(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886410
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】炭酸ニッケルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/06 20060101AFI20160303BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
C01G53/06
C22B23/00 102
【請求項の数】5
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2014-500208(P2014-500208)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公表番号】特表2014-511813(P2014-511813A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】BR2012000091
(87)【国際公開番号】WO2012129628
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】61/467,683
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】ティアゴ、バレンティム、ベルニ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、クラレティ、ペレイラ
(72)【発明者】
【氏名】フェリペ、イラリオ、ギマランイス
【審査官】
田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−172829(JP,A)
【文献】
特開昭61−106422(JP,A)
【文献】
米国特許第3350167(US,A)
【文献】
特開2009−179544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00−53/12
C22B 23/00−23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ニッケルを製造する方法であって、
a)マグネシウム塩溶液を用意する工程と、
b)前記溶液をCO2ガスの流れに接触させ、5時間以下の間、pHを4〜10に保持し、かつ、温度を0〜100℃に保持する工程と、
c)工程b)の混合物を硫酸ニッケル溶液と接触させて、混合物を生成する工程と、
d)前記混合物の液体部分と固体部分の分離を行う工程と、
e)前記液体部分を工程a)に供給する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記マグネシウム塩溶液が硫酸マグネシウム溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム塩溶液とCO2ガスの流れとの接触が、パケットカラム内で生じる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
中和剤を工程bで使用してpHを4〜10に保持し得る、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記中和剤が酸化マグネシウムである、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重炭酸マグネシウムから炭酸ニッケルを製造する方法であって、炭酸ニッケルを製造するのに用いた試薬のリサイクルを考慮した工程を含む方法に関するものである。また、この方法によれば、取り扱いおよび輸送が容易な最終製品が得られる。この方法は特に鉱業に適している。
【背景技術】
【0002】
炭酸ニッケルは薄緑色の粉末であり、無臭の固体で、希酸およびアンモニア水に溶解するが、水には溶解せず、乾燥時に微粉末から凝集した硬い塊にサイズが変わる。この化合物は、他のニッケル塩、ニッケル触媒、顔料およびセラミックスの添加剤を製造するのに主に使用される
【0003】
種々の原料から炭酸ニッケルを調整する方法がいくつか知られている。しかしながら、そのような経路においては、試薬のリサイクルや沈殿工程が考慮されていない。
【発明の開示】
【0004】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明は、本発明の範囲、適用性または構成を何ら制限することを目的としたものではない。より正確には、以下の説明は例示的な様式を実施するために必要な理解を提供するものである。本明細書に記載の教示を用いた場合、当業者は、本発明の範囲を推定することなく、使用可能な好適な代替手段を認識するであろう。
【0005】
本発明の方法は、
図1にも示されたとおり、
a)マグネシウム塩溶液を用意する工程と、
b)前記溶液をCO
2ガスの流れに接触させ、5時間以下の間、pHを4〜10に保持し、かつ、温度を0〜100℃に保持する工程と、
c)工程b)の混合物を硫酸ニッケル溶液と接触させて、混合物を生成する工程と、
d)前記混合物の液体部分と固体部分の分離を行う工程と、
e)前記液体部分を工程a)に供給する工程と
を含む。
【0006】
マグネシウム塩溶液は、好ましくは硫酸マグネシウム溶液である。
【0007】
気体−液体気体接触を促進するために、使用可能なパケットカラム(packet column)または上記溶液とCO
2ガスの流れとの間に良好な接触をもたらす他の任意の装置の中で、上記溶液のCO
2ガスの流れとの接触を行うのが好ましい。
【0008】
また、マグネシウム塩溶液のpHは4〜10、好ましくは5〜7、に保持されなければならない。この場合、中和剤、好ましくは酸化マグネシウム、を用いてもよい。しかし、この目的に関して当業者に知られている、他の任意の中和剤を使用することもできる。
【0009】
低温の方がMgHCO
3の生成が促進されるため、温度は0〜10℃、好ましくは10〜30℃、に保持されなければならない。
【0010】
さらに、滞留時間は5時間以下、好ましくは1時間以下、でなければならない。
【0011】
好ましくは本明細書に記載の操作パラメーターを守ることで、上記溶液をCO
2ガスの流れと接触することで得られるMgHCO
3溶液を、硫酸ニッケルと接触させて、液体部分と固体部分、すなわちMgSO
4溶液とNiCO
3沈殿物、をそれぞれ含む混合物を生成する。
【0012】
液体部分および固体部分は、固液分離を行うことができる任意の装置または方法によって分離されなければならない。
【0013】
液体部分は、そのMgSO
4溶液の排出であり、より多くのMgHCO
3を生成するために工程a)に送り戻される。
【0014】
炭酸ニッケルを得る本発明の方法は、以下に示すいくつかの利点をもたらす。
・ この方法によって、炭酸ニッケルを製造するのに使用した試薬をリサイクルし、取り扱いおよび輸送が容易な最終製品が得られる。
・ 安価で、取り扱いおよび輸送が容易なニッケル中間生成物(NiCO
3)の製造。
・ Vale内の他の分野との相乗効果を向上させる。
・ ニッケルの下流における処理のコストを低減させる。
・ 低級または小さなニッケル沈殿物を有効利用する。