特許第5886421号(P5886421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886421スタンピング方法及びそれによって製造される構成要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886421
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】スタンピング方法及びそれによって製造される構成要素
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/88 20060101AFI20160303BHJP
   B21D 28/00 20060101ALI20160303BHJP
   B21D 28/16 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B21D53/88 Z
   B21D28/00 B
   B21D28/16
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-511783(P2014-511783)
(86)(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公表番号】特表2014-515314(P2014-515314A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2012053442
(87)【国際公開番号】WO2012159781
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】102011103295.2
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ダンハイジグ、 アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グロッス、 ベルント
(72)【発明者】
【氏名】クリングスポーン、 ユタ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベル、 マティアス
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−013613(JP,A)
【文献】 特開2009−050859(JP,A)
【文献】 特開平06−163554(JP,A)
【文献】 特開昭58−181450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/88
B21D 28/00
B21D 28/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断式で半仕上げのブランクを加工することによって、車両座席の構成要素を製造する方法であって、
切り取られる前記車両座席の構成要素の対象とする切断線の領域において前記半仕上げのブランクを局部加熱するステップ、及び
前記加熱の間又は直後に前記切断線に沿って前記半仕上げのブランクから前記車両座席の構成要素を切り取るステップ
を備える方法。
【請求項2】
前記車両座席の構成要素は、座席調節器の構成要素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
切断された後の前記車両座席の構成要素、切断端(6)の領域において、又は完全に加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記半仕上げのブランクの局部加熱及び/又は切断された前記車両座席の構成要素部分的若しくは完全な加熱は、熱放射の効果によって達成されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱放射は、指向された放射であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
断された前記車両座席の構成要素部分的又は完全な加熱は、ビームフィルタ、鏡及び/又はビーム回折により生じる前記指向された放射の偏向によって行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記半仕上げのブランク及び/又は断された前記車両座席の構成要素加熱は、切断装置で行われることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
切り取られた前記車両座席の構成要素冷却されることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
り取られた前記車両座席の構成要素冷却は、前記切断装置への対流及び/又は熱伝導により行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
り取られた前記車両座席の構成要素冷却は、前記切断装置の締め付け装置への対流及び/又は熱伝導により行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記車両座席の構成要素は、
切断式の加工によって生成される切断端(6)の領域と、
前記切断端(6)の領域によって画定される基部と
を備え、
前記切断端(6)の領域は、少なくとも部分的に前記基部(5)より高い硬質性及び/又は剛性を有することを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法
【請求項12】
前記切断端(6)の領域は、表面が硬化されることを特徴とする、請求項11に記載の方法
【請求項13】
前記切断端(6)の領域は、熱放射によって硬化されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法
【請求項14】
前記切断端(6)の領域は、指向された放射であることを特徴とする、請求項13に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半仕上げのブランクを切断式で加工することによって、車両座席の構成要素、特に座席調節器の構成要素を製造する方法に関する。更に、本発明は切断式の加工によって生成される端部領域及び端部領域によって画定される基部を有する、車両座席の構成要素、特に自動車座席の座席調節器のための構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
ファインブランキングを通じて高強度の半仕上げのブランクから、各ユーザの個人的な要求に対して車両座席が調節可能な車両座席の構成要素、特に、座席調節器の構成要素を形成して、表面硬化を通じて後に続く別個の方法ステップにおいて炉内で完全にこれらを硬化することが現行技術から知られている。それによって、車両座席の構成要素、特にその機能部分、例えば、ギヤの歯に、機能に必要な材料特性が与えられる。特に、例えば、ギヤの歯の十分な硬質性及び歯根の領域の強化がこのようにして達成され得る。
【0003】
切断式の加工によって設計される車両座席の構成要素の端部領域のみを車両座席の構成要素の確実な機能のために熱処理することが一般には要求されるが、切断式で生成された車両座席の構成要素の完全な熱処理が一般には現行技術から知られている方法で行われる。これによって生ずるのは非常に高い処理コストだけではない。更に、車両座席の構成要素は衝突時に変形によって衝突エネルギを低減するのに適切であるように、端部領域から離れた車両座席の構成要素の部分において高い延性が求められるので、車両座席の構成要素の機械特性が悪影響を受ける。
【0004】
通常は半仕上げのブランクから構成要素のファインブランキングによって生成される既知の車両座席の構成要素の更なる不都合は、明確に切断された表面が不十分であり、所望の表面特性を達成するために表面処理が避けられないという点である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、容易に且つ費用効果的に実行可能であり且つ後処理がほぼ要求されない構成要素の製造を可能にする半仕上げのブランクの切断式の加工によって、車両座席の構成要素、特に、座席調節器の構成要素を製造する方法を提供することである。更に、本発明の目的は、変形による衝突エネルギの低下に適切であり、十分な耐磨耗性を有する車両座席の構成要素を提供することである。
【0006】
本発明は、請求項1に記載の特徴を有する方法及び請求項8に記載の特徴を有する車両座席の構成要素によってこの目的を解決する。本発明の更に有利な実施形態が従属請求項において特定される。
【0007】
半仕上げのブランクの切断式の加工によって、車両座席の構成要素、特に、座席調節器の構成要素を製造する本発明による方法に不可欠なのは、切り取られる車両座席の構成要素の対象とする切断線の領域における半仕上げのブランクの局部加熱の方法ステップ、及び加熱の間又は直後に切断線に沿って半仕上げのブランクから車両座席の構成要素を切り取る方法ステップである。
【0008】
本発明によれば、車両座席の構成要素が切断式の加工の枠組みの中で、例えば、ファインブランキングで作られる半仕上げのブランクが切断の前に加熱され、この加熱は半仕上げのブランクから車両座席の構成要素の切断の間に切断線の領域に限定される。それによって加熱は、切断式の加工を受ける全ての領域に拡張可能になる。しかしながら、車両座席の構成要素の切断線から生ずる切断端の加熱によってもたらされる材料特性が所定の部分に設定され得るように、切断線の部分領域のみを加熱することも可能である。
【0009】
本発明によれば、車両座席の構成要素を製造するための半仕上げのブランクの切断式の加工は、所望の処理温度への半仕上げのブランクの加熱処理の間又は直後に行われる。車両座席の構成要素の後の切断端の材料特性、特に、硬質性及び/又は強度値の改良に加えて、切断式の加工に要求される処理力、例えば、切断圧が加熱によって大幅に低減される。更に、現行技術から周知の冷間切断された半仕上げの製品と比較して、切断の品質が向上して、切断面の明確さが向上し、これは100%にまでなり得る。
【0010】
従って、本発明による半仕上げのブランクの加熱によって、車両座席の構成要素の製品特性が全体的に改善される。即ち、選択された端部領域が要求された剛性を有し、更に、衝突時の変形により衝突エネルギを低減するために端部領域によって画定された他の基部が十分な延性を有する。更に、加熱によって、車両座席の構成要素の製造処理が容易になり、処理を実行するために必要なエネルギが少なくなる。半仕上げのブランクの適切な加熱によって、車両座席の構成要素の後の熱処理及び/又は表面処理を避けることができ、それは製造費用の補足的な減少に貢献する。
【0011】
車両座席の構成要素の材料特性の更なる改善に関して、本発明の更なる実施形態によれば、車両座席の構成要素は、切断の後で、部分的に、特に切断端の領域において、又は完全に加熱される。切り取られた車両座席の構成要素の自由に選択可能な加熱が一般に提供される本発明のこの実施形態によって、個々の領域が必要とされる材料特性に設定され得る。また、制御された加熱によって、要求に対する車両座席の構成要素全体の特性も切断端に沿って調節可能であり、切断端の異なる領域が異なる加熱によって異なる材料特性を有し得る。全体に、切断端の後続の加熱は、特に有利な態様で、車両座席の構成要素の調節を可能にする。
【0012】
切断式の加工の前の半仕上げのブランクの局部加熱、また有利に行われる切り取られた車両座席の構成要素の部分的な又は完全な加熱は、一般に任意の態様で行われ得る。従って、例えば、切断装置から上流に設けられた装置において、例えば、適切な加熱炉によって又は熱生成鍛造によって、車両座席の構成要素を加熱することもできる。切断装置に統合された加熱システム又は下流の加熱システムの使用は、有利に提供される熱処理が切断の後で行われることも考えられる。
【0013】
しかしながら、本発明の特に有利な実施形態によれば、半仕上げのブランクの局部加熱及び/又は切断された車両座席の構成要素の部分的若しくは完全な加熱が熱放射の効果によって、特に指向された放射によって達成される。半仕上げのブランク及び/又は切断された車両座席の構成要素の対応する加熱によって、加熱される領域が正確に定義され、それにより対応する硬質性及び/又は剛性の強化が後で望まれる主にこうした領域のみが加熱処理を受ける。
【0014】
特に、材料特性が変化しないままでいる必要がある領域が加熱を受けないように、指向された放射の使用によって、正確に定義された入熱が特定の態様で達成され得る。高エネルギ放射の使用が、短期間の内に硬化するのに必要な温度に硬化される切断端の領域を点状に又は全面的に加熱することを可能にし、放射による非常に高速な加熱によって、硬化に要求される冷却処理が、短期間の間に熱伝導の不活性により加熱されない車両座席の構成要素自体を介して直後に行われることが可能である。
【0015】
従って、本発明の特に有利な更なる実施形態によれば、ビームフィルタ、鏡及び/又はビーム回折を介して生じる指向された放射の偏向によって、切断された車両座席の構成要素の部分的又は完全な加熱が行われる。ビームフィルタ、鏡及び/又はビーム回折の使用は、切断された車両座席の構成要素の部分的又は完全な加熱のためにも変わらない形態で半仕上げのブランクを加熱するために潜在的に使用される放射源を使用することを可能にする。それによって、放射源の制御及び調節は、ビームフィルタ、鏡及び/又はビーム回折を介して行われる。例えば、電子ビームが磁界によって制御される。本発明のこの更なる実施形態によれば、放射源の広範な制御動作を回避することができる。
【0016】
最初に説明したように、半仕上げのブランク及び/又は切断された車両座席の構成要素の加熱は、任意の場所で行われ得る。従って、例えば、対応する切断装置に配置する前に別個の加熱装置で半仕上げのブランクを加熱することが可能である。また、切り取られた車両座席の構成要素を後で熱処理する場合、これは別個の加熱装置で行われ得る。
【0017】
しかしながら、本発明の有利な更なる実施形態によれば、半仕上げのブランク及び/又は切断された車両座席の構成要素の加熱は切断装置で行われる。本発明のこの更なる切断装置によれば、車両座席の構成要素が半仕上げのブランクから分離される切断装置は、切断装置内で半仕上げのブランク及び/又は切断された車両座席の構成要素の加熱を可能にするように設計される。それによって、このように設計される切断装置を介して直接加熱が行われ得る。又は、切断装置は、適切な加熱装置に対して半仕上げのブランク及び/又は切断された車両座席の構成要素へのアクセスを可能にするように設計され得る。指向された放射の使用が有利に提供される場合、本発明のこの更なる実施形態による切断装置は、例えば、半仕上げのブランク及び/又は切断された車両座席の構成要素の主に全ての領域に直接的に又は有利に提供される偏向装置を介して指向され得るように設計される。
【0018】
一般的には、製造される車両座席の構成要素の所望の材料特性が、適切な過熱を通じて達成され得る。しかしながら、本発明の特に有利な更なる実施形態によれば、切り取られた車両座席の構成要素は、半仕上げのブランクから切断された後で冷却される。一般的には任意の態様で行われ得る冷却の実行は、所望の要求に対して特に確実な態様で硬質性及び/又は強度値の調節を可能にする。それによって、別個の冷却装置又は冷却手段も使用され得る冷却が、切断装置への、特に切断装置の締め付け装置への対流及び/又は熱伝導を通じて行われる。
【0019】
本発明のこの更なる実施形態によれば、切断装置は、制御される態様で切り取られた車両座席の構成要素を冷却するように設計される。このため、それには、例えば、冷却凝集体の接続のためにも設計され得る適切な冷却チャネルが提供される。しかしながら、特に有利な態様で、切断装置、特に切断装置の締め付け装置は、切断装置への対流及び/又は熱伝導を通じて冷却が達成されるように設計される。その結果、別個の冷却装置を回避することができ、製造費用が補助的に低減され得る。
【0020】
本発明による車両座席の構成要素、特に、自動車座席の座席調節器のための構成要素に関して、切断式の端部領域の加工及び端部領域によって画定された基部によって、端部領域が少なくとも部分的に基部より高い硬質性及び/又は剛性を有することが必要である。車両座席の構成要素の端部領域、特に座席調節器のための構成要素は、半仕上げのブランクから車両座席の構成要素を製造する間に切断式で加工される領域に位置する領域によって画定される。これらは、特に、本明細書ではギヤの歯として製造されるような車両座席の構成要素の周囲面であると共に、例えば、それらを適切なシャフト又は軸に配置するように機能する車両座席の構成要素における開口でもある。
【0021】
本発明によれば、こうした領域は、本発明による車両座席の構成要素が接触領域において要求される硬質性及び/又は剛性を有するように少なくとも部分的に基部よりも高い硬質性及び/又は剛性を有し、他方では、基部の領域において、衝突時における変形作用により衝撃エネルギの低減を可能にする延性を有する。更に、このような車両座席の構成要素は、要求された硬質性及び剛性特性が要求された領域に存在するようになった後で、安価で比較的薄い被加工部品が使用され得るという利点を有する。従って、特に有利な態様で、車両座席の構成要素は請求項1〜7の1つ以上に記載の方法によって製造される。
【0022】
従って、本発明の特に有利な実施形態によれば、車両座席の構成要素の端部領域は、基部が車両座席の構成要素の高い占有率を有するように表面が硬化されて、全体として、端部領域の表面硬質性及び/又は剛性が十分な場合には車両座席の構成要素によって、変形を通じて高度のエネルギ吸収性が提供される。従って、特に有利な態様では、端部領域は、熱放射、特に、指向された放射によって硬化される。このようにして硬化された端部領域は特に大きな基部の形成を可能にする。
【0023】
以下に図面を参照して本発明の例示的な実施形態がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】座席調節器の構成要素の斜視図である。
図2】事故により荷重が発生した場合の座席調節器のための構成要素のギヤの歯及びピニオンにおける応力分布である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
座席調節器(図示せず)の図1における構成要素1は、座席レール(図示せず)上にある車両座席(図示せず)の高さ調節可能マウンティング用の四重ジョイント(quadruple joint)のヒンジブラケットである。構成要素1は、ヒンジブラケットの回転軸の領域において切除される2つの凹所2,3を有する。更に、円弧に切除された凹所4は、コマンド及び制御機器のフィードスルーの役割を果たす。
【0026】
構成要素1が事故で発生した荷重のピークの衝撃に対して有益なエネルギ吸収特性を有するように、構成要素1の基部5は特に高い延性を有する。同様に切除された外周の一部において、構成要素1は図2に示された高さ調節器のピニオン7と係合するギヤの歯6が設けられる。構成要素1の基部5に対する要求とは逸れるが、ギヤの歯6が十分は硬質性を有すること及び歯根8が基部5に対して高い剛性を有することが望ましい。
【0027】
それによって、こうした性質は、構成要素1が切断式の加工により形成される半仕上げのブランクが、ファインブランキングの前に意図した切断線に沿って特に歯車の歯6の領域で局所的にのみ加熱され、且つ同時に又は好ましくは僅かな時間遅延で切断されることで達成される。従って、基部5はこの熱処理とは主として無縁であり、その元の性質が維持される。
図1
図2