特許第5886098号(P5886098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886098媒体処理装置および媒体処理装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886098
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】媒体処理装置および媒体処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/455 20060101AFI20160303BHJP
   G06K 19/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G11B5/455 C
   G06K19/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-63607(P2012-63607)
(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-196728(P2013-196728A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高明
(72)【発明者】
【氏名】東 賀津久
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−031811(JP,A)
【文献】 特開平10−162107(JP,A)
【文献】 特開2011−070746(JP,A)
【文献】 特開2012−118689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/40−5/465
G11B 25/00−25/10
G06K 19/00−19/08
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気データが記録された情報記録媒体を処理する媒体処理装置において、
読取用コイルを有する磁気ヘッドと、所定の動作を行う動作対象物と、電磁力によって駆動して前記動作対象物を動作させる駆動源と、前記磁気ヘッドからの出力信号に基づいて検出信号を生成するとともに前記駆動源を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記読取用コイルの断線および前記駆動源の故障の少なくともいずれか一方を検知するために前記駆動源を駆動させる故障検知モードにおいて、前記読取用コイルが断線しておらず、かつ、前記駆動源が故障していない場合に、前記駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズによって前記磁気ヘッドから出力された前記出力信号に基づく前記検出信号が生成されるように、前記駆動源を制御することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記動作対象物として、前記情報記録媒体が通過する媒体通過路を閉鎖するシャッタ部材を備え、
前記駆動源は、前記シャッタ部材を動作させるソレノイドであることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記動作対象物として、前記情報記録媒体に接触してデータをやりとりするためのIC接点ブロックを備え、
前記駆動源は、前記IC接点ブロックを動作させるソレノイドであることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記情報記録媒体を搬送する搬送機構を備え、
前記搬送機構は、前記動作対象物として、駆動ローラを備え、
前記駆動源は、前記駆動ローラを動作させるモータであることを特徴とする請求項1記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記駆動源は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって制御され、
前記制御部は、前記動作対象物を通常動作させるために前記駆動源を駆動させる通常動作モードと、前記故障検知モードとで、前記駆動源を制御するためのPWM信号の周波数を切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記情報記録媒体を搬送する搬送機構を備え、
前記故障検知モードにおける前記PWM信号の周波数は、前記搬送機構による前記情報記録媒体の搬送速度と前記情報記録媒体に記録された前記磁気データの記録密度とに基づいて設定されていることを特徴とする請求項5記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記媒体処理装置が搭載される上位装置を制御する上位制御部に接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の媒体処理装置。
【請求項8】
読取用コイルを有する磁気ヘッドを備え、磁気データが記録された情報記録媒体を処理する媒体処理装置の制御方法であって、
電磁力によって駆動して所定の動作対象物を動作させる駆動源の故障、および、前記読取用コイルの断線の少なくともいずれか一方を検知するために前記駆動源を駆動させる故障検知モードにおいて、前記読取用コイルが断線しておらず、かつ、前記駆動源が故障していない場合に、前記駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズによって前記磁気ヘッドから出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、前記駆動源を制御することを特徴とする媒体処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データが記録された情報記録媒体を処理する媒体処理装置、および、媒体処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報記録媒体に記録された磁気データの読取や情報記録媒体への磁気データの記録を行う磁気ヘッドを備える媒体処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の媒体処理装置では、磁気ヘッドは、磁気データを記録するための記録用コイルと、磁気データを読み取るための読取用コイルとを備えている。記録用コイルは、ドライバ回路に接続され、ドライバ回路は、CPUに接続されている。読取用コイルは、アンプに接続され、アンプは、波形整形器に接続され、波形整形器は、ドライバ回路が接続されるCPUに接続されている。
【0003】
特許文献1に記載の媒体処理装置では、記録用コイルに電流が供給されると、読取用コイルにも電流が流れて、磁気ヘッドから出力信号が出力され、波形整形器でリード信号が生成される。読取用コイルが断線しているときには、記録用コイルに電流が供給されても、読取用コイルに電流が流れず、リード信号が生成されないため、特許文献1に記載の媒体処理装置では、記録用コイルに電流が供給されたときに生成されるリード信号に基づいて、読取用コイルが断線しているか否かを検出することが可能である。また、記録用コイルが断線しているときには、記録用コイルへの電流の供給指令信号がCPUからドライバ回路へ送られても、リード信号が生成されないため、特許文献1に記載の媒体処理装置では、リード信号に基づいて、記録用コイルが断線しているか否かを検出することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−95118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に記載の媒体処理装置では、記録用コイルに電流が供給されたときに生成されるリード信号に基づいて、読取用コイルが断線しているか否かを検出することが可能である。しかしながら、磁気ヘッドの中には、記録用コイルを有しない読取専用の磁気ヘッドもあり、読取専用の磁気ヘッドの場合には、特許文献1に記載の方法で読取用コイルが断線しているか否かを検出することはできない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、搭載される磁気ヘッドが読取専用の磁気ヘッドであっても、簡易な構成で、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しているか否かを検知することが可能な媒体処理装置を提供することにある。また、本発明の課題は、搭載される磁気ヘッドが読取専用の磁気ヘッドであっても、簡易な構成で、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しているか否かを検知することが可能となる媒体処理装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の媒体処理装置は、磁気データが記録された情報記録媒体を処理する媒体処理装置において、読取用コイルを有する磁気ヘッドと、所定の動作を行う動作対象物と、電磁力によって駆動して動作対象物を動作させる駆動源と、磁気ヘッドからの出力信号に基づいて検出信号を生成するとともに駆動源を制御する制御部とを備え、制御部は、読取用コイルの断線および駆動源の故障の少なくともいずれか一方を検知するために駆動源を駆動させる故障検知モードにおいて、読取用コイルが断線しておらず、かつ、駆動源が故障していない場合に、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズによって磁気ヘッドから出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、駆動源を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の媒体処理装置では、制御部は、故障検知モードにおいて、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しておらず、かつ、所定の動作を行う動作対象物を動作させる駆動源が故障していない場合に、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズによって磁気ヘッドから出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、駆動源を制御している。そのため、故障検知モードにおいて、読取用コイルが断線していない場合には、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズに基づいて検出信号が生成され、読取用コイルが断線している場合には、駆動源を駆動させても、検出信号が生成されない。したがって、本発明では、媒体処理装置に搭載される磁気ヘッドが記録用コイルを有しない読取専用の磁気ヘッドであっても、動作対象物を動作させる駆動源を駆動させるといった簡易な構成で、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しているか否かを検知することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、駆動源が故障している場合には、故障検知モードにおいて、制御部から駆動源へ駆動指令信号が送られても、駆動源が駆動しないため、検出信号が生成されない。したがって、本発明では、簡易な構成で、駆動源が故障しているか否かを検出することも可能になる。
【0010】
本発明において、媒体処理装置は、たとえば、動作対象物として、情報記録媒体が通過する媒体通過路を閉鎖するシャッタ部材を備え、駆動源は、シャッタ部材を動作させるソレノイドである。また、本発明において、媒体処理装置は、たとえば、動作対象物として、情報記録媒体に接触してデータをやりとりするためのIC接点ブロックを備え、駆動源は、IC接点ブロックを動作させるソレノイドである。さらに、本発明において、媒体処理装置は、たとえば、情報記録媒体を搬送する搬送機構を備え、搬送機構は、動作対象物として、駆動ローラを備え、駆動源は、駆動ローラを動作させるモータである。
【0011】
本発明において、駆動源は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって制御され、制御部は、動作対象物を通常動作させるために駆動源を駆動させる通常動作モードと、故障検知モードとで、駆動源を制御するためのPWM信号の周波数を切り替えることが好ましい。このように構成すると、通常動作モードにおいて、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズが制御部で生成される検出信号に影響を与えない範囲のPWM信号の周波数によって駆動源を駆動させることで(すなわち、磁気データの読取結果に影響を与えるようなノイズが検出信号にのらない範囲のPWM信号の周波数によって駆動源を駆動させることで)、駆動源が駆動している状態でも、情報記録媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで適切に読み取ること等が可能になる。
【0012】
本発明において、媒体処理装置は、情報記録媒体を搬送する搬送機構を備え、故障検知モードにおけるPWM信号の周波数は、搬送機構による情報記録媒体の搬送速度と情報記録媒体に記録された磁気データの記録密度とに基づいて設定されていることが好ましい。このように構成すると、故障検知モードにおいて、読取用コイルが断線しておらず、かつ、駆動源が故障していなければ、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズに基づいて検出信号を確実に生成することが可能になる。
【0013】
本発明において、制御部は、たとえば、媒体処理装置が搭載される上位装置を制御する上位制御部に接続されている。この場合には、媒体処理装置の電源投入時に、媒体処理装置を故障検知モードに移行させて、読取用コイルの断線および駆動源の故障の少なくともいずれか一方を検知させても良いし、上位制御部から制御指令で、媒体処理装置を故障検知モードに移行させて、読取用コイルの断線および駆動源の故障の少なくともいずれか一方を検知させても良い。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明の媒体処理装置の制御方法は、読取用コイルを有する磁気ヘッドを備え、磁気データが記録された情報記録媒体を処理する媒体処理装置の制御方法であって、電磁力によって駆動して所定の動作対象物を動作させる駆動源の故障、および、読取用コイルの断線の少なくともいずれか一方を検知するために駆動源を駆動させる故障検知モードにおいて、読取用コイルが断線しておらず、かつ、駆動源が故障していない場合に、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズによって磁気ヘッドから出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、駆動源を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明の媒体処理装置の制御方法では、故障検知モードにおいて、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しておらず、かつ、所定の動作対象物を動作させる駆動源が故障していない場合に、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズによって磁気ヘッドから出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、駆動源を制御している。そのため、故障検知モードにおいて、読取用コイルが断線していない場合には、駆動源を駆動させた時に発生する磁気ノイズに基づいて検出信号が生成され、読取用コイルが断線している場合には、駆動源を駆動させても、検出信号が生成されない。したがって、本発明の制御方法を用いれば、媒体処理装置に搭載される磁気ヘッドが記録用コイルを有しない読取専用の磁気ヘッドであっても、動作対象物を動作させる駆動源を駆動させるといった簡易な構成で、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しているか否かを検知することが可能になる。また、本発明では、駆動源が故障している場合には、故障検知モードにおいて、駆動源へ駆動指令信号が送られても、駆動源が駆動しないため、検出信号が生成されない。したがって、本発明の制御方法を用いれば、簡易な構成で、駆動源が故障しているか否かを検出することも可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の媒体処理装置では、搭載される磁気ヘッドが読取専用の磁気ヘッドであっても、簡易な構成で、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しているか否かを検知することが可能になる。また、本発明の媒体処理装置の制御方法を用いれば、媒体処理装置に搭載される磁気ヘッドが読取専用の磁気ヘッドであっても、簡易な構成で、磁気ヘッドの読取用コイルが断線しているか否かを検知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかる媒体処理装置の概略構成を説明するための概略図である。
図2図1に示す媒体処理装置の制御部の概略構成を説明するためのブロック図である。
図3図1に示す媒体処理装置の故障検知モードにおける制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(媒体処理装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる媒体処理装置1の概略構成を説明するための概略図である。図2は、図1に示す媒体処理装置1の制御部10の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0020】
本形態の媒体処理装置1は、情報記録媒体であるカード2に記録された磁気データを読み取るための磁気ヘッド3を備えるカードリーダであり、たとえば、ATM(Automated Teller Machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。媒体処理装置1の内部には、カード2が通過する媒体通過路(カード搬送路)4が形成されている。この媒体処理装置1は、磁気ヘッド3に加え、図1に示すように、カード2に接触してカード2とデータをやりとりするためのIC接点ブロック5と、カード2を搬送する搬送機構6と、媒体通過路4を閉鎖するシャッタ部材7と、媒体処理装置1にカード2が挿入されたことを検知するためのプリヘッド(磁気ヘッド)8とを備えている。
【0021】
また、媒体処理装置1は、図2に示すように、プリヘッド8から出力される出力信号に基づいて検出信号を生成する制御部10を備えている。制御部10は、媒体処理装置1が搭載される上位装置を制御する上位制御部11に接続されている。また、制御部10は、磁気ヘッド3から出力される出力信号に基づいて検出信号を生成する機能を果たしている。なお、図2では、制御部10に接続される磁気ヘッド3の図示を省略している。
【0022】
本形態では、図1に示すX方向にカード2が搬送されて通過する。また、本形態では、図1に示すX1方向にカード2が挿入され、X2方向にカード2が排出される。以下の説明では、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側とする。
【0023】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。カード2の裏面には、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。また、カード2には、ICチップが内蔵されており、カード2の表(おもて)面には、ICチップに繋がる端子部が形成されている。なお、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0024】
磁気ヘッド3は、媒体処理装置1の本体部の内部に配置されている。また、磁気ヘッド3は、そのギャップ部が媒体通過路4に臨むように配置されている。本形態の磁気ヘッド3は、磁気データの記録と読取とが可能な磁気ヘッドであり、コアと、このコアに巻回される読取用のコイル(読取用コイル)および記録用のコイル(記録用コイル)とを備えている。
【0025】
プリヘッド8は、媒体処理装置1の前端側部分を構成するカード挿入部の内部に配置されている。また、プリヘッド8は、そのギャップ部が媒体通過路4に臨むように配置されている。このプリヘッド8は、読取専用の磁気ヘッドである。すなわち、プリヘッド8は、コアと、コアに巻回される読取用コイルとを備えているが、記録用コイルは備えていない。
【0026】
IC接点ブロック5は、カード2の端子部に接触する接点バネを備えている。IC接点ブロック5には、所定の動力伝達機構を介してソレノイド13が連結されている。IC接点ブロック5は、ソレノイド13の動力によって、媒体通過路4に近づいて接点バネがカード2の端子部に接触する接触位置と、媒体通過路4から退避する退避位置との間で移動可能となっている。本形態では、IC接点ブロック5は、所定の付勢部材によって退避位置に向かって付勢されており、ソレノイド13が駆動すると、退避位置から接触位置へ移動する。
【0027】
搬送機構6は、カード2に接触してカード2を搬送する駆動ローラ14と、駆動ローラ14に対向配置されるパッドローラ15とを備えている。駆動ローラ14には、所定の動力伝達機構を介してモータ16が連結されている。駆動ローラ14は、モータ16の動力によって回転して、カード2を搬送する。パッドローラ15は、駆動ローラ14に向かって付勢されている。
【0028】
シャッタ部材7は、媒体処理装置1の前端側に配置されている。シャッタ部材7には、所定の動力伝達機構を介してソレノイド17が連結されている。シャッタ部材7は、ソレノイド17の動力によって、媒体通過路4を塞ぐ閉位置と、媒体通過路4を開放する開位置との間で移動可能となっている。本形態では、シャッタ部材7は、所定の付勢部材によって閉位置に向かって付勢されており、ソレノイド17が駆動すると、閉位置から開位置へ移動する。
【0029】
ソレノイド13は、前後方向における媒体処理装置1の中間位置に配置され、モータ16は、媒体処理装置1の奥端側に配置され、ソレノイド17は、媒体処理装置1の前端側に配置されている。本形態では、ソレノイド17は、ソレノイド13およびモータ16よりもプリヘッド8に近い位置に配置されている。
【0030】
制御部10は、図2に示すように、プリヘッド8からの出力信号を処理する検出回路20と、ソレノイド13を駆動するドライバ(駆動回路)21と、モータ16を駆動するドライバ(駆動回路)22と、ソレノイド17を駆動するドライバ(駆動回路)23と、CPU(Central Processing Unit)24とを備えている。また、制御部10は、磁気ヘッド3からの出力信号を処理する検出回路(図示省略)も備えている。制御部10は、プリヘッド8から出力される出力信号に基づいて検出信号を生成する機能、および、磁気ヘッド3から出力される出力信号に基づいて検出信号を生成する機能に加え、ソレノイド13、17およびモータ16を制御する機能を果たしている。
【0031】
検出回路20は、増幅回路、フィルタ回路および波形整形回路等によって構成されている。この検出回路20は、プリヘッド8から出力される正弦波状の出力信号を処理して、矩形波状の検出信号を生成する。検出回路20で生成された検出信号は、CPU24に入力され、CPU24で所定の処理が行われる。
【0032】
ドライバ21〜23は、CPU24からの制御信号に基づいて、ソレノイド13、17およびモータ16を駆動する。本形態では、ソレノイド13、17およびモータ16は、PWM制御によって制御されており、ドライバ21〜23には、ソレノイド13、17およびモータ16を制御するためのPWM信号がCPU24から入力される。
【0033】
ドライバ21に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20を構成するフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっており、ソレノイド13の駆動時にソレノイド13から発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力信号が出力されても、検出回路20で検出信号が生成されることはない。同様に、ドライバ22に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20を構成するフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっており、モータ16の駆動時にモータ16から発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力信号が出力されても、検出回路20で検出信号が生成されることはない。
【0034】
検出回路20を構成するフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数は、磁気ヘッド3やプリヘッド8でカード2の磁気データが読み取られるときに、磁気ヘッド3やプリヘッド8から出力される出力信号の周波数である。この周波数は、搬送機構6によるカード2の搬送速度とカード2に記録された磁気データの記録密度とに基づいて定まる。たとえば、カード2の搬送速度が190mm/secであり、カード2の記録密度が210BPI(Bit Per Inch)である場合、カード2に記録された磁気データが”0”であれば、この周波数は、約0.8kHzとなり、カード2に記録された磁気データが”1”であれば、この周波数は、約1.6kHzとなる。そのため、本形態では、たとえば、約0.8kHzよりも低い周波数、あるいは、約1.6kHzよりも高い周波数のPWM信号がドライバ21およびドライバ22に入力される。
【0035】
ここで、本形態では、媒体処理装置1へのカード2の取込動作に伴ってシャッタ部材7を開放するためにソレノイド17を駆動させる通常動作モードと、プリヘッド8の読取用コイルの断線およびソレノイド17の故障の少なくともいずれか一方を検知するためにソレノイド17を駆動させる故障検知モードとの2つのモードで、ソレノイド17を駆動させる。なお、故障検知モードでは、媒体処理装置1の中にカード2が取り込まれていない状態でソレノイド17を駆動させる。
【0036】
通常動作モードにおいて、ドライバ23に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっており、ソレノイド17の駆動時にソレノイド17から発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力信号が出力されても、検出回路20で検出信号が生成されることはない。たとえば、通常動作モードにおいては、約0.8kHzよりも低い周波数、あるいは、約1.6kHzよりも高い周波数のPWM信号がドライバ23に入力される。
【0037】
一方、故障検知モードにおいて、ドライバ23に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数となっており、ソレノイド17の駆動時にソレノイド17から発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力信号が出力されると、検出回路20で検出信号が生成されて出力される。すなわち、故障検知モードにおいて、プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していない場合には、ソレノイド17の駆動時にソレノイド17から発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力信号が出力され、この出力信号に基づく検出信号が検出回路20で生成される。たとえば、故障検知モードにおいては、約0.8kHzを含む周波数、あるいは、約1.6kHzを含む周波数のPWM信号がドライバ23に入力される。すなわち、故障検知モードにおいてドライバ23に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数となるように、搬送機構6によるカード2の搬送速度とカード2に記録された磁気データの記録密度とに基づいて予め設定されている。
【0038】
このように、CPU24およびドライバ23は、故障検知モードにおいて、プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していない場合に、ソレノイド17の駆動時に発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、ソレノイド17を制御している。具体的には、CPU24は、通常動作モードと故障検知モードとで、ドライバ23に向かって出力するPWM信号の周波数を切り替えている。
【0039】
なお、本形態のシャッタ部材7は、所定の動作を行う動作対象物であり、ソレノイド17は、電磁力によって駆動して動作対象物であるシャッタ部材7を動作させる駆動源である。
【0040】
(故障検知モードにおける媒体処理装置の制御方法)
図3は、図1に示す媒体処理装置1の故障検知モードにおける制御フローの一例を示すフローチャートである。
【0041】
媒体処理装置1は、媒体処理装置1の電源投入時に、あるいは、上位制御部11から制御部10に入力される制御指令によって、故障検知モードへ移行する。なお、媒体処理装置1が故障検知モードへ移行するときには、媒体処理装置1の内部にカード2は取り込まれていない。
【0042】
媒体処理装置1が故障検知モードへ移行すると、CPU24は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される周波数帯域のPWM信号をドライバ23へ出力する(ステップS1)。その後、CPU24は、検出回路20から検出信号が入力されるか否かを判断する(ステップS2)。
【0043】
プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していない場合には、ソレノイド17の駆動時にソレノイド17から発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力された出力信号に基づく検出信号が検出回路20で生成され、検出回路20からCPU24へ検出信号が入力される(ステップS2にて“Yes”)。したがって、この場合には、制御部10は、プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していないとの正常応答信号を上位制御部11へ送る(ステップS3)。
【0044】
一方、プリヘッド8の読取用コイルの断線、および、ソレノイド17の故障の少なくともいずれか一方が発生している場合には、プリヘッド8から出力信号が出力されないため、検出回路20で検出信号が生成されず、検出回路20からCPU24へ検出信号が入力されない(ステップS2にて“No”)。したがって、この場合には、制御部10は、プリヘッド8の読取用コイルの断線、および、ソレノイド17の故障の少なくともいずれか一方が発生しているとの異常応答信号を上位制御部11へ送る(ステップS4)。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、故障検知モードにおいて、プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していない場合に、ソレノイド17の駆動時に発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力信号が出力され、この出力信号に基づく検出信号が検出回路20で生成される。一方、故障検知モードにおいて、プリヘッド8の読取用コイルの断線、および、ソレノイド17の故障の少なくともいずれか一方が発生している場合には、プリヘッド8から出力信号が出力されず、検出回路20で検出信号が生成されない。したがって、本形態では、プリヘッド8が記録用コイルを有しない読取専用の磁気ヘッドであっても、シャッタ部材7を動作させるソレノイド17を駆動させるといった簡易な構成で、プリヘッド8の読取用コイルの断線を検知することが可能になる。また、本形態では、簡易な構成で、ソレノイド17の故障を検知することが可能になる。
【0046】
本形態では、故障検知モードにおいてドライバ23に入力されるPWM信号の周波数は、搬送機構6によるカード2の搬送速度とカード2に記録された磁気データの記録密度とに基づいて設定されており、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数となっている。そのため、本形態では、故障検知モードにおいて、プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していなければ、ソレノイド17を駆動させた時に発生する磁気ノイズに基づいて検出回路20で検出信号を確実に生成することが可能になる。
【0047】
本形態では、通常動作モードにおいて、ドライバ23に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっている。そのため、通常動作モードにおいて、ソレノイド17が駆動している状態で、プリヘッド8によってカード2が挿入されたか否かの検知を行っても、カード2が挿入されたか否かを適切に検知することが可能になる。また、通常動作モードにおいて、ソレノイド17が駆動している状態で、磁気ヘッド3がカード2の磁気データを読み取っても、磁気データを適切に読み取ることが可能になる。
【0048】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0049】
上述した形態では、CPU24は、通常動作モードと故障検知モードとで、ドライバ23に向かって出力するPWM信号の周波数を切り替えている。この他にもたとえば、故障検知モードにおけるPWM信号の周波数を通常動作モードにおけるPWM信号の周波数に一致させるとともに、故障検知モードにおいて、プリヘッド8の読取用コイルが断線しておらず、かつ、ソレノイド17が故障していない場合に、ソレノイド17の駆動時に発生する磁気ノイズによってプリヘッド8から出力された出力信号に基づく検出信号が生成されるように、検出回路20で出力信号を処理しても良い。たとえば、通常動作モードおよび故障検知モードにおいてドライバ23に入力されるPWM信号の周波数が検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数となるようなフィルタ回路を検出回路20に設け、プリヘッド8から出力された出力信号に基づいて検出回路20で検出信号を生成しても良い。
【0050】
上述した形態では、通常動作モードと故障検知モードとの2つのモードで、ソレノイド17を駆動させるとともに、故障検知モードにおいて、ソレノイド17の駆動時に発生する磁気ノイズを利用することで、プリヘッド8の読取用コイルの断線の検知を可能としている。この他にもたとえば、IC接点ブロック5の接点バネがカード2の端子部に接触するようにIC接点ブロック5を退避位置から接触位置へ移動させるためにソレノイド13を駆動させる通常動作モードと、プリヘッド8の読取用コイルの断線およびソレノイド13の故障の少なくともいずれか一方を検知するためにソレノイド13を駆動させる故障検知モードとの2つのモードで、ソレノイド13を駆動させるとともに、故障検知モードにおいて、ソレノイド13の駆動時に発生する磁気ノイズを利用することで、プリヘッド8の読取用コイルの断線の検知を可能としても良い。なお、この場合には、故障検知モードにおいて、媒体処理装置1の中にカード2が取り込まれていない状態でソレノイド13を駆動させる。
【0051】
この場合には、通常動作モードにおいては、ドライバ21に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっている。一方、故障検知モードにおいては、ドライバ21に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数となっている。なお、この場合には、IC接点ブロック5は、所定の動作を行う動作対象物であり、ソレノイド13は、電磁力によって駆動して動作対象物であるIC接点ブロック5を動作させる駆動源である。
【0052】
また、媒体処理装置1に取り込まれたカード2を搬送するためにモータ16を駆動させる通常動作モードと、プリヘッド8の読取用コイルの断線およびモータ16の故障の少なくともいずれか一方を検知するためにモータ16を駆動させる故障検知モードとの2つのモードで、モータ16を駆動させるとともに、故障検知モードにおいて、モータ16の駆動時に発生する磁気ノイズを利用することで、プリヘッド8の読取用コイルの断線の検知を可能としても良い。なお、この場合には、故障検知モードにおいて、媒体処理装置1の中にカード2が取り込まれていない状態でモータ16を駆動させる。
【0053】
この場合には、通常動作モードにおいては、ドライバ22に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっている。一方、故障検知モードにおいては、ドライバ22に入力されるPWM信号の周波数は、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数となっている。この場合には、通常動作モードにおいて、ドライバ22に入力されるPWM信号の周波数が、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっているため、モータ16が駆動している状態で、プリヘッド8によってカード2が挿入されたか否かの検知を行っても、カード2が挿入されたか否かを適切に検知することが可能になる。また、通常動作モードにおいて、ドライバ22に入力されるPWM信号の周波数が、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数よりも高く、あるいは、低くなっているため、モータ16が駆動している状態で、磁気ヘッド3がカード2の磁気データを読み取っても、磁気データを適切に読み取ることが可能になる。なお、この場合には、駆動ローラ14は、所定の動作を行う動作対象物であり、モータ16は、電磁力によって駆動して動作対象物である駆動ローラ14を動作させる駆動源である。
【0054】
上述した形態では、ソレノイド13、17およびモータ16は、PWM制御によって制御されている。この他にもたとえば、ソレノイド13、17およびモータ16は、その駆動中に所定値の電圧が常時印加される電圧制御等によって制御されても良い。この場合には、たとえば、故障検知モードにおいて、検出回路20のフィルタ回路によって取り出される帯域の周波数で、ソレノイド13、17またはモータ16のオンオフを繰り返せば、ソレノイド13、17またはモータ16の駆動時に発生する磁気ノイズを利用して、プリヘッド8の読取用コイルの断線を検知することが可能になる。
【0055】
上述した形態では、ソレノイド17の駆動時に発生する磁気ノイズを利用して、プリヘッド8の読取用コイルの断線を検知することが可能になっている。この他にもたとえば、ソレノイド17の駆動時に発生する磁気ノイズを利用して、磁気ヘッド3の読取用コイルの断線を検知することが可能になっていても良い。また、この場合には、ソレノイド13またはモータ16の駆動時に発生する磁気ノイズを利用して、磁気ヘッド3の読取用コイルの断線を検知することが可能になっていても良い。なお、上述した形態では、ソレノイド13は、ソレノイド17およびモータ16よりも磁気ヘッド3に近い位置に配置されているため、ソレノイド13の駆動時に発生する磁気ノイズを利用して、磁気ヘッド3の読取用コイルの断線を検知することが可能になっていることが好ましい。
【0056】
上述した形態では、媒体処理装置1は、搬送機構6を備えるカード搬送式のカードリーダであるが、本発明の構成が適用される媒体処理装置1は、ユーザが手動でカード2を移動させながら、磁気データの読取を行う手動式のカードリーダであっても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 媒体処理装置
2 カード(情報記録媒体)
3 磁気ヘッド
4 媒体通過路
5 IC接点ブロック(動作対象物)
6 搬送機構
7 シャッタ部材(動作対象物)
8 プリヘッド(磁気ヘッド)
10 制御部
11 上位制御部
13 ソレノイド(駆動源)
14 駆動ローラ(動作対象物)
16 モータ(駆動源)
17 ソレノイド(駆動源)
図1
図2
図3