(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5886461
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】シャーベット氷の製造方法
(51)【国際特許分類】
F25C 1/00 20060101AFI20160303BHJP
A01K 63/02 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
F25C1/00 B
A01K63/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-142575(P2015-142575)
(22)【出願日】2015年7月17日
【審査請求日】2015年8月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515196780
【氏名又は名称】株式会社ノト技研
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】林 武重
【審査官】
河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/032611(WO,A1)
【文献】
特開2007−040548(JP,A)
【文献】
特開2003−001253(JP,A)
【文献】
特開2007−185102(JP,A)
【文献】
特開平03−191273(JP,A)
【文献】
特開2006−003038(JP,A)
【文献】
特開2005−343738(JP,A)
【文献】
特開2005−180893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00−1/24
A23L 1/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に冷却する工程と、殺菌すると共に冷却した海水をシャーベット氷発生装置に移してシャーベット氷を生成する工程と、貯蔵した海水の70%以上のシャーベット氷が生成された段階でシャーベット氷と残存する海水に分離する工程と、生成分離したシャーベット氷を立体形状に固着する工程と、固着成形したシャーベット氷塊の周囲表面に真水を被着する工程と、被着した真水を冷凍してシャーベット氷塊を安定維持する工程とを有することを特徴とするシャーベット氷の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海水からシャーベット氷と濃塩分海水を製造し
、前記シャーベット氷を更に加工して保存及び使用を良好にしたシャーベット氷の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海水を利用してシャーベット氷を製造することは知られている。
例えば、特許第4124632号では、槽に供給された海水を循環させつつ冷却し、海水の一部を凍結させて海水氷を製造し、次いで、槽内の冷却された海水を排水するとともに、排水する海水に対応して海水を汲み上げて冷却しつつ槽に供給して海水の塩分濃度を維持しながら海水氷を製造し、その際、排水する海水と汲み上げた海水とを熱交換させることが開示されている。
【0003】
また、特開2007−278667号公報には、運搬される活魚の冬眠時の呼吸量に応じた量の酸素気泡を含有し、シャーベット状に製氷された後に海水と撹拌混合されてスラリー状を呈することを特徴とする海水氷が開示されている。
【0004】
さらに、特開2013−76553号公報では、原水の塩分濃度の範囲および温度の範囲に条件があることに鑑みて、原水の塩分濃度および温度などの原水の要素を加味して制御し、短時間で良好なシャーベット氷を得る方法が開示されている。
【0005】
他方、海水より塩を製造することは古くから知られ、技術的には進歩を遂げているけれど、基本原理は変わらずに現在に至って塩作りが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4124632号公報
【特許文献2】特開2007−278667号公報
【特許文献3】特開2013−76553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、海水の一部を凍結させて海水氷を製造し、この海水氷で活魚の表面に損傷を与えることなく冬眠状態に冷却することができと共に、溶解時に冬眠状態の活魚の旨味を損なうことなく大量の活魚を効率的に運搬する方法が知られている。
特開2007−278667号公報では、運搬される活魚の冬眠時の呼吸量に応じた量の酸素気泡を含有し、シャーベット状に製氷された後に海水と撹拌混合されてスラリー状を呈するようにしたものである。
【0008】
また、この方法では海水の水の部分を氷とするため、製氷が進むにつれて海水の塩分濃度は徐々に濃くなり、この濃度は、氷が全て融解しても海水の濃度と同等にしかならないため、氷の発生に伴い魚介類の品質を維持するには不適当な塩分濃度となる問題がある。
特許第4124632号公報では、海水の塩分濃度を維持しながら海水氷を製造することができるようにしたものである。
【0009】
このように従来は、海水から海水氷を製造すると共に、海水に浮遊させた状態で使用して活魚の保存搬送に資するようにすることを目的でしているものである。
そこで、本発明では海水氷を氷としての魚の保冷等、多様に利用できるように維持・保存できるように加工することを目的とするものであり、海水氷の製造に伴って生じる濃塩分海水の有効利用を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る請求項1の発明は、取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に冷却する工程と、殺菌すると共に冷却した海水をシャーベット氷発生装置に移してシャーベット氷を生成する工程と、貯蔵した海水の70%以上のシャーベット氷が生成された段階でシャーベット氷と残存する海水に分離する工程と
、生成分離したシャーベット氷を立体形状に固着する工程と、固着成形したシャーベット氷塊の周囲表面に真水を被着する工程と、被着した真水を冷凍してシャーベット氷塊を安定維持する工程とを有することを特徴とするシャーベット氷の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の海水からシャーベット氷の製造する方法によれば、取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に冷却する工程により、一定の分量の海水を効率良く殺菌し、次工程のシャーベット氷の生成効率も高める効果を有する。
【0012】
海水は殺菌されているため、生成されるシャーベット氷は衛生的で広汎な用途に使用可能となる。
貯蔵した海水の70%以上のシャーベット氷が生成された段階でシャーベット氷を分離するため、残存する海水は当初の3倍を超える塩分濃度を有し、塩の生成に有効な海水を得られる効果も有する。
【0013】
そして、シャーベット氷を立体形状に固着し、固着成形したシャーベット氷塊の周囲表面に被着した真水を冷凍してシャーベット氷塊としたため、成形形態の維持が不安定なシャーベット氷塊に比べ、周りを真水の氷で固めて成形形態を安定維持できる効果を有するものであり、保存や運搬時に崩れることがなく、表面氷が溶ければ容易にシャーベット氷と成る効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】海水を貯蔵及び殺菌する工程を示す構成図である。
【
図2】海水をシャーベット氷に生成する工程、及びシャーベット氷と残存する海水に分離する工程とを示す構成図である。
【
図3】シャーベット氷を成形加工する工程図である。
【
図4】濃縮された海水を塩製造に利用した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面は本発明の一実施の形態を示す図面であり、
図1は、取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に冷却する工程とを示す構成図である。
図1では、貯蔵タンク1から殺菌室2を通り冷水機3へ到り貯蔵タンク1へ戻る循環路を、送水管と循環ポンプ4Bを介在させて形成している。
【0016】
貯蔵タンク1には給水ポンプ4Aが付設してあり、貯蔵タンク1内には温度の均質を図る撹拌用回転羽根11を装置し、また、殺菌室2内には殺菌灯21を装置して通過する海水の殺菌を行っている。
よって、取水した一定量の海水を貯蔵タンク1に貯蔵し、貯蔵した海水を循環させて殺菌すると共に冷却する作用を奏する。
海水の冷却は3℃程度までにしておけば、次工程のシャーベット氷を生成するのに資するものであり、更なる冷却は貯蔵タンク1に氷が発生し、搬送経路の障碍が心配される。
【0017】
図2は、前記殺菌・冷却した海水を貯蔵タンク1から輸送ポンプ4Cでシャーベット氷発生装置に移送してシャーベット氷を生成する工程と、70%以上のシャーベット氷が生成された段階でシャーベット氷と残存する海水に分離する工程とを示す構成図である。
【0018】
シャーベット氷発生装置は過冷却槽5とシャーベット氷貯留タンク6より成り、一定量の移送した海水を循環ポンプ4Dで循環させ、過冷却槽5で発生させたシャーベット氷をシャーベット氷貯留タンク6内で貯留しておくものである。
シャーベット氷を発生させる過冷却槽5は公知の機から選択可能で、シャーベット氷貯留タンク6内には撹拌用回転羽根61が装置してある。
【0019】
海水は、循環ポンプ4Dによりシャーベット氷貯留タンク6から送水管を経て、過冷却槽5の水路内へ流入して水路内を流動し、この流動中に冷凍機51が供給する冷媒により−2.5℃程度に冷却される。
その結果、海水はシャーベット状の流動氷となり、更に、循環ポンプ4Dによって過冷却槽5から送氷管を経て噴出ノズル(図示せず。)によりシャーベット氷貯留タンク6内へ噴出され、シャーベット氷として浮遊して貯留される。
【0020】
一定量の移送した海水の70%以上のシャーベット氷が生成された段階でシャーベット氷と残存する海水に分離する。
図2においては、上方を解放した上下のタンク7A、7Bを積層して中間に濾過素材71を配設し、上方よりシャーベット氷と残存する海水を投入して上部タンク7Aにシャーベット氷を、下部タンク7Bに残存する海水に分離している。
【0021】
海水の塩分濃度は概ね3%強の重量%であり、70%以上のシャーベット氷が生成された段階では、残存する海水は10重量%以上の塩分濃度を有することになる。
したがって、海水を利用した塩製造における塩の結晶を煮詰めて取り出すための効率の良い塩水の濃縮目安(10重量%)に達しているものである。
また、シャーベット氷と残存する海水に分離する限界としては、撹拌用回転羽根61の回転に支障が生じる前の段階(85%以下)が考えられる。
【0022】
分離されたシャーベット氷は搬送スクリュー72により外部へ取り出し、殺菌された衛生的な氷として成形加工して使用され、他方、濃縮された海水は塩製造に利用されることになる。
図3は、シャーベット氷を成形加工する工程図で示す。
【0023】
搬送スクリュー72により外部へ取り出したシャーベット氷S1は、成型容器8に分配されて圧着手段81で一定の立体形状に成型固着する。
次に、立体形状に成型固着したシャーベット氷塊S2を収容する成型容器8へ真水W1を注入し、シャーベット氷塊S2の周囲表面に真水W1が被着した状態とし、そのまま成型容器8を冷凍庫9に収容し、被着した真水W1が冷凍してシャーベット氷塊S2を真水氷W2が包被する。
【0024】
したがって、成形形態の維持が不安定なシャーベット氷塊S2に比べ、周りを真水氷W2で固めて成形形態を安定維持できる作用を奏するものであり、保存や運搬時にシャーベット氷塊S2が崩れることがなく、又、使用中に表面の真水氷W2が溶ければ容易にシャーベット氷塊S2、更にシャーベット氷S1に戻る作用を奏するものである。
【0025】
図4は、前記シャーベット氷S1と分離し、濃縮された海水を塩製造に利用した工程を示すものであり、煮詰め工程と脱水工程を経て塩を得るものである。
濃縮された海水の塩分濃度は前記の通り、海水の塩分濃度を3%とすれば、70%のシャーベット氷が生成された段階では、残存する海水は10重量%となる。又、85%のシャーベット氷が生成された段階では、残存する海水は20重量%の塩分濃度となり、何れの濃度も従来の海水を利用した製塩方法における海水の濃縮工程を充たしてこととなる。
【0026】
したがって、事後の工程である煮詰め工程と脱水工程を経て塩を効率良く得られるものである。
煮詰め工程は前記下部タンク7Bに分離した濃縮海水を輸送ポンプ4Eより釜101へ溜められバーナー102で沸騰させ水分を蒸発させる。
【0027】
次に、脱水工程に移り、移動グレーン103で釜101より塩出しし、塩溜容器104に移して熱を冷ますと共に、水分を抜いて海水ニガリNを得る。
海水ニガリNは豆腐の製造に利用される。
更に、遠心分離機105で脱水して目的の塩と成るものである。
【0028】
以上、本発明を実施の形態を図面に基づき具体的に説明したが、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の思想を逸脱することない範囲の他の実施の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 貯蔵タンク
2 殺菌室
3 冷水機
4 ポンプ
5 過冷却槽
6 氷貯留タンク
7A、7B タンク
8 成型容器
9 冷凍庫
101 釜
104 塩溜容器
105 遠心分離機
S1 シャーベット氷
S2 シャーベット氷塊
W1 真水
W2 真水氷
【要約】
【課題】海水からシャーベット氷と濃塩分海水を製造する方法、及び前記シャーベット氷を更に加工して保存及び使用を良好にしたシャーベット氷と前記濃塩分海水を利用した塩の製造方法に関する。
【解決手段】取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に冷却する工程と、殺菌すると共に冷却した海水をシャーベット氷発生装置に移してシャーベット氷を生成する工程と、貯蔵した海水の70%以上のシャーベット氷が生成された段階でシャーベット氷と残存する海水に分離する工程とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1