(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周方向における前記第1の突起の先端は、前記周方向における前記第2の突起の先端よりも、前記他方の側縁側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【背景技術】
【0002】
車両用の回転コネクタ装置には、ステアリングシャフトに連結されたロータと、車体側に固定されたステータとの間に環状空間を形成して、この環状空間内に、ロータ側とステータ側とを接続するフラットケーブルを配置したものがある。
【0003】
図6は、従来の回転コネクタ装置100の環状空間S内におけるフラットケーブル101の配置を模式的に説明する図であり、(A)は、フラットケーブル101が左右2回転できる位置(中立位置)で組み込まれたスペーサ104が、回転コネクタ装置100に正常に組み込まれた状態を示す図であり、(B)は、スペーサ104にフラットケーブル101が左右均等に2回転できない位置(非中立位置)で組み込まれて、図示しないステアリングホイールの操作中にフラットケーブル101の長さが足りなくなった状態を示す図である。
【0004】
図6の(A)に示すように、環状空間S内においてフラットケーブル101は、リブ104a、104aの間を通って、スペーサ104の内径側から外径側に引き出されており、スペーサ104の内径側に位置するフラットケーブル101は、ロータ102の外周に一方向に巻き回されたのちに、ロータ側のコネクタ102aに接続されている。
また、スペーサ104の外径側に位置するフラットケーブル101は、内径側とは反対方向に巻き回されたのちに、環状壁103の開口部105から環状空間Sの外に引き出されており、最終的にステータ側のコネクタ(図示せず)に接続されている。
【0005】
フラットケーブル101は、ステアリングハンドルの操作に連動して、スペーサ104の内径側と外径側との間を移動するようになっており、ステアリングハンドルの回転可能な角度範囲は、フラットケーブル101の長さに応じて決まるようになっている。
フラットケーブル101の長さは、ステアリングハンドルが中立位置から左右に少なくとも2回転できる長さに設定されている。そのため、回転コネクタ装置100を車両に取り付ける際には、スペーサ104においてフラットケーブルが左右2回転できる位置(中立位置)となるように設定した状態で、回転コネクタ装置100をステアリングシャフトに組み付けるようになっている。このとき、フラットケーブルの中立位置がズレないようにするために(ロータの回転を規制するために)、ロータをステータに対して保持具で仮止めするようになっている。
【0006】
ここで、保持具が外れてロータが回転してしまうトラブルが組み付け時に発生すると、フラットケーブルが中立位置からズレた状態で、回転コネクタ装置100がステアリングシャフトに組み付けられることがある。
かかる場合、中立位置からのズレ量によっては、ステアリングハンドルを回転させている途中でフラットケーブルの長さが足りなくなって、ステアリングハンドルの操作が妨げられてしまう虞がある。
【0007】
かかる事態が発生した場合、フラットケーブル101は、ステアリングハンドルの操作に連動して引っ張られて、環状壁103の開口部105に強く押し当てられた状態になる(
図6の(B)参照)。そのため、従来の回転コネクタ装置100では、開口部105にカッタを設けて、かかる自体が発生した場合に、フラットケーブル101が切断されるようにすることで、ステアリングハンドルの操作が妨げられないようにしている(例えば、特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
なお、以下の説明においては、便宜上、
図1におけるボトムカバー7側を上側、カバー8側を下側として説明する。
【0019】
実施の形態にかかる回転コネクタ装置1のロータ2は、ロータ本体3と、ライナ4と、アタッチメント5と、を備えており、これらは樹脂材料で形成されている。
ロータ本体3では、円盤状の基部31の中央部に、図示しないステアリングシャフトを挿通させる開口32が形成されており、基部31のライナ4側の面には、開口32を全周に亘って囲む筒状壁33が、ライナ4側の上方に突出して設けられている。
【0020】
ライナ4では、円盤状の基部41の中央部に、ロータ本体3の筒状壁33を挿通させる開口42が形成されており、基部41のアタッチメント5側の上面には、開口42を全周に亘って囲む筒状壁43が、アタッチメント5側の上方に突出して設けられている。
ライナ4は、その筒状壁43を、ロータ本体3の筒状壁33に外挿させて、ロータ本体3に組み付けられるようになっている。
【0021】
アタッチメント5は、円筒状の基部51を備えており、この基部51の下端には、ロータ本体3の筒状壁33との係合部52が設けられている。
係合部52は、基部51からロータ本体3側の下方に突出して形成されており、軸線X周りの周方向で、間隔を空けて複数設けられている。
各係合部52には、前記したロータ本体3の筒状壁33に設けた突起33aが係合する開口52aが形成されている。
【0022】
実施の形態では、アタッチメント5は、その係合部52を、軸線Xの軸方向からロータ本体3の筒状壁33に嵌入してロータ本体3に連結されるようになっており、この際に、突起33aが開口52aに嵌合することで、アタッチメント5のロータ本体3からの脱落が防止されるようになっている。
また、この状態においてライナ4は、アタッチメント5とロータ本体3の間に位置しており、ライナ4のロータ本体3からの脱落も、アタッチメント5により防止されるようになっている。
【0023】
図2は、ステータ6の分解斜視図であって、ステータ6を構成するボトムカバー7およびカバー8と共に、これらの間に配置されるスペーサ9とフラットケーブル10とを示した図である。
図3は、
図2における面Aでステータ6を切断した断面図であって、ステータ6に組み付けられたロータ2側の主要部材が、図中仮想線で模式的に示されている図である。
【0024】
図2および
図3に示すように、ステータ6は、車体側に固定されるボトムカバー7と、このボトムカバー7のリング状の基部71に取り付けられるカバー8とを備えており、これらは同一の樹脂材料(例えば、ポリアセテート)で形成されている。
ボトムカバー7では、基部71の中央部に開口72が形成されており、この開口72には、前記したロータ2側の筒状壁33および係合部52と、ステアリングシャフトSH(
図3参照)とが挿通されるようになっている。
【0025】
基部71のカバー8側の下面には、開口72を所定間隔で囲む嵌合壁73が、カバー8側の下方に突出して設けられており、この嵌合壁73は、ボトムカバー7とカバー8とが組み付けられた際に、後記するカバー8の環状壁83に外嵌するようになっている
【0026】
図2に示すように、基部71の周縁には、径方向から見て略矩形形状の係合片77が、図中下方向に突出して設けられており、この係合片77には、後記するカバー8の突起83aが係合する係合穴77aが形成されている。
【0027】
カバー8は、リング状の基部81と、この基部81のボトムカバー7との対向面から突出する環状壁83とを有している。
カバー8では、基部81の中央部に開口82が形成されており、この開口82には、前記したロータ2側の筒状壁33および係合部52と、ステアリングシャフトSH(
図3参照)とが挿通されるようになっている。
【0028】
環状壁83は、開口82から径方向外側に所定距離h離間した位置から、ボトムカバー7側の上方に突出して設けられており、軸線X周りの周方向の全周に亘って同じ高さh1で形成されている。
図2に示すように、環状壁83の外周には、径方向外側に突出する突起83aが設けられており、この突起83aは、軸線X周りの周方向で間隔を空けて複数設けられている。
実施の形態では、この突起83aは、カバー8をボトムカバー7に組み付けた際に、前記した係合片77の係合穴77aに係合するようになっており、カバー8のボトムカバー7からの脱落が、係合穴77aに係合した突起83aにより、阻止されるようになっている。
【0029】
さらに、環状壁83の外周には、径方向から見て矩形形状の係合壁84が設けられている。
図3に示すように、この係合壁84では、環状壁83との接続部841よりも上側に、係合凹部842が形成されており、カバー8をボトムカバー7に組み付けた際に、ボトムカバー7の嵌合壁73が係合凹部842に係合し、係合壁84の上端部843が、ボトムカバー7の嵌合孔710に嵌合することで、カバー8とボトムカバー7とが軸線Xの径方向の位置ずれなく組み付けられるようになっている。
【0030】
環状壁83には、ボトムカバー7側の上方に突出する突起83eが、環状壁83の周方向で間隔を空けて複数設けられており、これら突起83eは、カバー8をボトムカバー7に組み付けた際に、ボトムカバー7の基部71に設けた嵌合孔713に嵌合するようになっている。
【0031】
実施の形態では、カバー8をボトムカバー7に組み付けてステータ6を形成すると、カバー8の基部81とボトムカバー7の基部71とが、軸線Xの軸方向に間隔を空けて対向配置される。これにより、環状壁83の径方向内側に、スペーサ9とフラットケーブル10を収容する環状空間Sが形成されるようになっている(
図3参照)。
【0032】
スペーサ9は、高摺動性の樹脂材料(例えば、ポリアセタール(POM))から形成されており、軸方向から見てリング状の基部91では、カバー8側の下面にローラ92や、ガイド部93などが設けられている。
【0033】
フラットケーブル10は、図示しないステータ側のコネクタとロータ側のコネクタとを電気的に接続するものであり、可撓性に富むフイルム基材の接着面に、複数の金属製の電線板を挟み込んで構成される。
フラットケーブル10は、前記した従来例にかかるフラットケーブル101(
図6参照)と同様に、環状空間S内に回転可能に収容されたスペーサ9に、巻き回された状態で設けられている。
具体的には、フラットケーブル10は、スペーサ9のローラ92の部分を通って、スペーサ9の内径側から外径側に引き出されており、ローラ92の部分を境にして、巻き方向を反転させた状態で設けられている。
【0034】
そのため、スペーサ9の内径側に位置するフラットケーブル10a(スペーサ9のロータ2側に位置するフラットケーブル10a)が、例えば、軸方向から見て反時計回り方向に巻かれている場合には、スペーサ9の外径側に位置するフラットケーブル10b(スペーサ9の環状壁83側に位置するフラットケーブル10b)は、軸方向から見て時計回り方向に巻かれている。
【0035】
図4の(A)は、カバー8を軸方向(ボトムカバー7側)から見た平面図であり、(B)は、(A)における領域Aを拡大して示す斜視図であり、(C)は、(B)におけるフラットケーブル10の図示を省略した図である。
図5は、
図4の(A)における領域Aの拡大図であり、(B)は、(A)における開口部85(85A、85B)の近傍をさらに拡大して、フラットケーブル10の図示を省略した図であり、(C)は、(A)におけるA−A矢視図であって、フラットケーブル10の図示を省略した図である。
【0036】
図4に示すように、環状壁83には、環状壁83を厚み方向に貫通して開口部85(85A、85B)が設けられており、スペーサ9の外径側に位置するフラットケーブル10bが、開口部85(85A、85B)を通って、環状空間S(
図3参照)の外部に引き出されるようになっている。
開口部85(85A、85B)は、環状壁83におけるコネクタ部89との接続部に設けられており、軸線X周りの周方向で、間隔を空けて設けられている。
【0037】
開口部85(85A、85B)は、環状壁83の高さ方向の全長に亘って設けられており、環状壁83は、開口部85(85A、85B)が設けられた部分で分断されている。
環状壁83における開口部85Aの両側部(側縁部831、832)のうちの一方の側縁部831には、他方の側縁部832側に突出して、第1突出部86と第2突出部87が設けられている。
【0038】
第1突出部86と第2突出部87は、環状壁83の高さ方向で並んで設けられており、第1突出部86は、カバー8の基部81側(図中下側)に位置している。
図5の(C)に示すように、内径側から見て矩形形状の第1突出部86は、周方向の全長に亘って同じ高さh2に形成されており、その先端86aは、軸線X(
図1参照)に対して平行な仮想線Im1上に位置している。
図5の(B)に示すように、軸方向から見て第1突出部86は、先端86a側に向かうにつれて径方向の幅Wが狭くなっており、先端86aには曲面加工が施されている。
実施の形態では、フラットケーブル10の一端10c側が、開口部85Aを通って、環状空間Sの外部に引き出されるようになっている。そのため、開口部85Aからフラットケーブル10を引き出す際に、フラットケーブル10が、第1突出部86の先端86aにより傷つけられることがないようにするために、曲面加工が施されている。
【0039】
内径側から見て第1突出部86の第2突出部87側の角部86cは、フラットケーブル10が、第1突出部86に押しつけられる方向に引っ張られた際に、フラットケーブル10に当接して、フラットケーブル10を切断するための応力を作用させる部位である。
【0040】
図5の(C)に示すように、内径側から見て第2突出部87は、側縁部831側に設けた略V形状の凹部87dにより、側縁部832側に向かうにつれて高さh3が高くなっており、側縁部832側の上方に鋭角部87bを有する尖状に形成されている。この第2突出部87の側縁部832側の先端87aは、軸線Xに対して平行な仮想線Im2上に位置している。
図5の(B)に示すように、軸方向から見てこの先端87aは、環状壁83の内周面83bを規定する仮想線Im3よりも径方向外側であって、第1突出部86の先端86aよりも径方向外側に位置している。
【0041】
軸方向から見て第2突出部87は、先端87a側に向けて径方向の幅Wが小さくなる三角形形状を成しており、第2突出部87の頂部87c(
図5の(C)参照)は、環状壁83の上面83cと同じ高さに位置している。
そのため、第2突出部87の頂部87cは、カバー8とボトムカバー7とが組み付けられた際に、カバー8側からボトムカバー7の基部71に接するようになっている。
実施の形態では、フラットケーブル10の切断を確実にするために、この頂部87cの角R(曲率)が0.1mm以下に設定されている。
【0042】
環状壁83における側縁部831の上面83cには、ボトムカバー7側の上方に突出して係合突起831bが設けられている。この係合突起831bは、カバー8とボトムカバー7とが組み付けられた際に、ボトムカバー7の基部71に設けた嵌合孔711(
図2参照)に嵌合するようになっている。
これにより、カバー8とボトムカバー7とが組み付けられた状態において、側縁部831が、カバー8とボトムカバー7の両方で支持された状態となって、フラットケーブル10が、第1突出部86および第2突出部87に接触する方向に引っ張られて、側縁部831にフラットケーブル10からの応力が作用しても、側縁部831が簡単に変形しないようになっている。
【0043】
図5に示すように、開口部85Bにおける側縁部833にも、側縁部831側に突出して、第3突出部88が設けられている。
図5の(C)に示すように、径方向から見て矩形形状の第3突出部88は、周方向の全長に亘って同じ高さh2に形成されており、その先端88aは、軸線X(
図1参照)に対して平行な仮想線Im4上に位置している。
図5の(B)に示すように、軸方向から見て第3突出部88は、先端88a側に向かうにつれて径方向の幅W2が狭くなっており、先端88aには曲面加工が施されている。
【0044】
側縁部833もまた、先端833a側に向かうにつれて径方向の幅W2が狭くなっており、この側縁部833の先端833a側は、第3突出部88の先端88a側よりも鋭角状に尖っていると共に、先端88aよりも径方向外側に位置している。
【0045】
環状壁83における側縁部833の上面83cには、ボトムカバー7側の上方に突出して係合突起833bが設けられている。この係合突起833bは、カバー8とボトムカバー7とが組み付けられた際に、ボトムカバー7の基部71に設けた嵌合孔712(
図2参照)に嵌合するようになっている。
これにより、カバー8とボトムカバー7とが組み付けられた状態において、側縁部831が、カバー8とボトムカバー7の両方で支持された状態となって、側縁部831に応力が作用しても、側縁部831が簡単に変形しないようになっている。
【0046】
環状壁83における開口部85(85A、85B)が設けられた部分の径方向外側には、軸方向から見て円弧状の外壁891が、環状壁83に沿って設けられており、環状壁83と外壁891の間に、開口部85(85A、85B)から環状空間Sの外部に引き出されたフラットケーブル10を収容するための溝892が形成されている。
【0047】
軸方向から見て環状壁83の外周のうちの外壁891に対向する部分には、径方向外側に突出する突起83dが、周方向で間隔を空けて複数設けられている。
また、外壁891の内周には、径方向内側に突出する突起891aが、周方向で間隔を空けて複数設けられている。
【0048】
環状壁83の周方向で、これら突起83d、突起891aは交互に設けられている。フラットケーブル10の一端10c側は、これら突起83d、891aに挟まれた状態で、溝892内に収容されており、フラットケーブル10の一端10c側の移動(
図5の(A)における右方向への移動)が阻止されるようになっている。
そのため、環状空間S内に位置するフラットケーブル10が、第1突出部86、第2突出部87に接触する方向に引っ張られた際に、フラットケーブル10の一端10c側が環状空間S内に引き込まれることが好適に防止される。
そして、フラットケーブル10を引っ張る力がより強くなっても、フラットケーブル10を第1突出部86、第2突出部87に確実に接触させた位置で保持して、これら突出部(第1突出部86、第2突出部87)からの応力をフラットケーブル10に確実に作用させることができるようになっている。
【0049】
以上の通り、実施の形態では、ロータ2とステータ6との間に環状空間Sを形成し、環状空間S内に、ロータ2側のコネクタとステータ6側のコネクタとを接続するフラットケーブル10が設けられた回転コネクタ装置1において、
ステータ6は、環状空間Sを囲む環状壁83を有しており、フラットケーブル10の一端10c側は、環状壁83に設けた開口部85Aを通って環状空間Sの外部に引き出されており、
環状壁83における開口部85Aの側縁部831には、開口部85Aを挟んで反対側に位置する側縁部832側に突出して第1突出部86と第2突出部87とが設けられており、
第1突出部86は、内径側(径方向)から見て矩形状の突起であり、
第2突出部87は、内径側(径方向)から見て尖状の突起であり、第1突出部86と第2突出部87とは、環状壁83の高さ方向で、並んで設けられている構成とした。
【0050】
このように構成すると、開口部85Aを通って環状空間Sの内部と外部とに跨って設けられたフラットケーブル10が、第1突出部86および第2突出部87に押しつけられる方向に引っ張られると、フラットケーブル10には、第1突出部86に起因する応力と第2突出部87に起因する応力とが作用する。よって、フラットケーブル10を切断するための突起(カッタ)がひとつのみ設けられている場合に比べて、フラットケーブル10における応力の作用点を増やすことができるので、フラットケーブル10をより確実に切断できる。特に、フラットケーブル10が、スペーサ9に中立位置から大きくズレて巻回され第1突出部86側に強く引っ張られた際に、フラットケーブル10が環状壁83の高さ方向で第1突出部86から離れる側(
図4の(B)における第1突出部86の上側)にずれてしまった場合でも、第2突出部87によりフラットケーブル10をより確実に切断できる。
また、従来用いられていなかった空間、すなわち環状壁83の高さ方向で第1突出部86に隣接する空間(
図4の(B)における第1突出部86の上側の空間)に第2突出部87を設けたので、第2突出部87を設けるために、カバー8における開口部85Aの位置や形状を変更する必要がない。これにより、カバー8の大型化を避けつつ、新たな部位(第2突出部87)を設けることによるコストへの影響を抑えることができる。
【0051】
環状壁83の周方向において、内径側から見た第1突出部86の先端86aは、内径側から見た第2突出部87の先端87aよりも、開口部85Aを挟んで反対側に位置する側縁部832側に位置している構成とした。
【0052】
このように構成すると、開口部85Aを通って環状空間Sの内部と外部とに跨って設けられたフラットケーブル10が、第1突出部86および第2突出部87に押しつけられる方向に引っ張られると、フラットケーブル10には、第1突出部86に起因する応力が先に作用する。
この状態において、第1突出部86の角部86c(
図4の(C)参照)によるフラットケーブル10の保持が弱い場合には、フラットケーブル10を引っ張る力がさらに強くなると、フラットケーブル10が第2突出部87側にズレてしまうことがある。かかる場合には、尖状の第2突出部87がフラットケーブル10に接触して、フラットケーブル10に応力を作用させるので、この第2突出部87の応力により、フラットケーブル10を切断することができる。
【0053】
また、第2突出部87によってフラットケーブル10のズレが抑えられない場合であっても、フラットケーブル10がズレる際に、第2突出部87の鋭角部87bがフラットケーブル10の表面を傷つけるので、ズレている途中でフラットケーブル10の傷が広がって、フラットケーブル10を切断させることができる。
さらに、第2突出部87の鋭角部87bは、第1突出部86に比べて摩耗しやすいので、先にフラットケーブル10に接触した第1突出部86によるフラットケーブル10の破断が上手くゆかないときに、第2突出部87によりフラットケーブル10を切断するようにすることで、第2突出部87のカッタとしての寿命を延ばすことが可能になる。
特に、第2突出部87が、PBTよりも柔らかい樹脂材料により作製されている場合には、第2突出部87のカッタとしての寿命を延ばすことができる。
【0054】
さらに、硬度を高めるために、第1突出部86および第2突出部87をガラス繊維を含む樹脂材料から構成しなくても、フラットケーブル10を確実に切断することができるので、ガラス繊維を含まないことによって、作製コストの低減が可能になる。
【0055】
環状壁83の軸方向から見て、第2突出部87の鋭角部87bの頂部87cは、第1突出部86の先端86aよりも径方向外側に位置している構成とした。
【0056】
環状壁83の内周面83bは、スペーサ9に巻き回されたフラットケーブル10が摺動する摺動面であるので、鋭角部87bの頂部87cが内径側に位置すると、フラットケーブル10を傷つけてしまう虞がある。上記のように構成することで、回転コネクタ装置1における通常の動作時に、環状壁83の内周面を摺動するフラットケーブル10が傷つくことを好適に防止できる。
【0057】
環状壁83の外側には、環状壁83の軸方向から見て円弧状の外壁891が設けられており、フラットケーブル10の一端10c側は、環状壁83と外壁891との間の溝892に挟まれた状態で、環状壁83の周方向で開口部85から離れる方向に延びている構成とした。
【0058】
このように構成すると、フラットケーブル10の一端10c側が溝892で確実に保持されて、フラットケーブル10が、第1突出部86と第2突出部87に接触する方向に引っ張られたときに、フラットケーブル10の一端10c側が環状空間S側に引き込まれることを好適に防止できる。
フラットケーブル10に、第1突出部86と第2突出部87のうちの少なくとも一方からの応力が作用しているときに、フラットケーブル10の一端10c側が環状空間S側に引き込まれると、フラットケーブル10を、第1突出部86や第2突出部87に押し当てた状態で保持することができなくなる。
そうすると、フラットケーブル10を切断できなくなる虞や、フラットケーブル10の切断のタイミングが遅れてしまう虞が発生する。
上記のように構成すると、フラットケーブル10の一端10c側が環状空間S内に引き込まれることを好適に防止して、フラットケーブル10が第1突出部86や第2突出部87に押し当てられた際に、その状態を保持できる。これにより、フラットケーブル10の切断が必要なときに、フラットケーブル10が切断できなくなることや、フラットケーブル10の切断のタイミングが遅れてしまうことを好適に防止できる。
【0059】
環状壁83の外周のうちの外壁891に対向する部分には、径方向外側に突出する突起83dが、周方向で間隔を空けて複数設けられており、外壁891の内周には、径方向内側に突出する突起891aが、周方向で間隔を空けて複数設けられており、環状壁83の突起83dと外壁891の突起891aは、環状壁83の軸方向から見て、周方向で交互に設けられている構成とした。
【0060】
このように構成すると、フラットケーブル10が、第1突出部86および第2突出部87に押しつけられる方向に引っ張られて、第1突出部86と第2突出部87のうちの少なくとも一方からの応力がフラットケーブル10に作用しているときに、フラットケーブル10の一端10c側が環状空間S側に引き込まれることをより好適に防止できる。
【0061】
ステータ6は、環状壁83を有するカバー8(第1のステータ部)と、環状壁83の上端83cが当接するリング状の基部71(当接部)を有するボトムカバー7(第2のステータ部)とを備えており、
ボトムカバー7は、環状壁83に設けた複数の突起(突起83e、上端部843、係合突起831b、係合突起833b)の各々を、それぞれ、基部71の対応する嵌合孔713、710、711、712に嵌合させて、ボトムカバー7に組み付けられており、
環状壁83の側縁部831、833では、開口部85A、85Bの近傍に、係合突起831b、833bが設けられている構成とした。
【0062】
このように構成すると、側縁部831、833の上端がボトムカバー7の基部71に接触する位置を、嵌合孔711、712に応じて決まる所定位置に保持することができる。
側縁部831、833の上端が、ボトムカバー7の基部71に単純に当接しているだけの構成では、側縁部831、833を支持する基部81が薄肉の板状部材であることにも起因して、側縁部831、833の上端がボトムカバー7の基部71に接触する位置が、フラットケーブル10から作用する応力によって変化して、側縁部831、833の上端と基部71との間に隙間が生じてしまう虞がある。
例えば、フラットケーブル10が第1突出部86、第2突出部87に押しつけられた際に、側縁部831と基部71との間に隙間が生じると、この隙間にフラットケーブル10が進入して、フラットケーブル10が切断されない虞がある。
上記のように構成すると、隙間の発生が抑えられるので、フラットケーブル10の切断が行えなくなる事態の発生を好適に防止できる。
【0063】
径方向から見て、第2突出部87は、側縁部832側の先端87aが、第1突出部86の先端86aに対して平行な直線状に形成されており、第2突出部87における側縁部831側には、径方向から見てV字状の凹部87dが設けられて
いる。
第2突出部87には、この凹部87dにより、
環状壁83の軸方向で第1突出部86とは反対側方向に離れるにつれて、環状壁83の周方向の幅が狭くなる尖状の鋭角部87bが形成されており、
第2突出部87は、側縁部831から側縁部832側に向かうにつれて
、軸方向から見た幅Wが狭くなる形状に形成されている構成とした。
【0064】
このように構成すると、周方向から第2突出部87に当接したフラットケーブル10には、当該第2突出部87の先端87aからの応力が最初に作用する。そして、この先端87aからの応力でフラットケーブル10が切断されない場合には、フラットケーブル10は、このフラットケーブル10に作用する引っ張り力により径方向外側に移動して、尖状の鋭角部87b側に回り込むことになる。そうすると、径方向外側に移動するフラットケーブル10に、尖状の鋭角部87bからの応力が作用して、フラットケーブル10が確実に切断されることになる。
【0065】
さらに、環状壁83の径方向から見て、第2突出部87の頂部87cは、ボトムカバー7の基部71に隙間なく接触している構成とした。
頂部87cと基部71との間に隙間があると、フラットケーブル10が、引っ張られて第2突出部87の鋭角部87b側に移動した際に、頂部87cと接触せずに、頂部87cと基部71との間の隙間に進入することがあり、かかる場合に、フラットケーブル10が切断されなくなる虞がある。
頂部87cを基部71に隙間なく接触させると、フラットケーブル10が引っ張られて、頂部87cと基部71との間に進入しようとした際に、フラットケーブル10を確実に頂部87cに接触させて、切断することができる。
【0066】
前記した実施の形態では、環状壁83の周方向で隣接する開口部85A、85Bのうち、開口部85A側の側縁部831に、第2突出部87を設けた場合を例示したが、第2突出部87を、さらに開口部85Bの側縁部833に設けた構成とすることや、側縁部833のみに設けた構成としても良い。
【0067】
なお、前記した実施の形態では、第2突出部87の頂部87cが、ボトムカバー7の基部71に隙間なく接触している場合を例に挙げて説明をしたが、基部71との間に僅かな隙間があっても良い。かかる場合、第2突出部87の先端87a側(
図5の(C)における右側)に突出するように、頂部87cを設けることで、隙間に進入しようとするフラットケーブル10の側面を傷つけることができるので、フラットケーブル10が隙間に進入することによって切断されなくなることを好適に防止できる。