(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
まず、本発明の理解のために、一般的な被加工材へのマーキングについて説明する。
【0014】
コンピュータによる数値制御により動作するNC加工装置は、加工位置及び加工内容が定義されたNCデータと呼ばれる機械加工用のデータに基づいて加工動作を行う。このようなNCデータは、CADシステム等の設計ツールを用いて事前に作成された設計データ(例えば、DXF形式(Drawing Exchange Format)等による)を、各NCプログラムに応じたNCデータに変換することで生成することができる。
図8に、せん断加工に要する情報が記載された設計データ401Dから展開される図面を、
図9に、その他の加工に要する情報が記載された設計データ402Dから展開される図面を示す。
【0015】
設計データ401D及び402Dは、せん断加工により子材(部材)を切り出すための板状の母材(被加工材100)に対する設計情報である。具体的に、設計データ401Dには、
図8に記載の切断線やせん断条件等のせん断加工に要する描画要素に関する情報が、設計データ402Dには、
図9に記載の母材及び子材(部材)の番号、溶接対象部材番号、各種指示等に代表される、後の加工に要する描画要素に関する情報が記載されている。
【0016】
ここで、このような設計データのマーキングには、例えば次のような方法がある。
1.設計データ401Dに記載される情報を罫書きしてからせん断を行い、その後設計データ402Dに記載される情報を描き込む方法。
2.設計データ401Dに記載される情報を罫書きせず直にせん断を行い、その後設計データ402Dに記載される情報を描き込む方法。
3.設計データ401Dと設計データ402D双方に記載される情報を全て描き込み、その後せん断を行う方法。
【0017】
このように、上記どのような方法を取ったとしても設計データ402Dに記載される情報のマーキングは必須である。そこで、本発明に係るマーキングシステムでは、少なくとも設計データ402Dに記載される情報を、製造ライン(例えば、鋼板ショット&塗装ライン)上で高精度かつ効率的にマーキングすることを可能とする。以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るマーキングシステム1の構成を示すブロック図である。マーキングシステム1は、マーキング制御装置2と、マーキング装置3と、表示装置4と、入力装置5と、ROM装置6と、を有する。
【0019】
表示装置4は、例えば制御部22で生成された情報を表示する。このような表示装置4は、一般的な液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成される。
【0020】
入力装置5は、使用者からの指示を操作を介して受け付ける。このような入力装置5は、マウスやキーボード、タッチパネル等の一般的なユーザインターフェースで構成される。
【0021】
ROM装置6は、CD-ROMやDVD-ROM等のROM(Read Only Memory)や、IC(Integrated Circuit)カードといった、少なくとも読み取りが可能な記憶媒体から情報を読み取るための、一般的なデバイスで構成される。
【0022】
次に、マーキング装置3について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るマーキング装置3の斜視図である。マーキング装置3は、被加工材を搬送する搬送ライン91に沿ってその両側に設置される2本のレール31a及び31bと、該各レール上をそれぞれ走行する2つの台車32a及び32bと、該2つの台車にまたがって搭載されるキャリッジ33と、キャリッジ33に取り付けられた5つのロボット34a〜34eと、各部の駆動制御を行う駆動回路35と、からなる。
【0023】
搬送ライン91は被加工材をその上に戴置して搬送するラインであり、ここではベルトコンベア型のラインとしているが、ローラコンベアやホイールコンベア等、被加工材を搬送可能であればどのような構成を有していてもよい。また、搬送ライン91は、マーキング専用のラインとして独立していてもよいが、前段工程のライン(例えば、鋼板ショット&塗装工程のライン)と共有されていることが望ましい。
【0024】
レール31a及び31bは、搬送ライン91を挟んで対向する位置に平行に設置される2本のガイドレールである。各レールは、この上を走行する各台車32a及び32bをそれぞれ搬送ライン91の搬送方向と平行なX軸方向に往復動可能にガイドする。
【0025】
台車32a及び32bは、レール上を走行するための走行モータ321を有する走行装置である。各台車32a及び32bは相互に同期した走行動作を行い、台車間に跨って搭載されているキャリッジ33をX軸方向に往復動させる。
【0026】
キャリッジ33は、両端が台車32aと32bとに支持されており、該台車と共に搬送ライン91上の空間を移動する。また、キャリッジ33の内部には、後述の駆動回路35が搭載されている。
【0027】
ロボット34a〜34e(以下、各ロボットの識別が必要無き場合にはa〜eは省略する)は、被加工材への印字を行う水平多関節ロボット(スカラ型ロボット)である。ロボット34a〜34eは、キャリッジ33の下面(搬送ライン91と対向する面)に長手方向に一列(又は、千鳥配置)に取り付けられており、それぞれがロボットモータ341と、2本のアーム3421及び3422と、印字ヘッド343と、を備えている。
【0028】
各ロボットモータ341は、印字ヘッド343と、各ロボットのアーム3421及びアーム3422とをそれぞれ回動させ、印字位置へ後述のインクノズルの位置あわせを行う。なお、各アームや印字ヘッド343を加工面に対し垂直なZ軸方向に移動させて、高さを調整することも可能である。
【0029】
具体的に、アーム3421はキャリッジ33に支持軸Aを回動中心として回動自在に取り付けられ、アーム3422はアーム3421に支持軸Bを回動中心として回動自在に取り付けられている。このような支持軸A及びBを回動中心として回動することで、アーム3421及びアーム3422は搬送ライン91上空のXY平面を移動し、印字ヘッド343を所定の印字位置まで360°自由に移動させることができる
【0030】
各印字ヘッド343は、アーム3422の支持軸Bとは逆の一端に、支持軸Cを回動中心として回動自在に取り付けられており、搬送ライン91と対向する面にノズルヘッド344を有している。各ノズルヘッド344には、図示しない複数のインクノズルが形成されて、各インクノズルにはそれぞれ圧電素子が取り付けられている。なお、該インクノズルは電圧が印加されるとインクタンクから供給されるインクを加工面へと噴出させる。なお、ここでは印字機構はピエゾ方式のインクジェット式としたが、代わりにどのような印字機構を用いてもよい。
【0031】
駆動回路35は、
図1に示すようにマーキング制御装置2に接続されており、マーキング制御装置2から駆動制御信号を受け付ける。なお、駆動回路35は、台車駆動回路35A、ロボット駆動回路35B、ノズル駆動回路35Cに分けられる。
【0032】
台車駆動回路35Aは、マーキング制御装置2からの台車駆動制御信号を受け付けると、走行モータ321a及び走行モータ321bを動作させて台車を特定の方向(X軸方向)に特定の速度で移動させる。
【0033】
ロボット駆動回路35Bは、マーキング制御装置2からロボット駆動制御信号を受け付けると、ロボットモータ341a〜341eを動作させて各ロボットの有するアーム3421及びアーム3422、そして印字ヘッド343を回動させ、インクノズルを所定の印字位置(XY座標位置)へと移動させる。
【0034】
ノズル駆動回路35Cは、マーキング制御装置2からノズル駆動制御信号を受け付けると、該制御信号に基づいて対象となる圧電素子に電圧を印加し、各インクノズルにインクを噴出させる。
【0035】
次に、このようなマーキング装置3への制御信号を生成するマーキング制御装置2について説明する。
図1に示すように、マーキング制御装置2は、記憶部21と、制御部22と、I/F部23と、を有する。
【0036】
I/F部23は、各装置とマーキング制御装置2を情報の送受信可能に接続する。なお、当該接続は、ネットワークを介していてもよい。
【0037】
記憶部21は、エリア情報記憶領域と211と、設計データ記憶領域212と、を有する。エリア情報記憶領域211は、マーキング装置3の有するロボットの担当する印字エリアを規定するエリア情報が予め格納されている。エリア情報の詳細については、後述する。
【0038】
設計データ記憶領域212には、上述のCADシステム等の設計ツールを用いて事前に作成された設計データ401D及び402D両方の内容を有する
図4に示すような設計データ403Dが記憶されている。なお、設計データ403Dにおいて、設計データ401Dの情報と設計データ402Dの情報は、異なるレイヤに分けて記載されているものとする。
【0039】
制御部22は、エリア設定部221と、図面修正部222と、印字制御部223と、を有する。エリア設定部221は、被加工材に対して各ロボットがそれぞれ印字を担当する印字エリアを設定する。
図3に、各ロボットによる印字エリアを説明するための説明図を示す。図示するように、被加工材100には、所定の縦幅を有する複数の行エリアA〜Eと、所定の横幅を有する複数の列エリア1〜8と、が規定されている。
【0040】
行エリアA〜Eは、各ロボットがそれぞれ担当する印字エリアであり、ここではロボットが5つ存在するのでロボット34aが印字を担当するA行、ロボット34bが印字を担当するB行、ロボット34cが印字を担当するC行、ロボット34dが印字を担当するD行、ロボット34eが印字を担当するE行の5個の行エリアが規定されている。
【0041】
列エリアは1〜8、それぞれ各ロボットが一度の印字動作で印字を行うエリアである。一度の印字動作とは、ここでは台車32がレール31を一往復する動作をいう。よって、被加工材100は8回の印字動作が繰り返されることで印字が行われる。このような印字動作は、印字制御部223によって制御される。以下、印字制御部223の行う処理について説明する。
【0042】
印字制御部223は、後述の印字データ502Dに基づいてマーキング装置3の各駆動回路35へ出力するための信号を生成し、マーキング装置3に次のような一連の印字動作を繰り返し行わせる。
【0043】
まず、印字制御部223は、台車32を搬送ライン91の流れの上流側に位置する所定の待機位置SPに待機させる。そして、被加工材100が所定の位置(例えば、待機位置SP)まで搬送されてきたことが汎用の検出手段によって検出されると、台車32を搬送ライン91の移動方向と同方向へ同速で移動させながら、各ロボット34に担当する行エリアにおける、1つめの列エリア内への印字を行わせる。即ち、台車32を被加工材100に対して相対的に停止させた状態で印字を行わせる(以下、一つのロボットによって一度の印字動作で印字が行われる方形の領域を、「セル」と称する)。なお、各セル内への印字は、台車32が所定の終了位置EPに到達するまでの時間T以内に終了するよう制御される。即ち、ロボット34aは、セルA1への印字を時間T以内に終わらせる。台車32が終了位置EPに到達すると、印字制御部223は、台車32を再び待機位置SPへと戻させる。
【0044】
このように印字エリア(セル)の設定は、マーキング装置3の構成(例えば、ロボットの数、アームの長さ、各支持軸の回動速度等)や被加工材100の大きさ、搬送ライン91の速さ等の各種条件から定まるものである。ここでは、上記条件に適したエリアが予め設定されたエリア情報が、エリア情報記憶領域211に予め記憶されているものとする。よってエリア設定部221は、エリア情報をエリア情報記憶領域211から、設計データ403Dを設計データ記憶領域212から取得し、該設計データ403Dにおける新たなレイヤにエリア情報を示す境界線60a及び60bを描画した、印字データ501Dを生成する。
図4に、このような印字データ501Dから再現される図面を示す。なお、ここでは印字データ501Dは、DXFに代表されるテキスト形式のフォーマットであるものとするが、他のどのようなフォーマットのデータであってもよい。また、設計データ403D、印字データ501D、及びエリア情報は、その都度外部から取得することも可能である。
【0045】
なお、エリア設定部221がエリア情報の生成を行う場合には、上記条件を取得して、ロボット同士が干渉せず各セル内への印字を所定の時間T以内に終了し得るような印字エリア(セル)を演算、設定してもよい。
【0046】
ここで、印字データ501Dにおいて描画要素が行エリアの境界線60aに重なっている場合、一つのロボットが一つの描画要素の印字を担当することが不可能であるために、隣のロボットとの干渉を招いてしまう可能性がある。また、列エリアの境界線60bに重なっている場合、一度の印字動作での印字が行えないために、印字位置がずれる可能性も考えられる。そこで、上記のようにして生成された印字データ501Dは、図面修正部222によって、各ロボットの印字に適したデータに修正される。
【0047】
図面修正部222は、まず、印字データ501Dから、加工に要する情報を抽出する。これは、上記したように
図9に示す設計データ402Dの内容が記載されている所定のレイヤを選択することで実行可能である。
【0048】
次に、図面修正部222は、選択したレイヤから各描画要素を検出する。描画要素とは、
図4に示すような子材の番号や母材の番号が記載されているテキスト要素51や、後の処理の指示等に用いるための図形が記載されている図形要素52である。なお、互いに分離が禁止される要素(テキストとテキスト、図形と図形、テキストと図形等、互いに分離して取り扱うことができない要素。例えば、
図4におけるテキスト要素54aと図形要素54b、テキスト要素55aと図形要素55b)が存在する場合には、これを一の描画要素として取り扱うものとする。これは例えば、設計データ402Dの生成時に予め分離が禁止される各要素どうしをグループ化して1つの纏り(図形ブロック)として登録しておき、図面修正部222が図形ブロックを一の描画要素として認識することで実現可能である。そして図面修正部222は、
図5に示すような要素テーブル500を生成して、抽出した描画要素に任意の識別子を割り当て識別子登録欄500aに登録する。
【0049】
さらに、図面修正部222は、印字データ501Dから各描画要素の座標を抽出して、要素テーブル500の座標登録欄500bに登録する。ここには例えば描画要素の開始点、終了点、中央点、及び描画点等が登録され、該描画要素が占めている座標が導出し得るように記載される。
【0050】
そして、図面修正部222は、各描画要素について、位置の修正の可否を判定する。位置の修正の可否とは、印字データ上で各描画要素に対して移動、改行等を実行した際に、不都合が生じないか否かで判断される。このような判断は、利用者に行わせてもよいし、図面修正部222が自動で行ってもよい。
【0051】
利用者に判断させる場合は、表示装置4に印字データ501Dをグラフィック展開し、利用者に、入力装置5を介して各描画要素について位置の修正の可否を入力させる。また、設計データ402Dの生成時に修正の可否で描画要素を分類させておいてもよい。例えば、予め修正が可能なものと不可能なものとをレイヤ、色、フォント等で分類しておき、図面修正部222にこれを判定させる。
【0052】
図面修正部222が自動で判定を行う場合は、例えば次のような方法が挙げられる。図形55bは罫書線40上に存在しており、これを移動した場合、後の工程において不都合が生じる可能性がある。そこで、図面修正部222は、設計データ401Dのレイヤに記載される要素と重なる描画要素については修正が不可と判断し、要素テーブル500の修正の可否登録欄500cに登録する。なおここでは、修正が可能な場合「1」、修正が不可能な場合「0」を登録されているものとする。
【0053】
次に図面修正部222は、描画要素の位置修正を行う。具体的に、図面修正部222は、修正が可能であり、かつ、境界線60a及び60bと重なる位置に存在する描画要素を抽出して、当該描画要素の位置を修正する。
図6は、修正処理後の印字データ502Dを示す説明図である。なお、位置の修正には、例えば次のような方法が挙げられる。
【0054】
第一の方法として、図面修正部222は、修正対象の描画要素を移動(中央点の移動を伴う位置の変更)し、セル内に収める。なおその際には、他の要素上への移動や、設計データ401Dのレイヤに記載の要素で規定される部材外への移動(母材や子材等の内側から切断線を超える外側への移動)は禁止される。即ち描画要素は、予め自身が存在する部材内において、他の要素と重ならぬように、何れかのセル内に収められる。
【0055】
なお、このような条件内であれば描画要素をどのように移動させることも可能であるが、元の設計から大きく逸脱させない為には、極力移動量を少なく抑えることが望ましい。
【0056】
例えば図面修正部222は、修正対象の描画要素が存在する閉じた要素(部材)を抽出し、セルごとに分ける。そして、各セルについて移動可能な空間(他の要素が存在していない空間)を検出して、この面積が修正対象の描画要素の座標構成面積よりも大きく、かつ、最も移動量が少なくて済むセルへと、描画要素を移動させる。
図6では、描画要素71〜75が、境界線60a及び60bと重ならない位置へわずかな移動量で移動している。
【0057】
第二の方法として、図面修正部222は、修正対象の描画要素を変更(中央点の移動を伴わない範囲の変更)し、セル内に収める。これは例えば、縮小や回転、及びテキストの改行等が挙げられる。
【0058】
具体的に図面修正部222は、上記移動可能な空間の面積に収まるよう、描画要素を修正する。例えば
図6に記載の描画要素76〜79は、セル内に収まるよう改行によって座標範囲が変更されている例である。
【0059】
なお、これらの修正処理は何れかに限定されるものではなく、どのように実行してもよい。具体的には、利用者が何れかの方法を選択可能な構成としてもよいし、各修正処理を自由に組み合わせて行うことも可能である。例えば図面修正部222は、修正対象の描画要素の座標構成面積よりも移動可能な空間の面積が小さく、移動先が見つからない場合、描画要素を縮小してその座標構成面積を移動先の面積以下に変更してから、移動させてもよい。
【0060】
このようにして修正された印字データ501Dは、印字データ502Dとして設計データ記憶領域212に記憶され、印字制御部223は、このような印字データ502Dに基づいてマーキング装置3の動作を制御する。
【0061】
ここで、マーキング制御装置2のハードウェア構成について説明する。
図11はマーキング制御装置2の電気的な構成を示すブロック図である。
【0062】
図11に示すように、マーキング制御装置2は、各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)901と、各種データを書換え可能に記憶するメモリ902と、各種のプログラム、プログラムの生成するデータ等を格納する外部記憶装置903と、外部装置と情報の送受信可能に接続するI/F904と、これらを互いに接続するバス905と、を備える。マーキング制御装置2は、例えば、外部記憶装置903に記憶されている所定のプログラムを、メモリ902に読み込み、CPU901で実行することにより実現可能である。
【0063】
なお、上記した各構成要素は、マーキング制御装置2の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。マーキング制御装置2が行う処理は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0064】
また、各機能部は、ハードウエア(ASICなど)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が一つのハードウエアで実行されてもよいし、複数のハードウエアで実行されてもよい。
【0065】
以上のように構成される本実施形態にかかるマーキング制御装置2の実行する処理について、
図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係るマーキング制御装置2の実行する処理の流れを示すフローチャートである。このフローは、例えば入力装置5を介して利用者からの開始指示を受けた場合に開始される。
【0066】
エリア設定部は、まず、印字データ501Dを生成する(ステップS101)。
【0067】
具体的にエリア設定部221は、エリア情報記憶領域211からエリア情報を、設計データ記憶領域212から設計データ403Dを読み出して、これらを別のレイヤに登録した印字データ501Dを生成する。そしてエリア設定部は、図面修正部222に修正処理の開始を要求する。
【0068】
図面修正部222は、描画要素を抽出する(ステップS102)。
【0069】
具体的に図面修正部222は、修正処理の開始要求を受け付けると、印字データ501Dから設計データ402Dの情報が記載されているレイヤを選択し、ここから描画要素を抽出する。そして、要素テーブル500を作成し、各描画要素に一意の識別子を付与して識別子登録欄500aに登録する。また、各描画要素の座標を、座標登録欄500bに登録する。
【0070】
次に、図面修正部222は、各描画要素の修正の可否を判定する(ステップS103)。
【0071】
具体的に図面修正部222は、各描画要素が、設計データ401Dのレイヤに記載される要素と重なるか否かを判定する。描画要素が設計データ401Dのレイヤに記載される要素と重なる場合には、修正が不可能であると判定して「0」を、重ならない場合には「1」を、修正の可否登録欄500cに登録する。
【0072】
さらに図面修正部222は、修正対象となる描画要素を抽出する(ステップS104)。
【0073】
具体的に図面修正部222は、修正の可否登録欄に「1」が登録されている描画要素を要素テーブル500から抽出する。そして、抽出された描画要素の中からさらに、境界線60a及び60bと重なるものを修正対象の描画要素として抽出する。
【0074】
そして図面修正部222は、修正対象の描画要素を修正する(ステップS105)。
【0075】
具体的に図面修正部222は、修正対象の描画要素が存在する閉じた要素(部材)を抽出してセルごとに分ける。そして、各セルについて移動可能な空間を検出し、そこへ描画要素を移動させる。最後に図面修正部222は、修正後の印字データ502Dを、設計データ記憶領域212に記憶させる。
【0076】
以上、マーキング制御装置2の修正処理の一実施例について説明した。
【0077】
なお、上記フローの各処理単位は、マーキング制御装置2の処理を理解容易にするために主な処理内容に応じて分割したものである。構成要素の分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。また、マーキング制御装置2の構成は、処理内容に応じてさらに多くの構成要素に分割することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0078】
このように本発明のマーキング制御装置2によれば、搬送ライン上でその流れを止めることなくマーキングを行うことが可能であるため、効率的かつ合理的な加工が可能となる。
【0079】
また、スカラ型ロボットを複数設けることで、キャリッジの往復動による高速な印字が可能となり、マーキング装置を小型化し、当該装置が搬送ライン上で占有する場所を大幅に小さくすることができる。これにより、専用のラインを設けることなく、現状の搬送ラインにマーキング装置を直接設置することも可能である。
【0080】
なお、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
【0081】
例えば、修正が不可能と判定され行エリアの境界線60a上に残った描画要素については、当該境界線の両側のセルを担当するそれぞれのロボットの何れか一方にアームを伸張させて印字を担当させてもよい。その場合には、印字を担当しない他方のロボットは、印字を担当するロボットに干渉しないよう制御される。
【0082】
さらに、行エリアの境界線60a又は列エリアの境界線60bの何れか一方のみを対象として、修正処理を実行してもよい。例えば、隣接するロボットどうしの干渉を防ぐ目的であれば、行エリアの境界線60a上に存在する描画要素に対してのみ修正処理を行えばよい。
【0083】
また、上記実施形態では、修正処理は移動量を少なく抑えるよう移動させる例を挙げたが、セルの中心により近い座標に移動させるような構成としてもよい。これにより、他のロボットと干渉しにくく、アームの移動距離が短く抑えられる効率的なマーキングが可能となる。
【0084】
さらに、上記実施形態では台車32の往復動を利用した印字動作を繰り返すことで、比較的短いレール31でのマーキングを可能としていた。しかしながら必ずしも複数の印字動作を行う必要はなく、例えば、長いレールを設けて一度の印字動作でのマーキングが可能な構成としてもよい。その場合には、列エリアを有さず行エリアのみが規定されるエリア情報が採用される。
【0085】
また、上記実施形態では被加工材100が搬送ライン91上において所定の基準位置に戴置されている場合を想定しているが、必ずしも被加工材100が基準位置に戴置されているとは限らない。よって、被加工材100が基準位置に対してずれている場合、そのずれ量をマーキングに反映させる必要がある。
【0086】
そこで、マーキング装置3は、被加工材100のずれ量検出手段を、さらに有していてもよい。これは例えば、被加工材100の位置と、基準位置からのずれ量を特定可能なものであれば、光センサ等どのようなものであってもよい。このようなずれ量検出手段の測位結果はマーキング制御装置2に送信される。マーキング制御装置2は、当該ずれ量を要素テーブル500に登録される各要素の座標500bに加えて、その座標位置を補正する。これにより、被加工材100の戴置位置に左右されることのない正確なマーキングが可能となる。