特許第5886436号(P5886436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886436
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】トレイ把持部ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20160303BHJP
   B66C 1/02 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B25J15/06 M
   B66C1/02 A
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-534506(P2014-534506)
(86)(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公表番号】特表2014-528883(P2014-528883A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】NL2012050705
(87)【国際公開番号】WO2013055211
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】11008164.3
(32)【優先日】2011年10月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500513033
【氏名又は名称】モバ グループ ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】カウレ, メンデル
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ワルデルヴェーン, バルト
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−131389(JP,A)
【文献】 特開2000−141268(JP,A)
【文献】 特開昭57−77412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B66C 1/02
B65B 23/02−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイのスタックからトレイを引き出す把持部ヘッドであって、各トレイには、エッジ部分を持つポケットのレリーフが設けられて卵が装荷され、前記把持部ヘッドは、容器フレームを設けられ、
前記容器フレーム内に吸引ヘッドのマトリックスを有し、前記吸引ヘッドは、1つのトレイのピックアップ、移動および載置の際、卵の上に配置され前記卵を吸引で係合し、
前記容器フレームに結合された、少なくとも2つの対向配置された把持部であって、前記卵と同時に前記トレイを、前記トレイのピックアップ、移動および載置の際、対応する側面において係合する把持部を有し、
前記容器フレームは、前記マトリックスに対して垂直に延在し、かつ前記把持部ヘッドを取り上げ位置および引き渡し位置の間に変位する少なくとも1つのアームに結合された少なくとも1つのマスト片を有し、
前記把持部ヘッドは、さらに、第1のキャリアユニットであって少なくとも1つのスペーサーを介して前記容器フレームを少なくとも3つの自由度において移動可能に支持されるように結合された第1のキャリアユニットを備えることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の把持部ヘッドであって、
前記スペーサーはロッドを備え、
前記ロッドは、前記ピックアップ方向に延在し、かつ
前記ロッドは、前記第1のキャリアユニットのプレート本体の嵌合穴を通って自由に移動可能であり、前記プレート本体は前記マスト片に垂直に延在することを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の把持部ヘッドであって、
前記スペーサーは前記容器フレームと固定結合されていることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の把持部ヘッドであって、
前記第1のキャリアユニットの2つの対向する側面の少なくともそれぞれに、少なくとも1つの支持体がスペーサーの方向に延在し、ピックアップの際、前記支持体はそれぞれのトレイのレリーフの対応するエッジ部分の上に支持点があることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の把持部ヘッドであって、
前記把持部ヘッドは第2のキャリアユニットを備え、前記第2のキャリアユニットは少なくとも1つの第2のスペーサーを介して前記第1のキャリアユニットを少なくとも三つの自由度において移動可能に支持するように結合されていることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の把持部ヘッドであって、
前記第2のキャリアユニットは、ロッドを備え、
前記ロッドは、前記ピックアップ方向に延在し、かつ
前記ロッドは、前記第2のキャリアユニットのプレート本体の嵌合穴を通って自由に移動可能であり、前記プレート本体は前記マスト片に垂直に延在することを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の把持部ヘッドであって、
前記スペーサーは前記容器フレームに固定結合されていることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項8】
請求項5、6および7のいずれか一項に記載の把持部ヘッドであって、
少なくとも1つのセンサが設けられて、前記第1のキャリアユニットと前記第2のキャリアユニットとの間の相対位置および/または距離および/または変位を検知することを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の把持部ヘッドであって、
前記マストはそれ自体の長さ調整装置を備えることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の把持部ヘッドであって、
前記長さ調整装置はリンケージを備えることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の把持部ヘッドであって、
少なくとも2つの対向配置された把持部に、ピックアップ時に下にあるトレイを押し込む押し込み要素が結合され、それによりピックアップされるトレイのみが係合されピックアップされることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載の把持部ヘッドであって、
前記押し込み要素は、実質的に下方に滑動可能であるように前記把持部と結合されていることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項13】
請求項11または12に記載の把持部ヘッドであって、
前記押し込み要素は、その上端において、さらに旋回可能に結合され、前記押し込み要素の引き出しおよび旋回の際に下にある次のトレイを係合し、ピックアップすることを特徴とする把持部ヘッド。
【請求項14】
特に請求項1〜13のいずれか一項に記載の把持部ヘッドを用いてトレイのスタックからトレイを引き出す方法であって、
各トレイはエッジ部分を持つポケットのレリーフを設けられて卵が装荷され、
吸引ヘッドのマトリックスが前記スタックの最上位のトレイの卵と係合し、
少なくとも2つの対向配置された把持部が前記最上位のトレイの側面と係合し、
前記吸引ヘッドを備える把持部ヘッドが取り上げ位置と引き渡し位置との間を移動され、
少なくとも1つのスペーサーを介して前記吸引ヘッドの容器フレームを少なくとも3つの自由度で移動可能に支持するように結合された第1のキャリアユニットを備える構成が使用されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記把持部ヘッドは、第2のキャリアユニットであって、少なくとも1つの第2のスペーサーを介して前記第1のキャリアユニットを3つの自由度において移動可能に支持するように結合された第2のキャリアユニットを備える構成が使用され、
好ましくは、前記第1のキャリアユニットと前記第2のキャリアユニットとの間の相対位置、距離および/または変位が検知されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵を装荷したトレイを係合しピックアップする把持部ヘッドに関する。特に、本発明は、トレイのスタックからトレイをピックアップする把持部ヘッドであって、各トレイはエッジ部分を持つポケットのレリーフが設けられていて卵が装荷される把持部ヘッドに関する。この把持部ヘッドは、容器フレームを備え、前記容器フレームは、その中に吸引ヘッドのマトリックスを収容し、前記吸引ヘッドは、1つのトレイのピックアップ、移動および載置の際、卵の上に配置され吸引により前記卵と係合し、前記容器フレームは、少なくとも2つの対向配置された把持部と結合され、前記トレイのピックアップ、移動および載置の際に前記把持部は前記卵と同時に前記トレイと対応する側面において係合し、前記容器フレームは、前記マトリックスに対して垂直に延在し、少なくとも1つのアームと結合され、把持部ヘッドを取り上げ位置と引き渡し位置との間で変位させる少なくとも1つのマスト片を有する。
【背景技術】
【0002】
この種の把持部ヘッドは、例えば米国特許第4355936号公報明細書から公知である。この特許文献には、明らかに、大量の卵用トレイをスタックから引き出す方法が記載されている。この目的のために、取り上げサイクルが実行され、毎回、卵を装荷された次のトレイがピックアップされる。ピックアップのために、卵はそれぞれ吸引カップで吸引されることにより保持され、それと同時にそれぞれのトレイの2つの対向するエッジが爪で係合される。トレイは通常非対称である、すなわち5×6パターンであること並びにトレイが連続的に90°回転されて積層されることは、把持部ヘッドが回転可能であることまたはスタック支持体、例えば回転プラットホームが回転可能であることにより適合される。さらに詳しくは、把持部ヘッドは、5×6パターンの吸引カップを有するフレームを備え、このフレームは装荷されたトレイ上にアームを用いて配置される。一方、このフレームは垂直配置の際に、わずかに弾むロッド−チューブ機構を用いて垂直方向に移動することができる。従って、大きい卵と小さい卵の両方を装荷されたトレイを垂直に整列されたスタックから損傷なしに取り上げ、移動することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述のスタックが垂直に整列される状況はごくまれにしか起きない。その結果、ヘッドとトレイが傾斜して整列されるために卵が損傷を受けたり、あるいはトレイ全体が落下して失われたりすることさえも繰り返し起きることとなる。特に、注意深く採寸されたプラスチック製のトレイではなくパルプ製または段ボール紙製のトレイの場合にそうしたことが起きる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の状況をより良く管理できるようにするために、本発明による把持部ヘッドは、さらに、少なくとも1つのスペーサーを介して、少なくとも3つの自由度で移動可能に支持するように容器フレームに結合されたキャリアユニットを備えることを特徴とする。
【0005】
大きな利点は、これにより、作業中に製品が失われることなくトレイの傾斜したスタックからトレイを取り出すことが可能なことである。この対策を講じるだけで、長辺同士の間の10cmもの高さの差が克服できることが見出された。
【0006】
さらに、大いに有利なことに、多くの異なるタイプのトレイからなり、不均一の製品を装荷されたスタックをこのようにして損失又は損傷なく信頼性をもって作業することができる。
【0007】
この把持部ヘッドのさらなる実施形態は以下の特徴の1つ以上を有する。
すなわち、スペーサーはロッドを備え、
前記ロッドはピックアップ方向に延在し、
前記ロッドはキャリアユニットのプレート本体の寸法合わせされた穴を通って自由に移動可能であり、前記プレート本体はマスト片に垂直に延在し、
前記スペーサーは容器フレームと固定結合され、
前記キャリアユニットの2つの対向側面の少なくともそれぞれの上に、少なくとも1つの支持体がスペーサーの方向に延在し、一方、ピックアップ時、前記支持体は支持点がそれぞれのトレイのレリーフの対応するエッジ部分上にあり、
把持部ヘッドは第2のキャリアユニットを備え、前記第2のキャリアユニットは少なくとも1つの第2のスペーサーを介して前記第1のキャリアユニットを少なくとも3つの自由度で移動可能に支持するように結合され、
第2のキャリアユニットはロッドを備え、
前記ロッドは、ピックアップ方向に延在し、
前記ロッドは、前記第2のキャリアユニットのプレート本体の嵌合穴を通して自在に移動可能であり、前記プレート本体は前記マスト片に垂直に延在し、
前記スペーサーは前記容器フレームと固定結合され、
前記マストは、それ自体の長さ調整装置を備え、
前記長さ調整装置はリンケージを備え、
ピックアップ時に下にあるトレイを押し込むための押し込み要素が少なくとも2つの対向配置された把持部と結合され、それにより、ピックアップされるトレイだけが係合されてピックアップされ、
前記押し込み要素はそのような把持部と結合されて実質的に下方に滑動可能となり、
前記押し込み要素は、その上端で、さらに旋回可能に結合され、この押し込み要素の引き出しおよび旋回の際、次の下にあるトレイと係合し、これをピックアップする。
【0008】
有利なことに、そのような高さ的に(段階的に)調整可能な把持部ヘッドは、非常に多くのタイプの−600タイプにも上る−市販のおよび中古のトレイからなる多くのタイプのスタックを取り扱うことができる。
【0009】
以下に、本発明による把持部ヘッドの一実施例の詳細が添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】トレイをピックアップする前の状態における把持部ヘッドの例示的実施形態の概念的立面図である。
図2】トレイの係合の瞬間における同様の立面図である。
図3】大きな卵を装荷されたトレイの場合を示す図2と同様の立面図である。
図4】傾斜して積まれたトレイの係合を示す同様の立面図である。
図5】最上部のトレイとして大きな卵を装荷されたトレイのピックアップを示す立面図である。
図6】傾斜し、サイズの異なる卵を装荷されたトレイの状況を示す立面図である。
図7】第2の例示的実施形態を示す同様の立面図である。
図8】本発明による把持部ヘッドの第3の例示的実施形態の同様の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
全ての図面において、スタックは支持面上にあると考えられる。いくつかの図面において、同じ部分、部品および名称は同じように符号を付され、マークされる。
【0012】
図1に、本発明による把持部ヘッドの第1の例示的実施形態の概念的立面図が示されている。この把持部ヘッド1を用いて、トレイ100のスタックからトレイが取り出される。ここに示されている場合は、かかるトレイ100がエッジ部を持つポケットのトレイ・レリーフ(tray relief)101を有し、これらポケットの中に、例えば卵のような製品Eの収集および輸送位置がある。従来から、かかるトレイ100は5×6位置のパターンを有するタイプのものである。かかるトレイ100のスタックは一般に高さ方向に連続し、相互に関して90°回転したトレイからなるので、図1の立面図および他の図の立面図は5個または6個の製品Eを示す。さらに、かかるトレイ100はトレイ・エッジ102を有し、たいていの場合、外周全体に延在している。このエッジ102は、従来、手動による、または把持部、この場合、把持部ヘッド1を用いるピックアップの際の支持部となる。
【0013】
図1に示す状況は、かかる把持部ヘッド1に対する初期位置とみなされるべきである。かかる把持部ヘッド1は、従来通り、マストまたはマスト片40を備え、このマストが、例えばアーム、特にロボット・アームに結合される。この初期状態で、このマスト40は実質的に垂直に向けられており、把持部ヘッド1がスタックの上方に懸架されている。把持部ヘッド1は垂直方向下方にスタックに向かって移動を開始し、進行して最上位のトレイ100と係合する。
【0014】
さらに詳しくは、把持部ヘッド1は、容器フレーム10、吸引ヘッド(すなわち、吸引カップ)11、少なくとも2つの対向配置された把持部21、および前記マスト(すなわち、マスト片)40を備える。容器フレーム10には吸引カップ11が設けられている。これらの吸引カップ11の配置は、ピックアップされる製品のパターン、例えば上述の5×6位置に対応するパターンが形成されるように行われる。この概略図に示されていないのは、空気吸引系であり、この空気吸引系は、例えば、マニホルド系を収容していてもよい容器フレーム10への単一の空気管を有するものである。
【0015】
さらに、この点に関して、空気に言及しているが、これも他のガスまたは追加成分を含む空気もしくは過剰の部分ガスを含む空気であってもよい。また、この図1では、これらの吸引カップは付勢されていない状態で示されている。
【0016】
容器フレーム10上に固定されているのは、第1のスペーサー12であり、これにより容器フレーム10が第1のキャリアユニット20内に自在に懸架されている。随意に、第1のスペーサー12は単一であっても複数個設けてもよい。
【0017】
例えば、これらのスペーサー12は、第1のキャリアユニット20内のわずかに幅広のチャネル、穴または嵌合穴(fitted hole)を貫通して延びる環状材料片からなり、穴またはチャネルの上に、例えばリングまたはプレート形状の上端を有し、従って、スペーサーは図1に示すように懸架された位置にある。かかる懸架構造は、ピックアップ時に負荷が異なるレベルにある場合および/または傾斜している場合に、三つの方向または自由度における移動を可能にしている。各スペーサー12には、第1のキャリアユニット20の上側に支持されるように上端近傍または上端に配置された支持要素12a(図5参照)を設けてもよい。これは、特にスペーサー12が(図1におけるように)下方の初期位置にある場合である。
【0018】
さらに第1のキャリアユニット20と結合されているのは把持部21である。これらは既知の方法で、係合のために内側に曲げられた端部を有するプレートとしてまたはフォークとして実装される。また、そのような把持部21をそれらの上端周りに、例えば空気圧により旋回可能にする方法は一般に既知である。把持位置において、これらの把持部21は、2つの両側面においてトレイのエッジ102の下に係合する。また、把持部21を4つの側面のすべてに沿って配置することも可能である。
【0019】
上述の構成では、0cmと約10cmの間の高さの差を調整し、矯正することができる。
【0020】
図1では、さらに、第2のキャリアユニット30が図示されている。第2のキャリアユニット30は、その下に配置された第1のキャリアユニット20とそれに固定結合された第2のスペーサー22とともに同様の懸架構造を提供する。この懸架構造を用いても、高さの差と傾斜位置を同様に補償し調整することができる。当業者には明らかなように、この第2の懸架構造は第1のスペーサー12を持つ第1の懸架構造に関して延長部となっている。当業者には明らかなように、随意に、かかるキャリアユニット20、30の組合せによる高さ矯正を利用してもよく、あるいはそのような組合せを利用しなくてもよい。
【0021】
第2のスペーサー22は、それぞれ、第2のキャリアユニット30の上側に支持されるように上端近傍または上端に配置された支持要素22a(図6参照)を設けられていてもよい。これは、特に第2のスペーサー22が(図1におけるように)下方の初期位置にある場合である。
【0022】
さらに、図1では、マスト40が示されている。マスト40は、把持部ヘッド1をマニピュレータ、例えばロボット、とくに上述したようなロボットアーム、またはマスト40を限定された複数の方向に変位させることができるガイド・フレームと結合する。
【0023】
このマスト40に対して、さらに長さ調整装置や高さ調整装置、すなわちマスト・テレスコープ50が示されている。ここに示す例示的実施形態では、意図されているのは、マストがこのマスト・テレスコープ50を用いてこのマスト自体の方向のみに移動されるようにすることである。例えば、ピックアップのために、実質的に垂直方向と考えられるピックアップ方向Gが示されている。当業者に明らかなように、いくつかの長さ調整装置、例えば上述のテレスコープが可能である。また、一般に既知のリンケージまたはリンケージ構造を適用することができる。
【0024】
図1の状況では、マスト40の垂直位置が決まると、把持部ヘッド1は、キャリアユニット20、30とともに、かつ自在に懸架されたスペーサー12、22(特に、それぞれの支持要素12a、22aを介してキャリアユニット20、30上にそれぞれ支持されている)とともに、垂直に垂れ下がる。把持部ヘッド1がスタック上に下降し、さらにある程度下がり次第、これらのスペーサー12、22は、そのようなスタックの反力の結果、把持部ヘッド1が実質的に垂直方向上方、すなわちピックアップ方向Gに垂直移動することを許容する。
【0025】
当業者に明らかなように、部品をすべての可能な距離および方向に移動可能に支持することは、自在に懸架されたスペーサー12、22の替わりに能動的付勢、例えば、空気圧、油圧、または電気的付勢と玉継ぎ手との組合せを用いても提供することができる。多くのさらなる組合せがこの技術分野で既知であると考えられる。
【0026】
キャリアユニット20、30の移動とマスト・テレスコープ50の移動との組合せを用いて、必要であれば、数十センチメートルまでの高さを矯正することが可能である。これが必要か否かはトレイのタイプと、例えば卵以外の製品、例えばリンゴのような果物、甘唐辛子のような野菜のタイプとによって決まる。
【0027】
図2〜8を参照して、本発明による把持部ヘッド1のさらなる位置および状態を説明する。
【0028】
図2では、図1のスタックをピックアップすることが意図されている。どのようにして把持部ヘッド1が下降され、吸引カップ11が吸引によって製品すなわち卵E上に配置され、把持部21が旋回され、このスタックの最上位のトレイのトレイ・エッジ102の下側に係合したかが示されている。ここに示されている状況では、キャリアユニット20、30の相対的位置は実質的に不変である。
【0029】
図3は、トレイ100のスタックを示す。トレイ100はすべて比較的大きな製品すなわち卵Eを有するので、このスタックのトレイ100同士はそれぞれのレリーフ101上に直接、載置はされない。示されているように、この状況では、吸引カップ11は吸引中は卵の上に載り、把持部21は底部エッジ102において最上位トレイ100と再び係合し、今度は、主として第1のキャリアユニット20がスペーサー22とともに上昇し、これらのスペーサー22もキャリアユニット30に対して上昇する。加えて、マスト・テレスコープ50が移動されて適切な方法で高さが調整される。
【0030】
当業者には明らかなように、このトレイ100のピックアップと移動の後、キャリアユニット20、30は再び自由に懸架された状態に戻り、一方マスト・テレスコープ50は再びその初期位置に戻る。そのようなマスト・テレスコープ50は、摩擦力の影響下でゆっくりと押し込まれ、そして同様にその初期位置に戻ることが可能である。しかし、能動的付勢または駆動、例えば空気圧、油圧または電気による付勢を使用してもよい。
【0031】
図3に示す状況は、大きな製品すなわち卵Eに対するものであるが、高いレリーフ101を有するトレイに対する状況に匹敵する。
【0032】
図4では、傾斜したスタックからのトレイ100のピックアップが示されている。図4に示すように、このスタックの傾斜は、例えば大きな製品すなわち卵Eによるものである。また、この状況では、第1のキャリアユニット20はその全体が第2のキャリアユニット30に対して移動しており、図3の場合と異なり、さらに傾斜方向にも移動している。また、吸引カップ11は、吸引中、卵E上にあり、把持部21は下方エッジ102において最上位トレイ100と係合する。
【0033】
図5は、最上位のトレイが特に大きい卵Eを装荷されたトレイ100のスタックを示す。この状況では、容器フレーム10は第1のキャリアユニット20に対して上昇する。吸引カップ11は、吸引中、再び卵E上にある。把持部21は下方エッジ102において最上位トレイ100と再び係合する。
【0034】
図6では、数個の大きな卵Eのためにスタックのいくつかのトレイ100が相互に傾斜している状況が示されている。この状況では、キャリアユニット20、30および容器フレーム10はそれらの初期位置から相互に変位される。さらに、そのような状況では、吸引による係合は異なるサイズの卵Eごとに異なる。
【0035】
さらなる例示的実施形態が図7に示されている。さらなる支持体23が示されている。支持体23は吸引カップ21を用いて吸引する際、それらの終端が正確にトレイ・レリーフ101のエッジ部分上に来るように配置される。そのようなエッジ部分は卵Eが配置されるポケットのエッジを構成する。これらの支持体23は第1のキャリアユニット20と固定結合される。そのような支持体23の重要な利点は、このようにして、ピックアップされるトレイ100が常にこのキャリアユニット20に対して同じように配置され、従って把持部21も常にこのトレイ100の下方エッジに対して適切な位置へ旋回されることである。このようにして、規格通りの無傷のトレイ100のピックアップの失敗が実質的に完全に防止される。図7による概念的立面図では、2つの支持体23が示されている。当業者には明らかなように、そのような支持体の位置と個数は選択可能であり所望により用いることができる。
【0036】
本発明による把持部ヘッド1のさらに別の例示的実施形態が図8に示されている。図8では、把持部1は、それら自体が引き出し押し込み要素(slide out push−off elements)24を設けられている。これらの押し込み要素24を用い、ピックアップするトレイ100に何らかの理由で捉えられた下のトレイ100を押し込み、または取り外すことができ、ピックアップするべきトレイ100だけが係合され、ピックアップされる。把持部ヘッド1によりピックアップされ、残存するスタックから把持部ヘッド1が遠ざかった後、押し込み要素24を再び引き入れることができる。当業者には明らかなように、そのような押し込み要素24を実装し、移動するための多くの解決手段があるが、なかでも空気圧駆動を用いることができる。
【0037】
さらなる実施形態によると、把持部ヘッド1に少なくとも1つのセンサ31が設けられる。特に第1のキャリアユニット20および第2のキャリアユニット30の間の相対位置、および/または距離または変位を検知し、例えば検知された位置および/または検知された距離または変位に関するセンサ信号を発生させるものである。そのようなセンサ31は図7に概念的に図示されている。センサ31は種々の方法で実装することができ、例えば電気的センサ、磁気的センサ、光学的センサ、機械的センサ、その他のタイプのセンサからなるものであってもよい。
【0038】
非制限的な実施例によると、例えば第2のキャリアユニット30上にそのようなセンサ31を搭載してもよく、このセンサ31は第1のキャリアユニット20の存在を検知し、特に第1のキャリアユニット20および第2のキャリアユニット30の間の相互距離および/または変位を検知する。少なくとも1つのセンサは、例えば第1のキャリアユニット20上に、または−部分的に−両方のユニット20、30上に搭載されていてもよい。
【0039】
さらなる実施形態によると、センサ31は第1のキャリアユニット20の第2のキャリアユニット30に対する(特に上方への)変位を、例えば把持部ヘッドの下降運動の間およびロッド23による最初の上昇の際(これらが下にある対象、例えばトレイ・レリーフ101に接触するとき)に検知するように構成されている。従って、最上位トレイが置かれているスタック高さをマークすることができる。この情報は(把持部ヘッド1)の下降運動が完了したか決定するのに用いることができる。スタックが高すぎると測定されると、把持部ヘッドの移動を中止して機械および卵への損傷を防止することができる。
【0040】
最上位トレイが把持され、ヘッド1が上昇すると、少なくとも1つのセンサ31により発せられたセンサ信号は、スタック1から最上位トレイがすっかり持ち上げられた瞬間を正確に決定するために用いることができる。この情報は、押し込み要素24が存在する場合は、これをオンに切り替えるのに用いることが可能であり、そのためそのタイミングは常に正しく、スタック高さとは無関係である。
【0041】
センサを用いずに作業がなされる場合、押し込み要素切替時点は、例えば、制御により決定してもよい。一方、例えばピックアップされるトレイの高さ位置によらない固定された切替時点を用いてもよい。
【0042】
当業者に明らかなように、本発明は上述の例示的実施形態に限定されない。明らかに、種々の改変および変更例が添付の従属請求項の範囲内で可能である。
【0043】
従って、例えば、単一のトレイの替わりに、例えば2個または3個のトレイからなる部分的なスタックをスタックの上部として係合し、ピックアップしてもよい。また、押し込み要素を第2の組の把持部として実装し、これらが二重の機能を有するようにしてもよい。また、2以上の押し込み要素/把持部の組合せを用いてもよい。
【0044】
そのような組合せにおいては、押し込み要素は滑動だけでなく、丁度把持部のように、能動的旋回移動にも従うことが可能でなければならないであろう。
図1
図2
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図5
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図8