特許第5886088号(P5886088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886088
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】真空脱ガス装置の浸漬管
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20160303BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C21C7/10 C
   C21C7/00 Q
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-50432(P2012-50432)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-185194(P2013-185194A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】寺田 庄吾
(72)【発明者】
【氏名】小出 邦博
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−029649(JP,U)
【文献】 特開平09−118912(JP,A)
【文献】 特開平02−228417(JP,A)
【文献】 特開2008−013796(JP,A)
【文献】 実開平01−164751(JP,U)
【文献】 実開平04−037246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00−7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、
前記中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成する前記芯金の内周側に筒形状に配置されたれんが層と、
前記芯金の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層と、
前記キャスタブル層の外周壁面又は該キャスタブル層の内部に配置され気体に対して難透過性をもつ筒形状の金属筒状体と、
前記金属筒状体が前記キャスタブル層から剥離することを防止する剥離防止手段とを備え、
前記金属筒状体は、前記キャスタブル層の外周壁面に配置されており、
前記剥離防止手段は、前記金属筒状体の外周面を覆う前記浸漬管の最外周に筒形状に配置され前記キャスタブル層よりも高強度の外殻定形れんが層であることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項2】
前記金属筒状体の下端部は、前記溶湯の湯面よりも下方または湯面付近に位置する請求項1に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス装置の浸漬管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管が提供されている(特許文献1)。この浸漬管は、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成する芯金の内周側に筒形状に配置されたれんが層と、芯金の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層とを備えている。このものによれば、使用時には、高温の溶湯が溶湯通路を通過するため、浸漬管は高温に晒される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浸漬管の溶湯通路は、使用時に真空度が高い減圧雰囲気に晒される。ここで、上記したキャスタブル層は、流動性をもつキャスタブル材料を乾燥固化させて形成されているため、キャスタブル層の緻密性は必ずしも充分ではない。このためキャスタブル層は多数の気孔を有する。このため浸漬管の使用時には、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過し、溶湯通路側に浸透するおそれがある。この場合、溶湯通路を流れる溶鋼等の溶湯に空気が混入し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分等が過剰に増加するおそれがある。この場合、溶鋼等の溶湯の高品質化に好ましくない。
【0005】
そこで、本発明の発明者は、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過して溶湯通路側に移行することを抑制し得る真空脱ガス装置の浸漬管を開発するに至った(特願2011−49838)。図9に示すように、この真空脱ガス装置の浸漬管1Zは、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに巡らされた芯金2と、溶湯通路30を形成する耐火物層3とを備えている。耐火物層3は、芯金2の内周側に筒形状に配置された定形れんが層31と、芯金2の外周側に配置された外側キャスタブル層32と、芯金2の下部側に配置された底側キャスタブル層33とを有する。外側キャスタブル層32の外周壁面32pには、気体に対して難透過性をもつ気体難透過性部材である金属筒状体8Zがほぼ同軸的に被覆されて設けられている。
【0006】
図9に示すように、金属筒状体8Zの上部は、溶鋼等の溶湯W102の湯面(スラグライン)W100よりも上方に配置されている。また、浸漬管1Zの使用初期には、金属筒状体8Zの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。湯面W100よりも上方の空気は、キャスタブル層32,33などを介して矢印X方向に沿って溶湯通路30側に透過する。しかしこの空気の透過を、気体透過遮断性をもつ金属筒状体8Zが遮断させる。
【0007】
金属筒状体8Zは、外側キャスタブル層32の外周壁面32pに被覆により後付けされることから、外周壁面32pと金属筒状体8Zの内周面との間には僅かな隙間がある。また、浸漬管1Zを繰り返し使用すると、溶湯W102の熱によって、金属筒状体8Zの湯面W100よりも下方が溶融消失したり、金属筒状体8Zの変形によりこの隙間が広がったりする場合がある。そして、溶湯W102への浸漬管1Zの出し入れによって、この隙間にスラグW101や溶湯W102が侵入すると、金属筒状体8Zの下端部8dが外周側に広がってめくれ上がり、金属筒状体8Zが図9中破線Jで示すように変形する場合がある。金属筒状体8Zが破線Jのように変形すると、外側キャスタブル層32の湯面W100よりも上方が空気に晒されて、外側キャスタブル層32の外方に配置されている空気がキャスタブル層32,33を透過して溶湯通路側に浸透するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、長期間繰り返し使用される浸漬管において、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過して溶湯通路側に移行することを抑制し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる真空脱ガス装置の浸漬管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る真空脱ガス装置の浸漬管は、縦方向に沿った中心軸線の回りに巡らされた芯金と、中心軸線を通過する縦向きの溶湯通路を形成する芯金の内周側に筒形状に配置されたれんが層と、芯金の外周側に配置され流動性を有するキャスタブル材料を固化させて形成された筒形状のキャスタブル層と、キャスタブル層の外周壁面又は内部に配置され気体に対して難透過性をもつ筒形状の金属筒状体と、金属筒状体がキャスタブル層から剥離することを防止する剥離防止手段とを備え、金属筒状体は、キャスタブル層の外周壁面に配置されており、 剥離防止手段は、金属筒状体の外周面を覆う浸漬管の最外周に筒形状に配置されキャスタブル層よりも高強度の外殻定形れんが層である
【0010】
キャスタブル層は、キャスタブル材を流し込んで固化させることにより形成されているため、製造は容易であるものの、緻密性は必ずしも充分ではない。そこで、キャスタブル層の外周壁面又は内部に、気体に対して難透過性をもつ筒形状の金属筒状体が配置されている。金属筒状体は、キャスタブル層の外方に配置されている空気がキャスタブル層をこれの径内方向に透過して溶湯通路側に移行することを抑制する。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。
【0011】
金属筒状体は、キャスタブル層を形成する前に配置されているため、金属筒状体とキャスタブル層とを隙間無く密着させることができる。また、金属筒状体がキャスタブル層から剥離することを防止する剥離防止手段を備えている。よって、長期間繰り返し使用される浸漬管において、金属筒状体が外周側に広がってめくれ上がることを防止して、溶鋼等の溶湯に空気が侵入することを抑制する効果を持続することができる。
【0012】
属筒状体の下端部は、溶湯の湯面よりも下方または湯面付近に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期間繰り返し使用される浸漬管の使用時において溶鋼等の溶湯に空気が侵入することを抑制できる。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分等の空気成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係り、浸漬管の断面図である。
図2】実施形態2に係り、浸漬管の断面図である。
図3】実施形態3に係り、浸漬管の断面図である。
図4図3におけるA−A線で切断した断面図である。
図5】実施形態3に係り、浸漬管の金属筒状体を内周側から見た側面図である。
図6】実施形態4に係り、浸漬管の断面図である。
図7図6におけるB−B線で切断した断面図である。
図8】適用形態に係り、浸漬管が搭載された真空脱ガス装置の断面図である。
図9】本発明の先行発明の実施形態に係り、浸漬管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施形態として説明する。なお、下記の記載において、本発明の実施例は実施形態4であり、実施形態1〜3は、本発明の参考例となるものである。
(実施形態1)
図1は実施形態1の概念を示す。図1は、中心軸線1pよりも右半分のみを図示しており、中心軸線1pよりも左半分は省略されているが、基本的には中心軸線1pを介して対称形状をなす。本実施形態は、真空脱ガス装置に用いられる浸漬管1に適用されている。
【0016】
浸漬管1は、縦方向に沿った中心軸線1pの回りに連続的に巡らされた筒形状をなす合金(例えば炭素鋼、合金鋼等の鉄合金)で形成された芯金2と、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する耐火物層3とを備えている。耐火物層3は筒状をなしており、中心軸線1pを通過する縦向きの溶湯通路30を形成する芯金2の内周側、芯金2の外周側、および、芯金2の下側に配置されている。芯金2は、上端部を溶接またはボルト締結等で固定するリング形状をなす固定フランジ部21と、定形れんが層31(れんが層)の下部を支える芯金2において径内方向に突設されたアーム状またはフランジ状の支持部22とを備えている。なお、支持部22は、芯金2の下端部2dよりも上方に位置するが、これに限定されるものではない。なお、図略の取付具により浸漬管1のリング形状の固定フランジ部21は、相手部材に連結固定される。
【0017】
芯金2は、金属(例えば炭素鋼、合金鋼)で筒形状に形成されている。芯金2は、耐火物層3の芯体として機能する。更に、浸漬管1の使用時(真空脱ガス処理時)には、溶湯通路30側は減圧される。このため、周方向に連続する金属で形成された芯金2は、外気遮断性を有しており、更に、浸漬管1の外周側に存在する外気を溶湯通路30側に吸い込むことを抑制する機能を有することができる。従って、溶湯通路30に対する空気浸透性は抑制されている。但し、芯金2の下端部2dは、後述する底側キャスタブル層33の下面33dよりも上方に位置するため、浸漬管1の外部の空気が、底側キャスタブル層33を介して矢印X方向(径内方向,図1参照)に沿って溶湯通路30に向けて浸透する可能性がある。この場合、溶湯通路30を通過する溶鋼等の溶湯に空気が巻き込まれるおそれがある。なお、芯金2は筒形状でなくても良く、必要に応じて、棒材を筒形状に組み付けて形成しても良い。
【0018】
耐火物層3は、芯金2の内周側に筒形状に配置された定形れんが層31と、芯金2の外周側に配置された外側キャスタブル層32(キャスタブル層)と、芯金2の下部側に配置された底側キャスタブル層33とを有する。底側キャスタブル層33は下面33dをもつ。定形れんが層31は、複数個の定形れんがを中心軸線1p回りで周方向に配置することにより形成されている。定形れんがは、高温において焼成されており、耐熱性および強度をもつ。図1から理解できるように、定形れんが層31の内周部31iと底側キャスタブル層33の内周部33iとは、高温の溶湯(例えば溶鋼)が通過できる上下方向に延びる1本の溶湯通路30を形成する。外側キャスタブル層32及び底側キャスタブル層33は、いずれも流動性をもつキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させたキャスタブル層とされている。芯金2の内周面と耐火れんが層31の外周面との間にも、キャスタブル層330が装填されている。
【0019】
図1は、中心軸線1pに沿った方向で切断した縦断面を示す。図1に示すように、芯金2の外周部のほぼ全域には、複数個のVスタッド23(Vスタッドを含むYスタッドも包含)が溶接やボルト等で固定されている。Vスタッド23は、外側キャスタブル層32に埋設されており、その脱落を抑制する。Vスタッド23は、中心軸線1pの回りを1周するように周方向においておよび高さ方向において間隔を隔てて、芯金2の外周側において複数個配置されている。
【0020】
本実施形態によれば、使用時には、浸漬管1の溶湯通路30付近は減圧される。ここで、キャスタブル層32,33は、流動性をもつキャスタブル材料を乾燥固化させて形成されているため、キャスタブル層32,33の緻密性は必ずしも充分ではない。従ってキャスタブル層32,33は多数の気孔をもつ。このため浸漬管1の使用時において、キャスタブル層32,33の外方に配置されている空気がキャスタブル層32,33をこれの径内方向に透過して溶湯通路30側に浸透するおそれがある。この場合、溶湯通路30を流れる溶鋼等の溶湯に空気が混入し、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分等が過剰に増加するおそれがある。この場合、溶鋼等の溶湯の高品質化に好ましくない。
【0021】
この点本実施形態によれば、図1に示すように、外側キャスタブル層32の外周壁面32pには、気体に対して難透過性をもつ薄肉状の金属板(例えば炭素鋼や合金鋼等の鉄合金、チタン合金)で形成された筒形状の金属筒状体8Aがほぼ同軸的に配置されている。金属筒状体8AがスラグW101や溶湯W102に接触することを考慮すると、金属筒状体8Aの材質を耐熱性に優れたステンレス鋼にすることが好ましい。また、図1に示すように、金属筒状体8Aの上部は、溶鋼等の溶湯W102の湯面W100(スラグライン)よりも上方に配置されている。従って、金属筒状体8Aは、湯面W100に対面する位置に配置されている。浸漬管1の使用初期には、金属筒状体8Aの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。金属筒状体8Aの厚みは浸漬管1のサイズ等に応じて適宜選択できるが、浸漬管1の最外周に配置された金属筒状体8Aの変形を防止するためには、金属筒状体8Aの厚みを3〜5ミリメートルとすると良い。但しこれに限定されるものではない。
【0022】
金属筒状体8Aは、外側キャスタブル層32の外周壁面32p、特に外周壁面32pの上部領域の外周側に接触しつつ全周にわたり包囲している。また、金属筒状体8Aは、中心軸線1pの回りを1周するように連続して形成されたリング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dに固定されている。リング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dと金属筒状体8Aの上端部との間のシール性が高められている。金属筒状体8Aの内周面のほぼ全域には、複数個のVスタッド82(本発明のスタッドに相当し、Vスタッドを含むYスタッドも包含)が溶接で固定されている。図1に示すように、Vスタッド82は、中心軸線1p方向に上下2段で設けられており、下段のVスタッド82は、上段のVスタッド82に対して90°回転した向きに取り付けられている。上段のVスタッド82は、湯面W100よりも上方に配置されており、下段のVスタッド82は、湯面W100よりも僅かに下方に配置されている。
【0023】
複数個のVスタッド82が取り付けられた金属筒状体8Aは、キャスタブル層32,33を形成する前に配置されている。そして、芯金2の外周面と金属筒状体8Aの内周面との間にキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させることにより、複数個のVスタッド82が外側キャスタブル層32に埋設されると共に、金属筒状体8Aと外側キャスタブル層32とが隙間無く密着する。
【0024】
本実施形態によれば、図1に示すように、金属筒状体8Aが湯面W100の上方に存在することが有効である。湯面W100よりも上方の空気は、キャスタブル層32,33などを介して溶湯通路30側に透過する。しかしこの空気の透過を、気体透過遮断性をもつ金属筒状体8Aが遮断させる。また、浸漬管1の使用初期には、金属筒状体8Aの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。しかし、浸漬管1を繰り返し使用すると、溶湯W102の熱によって、金属筒状体8Aの湯面W100よりも下方が溶融消失する場合がある。このような場合であっても、金属筒状体8Aのうち湯面W100よりも下方は、溶湯W102に対面しているものの、空気には対面していないため、空気の透過は抑えられている。また、浸漬管1の使用時には、金属筒状体8Aのうち湯面W100に対面する領域8xは、スラグW101の付着により覆われることがある。この結果、金属筒状体8Aのうち湯面W100に対面する領域8x付近は、溶鋼等の溶湯に起因する消耗が抑えられ、耐久性が確保されている。
【0025】
以上のように、外側キャスタブル層32の外周壁面32pに、気体に対して難透過性をもつ筒形状の金属筒状体8Aが配置されていることによって、外側キャスタブル層32の外方に配置されている空気が外側キャスタブル層32をこれの径内方向に透過して溶湯通路30側に移行することを抑制することができる。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。なお、本発明者が行った試験によれば、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素濃度を従来技術(同タイプおよび同サイズであるが、金属筒状体8Aが設けられていない浸漬管)に比較して、40〜70%程度に低減できることが確認された。
【0026】
また、本実施形態によれば、金属筒状体8Aは、外側キャスタブル層32を形成する前に配置されているため、金属筒状体8Aと外側キャスタブル層32とを隙間無く密着させることができる。また、金属筒状体8Aが外側キャスタブル層32から剥離することを防止する剥離防止手段として金属筒状体8Aの内周面に取り付けられた複数個のVスタッド82が外側キャスタブル層32に埋設されている。よって、長期間繰り返し使用される浸漬管1において、金属筒状体8Aが外周側に広がってめくれ上がることを防止して、溶鋼等の溶湯に空気が侵入することを抑制する効果を持続することができる。
【0027】
(実施形態2)
図2に実施形態2の概念を示す。本実施形態は、前述した実施形態1における剥離防止手段であるVスタッド82を連結具83に変更した実施形態である。これ以外の構成等については、実施形態1と同様であるため説明を省略し、以下、相違する部分を中心として説明する。図2に示すように、外側キャスタブル層32の外周壁面32pには、実施形態1における金属筒状体8Aと同様に、気体に対して難透過性をもつ金属筒状体8Bがほぼ同軸的に配置されている。また、図2に示すように、金属筒状体8Bの上部は、溶鋼等の溶湯W102の湯面W100よりも上方に配置されている。従って、金属筒状体8Bは、湯面W100に対面する位置に配置されている。浸漬管1の使用初期には、金属筒状体8Bの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。
【0028】
金属筒状体8Bは、外側キャスタブル層32の外周壁面32p、特に外周壁面32pの上部領域の外周側に接触しつつ全周にわたり包囲している。また、金属筒状体8Bは、中心軸線1pの回りを1周するように連続して形成されたリング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dに固定されている。リング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dと金属筒状体8Bの上端部との間のシール性が高められている。芯金2の外周面と金属筒状体8Bの内周面とは、複数本の連結具83により繋がれている。
【0029】
連結具83は、中心軸線1p方向に上下2段で設けられており、上段の連結具83は、湯面W100よりも上方に配置されており、下段の連結具83は、湯面W100よりも僅かに下方に配置されている。連結具83は、2本の長ボルト83aと、両長ボルト83aを繋ぐ長ナット83bとよりなる。長ボルト83aは金属製であり、両長ボルト83aは、それぞれ溶接によって芯金2及び金属筒状体8Bに固定されている。長ナット83bは耐火物製品(セラミックス、陶磁器など)であり、長ナット83bによって、金属筒状体8B側の長ボルト83aの熱が芯金2側の長ボルト83aに伝熱することが抑制されている。これにより、たとえ金属筒状体8B側の長ボルト83aが溶融したとしても、芯金2が溶融することはなく、芯金2の健全性を損なうおそれがない。
【0030】
複数本の連結具83が取り付けられた金属筒状体8Bは、キャスタブル層32,33を形成する前に配置されている。そして、芯金2の外周面と金属筒状体8Bの内周面との間にキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させることにより、複数本の連結具83が外側キャスタブル層32に埋設されると共に、金属筒状体8Bと外側キャスタブル層32とが隙間無く密着する。なお、外側キャスタブル層32に埋設された連結具83により、外側キャスタブル層32の脱落が抑制されるため、芯金2と金属筒状体8Bとの間には、実施形態1におけるVスタッド23が配置されていない。本実施形態における作用効果については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0031】
(実施形態3)
図3に実施形態3の概念を示す。本実施形態は、前述した実施形態1において外側キャスタブル層32の外周壁面32pに配置されていた金属筒状体8Aを、外側キャスタブル層32の内部(層内)に配置される金属筒状体8Cに変更した実施形態である。これ以外の構成等については、実施形態1と同様であるため説明を省略し、以下、相違する部分を中心として説明する。図3に示すように、外側キャスタブル層32の厚さ方向の中央部からやや外周側寄りには、気体に対して難透過性をもつ薄肉状の金属板(例えば炭素鋼や合金鋼等の鉄合金、チタン合金)で形成された筒形状の金属筒状体8Cがほぼ同軸的に配置されている。図3に示すように、金属筒状体8Cの上部は、溶鋼等の溶湯W102の湯面W100よりも上方に配置されている。従って、金属筒状体8Cは、湯面W100に対面する位置に配置されている。金属筒状体8Cの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。金属筒状体8Cが外側キャスタブル層32に埋設されているため、金属筒状体8Cの下端部8dが溶融消失することはない。
【0032】
金属筒状体8Cは、中心軸線1pの回りを1周するのに、外側キャスタブル層32の特に上部領域に埋設されている。また、金属筒状体8Cは、中心軸線1pの回りを1周するように連続して形成されたリング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dに固定されている。リング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dと金属筒状体8Cの上端部との間のシール性が高められている。金属筒状体8Cは、スラグW101や溶湯W102に接触していないため、金属筒状体8Cの厚みを設定するにあたって、金属筒状体8Cの変形を考慮する必要はない。このため、金属筒状体8Cの厚みを、実施形態1における金属筒状体8Aよりも薄い0.5〜2ミリメートルとすることができる。但しこれに限定されるものではない。
【0033】
図3に示すように、外側キャスタブル層32は、金属筒状体8Cによって厚さ方向に二分割されている。このため、金属筒状体8Cよりも外周側の外側キャスタブル層32にクラック等の損傷を発生させないためには、金属筒状体8Cよりも外周側の外側キャスタブル層32にある程度の厚み(例えば100ミリメートル程度)を確保する必要がある。また、外側キャスタブル層32が金属筒状体8Cの内周面及び外周面から剥離することを防止する剥離防止手段が必要となる。金属筒状体8Cには、剥離防止手段として複数枚の爪84(凸部)が形成されている。
【0034】
図3に示すように、爪84は、中心軸線1p方向に上下3段で設けられており、上2段の爪84は、湯面W100よりも上方に配置されており、下1段の爪84は、湯面W100よりも僅かに下方に配置されている。図4は、図3におけるA−A線で切断した部分断面図を示している。図4中に破線で示している最上段の爪84は、中心軸線1pの回りを1周するように、金属筒状体8Cの内周側及び外周側に交互に並んで等間隔で配置されている。図5は、金属筒状体8Cを内周側から見た部分側面図を示している。図5に示すように、複数枚の爪84は、格子状の交点位置に配置されており、金属筒状体8Cの面にV字の切り込みを入れて頂点を起こすことにより形成されている。そして、上下方向及び周方向に隣り合う爪84は、金属筒状体8Cの内周側及び外周側に交互に突出している。
【0035】
複数枚の爪84が形成された金属筒状体8Cは、キャスタブル層32,33を形成する前に所定の位置に固定されている。そして、芯金2の外周面と外側キャスタブル層32の図略の型枠との間にキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させることにより、金属筒状体8Cが外側キャスタブル層32に埋設されると共に、金属筒状体8Cと外側キャスタブル層32とが隙間無く密着する。これにより、金属筒状体8Cに形成された複数枚の爪84が外側キャスタブル層32に埋設されて、金属筒状体8Cと外側キャスタブル層32とが一体化される。なお、爪84の形成により金属筒状体8Cに形成される三角形状の貫通孔84aを通して、金属筒状体8Cの内周側及び外周側の外側キャスタブル層32が連続している。これにより、外側キャスタブル層32が金属筒状体8Cから剥離しにくくなっていることから、貫通孔84aを本発明の剥離防止手段と見なすこともできる。
【0036】
本実施形態によれば、図3に示すように、金属筒状体8Cが湯面W100の上方に存在することが有効である。湯面W100よりも上方の空気は、キャスタブル層32,33などを介して溶湯通路30側に透過する。しかしこの空気の透過を、気体透過遮断性をもつ金属筒状体8Cが遮断させる。ただし、金属筒状体8Cによる空気の遮断は完全遮断ではなく、金属筒状体8Cのうち湯面W100に対面する領域8x付近の外側キャスタブル層32内を空気が上方から下方に透過することが可能である。また、金属筒状体8Cに形成された貫通孔84aを通して外側キャスタブル層32内を空気が外周側から内周側に透過することが可能である。しかし、金属筒状体8Cが外側キャスタブル層32に埋設されていない場合と比べると、本実施形態においては、外側キャスタブル層32の空気の透過経路が十分に小さくなっていることにより、外側キャスタブル層32の外方に配置されている空気が溶湯通路30側に移行することを抑制することができる。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。
【0037】
上述したとおり、本実施形態においては、金属筒状体8Cによる空気の遮断は完全遮断ではない。しかし、本実施形態においては、金属筒状体8Cが外側キャスタブル層32に埋設されているため、金属筒状体8Cの下端部8dが溶融消失することがなく、金属筒状体8Cが変形することがないという優れた効果を奏する。また、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、金属筒状体8Cは、外側キャスタブル層32を形成する前に配置されているため、金属筒状体8Cと外側キャスタブル層32とを隙間無く密着させることができる。また、金属筒状体8Cが外側キャスタブル層32から剥離することを防止する剥離防止手段として金属筒状体8Cに形成された複数の爪84及び貫通孔84aが外側キャスタブル層32に埋設されている。よって、長期間繰り返し使用される浸漬管1において、金属筒状体8Cの溶融消失や変形を確実に防止して、溶鋼等の溶湯に空気が侵入することを抑制する効果を持続することができる。
【0038】
(実施形態4)
図6に実施形態4の概念を示す。本実施形態は、前述した実施形態3における金属筒状体8Cを金属筒状体8Dに変更すると共に、実施形態3において金属筒状体8Cよりも外周側に配置されていた外側キャスタブル層32を筒状外殻定形れんが層86(外殻定形れんが層)に変更した実施形態である。これ以外の構成等については、実施形態1及び3と同様であるため説明を省略し、以下、相違する部分を中心として説明する。図6に示すように、外側キャスタブル層32の外周壁面32pは、上方の小径外周壁面32paと小径外周壁面32paよりも外径が大きい下方の大径外周壁面32pbとよりなる。図6に示すように、外側キャスタブル層32の上方の小径外周壁面32paには、実施形態3における金属筒状体8Cと同一材質及び同一厚さで気体に対して難透過性をもつ金属筒状体8Dがほぼ同軸的に配置されている。また、金属筒状体8Dの外周側には、直円筒形状に一体成形された筒状外殻定形れんが層86がほぼ同軸的に配置されている。
【0039】
図6に示すように、金属筒状体8Dの上部は、溶鋼等の溶湯W102の湯面W100よりも上方に配置されている。従って、金属筒状体8Dは、湯面W100に対面する位置に配置されている。金属筒状体8Dの下端部8dは、湯面W100よりも下方とされている。筒状外殻定形れんが層86の中心軸線1p方向(上下方向)の長さは、金属筒状体8Dの中心軸線1p方向の長さと同一であり、筒状外殻定形れんが層86が金属筒状体8Dを全周にわたり包囲していることによって、金属筒状体8Dの下端部8dが溶融消失することはない。
【0040】
筒状外殻定形れんが層86は、外側キャスタブル層32よりも高強度の定形れんがよりなり、筒状外殻定形れんが層86の外径は、外側キャスタブル層32の下方の大径外周壁面32pbの外径と同一径とされている。筒状外殻定形れんが層86は、外側キャスタブル層32よりも高強度であるため、クラック等の損傷を発生させないためには、例えば筒状外殻定形れんが層86の厚みを50ミリメートル程度とすれば良い。直円筒形状の筒状外殻定形れんが層86は、二重円筒形状に組まれた型枠内にれんが材料を流し込み、プレス成形または冷間等方圧成形(CIP成形)等を行った後に乾燥することにより形成される。図6及び7に示すように、筒状外殻定形れんが層86の上部には、断面L形の金属製の複数個の結合部材87が中心軸線1pの回りを1周するように一定間隔で埋め込まれている。この結合部材87と固定フランジ部21とが溶接部88により溶接されている。これにより筒状外殻定形れんが層86は、固定フランジ部21の下面21dに固定されている。
【0041】
金属筒状体8Dは、中心軸線1pの回りを1周するのに、外側キャスタブル層32の上方の小径外周壁面32paを全周にわたり包囲している。上述したとおり、筒状外殻定形れんが層86の厚みが50ミリメートル程度と薄いため、金属筒状体8Dは、実施形態3における金属筒状体8Cよりも大径とされており、金属筒状体8Cよりも外周側に配置されている。金属筒状体8Dは、筒状外殻定形れんが層86の内周面に巻き付けられた後、金属筒状体8Dの上端部と筒状外殻定形れんが層86の結合部材87とを溶接部85により溶接することによって、筒状外殻定形れんが層86に固定されている。金属筒状体8Dは、実施形態3における金属筒状体8Cと同様に、スラグW101や溶湯W102に接触していないため、金属筒状体8Dの変形を考慮する必要はなく、金属筒状体8Dの厚みを、実施形態3における金属筒状体8Cと同程度に薄くすることができる。
【0042】
金属筒状体8Dが取り付けられた筒状外殻定形れんが層86は、キャスタブル層32,33を形成する前に配置されている。そして、芯金2の外周面と金属筒状体8Dの内周面との間にキャスタブル材料を流し込んで乾燥固化させることにより、金属筒状体8Dと外側キャスタブル層32とが隙間無く密着する。浸漬管1の最外周に配置された筒状外殻定形れんが層86によって、金属筒状体8Dが外側キャスタブル層32から剥離することを防止できるため、筒状外殻定形れんが層86は、本発明の剥離防止手段に相当する。なお、本実施形態における筒状外殻定形れんが層86の材質によっては、筒状外殻定形れんが層86の厚みをより薄くしたり、浸漬管1の断熱性を向上させたり、浸漬管1の外周面の清掃作業を容易にしたりする効果を付与することができる。
【0043】
本実施形態によれば、図6に示すように、金属筒状体8Dが湯面W100の上方に存在することが有効である。湯面W100よりも上方の空気は、キャスタブル層32,33などを介して溶湯通路30側に透過する。しかしこの空気の透過を、気体透過遮断性をもつ金属筒状体8Dが遮断させる。ただし、金属筒状体8Dによる空気の遮断は完全遮断ではなく、金属筒状体8Dのうち湯面W100に対面する領域8x付近の筒状外殻定形れんが層86内を空気が上方から下方に透過することが可能である。また、金属筒状体8Dの上端部と固定フランジ部21の下面21dとの境界を通して外側キャスタブル層32内を空気が外周側から内周側に透過することが可能である。
【0044】
しかし、金属筒状体8Dが外側キャスタブル層32を包囲していない場合と比べると、本実施形態においては、外側キャスタブル層32の空気の透過経路が十分に小さくなっていることにより、外側キャスタブル層32の外方に配置されている空気が溶湯通路30側に移行することを抑制することができる。また、筒状外殻定形れんが層86は、一般に外側キャスタブル層32よりも気孔率が小さくて緻密であるため気体透過遮断性が高く、また、筒状外殻定形れんが層86の厚みが薄いため、領域8x付近の筒状外殻定形れんが層86内を透過する空気は極めて少ない。よって、溶鋼等の溶湯に含まれる窒素成分を抑え、溶鋼等の溶湯の高品質化に貢献できる。
【0045】
上述したとおり、本実施形態においては、金属筒状体8Dによる空気の遮断は完全遮断ではない。しかし、本実施形態においては、金属筒状体8Dが筒状外殻定形れんが層86の内周面に巻き付けられているため、金属筒状体8Dの下端部8dが溶融消失することがなく、金属筒状体8Dが変形することがないという優れた効果を奏する。また、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、金属筒状体8Dは、外側キャスタブル層32を形成する前に配置されているため、金属筒状体8Dと外側キャスタブル層32とを隙間無く密着させることができる。また、金属筒状体8Dが外側キャスタブル層32から剥離することを防止する剥離防止手段として金属筒状体8Dの全周を筒状外殻定形れんが層86が包囲している。よって、長期間繰り返し使用される浸漬管1において、金属筒状体8Dの溶融消失や変形を確実に防止して、溶鋼等の溶湯に空気が侵入することを抑制する効果を持続することができる。
【0046】
(適用形態)
図8は適用形態を示す。図8に示すように、RH真空脱ガス装置とも呼ばれる真空脱ガス装置は、環流式であり、高い真空状態に減圧される上部槽100と、下部槽110と、浸漬管1として互いに並設された2個一対の浸漬管1R,1Lとを有する。操業時には、浸漬管1R,1Lが取鍋200にセットされる。この状態で、容器としての取鍋200の溶湯230(溶鋼)は、一方の浸漬管1L(上昇管)の溶湯通路30を上昇し、他方の浸漬管1R(下降管)の溶湯通路30を下降して取鍋200に戻るように環流される。このように浸漬管1R,1Lを介して取鍋200内の溶湯230を環流させることにより、取鍋200内の溶湯230の脱ガスが進行する。溶鋼等の溶湯230から排出されたガスは、矢印W方向に排出される。
【0047】
(その他の実施形態)
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、芯金2に取り付けられたVスタッド23及び実施形態1において金属筒状体8Aに取り付けられたVスタッド82はT形状としても良い等、その形状は限定されない。また、実施形態2における連結具83は、2本の長ボルト83aと、両長ボルト83aを繋ぐ長ナット83bとよりなるが、長ナット83bを用いることなく、連結具を芯金2と金属筒状体8Bとを繋ぐ1本の金属部材としても良い。また、実施形態3における爪84は一例であり、金属筒状体の内周面及び/又は外周面に形成された複数の凸部であれば、爪の形状は限定されない。また、実施形態3においては、金属筒状体8Cに複数の爪84(凸部)及び貫通孔84aが形成されているが、爪(凸部)及び貫通孔のいずれか一方のみを形成しても良い。すなわち、実施形態1〜3における剥離防止手段は一例であり、これに限定されるものではない。
【0048】
また、実施形態1〜3においては、リング形状の溶接部81により、固定フランジ部21の下面21dと金属筒状体8A〜8Cの上端部との間のシール性が高められているが、実施形態3における溶接部85及び88のように中心軸線1pの回りを1周するように一定間隔毎に溶接しても良い。この場合、金属筒状体8A〜8Cの外周側の空気が、固定フランジ部21の下面21dと金属筒状体8A〜8Cの上端部との間の狭い隙間から内周側に透過することが可能である。しかし、この隙間は十分に狭く、また、金属筒状体8A〜8Cと外側キャスタブル層32とが隙間無く密着していることから、透過した空気が金属筒状体8A〜8Cの内周面に沿って流れにくい。したがって、金属筒状体8A〜8Cの上端部を周方向に一定間隔毎に溶接したとしても、浸漬管1の外周側から溶湯通路30側への空気の侵入を抑制する効果が大きく損なわれることはない。
【0049】
また、実施形態4においては、剥離防止手段として直円筒形状に一体成形された筒状外殻定形れんが層86を用いているが、金属筒状体8Dの外周面を覆う本発明の外殻定形れんが層は、直円筒形状の一体成形品に限定されない。例えば、複数個のブロック状の定形れんがを中心軸線1pの回りを1周するように隙間無く配置して外殻定形れんが層を形成しても良い。ここで、複数個のブロック状の定形れんがは、外殻定形れんが層を周方向にを36〜40分割程度に分割した形状とすることができる。また、この周方向の分割数は限定されず、例えば、外殻定形れんが層を周方向に2分割して半筒状の2個のブロック状の定形れんがにより外殻定形れんが層を形成しても良い。
【0050】
また、実施形態4においては、金属筒状体8D及び筒状外殻定形れんが層86を別体として形成した後、溶接によりこれらを一体化している。しかし、型枠内の所定の位置に金属筒状体8Dを配置した後、型枠内にれんが材料を流し込み、プレス成形または冷間等方圧成形(CIP成形)等を行った後に乾燥することにより、金属筒状体8D及び筒状外殻定形れんが層86を一体品として形成することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1は浸漬管、1pは中心軸線、2は芯金、3は耐火物層、30は溶湯通路、31は定形れんが層(れんが層)、32は外側キャスタブル層(キャスタブル層)、32pは外周壁面、32paは小径外周壁面(外周壁面)、33は底側キャスタブル層、8A〜8Dは金属筒状体、8dは下端部、82はVスタッド(スタッド)、83は連結具、84は爪(凸部)、84aは貫通孔、86は筒状外殻定形れんが層(外殻定形れんが層)、W100は湯面、W102は溶湯を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9