特許第5886413号(P5886413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許5886413原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を検出する方法
<>
  • 特許5886413-原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を検出する方法 図000002
  • 特許5886413-原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を検出する方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886413
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/003 20060101AFI20160303BHJP
   G21C 17/04 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G21C17/00 G
   G21C17/04
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-503654(P2014-503654)
(86)(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公表番号】特表2014-515102(P2014-515102A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】US2012023912
(87)【国際公開番号】WO2012138411
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】13/343,067
(32)【優先日】2012年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/472,651
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ル、キ、ヴィ
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−079058(JP,A)
【文献】 特開平02−248895(JP,A)
【文献】 特開平05−126980(JP,A)
【文献】 特開平01−214797(JP,A)
【文献】 特開平04−036621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/003
G21C 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を非破壊的に検出する方法であって、該蒸気発生器は複数の細管を有し、渦電流センサーを所与の細管内で継続的に移動させ、該細管に沿う現在位置での、隣接する位置と比較しての渦電流センサーの信号変化を信号異常として検出する方法において、
第1の細管に沿う第1の細管位置で第1の信号異常を特定し(206)、第1の細管に沿う第1の細管位置は蒸気発生器内の第1の発生器位置であり、
第2の細管に沿う第2の細管位置で第2の信号異常を特定し(206)、第2の細管に沿う第2の細管位置は蒸気発生器内の第2の発生器位置であり、
第1の発生器位置と第2の発生器位置が互いに所定の近接範囲にあると判定し(226)、
該判定に応答して部品片が第1及び第2の発生器位置の近傍に存在すると判定する(230)
ことを含む、原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を非破壊的に検出する方法。
【請求項2】
第1及び第2の信号異常を特定するに当たり第1のタイプの検出を行い、部品片が存在すると判定すると、これに応答して、第1のタイプの検出とは異なる第2のタイプの検出による、少なくとも第1及び第2の場所のさらなる解析を指示する(234)
ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
渦電流センサーは多数のデータチャネルを有するものであり、データストリーム及び少なくとも1つの代替データストリームが、該渦電流センサーを該所与の細管内で継続的に移動させることにより同時に生成されるものであって、
該データストリームから第1及び第2の信号異常を特定し、
少なくとも1つの代替データストリームから第1の細管に沿う第1の細管位置で代替的な第1の信号異常を特定し、
少なくとも1つの代替データストリームから第2の細管に沿う第2の細管位置で代替的な第2の信号異常を特定する(226)ことにより、
部品片の存在を確認する
ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の信号異常として、データストリームからの第1の細管に沿う第1の細管位置についての信号と、前記データストリームからの第1の細管に沿う隣接する細管位置についての信号との間の信号変化を検出する(108)
ことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
所定の閾値に達しない信号変化を無視する(108)
ことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
データストリームからの第1の細管に沿う第1の細管位置についての信号と、前記データストリームからの第1の細管に沿う隣接する細管位置についての信号との間の信号変化を無視することをさらに含むが、
かかる信号変化を無視するのは、
第1の細管位置と前記隣接する細管位置の少なくとも一方が蒸気発生器の管板(112)に隣接して位置し、
複数の細管のうち各々が同様の場所で同様の信号異常を有する細管の数が、スラッジの成長の兆候を示すものではない(214)場合である、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第1の細管位置と前記隣接する細管位置の少なくとも一方が蒸気発生器の管板(112)に隣接する場合、
以前のデータストリームからの第1の細管に沿う第1の細管位置についての以前の信号と該以前のデータストリームからの第1の細管に沿う前記隣接する細管位置についての以前の信号との間の履歴信号変化を検索し、
上記信号変化から履歴信号変化を差し引いて正味の信号変化を生成し(120)、
正味の信号変化を第1の信号異常として用いる
ことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
第1の信号異常として、データストリームからの第1の細管に沿う第1の細管位置についての信号と以前のデータストリームからの第1の細管に沿う第1の細管位置についての信号との間の信号変化を検出する
ことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2011年4月7日に出願された「Advance Loose Part Detection Algorithm (ALPDA)」と題する米国仮特許出願第61/472、651に関連し、この出願からの優先権を主張する。その開示内容は引用により本願に含まれるものとする。
【0002】
本発明は、一般的に、原子力発電所に係り、さらに詳細には、原子力発電所の蒸気発生器の細管評価方法に係る。
【背景技術】
【0003】
原子力発電所は一般的に周知である。原子力発電所は、大まかに言うと、1またはそれ以上の燃料セルを含む原子炉、原子炉を冷却する一次ループ及び発電機を作動させる蒸気タービンを駆動する二次ループより成る。原子力発電所は通常さらに、一次ループと二次ループの間の熱交換器を含む。熱交換器は、一次冷却材を運ぶ細管と、該細管、したがって一次冷却材と熱交換関係で二次冷却材を運ぶプレナムとより成る蒸気発生器の形をとることが多い。
【0004】
蒸気発生器の細管は一般的に、腐食や、蒸気発生器の構成要素または蒸気発生器の細管の間で立ち往生している可能性がある部品片の機械的振動及び他の原因により摩耗し易いことも知られている。したがって、摩耗の有無について蒸気発生器の細管を定期的に検査して、例えば、二次ループの核汚染につながる細管の破損を回避する必要がある。かかる検査を実施するため多数の方法が用いられているが、それらには制約があった。
【0005】
蒸気発生器の細管検査法の1つは、渦電流センサーを1またはそれ以上の細管に挿入し、一般的に電圧または位相角の形の信号を渦電流センサーから受信するものである。その信号データを調べる解析員には、一般的に、その信号データから蒸気発生器細管の現在の状態を正確に確かめる高い熟練度が必要とされる。典型的な蒸気発生器には例えば3000本乃至12000本の細管があり、各管の長さは数百インチである。したがって、渦電流データの調査には解析員による多くの時間を必要とする。ある特定の試験方式は蒸気発生器細管の全部でなくて一部の試験を必要とするが、かかるデータの解析には特定の検査方式、作業時間及び他のファクタにもよるが、有意な時間とコストが必要である。
【0006】
蒸気発生器内の部品片は細管を損傷させるリスクが大きいが、一般にはその大きさや形状はわからず、部品片に起因する渦電流信号の変化も同様に知られていないため、部品片を特定することが困難であった。さらに、かかる部品片は、細管が管板の外に出る領域である管板移行部で細管の間にしばしば滞留する。管板は、典型的には例えば厚さ23インチのステンレス鋼のスラブであるので、管板移行部に滞留している部品片の存在を普通はマスクする大きな渦電流を発生させる。したがって、蒸気発生器の細管の間の部品片の存在を検出するための改良されたシステムを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を検出する改良された方法に関する。蒸気発生器内の多数の細管で複数の信号異常を特定する。蒸気発生器の幾何学的形状は既知であるので、任意所与の細管に沿う各信号異常の場所を、蒸気発生器の内部の場所に変換する。複数の信号異常が蒸気発生器内の互いに所定の近接範囲内の場所にある場合、かかる信号異常の空間的な集合を、蒸気発生器内に位置する部品片に符合するものと判定する。部品片の存在を確認するために付加的な手法を用いることができる。また、履歴管板移行部信号データを検索し現在の信号から差し引くことにより、そうしなければ管板移行部にある部品片からの比較的弱い渦電流センサー信号をマスクするであろう管板の比較的強い渦電流センサー信号をシステムが無視できるようにする。
【0008】
したがって、本発明の一局面は、原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を検出する改良された方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の局面は、非破壊的に部品片を検出する方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の局面は、蒸気発生器内の互いに所定の空間的な近接範囲内で発生する複数の信号異常を用いることにより部品片が信号異常の近傍に存在すると判定する改良された方法を提供することである。
【0011】
本発明のこれらおよび他の局面は、一般的に、蒸気発生器が複数の細管を有する原子力発電所の蒸気発生器内の部品片の存在を非破壊的に検出する改良された方法に係り、渦電流センサーを所与の細管内で継続的に移動させ、該細管に沿う現在位置での、隣接する位置と比較しての渦電流センサーの信号変化を信号異常として検出する方法において、その方法は、一般的に、第1の細管に沿う第1の細管位置にある第1の信号異常を特定し、第1の細管に沿う第1の細管位置は蒸気発生器内の第1の発生器場所であり、第2の細管に沿う第2の細管位置にある第2の信号異常を特定し、第2の細管に沿う第2の細管位置は蒸気発生器内の第2の発生器場所であり、第1の発生器場所と第2の発生器場所が互いに所定の近接範囲にあると判定し、その判定に応答して部品片は第1及び第2の発生器場所の近傍に存在すると判定することを含むと述べることができる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は添付図面と共に以下の説明を読むとさらに理解が深まるであろう。
【0013】
図1】本発明のある特定の局面を示すフローチャートである。
【0014】
図2】本発明のある特定の他の局面を示すフローチャートである。
【0015】
本明細書全体を通して、同様の番号は同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に使用する方法のある特定の局面は、蒸気発生器の細管の内部に挿入され長手方向に沿って移動させる渦電流センサーによるデータの収集を含む。センサーの長手方向の移動は手動により行なえるが、ロボット制御前進機構により渦電流センサーを制御された速度で前進させると有利である。渦電流センサーは、任意所与の時点で細管に沿う様々な長手方向位置で、その多数のチャネルから同時かつ別々に生成されるデータストリームを与えることができる。渦電流センサーからの他のデータストリームは一般的に、振幅を特徴付ける電圧成分と位相角を特徴付ける別の成分とより成る。かかるデータストリームの保存及び解析に使用できる方法は多数あるが、その1つは細管の長手方向の所与の点における電圧及び位相データの保存を含む。典型的には、1インチ毎に30のデータポイントでデータを収集し保存するが、本発明から逸脱することなく他のデータ分散度及び密度を使用できる。
【0017】
一般的に、典型的な蒸気発生器は、各々が、それ自身の厚さが典型的には20インチまたはそれ以上の金属スラブである管板を貫通するホットレッグ及びコールドレッグを有し、恐らく4000乃至12000本の管体を包囲するプレナムを含む。各細管の長さは数百インチであり、1つのU字形屈曲部かまたは1対のエルボー形屈曲部を備えるが、本発明から逸脱することなく他の形状のものも使用可能である。このような細管にはそれぞれさらに20乃至30の種々の形状の物理的支持体があるのが一般的である。最初の製造時、管板に穿孔した1対の穴に各細管の2つの端部を挿入し、該端部を液圧で膨径して穴の円筒壁に係合させることにより、各細管のホットレッグ及びコールドレッグを管板に組み込む。
【0018】
蒸気発生器の各細管の形状は一般的に蒸気発生器の他のほとんど全ての細管と相違するが、蒸気発生器の全体的構成は細管の全体形状に関して細管を一般化するのを可能にする。すなわち、各細管はその端部に管板との1対の移行部があるが、それらの移行部は渦電流センサーの30ボルト(30.0)のオーダーの電圧で特徴付けることができる。管板の2つの移行部の間には種々の直線部、支持部及び屈曲部がある。細管の直線部の渦電流電圧は典型的には0.05ボルトであり、細管の屈曲部の電圧は典型的には0.1ボルトである。支持部の典型的な電圧は0.2ボルトであるが、所与の蒸気発生器内には種々のタイプの支持部が存在するかも知れず、これらは全て異なる特徴的電圧を発生させる可能性がある。
【0019】
渦電流センサーを各細管内で継続的に移動させると、電圧と位相角信号が多数のデータチャネルのそれぞれで検出されるが、細管に沿う連続位置でデータ信号は頻繁に大きく変化することはない。しかしながら、部品片が任意所与の細管の外側、すなわち蒸気発生器の内部に位置する場合、電圧及び/または位相角信号の値が部品片の近傍で有意に変化し、信号変化を渦電流センサーの様々なデータ・チャネルの全てではなくてもそのほとんどで検出することができる。細管に沿う渦電流センサーの1つ以上の以前の、すなわち隣接する位置と比較しての、現在位置での(十分な大きさの)信号変化は、信号異常とみなすことができる。
【0020】
他のタイプの信号異常があり得る。例えば、細管内の所与の位置における信号変化は、以前のテスト時に同じ位置で検出され記録された履歴信号値から所定量異なるかも知れない。別の信号異常は、細管の近傍の部品片によって表される未知の相対的に小さな信号成分をマスクするであろう既知のより大きな成分を取り除くことによって、判別可能になる。信号異常の他のタイプは関連技術分野の当業者には明らかであろう。
【0021】
図1には、信号異常を検出するためのある特定の方法を記述するフローチャートが概ね示されている。処理は一例として104において開始すると言うことができ、そこでは細管内の順次隣の位置について細管信号が受信される。細管の先頭で処理が行われる場合、プロセスは初期位置で開始し、後述するいくつかの処理に続いて渦電流センサーが移動され、104におけるように、細管内の初期位置から順次隣の位置より細管信号が受信される。
【0022】
次いで、108におけるように、渦電流センサーの現在位置からの信号の電圧または位相角、あるいは例えばその両方が、1つ以上の以前の、すなわち隣接する位置における信号と所定の閾値だけ異なるか否かが判定される。本明細書に記載された代表的な実施形態では、そのような信号変化の所定の閾値は、隣接する位置の間における少なくとも50パーセントの電圧変化及び/または少なくとも45度の位相角の変化であるが、これらの閾値は例示にすぎず、他の閾値を用いることが可能である。さらに、渦電流センサーの4つの連続位置にかけて所定閾値の電圧変化が起きる場合のように、2つ以上の場所にかけて変化が起きれば、閾値に達したとすることができる。
【0023】
108において所定の閾値に達するかまたはそれを超える大きさの信号変化が検出されない場合、処理は104に戻り、順次隣の細管位置について渦電流センサー信号が受信される。しかしながら、108で信号変化が所定の閾値に達するかまたはそれを超える場合は、112におけるように処理が続行し、そこでは信号変化を公知の構造要素に帰することが可能か否かを判定する。例えば、管板移行部、蒸気発生器の内部の既知の支持ブレース、および他のそのような構造は108で検出されたような信号変化を惹き起すかもしれない。112において信号変化を引き起こす既知の構造要素は存在しないと判定された場合、116におけるように処理は続行し、そこでは108で検出された信号変化を信号異常として扱う。次いで、処理は104におけるように続行し、細管内の順次隣の位置で渦電流センサーからの信号が受信される。
【0024】
一方、112において既知の構造要素が渦電流センサーの現在位置に符合する可能性があると判定された場合、処理は120におけるように続行し、(メモリまたは他の記憶装置から検索された)履歴信号変化データを現在の信号と、例えば一方を他方から差し引くことによって比較して、正味の信号変化のデータ・セットを生成する。あるいは、細管内の様々な場所での信号変化を予測する蒸気発生器のモデルからのデータを用いて、正味の信号変化のデータ・セットを作成することができる。
【0025】
次いで、124におけるように、次の正味のデータ信号が信号変化の所定の閾値を超えるか否かが判定される。閾値は108で採用した閾値と同じであってもなくてもよい。この点で、一例として、かかる構造がスラッジを成長させることが予想され、そのことが渦電流センサー信号に影響を与える可能性があるが、それは部品片と同レベルの懸念事項ではない。124で用いる閾値は、予想されるスラッジからの信号変化を予測して、108における閾値より高くしてもよい。この点では、所与の場所での(同じ場所の履歴信号データと比較しての)徐々の信号変化がスラッジを示す可能性があるのに対し、より急激な変化はその場所で部品片が突然出現したことを示す可能性がある。他方、同様に構造が部品片を捕捉すると予想されることを理由として、閾値を低くしてもよい。いずれにせよ、124では適切な閾値が用いられ、 それは108で用いる閾値と異なっていてよい。
【0026】
124で閾値に達したと判定された場合、正味の信号変化は116で信号異常として扱われ、104におけるように処理は続行する。あるいは、124において所定の閾値に達していない場合、処理を104に戻すことによって、正味の信号変化は事実上無視される。
【0027】
図1に概ね示したロジックは、以下に詳細に記載される如く大量の渦電流信号データをスクリーニングすることにより、さらなる処理対象となる信号異常を特定できる1つの態様の一例であることを意図したものにすぎないことを理解されたい。信号異常を特定するための他の方法は当業者には明らかであろうし、それは原子力発電所及び解析対象の蒸気発生器の特徴及び特性に依存し得るものである。
【0028】
図1に概ね示されているようにして、または他の態様で、一旦様々な信号異常が特定されたなら、種々の細管に沿う信号異常の位置は蒸気発生器の内部の場所に変換されなければならない。すなわち、各細管は、蒸気発生器の内部にそれ自体の個々の三次元形状を有するのが普通であり、信号異常データは典型的には、特定の細管の長手方向に沿って直線距離だけ離れたところにある特定の1つの位置または一組の位置の形をとる。蒸気発生器の幾何学的形状は既知であり、(例えば、メモリにまたは他の媒体のような)記憶媒体に格納されているので、蒸気発生器のモデルを用いて、各特定の細管に沿う各信号異常の位置を蒸気発生器の内部の三次元的場所に変換する。
【0029】
既に示唆され、そして図2に関連して以下でより詳細に記載されるように、有利であることには、複数の信号異常が蒸気発生器の内部で互いに近接した所与の範囲内で発生する場合、そのような信号異常はその近傍での部品片の存在を示すことがわかっている。すなわち、部品片は、普通は形状及びサイズがわからず、予め知られていないのがほぼ常であり、所与の細管内の信号異常だけに基づいて部品片の存在を検出するのは困難であった。しかしながら、有利であることに、蒸気発生器を全体として解析し、また、多数の信号異常の空間的一致を考慮すると、蒸気発生器の内部の互いに所定の近接範囲にある複数の信号異常の発生が信号異常の場所の近傍に位置する部品片と符合することが判明した。
【0030】
任意所与の実施例に用いられる該所定の近接範囲は、例えば蒸気発生器の幾何学的形状、蒸気発生器の様々な構成上の特徴、および他のそのような因子である多くの要因に応じて、大幅に変わり得る。本明細書で採用される典型的な所定の近接範囲は2.0の近接範囲であり、その意味するところは(管板移行部と同じ平面内の距離について)互いに管板の平均列幅または平均行高さの2倍、または他の斜めまたは垂直の方向にせいぜい同じ距離だけ離れている一対の細管間の距離である。しかしながら、所定の近接範囲として事実上如何なる値も用い得ることに留意されたい。許容される近接範囲が大きくなるほど、特定され得る部品片の数が増え、対応して部品片を特定するために実行しなければならないさらなる解析が増すことが理解されよう。したがって、最適な所定の近接範囲を特定することは、典型的には個々の蒸気発生器毎に行われ、特定の蒸気発生器および他の蒸気発生器の経験に基づき熟練した技術者が訓練を受けて推測した結果となり得ることは明らかであろう。
【0031】
一旦所定の近接範囲が確立されると、処理は206におけるように開始することができ、そこでは、データストリームが蒸気発生器内の互いに所定の近接範囲内にある場所に位置する2つ以上の信号異常をもたらしたか否かが判定される。そのような異常が共存しない場合、処理は210におけるように続行し、そこで処理が終了する。
【0032】
一方、206で複数の信号異常が特定された場合、処理は214におけるように続行し、 そこでは比較的多数の信号異常が所定の近接範囲内に存在するか否かが判定される。この点に関し、スラッジは蒸気発生器の内部の様々な場所で成長し得るものであり、渦電流データストリームの電圧または位相角の変化をもたらし得ることを再言する。細管の有意の部分が同様の蒸気発生器場所で同様の信号異常を有するならば、これはスラッジ成長の兆候であるかもしれない。スラッジは例えば管板移行部または蒸気発生器の内部の支持構造体で成長し得る。蒸気発生器内の数千の細管のうちに25の異常がある場合のように、信号異常が十分少数であっても、それはスラッジの兆候であるかもしれない。
【0033】
このようにして、214におけるように比較的多数の信号異常が同様の蒸気発生器場所に存在すると判定された場合、処理は218におけるように続行し、 そこでは、蒸気発生器の幾何学的形状自体がかかる場所でのスラッジの形成を示唆するか否かが判定される。一例として、もし蒸気発生器内の様々な場所が全て管板の上部近傍にあれば、これはスラッジの存在を示唆する可能性がる。218におけるように、スラッジの成長が蒸気発生器の幾何学的形状によって示唆される場合、処理は222におけるように続行し、蒸気発生器場所は解析員による見込みのあるさらなる検討の対象とされる。すなわち、スラッジの成長は部品片の存在と同程度の懸念事項ではないが、それでも解析員が部品片ではなくスラッジの存在を確認するために手作業で知見を検討する価値はある。次に、処理は210におけるように続行する。
【0034】
一方、218におけるように蒸気発生器の幾何学的形状がスラッジの成長を示唆するものではないと判断された場合、処理は226におけるように続行する。また、214において比較的多数の信号異常が蒸気発生器の同様の場所に存在するわけではないと判定された場合も同様に処理は226において続行する。226において、代替データストリームがチェックされ、その信号が図1におけるようにしてまたは他の態様で検出された信号異常を確認するものであるか否かが判定される。すなわち、そして上述のとおり、渦電流センサーは多数のデータチャネルを有する。様々なデータチャネルが様々な周波数で動作しデータを同時に返すことが理解されよう。互いに所定の近接範囲内にあると206で判定された信号異常が第1のデータチャネルから得られたデータに基づくものである場合には、226において代替データチャネルが調べられ、それが同じ場所でのそのような信号異常の存在を確認するか否かが判定される。
【0035】
226において代替データストリームが部品片の存在を確認すると判定された場合、次いで230におけるように、部品片が蒸気発生器の中で様々な信号異常の場所または少なくともその近傍に存在すると結論する。次いで、234におけるように、より高い精度で部品片の性質および蒸気発生器の様々な細管に生じ得た損傷を判定するために、より詳細な探査及び/または他のより詳細な解析により蒸気発生器場所のさらなる解析を行うことが指示される。
【0036】
一方、226において、代替データストリームでは結論が出ないか、代替データストリームが特定された場所の信号異常を確認できない場合、処理は222におけるように続行し、そこでは、様々な蒸気発生器場所が解析員によるさらなる検討の対象となり、信号異常の空間的一致について異なる解釈ができるか否かチェックされる。
【0037】
蒸気発生器内の信号異常の場所を利用して、そのような信号異常が近接する状態に基づき蒸気発生器内部の部品片の存在を指示することができる。履歴データを用いてある特定の強力な信号を無視または調整することにより、かかる強力な信号が部品片から生じる弱い信号をマスクするかもしれない事態を回避することができる。また、蒸気発生器の既知の構造または他の特徴が信号変化の原因であると言えないとき、単に細管の長さに沿って信号変化を検出することによって信号異常を検出することが可能となる。
【0038】
本明細書で述べた解析はデジタルコンピュータまたは周知タイプの他のプロセッサ上で実行できることがわかる。例えば、かかるコンピュータはプロセッサとメモリとを含み、メモリにはプロセッサ上で実行可能な1またはそれ以上のルーチンが記憶されている。メモリはRAM、ROM、EPROM、EEPROM、FLASHなどのような(これらに限定されない)多種多様な機械で読み取り可能な記憶媒体のうち任意のものでよい。アナログ−デジタルコンバータが渦電流センサーからの信号を受け取り、コンピュータの入力装置にデジタル入力を提供し、コンピュータがこの信号を処理し保存する。履歴データ及び現在のデータを任意のかかる記憶媒体に記憶させ、必要に応じて他のコンピュータまたはプロセッサ上で使用するために転送または送信することができる。コンピュータには、プロセッサ装置のプロセッサ上で実行されたときにコンピュータに上述の演算の一部または全部を実行させる命令を含む1つまたは複数のルーチンが格納される。
【0039】
本発明は、その思想または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具現化することができる。記載した実施形態は、全ての点において限定的でなく例示的なものとしてのみ見なされるものとする。したがって、開示の範囲は、以上の記載ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲の内にある全ての変更は、それらの範囲内に包含されるものとする。
図1
図2