特許第5886443号(P5886443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886443
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】合成ガスの生成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/24 20060101AFI20160303BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20160303BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20160303BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C01B3/24
   C01B3/04 R
   C10G2/00
   C10J3/00
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-547763(P2014-547763)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公表番号】特表2015-503497(P2015-503497A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2012005310
(87)【国際公開番号】WO2013091879
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】102012010542.8
(32)【優先日】2012年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514154802
【氏名又は名称】ツェーツェーペー テヒノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】キュール、オラフ
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−298030(JP,A)
【文献】 特開昭62−091594(JP,A)
【文献】 特開2012−021047(JP,A)
【文献】 特表2005−511467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 − 3/58
C10G 2/00
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを導入することによって炭化水素を含んだ流体を炭素と水素に分解し、エネルギーの少なくとも一部は熱によって提供され、炭素と水素は分解工程の後に少なくとも200℃の温度を有し、
水を前記分解工程によって生成された炭素の少なくとも一部と800℃から1700℃の温度で接触させ、炭素を水と接触させる際には、分解工程で得られた炭素は前記分解工程後、その温度の50%以下の温度(℃)だけ冷却する状態であり、
前記分解工程で得られた炭素と水の少なくとも一部を合成ガスに変換する合成ガス生成方法であって、
前記分解工程で得られた炭素と前記分解工程で得られた水素を共に水と接触させることを特徴とする合成ガス生成方法。
【請求項2】
エネルギーを導入することによって炭化水素を含んだ流体を炭素と水素に分解し、エネルギーの少なくとも一部は熱によって提供され、炭素と水素は分解工程の後に少なくとも200℃の温度を有し、
水を前記分解工程によって生成された炭素の少なくとも一部と800℃から1700℃の温度で接触させ、炭素を水と接触させる際には、分解工程で得られた炭素は前記分解工程後、その温度の50%以下の温度(℃)だけ冷却する状態であり、
前記分解工程で得られた炭素と水の少なくとも一部を合成ガスに変換する合成ガス生成方法であって、
炭素を水と接触させる工程の前に、前記分解工程で得られた炭素の少なくとも一部は前記分解工程で得られた水素と分離され、
分離された水素の少なくとも一部は変換工程で生成された合成ガスに添加されることを特徴とする合成ガス生成方法。
【請求項3】
分解工程は1000℃以上の温度で起こり、炭素は少なくとも1000℃の温度で水と接触することを特徴とする請求項1または2に記載の合成ガス生成方法。
【請求項4】
変換のための800℃から1700℃の温度に到達することが必要な熱は、炭化水素を含んでいる流体を分解するために提供された熱から本質的に、且つ、完全に生ずることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成ガス生成方法。
【請求項5】
分解工程によって得られた炭素の少なくとも一部及び/又は分解工程によって得られた水素の一部及び/又は合成ガスの一部の熱の少なくとも一部は、水を炭素と接触させる前に水を加熱するために用いられ及び/又は水が炭素と接触するプロセス室を加熱するために用いられ及び/又は発電のために用いられ、電気は、特に、炭化水素を含有する流体を分解するためのエネルギーを導入するエネルギーキャリアーとして提供されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の合成ガス生成方法。
【請求項6】
炭化水素含有流体を分解するエネルギーはプラズマによって導入されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の合成ガス生成方法。
【請求項7】
分解工程で得られた炭素と分解工程で得られた水素を、エアロゾルの形態の水と接触させることを特徴とする請求項6に記載の合成ガス生成方法。
【請求項8】
付加的な水素の少なくとも一部は、1000℃以下の温度でマイクロ波プラズマによって炭化水素含有流体を分解することによって発生することを特徴とする請求項2に記載の合成ガス生成方法。
【請求項9】
分解される炭化水素含有流体は天然ガス、メタン、湿性ガス、重油又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の合成ガス生成方法。
【請求項10】
官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素生成方法であって、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法により合成ガスを最初に発生させ、合成ガスを官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素に変換するために、合成ガスを適当な触媒と接触させ、触媒及び/又は合成ガスの温度は所定範囲の温度に開ループ制御又は閉ループ制御されることを特徴とする官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素生成方法。
【請求項11】
合成ガスの変換はフィッシャー・トロプシュプロセス、SMDSプロセス、ベルギウス・ピアプロセス、ピアプロセス、ピアプロセスとMtLプロセスの組み合わせのいずれかによって実施されることを特徴とする請求項10に記載の官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素生成方法。
【請求項12】
合成ガス生成装置であって、
炭化水素含有流体を炭素と水素に分解する炭化水素コンバーターを備え、
炭化水素コンバーターは、炭化水素含有流体用の少なくとも一つの入口と炭素及び/又は水素用の少なくとも一つの出口と、少なくとも部分的に熱からなるエネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットとを有した少なくとも一つのプロセス室を備え、
水と炭素の変換用のCコンバーターを備え、
Cコンバーターは、水用の少なくとも一つの入口と、少なくとも炭素用の少なくとも一つの入口と、少なくとも一つの出口とを有した少なくとも一つの別のプロセス室を備え、
少なくとも炭素用の入口は、炭化水素コンバーターの少なくとも一つの出口に直接的に接続され、
炭化水素コンバーター、炭化水素コンバーターの少なくとも一つの出口、Cコンバーター、Cコンバーターの少なくとも一つの入口は、炭化水素コンバーター内で生成された炭素と水素を共にCコンバーターに導くように構成されていることを特徴とする合成ガス生成装置。
【請求項13】
合成ガス生成装置であって、
炭化水素含有流体を炭素と水素に分解する炭化水素コンバーターを備え、
炭化水素コンバーターは、炭化水素含有流体用の少なくとも一つの入口と炭素及び/又は水素用の少なくとも一つの出口と、少なくとも部分的に熱からなるエネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットとを有した少なくとも一つのプロセス室を備え、
水と炭素の変換用のCコンバーターを備え、
Cコンバーターは、水用の少なくとも一つの入口と、少なくとも炭素用の少なくとも一つの入口と、少なくとも一つの出口とを有した少なくとも一つの別のプロセス室を備え、
少なくとも炭素用の入口は、炭化水素コンバーターの少なくとも一つの出口に直接的に接続され、
分解により得られた炭素と分解により得られた水素を分離する分離ユニットを備え、前記分離ユニットは分離ユニットで分離した物質用の個別の出口を有し、炭素用の出口はCコンバーターと接続し、分離ユニットで分離された水素用の個別の入口パイプを備え、水素用の入口パイプは水素をCコンバーターまたはCコンバーターの下流に位置する混合室に導くことを特徴とする合成ガス生成装置。
【請求項14】
エネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットは、そのユニットが少なくとも局部的に1000℃以上の温度を発生することができるように設計されていることを特徴とする請求項12に記載の合成ガス生成装置。
【請求項15】
エネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットは、プラズマユニットからなることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の合成ガス生成装置。
【請求項16】
Cコンバーターのプロセス室は炭化水素コンバーターの出口パイプによって形成され、出口パイプは水用の入口に接続されていることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の合成ガス生成装置。
【請求項17】
炭化水素コンバーターはクバーナー反応器からなることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項に記載の合成ガス生成装置。
【請求項18】
炭化水素コンバーターは更に、炭素と水素とからなるエアロゾルを形成するように構成されていることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の合成ガス生成装置。
【請求項19】
炭化水素含有流体を炭素と水素に分解する少なくとも一つの付加的な炭化水素コンバーターを有し、前記炭化水素コンバーターは、
炭化水素含有流体用の少なくとも一つの入口を有した少なくとも一つのプロセス室と、
少なくとも部分的に熱からなるエネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニット、
分解によって得られた炭素と分解によって得られた水素とを分離する分離ユニットとを備え、
分離ユニットは炭素と水素用の個別の出口を有し、水素用の出口は水素用の別の入口に接続されていることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか1項に記載の合成ガス生成装置。
【請求項20】
少なくとも一つの付加的な炭化水素コンバーターは1000℃以下の温度でマイクロ波プラズマによって分解を実行するタイプであることを特徴とする請求項19に記載の合成ガス生成装置。
【請求項21】
合成ガスを官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素に変換する装置であって、
請求項12乃至20のいずれか1項に記載の装置と、
触媒が位置するプロセス室と、合成ガスを触媒に接触させる手段と、触媒の温度及び/又は合成ガスの温度を所定の温度に開ループ制御又は閉ループ制御する制御ユニットとを有したCOコンバーターとを備えたことを特徴とする合成ガスの炭化水素への変換装置。
【請求項22】
COコンバーターはフィッシャー・トロプシュコンバーター、SMDSコンバーター、ベルギウス・ピアコンバーター、ピアコンバーター、ピアコンバーターとMtLコンバーターの組み合わせのいずれか、からなることを特徴とする請求項21に記載の合成ガスの炭化水素への変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素及び水から合成ガスを生成する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界経済の重要な部分は、原料またはエネルギー源としての原油に基礎を置いている。これゆえ、個人及び品物の輸送用のオットーディーゼル燃料、船舶用及び電気プラント用燃料としての重油及び家庭の暖房用の軽油は、原油から製造される。また、化学工業用の多くの原料は、直接的にまたは間接的に原油に由来している。現在、原油から製造される製品を他の原料または別のプロセスで代用するために多大な努力が払われている。エネルギー分野において、天然ガス及び再生可能なエネルギーは発電所の運転において原油の代わりに用いられている。電気エンジン、天然ガスエンジン及び水素燃料電池を運輸に適用するために試験がなされているが、それらは商業的には確立されてはいない。
【0003】
工業的なスケールで天然ガスまたは石炭から油脂製品を生産する試みがなされている。例えば、天然ガスを液体燃料に変換するプロセスが知られている(いわゆるガス液化プロセスまたはGTLプロセス)。それにもかかわらず、これらのプロセスは、一般的に相当量のCO放出を伴い、かつ、高いコストを伴う。加えて、これらのプロセスは、通常、COまたはCOと独立して水素を提供することはできない。それ故、これらの試みは経済的及び生態学的な理由から幾つかの孤立した適用に限られている。
【0004】
合成ガス(Synthesis gas)、略してシンガス(syngas)は、二酸化炭素をも含むことができる一酸化炭素と水素の気体混合物である。例えば、合成ガスは、炭素含有燃料を所定の発熱量を有したガス状生成物、すなわち合成ガスにガス化することによって生成される。合成ガスは天然ガスのエネルギー密度の約50%である。合成ガスは燃焼可能であり、これゆえ燃料源として使用可能である。合成ガスは、他の化学製品の生成における中間生成物としても使用することができる。例えば、合成ガスは石炭または廃棄物のガス化によって生成することができる。合成ガスの生成の際、炭素は水と反応することが可能であり、また炭化水素は酸素と反応することが可能である。工業ガス、肥料、化学製品及び他の化学製品を生成するために合成ガスを処理するための商業的に利用可能な技術がある。しかしながら、合成ガスの生成及び変換のためのもっとも知られている技術(例えば、水性シフト反応)は、必要量の水素を合成することによってより多量の余分なCOを発生させ、このCOが気候に悪影響を与えるガスとして最終的に大気に放出されるという問題がある。合成ガスを製造する別の公知の技術である、2CH + O → 2CO + 4H という反応式によるメタンの部分酸化は、HとCOの最大比が2.0に到達することができる。しかしながら、不利な点は、強力なエネルギーである純酸素を使用することである。
ヨーロッパ特許公開公報EP0219163Aは、炭化水素を第一反応室で分解し炭素と水素を生成し、炭素を第二反応室に搬送し水と接触反応させる合成ガスの生成方法を開示している。
国際公開公報WO00/06671A1は、第一反応室において空気の存在下で生物学的物質を炭素と水蒸気やCO等の廃ガスに変換し、第二反応室において合成ガスが前記炭素と水蒸気から生成される合成ガスの生成方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明により解決すべき第一の問題点は、大量のCOを発生することなく、炭化水素含有流体を可変の水素含有量を有する合成ガスに変換することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点は請求項1、及び13に係る方法及び請求項17,18及び26に係る装置によって解決される。また、実施形態は、従属の請求項に由来している。
【0007】
特に、合成ガス生成方法は、少なくとも一部は熱によって提供されるエネルギーの導入によって炭化水素含有流体を炭素と水素に分解することで成り立ち、炭素と水素は分解工程後に少なくとも200℃の温度を有する。分解工程によって発生する炭素の一部は800℃から1700℃の間の温度で水と接触し、分解工程後、炭素が水と接触する際に、分解工程によって生成された炭素はその温度の50%以下の温度(℃)だけ冷却する。ここで、水の少なくとも一部は、分解プロセスによって生成した炭素とともに合成ガスに変換される。この方法によって、相当量のCOを発生させることなく、炭素含有流体を可変の水素含有量を有した合成ガスに変換することが可能である。有利な方法では、(炭化水素の分解によって)炭素を得るために必要なエネルギーの少なくとも一部は、変換のための熱の形で導入される。加えて、水素と様々な異なった形態の炭素が副生成物として生成可能である。
【0008】
分解工程が1000℃以上の温度で起こり、少なくとも1000℃の温度で、特に1000℃から1200℃の温度で、炭素が水と接触する場合には、変換のために提供される付加的な熱が必要でないか、又は、ほんのわずかな付加的な熱のみを必要とする。好ましくは、変換のために800℃から1700℃(特に1000℃から1200℃)の温度に到達することが必要な熱は、炭化水素含有流体の分解のために用いられる熱によって基本的に、且つ、完全に提供される。ここで、基本的、且つ、完全にとは、必要とされる熱の少なくとも80%、特に少なくとも90%は分解工程から生ずるということを意味する。
【0009】
一実施形態では、分解工程で得られた炭素及び分解工程で得られた水素はともに水と接触する。水素は変換には影響を与えず、付加的な熱伝達物質として機能することが可能である。これは、炭素と水素が1000℃(好ましい変換温度)以上の温度を有している場合に特に有利である。この場合、変換後のガスは純粋な水性ガスではなく異なった混合比を有した合成ガスである。
【0010】
また、分解工程で得られた炭素は、炭素を水と接触させる工程の前に分解工程で得られた水素と分離することが可能である。
【0011】
この方法のエネルギー効率を増すために、分解工程で得られた炭素の少なくとも一部及び/又は水素の一部の熱の少なくとも一部は、水を炭素と接触させる工程の前に水を加熱するために使用することが可能である、及び/又は、水が炭素と接触するプロセス室を加熱するために使用することが可能である。この意味で、変換後に合成ガスが800℃から1700℃の温度を有し、且つ、その合成ガスの熱の少なくとも一部を、水を炭素と接触させる工程の前に水を予熱するために使用することが可能である、ということに留意すべきである。分解工程で得られた炭素の少なくとも一部及び/又は水素の一部の熱の少なくとも一部、及び/又は、変換後の合成ガスの一部は、炭化水素含有流体の分解工程用のエネルギーを導入するためのエネルギーキャリアーとして使用することが可能である電気を発生させるために使用することも可能である。
【0012】
好ましくは、炭化水素を分解するためのエネルギーは主としてプラズマを介して導入される。これはエネルギーを導入するために、特に直接的で、且つ、効率的な方法である。好ましくは、分解工程は、炭化水素の流れを連続的に分解することが可能なクバーナー反応器で行われる。
【0013】
合成ガスを発生するための方法において、付加的な水素及び/又は一酸化炭素及び/又は別の合成ガスを、所望の組成を得るために合成ガスに加えることが可能である。炭素と水素の両方を水と接触させる場合、CO/H比を減らすため、付加的な一酸化炭素を合成ガスに加えることが特に有効である。基本的に純粋な炭素を水と接触させるための工程の間、CO/H比を増加させるために付加的な一酸化炭素を加えることが有効である。特に、CO/Hの所望の混合比を得るために上述した方法(炭素と水素の事前分離を行う方法、炭素と水素の事前分離を行わない方法)によって別々に発生した二つの合成ガスの流れを混合することが可能である。
【0014】
好ましくは、熱によって少なくとも部分的に行われるエネルギーの導入によって炭化水素含有流体を炭素と水素に分解する工程から付加的な水素が発生する。それゆえ、分解工程は、一つの工程で、C・HO変換のために必要な炭素及び必要な水素を提供することが可能である。一実施形態では、水素の少なくとも一部は、マイクロ波プラズマによって、1000℃以下の温度、特に600℃以下の温度で、炭素含有流体を分解する工程によって生成される。
【0015】
付加的な水素(C・HO変換のために必要な炭素の生成によって得られる量以上の水素)が合成ガスの特定の混合比を得るために必要な場合、炭化水素含有流体から低温でエネルギー効率が良い前記水素を生成することが好ましい。好ましくは、合成ガス中のCOの水素に対する比率(CO:H)は1:1から1:3の間の値、特に1:2.1の値に調整される。
【0016】
官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を生成する方法において、第1工程では、上述したように、合成ガスが生成され、合成ガスを官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素に変換するために合成ガスを適当な触媒と接触させる。ここで、触媒及び/又は合成ガスの温度は所定の温度範囲に設定又は調整される。このようにして、合成ガスを触媒と接触させる前、或いは、接触させる時に、COを水素と混合することによって合成ガスを生成することが可能である。
【0017】
一つの実施形態では、合成ガスの変換はフィッシャー・トロプシュプロセス、特にSMDSプロセスによって行われる。また、合成ガスの変換はベルギウス・ピア(Bergius−Pier)プロセス、ピアプロセス又はピアプロセスとMtLプロセスの組み合わせによって行うことが可能である。官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素の性質を大きく決定するのはプロセスの選択である。
【0018】
好ましくは、分解すべき炭化水素含有流体は、天然ガス、メタン、湿性ガス、重油又はそれらを混合したガスである。
【0019】
合成ガス生成装置は炭化水素含有流体を炭素と水素に分解する炭化水素コンバーターを備え、炭化水素コンバーターは炭化水素含有流体用の少なくとも一つの入口及び炭素及び/又は水素用の少なくとも一つの出口を有した少なくとも一つのプロセス室と、少なくとも部分的に熱から成るエネルギーをプロセス室に導入する少なくとも一つのユニットとを備えている。また、装置は水と炭素の変換用のCコンバーターを備え、Cコンバーターは水用の少なくとも一つの入口、少なくとも炭素用の少なくとも一つの入口及び少なくとも一つの出口を有した少なくとも一つの付加的なプロセス室を備え、少なくとも炭素用の入口は炭化水素コンバーターの少なくとも一つの出口に直接的に接続されている。ここで、用語「直接的に接続」とは、Cコンバーターへの途中で、炭素を加熱するために付加的なエネルギーを使用することなく、炭化水素コンバーターから排出される炭素が、その炭素の温度(℃)の50%以上は冷却せず、好ましくは20%以下の温度(℃)分しか温度が下がらない、ということを意味する。炭素を水素から分離する分離ユニットは、分解工程の位置と炭化水素コンバーターの少なくとも一つの出口との間に設けることが可能である。このユニットは炭化水素コンバーターの一部を形成することが可能であるか又は分離ユニットとして炭化水素コンバーターの外側に位置することが可能である。炭化水素コンバーターの出口とCコンバーターの入口との間の分離ユニットは、上記条件に適合する限りにおいて、直接接続の邪魔にはならない。
【0020】
好ましくは、エネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットは、そのユニットが1000℃以上の温度、特に1500℃以上の温度を少なくとも局部的に発生することが可能であるように構成されている。一実施形態においては、エネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットはプラズマユニットである。特に、分解温度が1000℃以下に保たれる場合には、エネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットはマイクロ波プラズマユニットからなる。
【0021】
装置の特に単純な実施形態にとっては、Cコンバーターのプロセス室は、水用の供給パイプに接続されている炭化水素コンバーターの出口パイプによって形成されている。
【0022】
本発明の一つの実施形態においては、分解によって発生する炭素と水素を分離するための分離ユニットは炭化水素コンバーターの近くに設けられており、分離ユニットからの別々の出口は分離された物質のために設けられており、炭素用の出口はCコンバーターに接続されている。
【0023】
好ましくは、炭化水素コンバーターは、長い操作期間の間、炭素含有流体を連続的に分解するために必要な温度を提供することが出来るクバーナー反応器である。
【0024】
装置は、可変の混合比を有する合成ガスの単純で効率的な生成のために、水素及び/又は炭素及び/又は分離された合成ガスをCコンバーター又は下流の混合室に供給するための少なくとも一つの分離供給パイプを備えることが可能である。
【0025】
一つの実施形態では、合成ガス生成用の装置は、炭化水素含有流体を炭素と水素に分解する少なくとも一つの付加的な炭化水素コンバーターを備えている。少なくとも一つの付加的な炭化水素コンバーターは、また炭化水素含有流体用の少なくとも一つの入口を有した少なくとも一つのプロセス室と、少なくとも部分的に熱からなるエネルギーをプロセス室に導入するための少なくとも一つのユニットと、分解によって得られた炭素と水素とを分離する分離ユニットとを備え、分離ユニットは炭素と水素用の個別の出口を有し、水素用の出口は水素用の分離供給パイプに接続されている。エネルギー効率の理由から、少なくとも一つの付加的な炭化水素コンバーターは、マイクロ波プラズマによって1000℃以下の温度、特に600℃以下の温度で分解を行うタイプのものが好ましい。
【0026】
合成ガスを官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素に変換する装置は、上記特定のタイプの合成ガスを発生する装置及びCOコンバーターを備えている。COコンバーターは、触媒を装備したプロセス室と、合成ガスを触媒と接触させる手段と、触媒及び/又は合成ガスの温度を所定の温度に制御又は調整する制御ユニットとを備えている。こうして、合成ガスを発生する装置の部分はCOコンバーター、例えば、CO及び付加的な水素、炭素及び/又は別の合成ガス用の混合室に組み込むことが可能である。一実施形態では、COコンバーターはフィッシャー・トロプシュコンバーター、特にSMDSコンバーターを備えている。また、COコンバーターはベルギウス・ピアコンバーター、ピアコンバーター又はピアコンバーターとMtLコンバーターの組み合わせを備えている。同一タイプ又は異なったタイプの幾つかのCOコンバーターが装置に含まれることも可能である。
【0027】
好ましくは、装置はCOコンバーター内の合成ガスの圧力を制御又は調整する制御ユニットを備えている。
【0028】
以下、本発明を実施形態及び図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、合成ガス生成用のプラントの概略図である。
図2図2は、合成ガス生成用の別のプラントの概略図である。
図3図3は、官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素生成用のプラントの概略図である。
図4図4は、別の実施形態に係る官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素生成用の別のプラントの概略図である。
図5図5は、別の実施形態に係る官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素生成用のプラントの概略図である。
図6図6は、別の実施形態に係る官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素生成用のプラントの概略図である。
図7図7は、別の実施形態に係る合成ガス生成用のプラントの概略図である。
図8図8は、別の実施形態に係る官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素生成用のプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明において、頂部、底部、右及び左等の用語、及びこれらに類似した用語は、図面において示される方向及び配置に関するものであり、実施形態の説明のためにのみに意味されるものとして留意すべきである。これらの用語は好ましい対応を示すが限定するものではない。また、異なった図面において、同一の符号は同一または類似した部分を説明するために使用される。
【0031】
以下の明細書において「ホット」材料を取り扱う、または、「ホット」プロセスを実施する方法及び装置を説明する。この詳細な説明において、語句「ホット」は200℃以上の温度、好ましくは300℃以上の温度を意味する。
【0032】
合成ガスは、主として一酸化炭素及び水素からなるいずれのガスであっても良い。一酸化炭素と水素がほぼ等しい分量(1:1)からなるガス(合成ガス)は水性ガスと呼ばれる。ここで用いられる語句「合成ガス」は、合成ガスの特定の混合物としての水性ガスを包含する。
【0033】
図1は合成ガスを生成するプラント1を示す。図1は、またこの詳細な説明による合成ガスの生成のための基本的な生成工程を明示する。
【0034】
合成ガスを生成するプラント1は、炭化水素入口4及び第1炭素出口5、任意の水素出口6及び任意の第2炭素出口7を有した炭化水素コンバーター3を備えている。合成ガスの生成用のプラント1は、水入口10、炭素出口11(C入口とも称す)及び合成ガス出口12を有したCコンバーター9を備えている。炭化水素コンバーター3及びCコンバーター9は、炭化水素コンバーター3の炭素出口5が直接接続部8を介してCコンバーター9の炭素入口11に接続されるように配置されており、出口5はCコンバーター9の炭素入口11を直接に形成している。こうして、炭素を炭化水素コンバーター3からCコンバーター9に直接に輸送することが可能である。
【0035】
炭化水素コンバーター3は、導入された炭化水素を炭素と水素に変換または分解することができる炭化水素コンバーターであればいずれのコンバーターであっても良い。炭化水素コンバーター3は炭化水素含有流体用の入口、分解エネルギーを流体に導入する少なくとも1つのユニットと、少なくとも1つの出口とを備えたプロセスチャンバーからなっている。分解エネルギーは、少なくとも部分的に例えばプラズマによってもたらされる熱によって提供される。それにもかかわらず、分解エネルギーは、他の手段によっても提供可能であり、分解が主に熱によって起こる場合には、流体は1000℃以上に加熱されるべきであり、特に1500℃以上の温度に加熱されるべきである。
【0036】
説明される実施形態においては、クバーナー反応器が用いられ、このクバーナー反応器は必要とされる熱をプラズマアークによって提供する。しかしながら、より低い温度で特に1000℃以下の温度で作動し、例えばマイクロ波プラズマによって熱に加えて付加的なエネルギーを炭化水素に導入する他の反応器が知られている。以下に更に説明するように、本発明は、両方のタイプの反応器(プラズマ無しに作動する反応器も)を考慮しており、特に両タイプの反応器を併用することも考慮している。1000℃以上の温度で作動する炭化水素コンバーターは高温反応器と称するのに対し、1000℃以下の温度、特に200℃から1000℃の温度で作動するコンバーターは低温反応器と称する。
【0037】
炭化水素コンバーター内で、炭化水素(C)は熱及び/またはプラズマによって水素と炭素に分解される。炭化水素は、好ましくはガスとして反応器に導入される。標準状態で液体の炭化水素は、反応器への導入前に気化することが可能であり、又は炭化水素は微小液滴として導入することが可能である。いずれの形態も以下において流体と示される。
【0038】
炭化水素の分解は、酸化炭素または水の形成を抑制するために、可能であれば酸素が存在しない状態でなされるべきである。それにもかかわらず、炭化水素とともに導入される可能性のある少量の酸素はプロセスに害にはならない。
【0039】
上述したクバーナー反応器はプラズマ燃焼器内で炭化水素含有流体を高温で純炭素(例えば、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、工業用すすとして)と水素、および場合により不純物に分解する。炭化水素コンバーター3用の出発原料として用いられる炭化水素含有流体は、例えばメタン、天然ガス、バイオガス、湿性ガスまたは重油である。しかしながら、合成の官能基を有する及び/または官能基を有さない炭化水素も炭化水素コンバーター3用の出発原料として用いることが可能である。最初の分解工程の後、元素は、通常、混合物として、特にエアロゾルの形で存在する。この混合物は、後述するように、この形で別のプロセスに導入することが可能であるか、または混合物は分離ユニット(図示せず)において個々の元素に分離可能である。分離ユニットは個別のユニットとして構成されるけれども、本件特許出願においては、そのような分離ユニットは炭化水素コンバーター3の一部として考えられる。分離ユニットが設けられていない場合には、炭素出口5は炭化水素コンバーター3の唯一の出口であり、炭素と水素の混合物(エアロゾル)を直接にCコンバーター9に導く。分離ユニットを設ける場合には、少なくとも部分的に水素から分離される炭素を炭素出口5を用いてCコンバーター9に導入することが可能である。分離された水素、および場合により付加的な炭素は、任意の出口6および7によって排出可能である。
【0040】
Cコンバーター9は、炭素(C)および水(HO)から合成ガスを生成することができるものであれば、どんなCコンバーターであってもよい。図1の実施形態において、Cコンバーター9内で、HOは炭素上を通過するか、または水蒸気は炭素と水素の流れの中に導入され、その流れと混合され、それによって化学式 C + HO → CO + H のように変換される。
Cコンバーター9内で、次の反応が起こる:
C + HO → CO + H +131.38kJ/mol 吸熱反応
CO + HO → CO + H −41.19kJ/mol 発熱反応
ブドワール平衡において、次の反応が起こる:
2C + O → 2CO +172.58kJ/mol 吸熱反応
【0041】
全ての3つの反応は互いに平衡であるので、Cコンバーター9内のプロセスは、好ましくは800℃から1700℃の高温、より好ましくは1000℃から1200℃の高温で起こる。というのは、第2の反応が低温で優位的であるからである。上記温度に達するのに必要な熱は炭化水素コンバーター3から生ずる物質によって主として提供される。この点については以下に詳細に説明する。これらの条件の下でCコンバーター9内の水(HO)は蒸気であり、水は蒸気として既に導入可能である。操作中の水の供給は、強力な冷却を避けるために余剰の水の倍数を避けるように制御される。Cコンバーター9内で過剰な冷却がなされる場合、上記反応2が優位的である。
【0042】
発熱性水性シフト反応 CO + HO → CO + H を抑制して合成ガス内の一酸化炭素の割合を最適化するために、Cコンバーター9は1000℃から1200℃の高温で作動することが最良である。Cコンバーター9内の反応は当業者には公知であり、これ故ここでは更には説明しない。
【0043】
合成ガスの発生用のプラント1の操作を図1を参照して以下に説明する。以下において、炭化水素コンバーター3はクバーナータイプの高温反応器であるとする。炭化水素含有流体(特にガス状)は炭化水素入口4を介して炭化水素コンバーター3に導入される。炭化水素が、例えば、メタン(CH)である場合、1モルのメタンから1モルの炭素と2モルの水素が発生する。炭化水素は炭化水素コンバーター3のプラズマトーチ内で約1600℃で以下の反応式によって変換される。ここで、導入されるエネルギーは電気エネルギーによってプラズマ内で発生する熱である。
+ エネルギー → nC + m/2H
【0044】
適切なプロセスコントロールによって、クバーナー反応器はほぼ100%の炭化水素を連続した操作でその構成要素に変換することが可能である。
【0045】
以下において、炭素と水素は炭化水素コンバーター3内で分離され、大部分は分離された状態で排出されると考えられる。しかしながら、分離されず、炭素と水素が混合物として排出されてCコンバーター9に導入されることも可能である。水素はCコンバーター9内での変換プロセスの障害にはならず、付加的な熱伝達物質として機能する。炭素は少なくとも一部は炭素出口5からCコンバーター9の炭素入口11に直接に導かれる。炭化水素コンバーター3の出口5からCコンバーター9の炭素入口11に「直接」導くということは、導かれる物質の温度が50%以上(好ましくは20%以上)の冷却を受けないような全ての変形を含んでいる。炭化水素コンバーター3から排出された炭素は高温であり、好ましくは1000℃以上であるので、炭素が持っている熱エネルギーは例えば約1000℃の温度で作動するCコンバーター9における変換プロセスに必要な温度を維持するために使うことができる。
【0046】
炭化水素コンバーター3とCコンバーター9とを接続する接続部8は、炭素が炭化水素コンバーター3からCコンバーター9に行く間にあまり冷却されない(温度に関して50%以下、好ましくは20%以下)ように設計されている。例えば、接続部8は特別に絶縁されるか及び/または積極的に加熱され、装置は好ましくは付加的な熱が供給されず、すなわち炭化水素コンバーター3における熱導入に加えて付加的な熱が供給されることはない。炭化水素コンバーター3内の操作温度のために、炭化水素コンバーター3で発生する水素も熱エネルギーを持っている。それゆえ、接続部8を加熱する1つの可能性としては、炭化水素コンバーター3とCコンバーター9間の接続部8を熱交換器ユニットを介して直接的にまたは間接的に加熱するために、水素出口6から排出される水素の熱エネルギーを使用することである。
【0047】
Cコンバーター内に、Cコンバーター9の水入口10を通して導入される水、特に蒸気の形で導入される水は、ホット炭素上に導かれ及び/又はホット炭素と混合される。Cコンバーターは高温で操作されるのが最良である。というのは、Cコンバーター9内の反応は吸熱反応であり、それに対し、水性シフト反応が発熱反応だからである。反応が圧力と温度に依存することは当業者には公知であるので詳細には説明しない。Cコンバーター9に導入される水の量または炭素の量は、いずれも適切な手段によって制御可能である(開ループ)及び/又は調整可能である(閉ループ)。
C + HO → CO + H; ΔH = +131.38kJ/mol
【0048】
またここで、ブドワール平衡は限定された要素である。これは、1000℃以上の温度でかつ余剰な水が存在しない状態では、混合物はほぼ一酸化炭素および水素で構成されるためである。Cコンバーター9は、好ましくは、温度>1000℃で作動するので、Cコンバーター9の水入口10に導入される水を予熱することが有利である。例えば、水の予熱は熱交換器ユニットを介して直接的にまたは間接的にホット水素中に含まれる熱エネルギーを用いて行うことが可能である。好ましくは、炭素中に含まれる熱は水を所望の温度に加熱するためには十分である。炭化水素コンバーター3で発生する熱が約1000℃の所望の変換温度に到達するために十分でない場合のみにおいて、Cコンバーター9またはCコンバーター内に含まれる元素を加熱するための任意の付加的な加熱ユニットを設けることが可能である。そのようなユニットは、水または炭素用の供給ラインの近くに予熱ユニットとして設けることも可能である。そのようなユニットは、装置が所望の温度状態により早く到達するようにCコンバーター9またはプラントの媒体を含んでいる部分を開始温度にするためにプラントの立ち上げ段階のためのみに設けることが可能である。炭化水素コンバーター3で発生する熱を介して全ての媒体を含んでいる部分をもっぱら加熱することは最初は長い時間がかかる可能性がある。
【0049】
ホット合成ガス(CO + H)は1000℃より高い温度(Cコンバーター9の作動温度による)でCコンバーター9から排出される。Cコンバーター9から排出される合成ガスは、水入口10に導入される水を熱交換器ユニット(図1では図示せず)を介して直接にまたは間接的に予熱するために用いることが可能である熱エネルギーを保有している。適切な操作パラメーター、すなわち1000℃から1200℃の温度(および炭化水素コンバーター3における水素と炭素の分離)によって、合成ガスは生成され、合成ガス中のCOとHは1:1の比を有し、この合成ガスは水性ガスと呼ばれる。炭化水素コンバーター3において水素と炭素を分離することなくかつCコンバーター9においてそれぞれ適切な操作パラメーターとすることなく、すなわち1000℃から1200℃の温度に調整しない場合には、約1:3のCO/H比を有した合成ガスが生成される。
【0050】
上述したように、炭化水素コンバーター3は炭素を排出するための第2炭素出口7を備えることが可能である。炭化水素コンバーター3で生成される炭素は、CとH各々の分離の後に(またはC−H混合物として)第1炭素出口5および第2炭素出口7を介して異なった割合で排出することが可能である。第2炭素出口7は、生成された炭素のうち合成ガスを発生させるためにCコンバーター9で使用されない炭素の一部を排出するために使用される。使用されない炭素の量は、Cコンバーター9から排出されるであろう合成ガスの所望の組成に依存する。第2炭素出口7を通して排出される炭素は、活性炭、グラファイト、カーボンブラックもしくはカーボンコーンやカーボンディスク等の別の形態として排出することが可能である。排出された炭素の形態及び品質に応じて、排出された炭素は化学工業またはエレクトロニクス工業用の原料として使用することが可能である。例えば半導体の製造、タイヤ、インク、トナーまたは類似の製品の製造に使用することが可能である。炭化水素コンバーター3によって生成された炭素は極めて良好に処理可能である高純度の原料である。
【0051】
合成ガスを生成するための上述の方法によって、温水または熱水によりCコンバーター9において炭化水素コンバーター3から出たホット炭素を外部エネルギー供給が無い状態であるいは少なくとも相当量の外部エネルギー供給が無い状態で合成ガスに変換することが可能である。好ましくは変換温度に到達するのに必要な熱の少なくとも80%、特に少なくとも90%は炭化水素コンバーター3から発生する熱によることができる。
【0052】
図2は合成ガスを生成するためのプラント20を示し、プラント20は合成ガスを生成するためのプラント1の上述の要素および混合室21を備えている。混合室21は合成ガスを導入するための合成ガス入口22、水素を導入するためのH入口23、および合成ガスを排出するための合成ガス出口24を備えている。合成ガス入口22はCコンバーター9の合成ガス出口12に接続されている。混合室21のH入口23は炭化水素コンバーター3のH出口6に接続されている。当業者にとって明らかなように、C−H混合物を炭素出口5を介してCコンバーター9に導入する実施例では、約1:3のC−Hの混合比を有する合成ガスが自動的に生成される。そのような場合、混合室21は無くてもよいかまたは混合室21は異なった混合比を生成するために使用しても良いし、または合成ガスのH含有量を減らすためにCOを混合室に導入しても良い。
【0053】
混合室21はガスを混合するために適切な装置であればいずれの装置であっても良く、単純な場合には混合室21は適切な入口および出口を有したパイプの形状をしていても良い。混合室21によって、および、特に混合ユニット21のH入口23及び/又はCO源(図示せず)及び/又は第2合成ガス源に接続された入口(図示せず)を介して導入される(付加的な)水素量を制御/調整(開/閉ループ)することによって、合成ガス出口24での合成ガスの混合物は、後続のプロセスに適合した組成が得られるように影響されうる。特に、第2合成ガス源は第1Cコンバーターに並行して操作される第2Cコンバーター9であっても良い。両Cコンバーター9には、通常共用される炭化水素コンバーター3または別のコンバーターユニットから炭素及び/又は水素が供給される。特に第1コンバーターにはほぼ純粋な炭素(水素分離後の)が供給可能であり、第2コンバーターには炭素と水素が供給可能である。ここで、第1Cコンバーターは約1:1のCO:Hの混合比を有する実質的に水性ガスを生成し、第2Cコンバーターは約1:3のCO:Hの混合比を有する合成ガスを生成する。これら2つの合成ガスを組み合わせることによって約1:2のCO:Hの混合比を生じさせ、(第1Cコンバーターに導入する前の分離工程からの)余剰の水素は混合比をさらに増加させるために利用される。
【0054】
多くのプロセスのために、たとえば、フィッシャー・トロプシュ合成のために、COに対する水素の比は高くあるべきである。混合室21によって、COに対する水素の所望の比率、例えば、水性ガスに対応する1:1の比率が、合成ガス出口24で達成することができる。合成ガスの一部及び/又は水素の一部のみは混合室21に供給され、混合室に導入されない合成ガスおよび水素の一部が各々純ガスとしてプロセスから排出されるということが考えられる。
それゆえ、例えば、a)合成ガスのみを排出すること、b)水素のみを排出すること、c)COと水素の合成ガス混合物を排出すること、またはd)水性ガスの流れ、水素の流れ、および合成ガス混合物(COと水素との間のいずれの比率でもよい)または一酸化炭素と水素の異なった比率を持った各種の合成ガスの流れを排出することが可能である。
【0055】
また、図2において合成ガスを生成するプラント20は、C熱交換器ユニット25、合成ガス熱交換器ユニット26およびH熱交換器ユニット27を備えている。C熱交換器ユニット25は、炭化水素コンバーター3とCコンバーター9との間の接続部8と熱的に伝導して接触状態にあり、必要な場合には、Cコンバーター9において変換温度に到達するために必要とされない余分な熱を接続部から引き出すようになっているか、または必要であればプラントの他の領域から熱を導入するようになっている。
【0056】
合成ガス熱交換器ユニット26は、Cコンバーター9と混合室21との間の接続部と熱的に伝導して接触しており、余分な熱を接続部から引き出しおよびホット合成ガスに含まれる余分な熱を引き出すようになっている。引き出された熱は、例えばCコンバーター9に導入される水を予熱するために使用可能である。この熱移送のためには、当該技術分野で知られているように、いわゆる向流熱交換器ユニットが特に適切である。
【0057】
熱交換器ユニット27は炭化水素コンバーター3と混合室21との間の接続部と熱的に伝導して接触状態にあり、余分な熱を接触部から引き出し、これゆえ接触部内にあるホット水素から引き出すようになっている。熱交換器ユニット25、26または27の1つで引き出された熱は、プラントの他の領域を加熱するために使用され、特にCコンバーターを保温するため、またはCコンバーターに導入される水を予熱するために使用可能である。前記熱交換器ユニットで引き出された熱の一部は、例えば蒸気発生器および蒸気タービンまたは他の適切な装置によって電気に変換することが可能である。
【0058】
プラント20により合成ガスを生成する操作は、炭化水素コンバーター3およびCコンバーター9の操作に関して、図1によるプラント1の上述の操作に類似している。合成ガスを発生するプラント20において、水素とCOの所望の混合比率は、合成ガスの所望の組成によって混合室内で設定され、且つ、混合室21の合成ガス出口24を介して排出される。好ましくは、しかしながら必ずしもそうではないが、水素は、上述したように、炭化水素コンバーター3によってもたらされる。他の水素源も考えられ、特に第2炭化水素コンバーター3、特に低温炭化水素コンバーターが考えられる。合成ガスの得られる量の全体及び/又はHの得られる量の全体を使わない場合には、混合室で混合されないガス、例えば、合成ガス及び/又はHの一部は別途処理可能である。
【0059】
図3は官能基を有する及び/または官能基を有さない合成炭化水素の生成用のプラント30を示し、プラント30は(図1に示すような)水性ガス生成用のプラントおよびCOコンバーター31を備えている。図1に対応するプラントの構成要素は重複した説明を避けるために説明しない。COコンバーター31はCコンバーター9の下流に位置しており、COコンバーター31は合成ガスを導入するための合成ガス入口32、水素を導入するためのH入口33、および官能基を有する及び/または官能基を有さない合成炭化水素を排出するための炭化水素出口34を備えている。COコンバーター31の合成ガス入口32は合成ガス接続部35によってCコンバーター9の合成ガス出口12に接続されている。COコンバーター31のH入口33はH接続部36によって炭化水素コンバーター3のH出口6に接続されている。
【0060】
COコンバーター31のH入口33およびH接続部36は任意の構成要素である、ということを留意すべきである。Cコンバーター9から排出される合成ガスの組成によって及びCOコンバーター31で生成される官能基を有した及び/または官能基を有さない合成炭化水素によって、合成ガスがCコンバーター9の合成ガス出口12から排出されるときに、合成ガスはCOコンバーター31による更なる処理のために適正な組成を既に有している。この場合、水素をH接続部36を介して導入することは必要ではない。任意ではあるが、H接続部36は別の物質、例えば合成ガスのH含有量を減らすためのCOまたはアルデヒド(ヒドロホルミル化)の合成用のアルケンを導入する機能を果たすことも可能である。
【0061】
随意的に炭化水素を生成するためのプラント30もまたプラント20(図2)に関連して説明した熱交換器ユニット25,26,27を備えており、すなわち、プラント30もまたC熱交換器25、合成ガス熱交換器26およびH熱交換器27を備えており、全ての動作は上述した通りである(図2の説明参照)。
【0062】
COコンバーター31は官能基を有した及び/または官能基を有さない合成炭化水素を生成するためのCOコンバーターであればいずれのCOコンバーターであっても良い。図3に示す実施形態においては、適切な触媒および温度及び/又は圧力用の制御ユニットを備えたCOコンバーターは、好ましくはフィッシャー・トロプシュコンバーター、ベルギウス・ピアコンバーターまたはピアコンバーターである。
【0063】
1つの実施形態ではCOコンバーター31はフィッシャー・トロプシュコンバーターからなる。フィッシャー・トロプシュコンバーターは、触媒的に合成ガスを炭化水素と水に変換する。フィッシャー・トロプシュ反応器およびフィッシャー・トロプシュプロセスの幾つかの実施形態は当業者には公知であるので説明しない。主たる反応式は以下の様である:
nCO +(2n+1)H→ C2n+2 + nHO アルカン用
nCO +(2n)H→ C2n + nHO アルケン用
nCO +(2n)H→C2n+1OH +(n−1)HO アルコール用
【0064】
フィッシャー・トロプシュプロセスは高温プロセスまたは低温プロセスとして実行可能であり、プロセス温度は通常200℃から400℃の範囲である。フィッシャー・トロプシュプロセスの公知の変形例は、高負荷合成、シントール合成およびシェル社のSMDSプロセス(SMDS=Shell Middle Distillate Synthesis)である。フィッシャー・トロプシュコンバーターは典型的には湿性ガス(プロパン、ブタン)、ガソリン、ケロシン、軟パラフィン、固形パラフィン、メタン、ディーゼル燃料またはこれら幾つかのガスを混合した炭化水素混合物を生成する。フィッシャー・トロプシュ合成が発熱反応であるということは当業者には公知である。フィッシャー・トロプシュプロセスからの反応熱は、例えば、熱交換器ユニット(図示せず)によって水を予熱するために使用可能である。例えばCコンバーター9に導入される水を2段予熱するプロセスが考えられ、この場合、第1予熱工程はCOコンバーター31の予熱によって実現され(フィッシャー・トロプシュコンバーターの実施形態において)、そして熱交換器ユニット25,26,27の1つ以上からの熱によって水を加熱する次の工程がある。
【0065】
別の実施形態では、COコンバーター31はベルギウス・ピアコンバーターまたはMtLコンバーター(MtL=Methanol−to−Liquid)とピアコンバーターの組み合わせからなっている。
【0066】
ベルギウス・ピアコンバーターにおいて、当業者に周知であるベルギウス・ピアプロセスが実行され、炭化水素は炭素を水素により水素化することによって発熱的化学反応で発生する。ベルギウス・ピアプロセスからの生成物の範囲は反応条件と反応プロセスの制御に依存する。主として液体の生成物が得られ、この液体の生成物は燃料、例えば重油とミーディアムオイル(中粘度油)として使うことが可能である。ベルギウス・ピアプロセスの公知の変形例としては、例えば、コンソールプロセスおよびH−coalプロセスがある。
【0067】
ピアコンバーターとMtLコンバーターの上述の組み合わせにおいて、最初に合成ガスはピアプロセスによってメタノールに変換される。MtLコンバーターはメタノールをガソリンに変換するコンバーターである。広く行き渡ったプロセスはエクソンモービル社またはエッソ社のMtLプロセスである。MtLコンバーターの出発原料は、典型的にはメタノールであり、例えばピアコンバーターからのメタノールである。MtLコンバーターによって生成する出口生成物はガソリンであり、このガソリンはオットーエンジンの運転のために適切である。
【0068】
要約すると、上述した動作原理にかかわらず、COコンバーター31は、出力物すなわち最終生成物として、COとHから官能基を有する及び/または官能基を有さない合成炭化水素を生成するということができる。熱交換器ユニットによって、COコンバーター31における発熱性の変換反応の間に生成されるプロセス熱は、プラントの異なった部分を加熱するために用いることが可能であり、または上述のプラントの効率を増加するための電気を発生するために用いることが可能である。
【0069】
分離及び精製後の最終生成物として直接に更に処理することができない又は収益性の高い販売ができない炭化水素の混合物がCOコンバーター31の出口生成物として得られる限りにおいて、これらの炭化水素、例えばメタンまたは短鎖アルカンは上述したプロセスにおいて再利用することが可能である。この目的のために、プラント30は、合成的に生成された炭化水素の一部を炭化水素コンバーター3の炭化水素入口4に返送することができるリサイクル接続部39を備えている。再利用される合成的に生成された炭化水素の組成によって不適当な炭化水素が炭化水素入口4に導入されないように、不適当な炭化水素の処理または分離工程が実施される。
【0070】
図4は官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を生成するためのプラント40の別の実施形態を示す。プラント40は合成ガスを生成するための上述したプラント20および図3の実施形態で説明したCOコンバーター31を備えている。混合室21の合成ガス出口24はCOコンバーター31の合成ガス入口32に接続されている。混合室21は、使用中のCOコンバーター31のニーズに適合している合成ガスを合成ガス出口24で提供するように設定されている。プラント40の他の構成要素は、上述したものと同様であり、個々の構成要素の動作は上述した方法と同様である。
【0071】
プラントのサイズによって、所望の変換能力を得るために複数の炭化水素コンバーターを並列に運転することが考えられる。上述したように、炭化水素コンバーターは高温炭化水素コンバーター及び/又は低温炭化水素コンバーターとして構成することが可能である。高温炭化水素コンバーターは1000℃以上の温度で作動し、低温炭化水素コンバーターは200°から1000℃の温度で作動する。ここで、炭化水素のカーボンおよび水素への分解を行うため、付加的なエネルギー源、例えばマイクロ波ユニットを、エネルギーを炭化水素に直接に入力するために設けることが可能である。
【0072】
複数の並列して作動する炭化水素コンバーターを有したプラントの例として、図5は官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を生成するためのプラント30の別の実施形態を示す。図5は同一または類似した構成要素が説明されている限りにおいて先の実施形態と同一の参照符合を用いている。図5で示される実施形態において、高温炭化水素コンバーター3aと低温炭化水素コンバーター3bの組み合わせが単一の炭化水素コンバーター3の代わりに示されている。
【0073】
高温炭化水素コンバーター3aは炭化水素入口4a、炭素を排出する第1出口5aおよび水素を排出する第2出口6aを備えている。また、単一の出口5aは炭素と水素の混合物(特にエアロゾル)のために設けることが可能である。第1出口5aは接続部8によってCコンバーター9のC入口11に接続されている。高温炭化水素コンバーター3aの任意の第2出口6aはCOコンバーター31のH入口33に接続されている。高温炭化水素コンバーター3aは炭素用の別の出口(図5では図示せず)を任意的に備えることが可能である。
【0074】
低温炭化水素コンバーター3bは、炭化水素入口4bを有したプロセス室、炭素を排出する第1出口5b、水素を排出する第2出口6b、および炭素を排出する任意の第3出口7bを備えている。好ましくは、低温炭化水素コンバーター3bは、分解後に水素と炭素を分離し、且つ、水素とカーボンを各々の出口に導くための分離ユニットを備えている。第1出口5bは、任意的に接続部8を介してCコンバーター9のC入口11に接続されているが、炭素集積ユニットにも接続されている。低温炭化水素コンバーター3bの第2出口6bはCOコンバーター31のH入口33に接続されている。任意の第3出口7bは炭素集積ユニットに接続され、この炭素集積ユニットから集積された炭素を例えばカーボンブラック、活性炭または別の形態で引き出すことが可能である。
【0075】
上述したように、H接続部36a,36bを介して水素を導入することが必要でない場合には、COコンバーター31のH入口33およびH接続部36a、36bは任意的な構成要素となる。
【0076】
炭化水素入口4aに導入された炭化水素および炭化水素入口4bに導入された炭化水素は同一の炭化水素であってもよく、また、異なった炭化水素であってもよい。第1炭化水素源からの炭化水素は炭化水素入口4aに導入してもよく、例えば天然ガス源から天然ガスを炭化水素入口4aに導入してもよい。しかしながら、例えば、合成的に生成された官能基を有する及び/又は官能基を有さない炭化水素は、例えば先に説明した任意のリサイクル接続部39を介して低温炭化水素コンバーター3bの炭化水素入口4bに導入することが可能である。幾つかの並行に運転される炭化水素コンバーター3,3a,3bを利用するために、プラント30は、その規模を簡単に大きくしたり小さくしたり、より制御が簡単であり、且つ、異なった種類の炭素を生成可能である。
【0077】
また、高温炭化水素コンバーター3aはCコンバーター9における変換プロセスのために好ましくは1000℃以上の温度でホット炭素を生成するために有利に使用可能である。特に、分解によって得られるC−H混合物は直接的にCコンバーターに導入可能であるので、高温炭化水素コンバーター3aは分離ユニットが無くても動作可能である。この場合、Cコンバーター9は出口で、例えば、約1:1のC−H混合比を有した合成ガスを生成する。
【0078】
しかしながら、低温炭化水素コンバーター3bは、COコンバーター31において合成ガス生成用又は1:3より大きなC−H混合比を有するC−H混合物生成用の付加的な水素を提供するために主として使用される。低温炭化水素コンバーター3bから次のプロセスへの熱伝達は必要ではないため、低温炭化水素コンバーター3bは1000℃以下の温度好ましくは可能な限り最も低い温度で有利に操作可能である。
【0079】
これゆえ、炭化水素コンバーター3a,3b(好ましくは高温炭化水素コンバーター3a)において生成される炭素の一部は、プラント30の運転中にCコンバーター9に導入可能であるのに対し、別の一部の炭素(好ましくは低温炭化水素コンバーター3bからの一部)は、更なる生成物を生成するための原料としてプロセスから転用することも可能である。そのような生成物は、例えば、カーボンブラックまたは工業用すす、活性炭、カーボンディスクやカーボンコーンといった、黒い粉末状固形物として得られる特殊炭素等である。
この炭素は、ゴム工業における充填材、カラー印刷、インク、塗料用の色のついたすすとして、または例えば、亜鉛炭素電池、及び陰極または陽極の生成用の電気部品の生成のための出発原料として使用可能である工業的に重要な生成物である。余剰の水素は化学工業のために転用可能であり、また、電気(燃焼によってまたは燃料電池によって)を発生するために使用可能である。ここで、低温炭化水素コンバーター3bは、好ましくは低温炭化水素コンバーター3bが必要な付加的な水素を提供するのみであるように操作される。
【0080】
図6は官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を生成するための上記プラント40の別の実施形態を示し、この別の実施形態においては複数の並行に運転される高温及び/又は低温炭化水素コンバーターが同様に設けられている。図6に示す炭化水素を生成するプラント40は、混合室21がCOコンバーター31の上流に位置している点で図5に示すプラント30とは異なっている。混合室21はCOコンバーター31に特に適合する合成ガスを混合し、COコンバーター31に合成ガスを送る。図6に示す構成要素は既に説明しており、上述した原理に従って作動する。それゆえ、重複した説明を避けるために詳細な説明は省略する。
【0081】
図7及び8はプラント20及び30の実施形態を示し、プラント20及び30はC熱交換器ユニット25、合成ガス熱交換器ユニット26及びH熱交換器ユニット27を備えており、各熱交換器ユニットはエンジン/発電機装置45に接続されている。エンジン/発電機装置45はプラントの異なった部分からの余剰の熱から少なくとも部分的に電気を発生するために適当であり、前記電気は高圧線配線網に供給することが可能であるか又はプラント20、特に炭化水素コンバーターを運転するために使うことが可能である。また、エンジン/発電機装置45は熱交換器ユニット(図8では図示せず)に接続可能であり、この熱交換器ユニットはCOコンバーター31内で起こる発熱性変換プロセスによって発生する熱を放散する。これゆえ、一方では、COコンバーターを制御され調整された方法で冷却することが可能であり、このことはプロセスの操作のためには有利であり、他方では電気を発生させることが可能である。エンジン/発電機装置45は熱エネルギーを電気に変えるために適当である装置であればいずれの装置でもあってもよく、例えば蒸気タービンと発電機の組み合わせ又はピストンエンジンと発電機の組み合わせ等である。
【0082】
運転中、エンジン/発電機装置45はプラントの余剰の熱を電気に変換し、すなわち、炭素−水変換に必要でない熱を電気に変換する。
【0083】
エンジン/発電機装置45及び熱交換器ユニット25,26及び27は上述した全てのプラントで使用することが可能な任意の構成要素である。各々の炭化水素コンバーター3,3a,3bにおける作動温度によって、各第2炭素出口7,7a,7bから排出された炭素は相当量の熱エネルギーを含んでいる。排出された炭素の所望の温度によって、大量の熱エネルギーを熱交換器ユニット(図示せず)によって放散することが可能であり、この熱はここで説明されるプロセスで再利用することが可能であり及び/又はエンジン/発電機装置45を用いて電気に変換することが可能である。
【0084】
官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を生成するためのプラント30及び40において、炭化水素コンバーター3,3a,3bからの水素の冷却及び/又はCコンバーター9からの合成ガスの冷却は、炭化水素及び水素の温度がCOコンバーター31の動作温度以下に低下しない範囲で行われる。COコンバーター31の動作温度は、選択されるプロセスによるが通常200℃から400℃の間である。
【0085】
上述した全てのプラントにおいて、炭化水素コンバーター3は1000℃以上の温度で作動する高温反応器(例えば、クバーナー高温反応器)または200℃から1000℃の間の温度で作動する低温反応器(例えば、クバーナー低温反応器)である。現時点でテストされた低温反応器は400℃から900℃の温度で作動する。200℃から900℃の温度で作動する低温反応器の場合、Cコンバーター9が800℃から1700℃の間の温度、好ましくは1000℃から1200℃の間の温度で作動するので、導入された炭素は炭化水素コンバーター3とCコンバーター9の間の接続部8で予熱されると考えられる。高温コンバーター及び/又は低温コンバーターとの組み合わせは上述の全てのプラント1,20,30及び40において使用可能であるということは図7及び図8から明らかとなる。
【0086】
上述した全てのプラント1,20,30及び40において、炭化水素コンバーター3,3a,3bで生成する炭素の一部がプラント1,20,30及び40のCコンバーター9において転換されない限り、前記炭素の一部はカーボンブラック、活性炭或いは他の原料として転用可能である。上述したプラントの全てにおいて複数のCコンバーターが設けられるということが更に留意される。ここで、水が加えられる時に、これらCコンバーターの各々はカーボンの一部を合成ガスに転換することが可能である。また、望ましくない炭化水素を炭化水素コンバーター3の炭化水素入口4,4a,4bに供給することによって、COコンバーター31で生成される望ましくない官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を任意的に再利用することは上記全てのプラント30及び40において実施することが可能である。
【0087】
プラント1,20,30及び40において、また合成ガス及び/又は官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を生成するための方法において、余剰の水素が生成可能である。余剰の水素は、例えば、低い水素含有量を有する合成ガスとともに残り、また、COコンバーター31で生成される合成炭化水素によっては、水素を混合室21又はCOコンバーター31に導入することは必要ではない。これらの場合、余剰の水素は燃焼によって直接に又は燃料電池によって電気に変換可能である。これゆえ、これらの方法は外部から電気的入力がなくても実質的に実施可能である。このことは、強力で一般的な高圧線配電網が得られない離れた場所で作動されるプラントには特に有利である。炭化水素コンバーター3で生成される水素の一部はプロセスから直接に取り出すことが可能であり、産物として市場に提供することが可能であるということに留意すべきである。
【0088】
全てのプラントにおいて、コンバーター3,9,31と混合室21の間での炭素、合成ガス、水素及び外部COの各々の流れはバルブ、シャッター、スライダー等によって制御可能である。特に、合成ガス及び水素又はCOのCOコンバーター31への流入はバルブによって制御可能であると考えられる。そして、合成ガスと水素又は所望の割合でのCOの混合はCOコンバーター31内で直接に起こる。
【0089】
上述の全てのプラントにおいて、COコンバーター31は複数のCOコンバーター(図示せず)から構成されてもよく、炭化水素コンバーター3,3a,3bで発生及び分離された水素とCコンバーター9で発生した合成ガスの総量は複数のCOコンバーターに任意に分配することが可能である。個々のCOコンバーターは上述のデザインの1つ及び動作モードを有している。COコンバーターは同一のデザインでも良いし又は異なったデザイン又は動作モードを持っていても良い。異なったCOコンバーターを有した実施形態においては、個々のCOコンバーターは、それぞれ異なって構成された合成ガスによって操作され、異なった最終生成物を生成する。
【0090】
方法をさらに例証するため、幾つかの例を以下に示す:
例1
メタン1部を炭化水素コンバーターで分解する場合、1部の炭素と2部の水素が得られる。Cコンバーターにおいて、炭素は1部の水と反応し、1部の一酸化炭素と1部の水素を形成する。1.1部の水素を加えた後、合成ガスがCOコンバーターで反応しパラフィン(炭化水素化合物)へと変換される。その後、依然として充分な水素はパラフィンを更なる工程でディーゼル、オットー燃料またはケロシンに分解するために利用される。

例2
プロパン(ブタン)1部を炭化水素コンバーターで分解する場合、3(4)部のカーボンと4(5)部の水素が得られる。Cコンバーターにおいて炭素は3(4)部の水と反応し、3(4)部の一酸化炭素と3(4)部の水素を形成する。3.3(4.4)部の水素を加えた後、合成ガスがCOコンバーターで反応しパラフィンへと変換される。いずれの場合においても、残留する水素の量はパラフィンを更なる工程でディーゼル、オットー燃料またはケロシンに分解するためにまさに充分である。

例3
1部の重油(例えばC2042)を炭化水素コンバーターで分解する場合、20部の炭素と21部の水素が得られる。Cコンバーターで炭素は20部の水と反応し、20部の一酸化炭素と20部の水素を形成する。21部の水素を加えた後、合成ガスが別のCOコンバーターにおいて反応し20部のメタノールに変換される。
【0091】
ここで説明された方法において、炭化水素コンバーター3で炭化水素を分解することによって生成された水素は分解工程で形成された炭素と分離され、低い水素含有量の合成ガスを形成した後に、分離した水素は、低い水素含有量の合成ガスに所望の比率で加えることが可能である。これゆえ、COに対する水素の比率の範囲は1.0から3.0の間で得られる。余剰の炭素を部分酸化することによって、比率<1.0となり、余剰の炭素を使用しないことによって、比率>3.0とすることができる。
【0092】
本発明を好ましい実施形態に関して詳細に説明したが、説明した実施形態の個々の特徴は、それらの特徴が両立できる限りにおいて自由に組み合わせることが可能である。また、上述した実施形態の個々の特徴は、それらの特徴が絶対に必要でない限りにおいて省くことができる。多くの変形が本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかである。官能基を有する及び/又は官能基を有さない合成炭化水素を発生するプラントの特別の簡易な実施形態においては、Cコンバーターは単純なパイプとして(例えば、分離ユニットがなく、高温の炭化水素コンバーターの出口パイプとして)設計可能であり、水入口は前記パイプに通じる。水入口は、二つの媒体の流れが良好に混合しあうように前記パイプに合流するべきである。特に、操作の最初にパイプを動作温度に加熱するために、パイプは入口部分で断熱することが好ましく、加熱ユニットに接続しても良い。また、下流で、パイプは、余剰の熱を引き出して、プラントの他の部分を加熱するため及び/又は発電するため、この熱を使用するようになっている熱交換器に接続されることが好ましい。加えて、パイプは、同一のパイプがCコンバーターとして機能するのみならず、特定の混合比を有した合成ガスを生成するための混合室としても機能するように、水素用の入口パイプ(例えば、熱交換器の下流で)からなっていてもよい。水素用の入口パイプは低温炭化水素コンバーター(分離ユニットを備える)の水素用の出口から始まっても良い。この場合、所定の混合比を有した合成ガスが排出されるパイプの出力端はCOコンバーター内で終わってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8