(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5886401
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】組み合わせ空中線装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/08 20060101AFI20160303BHJP
H01Q 19/28 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
H01Q21/08
H01Q19/28
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-230372(P2014-230372)
(22)【出願日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳之
【審査官】
岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−53943(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0285852(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0160361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/08
H01Q 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空中線素子が前後に配列された3本以上の奇数本の空中線と、
前記空中線の配列の中で奇数番目の前記空中線の高周波信号を同相とする第1の回路と、
前記空中線の配列の中で奇数番目の前記空中線の高周波信号と、偶数番目の前記空中線の高周波信号とに所定の位相差をもたせる第2の回路と、
を備え、
前記各空中線の空中線素子の配列方向が互いに同じになるように、かつ、前記空中線の配列の中で奇数番目の前記空中線と、偶数番目の前記空中線とは、所定長だけ前後にずらして配置されている、
ことを特徴とする組み合わせ空中線装置。
【請求項2】
前記第1の回路は、ラットレース回路である、
ことを特徴とする請求項1に記載の組み合わせ空中線装置。
【請求項3】
前記第2の回路は、ブランチラインハイブリッド回路である、
ことを特徴とする請求項1に記載の組み合わせ空中線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠方の物体の探索に用いられる組み合わせ空中線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底地震などによって引き起こされる津波の早期発見や警戒を目的として、海洋レーダーが設置されるようになっている。海洋レーダーとは、陸上から海上に向けて電波を発射し、波浪によって反射して戻ってきた電波から、海流や波浪を測定するものである。海洋レーダーのように、遠方の物体を電波で探索するレーダーの方式としては、パルスレーダーとドップラーレーダーが知られている。
【0003】
パルスレーダーでは、電波を所定方向に極短時間に集中して繰り返し発射し、その繰返し周期の時間に、遠方の物体から反射して戻ってくる反射波を高指向性の空中線によって受信する。そして、空中線の向いている方向から物体の方位を判定し、電波を発射した時間と、反射波を受信した時間との差である遅れ時間から距離を算出する。ここで、発射されたパルス信号が近傍の物体で反射されるなどして検出される場合は、誤検出の要因となるおそれがある。このため、目的外のパルス信号は極力排除しなければレーダーの性能を悪化させることになる。
【0004】
一般的なレーダーは、数GHzから数10GHzのマイクロ波のパルス信号を使用して探索するので、高利得かつ高指向性のパラボラ型などの空中線が使用される。しかしながら、マイクロ波は光に似た伝搬特性を示すので、探索範囲は可視範囲とほぼ同じとなるため、100kmを超えるような遠方(電波の見通し外領域)の物体の探索には不向きである。
【0005】
電波の見通し外領域の物体の探索が可能なレーダーとしては、HF(短波、High Frequency)からVHF(超短波、Very High Frequency)帯の電波を使用する超地平線レーダー(OTHレーダー:Over The Horizonレーダー)がある。しかしながら、HFからVHF帯の電波は、その波長が1m〜100mと長いため、空中線も比較的大型のものが必要となる。
【0006】
そこで、比較的大型の空中線の前方対後方比を飛躍的に高めて、性能を向上させたものとして、組み合わせ空中線装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−051474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、レーダーの送信信号であるパルス信号は、平均電力は小さいが、デューティ比が大きく、尖頭電力も数キロワットから数10キロワットと大きいものである。組み合わせ空中線装置では、このような強い信号を放射する空中線の近傍に、その信号の周波数に同調した他の空中線が存在するので、他の空中線はその周波数の信号を効率よく受信してしまう。その結果、給電線を通じて相互に接続されているもう一方の空中線から遅延した信号が再放射されることとなり、レーダーの性能を悪化させる原因となる。
【0009】
相互に接続されている空中線が、電気的・機械的に対称に配置されていれば、このような不要な信号の再放射による影響は僅少である。しかしながら、特許文献1においては、相互に接続されている空中線が、電気的・機械的に非対称に配置されているので、不要な信号の再放射による影響が問題となる。
【0010】
そこで、この発明の目的は、前記の課題を解決し、さらに改良を行って、高い性能を実現した組み合わせ空中線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の空中線素子が前後に配列された3本以上の奇数本の空中線と、前記空中線の配列の中で奇数番目の前記空中線の高周波信号を同相とする第1の回路と、前記空中線の配列の中で奇数番目の前記空中線の高周波信号と、偶数番目の前記空中線の高周波信号とに所定の位相差をもたせる第2の回路と、を備え、前記各空中線の空中線素子の配列方向が互いに同じになるように、かつ、前記空中線の配列の中で奇数番目の前記空中線と、偶数番目の前記空中線とは、所定長だけ前後にずらして配置されている、ことを特徴とする組み合わせ空中線装置である。
【0012】
請求項1の発明は3本以上の奇数本の空中線と、奇数番目の空中線の高周波信号を同相とする第1の回路と、奇数番目の空中線の高周波信号と、偶数番目の空中線の高周波信号とに所定の位相差をもたせる第2の回路とを備えている。そして、各空中線の空中線素子の配列方向が互いに同じになるように、かつ、空中線の配列の中で奇数番目の空中線と、偶数番目の空中線とは、所定長だけ前後にずらして配置されている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の組み合わせ空中線装置において、前記第1の回路は、ラットレース回路である、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の組み合わせ空中線装置において、前記第2の回路は、ブランチラインハイブリッド回路である、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、空中線の配列の中で奇数番目の空中線から前方に出力される高周波信号は、後方に位置する偶数番目の空中線から出力される高周波信号に比べて位相が進む。しかし、空中線の配列の中で奇数番目の空中線の高周波信号を同相とし、空中線の配列の中で奇数番目の空中線の高周波信号と、偶数番目の空中線の高周波信号とに所定の位相差をもたせ、また空中線の機械的な正面方向に対して左右対称の空中線の配置が可能となり、最大指向方向と空中線の機械的な正面方向とが一致することで検出精度の低下を防ぐことができる。
【0016】
これらにより、超地平線レーダーの探索精度を向上することができるので、数100km遠方の対象物であっても、高精度で観測することが可能になる。具体的には、大地震後の津波の襲来状況の観測や大型漂流物の探索、通常時の海洋状況や気象状況の観測に、応用することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、特に、パルス信号を使用する場合には、空中線から発射した高出力のパルス信号が隣接の空中線から入力して、給電線により結合された別の空中線から再放射することによる検出精度の低下を防ぐ目的で、ラットレース回路によって、入力信号を2つに分離して、分離した信号を同相として、分離した信号に対して高い非干渉性を得ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、特に、パルス信号を使用する場合には、空中線から発射した高出力のパルス信号が隣接の空中線から入力して、給電線により結合された別の空中線から再放射することによる検出精度の低下を防ぐ目的で、ブランチラインハイブリッド回路によって、入力信号を2つに分離して、分離した信号の位相差を90°として、分離した信号に対して高い非干渉性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態による組み合わせ空中線装置を示す斜視図である。
【
図3】1本の5素子八木型垂直偏波の指向特性を表す図であり、
図3(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図3(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【
図4】5素子八木型垂直偏波による水平スタックを示す斜視図である。
【
図5】水平スタックを組んだ5素子八木型垂直偏波の指向特性を表す図であり、
図5(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図5(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【
図6】組み合わせ空中線の指向特性を表す図であり、
図6(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図6(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【
図7】空中線の間隔を1/2λとした組み合わせ空中線の指向特性を表す図であり、
図7(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図7(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【
図8】空中線の間隔を1/2λとし、位相シフトした組み合わせ空中線の指向特性を表す図であり、
図8(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図8(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【
図9】空中線の間隔を1λとした組み合わせ空中線の指向特性を表す図であり、
図9(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図9(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【
図10】空中線の間隔を1λとし、位相シフトした組み合わせ空中線の指向特性を表す図であり、
図10(a)は水平面内の指向特性を表す図、
図10(b)は垂直面内の指向特性を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
この実施の形態による組み合わせ空中線装置を
図1、
図2に示す。この組み合わせ空中線装置は、
図1に示すように、3本の空中線10、20、30と、空中線10、20、30に接続されている給電線40、50、60とを備えている。そして、空中線10、20、30は、金属等の支持具(図示略)により、所定間隔L1だけ離れて設置され、さらに、支持具は、地表面に設置されている支柱(図示略)に、固定具(図示略)で固定されている。
【0022】
空中線10は、5素子八木型垂直偏波であり、パイプ状のブーム11を備えている。所定長のブーム11には、空中線素子12A〜12Eが、互いに離れて、かつ、ブーム11の軸方向Aと直交する方向に、それぞれ配列されて固定されている。つまり、ブーム11の軸方向Aが、空中線素子12A〜12Eの配列方向になっている。空中線素子12Dは放射用であり、空中線素子12Dには給電部13を介在して、給電線40が接続されている。給電部13は、空中線素子12Dと給電線40とを電気的に接続する。給電線40は、空中線10を受信機等に接続するための同軸ケーブル等である。
【0023】
このように、ブーム11と空中線素子12A〜12Eと給電部13とで空中線10が構成されている。空中線10は、
図3(a)に示すように、空中線10の軸方向Aつまり前方向を中心に、地表面に対して水平面内で、広範囲の指向特性を持つ。また、空中線10は、軸方向Aとは逆の後方向にも利得を持つ。さらに、空中線10は、
図3(b)に示すように、地表面に対して垂直面内では、主に軸方向Aに指向特性を持つ。なお、
図3では、符号Gaは利得を表し、符号F/Bは前方対後方比(Front to Back ratio)を表す。また、符号Zはインピーダンスを表し、符号SWRは定在波比を表す。さらに、
図3は、コンピュータシミュレーションにより指向特性を模擬した図である。
【0024】
図3に示す特性を改善するために、
図4に示すように、2本の空中線10A、10Bを横に並べて設置する方式がある。つまり、
図4では、空中線10A、10Bにより水平スタックが組まれている。なお、
図4では、空中線10と同等の空中線を、空中線10Aと空中線10Bとしている。空中線10Aと空中線10Bでは、互いの軸方向Aが平行になるように、空中線10Aと空中線10Bとが配置されている。かつ、空中線10Aと空中線10Bとは、軸方向Aに直交する横方向に、つまり、空中線10Aのブーム11と空中線10Bのブーム11とが横に並ぶように配置されている。
【0025】
このように、空中線10で水平スタックを組むと、
図5(a)と
図5(b)とに示すように、地表面に対して水平面内で、1本の空中線10に比べて、前方向(軸方向A)に指向性が強く高い利得(符号B1の部分)を持つ。また、後方向にも、1本の空中線10に比べて、強い指向性ではあるが低い利得(符号B2の部分)を持つ。そして、空中線を2つ横に並べて使用した効果により、前方利得(符号B1の部分)は理論的最大である3dB近く増加しているが、前方対後方比は逆に1.87dB悪化している。なお、
図5は、
図3と同様に、コンピュータシミュレーションにより指向特性を模擬した図である。
【0026】
図4の実施の形態による組み合わせ空中線装置では、前方向(軸方向A)の利得の向上を図り、また指向方向以外の本来の通信のためには望ましくない放射パターンの減少の実現ができるが、前方対後方比については空中線単体の場合に比べて悪化する傾向となり、総合的に望ましくない放射パターンの減少の実現に十分寄与しない。
【0027】
図4の実施の形態における前方対後方比を改善するため、特許文献1では、横方向に配列した空中線を前方向(軸方向A)に所定長だけ前後にずらして配置し、また隣接の空中線相互に供給する高周波信号に所定の位相差を持たせることで、前方向(軸方向A)の利得は
図4の実施の形態とほとんど変わらず、望ましくない方向に対する放射パターンの減少を実現している。
【0028】
しかし、特許文献1の実施の形態では
図6の放射パターンでわかるとおり2つの空中線を前方向(軸方向A)に機械的にずらして配置してある関係で、前方向の最大利得が得られる方向と軸方向Aの一致が得られない。
【0029】
これは特に方向探知を目的とするレーダーに適用する場合には方向精度が悪化することとなり具合が悪い。
【0030】
特許文献1の実施の形態による組み合わせ空中線装置では、前方対後方比の向上を図り、また、指向方向以外の本来の通信のためには望ましくない放射パターンの減少を実現するものであり、
図4に示す水平スタックの空中線に対して位相シフトを行っている。
【0031】
これにより、
図6(a)に示すように、最大指向方向が約10°ずれており、
図6(b)に示すように、軸方向Aとは逆の後方向に放射が大きく減少した部分があることがわかる。すなわち、指向方向以外の放射特性が左右非対称となり、最大指向方向と空中線の機械的な正面方向とが一致しなくなる場合があることがわかる。このため、設備を設置する際には、目に見えない空中線の指向方向を調整する必要があり、設置に要する手間と時間とが増加し、設置の容易性、施工性が低下する。特に、電波の見通し外領域のような遠方の物体を、電離層反射を利用して探索する超地平線レーダーにおいては、空中線の機械的な正面方向に最大指向方向が一致しないことは、探索の方向精度に直接影響を与えることになってしまう。
【0032】
本発明による組み合わせ空中線装置は、先の
図1に示すように、空中線10と、空中線10と同等の空中線20と、空中線10と同等の空中線30と、を備えている。そして、空中線10のブーム11と空中線素子12A〜12Eと給電部13とが、空中線20のブーム21と空中線素子22A〜22Eと給電部23と、空中線30のブーム31と空中線素子32A〜32Eと給電部33とにそれぞれ対応している。
【0033】
図1、
図2に示す、この実施の形態による組み合わせ空中線装置では、
図1に示すように、空中線10と空中線20と空中線30の互いの軸方向Aが平行になるように、空中線10と空中線20と空中線30が配置されている。かつ、空中線10と空中線30は、空中線20に対して軸方向Aに、所定距離L2だけ前方または後方にずらして配置する。つまり、この実施の形態による組み合わせ空中線装置では、5素子八木型垂直偏波を横方向に3つ配列した形式の空中線の両端の空中線を、軸方向A(指向方向)に機械的に使用周波数の4分の1波長(=L2)オフセットして配置する。すなわち、隣接する空中線を、軸方向A(指向方向)に機械的に使用周波数の4分の1波長(=L2)オフセットして配置する。
【0034】
組み合わせ空中線装置では、2本の空中線である空中線10、30にそれぞれ給電する給電線40、60の長さを、電気的に同じ長さとする。そして、
図2に示すように、空中線10と空中線30とに供給する信号を同相にする回路(この実施の形態では、ラットレース回路)を、空中線10と空中線30に設置する。ここで、ラットレース回路とは、入力信号を2つに分離して、分離した信号を同相として、分離した信号に対して高い非干渉性を得るものである。また、空中線20と、空中線10、30に供給する信号に90°の位相差をもたせる回路(この実施の形態では、ブランチラインハイブリッド回路)を、空中線20とラットレース回路とに設置する。ここで、ブランチラインハイブリッド回路とは、入力信号を2つに分離して、分離した信号の位相差を90°として、分離した信号に対して高い非干渉性を得るものである。このように、ラットレース回路やブランチラインハイブリッド回路を使用することによって、空中線から発射した高出力のパルス信号が、隣接する空中線から入力して、別の空中線から再放射されることによる検出信号の観測精度の低下を防止する。
【0035】
レーダー用の高指向特性の空中線とし、かつ、デューティ比の高いパルス信号を使用する場合には、
図2のように、ブランチラインハイブリッド回路やラットレース回路によって、空中線から発射した高出力のパルス信号が、隣接する空中線から入力して、別の空中線から再放射されることによる検出信号の低下を防ぐことが有効である。この場合における、コンピュータシミュレーションによる合成指向特性(
図7〜
図10)は次のとおりである。
【0036】
このように、組み合わせ空中線装置は、5素子八木型垂直偏波を3つ横に並べて、電気的・機械的に位相を各々4分の1波長ずらし、こうした状態で組み合わせ空中線装置に給電して使用する。この場合は、同一の空中線10、20、30を横方向に並べるため、指向方向に左右対称の放射パターンが得られる構成となっている。
【0037】
A.空中線10、20、30の間隔(L1、L3)が使用する電波の1/2波長の場合
【0038】
図7は、単純な3本の空中線の並列構成として、中央の空中線20の供給電力を、両端の空中線10、30の2倍とした場合であり、
図8は、中央の空中線20と、両端の空中線10、30に供給する信号に90°の位相差をもたせ、かつ、中央の空中線20の供給電力を、両端の空中線10、30の2倍とした場合である。
【0039】
図7と
図8に示すそれぞれの場合の合成指向特性から、単なる3列配列の空中線列に比べて、供給する信号に90°の位相差をもたせた方が、
図8(a)と
図8(b)とに示すように、前方対後方比が約2dB向上する。また、空中線後方の指向特性が減少することで、組合せ空中線の目的とする指向方向以外の放射特性が改善される。なお、目的方向の指向特性は完全な左右対称である。
【0040】
B.空中線10、20、30の間隔(L1、L3)が使用する電波の1波長の場合
【0041】
図9は、単純な3本の空中線の並列構成として、中央の空中線20の供給電力を、両端の空中線10、30の2倍とした場合であり、
図10は、中央の空中線20と、両端の空中線10、30に供給する信号に90°の位相差をもたせ、かつ、中央の空中線20の供給電力を、両端の空中線10、30の2倍とした場合である。
【0042】
図9と
図10に示すそれぞれの場合の合成指向特性から、単なる3列配列の空中線列に比べて、供給する信号に90°の位相差をもたせた方が、
図10(a)と
図10(b)とに示すように、前方対後方比が約1.7dB向上する。また、空中線後方の指向特性が大幅に減少することで、組合せ空中線の目的とする指向方向以外の放射特性が大幅に改善される。このため、空中線の指向方向以外から到来する雑音信号や不要信号の受信機への入力も大幅に低減させることができる。その結果、受信信号の信号体雑音比が向上するので、良好な前方対後方比により精度の高いレーダー観測に寄与することができる。
【0043】
こうしたコンピュータシミュレーションにより指向特性を模擬した結果より、同様な方法で、奇数本数の空中線を、前後の位置関係を所定長ずらしながら、横方向に配列し、適切な位相関係にある信号を供給することで、目的としない方向への放射を減少し、左右対称の放射パターンを確保して、良好な性能の空中線を実現することができる。
【0044】
この実施の形態においては、アンテナが3本の場合について説明したが、アンテナの本数は奇数であれば3本に限定されないことはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
10 空中線
20 空中線
30 空中線
40 給電線
50 給電線
60 給電線
【要約】
【課題】 高い性能を実現した組み合わせ空中線装置を提供する。
【解決手段】 複数の空中線素子12A〜12E、22A〜22E、32A〜32Eが前後に配列された3本の空中線10、20、30と、空中線10、30の高周波信号を同相とするラットレース回路と、空中線10、30の高周波信号と、空中線20の高周波信号とに所定の位相差をもたせるブランチラインハイブリッド回路と、を備え、各空中線10、20、30の配列方向が互いに同じになるように、かつ、空中線10、30と、空中線20とは、所定長だけ前後にずらして配置されている。
【選択図】
図1