特許第5886084号(P5886084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886084
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】ステージ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20160303BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20160303BHJP
   H01L 21/66 20060101ALN20160303BHJP
【FI】
   H01L21/68 K
   B65G49/07 E
   H01L21/68 N
   !H01L21/66 J
   !H01L21/66 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-48332(P2012-48332)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-183153(P2013-183153A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】小原 達也
(72)【発明者】
【氏名】野本 剛
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−199243(JP,A)
【文献】 特開2007−266585(JP,A)
【文献】 特開2006−297545(JP,A)
【文献】 特表2010−514167(JP,A)
【文献】 特開2009−246238(JP,A)
【文献】 特開2007−53244(JP,A)
【文献】 特開2003−28974(JP,A)
【文献】 特開2007−216349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
B65G 49/07
H01L 21/683
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に移動可能なステージと、
前記ステージと共に移動し前記ステージ上で回転可能なθテーブルと、
前記ステージに対して前記θテーブルを回転可能に支持する回転軸受と、
前記θテーブルを回転駆動する回転駆動手段と、
前記ステージを水平方向に駆動する水平駆動手段と、
前記θテーブルの回転中心を間に挟む対称な位置に各々設けられ、前記θテーブルの移動量を検出する一対のセンサと、
前記各センサが検出した移動量を加算または減算した値を用いて前記回転駆動手段を制御することにより前記θテーブルの位置を制御する制御手段と、
前記θテーブルの前記ステージに対する鉛直方向の運動を許容しながら前記θテーブルの回転を拘束する第1拘束手段と、
前記θテーブルの回転を前記第1拘束手段よりも強く拘束する第2拘束手段と、
を備えるステージ装置。
【請求項2】
前記第2拘束手段は、前記第1拘束手段を押圧することにより、前記θテーブルの回転を拘束する、請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
水平方向に移動可能なステージと、
前記ステージと共に移動し前記ステージ上で回転可能なθテーブルと、
前記ステージに対して前記θテーブルを回転可能に支持する回転軸受と、
前記θテーブルを回転駆動する回転駆動手段と、
前記ステージを水平方向に駆動する水平駆動手段と、
前記θテーブルの回転中心を間に挟む対称な位置に各々設けられ、前記θテーブルの移動量を検出する一対のセンサと、
前記各センサが検出した移動量を加算または減算した値を用いて前記回転駆動手段を制御することにより前記θテーブルの位置を制御する制御手段と、
を備え、
前記回転駆動手段は、
モータと、
前記モータにより駆動されるボールねじと、
前記ボールねじのナット部に取り付けられ、前記θテーブルの一部に接触し、前記θテーブルを水平方向に回転させるように押すローラと、
前記ステージと前記θテーブルとを接続し、前記一部を前記ローラに押し付けるように付勢するバネと、を備えるステージ装置。
【請求項4】
前記水平駆動手段は、前記ステージを第1の方向に駆動する第1駆動手段と、前記ステージを前記第1の方向と直交する第2の方向に駆動する第2駆動手段とを有し、
前記一対のセンサは、前記一対のセンサを結ぶ直線が前記第1の方向および前記第2の方向のいずれに対しても交差するように配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項5】
定盤と、前記ステージおよび前記θテーブルを前記定盤上に支持する支持手段とを備え、
前記回転軸受は、クロスローラベアリングを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)や半導体基板等の板状の作業対象物の製造や検査に利用されるステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステージ装置として、定盤の上を移動するステージと、ステージ上に載置されたθテーブルとを有するステージ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このステージ装置において、θテーブルは鉛直軸の周りに回転可能に構成されている。そして、このステージ装置においては、θテーブルが回転した移動量を検出するために、センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−246238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のステージ装置にあっては、ステージが定盤の上を移動した際に、θテーブルに変形が生じ、その結果、θテーブルが実際には回転していないにもかかわらず、センサは、θテーブルが回転したと誤って検出してしまうことがあり、誤った検出結果に基づいてθテーブルの回転位置の制御が行われる結果、θテーブルの回転位置を正確に制御できない場合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、θテーブルの回転位置を正確に制御することのできるステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステージ装置は、水平方向に移動可能なステージと、ステージと共に移動しステージ上で回転可能なθテーブルと、ステージに対してθテーブルを回転可能に支持する回転軸受と、θテーブルを回転駆動する回転駆動手段と、ステージを水平方向に駆動する水平駆動手段と、θテーブルの回転中心を間に挟む対称な位置に各々設けられ、θテーブルの移動量を検出する一対のセンサと、各センサが検出した移動量を加算または減算した値を用いて回転駆動手段を制御することによりθテーブルの位置を制御する制御手段と、前記θテーブルの前記ステージに対する鉛直方向の運動を許容しながら前記θテーブルの回転を拘束する第1拘束手段と、前記θテーブルの回転を前記第1拘束手段よりも強く拘束する第2拘束手段と、を備える。
【0007】
このステージ装置によれば、θテーブルの移動量を、θテーブルの回転中心を間に挟む対称な位置に各々設けられた一対のセンサにより検出し、各センサによって検出した移動量を加算または減算した値を用いて回転駆動手段を制御することによりθテーブルの位置を制御する。このとき、センサ各々が、θテーブルが平面視において時計回りの回転をした場合に正の値を検出する場合には、ステージの移動により生じるθテーブルの変形に起因したセンサ各々の検出値は、絶対値が等しく、また、一方が正の値で、他方が負の値となる。そのため、センサ各々が検出した移動量を加算することにより、ステージの移動によるθテーブルの変形の影響をキャンセルすることができ、その結果、θテーブルの移動量を正確に検出でき、正確なθテーブルの移動量に基づいてθテーブルの位置を制御することができる。また、センサ各々が、θテーブルがステージに対してある方向に並進移動した場合に正の値を検出する場合には、ステージの移動により生じるθテーブルの変形に起因したセンサ各々の検出値は、絶対値が等しく、また、同じプラスマイナス符号を有する。そのため、センサ各々が検出した移動量を減算することにより、ステージの移動によるθテーブルの変形の影響をキャンセルすることができ、その結果、θテーブルの移動量を正確に検出でき、正確なθテーブルの移動量に基づいてθテーブルの位置を制御することができる。このようにして、センサの検出する値のプラスマイナス符号がいずれの場合でも、θテーブルの回転位置を正確に制御することができる。また、θテーブルに対するステージの鉛直方向の運動を許容しながらθテーブルの回転を拘束する第1拘束手段を備える。この場合、θテーブルに対するステージの鉛直方向の運動が許容されるため、ステージが水平方向に移動しステージに鉛直方向の振動が生じた場合のθテーブルにおける鉛直方向の振動を緩衝しつつ、第1拘束手段によってθテーブルの回転を拘束することで、θテーブルの回転位置をより正確に制御することができる。また、θテーブルの回転を第1拘束手段よりも強く拘束する第2拘束手段を備える。この場合、第2拘束手段によってθテーブルの回転をさらに強く拘束することができるため、θテーブルの回転位置をさらに正確に制御することができる。
【0008】
また、水平駆動手段は、ステージを第1の方向に駆動する第1駆動手段と、ステージを第1の方向と直交する第2の方向に駆動する第2駆動手段とを有し、一対のセンサは、一対のセンサを結ぶ直線が第1の方向および第2の方向のいずれに対しても交差するように配置されていることが好適である。この場合、ステージが第1の方向および第2の方向のいずれに移動した場合でも、ステージの移動により生じるθテーブルの変形に起因した一対のセンサの検出値が変化するので、一対のセンサによって、各センサの検出値の誤差を打ち消すことができ、θテーブルの回転位置をより正確に制御することができる。
【0009】
また、定盤と、ステージおよびθテーブルを定盤上に支持する支持手段とをさらに備え、回転軸受は、クロスローラベアリングを有することが好適である。この場合、回転軸受がクロスローラベアリングを有するため、半径方向、軸方向等の荷重を受けても円滑な回転が可能になる。
【0012】
また、第2拘束手段は、第1拘束手段を押圧することにより、θテーブルの回転を拘束することが好適である。この場合、第2拘束手段は第1拘束手段を押圧することによりθテーブルの回転を拘束するため、第1拘束手段がθテーブルのステージに対する鉛直方向の運動を緩衝しつつ、この第1拘束手段を介してθテーブルを第2拘束手段により拘束することができ、θテーブルの回転位置を正確に制御することができる。
【0013】
本発明に係るステージ装置は、水平方向に移動可能なステージと、ステージと共に移動しステージ上で回転可能なθテーブルと、ステージに対してθテーブルを回転可能に支持する回転軸受と、θテーブルを回転駆動する回転駆動手段と、ステージを水平方向に駆動する水平駆動手段と、θテーブルの回転中心を間に挟む対称な位置に各々設けられ、θテーブルの移動量を検出する一対のセンサと、各センサが検出した移動量を加算または減算した値を用いて回転駆動手段を制御することによりθテーブルの位置を制御する制御手段と、を備え、回転駆動手段は、モータと、モータにより駆動されるボールねじと、ボールねじのナット部に取り付けられ、θテーブルの一部に接触し、前記θテーブルを水平方向に回転させるように押すローラと、ステージとθテーブルとを接続し、一部をローラに押し付けるように付勢するバネと、を備える。この場合、ボールねじのナット部が一方向に移動すると、θテーブルの一部がナット部に取り付けられたローラに押されることにより、θテーブルが水平方向に例えば正転し、かつ、ステージに対して鉛直方向に移動でき、また、ナット部が逆方向に移動すると、θテーブルの一部がバネによって付勢されてローラに押し付けられ、θテーブルが逆転し、かつ、ステージに対して鉛直方向に移動できるため、θテーブルの回転位置を正確に制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るステージ装置によれば、θテーブルの回転位置を正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るステージ装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るステージ装置を示す正面図である。
図3】第1実施形態に係るステージ装置を示す平面図である。
図4図1のIV−IV線矢視図である。
図5】第2実施形態に係るステージ装置のθテーブルとX軸ステージの連結部を模式的に示す図である。
図6】第3実施形態に係るステージ装置のθテーブルとX軸ステージの連結部を模式的に示す図である。
図7】第4実施形態に係るステージ装置のθテーブルとX軸ステージの連結部を模式的に示す図である。
図8】第5実施形態に係るステージ装置の回転駆動手段を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係るステージ装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、X軸及びY軸は水平面上で互いに90度をなし、鉛直方向をZ軸方向と定め、以下必要な場合にX軸、Y軸、Z軸を用いる。
【0017】
(第1実施形態)
図1図3を参照して、第1実施形態に係るステージ装置1について説明する。図1は、ステージ装置1を示す斜視図であり、図2は、ステージ装置1を示す正面図であり、図3は、ステージ装置1を示す平面図である。
【0018】
ステージ装置1は、水平面に平行に設置される定盤11と、定盤11に搭載され、Y軸方向に移動可能なY軸ステージ12と、Y軸ステージ12に搭載されX軸方向に移動可能なX軸ステージ(ステージ)21と、X軸ステージ21の上方に設けられ、Z軸周りに回転可能なθテーブル31と、を備えて構成されている。
【0019】
定盤11は、その上面に平面加工がなされている。これにより、X軸ステージ21の下方に設けられX軸ステージ21を静圧浮上させるエアパッド26や、θテーブル31の下方に設けられθテーブル31を静圧浮上させるエアパッド32が定盤11の上面で滑走可能となっている。また、定盤11のX軸方向の両端には、Y軸方向に延在する一対のY軸ガイド11a,11aが形成されている。
【0020】
定盤11上を滑走するY軸ステージ12は、Y軸ガイド11a,11aにガイドされながらそれぞれY軸方向へ移動する一対のY軸スライダ16,16の間を架け渡すように設けられている。Y軸スライダ16は、Y軸ガイド11aに対して空気圧により静圧浮上し、Y軸スライダ16とY軸ガイド11aの対向する面がそれぞれ接触しないように構成されている。
【0021】
Y軸ステージ12は、一対のY軸リニアモータ(第1駆動手段)13,13によってY軸方向に駆動される。このY軸リニアモータ13は、X軸方向に延在するY軸移動子14と、Y軸方向に延在するY軸レール15とを備えて構成されている。このY軸レール15は、Y軸方向から見て略コの字状の形状を有しており、その内壁の上下面が対向している。Y軸レール15の内壁の上下面には複数の永久磁石が並設されている。Y軸移動子14は、Y軸スライダ16からX軸の外側方向へ延びるようにY軸スライダ16に固定されており、Y軸レール15の内壁の上下面に設けられた永久磁石の間に挿入されている。Y軸移動子14は、複数のコイルをY軸方向に連結して構成されている。このY軸移動子14のコイルに通電を行うと、Y軸レール15の永久磁石が発生する磁界によってY軸移動子14のコイルがY軸方向の推力を受ける。この結果、Y軸ステージ12は、Y軸移動子14が固定されたY軸スライダ16を介してY軸方向の推力を受けてY軸方向に駆動される。
【0022】
次に、図4を参照してX軸ステージ21の構成を説明する。図4は、図1のIV−IV線矢視図である。X軸ステージ21は、四角筒形状をなし、Y軸ステージ12を周囲から囲むようにして設けられ、X軸方向に移動可能に設けられている。X軸ステージ21の内部には、X軸方向にY軸ステージ12が挿通しており、X軸ステージ21はY軸ステージ12にガイドされてX軸方向に移動する。この、X軸ステージ21の四隅からはその下方に支柱25が延びており、各支柱25の下端にはそれぞれ前述したエアパッド26が設けられている。エアパッド26は空気圧によって定盤11に対して静圧浮上している。
【0023】
また、X軸ステージ21は、X軸ステージ21を挿通しているX軸リニアモータ(第2駆動手段)22によって駆動される。X軸リニアモータ22は、X軸移動子23と、X軸方向に延在するX軸レール24とを備えて構成されている。X軸移動子23はX軸ステージ21の上面の内壁に固定されている。X軸レール24は、X軸方向に直交する平面で切断した断面形状が略コの字形状となっており、その内壁の上下面が対向している。X軸レール24の内壁の上下面には複数の永久磁石が並設されている。X軸移動子23は、X軸ステージ21の内壁の下面に固定されており、X軸レール24の内壁の上下面に設けられた永久磁石の間に挿入されている。X軸移動子23は、複数のコイルをX軸方向に連結して構成されている。このX軸移動子23のコイルに通電を行うと、X軸レール24の永久磁石が発生する磁界によってX軸移動子23のコイルがX軸方向の推力を受ける。この結果、X軸ステージ21は、X軸移動子23を介してX軸方向の推力を受けてX軸方向に駆動される。なお、Y軸リニアモータ13およびX軸リニアモータ22は、X軸ステージ21を水平方向に駆動する水平駆動手段として機能する。
【0024】
また、X軸ステージ21の上面にはピボット軸27が立設されている。ピボット軸27は、θテーブル31を軸支するための軸である。ピボット軸27の上端には回転軸受34が設けられており、回転軸受34は、X軸ステージ21の上方に設けられるθテーブル31を軸支する。この回転軸受34は、例えばクロスローラベアリングを有して構成されている。回転軸受34の内周にはピボット軸27の上端が挿入され、また、回転軸受34は、θテーブル31の下面に設けられた凹部に収容されている。
【0025】
θテーブル31は、ピボット軸27を回転中心として回転するテーブルである。その下面の四隅からはそれぞれ支柱33が下に延びており、その下端には前述したエアパッド32が設けられている。エアパッド32は、空気圧によって定盤11に対して浮上し、また、定盤11に対して滑走可能とされている。なお、これらのエアパッド32および支柱33と、先に説明したX軸ステージ21の支柱25およびエアパッド26とが、本発明の支持手段として機能する。
【0026】
θテーブル31は、一組のθリニアモータ(回転駆動手段)35,35によってピボット軸27を回転中心として回転駆動される。θリニアモータ35は、θ方向移動子36とθ方向レール37を備えて構成されている。θ方向レール37は、Y軸方向に延び、X軸ステージ21の上面に固定されている。θ方向移動子36は、θテーブル31の下面に固定されている。θ方向レール37は、X軸ステージ21の上面に対して直立する2面を有して構成されており、その2面の間にθ方向移動子36が挿入されている。θ方向移動子36は、θ方向レール37の対向する2面の間をY軸方向に移動し、これによりθテーブル31がピボット軸27の周りに回転駆動される。
【0027】
また、θテーブル31の下部には一対のリニアセンサ(センサ)38,38が設けられている。この一対のリニアセンサ38,38は、θテーブル31の回転中心を間に挟んだ対称な位置に各々設けられている。また、一対のリニアセンサ38,38は、それらを結ぶ直線がX軸方向およびY軸方向のいずれに対しても交差するように配置されている。
【0028】
リニアセンサ38は、センサ移動子39とセンサ固定子40から構成される。センサ移動子39は、θテーブル31の下面に固定され、X軸ステージ21に対してピボット軸27を中心に回転可能とされている。センサ固定子40は、X軸ステージ21の上面に固定されている。そして、リニアセンサ38は、センサ移動子39のセンサ固定子40に対する相対的な移動量を検出することにより、θテーブル31の移動量を検出する。具体的な測定方式としては、例えば光電式、電磁誘導式などの公知の手法を用いることができる。
【0029】
次に、ステージ装置1の備える制御手段(不図示)がθテーブル31の回転位置をどのように制御するかについて説明する。ここでは、リニアセンサ38が、平面視においてθテーブル31が時計回りに回転した場合に正の値を検出するものとして説明を行う。
【0030】
例として、θテーブル31を時計回りに100ミリ度だけ回転させる制御を行う場合を考える。このとき、X軸ステージ21が定盤11の上を移動したことによるθテーブル31の変形がなければ、一対のリニアセンサ38,38の検出値はいずれも、目標値通りの+100ミリ度となる。しかし、X軸ステージ21が定盤11の上を移動したことによるθテーブル31の変形があれば、一対のリニアセンサ38,38の検出値はいずれも、+100ミリ度とならずに、誤差を含んだ値となる。
【0031】
ここで、一対のリニアセンサ38,38をθテーブル31の回転中心を間に挟んだ対称な位置に設けているため、この誤差は、プラスマイナス符号が異なり絶対値が等しい値となる。例えば、X軸ステージ21の移動により生じるθテーブル31の変形の影響が10ミリ度分の回転に相当する場合、一方のリニアセンサ38の検出値は+110ミリ度、もう一方のリニアセンサ38の検出値は+90ミリ度となる。したがって、これらの値を加算して2で除算することにより、真のθテーブルの移動量である+100ミリ度を算出することができる。これにより、θテーブル31が、目標通りに100ミリ度だけ回転されていると判定し、この正確な移動量に基づいてθテーブルの制御が行われる。
【0032】
なお、以上の説明では、リニアセンサ38が、平面視においてθテーブル31が時計回りに回転した場合に正の値を検出するものとして説明を行ったが、θテーブルが変形してある方向に並進移動した場合に正の値を検出するような場合についてもほぼ同様の制御が可能である。すなわち、X軸ステージ21が定盤11の上を移動したことによるθテーブル31の変形があれば、一対のリニアセンサ38,38の検出値には、絶対値が等しく、また、同じプラスマイナス符号を有する誤差が含まれることとなる。この場合には一対のリニアセンサ38,38の検出値を減算して2で除算することにより、真のθテーブルの移動量を算出することができる。
【0033】
以上のように構成されるステージ装置1によれば、θテーブル31の移動量を、θテーブル31の回転中心を間に挟む対称な位置に各々設けられた一対のリニアセンサ38により検出し、各リニアセンサ38によって検出した移動量を加算または減算した値を用いてθリニアモータ35を制御することによりθテーブル31の位置を制御する。このとき、リニアセンサ38各々が、θテーブル31が平面視において時計回りの回転をした場合に正の値を検出する場合には、ステージの移動により生じるθテーブル31の変形に起因したリニアセンサ38各々の検出値は、絶対値が等しく、また、一方が正の値で、他方が負の値となる。そのため、リニアセンサ38各々が検出した移動量を加算することにより、X軸ステージ21の移動によるθテーブル31の変形の影響をキャンセルすることができ、その結果、θテーブル31の移動量を正確に検出でき、正確なθテーブル31の移動量に基づいてθテーブル31の位置を制御することができる。また、センサ各々が、θテーブル31がX軸ステージ21に対してある方向に並進移動した場合に正の値を検出する場合には、X軸ステージ21の移動により生じるθテーブル31の変形に起因したリニアセンサ38各々の検出値は、絶対値が等しく、また、同じプラスマイナス符号を有する。そのため、リニアセンサ38各々が検出した移動量を減算することにより、X軸ステージ21の移動によるθテーブル31の変形の影響をキャンセルすることができ、その結果、θテーブル31の移動量を正確に検出でき、正確なθテーブル31の移動量に基づいてθテーブル31の位置を制御することができる。このようにして、リニアセンサ38の検出する値のプラスマイナス符号がいずれの場合でも、θテーブル31の回転位置を正確に制御することができる。
【0034】
また、一対のリニアセンサ38,38が、それらを結ぶ直線がX軸方向およびY軸方向のいずれに対しても交差するように配置されているため、X軸ステージ21がX軸方向およびY軸方向のいずれに移動した場合でも、X軸ステージ21の移動により生じるθテーブル31の変形に起因した一対のリニアセンサ38の検出値が変化する。このため、一対のリニアセンサ38によって、各リニアセンサ38の検出値の誤差を打ち消すことができ、θテーブル31の回転位置をより正確に制御することができる。
【0035】
また、回転軸受34がクロスローラベアリングを有するため、半径方向、軸方向等の荷重を受けても円滑に回転できる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、第2実施形態に係るステージ装置2について説明する。図5は、ステージ装置2のθテーブル31とX軸ステージ21の連結部を模式的に示す図であり、図4と同様に、YZ平面に平行な面で切断した断面を示している。
【0037】
ステージ装置2がステージ装置1と異なるのは、θテーブル31の支持構成である。このステージ装置2においては、X軸ステージ21の上面に軸受台21aが設けられており、軸受台21aの上面に凹部が設けられ、その凹部に回転軸受34が収容されている。この回転軸受34の内周には軸体51が回転自在に支持されている。そして、軸体51は、板バネ(第1拘束手段)52を介してθテーブル31に接続されている。
【0038】
具体的には、板バネ52は、水平面に平行に設けられ、平面視において円環状とされている。板バネ52の内周側は、例えばボルトなどで軸体51に固定されている。また、板バネ52の外周側は、例えばボルトなどで円環状のブロック体55に固定され、このブロック体55がθテーブル31の下面を押圧するようになっている。したがって、板バネ52は、θテーブル31に対するX軸ステージ21の鉛直方向の運動を許容しながら、θテーブル31の鉛直軸周りの回転を拘束する。
【0039】
以上のように構成されるステージ装置2によれば、第1実施形態に係るステージ装置1の効果に加えて、X軸ステージ21が水平方向に移動した際にX軸ステージ21に鉛直方向の振動が生じた場合のθテーブル31に対する鉛直方向の振動を緩衝しつつ、板バネ52によってθテーブル31の回転を拘束することで、θテーブル31の回転位置をより正確に制御することができる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して、第3実施形態に係るステージ装置3について説明する。図6は、ステージ装置3のθテーブル31とX軸ステージ21の連結部を模式的に示す図であり、図5に対応する図である。
【0041】
ステージ装置3がステージ装置2と異なるのは、シリンダ53とシリンダ53内に設けられるピストン、およびピストンに連結される押圧パッド54を備える点である。なお、このシリンダ53とピストン、および押圧パッド54が第2拘束手段を構成している。
【0042】
シリンダ53は、X軸ステージ21の外周側に複数立設されている。シリンダ53内にはピストンが設けられており、そのピストンには押圧パッド54が連結されている。そして、押圧パッド54は、θテーブル31の下面に対向している。
【0043】
シリンダ53において、例えば油圧や空気圧によってピストンが押し出されることにより、ピストンに連結される押圧パッド54はθテーブル31の下面に対して上方へ押圧する。これにより、押圧パッド54の上面とθテーブル31の下面の間に摩擦力が働き、θテーブル31の回転が、板バネ52による拘束よりも強く拘束される。
【0044】
以上のように構成されるステージ装置3によっても、ステージ装置2による場合に加えて、さらに、シリンダ53および押圧パッド54によってθテーブル31の回転をさらに強く拘束することができるため、θテーブル31の回転位置をさらに正確に制御することができる。
【0045】
(第4実施形態)
次に、図7を参照して、第4実施形態に係るステージ装置4について説明する。図7は、ステージ装置4のθテーブル31とX軸ステージ21の連結部を模式的に示す図であり、図5に対応する図である。
【0046】
ステージ装置4がステージ装置3と異なる点は、シリンダ53とシリンダ53内に設けられるピストン、およびピストンに連結される押圧パッド54の位置が、板バネ52を押圧するように設けられている点である。
【0047】
以上のように構成されるステージ装置4によれば、シリンダ53および押圧パッド54が板バネ52を押圧することによりθテーブル31の回転を拘束するため、板バネ52がθテーブル31に対するX軸ステージ21の鉛直方向の運動を緩衝しつつ、この板バネ52を介してθテーブル31をシリンダ53および押圧パッド54により拘束することができ、θテーブル31の回転位置を正確に制御することができる。
【0048】
(第5実施形態)
次に、図8を参照して、第5実施形態に係るステージ装置5について説明する。図8は、ステージ装置5の回転駆動手段を模式的に示す図である。
【0049】
ステージ装置5がステージ装置1と異なる点は、θテーブル31をピボット軸27の周囲に回転駆動する機構である。すなわち、ステージ装置1においては、θリニアモータ35がθテーブル31を回転駆動する回転駆動手段であったが、ステージ装置5においては、モータ64とボールねじ61が、θテーブル31を回転駆動する回転駆動手段となる。以下、詳細に説明する。
【0050】
ボールねじ61は、X軸ステージ21とθテーブル31との間に配置されている。ボールねじ61は、Y軸方向に延在するネジ軸62と、ネジ軸62に螺合してネジ軸62に沿って前後動可能なナット部63とにより構成されている。ネジ軸62は、モータ64の回転軸に接続されている。また、モータ64は、X軸ステージ21に立設されたモータ支持壁65によって支持されている。
【0051】
ナット部63は、ネジ軸62に接続されたモータ64が回転することにより、ネジ軸62に沿って前後動する。また、ナット部63にはローラ67が連結されている。このローラ67は、X軸周りに回転可能とされている。また、θテーブル31の下面には、ローラ受け部(一部)66が、ローラ67に対応する位置に垂下するように設けられている。したがって、ローラ67がローラ受け部66と接する状態においては、θテーブル31がX軸ステージ21に対して相対的に鉛直方向に運動することがあっても、ローラ67が回転することにより、ローラ受け部66とローラ67の間の鉛直方向の運動は許容される。このため、ローラ67とボールねじ61を介して接続されるX軸ステージ21と、ローラ受け部66が設けられたθテーブル31との間の鉛直方向の運動が許容される。
【0052】
一方、X軸ステージ21の上面にはステージ側バネ取付け面69が立設されており、θテーブル31の下面にはθテーブル側バネ取付け面68が垂下されている。そして、θテーブル側バネ取付け面68とステージ側バネ取付け面69の間には引張バネ(バネ)70が設けられており、引張バネ70の一端がθテーブル側バネ取付け面68に固定され、引張バネ70の他端がステージ側バネ取付け面69に固定されている。
【0053】
次に、以上のように構成されるステージ装置5において、θテーブル31の回転位置をどのように駆動するかを説明する。
【0054】
まず、θテーブル31を平面視で反時計回り(図示Y軸正方向)に回転する場合、モータ64を回転させてナット部63をY軸正方向に移動させる。これにより、ナット部63に連結されたローラ67がローラ受け部66を押し、ローラ受け部66を介してθテーブル31を平面視で反時計回りに回転する。このとき、ローラ67が回転することにより、θテーブル31に対してX軸ステージ21が鉛直方向に移動できる。
【0055】
また、θテーブル31を平面視で時計回り(図示Y軸負方向)に回転する場合、モータ64を逆転させてナット部63をY軸負方向に移動させる。このとき、引張バネ70に引張力が働き、θテーブル側バネ取付け面68とステージ側バネ取付け面69とを近づける力が発生する。引張バネ70は、この引張力により、ローラ受け部66をローラ67に押し付けるように付勢し、引張バネ70の引張力と、ローラ67とローラ受け部66の間に働く力が釣り合った位置でθテーブル31は静止する。このとき、ローラ67が回転することにより、θテーブル31に対してX軸ステージ21が鉛直方向に移動できる。したがって、ステージ装置5によっても、ステージ装置1による場合と同様にθテーブル31の位置を正確に制御できる。
【0056】
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、第1〜第4実施形態に係るステージ装置1〜4において、θテーブル31の駆動手段として、θリニアモータ35に代えて、第5実施形態で説明したボールねじ61を用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,2,3,4,5…ステージ装置、13…Y軸リニアモータ(水平駆動手段、第1駆動手段)、21…X軸ステージ(ステージ)、22…X軸リニアモータ(水平駆動手段、第2駆動手段)、25…支柱(支持手段)、26…エアパッド(支持手段)、32…エアパッド(支持手段)、33…支柱(支持手段)、34…回転軸受、35…θ軸リニアモータ(回転駆動手段)、38…リニアセンサ(センサ)、52…板バネ(第1拘束手段)、53…シリンダ(第2拘束手段)、54…押圧パッド(第2拘束手段)、61…ボールねじ、63…ナット部、66…ローラ受け部(一部)、67…ローラ、70…引張バネ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8