(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水性または水含有システムが、油田またはガス田流体、抄紙機白水、産業用循環水、デンプン溶液、ラテックスエマルション、高温回転機械加工液、または産業用食器洗浄もしくは洗濯液である請求項1の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上述のように、本発明は、化合物、および水性または水含有システム、例えば、石油およびガス操業において認められるものなどにおける微生物の抑制のためにその化合物を使用する方法を提供する。本発明は、熱活性化される場合に、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを放出する保護された抗微生物化合物を使用する。しかし、遊離のアルデヒドとは異なり、この保護された化合物は高温でより安定であり、よって、微生物汚損の長期間の抑制を可能にする。さらに、この保護された化合物は、遊離のアルデヒドを分解するであろう他の化学物質種、例えば、亜硫酸水素塩およびアミンなどの存在下で改良された安定性を示すことができる。
【0008】
本明細書において説明される方法に使用するための保護された抗微生物化合物 は、式I
【化1】
(式中、RはC
1−C
6アルキルであり、このアルキルは場合によっては、ヒドロキシルで置換されており;XおよびYは独立してOまたはNR”であり、ここで、R”は独立してHまたはC
1−C
6アルキルであり;並びにR
1およびR
2はHであるか、またはR
1およびR
2はそれらが結合されているCH−N−CH基と一緒になってピペリジニル環を形成している)
で表されうる。
【0009】
式Iの保護された抗微生物化合物は、本発明の方法に従ってホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを放出するのに適する。
【0010】
式Iの好ましい化合物には式I−lの化合物が挙げられ、これはXおよびYがそれぞれOである式Iの化合物である。
【0011】
式I−1の好ましい化合物には式I−2の化合物が挙げられ、これはR
1およびR
2がそれらが結合されているCH−N−CH基と一緒になってピペリジニル環を形成している式I−1の化合物である。
【0012】
式Iの好ましい化合物には式I−3の化合物が挙げられ、これはXおよびYがそれぞれNR”である式Iの化合物であり、ある実施形態においては、XおよびYはそれぞれNHである。
【0013】
式I−3の好ましい化合物には式I−4の化合物が挙げられ、これはR
1およびR
2がそれぞれHである式I−3の化合物である。
【0014】
式I−3の好ましい化合物には式I−5の化合物が挙げられ、これはR
1およびR
2がそれらが結合されているCH−N−CH基と一緒になってピペリジニル環を形成している式1−3の化合物である。
【0015】
式I、I−l、I−2、I−3、I−4、およびI−5の好ましい化合物には、式I−6の化合物が挙げられ、これはRがC
1−C
3アルキルであり、このアルキルが場合によっては1つのヒドロキシルで置換されている式I、I−l、I−2、I−3、I−4、またはI−5の化合物である。ある実施形態においては、Rはメチルである。ある実施形態においては、Rはエチルである。ある実施形態においては、Rはヒドロキシメチルである。
【0016】
式Iの典型的な化合物には以下のものが挙げられる:
【表1】
【0017】
ある実施形態においては、式Iの保護された抗微生物化合物は、2a−メチルオクタヒドロ−l,4−ジオキサ−2al−アザシクロペンタ[cd]インデンである。ある実施形態においては、式Iの保護された抗微生物化合物は、(オクタヒドロ−l,4−ジオキサ−2a
1−アザシクロペンタ[cd]インデン−2a−イル)メタノールである。
【0018】
式Iの化合物は、例えば、スキーム1に描かれるように製造されうる。典型的には、関心のある抗微生物アルデヒド(ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド)が多官能性アミン化合物Aと適切な溶媒、例えば、水中で混合される。この混合物は、この反応が起こりかつ式Iの所望の化合物が形成するのを可能にするのに充分な時間にわたって攪拌され、継続されうる。この生成物はそのままで使用されうるか、または場合によっては、当業者に周知の技術、例えば、結晶化、クロマトグラフィ、蒸留などを用いてさらに精製されうる。
【0020】
上記合成において使用される化合物Aは一般的には、ヒドロキシル(単一もしくは複数)、アミン(単一もしくは複数)または両方を含んでなる少なくとも2つの追加の官能基を含むアミン化合物である。例としては、2−アミノ−2−メチル−l,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−メチル−l,2,3−プロパントリアミン、および2−エチル−l,2,3−プロパントリアミンが挙げられる。このような化合物は商業的に入手可能でありうるか、および/または当業者によって容易に製造されうる。
【0021】
式Iの保護された抗微生物化合物のいくつかのものは新規である。よって、さらなる実施形態においては、本発明は式Iの新規化合物を提供する。ある実施形態においては、この化合物は7a−メチルヘキサヒドロ−lH−イミダゾ[l,5−c]イミダゾールである。ある実施形態においては、この化合物は7a−エチルヘキサヒドロ−lH−イミダゾ[l,5−c]イミダゾールである。ある実施形態においては、この化合物は2a−メチルデカヒドロ−l,2al,4−トリアザシクロペンタ[cd]インデンである。ある実施形態においては、この化合物は2a−エチルデカヒドロ−1,2a1,4−トリアザシクロペンタ[cd]インデンである。
【0022】
本明細書に記載される保護された抗微生物化合物は、熱活性化される場合に、抗微生物アルデヒド(ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド)を放出する。しかし、遊離のアルデヒドとは異なり、この保護された化合物は高温でより安定であり、よって微生物汚損の長期間の抑制を可能にする。さらに、この保護化合物は、遊離アルデヒドを分解するであろう他の化学物質種、例えば、亜硫酸水素塩およびアミンなどの存在下で向上した安定性を示すことができる。
【0023】
その安定性および熱活性化特性のせいで、本発明の保護された抗微生物化合物は、高温である水性または水含有システム、例えば、石油または天然ガス用途、抄紙機白水、産業用循環水、デンプン溶液、ラテックスエマルション、高温回転機械加工液、または産業用食器洗浄もしくは洗濯液に存在しまたは使用されうるものなどにおいて長期間にわたって微生物を抑制するのに有用である。ある実施形態においては、水性または水含有システムは石油または天然ガス用途において存在しまたは使用されうる。このようなシステムの例には、これに限定されないが、破砕流体、掘削流体、水攻システムおよび油田水が挙げられる。
【0024】
ある実施形態においては、水性または水含有システムは、40℃以上、あるいは55℃以上、あるいは60℃以上、あるいは70℃以上、あるいは80℃以上の温度であり得る。
【0025】
その熱安定性に加えて、この化合物は、不活性化剤、例えば、亜硫酸水素イオン源またはアミンなどがそのシステム中に存在する場合にさらに有効であり得る。
【0026】
当業者は過度の実験を行うことなしに、任意の特定の用途に使用されるべき保護された抗微生物化合物の濃度を容易に決定することができる。実例として、この保護された化合物によって放出される可能性のある(100%放出と仮定した)抗微生物アルデヒドの当量に基づいた適切な濃度は、典型的には、少なくとも約1ppm、あるいは少なくとも約5ppm、あるいは少なくとも約50ppm、あるいは少なくとも約100ppm(重量基準)である。ある実施形態においては、この濃度は、2500ppm以下、あるいは1500ppm以下、あるいは1000ppm以下である。ある実施形態においては、このアルデヒド当量濃度は約100ppmである。
【0027】
保護された抗微生物化合物は他の添加剤、例えば、これに限定されないが、界面活性剤、イオン性/非イオン性ポリマー、並びにスケールおよび腐蝕抑制剤、酸素スカベンジャー、硝酸塩もしくは亜硝酸塩、並びに/または追加の抗微生物化合物などと共にこのシステム中で使用されうる。
【0028】
本明細書の目的のためには、「微生物」の意味には、これに限定されないが、バクテリア、真菌、藻類およびウイルスが挙げられる。用語「抑制」および「抑制する」は、その意味の中に、これに限定されないが、微生物の成長もしくは増殖を阻止すること、微生物を殺すこと、消毒、および/または微生物再成長に対する予防を含むと広く解釈されるべきである。ある実施形態においては、微生物はバクテリアである。ある実施形態においては、微生物は好気性バクテリアである。ある実施形態においては、微生物は嫌気性バクテリアである。ある実施形態においては、微生物は硫酸還元バクテリア(SRB)である。
【0029】
本明細書において使用される場合、「アルキル」は、示された数の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖脂肪族基を包含する。典型的なアルキル基には、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられる。
【0030】
以下の実施例は本発明の実例であるが、その範囲を限定することを意図していない。他に示されない限りは、ここで使用される比率、パーセンテージ、部などは重量基準である。
【実施例】
【0031】
実施例1
2a−メチルオクタヒドロ−l,4−ジオキサ−2al−アザシクロペンタ[cd]インデン(AMPD付加物)の製造
磁気攪拌装置を備えた4オンスのガラスジャーに、2−アミノ−2−メチル−l,3−プロパンジオール(AMPD)結晶(15.0g、0.143モル)および水(10g)が入れられ、これは結果的にスラリーを生じさせる。この反応は氷浴によってさらに冷却され、そして0〜10℃に維持される。グルタルアルデヒドの50%水溶液(28.53g、0.143モル)が30分間にわたって添加漏斗によってゆっくりと添加され、その際に色が無色から黄色に変り、最終的に黄緑色の溶液となる。このサンプルは−20℃で貯蔵され、そのまま使用されることができ、またはそれはさらに精製されうる。
【0032】
粗生成物溶液は、それを250mlの丸底フラスコ(RBF)に移し、そしてそれを真空下でロータリーエバポレータ(ロト−バップ)で濃縮することにより精製されることができ、このことが半固体物質(24.95g、103.5%収率)を提供する。この生成物は高温(70℃)酢酸エチル(EtOAc、50ml)に溶解させられ、次いで、これがポリマー物質から離されるように250mlの丸底フラスコ(RBF)にデカントされた。このポリマー残留物は再び、高温EtOAc(50ml)で処理され、そして250mlのフラスコに入れられるが、溶解する追加の物質はほとんどないと思われる。この不溶性の緑色の残留物(4.33g)は廃棄される。
【0033】
このEtOAc溶媒は真空(30℃/0.5トル)で除去されて、黄緑色のオイル(21.46g、89.1%収率)を提供する。このオイルは再びEtOAc(50ml)に溶解させられ、残留物(0.6g)からデカントで分離され、そして再び溶媒が除去されて、生成物(20.1g、83.4%収率、98.2%純度マイナスEtOAcピーク)を生じさせる。この物質は、最小限の量のMeOHを伴う65mlのRBFに移され、そして真空下で濃縮される(30℃/0.5トル)。このフラスコに、攪拌棒、温度計付きショートパス蒸留装置、および受け取り用フラスコ(50ml)が取り付けられる。熱水浴が高温プレートによって暖められつつ、真空が適用されかつこの混合物が攪拌される。この蒸留シークエンスが表1に示される。
【0034】
【表2】
【0035】
EtOAcに可溶性であることが見いだされている、ポット内に残るかなりの量が存在する場合でさえ、蒸留はゆっくりになりそして止まる。無色透明のオーバーヘッド物質(7.12g、29.5%収率、99.7%純度)が溶融されそして1オンスのガラスボトル内に移され、これは結果的に、固体とその上の液体層(おそらくは、少量の分解物からの)とを生じさせる。このボトルは、真空ポンプ(0.2トル)に取り付けられた凍結乾燥ボトル内に挿入され、液体層を除去する。これは、結果的に、無色の結晶固体としての所望の生成物(6.66g、27.6%収率、99.8%純度)の単離をもたらし、その融点が28.5−29.5℃であると決定される。この生成物はスペクトル分析によって確認された。GC/MS(CIモード)分析は[MH]
+m/z 170を示す。
1H NMR(ppm):1.293(s)、1.764−2.121(m)、3.732(q)、4.433(s)。
13C NMR(ppm):2.135、22.528、38.110、81.458、89.461、100.246。
【0036】
実施例2
(オクタヒドロ−l,4−ジオキサ−2a
1−アザシクロペンタ[cd]インデン−2a−イル)メタノール(TA付加物)の製造
実施例1の手順に従い、必要な場合には重要でない変更を行いつつ、表題の化合物が、グルタルアルデヒドおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TA)から製造される。生成物はスペクトル分析によって確認される。GC/MS(CIモード)分析は[MH]
+m/z 186を示す。1HNMR(CD
3OD,ppm):1.755−2.100(m)、3.641(s)、3.842(q)、4.416(s)。13C NMR(CD
3OD,ppm):22.447、38.110、75.861、85.591、86.221、100.833。
【0037】
実施例3
グルタルアルデヒド放出の分析
AMPD−付加物およびTA−付加物のサンプルがグルタルアルデヒド含有量について分析される。サンプルは、滅菌脱イオン水中で、2000ppmグルタルアルデヒドのモル当量で調製される。標準の500ppmグルタルアルデヒドも調製される。当初測定はサンプル調製の直後に行われる。次いで、サンプルは55℃で、2時間または24時間にわたって熱老化させられ、そして再び分析される。グルタルアルデヒド濃度は直接にGCによって、およびプレカラム誘導体化の後にHPLCによって測定される。GCによってグルタルアルデヒドは検出されない。HPLCは低レベルのグルタルアルデヒドを示す。これら結果は、反応生成物が高温に対して安定であるが、誘導体化およびHPLC分析に必要な酸性条件の存在下でわずかに分解することに一致する。
【0038】
実施例4
殺生物有効性のアッセイ
室温での好気性生物のプールに対する、および40℃での硫酸還元バクテリア(SRB)に対する殺生物活性について、実施例1〜2からの精製された付加物、付加物反応混合物(粗付加物)、および保護成分のみ(AMPDおよびTA)が試験される。試験は以下のように行われる:
a.好気性バクテリア.
リン酸塩緩衝生理食塩水中で約5×10
6CFU/mLの6種類のバクテリアの混合プールが96−ウェルプレート(1mL/ウェル)に導入される。各ウェルは独立した化学物質処理(すなわち、様々な濃度での付加物、保護成分、グルタルアルデヒドなど)を受ける。次いで、各セルにおける残存細胞密度が、所定の時点で、指示薬としてレサズリン染料を含む媒体中で消滅までの希釈によって測定される。
これら付加物または保護基のいずれもグルタルアルデヒド300ppm(重量)までに相当する濃度で殺生物性ではないことが見いだされる。
【0039】
b.好熱バクテリア.
T.サーモフィラス(thermophilus)の48−72時間の経過した培養物が2000gでの遠心分離によってペレットにされ、そしてそのペレットは、培養物容積の10倍の緩衝液(PBSまたは炭酸塩−緩衝合成淡水)に再懸濁される。この懸濁物はスクリューキャップガラスチューブに10mLアリコートで分配された。次いで、それぞれのチューブはグルタルアルデヒドまたは付加物で処理され、そして70℃でインキュベートされた。サンプルを逐次希釈するおよび固体培地上でのプレート希釈による消滅までの希釈によって、示された時点での各チューブにおける細胞密度が測定される。
【0040】
結果:(1)付加物またはグルタルアルデヒドへの24時間曝露の後に、100ppmグルタルアルデヒド相当で処理されたサンプルは未処理のサンプルよりも5−logを超えるCFU/mL低減を示す。より多くのバクテリアを添加することによる、その後の殺生物剤の再投与も、24時間曝露後の、5−logを超えるCFU/mL低減を示す。5日後には、グルタルアルデヒドはバクテリアレベルを抑制することができない。これに対して、AMPD−付加物およびTA−付加物は、18日の期間にわたって、5−logを超えるCFU/mL低減を維持し、5週間にわたって、2から3−logの低減を維持する。
【0041】
(2)より低い濃度の抗微生物化合物(50ppmグルタルアルデヒド相当)、およびバクテリア接種と計数との間のより短い曝露時間(4時間)で上記実験が繰り返される。この場合には、グルタルアルデヒド、並びにAMPD付加物およびTA付加物は週ごとの接種で21日間にわたって、バクテリアの4−logキルを維持した。
【0042】
その好ましい実施形態に従って本発明が上で説明されたが、本発明は本開示の意図および範囲内で変更されうる。よって、本出願は、本明細書に開示された一般的な本質を用いた本発明の任意のバリエーション、使用、または適応を包含することを意図する。さらに、本出願は、本発明が関連する技術分野における既知のまたは習慣的なやり方の範囲内でおこり、かつ請求項の限定の範囲内にある、本開示からのそのような発展を包含することを意図する。