工部(13)が該立上げ部(9)の内側面(14)に添設されて、その上端部が該庇(34)で庇護されている
ことを特徴とする床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項12】
該端部保護材(1)は非発錆性素材で構成されている請求項11に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項13】
該底版部(8)は張出端に該床版(3)に形成される係合溝(61)と係合する凸条(23)を備えている請求項11又は12に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項14】
該立上げ部(9)は該背面(31)の上端に該壁高欄(4)に形成される係合溝(62)と係合する凸条(33)を備えている請求項11、12又は13に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項15】
該庇(34)は上面に該路面(6)方向へ下りの勾配部(35)を備えている請求項11、12、13又は14に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項16】
該端部保護材(1)は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材(41)をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっている請求項11から15の一つの項に記載の床版防水工の施工部の保護構造。
【請求項17】
互いに角度をなして張出する底版部(8)と立上げ部(9)を一体に有しかつ該立上げ部(9)の上端に路面(6)側へ突き出た庇(34)を備えた端部保護材(1)を、床版(3)と壁高欄(4)の打継ぎ目(5)の路面(6)側の境界部分(7)に、該底版部(8)を該床版(3)上に、また該立上げ部(9)を該壁高欄(4)の内壁面(10)と対向させて、設置し、
防水工(2)を該底版部(8)の上面と該立上げ部(9)の内側面(14)に渡設する
ことを特徴とする床版防水工の施工部の保護構造の構築法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造及びその構築方法に関し、防水工を壁高欄、地覆若しくは縁石(以下「壁高欄等」という。)に沿って施した施工部が、壁高欄等が新設であると既設であるとに係わらず舗装等の作業機械によって損傷するのを防ぐようにするとともに、該施工部が劣化・剥離しても雨水が防水工とコンクリート面との間から浸入することを防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
防水工は床版の上面から壁高欄等の側面に連続して施工され、該床版と壁高欄等との境界部分からの水漏れを防ぐようにしている。この壁高欄等の側面の施工部は紫外線等の影響により劣化しにくい物性のものか、もしくは劣化しないように保護材で覆うことになっている。この紫外線により劣化しにくい防水工や、該施工部の保護材は塗料等の被膜が一般的で、該施工部に対して舗装機械等が外部から加える衝撃に耐えるほどの強度は有していない。
【0003】
床版と壁高欄の打継ぎ目を通って起きる漏水を防ぐことに関しては、打継ぎ目の途中に止水板を介在させる構造が本件出願人の一部が関与した橋梁においても施工された事実があり、打継ぎ目の外端を遮断する技術が特開2003−232005号公報(特許文献1)に開示されている。
また、補強用の鋼板製側板の端部の発錆を防ぐため、床版と壁高欄の打継ぎ目の外端を覆うように設けた鋼板製側板の端部にU字形状の防錆用カバーを嵌め込むようにした技術が特開2010−047908号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−232005号公報
【特許文献2】特開2010−047908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている発明は、継ぎ目なし伸縮継手部における床版上の滞留水を排水するための技術に関し、防水プレート1の端部を床版幅員両側の縁石12に沿って立上げている(段落0026、図5)が、この立上げ部分は幅員内に露出しているので、基層14や排水性舗装15の施工時に舗装用機械が接触して損傷を受ける恐れが解消されていない。また、この立ち上げ部の上端は直接雨水に曝されるため、立ち上げ部の劣化・剥離によりコンクリート面との間に隙間が発生し、そこから雨水の侵入が起こることがある。
【0006】
また、特許文献2の図1には、合成床版と地覆コンクリートの打継ぎ目の外端が側板によって閉塞されている構造が開示されている。この構造では合成床版上面に溜まった水が打継ぎ目に浸入するのを許容しており、合成床版や地覆部のコンクリートの劣化や配筋の発錆を防げない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1) 本発明にかかる床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造は、端部保護材と防水工を包含している。該端部保護材は床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に配設されるもので、互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有する。該底版部は該床版上に両者の上面が面一となって位置している。該立上げ部は該壁高欄等の内壁面に形成された凹所に該壁高欄等と一体となって収まっている。そして、該防水工は、該路面の路幅方向の端部が該底版部を覆い、該端部に続く部分は該立上げ部の内側面を覆う施工部となっている。
【0008】
該端部保護材は底版部と立上げ部が一体でかつ互いに角度をなして張出しており、これを床版と壁高欄等の打継ぎ目の境界部分に、該底版部を該床版の上面に面一に配置しかつ該立上げ部を壁高欄等の路面側の凹所に収容して、配置する。該端部保護材は接着材、鋲、釘等の固定手段で床版や壁高欄等と一体化される。このように、防水工の施工後は施工部が壁高欄等の路面側の凹所に収容されているので、舗装作業に使用する舗装機械が該壁高欄等の内壁面と接触することはあっても該施工部と接触することはなく、該施工部が損傷することはない。
【0009】
また、該端部保護材の底版部と立上げ部は一体なので、床版と壁高欄等の打継ぎ目は該防水工や該端部保護材によって完全に遮断され、舗装路面上を流れ、又は舗装内を浸透して床版上面を流れてきた水が該打継ぎ目に浸透することはない。
壁高欄等を伝わってくる雨水は路肩端部の凹部上面部から落下するため、端部保護材と防水工上端部が雨水に曝されることがないことから、防水工が劣化・剥離を生じても端部保護材との間に雨水が侵入することはない。
【0010】
(請求項2) 該端部保護材は非発錆性素材で構成されていてもよい。
こうすると、該端部保護材は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0011】
(請求項3)該底版部は底面に定着用部材を備えていてもよい。
こうすると、該定着用部材がコンクリート中に埋設されることにより、該端部保護材は安定して該境界部分に設置され、位置ずれしたりすることがない。
【0012】
(請求項4)該底版部は張出端に、該立上げ部側と反対側へ突き出た、該床版と係合する凸条を備えていてもよい。該凸条は該張出端部を折り曲げて形成しても、別体ものを溶接等で一体化してもよい。
こうすると、コンクリートの固化前に該凸条をコンクリート中に差し込んでおけば、その固化により、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0013】
(請求項5)該立上げ部は背面に定着用部材を備えていてもよい。
こうすると、該定着用部材が該壁高欄等の内壁面を形成するコンクリートに埋設された状態となるので、該立上げ部が該壁高欄等と一体化し、該端部保護材が該内壁面からずれ出るのを防止できる。
【0014】
(請求項6)該立上げ部は上端の該背面に、該壁高欄等と係合する凸条を備えていてもよい。
こうすると、該凸条が該壁高欄等のコンクリート中に喰い込んだ状態となるので、該立上げ部が該壁高欄等と一体化し、該端部保護材が該内壁面からずれ出るのを防げる。
【0015】
(請求項7)該立上げ部は張出端に該内側面側へ突き出た庇を備えていてもよい。
こうすると、該防水工の施工部の上端が該庇によって覆われるので、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該立上げ部と該壁高欄等の対向面間に流入することがなく、該立上げ部と該壁高欄等の一体化を損なうことがない。
【0016】
(請求項8)該庇は上面に該路面方向へ下る勾配部を備えていてもよい。
こうすると、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流下しても勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該施工部間に流入することがなく、該立上げ部と該施工部の一体化を損なうことがない。
【0017】
(請求項9)該端部保護材は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっていてもよい。
こうすると、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材で繋げることにより長手方向に延設できる。
【0018】
(請求項10)本発明に係る床版防水工の施工部の保護構造の構築法は、互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有する端部保護材を、床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に、該底版部を該床版上に両者の上面を面一として、また該立上げ部を該壁高欄等の位置内にそれぞれ配置して、設置する。路肩端部に型枠を該立上げ部の内側面との間に空隙を保って配置する。該型枠内にコンクリートを打設して該壁高欄等を形成する。そして、該型枠を外して防水工を該底版部の上面と該立上げ部の表面に渡設する。
この構築法を採用することにより、防水工の壁高欄等の施工部の内側面は壁高欄等の内壁面より該壁高欄等の内部へ潜った位置にあるので、舗装機械等は該内壁面に触れても施工部の内側面に直接触れることはなく、損傷から保護される。
【0019】
(請求項11)本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造の別の態様は次の通りである。即ち、端部保護材と防水工を包含している。該端部保護材は床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に配設されるもので互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有する。該底版部は該床版上に位置し、該立上げ部は上端に該路面側へ突き出た庇を備え、背面で該壁高欄等の内壁面に添設されている。そして、該防水工は、該路面の路幅方向の端部が該底版部を覆い、該端部に続く部分は該立上げ部の内側面に添設された施工部となり、その上端部が該庇で庇護されている。
【0020】
この発明は、既設の壁高欄等を備えた橋梁に適用するのが、望ましい。壁高欄等に凹所を設けるのは新設の場合のように容易でないので、端部保護材の立上げ部は背面が既設の壁高欄等の内壁面と相対することになる。この状態では、防水工の施工部の路面側の面は壁高欄等の内壁面より路面側に位置するので、立上げ部には施工部の路面側の面より路面側に突き出た庇が必要となる。この端部保護材は底版部が床版上面と、立上げ部が壁高欄等の内壁面と、それぞれ接着等によって一体化され、該境界部分に配設される。この状態で庇が施工部の上端を被覆し、舗装機械等による衝撃をこの庇の張出し端で受けて施工部を保護する。
【0021】
(請求項12)該端部保護材は非発錆性素材で構成されていてもよい。
こうすると、該端部保護材は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0022】
(請求項13)該底版部は張出端に該床版に形成される係合溝と係合する凸条を備えていてもよい。
こうすると、床版コンクリートに該凸条の係合溝を削成し、該係合溝にモルタル等の接着材を入れて該凸条を嵌合させ、該接着材を固化させることにより、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0023】
(請求項14)該立上げ部は上端に該壁高欄等に形成される係合溝と係合する凸条を備えていてもよい。
こうすると、該凸条と該係合溝との係合により、該立上げ部が該壁高欄等の内壁面から外れて該端部保護材が路面方向へずれ出すことがない。
【0024】
(請求項15)該庇は上面に該路面方向へ下りの勾配部を備えていてもよい。
こうすると、壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流れ落ちても、該勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該壁高欄等の内壁面間には流れ込まないので、該壁高欄等や床版の劣化を引き起こすことがない。
【0025】
(請求項16)該端部保護材は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっていてもよい。
こうすると、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材をその長手方向の端部に介在させて繋げることにより、長手方向に延設できる。
【0026】
(請求項17)本発明に係る床版防水工の施工部の保護構造の構築法の別の態様は次の通りである。即ち、互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有しかつ該立上げ部の上端に路面側へ突き出た庇を備えた端部保護材を、床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に、該底版部を該床版上に、また該立上げ部を該壁高欄等の内壁面と対向させて、設置する。そして、防水工を該底版部の上面と該立上げ部の内側面に渡設する。
【0027】
この構築法によると、既設の壁高欄等の内壁面に凹所を削成するという面倒な作業は必要なく、壁高欄等の表面を流下する雨水は庇により立上げ部の背面と壁高欄等の内壁面間に滲入するのを阻止されるので、壁高欄等や床版の損壊を未然に防止できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造によれば、防水工の施工後は施工部が壁高欄等の路面側の凹所に収容されているので、舗装作業に使用する舗装機械が該壁高欄等の内壁面と接触することはあっても該施工部と接触することはなく、該施工部が損傷することはない。また、該端部保護材の底版部と立上げ部は一体なので、床版と壁高欄等の打継ぎ目は該端部保護材によって完全に遮断され、表層上を流れ、又は表層から基層内を浸透して床版上面を流れてきた水が該打継ぎ目に浸透することはない。
【0029】
請求項2によれば、端部保護材が錆びる心配がないので、長期にわたって供用できる。
【0030】
請求項3によれば、該底版部の底面の定着用部材がコンクリート中に埋設されることにより、該端部保護材は安定して該境界部分に設置される。
【0031】
請求項4によれば、該床版を構成するコンクリートにその固化前に該凸条を差し込んで固化させることにより、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0032】
請求項5によれば、該定着用部材が該壁高欄等の内壁面を形成するコンクリートに埋設された状態となるので、該立上げ部が該壁高欄等と一体化し、該定着用部材が該凹所からずれ出るのを防止できる。
【0033】
請求項6によれば、該立上げ部は該背面の凸条により壁高欄のコンクリート中に喰いこんでいるので、該立上げ部が該壁高欄等の該内壁面から外れて路面方向へずれ出るのを防止できる。
【0034】
請求項7によれば、該防水工の該施工部の上端が該庇によって覆われるので、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該立上げ部と該壁高欄等の対向面間に流入することがなく、該立上げ部と該壁高欄等の一体化を損なうことがない。
【0035】
請求項8によれば、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流下しても勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該壁高欄等の対向面間に流入することがなく、該立上げ部と該壁高欄等の一体化を損なうことがない。
【0036】
請求項9によれば、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材をその長手方向の端部に介在させて、繋げることにより長手方向に延設できる。
【0037】
請求項10の構築法によれば、防水工の該施工部の内側面は壁高欄等の内壁面より該壁高欄等の内部へ潜った位置にあるので、舗装機械等は該内壁面に触れても壁高欄等の施工部の内側面に直接触れることはなく、損傷から保護される。
【0038】
請求項11によれば、防水工の壁高欄等の施工部の路面側の面は壁高欄等の内壁面より路面側に位置するが、立上げ部には壁高欄等の施工部の上端を越えて路面側に突き出た庇があるので、該庇が該施工部の上端を被覆し、舗装機械等による衝撃をこの庇の張出し端で受けて該施工部を保護する。
【0039】
請求項12によれば、該端部保護材は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0040】
請求項13によれば、床版コンクリートに該凸条の係合溝を削成し、該係合溝にモルタル等の接着材を入れて該凸条を嵌合させ、該接着材を固化させることにより、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0041】
請求項14によれば、該凸条と該係合溝との係合により、該立上げ部が該壁高欄等の内壁面から外れて該端部保護材が路面方向へずれ出すことがない。
【0042】
請求項15によれば、壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流れ落ちても、該勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該壁高欄等の内壁面間には流れ込まないので、該壁高欄等や床版の劣化を引き起こすことがない。
【0043】
請求項16によれば、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材をその長手方向の端部に介在させて繋げることにより、長手方向に延設できる。
【0044】
請求項17の本発明に係る床版防水工の施工部の保護構造の別の構築法によれば、既設の壁高欄等の内壁面に凹所を削成するという面倒な作業は必要なく、壁高欄等の表面を流下する雨水は庇により立上げ部の背面と壁高欄等の内壁面間に滲入するのを阻止されるので、壁高欄等や床版の損壊を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図面で、1〜5は新設の場合、6〜9は既設の場合、10及び11は端部保護材1を長手方向に接続する各別の例を示す。
図1】本発明にかかる床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造を、新築の壁高欄に実施した状態を挙げて示す、部分横断面図である。
図2】端部保護材1の変形を用いて保護構造を構成する過程の部分横断面図である。
図3】本件保護構造の構成途上の部分横断面図で、端部保護材1を床版上に設置し、型枠52を配置して壁高欄4を打設した状態である。
図4】端部保護材1の更なる変形例で、凸条33を庇34と別個に構成して凸条33を庇34上に固着したものの端面図である。
図5】端部保護材1の更なる変形例を壁高欄4に設置した状態で示す部分横断面図である。
図6】既設の床版3と壁高欄4に端部保護材1の凸条23、33用の係合溝61,62を形成した状態の部分横断面図である。
図7図6に示した係合溝61,62に端部保護材1の凸条23、33を係合させ端部保護材1を境界部分7に配置し、防水工2を床版3と壁高欄4に渡設して基層71と表層72を施工した状態の部分横断面図である。
図8図4に示したものと同様の端部保護材1を境界部分7に配設し、立上げ部9を釘Nで壁高欄4に固定した状態の部分横断面図である。
図9】既設の壁高欄4に、上端に凸条33と庇34を形成した端部保護材1の立上げ部9を添設した状態の部分横断面図である。
図10】端部保護材1と接続部材41の関係を示す斜面図である。
図11】接続部材41の別の例を示す斜面図で、端部保護材の嵌合方向を矢印で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明にかかる床版防水工の施工部の保護構造及びその構築方法の実施の形態を、壁高欄等として壁高欄4を取り上げ、図面を参照して、説明する。
【0047】
(請求項1)図1で、1は端部保護材、2は防水工、3は床版、4は壁高欄である。この端部保護材1は床版3と壁高欄4の打継ぎ目5の路面6側の境界部分7に配設されるもので、互いに角度をなして張出する底版部8と立上げ部9を一体に有している。底版部8は床版3上に両者の上面が面一となって位置し、立上げ部9は壁高欄4の内壁面10に形成された凹所11に壁高欄4と一体となって収まっている。防水工2は、路面6の路幅方向の端部12が底版部8を覆い、この端部12に続く施工部13が立上げ部9の内側面14を覆っている。
【0048】
端部保護材1を床版3と壁高欄4の打継ぎ目5の境界部分7に、底版部8を床版3の上面に配置しかつ立上げ部9を壁高欄4の凹所11に収容して、配置する。底版部8と床版3、立上げ部9と壁高欄4の各対向面は、例えば接着材を塗布し、あるいは図8に示すように釘Nを単独で若しくはこの接着材と共に用いて、一体化される。そして、防水工2を、この底版部8の上面と立上げ部9の内側面14に渡って施工する。
このように、立上げ部9の内側面14に施工された防水工2の施工部13は壁高欄4の凹所11に収まっているので、舗装作業に使用する舗装機械等が壁高欄4の内壁面10と接触することはあっても施工部13と接触することはなく、施工部13が損傷することはない。
【0049】
また、端部保護材1の底版部8と立上げ部9は一体なので、床版3と壁高欄4の打継ぎ目5は端部保護材1によって完全に遮断され、路面6の表層72の表面上を流れ、又は表層72を浸透して基層71の上面を流れてきた水が打継ぎ目5に浸透することはない。
【0050】
(請求項2)端部保護材1は非発錆性素材で構成されている。非発錆性素材としては、例えばステンレス鋼がある。
この場合、端部保護材1は雨水に濡れても錆を生じることがなく、長期にわたって供用できる。
【0051】
(請求項3)底版部8は底面21に定着用部材22を備えている。
この場合、定着用部材22が床版3のコンクリートに埋設されることにより、端部保護材1は安定して境界部分7に設置される。
【0052】
(請求項4)図1及び2で、底版部8は張出端に、立上げ部9側と反対側へ突き出た、床版3と係合する凸条23を備えている。
この場合、床版3のコンクリートの固化前に凸条23を差し込んで固化させることにより、床版3上で端部保護材1がずれるのを防止できる。
【0053】
(請求項5)図1で、立上げ部9は背面31に定着用部材32を備えている。
この場合、定着用部材32が壁高欄4の内壁面10を形成するコンクリートに埋設された状態となるので、立上げ部9が壁高欄4と一体化し、定着用部材32がこの凹所11からずれ出るのを防止できる。
【0054】
(請求項6)図1、2及び34で、立上げ部9は背面31の上端に、壁高欄4と係合する凸条33を備えている。
この場合、凸条33が壁高欄4のコンクリート中に喰い込んだ状態となるので、立上げ部9が壁高欄4の内壁面10からずれ出るのを防げる。
【0055】
(請求項7)図1〜5で、立上げ部9は上端に内側面14側へ突き出た庇34を備えている。
この場合、防水工2の施工部13の上端が庇34によって覆われるので、壁高欄4の表面を流下してきた雨水が立上げ部9と壁高欄4の対向面間に流入することがなく、立上げ部9と壁高欄4間の一体化を損なうことがない。
【0056】
(請求項8)図4及び図5で、庇34は上面に路面6方向へ下る勾配部35を備えている。
この場合、壁高欄4の表面を流下してきた雨水が庇34上に流下しても勾配部35により路面6方向へ導かれ、立上げ部9と施工部13間に流入することがなく、立上げ部9と施工部13の一体化を損なうことがない。
【0057】
(請求項9)図10及び図11で、端部保護材1は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材41をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっている。
【0058】
この場合、端部保護材1自身は製造上の制約であまり長尺にできないが、長尺の壁高欄の場合は端部保護材1を接続部材41により繋ぎ合せて使用することで、対応が可能となる。図10では接続部材41に調節用長孔74を設けて端部保護材1の一端に取り付け、接続する端部保護材1の他端に突起73を設け、端部保護材1を接続部材41に嵌め込んで、突起73を内側から調節用長孔74に係合させる。道路がカーブしているところでの対応がし易い。図11のように、接続部材41を弾性材で構成し、端部保護材1を圧嵌してもよい。
【0059】
(請求項10)図1図5を参照して、本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造の構築法は次の通りである。互いに角度をなして張出する底版部8と立上げ部9を一体に有する端部保護材1を、床版3と壁高欄4の打継ぎ目5の路面6側の境界部分7に、底版部8をまだ固化していない床版3上に両者の上面を面一として、また立上げ部9を壁高欄4の位置内にそれぞれ配置して、設置する。路肩端部51に型枠52を、立上げ部9の内側面14と型枠52の間に空隙53を保って、配置する。この空隙53は面木55を型枠52と立上げ部9間に介在させて確保される。型枠52内にコンクリート54を打設して壁高欄4を形成する。そして、型枠52を外し、防水工2を床版3の上面に施し、これに続いて立上げ部7の内側面14にも施して施工部13とする。そして、通常のように、防水工2の上面に基層71、表層72が施される。
【0060】
この場合、防水工2の施工部13の路面6側に向いている面は、凹所11内にあって壁高欄4の内壁面10から凹所11内に潜った位置にあるので、舗装機械等が壁高欄4の内壁面10に接触しても防水工2の施工部13に触れることはなく、損傷を受けない。床版3と壁高欄4の打継ぎ目5は防水工2及び端部保護部材1によって遮断されるので、漏水が打継ぎ目5を通って外部に漏れ出ることはない。
【0061】
(請求項11)図6図9で、本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造の別の態様は次の通りである。即ち、端部保護材1と防水工2を包含している。この端部保護材1は床版3と壁高欄4の打継ぎ目5の路面6側の境界部分7に配設されるもので互いに角度をなして張出する底版部8と立上げ部9を一体に有する。底版部8は床版3上に位置し、立上げ部9は上端に路面6側へ突き出た庇34を備え、背面31で壁高欄4の内壁面10に添設されている。そして、防水工2は、路面6の路幅方向の端部12が底版部8を覆い、端部12に続く施工部13が立上げ部9の内側面14に添設されて、その上端部が庇34で庇護されている。
【0062】
この形態は、壁高欄4に凹所11を設けないので、既設の壁高欄を対象とするのに適している。端部保護材1の立上げ部9は背面31が既設の壁高欄4の内壁面10と相対し、防水工2の施工部13の路面6側の面は壁高欄4の内壁面10より路面6側に位置する。このままでは、施工部13が舗装機械等による衝撃を直に受けることになるが、立上げ部9の上端には施工部13の上端を越えて路面6側に突き出た庇34があるので、この庇34が衝撃を代わりに受け、施工部を保護する。
【0063】
(請求項12)端部保護材1は非発錆性素材で構成されている。非発錆性素材としては、例えばステンレス鋼がある。
この場合、端部保護材1は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0064】
(請求項13)底版部8は張出端に床版3に形成される係合溝61と係合する凸条23を備えている。
この場合、床版コンクリートに凸条23の係合溝61を削成し、この係合溝61にモルタル等の接着材を入れて凸条23を係合させ、この接着材を固化させることにより、床版3上で端部保護材1がずれるのを防止できる。
【0065】
(請求項14)立上げ部9は張出端に壁高欄4に形成される係合溝62と係合する凸条33を備えている。
この場合、係合溝62にモルタル等の接着剤を充填して凸条33を係合させ、接着剤が硬化すれば立上げ部9が壁高欄4の内壁面10に密接し、立上げ部9が壁高欄4の内壁面10から外れて端部保護材1が路面6方向へずれ出すことがない。
【0066】
(請求項15)庇34は上面に路面6方向へ下りの勾配部35を備えている。
この場合、壁高欄4の表面を流下してきた雨水が庇34上に流れ落ちても、勾配部35により路面6方向へ導かれ、立上げ部9と壁高欄4の内壁面10間には流れ込まないので、壁高欄4や床版3の劣化を引き起こすことがない。
【0067】
(請求項16)端部保護材1は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材41をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっている。
この場合、製造上の制約であまり長尺にできない端部保護材1を、接続部材41で繋げることにより長手方向に延設できる。
【0068】
(請求項17)図6図9を参照して、本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造の別の構築法は次の通りである。端部保護材1は互いに角度をなして張出する底版部8と立上げ部9を一体に有しかつ立上げ部9の上端に路面6側へ突き出た庇34を備えている。この端部保護材1を、床版3と壁高欄4の打継ぎ目5の路面6側の境界部分7に、底版部8をこの床版3上に、また立上げ部9を壁高欄4の内壁面10と対向させて、設置する。そして、防水工2を底版部8の上面と立上げ部7の内側面14を被覆して渡設する。
この場合、既設の壁高欄4の内壁面10に凹所11を削成するという面倒な作業は必要なく、壁高欄4の表面を流下する雨水は庇34により立上げ部9の背面31と壁高欄4の内壁面10間に浸入するのを阻止されるので、壁高欄4や床版3の損壊を未然に防止できる。
【符号の説明】
【0069】
1 端部保護材
2 防水工
3 床版
4 壁高欄
5 打継ぎ目
6 路面
7 境界部分
8 底版部
9 立上げ部
10 内壁面
11 凹所
12 端部
13 施工部
14 内側面
21 底面
22 定着用部材
23 凸条
31 背面
32 定着用部材
33 凸条
34 庇
35 勾配部
41 接続部材
51 路肩端部
52 型枠
53 空隙
54 コンクリート
55 面木
N 釘
61 係合溝
62 係合溝
71 基層
72 表層
73 突起
74 調節用長孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11