(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明者らは、水添脱硫器の暖機完了後に、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際の問題について鋭意検討し、以下の知見を得た。
【0019】
燃料電池システムでは、暖機完了の順序について、水添脱硫器の暖機が改質器及び燃料電池の暖機に比べて遅い場合、水添脱硫器の暖機完了の前に、燃料電池の発電を開始し、水添脱硫器の暖機完了の後、原料が常温脱硫器を通る経路から、原料が常温脱硫器をバイパスして水添脱硫器を通る経路に切り替える方法がある。また、水添脱硫器の暖機完了を待って、上記の原料供給経路の切り替えを行った後、燃料電池の発電を開始する方法もある。
【0020】
ここで、後者の場合、水添脱硫器の暖機完了時まで燃料電池の発電を行えないので、前者の場合に比べて、システムの起動エネルギーが増加し、燃料電池システムの発電効率が低下するという問題がある。
【0021】
一方、原料とともに水素を水添脱硫器に供給するには、特許文献1の如く、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器の上流の原料供給経路に送る必要がある。このとき、前者の場合、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少する。すると、例えば、燃料電池のアノードにおける燃料利用率が高くなることで燃料電池の電圧低下が生じ、燃料電池システムの信頼性、耐久性が損なわれる可能性がある。
【0022】
そこで、第1実施形態の燃料電池システムは、原料を用いて改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器に供給される原料が流通する原料供給経路と、改質器に供給される原料中の硫黄成分を除去する水添脱硫器と、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器よりも上流の原料供給経路に送るためのリサイクル経路と、水添脱硫器の温度を検出する温度検知器と、制御器と、を備え、制御器は、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達したとき、原料の流量を、所定の流量に対してリサイクルガス相当量を増量した後、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始し、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、原料の流量を所定の流量に戻す制御を行う。
【0023】
また、燃料電池の発電中においては、上記の所定の流量は、燃料電池の所定の発電量に応じた流量である。
【0024】
かかる構成により、本実施形態の燃料電池システムは、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際、リサイクルガス相当量分、改質器に供給する原料の流量が増加する。よって、水添脱硫器の暖機完了後に、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始することにより燃料電池のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少しても、改質反応ガス流量の増量で改質ガスの生成量を増やすことができる。
【0025】
[装置構成]
図1は、第1実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0026】
図1で示す例では、本実施形態の燃料電池システム100は、水添脱硫器10と、改質器11と、燃料電池12と、原料供給経路13と、リサイクル経路14と、温度検知器15と、燃焼器19と、制御器30と、を備える。
【0027】
改質器11は、原料を用いて改質ガスを生成する。具体的には、改質器11において、原料が改質反応して、水素を含有する改質ガスが生成される。改質反応は、いずれの形態であってもよく、例えば、水蒸気改質反応、酸化的水蒸気改質反応(Oxidative Steam Reforming)、オートサーマル反応及び部分酸化反応が例示される。
【0028】
図1には示されていないが、各改質反応において必要となる機器は適宜設けられる。例えば、改質反応が、水蒸気改質反応、酸化的水蒸気改質反応又はオートサーマル反応であれば、改質器に供給する水を蒸発する蒸発器、及び蒸発器に水を供給する水供給器が設けられる。改質反応が、部分酸化反応、酸化的水蒸気改質反応又はオートサーマル反応であれば、燃料電池システム100には、改質器に空気を供給する空気供給器が設けられる。但し、改質器11において酸化的水蒸気改質反応が行われる場合、熱収支の点で改質反応が進行しやすくなり、水蒸気改質反応よりも改質器11を小型化できる点で有利である。よって、かかる酸化的水蒸気改質反応が行われる構成については、第2実施形態にて詳しく説明する。
【0029】
改質器11は、容器に改質触媒が充填される。改質触媒は、例えば、ニッケル、ルテニウム、白金、ならびにロジウムのうち少なくとも一つを含浸したアルミナ担体を用いることができる。なお、改質触媒は、本例に限定されるものではなく、改質触媒を最適な温度範囲に維持した場合に改質反応を進行させ得る触媒であれば、いかなる材料であっても構わない。
【0030】
なお、原料は、LPGガス、プロパンガス、ブタンガス、あるいはメタンを主成分とする都市ガス等の有機化合物を含むガス、灯油、又はアルコール等を用いることができる。灯油又はアルコール等の液体の原料を用いる場合、原料を改質器11に供給する前に、加熱して気化させてもよい。なお、原料は、図示しない原料供給源より供給される。原料供給源は、所定の供給圧を備えており、例えば、原料ボンベ、原料インフラ等が例示される。
【0031】
燃料電池12は、改質ガスを用いて発電する。具体的には、燃料電池12のアノードに改質器11からの改質ガスが供給され、燃料電池12のカソードには外部からの空気が供給される。これにより、燃料電池12は、改質ガス中の水素及び空気中の酸素を用いて発電する。そして、燃料電池12の発電により得られた電力は、図示されない端子を介して外部負荷へと供給される。外部負荷としては、例えば、家庭用の電力消費機器や、業務用の電力消費装置、および携帯電話等の無線基地局を構成する装置が例示される。なお、燃料電池12は、燃料電池12のアノードとカソードとの間で発電反応を行って発電する燃料電池単セルを複数枚、直列接続した構成となっている。
【0032】
燃料電池12としては、いずれの種類であっても良く、例えば、高分子電解質形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、及び燐酸形燃料電池等が例示される。なお、燃料電池12が、固体酸化物形燃料電池の場合は、改質器11と燃料電池12とが1つの容器内に内蔵されるように構成されてもよい。
【0033】
原料供給経路13は、改質器11に供給される原料が流通する。原料供給経路13には、適宜の原料供給器及び流量検知器(いずれも図示せず)が配されている。原料供給器は、改質器11へ供給する原料の流量を調整する機器であり、例えば、昇圧器と流量調整弁により構成されるが、これらのいずれか一方により構成されてもよい。昇圧器は、例えば、定容積型ポンプが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
水添脱硫器10は、改質器11に供給される原料中の硫黄成分を除去する。水添脱硫器10は、容器に水添脱硫剤が充填される。水添脱硫剤は、例えば、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能を共に有するCuZn系触媒が用いられる。水添脱硫剤は、本例に限定されるものではなく、原料中の硫黄化合物を硫化水素に変換するCoMo系触媒と、その下流に設けられる、硫化水素を吸着除去する硫黄吸着剤であるZnO系触媒、又はCuZn系触媒とで構成してもよい。
【0035】
なお、水添脱硫剤が銅及び亜鉛を含む場合、水添脱硫器10は約150℃〜350℃が適温の動作範囲となる。
【0036】
リサイクル経路14は、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器10よりも上流の原料供給経路13に送るための流路である。リサイクル経路14の上流端は、改質器11より送出された水素を含有するガスが流れる流路であれば、いずれの箇所に接続されていても構わない。また、
図1には示されていないが、リサイクル経路14において必要となる機器は適宜設けられる。例えば、リサイクル経路14に、昇圧器、開閉弁及び凝縮器等を設けても構わない。昇圧器は、例えば、定容積型ポンプが用いられ、リサイクル経路を流れるリサイクルガスを昇圧し、リサイクルガスの流量を調整する。凝縮器は、例えば、熱交換器が用いられ、リサイクルガス中の水蒸気を熱交換により凝縮し、リサイクルガスから水蒸気を除去する。
【0037】
温度検知器15は、水添脱硫器10の温度を検知する。温度検知器15は、水添脱硫器10の温度を直接的又は間接的に検知できれば、どのような構成であっても構わない。つまり、水添脱硫器10内に温度検知器15を設け、水添脱硫器10の温度を直接的に検知しても構わないし、水添脱硫器10の温度と相関する所定の箇所(例えば、原料供給経路13を形成する配管又は改質器11等)に温度検知器15を設け、水添脱硫器10の温度を間接的に検知しても構わない。本実施形態では、水添脱硫器10内に、温度検知器15が配されている。温度検知器15として、例えば、熱電対又はサーミスタが例示される。
【0038】
なお、水添脱硫剤に、触媒金属としてニッケル(Ni)を含む場合がある。この場合、水添脱硫器10の暖機前の低温時(例えば、150℃未満)に、原料及びリサイクルガスを水添脱硫剤に供給すると、ニッケルカルボニルガスが生成する恐れがある。しかし、本実施形態では、上記のとおり、温度検知器15を用いて水添脱硫器10内の水添脱硫剤の温度が検知されているので、かかるニッケルカルボニルガスが生成することを適切に回避できる。
【0039】
燃焼器19は、水素を含有する改質ガスを燃焼する。燃焼器19の燃料は、いずれの燃料であってもよい。例えば、燃焼燃料として、燃料電池12により排出されるアノードオフガスを用いても構わない。この場合、燃焼器19には、燃料電池12のアノードよりアノードオフガスが送られ、燃料電池12のカソードよりカソードオフガスが送られる。そして、これらのアノードオフガス及びカソードオフガスの燃焼で燃焼排ガスが生成されて、燃焼器19の燃焼熱及び燃焼排ガスの熱を用いて水添脱硫器10及び改質器11等が加熱される。
【0040】
制御器30は、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達したとき、改質器11に供給する原料の流量を、所定の流量に対してリサイクルガス相当量を増量した後、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始し、リサイクルガスが、原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に到達した後に、上記の原料の流量を所定の流量に戻す制御を行う。
【0041】
制御器30は、制御機能を有するものであれば、どのような構成でも構わない。制御器30は、例えば、演算処理部と、制御プログラムを記憶する記憶部とを備える。演算処理部としては、例えば、MPU、CPUが例示される。記憶部としては、例えば、メモリーが例示される。制御器30は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていても構わないし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていても構わない。
【0042】
以上により、本実施形態の燃料電池システム100は、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、リサイクルガス相当量分、改質器11に供給する原料の流量が増加する。よって、水添脱硫器10の暖機完了後に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始することにより燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少しても、改質反応ガス流量の増量で改質ガスの生成量を増やすことができる。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態の燃料電池システムは、第1実施形態の燃料電池システムにおいて、改質器に供給する水を蒸発する蒸発器と、蒸発器に水を供給する水供給器と、を備え、改質器は、水蒸気及び原料を用いて改質ガスを生成し、制御器は、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達したとき、水の流量を、所定の流量に対してリサイクルガス相当量を増量した後、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始し、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、水の流量を所定の流量に戻す制御を行う。
【0044】
また、燃料電池の発電中においては、上記の所定の流量は、燃料電池の所定の発電量に応じた流量である。
【0045】
かかる構成により、本実施形態の燃料電池システムでは、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際、リサイクルガス相当量分、改質器に供給する水の流量が増加する。よって、水添脱硫器の暖機完了後に、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始することにより燃料電池のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少しても、改質反応ガス流量の増量で改質ガスの生成量を増やすことができる。
【0046】
本実施形態の燃料電池システムは、上記特徴以外は、第1実施形態の燃料電池システムと同様に構成してもよい。
【0047】
[装置構成]
図2は、第2実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0048】
図2に示す例では、本実施形態の燃料電池システム100は、水添脱硫器10と、改質器11と、燃料電池12と、原料供給経路13と、リサイクル経路14と、温度検知器15と、蒸発器16と、水供給器17と、空気供給器18と、燃焼器19と、制御器30と、を備える。
【0049】
水添脱硫器10、燃料電池12、原料供給経路13、温度検知器15、燃焼器19及びリサイクル経路14については第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0050】
蒸発器16は、改質器11に供給する水を蒸発する。蒸発器16は、改質器11に供給する水を蒸発できれば、どのような構成であっても構わない。蒸発器16として、例えば、高温の加熱流体との熱交換により水を気化し得る熱交換器が例示される。
【0051】
水供給器17は、蒸発器16に水を供給する。水供給器17は、蒸発器16に水を供給できれば、どのような構成であっても構わない。水供給器17は、蒸発器16へ供給する改質反応用の水の流量を調整する機器であり、例えば、昇圧器と流量調整弁により構成される。昇圧器は、例えば、定容積型ポンプが用いられるが、これに限定されるものではない。また、水供給器17から蒸発器16に水を送る経路には、適宜の流量検知器が配されている。
【0052】
空気供給器18は、改質器11に空気を供給する。空気供給器18は、改質器11に空気を供給できれば、どのような構成であっても構わない。空気供給器18は、改質器11へ供給する改質反応用の空気の流量を調整する機器であり、例えば、昇圧器と流量調整弁により構成される。昇圧器は、例えば、定容積型ポンプが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
このようにして、改質器11は、水蒸気及び原料を用いて改質ガスを生成する。本実施形態では、改質器11に水蒸気、空気及び原料が供給され、これにより、改質器11において酸化的水蒸気改質反応が行われる。
【0054】
制御器30は、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達したとき、改質器11に送る水の流量を、所定の流量に対してリサイクルガス相当量を増量した後、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始し、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、水の流量を所定の流量に戻す制御を行う。
【0055】
以上により、本実施形態の燃料電池システム100は、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、リサイクルガス相当量分、改質器11に供給する水の流量が増加する。よって、水添脱硫器10の暖機完了後に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始することにより燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少しても、改質反応ガス流量の増量で改質ガスの生成量を増やすことができる。
【0056】
なお、改質器11において部分酸化反応が行われる場合は、改質器11に水蒸気を供給しないので、上記の水の流量調整に代えて、改質器11に供給する空気の流量を調整するとよい。
【0057】
(第1実施例)
[装置構成]
本実施例の燃料電池システム100は、
図1又は
図2と同様の構成である。構成については第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
[動作]
図3は、第2実施形態の第1実施例の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0059】
本実施例では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも早い場合、例えば、燃料電池システム100の起動中であって、燃料電池12の発電開始前に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0060】
まず、ステップS1で、水添脱硫器10の温度が所定の温度以上か否かが判定される。例えば、水添脱硫剤が銅及び亜鉛を含む場合、水添脱硫器10は約150℃〜350℃が適温の動作範囲となる。よって、この場合、ステップS1の所定の温度は、例えば、180℃に設定される。
【0061】
水添脱硫器10の温度が所定の温度未満の場合、改質器11に供給する改質水の流量及び改質器11に供給する原料の流量を変更せずに、そのままの状態を維持する。
【0062】
一方、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達すると、次のステップに進み、ステップS2で、改質器11に供給する改質水の流量を、所定の改質水流量に対してリサイクルガス相当量を増量する。また、ステップS3で、改質器11に供給する原料の流量を、所定の原料流量に対してリサイクルガス相当量を増量する。
【0063】
例えば、所定原料流量(2.1NL/min)とすると、リサイクルガスは、改質ガスの10%(2.5-20%の範囲内とする)を狙って運転するため、所定原料流量を10%多い、0.21NL/min程度の改質原料流量を増量する。それとともに所定改質水流量(例えば、S/C=2.5相当量とした場合、4.9cc/min)より10%多い量(0.49cc/min)を増量する。
【0064】
その後、ステップS4で、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する。これにより、水添脱硫器10へと向かう原料に水素を添加できるので、水添脱硫器10は、この水素を利用して原料の水添脱硫を行うことができる。
【0065】
以上のステップS2−ステップS4の動作は以下の理由で行われる。
【0066】
リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、改質ガスの一部が、リサイクル経路14の上流端から水添脱硫器10に還流するのに伴い、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少する。すると、燃料電池12より排出されるアノードオフガスの流量も一時的に減少する。このため、燃料電池12からのアノードオフガスの燃焼器19への供給量が減り、燃料電池12のカソードより排出されるカソードオフガスとの間の燃焼の最適の流量比がくずれ、燃焼器19の燃焼性が悪化する可能性がある。また、燃焼器19の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、更には、燃焼器19の失火に至る可能性もある。
【0067】
そこで、本実施形態では、上記のとおり、改質器11に供給する改質水の流量を、所定の改質水流量に対してリサイクルガス相当量を増量している。また、改質器11に供給する原料の流量を、所定の原料流量に対してリサイクルガス相当量を増量している。そして、その後、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始している。このため、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、改質器11における改質ガスの生成量が増え、これにより、改質器11から燃料電池12への改質ガスの供給量が増える。よって、従来に比べ、アノードオフガスの燃焼器19への供給量減少が抑制され、燃焼器19の燃焼性悪化、燃焼器19の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、燃焼器19の失火等の可能性を低減できる。その結果、燃料電池システム100の安定的な運転を行い得る。
【0068】
次に、ステップS5で、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始した時から所定時間が経過したか否かが判定される。
【0069】
この所定時間は、例えば、リサイクルガスが、リサイクル経路14及び原料供給経路13を経て、リサイクル経路14の上流端に到達したと想定される時間に設定される。本時間は、例えば、リサイクルガスの流量、リサイクル経路14及び原料供給経路13の経路断面積、及びリサイクル経路14の上流端から原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に再び至るまでの経路長を用いて導き得る。
【0070】
ステップS5の所定時間が経過するまでは、改質器11に供給する改質水の流量及び改質器11に供給する原料の流量を変更せずに、そのままの状態を維持する。
【0071】
一方、ステップS5の所定時間が経過すると、次のステップに進み、ステップS6で、改質器11に供給する原料の流量を、上記の所定の原料流量に戻すように減量する。また、ステップS7で、改質器11に供給する改質水の流量を、上記の所定の改質水流量に戻すように減量する。
【0072】
例えば、上記の例の場合、所定改質水流量より増量した分(0.49g/min)を、増量前の所定改質水流量に戻す。また、所定原料流量より増量した分(0.21NL/min)を、増量前の所定原料流量(2.1L/min)に戻す。
【0073】
以上のステップS6及びステップS7の動作は以下の理由により行われる。
【0074】
リサイクルガスが、リサイクル経路14及び原料供給経路13を経て、リサイクル経路14の上流端に到達したと想定される時間経過後は、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少を解消していると判断できる。よって、この場合、改質器11に供給する原料の流量を、上記の所定の原料流量に戻すように減量でき、改質器11に供給する改質水の流量を、上記の所定の改質水流量に戻すように減量できる。
【0075】
なお、ステップS1の水添脱硫器10の温度、及びステップS5の所定時間の導出方法は例示であって、本例に限定されない。
【0076】
(第2実施例)
[装置構成]
本実施例の燃料電池システム100は、
図1又は
図2と同様の構成である。構成については第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0077】
[動作]
図4は、第2実施形態の第2実施例の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0078】
本実施例では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも遅い場合、例えば、燃料電池システム100の発電中であって、燃料電池12の定格運転が行われる場合に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0079】
まず、ステップS1で、水添脱硫器10の温度が所定の温度以上か否かが判定される。例えば、水添脱硫剤が銅及び亜鉛を含む場合、水添脱硫器10は約150℃〜350℃が適温の動作範囲となる。よって、この場合、ステップS1の所定の温度は、例えば、180℃に設定される。
【0080】
水添脱硫器10の温度が所定の温度未満の場合、改質器11に供給する改質水の流量及び改質器11に供給する原料の流量を変更せずに、そのままの状態を維持する。
【0081】
一方、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達すると、次のステップに進み、ステップS2で、改質器11に供給する改質水の流量を、燃料電池12の所定の発電量に応じた改質水流量に対してリサイクルガス相当量を増量する。また、ステップS3で、改質器11に供給する原料の流量を、燃料電池12の所定の発電量に応じた原料流量に対してリサイクルガス相当量を増量する。
【0082】
その後、ステップS4で、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する。これにより、水添脱硫器10へと向かう原料に水素を添加でき、その結果、水添脱硫器10は、この水素を利用して原料の水添脱硫を行うことができる。
【0083】
以上のステップS2−ステップS4の動作は、第1実施例で説明した理由の他、以下の理由でも行われる。
【0084】
リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、改質ガスの一部が、リサイクル経路14の上流端から水添脱硫器10に還流するのに伴い、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの流量が一時的に減少する。すると、燃料電池12のアノードでの燃料利用率が高くなり、反応に必要な燃料不足に至るか、アノードでの燃料ガス拡散律速状態となる。その結果、燃料電池12の電極反応抵抗である過電圧が上昇し、ひいては、燃料電池12での電圧低下に至る。かかる状況においては、燃料電池12の燃料利用率が更に高くなると、アノード材料のニッケルが酸化される可能性がある。このとき、アノードが膨張してアノードに応力が発生するため、破損する恐れがある。その後、燃料ガス拡散律速状態から通常運転状態に戻ると、酸化ニッケルがニッケルに還元される。かかるアノードの膨張及び収縮が繰り返されると、アノードに繰り返しの応力が働き、アノードの破損が進行する可能性がある。このようにして、アノードの耐久性が低下すると考えられる。
【0085】
そこで、本実施形態では、上記のとおり、改質器11に供給する改質水の流量を、燃料電池12の所定の発電量に応じた改質水流量に対してリサイクルガス相当量を増量している。また、改質器11に供給する原料の流量を、燃料電池12の所定の発電量に応じた原料流量に対してリサイクルガス相当量を増量している。そして、その後、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始している。このため、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、改質器11における改質ガスの生成量が増え、これにより、改質器11から燃料電池12への改質ガスの供給量が増える。よって、燃料電池12のアノードでの燃料利用率の上昇を抑制できるので、従来に比べ、燃料電池12での電圧低下が抑制され、アノードの破損が進行する可能性を低減できる。
【0086】
次に、ステップS5で、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始した時から所定時間が経過したか否かが判定される。
【0087】
この所定時間は、例えば、リサイクルガスが、リサイクル経路14及び原料供給経路13を経て、リサイクル経路14の上流端に到達したと想定される時間に設定される。本時間は、例えば、リサイクルガスの流量、リサイクル経路14及び原料供給経路13の経路断面積、及びリサイクル経路14の上流端から原料供給経路13を経てリサイクルガス経路14の上流端に再び至るまでの経路長を用いて導き得る。
【0088】
ステップS5の所定時間が経過するまでは、改質器11に供給する改質水の流量及び改質器11に供給する原料の流量を変更せずに、そのままの状態を維持する。
【0089】
一方、ステップS5の所定時間が経過すると、次のステップに進み、ステップS6で、改質器11に供給する原料の流量を、上記の発電量に応じた原料流量に戻すように減量する。また、ステップS7で、改質器11に供給する改質水の流量を、上記の発電量に応じた改質水流量に戻すように減量する。
【0090】
以上のステップS6及びステップS7の動作は以下の理由により行われる。
【0091】
リサイクルガスが、リサイクル経路14及び原料供給経路13を経て、リサイクル経路14の上流端に到達したと想定される時間経過後は、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少を解消していると判断できる。よって、この場合、改質器11に供給する原料の流量を、上記の発電量に応じた原料流量に戻すように減量でき、改質器11に供給する改質水の流量を、上記の発電量に応じた改質水流量に戻すように減量できる。
【0092】
なお、ステップS1の水添脱硫器10の温度、及びステップS5の所定時間の導出方法は例示であって、本例に限定されない。
【0093】
(第3実施形態)
第3実施形態の燃料電池システムは、原料を用いて改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器に供給される原料が流通する原料供給経路と、改質器に供給される原料中の硫黄成分を除去する水添脱硫器と、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器よりも上流の原料供給経路に送るためのリサイクル経路と、水添脱硫器の温度を検知する温度検知器と、制御器と、を備え、制御器は、燃料電池の発電中において、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達する前は、外部負荷に電力を供給することがないよう、燃料電池の発電量を燃料電池システムの駆動に必要な消費電力と同等、または、消費電力よりも少ない量を維持する制御を行い、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、燃料電池の発電量を外部負荷に電力を供給することが可能な量に戻す制御を行う。
【0094】
燃料電池システムの運転において、燃料電池の発電量が燃料電池システムの駆動に必要な消費電力と同等、または、消費電力よりも少ない量の場合、燃料電池の温度維持のため燃料利用率が低くなるように制御する。よって本実施形態ではリサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池システムの運転を燃料電池の発電量が燃料電池システムの駆動に必要な消費電力と同等、または、消費電力より少ない量で維持することにより、燃料電池の燃料利用率の上昇を許容範囲内に抑制できる。
【0095】
なお、本実施形態の燃料電池システムの上記特徴は、第1実施形態又は第2実施形態の燃料電池システムの特徴と組合せて用いてもよい。
【0096】
[装置構成]
本実施形態の燃料電池システム100は、
図1又は
図2と同様の構成である。構成については第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0097】
[動作]
図5は、第3実施形態の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0098】
本実施形態では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも遅い場合、例えば、燃料電池システム100の発電中であって、燃料電池12の定格運転が行われる場合に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0099】
まず、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達する前は(つまり、水添脱硫器10の暖機が完了する前は)、ステップS8で、外部負荷に電力を供給することがないよう、燃料電池12の発電量を燃料電池システム100の駆動に必要な消費電力と同等、又は本消費電力よりも少ない量を維持する制御が行われる。そして、リサイクルガスが、原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に到達した後に、ステップS9で、燃料電池12の発電量を外部負荷に電力を供給することが可能な量に戻す制御が行われる。
【0100】
なお、本実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作は、第2実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作と同様であるので説明を省略する。
【0101】
燃料電池システム100の運転において、燃料電池12の発電量が燃料電池システム100の駆動に必要な消費電力と同等、または、消費電力よりも少ない量の場合、燃料電池12の温度維持のため燃料利用率が低くなるように制御する。よって本実施形態ではリサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池システム100の運転を燃料電池12の発電量が燃料電池システム100の駆動に必要な消費電力と同等、または、消費電力より少ない量で維持することにより、燃料電池12の燃料利用率の上昇を許容範囲内に抑制できる。
【0102】
なお、本実施形態の動作に、第1実施形態の動作、第2実施形態の第1実施例の動作、又は第2実施形態の第2実施例の動作を組合せても構わない。例えば、
図5のステップS1とステップS4の間に、
図3又は
図4のステップS2及びステップS3を設け、
図5のステップS5とステップS9の間に、
図3又は
図4のステップS6及びステップS7を設けても構わない。これにより、本実施形態においても、第2実施形態の第1実施例と同様に、アノードオフガスの燃焼器19への供給量減少が抑制され、燃焼器19の燃焼性悪化、燃焼器19の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、燃焼器19の失火等の可能性を低減できる。また、第2実施形態の第2実施例と同様に、燃料電池12での電圧低下が抑制され、アノードの破損が進行する可能性を低減できる。
【0103】
(第4実施形態)
第4実施形態の燃料電池システムは、原料を用いて改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器に供給される原料が流通する原料供給経路と、改質器に供給される原料中の硫黄成分を除去する水添脱硫器と、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器よりも上流の原料供給経路に送るためのリサイクル経路と、水添脱硫器の温度を検知する温度検知器と、制御器と、を備え、制御器は、燃料電池の発電中において、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達する前は、燃料電池の発電量を燃料電池システムの定格運転の出力よりも低い量に維持する制御を行い、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、燃料電池の発電量を燃料電池システムの定格運転の出力が可能な量に戻す制御を行う。
【0104】
燃料電池システムの低出力運転では、燃料電池システムの定格運転に比べ、燃料電池の燃料利用率が低くなるように制御する。よって、本実施形態では、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池システムを低出力運転で維持することにより、燃料電池の燃料利用率の上昇を許容範囲内に抑制できる。
【0105】
なお、本実施形態の燃料電池システムの上記特徴は、第1実施形態又は第2実施形態の燃料電池システムの特徴と組合せて用いてもよい。
【0106】
[装置構成]
本実施形態の燃料電池システム100は、
図1又は
図2と同様の構成である。構成については第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0107】
[動作]
図6は、第4実施形態の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0108】
本実施形態では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも遅い場合、例えば、燃料電池システム100の発電中であって、燃料電池システム100の起動時の発電量上昇動作が行われる場合に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0109】
まず、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達する前は(つまり、水添脱硫器10の暖機が完了する前は)、ステップS10で、燃料電池12の発電量を燃料電池システム100の定格運転の出力よりも低い量に維持する制御が行われる。例えば、燃料電池12の発電量について、燃料電池システム100の定格運転の出力(例えば、700W)よりも低い量(例えば、200W)以内に制限する制御を行う。そして、リサイクルガスが、原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に到達した後に、ステップS11で、燃料電池12の発電量を燃料電池システム100の定格運転の出力が可能な量に戻す制御が行われる。例えば、燃料電池12の発電量について、上記の制限を解除し、燃料電池システム100の上記通常の定格運転の出力(例えば、700W)を可能とする制御を行う。
【0110】
なお、本実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作は、第2実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作と同様であるので説明を省略する。
【0111】
燃料電池システム100の低出力運転では、燃料電池システム100の定格運転に比べ、燃料電池12の燃料利用率が低くなるように制御する。よって、本実施形態では、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池システム100を低出力運転で維持することにより、燃料電池12の燃料利用率の上昇を許容範囲内に抑制できる。
【0112】
なお、本実施形態の動作に、第1実施形態の動作、第2実施形態の第1実施例の動作、又は第2実施形態の第2実施例の動作を組合せても構わない。例えば、
図6のステップS1とステップS4の間に、
図3又は
図4のステップS2及びステップS3を設け、
図6のステップS5とステップS11の間に、
図3又は
図4のステップS6及びステップS7を設けても構わない。これにより、本実施形態においても、第2実施形態の第1実施例と同様に、アノードオフガスの燃焼器19への供給量減少が抑制され、燃焼器19の燃焼性悪化、燃焼器19の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、燃焼器19の失火等の可能性を低減できる。また、第2実施形態の第2実施例と同様に、燃料電池12での電圧低下が抑制され、アノードの破損が進行する可能性を低減できる。
【0113】
なお、ステップS10及びステップS11の燃料電池12の発電量は例示であって、本例に限定されない。
【0114】
(第5実施形態)
第5実施形態の燃料電池システムは、原料を用いて改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器に供給される原料が流通する原料供給経路と、改質器に供給される原料中の硫黄成分を除去する水添脱硫器と、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器よりも上流の原料供給経路に送るためのリサイクル経路と、水添脱硫器の温度を検知する温度検知器と、制御器と、を備え、制御器は、燃料電池の発電中において、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達する前は、燃料電池の発電量の上昇速度を所定の上昇速度よりも小さくする制御を行い、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、燃料電池の発電量の上昇速度を所定の上昇速度に戻す制御を行う。
【0115】
かかる構成により、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池の発電量の上昇速度を小さくすることで、燃料電池のアノードでの燃料の反応を抑制できる。これにより、燃料電池の燃料利用率の上昇を許容範囲内に抑制できる。
【0116】
なお、本実施形態の燃料電池システムの上記特徴は、第1実施形態又は第2実施形態の燃料電池システムの特徴と組合せて用いてもよい。
【0117】
[装置構成]
本実施形態の燃料電池システム100は、
図1又は
図2と同様の構成である。構成については第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0118】
[動作]
図7は、第5実施形態の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0119】
本実施形態では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも遅い場合、例えば、燃料電池システム100の発電中であって、燃料電池システム100の起動時の発電量上昇動作が行われる場合に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0120】
まず、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達する前は(つまり、水添脱硫器10の暖機が完了する前は)、ステップS12で、燃料電池12の発電量の上昇速度を所定の上昇速度よりも小さくする制御が行われる。例えば、燃料電池12の発電量の上昇速度について、通常の発電量上昇速度(例えば、0.5A/分)よりも小さい値(例えば、0.2A/分)にする制御を行う。そして、リサイクルガスが、原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に到達した後に、ステップS13で、燃料電池12の発電量の上昇速度を、上記所定の上昇速度に戻す制御が行われる。例えば、燃料電池12の発電量の上昇速度について、通常の発電量上昇速度(例えば、0.5A/分)に戻す制御を行う。
【0121】
なお、本実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作は、第2実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作と同様であるので説明を省略する。
【0122】
以上により、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際、燃料電池12の発電量の上昇速度を小さくすることで、燃料電池12のアノードでの燃料の反応を抑制できる。これにより、燃料電池12の燃料利用率の上昇を許容範囲内に抑制できる。
【0123】
なお、本実施形態の動作に、第1実施形態の動作、第2実施形態の第1実施例の動作、又は第2実施形態の第2実施例の動作を組合せても構わない。例えば、
図7のステップS1とステップS4の間に、
図3又は
図4のステップS2及びステップS3を設け、
図7のステップS5とステップS13の間に、
図3又は
図4のステップS6及びステップS7を設けても構わない。これにより、本実施形態においても、第2実施形態の第1実施例と同様に、アノードオフガスの燃焼器19への供給量減少が抑制され、燃焼器19の燃焼性悪化、燃焼器19の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、燃焼器19の失火等の可能性を低減できる。また、第2実施形態の第2実施例と同様に、燃料電池12での電圧低下が抑制され、アノードの破損が進行する可能性を低減できる。
【0124】
なお、ステップS12及びステップS13の燃料電池12の発電量の上昇速度は例示であって、本例に限定されない。
【0125】
(第6実施形態)
第6実施形態の燃料電池システムは、第1実施形態、第2実施形態、第2実施形態の第1−第2実施例及び第3−第5実施形態のいずれかの燃料電池システムにおいて、原料中の硫黄成分を常温で除去する常温脱硫器と、常温脱硫器の上流の原料供給経路から分岐し、常温脱硫器と水添脱硫器との間の原料供給経路に合流する分岐経路と、分岐経路上に配された第1遮断器と、分岐経路との間の分岐部よりも下流の原料供給経路であって、分岐経路との間の合流部よりも上流の原料供給経路上に配された第2遮断器と、を備え、制御器は、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達する前は、原料が常温脱硫器を流通するように第1遮断器及び第2遮断器を制御し、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、第1遮断器を開いてから所定時間が経過したとき、第2遮断器を閉じる制御を行う。
【0126】
かかる構成により、水添脱硫器の暖機が完了するまでは、常温脱硫器により原料中の硫黄成成分を除去できる。
【0127】
また、第1遮断器及び第2遮断器の開閉制御を同時に行うと、原料供給経路を流れる原料の流量が一時的に低下する恐れがある。この場合、燃料電池のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少という問題が生じる可能性があるが、本実施形態では、第1遮断器を開く制御が第2遮断器を閉じる制御に先行して行われるので、このような可能性を抑制できる。
【0128】
本実施形態の燃料電池システムは、上記特徴以外は、第1実施形態、第2実施形態、第2実施形態の第1−第2実施例及び第3−第5実施形態のいずれかの燃料電池システム燃料電池システムと同様に構成してもよい。
【0129】
[装置構成]
図8は、第6実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0130】
図8に示す例では、本実施形態の燃料電池システム100は、水添脱硫器10と、改質器11と、燃料電池12と、原料供給経路13と、リサイクル経路14と、温度検知器15と、燃焼器19と、常温脱硫器20と、分岐経路21と、第1遮断器22と、第2遮断器23と、制御器30と、を備える。
【0131】
水添脱硫器10、改質器11、燃料電池12、原料供給経路13、リサイクル経路14、温度検知器15及び燃焼器19については第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0132】
常温脱硫器20は、原料中の硫黄成分を常温で除去する。ここで、常温とは、水添脱硫器10の使用温度に比べ相対的に常温域に近いことから使用しており、常温域から使用脱硫剤が脱硫剤として有効に機能する温度までを含む意味である。
【0133】
分岐経路21は、常温脱硫器20の上流の原料供給経路13から分岐し、常温脱硫器20と水添脱硫器10との間の原料供給経路13に合流する。
【0134】
第1遮断器22は、分岐経路21上に配されている。第1遮断器22は、分岐経路21を連通及び遮断できれば、どのような構成であっても構わない。第1遮断器22として、例えば、開閉弁が例示される。
【0135】
第2遮断器23は、分岐経路21との間の分岐部よりも下流の原料供給経路13であって、分岐経路21との間の合流部よりも上流の原料供給経路13上に配されている。第2遮断器23は、上記の原料供給経路13を連通及び遮断できれば、どのような構成であっても構わない。第2遮断器23として、例えば、開閉弁が例示される。
【0136】
制御器30は、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達する前は、原料が常温脱硫器20を流通するように第1遮断器22及び第2遮断器23を制御し、リサイクルガスが、原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に到達した後に、第1遮断器22を開いてから所定時間が経過したとき、第2遮断器23を閉じる制御を行う。
【0137】
なお、本例では、第1実施形態の燃料電池システム100に、常温脱硫器20を配する例を述べたが、かかる常温脱硫器を第2実施形態、第2実施形態の第1−第2実施例及び第3−第5実施形態のいずれかの燃料電池システム100に配しても構わない。
【0138】
[動作]
図9は、第6実施形態の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0139】
まず、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達する前は(つまり、水添脱硫器10の暖機が完了する前は)、原料が常温脱硫器20を流通するように第1遮断器22及び第2遮断器が制御される。例えば、第1遮断器22を閉めるとともに(ステップS21)、第2遮断器23を開くとよい(ステップS22)。これにより、水添脱硫器10の暖機が完了するまでは、常温脱硫器20により原料中の硫黄成成分を除去できる。
【0140】
また、リサイクルガスが燃料電池12のアノードに到達した後に、ステップS23で、第1遮断器22を開き、その後、ステップS24で所定時間が経過したか否かが判定される。
【0141】
この所定時間は、例えば、原料供給経路13から分流した原料が、分岐経路21を流通して再び原料供給経路13に到達したと想定される時間に設定される。本時間は、例えば、分岐経路21を流れる原料の流量、分岐経路21の経路断面積及び経路長を用いて導き得る。
【0142】
ステップS24の所定時間が経過するまでは、第2遮断器23を開いた状態のままに維持する。一方、ステップS24の所定時間が経過すると、次のステップに進み、ステップS25で第2遮断器23を閉じる。
【0143】
以上のステップS23−ステップS25の動作は以下の理由により行われる。
【0144】
第1遮断器22及び第2遮断器23の開閉制御を同時に行うと、原料供給経路13を流れる原料の流量が一時的に低下する恐れがある。この場合、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少という問題が生じる可能性があるが、本実施形態では、第1遮断器22を開く制御が第2遮断器23を閉じる制御に先行して行われるので、このような可能性を抑制できる。
【0145】
なお、ステップS24の所定時間の導出方法は例示であって、本例に限定されない。
【0146】
また、本実施形態のステップS1−ステップS7の動作は、第2実施形態の第1実施例又は第2実施例のステップS1−ステップS7の動作と同様であるので説明を省略する。
【0147】
(第7実施形態)
第7実施形態の燃料電池システムは、原料を用いて改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器に供給される原料が流通する原料供給経路と、改質器に供給される原料中の硫黄成分を除去する水添脱硫器と、改質ガスの一部をリサイクルガスとして、水添脱硫器よりも上流の原料供給経路に送るためのリサイクル経路と、水添脱硫器の温度を検出する温度検知器と、制御器と、を備え、制御器は、燃料電池の発電中において、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達したとき、燃料電池から取り出す電流を燃料電池の所定の発電量に応じた電流よりも低くした後、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始し、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、燃料電池から取り出す電流を所定の発電量に応じた電流に戻す制御を行う。
【0148】
かかる構成により、水添脱硫器の暖機が完了した後、燃料電池から取り出す電流を一時的に下げることで、燃料電池のアノードの燃料利用率を低くできる。よって、リサイクル経路へリサイクルガスの送出を開始する際に、改質器から燃料電池への改質ガスの供給量を増やさずに、従来に比べ、燃料電池からのアノードオフガスの燃焼器への供給量減少が抑制され、燃焼器の燃焼性悪化、燃焼器の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、燃焼器の失火等の可能性を低減できる。また、従来に比べ、燃料電池での電圧低下が抑制され、アノードの破損が進行する可能性を低減できる。
【0149】
[装置構成]
本実施形態の燃料電池システム100は、
図1又は
図2と同様の構成である。構成については第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0150】
[動作]
図10は、第7実施形態の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0151】
本実施形態では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも遅い場合、例えば、燃料電池システム100の発電中であって、燃料電池12の定格運転が行われる場合に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0152】
まず、ステップS1で、水添脱硫器10の温度が所定の温度以上か否かが判定される。例えば、水添脱硫剤が銅及び亜鉛を含む場合、水添脱硫器10は約150℃〜350℃が適温の動作範囲となる。よって、この場合、ステップS1の所定の温度は、例えば、180℃に設定される。
【0153】
水添脱硫器10の温度が所定の温度未満の場合、燃料電池12から取り出す電流(燃料電池12の発電電流)を変更せずに、そのままの状態を維持する。
【0154】
一方、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達すると、次のステップに進み、ステップS30で、燃料電池12の発電電流を燃料電池12の所定の発電量に応じた電流よりも低くする制御が行われる。例えば、燃料電池12の発電電流について、燃料電池12の所定の発電量に応じた電流よりも、リサイクルガス相当量の発電量に対応する電流(例えば、所定の発電量に応じた電流の約3%)分、低くする制御を行う。
【0155】
その後、ステップS4で、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する。これにより、水添脱硫器10へと向かう原料に水素を添加でき、その結果、水添脱硫器10は、この水素を利用して原料の水添脱硫を行うことができる。
【0156】
以上のステップS30及びステップS4の動作は以下の理由で行われる。
【0157】
水添脱硫器10の暖機が完了した後、燃料電池12から取り出す電流を一時的に下げることで、燃料電池12のアノードの燃料利用率を低くできる。よって、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する際に、改質器11から燃料電池12への改質ガスの供給量を増やさずに、燃料電池12からのアノードオフガスの燃焼器19への供給量減少が抑制され、燃焼器19の燃焼性悪化、燃焼器19の燃焼排ガス中の一酸化炭素濃度の上昇、燃焼器19の失火等の可能性を低減できる。また、燃料電池12での電圧低下が抑制され、アノードの破損が進行する可能性を低減できる。
【0158】
次に、ステップS5で、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始した時から所定時間が経過したか否かが判定される。
【0159】
この所定時間は、例えば、リサイクルガスが、リサイクル経路14及び原料供給経路13を経て、リサイクル経路14の上流端に到達したと想定される時間に設定される。本時間は、例えば、リサイクルガスの流量、リサイクル経路14及び原料供給経路13の経路断面積、及びリサイクル経路14の上流端から原料供給経路13を経てリサイクル経路14の上流端に再び至るまでの経路長を用いて導き得る。
【0160】
ステップS5の所定時間が経過するまでは、燃料電池12の発電電流を変更せずに、そのままの状態を維持する。
【0161】
一方、ステップS5の所定時間が経過すると、次のステップに進み、ステップS31で、燃料電池12の発電電流を燃料電池12の所定の発電量に応じた電流に戻す制御が行われる。
【0162】
以上のステップS31の動作は以下の理由により行われる。
【0163】
リサイクルガスが、リサイクル経路14及び原料供給経路13を経て、燃料電池12のアノードに到達したと想定される時間経過後は、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少を解消していると判断できる。よって、この場合、燃料電池12の発電電流を、燃料電池12の所定の発電量に応じた電流、つまり、通常の運転状態に対応する電流に戻すことができる。
【0164】
なお、ステップS1の水添脱硫器10の温度、ステップS30の電流、及びステップS5の所定時間の導出方法は例示であって、本例に限定されない。
【0165】
(変形例)
第7実施形態の変形例の燃料電池システムは、第7実施形態の燃料電池システムにおいて、原料中の硫黄成分を常温で除去する常温脱硫器と、常温脱硫器の上流の原料供給経路から分岐し、常温脱硫器と水添脱硫器との間の原料供給経路に合流する分岐経路と、分岐経路上に配された第1遮断器と、分岐経路との間の分岐部よりも下流の原料供給経路であって、分岐経路との間の合流部よりも上流の原料供給経路上に配された第2遮断器と、を備え、制御器は、水添脱硫器の温度が所定の温度に到達する前は、原料が常温脱硫器を流通するように第1遮断器および第2遮断器を制御し、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、第1遮断器を開いてから所定時間が経過したとき、第2遮断器を閉じる制御を行う。
【0166】
かかる構成により、水添脱硫器の暖機が完了するまでは、常温脱硫器により原料中の硫黄成成分を除去できる。
【0167】
また、第1遮断器及び第2遮断器の開閉制御を同時に行うと、原料供給経路を流れる原料の流量が一時的に低下する恐れがある。この場合、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少という問題が生じる可能性があるが、本変形例では、第1遮断器を開く制御が第2遮断器を閉じる制御に先行して行われるので、このような可能性を抑制できる。
【0168】
本変形例の燃料電池システムは、上記特徴以外は、第7実施形態の燃料電池システムと同様に構成してもよい。
【0169】
[装置構成]
本変形例の燃料電池システム100は、
図8と同様の構成である。構成については第6実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0170】
[動作]
図11は、第7実施形態の変形例の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、上記制御器30の制御プログラムにより行われる。
【0171】
本変形例では、水添脱硫器10の暖機が、改質器11及び燃料電池12の暖機よりも遅い場合、例えば、燃料電池システム100の発電中であって、燃料電池12の定格運転が行われる場合に、リサイクル経路14へリサイクルガスの送出を開始する例について説明する。
【0172】
まず、水添脱硫器10の温度が所定の温度に到達する前は(つまり、水添脱硫器10の暖機が完了する前は)、原料が常温脱硫器20を流通するように第1遮断器22及び第2遮断器が制御される。例えば、第1遮断器22を閉めるとともに(ステップS32)、第2遮断器23を開くとよい(ステップS33)。これにより、水添脱硫器10の暖機が完了するまでは、常温脱硫器20により原料中の硫黄成成分を除去できる。
【0173】
また、リサイクルガスが、原料供給経路を経てリサイクル経路の上流端に到達した後に、ステップS34で、第1遮断器22を開き、その後、ステップS35で所定時間が経過したか否かが判定される。
【0174】
この所定時間は、例えば、原料供給経路13から分流した原料が、分岐経路21を流通して再び原料供給経路13に到達したと想定される時間に設定される。本時間は、例えば、分岐経路21を流れる原料の流量、分岐経路21の経路断面積及び経路長を用いて導き得る。
【0175】
ステップS35の所定時間が経過するまでは、第2遮断器23を開いた状態のままに維持する。一方、ステップS35の所定時間が経過すると、次のステップに進み、ステップS36で、第2遮断器23を閉じる。
【0176】
以上のステップS34−ステップS36の動作は以下の理由により行われる。
【0177】
第1遮断器22及び第2遮断器23の開閉制御を同時に行うと、原料供給経路13を流れる原料の流量が一時的に低下する恐れがある。この場合、燃料電池12のアノードに供給する改質ガスの一時的な流量減少という問題が生じる可能性があるが、本変形例では、第1遮断器22を開く制御が第2遮断器23を閉じる制御に先行して行われるので、このような可能性を抑制できる。
【0178】
なお、ステップS35の所定時間の導出方法は例示であって、本例に限定されない。
【0179】
また、本変形例のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作は、第7実施形態のステップS1、ステップS4及びステップS5の動作と同様であるので説明を省略する。
【0180】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。