【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1) 本発明にかかる床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造は、端部保護材と防水工を包含している。該端部保護材は床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に配設されるもので、互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有する。該底版部は該床版上に両者の上面が面一となって位置している。該立上げ部は該壁高欄等の内壁面に形成された凹所に該壁高欄等と一体となって収まっている。そして、該防水工は、該路面の路幅方向の端部が該底版部を覆い、該端部に続く部分は該立上げ部の内側面を覆う施工部となっている。
【0008】
該端部保護材は底版部と立上げ部が一体でかつ互いに角度をなして張出しており、これを床版と壁高欄等の打継ぎ目の境界部分に、該底版部を該床版の上面に面一に配置しかつ該立上げ部を壁高欄等の路面側の凹所に収容して、配置する。該端部保護材は接着材、鋲、釘等の固定手段で床版や壁高欄等と一体化される。このように、防水工の施工後は施工部が壁高欄等の路面側の凹所に収容されているので、舗装作業に使用する舗装機械が該壁高欄等の内壁面と接触することはあっても該施工部と接触することはなく、該施工部が損傷することはない。
【0009】
また、該端部保護材の底版部と立上げ部は一体なので、床版と壁高欄等の打継ぎ目は該防水工や該端部保護材によって完全に遮断され、舗装路面上を流れ、又は舗装内を浸透して床版上面を流れてきた水が該打継ぎ目に浸透することはない。
壁高欄等を伝わってくる雨水は路肩端部の凹部上面部から落下するため、端部保護材と防水工上端部が雨水に曝されることがないことから、防水工が劣化・剥離を生じても端部保護材との間に雨水が侵入することはない。
【0010】
(請求項2) 該端部保護材は非発錆性素材で構成されていてもよい。
こうすると、該端部保護材は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0011】
(請求項3)該底版部は底面に定着用部材を備えていてもよい。
こうすると、該定着用部材がコンクリート中に埋設されることにより、該端部保護材は安定して該境界部分に設置され、位置ずれしたりすることがない。
【0012】
(請求項4)該底版部は張出端に、該立上げ部側と反対側へ突き出た、該床版と係合する凸条を備えていてもよい。該凸条は該張出端部を折り曲げて形成しても、別体ものを溶接等で一体化してもよい。
こうすると、コンクリートの固化前に該凸条をコンクリート中に差し込んでおけば、その固化により、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0013】
(請求項5)該立上げ部は背面に定着用部材を備えていてもよい。
こうすると、該定着用部材が該壁高欄等の内壁面を形成するコンクリートに埋設された状態となるので、該立上げ部が該壁高欄等と一体化し、該端部保護材が該内壁面からずれ出るのを防止できる。
【0014】
(請求項6)該立上げ部は上端の該背面に、該壁高欄等と係合する凸条を備えていてもよい。
こうすると、該凸条が該壁高欄等のコンクリート中に喰い込んだ状態となるので、該立上げ部が該壁高欄等と一体化し、該端部保護材が該内壁面からずれ出るのを防げる。
【0015】
(請求項7)該立上げ部は張出端に該内側面側へ突き出た庇を備えていてもよい。
こうすると、該防水工の施工部の上端が該庇によって覆われるので、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該立上げ部と該壁高欄等の対向面間に流入することがなく、該立上げ部と該壁高欄等の一体化を損なうことがない。
【0016】
(請求項8)該庇は上面に該路面方向へ下る勾配部を備えていてもよい。
こうすると、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流下しても勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該施工部間に流入することがなく、該立上げ部と該施工部の一体化を損なうことがない。
【0017】
(請求項9)該端部保護材は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっていてもよい。
こうすると、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材で繋げることにより長手方向に延設できる。
【0018】
(請求項10)本発明に係る床版防水工の施工部の保護構造の構築法は、互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有する端部保護材を、床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に、該底版部を該床版上に両者の上面を面一として、また該立上げ部を該壁高欄等の位置内にそれぞれ配置して、設置する。路肩端部に型枠を該立上げ部の内側面との間に空隙を保って配置する。該型枠内にコンクリートを打設して該壁高欄等を形成する。そして、該型枠を外して防水工を該底版部の上面と該立上げ部の表面に渡設する。
この構築法を採用することにより、防水工の壁高欄等の施工部の内側面は壁高欄等の内壁面より該壁高欄等の内部へ潜った位置にあるので、舗装機械等は該内壁面に触れても施工部の内側面に直接触れることはなく、損傷から保護される。
【0019】
(請求項11)本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造の別の態様は次の通りである。即ち、端部保護材と防水工を包含している。該端部保護材は床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に配設されるもので互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有する。該底版部は該床版上に位置し、該立上げ部は上端に該路面側へ突き出た庇を備え、背面で該壁高欄等の内壁面に添設されている。そして、該防水工は、該路面の路幅方向の端部が該底版部を覆い、該端部に続く部分は該立上げ部の内側面に添設された施工部となり、その上端部が該庇で庇護されている。
【0020】
この発明は、既設の壁高欄等を備えた橋梁に適用するのが、望ましい。壁高欄等に凹所を設けるのは新設の場合のように容易でないので、端部保護材の立上げ部は背面が既設の壁高欄等の内壁面と相対することになる。この状態では、防水工の施工部の路面側の面は壁高欄等の内壁面より路面側に位置するので、立上げ部には施工部の路面側の面より路面側に突き出た庇が必要となる。この端部保護材は底版部が床版上面と、立上げ部が壁高欄等の内壁面と、それぞれ接着等によって一体化され、該境界部分に配設される。この状態で庇が施工部の上端を被覆し、舗装機械等による衝撃をこの庇の張出し端で受けて施工部を保護する。
【0021】
(請求項12)該端部保護材は非発錆性素材で構成されていてもよい。
こうすると、該端部保護材は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0022】
(請求項13)該底版部は張出端に該床版に形成される係合溝と係合する凸条を備えていてもよい。
こうすると、床版コンクリートに該凸条の係合溝を削成し、該係合溝にモルタル等の接着材を入れて該凸条を嵌合させ、該接着材を固化させることにより、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0023】
(請求項14)該立上げ部は上端に該壁高欄等に形成される係合溝と係合する凸条を備えていてもよい。
こうすると、該凸条と該係合溝との係合により、該立上げ部が該壁高欄等の内壁面から外れて該端部保護材が路面方向へずれ出すことがない。
【0024】
(請求項15)該庇は上面に該路面方向へ下りの勾配部を備えていてもよい。
こうすると、壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流れ落ちても、該勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該壁高欄等の内壁面間には流れ込まないので、該壁高欄等や床版の劣化を引き起こすことがない。
【0025】
(請求項16)該端部保護材は、自身の横断面外形に密接に嵌合する横断面内形を有する接続部材をその長手方向の端部に介在させて、長手方向に延設自在となっていてもよい。
こうすると、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材をその長手方向の端部に介在させて繋げることにより、長手方向に延設できる。
【0026】
(請求項17)本発明に係る床版防水工の施工部の保護構造の構築法の別の態様は次の通りである。即ち、互いに角度をなして張出する底版部と立上げ部を一体に有しかつ該立上げ部の上端に路面側へ突き出た庇を備えた端部保護材を、床版と壁高欄等の打継ぎ目の路面側の境界部分に、該底版部を該床版上に、また該立上げ部を該壁高欄等の内壁面と対向させて、設置する。そして、防水工を該底版部の上面と該立上げ部の内側面に渡設する。
【0027】
この構築法によると、既設の壁高欄等の内壁面に凹所を削成するという面倒な作業は必要なく、壁高欄等の表面を流下する雨水は庇により立上げ部の背面と壁高欄等の内壁面間に滲入するのを阻止されるので、壁高欄等や床版の損壊を未然に防止できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る床版防水工の壁高欄等の施工部の保護構造によれば、防水工の施工後は施工部が壁高欄等の路面側の凹所に収容されているので、舗装作業に使用する舗装機械が該壁高欄等の内壁面と接触することはあっても該施工部と接触することはなく、該施工部が損傷することはない。また、該端部保護材の底版部と立上げ部は一体なので、床版と壁高欄等の打継ぎ目は該端部保護材によって完全に遮断され、表層上を流れ、又は表層から基層内を浸透して床版上面を流れてきた水が該打継ぎ目に浸透することはない。
【0029】
請求項2によれば、端部保護材が錆びる心配がないので、長期にわたって供用できる。
【0030】
請求項3によれば、該底版部の底面の定着用部材がコンクリート中に埋設されることにより、該端部保護材は安定して該境界部分に設置される。
【0031】
請求項4によれば、該床版を構成するコンクリートにその固化前に該凸条を差し込んで固化させることにより、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0032】
請求項5によれば、該定着用部材が該壁高欄等の内壁面を形成するコンクリートに埋設された状態となるので、該立上げ部が該壁高欄等と一体化し、該定着用部材が該凹所からずれ出るのを防止できる。
【0033】
請求項6によれば、該立上げ部は該背面の凸条により壁高欄のコンクリート中に喰いこんでいるので、該立上げ部が該壁高欄等の該内壁面から外れて路面方向へずれ出るのを防止できる。
【0034】
請求項7によれば、該防水工の該施工部の上端が該庇によって覆われるので、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該立上げ部と該壁高欄等の対向面間に流入することがなく、該立上げ部と該壁高欄等の一体化を損なうことがない。
【0035】
請求項8によれば、該壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流下しても勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該壁高欄等の対向面間に流入することがなく、該立上げ部と該壁高欄等の一体化を損なうことがない。
【0036】
請求項9によれば、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材をその長手方向の端部に介在させて、繋げることにより長手方向に延設できる。
【0037】
請求項10の構築法によれば、防水工の該施工部の内側面は壁高欄等の内壁面より該壁高欄等の内部へ潜った位置にあるので、舗装機械等は該内壁面に触れても壁高欄等の施工部の内側面に直接触れることはなく、損傷から保護される。
【0038】
請求項11によれば、防水工の壁高欄等の施工部の路面側の面は壁高欄等の内壁面より路面側に位置するが、立上げ部には壁高欄等の施工部の上端を越えて路面側に突き出た庇があるので、該庇が該施工部の上端を被覆し、舗装機械等による衝撃をこの庇の張出し端で受けて該施工部を保護する。
【0039】
請求項12によれば、該端部保護材は雨水に濡れても錆びないので、長期にわたって供用できる。
【0040】
請求項13によれば、床版コンクリートに該凸条の係合溝を削成し、該係合溝にモルタル等の接着材を入れて該凸条を嵌合させ、該接着材を固化させることにより、該床版上で該端部保護材がずれるのを防止できる。
【0041】
請求項14によれば、該凸条と該係合溝との係合により、該立上げ部が該壁高欄等の内壁面から外れて該端部保護材が路面方向へずれ出すことがない。
【0042】
請求項15によれば、壁高欄等の表面を流下してきた雨水が該庇上に流れ落ちても、該勾配部により路面方向へ導かれ、該立上げ部と該壁高欄等の内壁面間には流れ込まないので、該壁高欄等や床版の劣化を引き起こすことがない。
【0043】
請求項16によれば、製造上の制約であまり長尺にできない該端部保護材を、接続部材をその長手方向の端部に介在させて繋げることにより、長手方向に延設できる。
【0044】
請求項17の本発明に係る床版防水工の施工部の保護構造の別の構築法によれば、既設の壁高欄等の内壁面に凹所を削成するという面倒な作業は必要なく、壁高欄等の表面を流下する雨水は庇により立上げ部の背面と壁高欄等の内壁面間に滲入するのを阻止されるので、壁高欄等や床版の損壊を未然に防止できる。