(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記常温起動触媒は、前記混合ガスが流入する入口部分と、前記改質ガスが放出される出口部分とを有し、前記出口部分には、前記入口部分に配置される担体よりも多くの量の担体が配置される、請求項1に記載の改質システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなオートサーマル方式の改質器の適用が期待される技術分野は拡大傾向にあり、改質触媒の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化の要望がある。
【0006】
ところで、常温にて酸化反応により自己発熱するとともに水素系燃料を改質して水素を生成する触媒であって、該触媒の反応停止期間中にわたり該触媒の担体を還元状態に保持することができれば、外部熱エネルギーを供給せずに常温からの短時間起動を繰り返し可能とする触媒(以下、常温起動触媒と称す)が知られている(特許文献2参照)。すなわち、触媒反応停止期間中にわたり該触媒の担体を還元状態に保持することができれば、常温にて酸素と担体との反応による自己発熱が生じて該自己発熱にて触媒温度を急速に昇温させることができ、一方で、改質反応により生成された水素と反応熱とにより担体が自動的に還元状態に戻るというような触媒が知られている。このような常温起動触媒によれば、最初の起動にて触媒担体を還元状態にしてから後に実行される起動においては、外部熱エネルギーを供給することなく、例えば上記のような電気加熱式触媒にて熱エネルギーを供給することなく改質触媒の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図りうるとともに、また、要求される改質可能温度への到達時間短縮化の仕様から電気加熱式触媒の使用を必要とする場合においても、電気加熱式触媒の小型化を図ることができ消費電力という点においても改善しうる。
【0007】
しかしながら、上記のような常温起動触媒がもたらす効果を有効に引き出すにあたっては、触媒反応が停止している期間中にわたり触媒担体を還元状態に保持しておくことを可能とするような構成が必要となる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れて水素を生成する改質器であって、水素系燃料を改質して水素を生成する触媒を有する改質器を備える改質システムにおいて、改質器の運用停止期間中にわたり常温起動触媒の担体を還元状態に保持する還元雰囲気保持手段を有することで、上記のような常温起動触媒の効果を有効に引き出すことを可能とし、改質触媒の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図ることを可能にするとともに、電力消費という観点においても優れた改質システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れて水素を生成する改質器を備える改質システムであって、前記改質器には、前記水素系燃料を改質して水素を生成する触媒であって、該触媒の担体が還元状態にある場合において常温にて酸素と該担体との反応により自己発熱するという常温起動触媒が配設され、当該改質システムは、前記改質器の運用停止期間中にわたり前記常温起動触媒の担体を還元状態に保持する還元雰囲気保持手段を有し、前記還元雰囲気保持手段は、前記改質器と流体連通していて該改質器への空気の流入をもたらす上流側通路に配置され、前記改質器内への空気の流入を制御する第1制御バルブと、前記改質器と流体連通していて該改質器にて生成された改質ガスの放出をもたらす下流側通路に配置され、前記改質ガスの前記改質器からの放出を制御する第2制御バルブと、前記第1制御バルブと前記改質器との間の前記上流側通路に前記水素系燃料を供給する燃料噴射装置とを有し、前記改質器の運転停止時に、該改質器内の残存ガスを押出して該改質器内を前記水素系燃料にて満たすように、前記第1制御バルブと前記第2制御バルブと前記燃料噴射装置とを制御する、改質システムが提供される。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明では、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れて水素を生成する改質器を備える改質システムにおいて、改質器内に配置され水素系燃料を改質して水素を生成する触媒として、触媒の担体が還元状態にある場合において常温にて酸素と該担体との反応により自己発熱するという常温起動触媒を適用する。そして、このような常温起動触媒がもたらす効果を有効に引き出すべく、本改質システムは、改質器の運用停止期間中にわたり常温起動触媒の担体を還元状態に保持する還元雰囲気保持手段を有して構成される。より具体的には、還元雰囲気保持手段は、改質器内への空気の流入を制御する第1制御バルブと、改質ガスの前記改質器からの放出を制御する第2制御バルブと、第1制御バルブと改質器との間の上流側通路に水素系燃料を供給する燃料噴射装置とを有し、改質器の運転停止時に、該改質器内の残存ガスを押出して該改質器内を水素系燃料にて満たすように、第1制御バルブと第2制御バルブと燃料噴射装置とを制御する。
【0011】
このような還元雰囲気保持手段を有する改質システムによれば、常温起動触媒の反応が停止している期間中にわたり該触媒の担体を還元状態に保持しておくことができ、次の改質器の運用起動の際に、常温にて酸素と担体との反応による自己発熱が生じて該自己発熱にて触媒温度を急速に昇温させることができ、外部熱エネルギーを供給することなく、触媒の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図ることを可能とする。また、要求される改質可能温度への到達時間短縮化の仕様から電気加熱式触媒の使用を必要とする場合においても、電気加熱式触媒の小型化を図ることができ、消費電力という点においても改善しうる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記改質器内の圧力を検出する圧力検出器を備え、前記還元雰囲気保持手段は、前記改質器の運用停止期間中において、前記圧力検出器により前記改質器内の圧力が所定値よりも低下したことが検出された場合、前記燃料噴射装置により前記改質器内に前記水素系燃料を供給する、請求項1に記載の改質システムが提供される。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、電気加熱式ヒーターが、前記常温起動触媒の上流側にて該常温起動触媒に隣接して配置される、請求項1または請求項2に記載の改質システムが提供される。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記常温起動触媒は、前記混合ガスが流入する入口部分と、前記改質ガスが放出される出口部分とを有し、前記出口部分には、前記入口部分に配置される担体よりも多くの量の担体が配置される、請求項3に記載の改質システムが提供される。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記第1制御バルブと前記第2制御バルブとの間に、前記改質器に対する前記混合ガスの流入方向と前記改質ガスの放出方向とを逆転しうる流入放出方向変更手段が配設される、請求項1または請求項2に記載の改質システムが提供される。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記常温起動触媒の担体は、水素系燃料の改質に関与する改質用触媒粒子を担持し、前記常温起動触媒の中央部分の担体には、前記常温起動触媒の両端部分の担体に担持される前記改質用触媒粒子よりも多くの量の前記改質用触媒粒子が担持される、請求項5に記載の改質システムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
各請求項に記載の発明によれば、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れて水素を生成する改質器であって、水素系燃料を改質して水素を生成する触媒を有する改質器を備える改質システムにおいて、改質器内に配置され水素系燃料を改質して水素を生成する触媒として、触媒の担体が還元状態にある場合において常温にて酸素と該担体との反応により自己発熱するという常温起動触媒を適用し、また、改質器の運用停止期間中にわたり常温起動触媒の担体を還元状態に保持する還元雰囲気保持手段を有することで、上記のような常温起動触媒の効果を有効に引き出すことを可能とし、改質触媒の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図ることを可能にするとともに、電力消費という観点においても優れた改質システムを提供すること可能とする、という共通の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を用いて本発明に係る改質システムの実施形態について説明する。
図1は、本発明の改質システムの全体構成の一実施形態を示す図である。
図1において、1は改質システム、2は改質器、3は常温起動触媒、4は上流側通路、5は下流側通路、6は第1制御バルブ、7は第2制御バルブ、8は燃料噴射装置、9は圧力検出器、のそれぞれを示す。
【0020】
図1に示される実施形態における改質器2は、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を改質して水素を生成する改質器である。そして、本発明の改質システム1における改質器2には、水素系燃料を改質して水素を生成する触媒であって、該触媒の担体が還元状態にある場合には常温にて酸素と該担体との反応により自己発熱するという常温起動触媒3が配設される。このような常温起動触媒3は、改質器2の運用停止期間中すなわち触媒反応の停止期間中にわたり該触媒の担体を還元状態に保持することができれば、次の起動時に常温にて酸素と担体との反応による自己発熱を生じさせて該自己発熱にて触媒温度を急速に昇温させることができ、一方で、改質反応により生成された水素と反応熱とにより担体は還元状態に戻るというような触媒として知られている。尚、本実施形態における常温起動触媒3は、ハニカム構造にて形成され、取り入れられた混合ガスが流れる方向に沿って形成されている複数の流路を有するものとされる。そして、常温起動触媒3の触媒粒子は担持体に担持されているものとされ、該担持体は基材にて支持されるものとする。
【0021】
従って、このような常温起動触媒によれば、該触媒の反応停止期間中にわたり該触媒の担体を還元状態に保持することができれば、外部熱エネルギーを供給せずに常温からの短時間起動を繰り返し可能とする。すなわち、最初に触媒担体を還元状態にしてからの後に実行される起動においては、外部熱エネルギーを供給することなく、例えば上記のような電気加熱式触媒にて熱エネルギーを供給することなく触媒温度の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図りうるとともに、また、要求される改質可能温度への到達時間短縮化の仕様から電気加熱式触媒(EHC)の使用を必要とする場合においても、電気加熱式触媒の小型化を図ることができ、消費電力という点においても改善しうる。しかしながら、上記のような常温起動触媒がもたらす効果を有効に引き出すにあたっては、改質器の運用停止期間中すなわち触媒反応が停止している期間中にわたり触媒の担体を還元状態に保持しておくことを可能とするような構成が必要となる。
【0022】
このことに基づいて、本発明の改質システムにおいては、改質器2に配置され水素系燃料を改質して水素を生成する触媒として、触媒の担体が還元状態にある場合に常温にて酸素と担体との反応により自己発熱するという常温起動触媒3を適用する。そして、このような常温起動触媒3がもたらす効果を有効に引き出すべく、本発明の改質システム1は、改質器2の運用停止期間中にわたり常温起動触媒3の担体を還元状態に保持する還元雰囲気保持手段を有して構成される。
【0023】
そして、本発明の改質システム1における還元雰囲気保持手段は、改質器2と流体連通していて改質器2への空気の流入をもたらす上流側通路4に配置され、改質器2内への空気の流入を制御する第1制御バルブ6と、改質器2と流体連通していて改質器2にて生成された改質ガスの放出をもたらす下流側通路5に配置され、改質ガスの改質器2からの放出を制御する第2制御バルブ7と、第1制御バルブ6と改質器2との間の上流側通路に水素系燃料を供給する燃料噴射装置8とを有し、改質器2の運用停止時に、該改質器2内の残存ガスを押出して該改質器2内を水素系燃料にて満たすように、第1制御バルブ6と第2制御バルブ7と燃料噴射装置8とを制御するように構成される。
【0024】
図1に示される本改質システムの実施形態においては、還元雰囲気保持手段は、改質器2の運用が停止されると、まず、第1制御バルブ6を閉じて改質器2への空気の供給を遮断するように制御する。次に、還元雰囲気保持手段は、燃料噴射装置8により上流側通路4を介して改質器2に水素系燃料を供給して、改質器2内に残存するガスを改質器2から押出し、その後、第2制御バルブ7を閉じることにより、改質器2内を水素系燃料にて満たし、このような改質器2が水素系燃料にて満たされた状態すなわち改質器2内が還元雰囲気とされた状態を改質器2の運用停止期間中にわたり保持するように、第1制御バルブ6と第2制御バルブ7と燃料噴射装置8とを制御する。
【0025】
このような制御を行う還元雰囲気保持手段を有して構成される本発明の改質システム1によれば、改質器2の運用停止期間中すなわち常温起動触媒3の反応が停止している期間中にわたり触媒の担体を還元状態に保持しておくことができ、次の改質器2の運用起動の際に、常温にて酸素と担体との反応による自己発熱を生じさせて該自己発熱にて触媒温度を急速に昇温させることができ、外部熱エネルギーを供給することなく、触媒温度の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図ることを可能とする。なお、次の起動時は空気のみを供給すればよい。また、要求される改質可能温度への到達時間短縮化の仕様から電気加熱式触媒の使用を必要とする場合においても、電気加熱式触媒の小型化を図ることができ、消費電力という点においても改善しうる。
【0026】
ところで、運用時における改質器2の温度は概して、約800℃というような高温状態にあり、運用停止後のしばらくの間は高温状態が継続されることとなるが、その後においては、改質器2の温度は徐々に低下することとなり、この温度低下に起因して改質器2内の圧力が負圧となり、それにともなって、上流側通路4に配置された第1制御バルブ6と下流側通路5に配置された第2制御バルブ7との間の上流側通路4及び下流側通路5の各通路内圧力も負圧となりうることが考えられる。この負圧の状態が改質器の運用停止期間中にわたり継続されると、次の改質器2の起動時までの間に何らかの原因で外部から酸素が改質器2内に侵入してしまうというような事態が生じやすい状態が継続されることとなり、改質器の運用停止から次の起動時まで触媒の担体の還元状態を保持できないというような事態の発生も生じうる。
【0027】
このことに基づいて、
図1に示される実施形態における改質システムにおいては、改質器2内の圧力を検出する圧力検出器9が下流側通路5に配置され、還元雰囲気保持手段は、改質器2の運用停止期間中において、圧力検出器9により改質器2内の圧力が所定値よりも低下したことが検出された場合には、改質器2内への酸素の侵入を抑制すべく、燃料噴射装置8により改質器2内に水素系燃料を供給するという制御を行う。
【0028】
尚、このような改質器2内への酸素の侵入を抑制する制御機能を還元雰囲気保持手段が有する必要があるか否かは、改質システムの使用環境や設計仕様などに応じて適宜に決定されるものであり、還元雰囲気保持手段が、このような制御機能を有さずに構成されてもよい。また、本実施形態においては、改質器2内の圧力を検出する圧力検出器9は下流側通路5に配置されるように構成されるが、これに限られることはなく、少なくとも第1制御バルブ6と第2制御バルブ7との間にて配置されていればよく、圧力検出器9は上流側通路4に配置されてもよく、あるいは、改質器2に直接的に配置されるように構成されてもよい。
【0029】
ところで、上記のような常温起動触媒3における常温にての自己発熱反応の度合いは、触媒の担体の還元状態の度合いに依存し、より還元状態の強い部分のほうが自己発熱反応が強い。改質器2が継続した運用状態に置かれている場合には概して、混合ガスが流入する触媒前方部分においては主として酸化反応が行われ、改質ガスが放出される触媒後方部分においては主として改質反応が行われる。よって、改質器の運用停止時には、混合ガスが流入する触媒前方部分の担体と比較して触媒後方部分の担体の方が、より還元状態の度合いが強く、次の改質器の起動時においては、触媒後方部分の自己発熱による昇温が、触媒前方部分の昇温より早くなる。この点に関して、触媒前方部分の昇温を触媒後方部分と同じにするように補助することを可能とするような何らかの手段を講じることができれば、触媒温度がより均一に近くなり、全体として起動温度に達する時間が短く出来るので、更なる改質器の起動性の向上を図ることが可能となる。
【0030】
このことに基づいて、
図2に示される実施形態における本発明の改質システムにおいては、電気加熱式ヒーター10が、常温起動触媒3の上流側(前方部分)にて該常温起動触媒3に隣接して配置される。尚、
図2における改質器2、常温始動触媒3、上流側通路4、下流側通路5、第1制御バルブ6、第2制御バルブ7、燃料噴射装置8、圧力検出器9のそれぞれは、
図1に示された実施形態のものと同様の構成配置とされる。
【0031】
図2に示されるような構成配置を有する改質システムによれば、改質器2の運用停止後の次の起動時において、第1制御バルブ6を開放して上流側通路4を介して空気を改質器2に流入させるのと同時に電気加熱式ヒーター10を通電して加熱することで、常温起動触媒3における常温にての自己発熱反応により触媒後方部分の昇温と同様に、電気加熱式ヒーター10により触媒前方部分の昇温も実施させることができ、更なる改質器の起動性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
また、本発明の改質システムにおいては、さらなる改質器の起動性の向上を図るべく、
図1及び
図2に示された実施形態における常温起動触媒3が、混合ガスが流入する入口部分と、改質ガスが放出される出口部分とを有し、該出口部分には、該入口部分に配置される担体よりも多くの量の担体が配置されるように構成されてもよい。すなわち、改質器2の運用停止後において触媒の担体が強い還元状態におかれる部分であって、次の起動時において自己発熱による昇温が強い上記出口部分に、より多くの量の担体を配置するように構成することで、より迅速に触媒を昇温させることができ、更なる改質器の起動性の向上を図ることが可能となる。
【0033】
図6は、本発明の改質システムにおける常温起動触媒の担体分布の一実施形態を示す図であって、改質ガスの出口部分には、混合ガスの入口部分に配置される担体よりも多くの量の担体が配置されるような常温起動触媒の担体分布の一実施形態を示す図である。
図6に示される常温起動触媒3の実施形態においては、常温起動触媒3が、混合ガスが流入する部分を含む上流側領域21と、改質ガスの出口部分を含む下流側領域22との2つの領域に分けられて、下流側領域22には、上流側領域21に配置される担体よりも多くの量の担体が配置されるように構成される。
【0034】
尚、常温起動触媒における改質ガスの出口部分には、常温起動触媒における混合ガスの入口部分に配置される担体よりも多くの量の担体が配置されるような常温起動触媒の構成は、
図6に示されるよう構成に限れることはなく、例えば、常温起動触媒における混合ガスの入口部分から改質ガスの出口部分に向かい、徐々に担体量が増加するように構成されてもよい。
【0035】
図3は、本発明の改質システムの全体構成のさらに別の実施形態を示す図である。尚、
図3における改質器2、常温始動触媒3、上流側通路4、下流側通路5、第1制御バルブ6、第2制御バルブ7、燃料噴射装置8、圧力検出器9のそれぞれは、
図1に示された実施形態のものと同様の構成配置とされる。
【0036】
先にも説明したように、改質器2が継続した運用状態に置かれている場合には概して、混合ガスが流入する触媒前方部分においては主として酸化反応が行われ、改質ガスが放出される触媒後方部分においては主として改質反応が行われる。よって、改質器の運用停止時には、混合ガスが流入する触媒前方部分の担体と比較して触媒後方部分の担体の方が、より還元状態の度合いが強く、次の改質器の起動時においては、触媒後方部分から自己発熱による昇温が強いこととなり、触媒前方部分の昇温が遅く、触媒の起動が遅れて開始されることなる。この点に関して、
図2に示される実施形態の改質システムにおいては、電気加熱式ヒーター10を、常温起動触媒3の上流側にて該常温起動触媒3に隣接して配置することで、触媒後方部分の昇温と同様に、触媒前方部分の昇温も実施させることを可能し、更なる改質器の起動性の向上を図ることを可能としている。
【0037】
これに対して、
図3に示される実施形態の改質システムにおいては、第1制御バルブ6と第2制御バルブ7との間に、改質器に対する混合ガスの流入方向と改質ガスの放出方向とを逆転しうる流入放出方向変更手段を配設することで、すなわち、本実施形態における改質システムにおいては、改質器内を流れるガスの流れを、触媒前方部分から触媒後方部分へと流れる順方向流れと、触媒後方部分から触媒前方部分へと流れる逆方向流れとの間で変更する(切り替える)ことを可能とすることで、更なる改質器の起動性の向上を図ることを可能とする。
【0038】
例えば、改質器内の流れるガスの流れが順方向流れに制御された改質器運用時においては概して、混合ガスが流入する触媒前方部分においては主として酸化反応が行われ、改質ガスが放出される触媒前方部分においては主として改質反応が行われることとなるために、運用停止後における起動時においては、触媒前方部分の担体と比較して触媒後方部分の担体の方が、より還元状態の度合いが強い状態にあることなる。従って、改質器内の流れるガスの流れが順方向流れに制御された改質器運用が停止された後の起動時においては、改質器内を流れるガスの流れを触媒後方部分から触媒前方部分へと流れる逆方向流れとすることで、ガスの流れによって触媒後方部分で生じた自己発熱を触媒前方部分に迅速に伝えることができ、これにより、更なる改質器の起動性の向上を図ることを可能とする。
【0039】
一方で、改質器内の流れるガスの流れが逆方向流れに制御された改質器運用時においては概して、混合ガスが流入する触媒後方部分においては主として酸化反応が行われ、改質ガスが放出される触媒前方部分においては主として改質反応が行われることとなるために、運用停止後における起動時においては、触媒後方部分の担体と比較して触媒前方部分の担体の方が、より還元状態の度合いが強い状態にあることなる。従って、改質器内の流れるガスの流れが逆方向流れに制御された改質器運用が停止された後の起動時においては、改質器内を流れるガスの流れを触媒前方部分から触媒後方部分へと流れる順方向流れとすることで、ガスの流れによって触媒前方部分で生じた自己発熱を触媒後方部分に迅速に伝えることができ、これにより、更なる改質器の起動性の向上を図ることを可能とする。
【0040】
このことに基づいて、上記のような改質器に対する混合ガスの流入方向と改質ガスの放出方向とを逆転しうる流入放出方向変更手段を有する本実施形態の改質システムにおいては、該流入放出方向変更手段により、改質器の各再起動時における改質器内を流れるガスの流れを、順方向流れと逆方向流れとの間で交互に順番に行うように制御することで、更なる改質器の起動性の向上を図ることを可能とする。しかしながら、改質器の各再起動時における改質器内を流れるガスの流れの制御は、これに限られるものではなく、その他の一定の条件に基づいて制御されてもよい。例えば、改質器の再起動時の起動が十分に行われることなく停止された場合などを考慮して、触媒温度などに基づいて、改質器の各再起動時における改質器内を流れるガスの流れ方向が制御されるように構成されてもよい。
【0041】
図3において、11は第1迂回通路、12は第2迂回通路、13は第3制御バルブ、14は第4制御バルブ、15は第5制御バルブ、16は第6制御バルブ、をそれぞれ示す。尚、
図3における改質器2、常温始動触媒3、上流側通路4、下流側通路5、第1制御バルブ6、第2制御バルブ7、燃料噴射装置8、圧力検出器9のそれぞれは、
図1に示された実施形態のものと同様の構成配置とされる。
【0042】
図3に示す実施形態の改質システムにおける流入放出方向変更手段は、改質器2を介することなく上流側通路4と下流側通路5とを流体連通する第1迂回通路11と、上流側通路4との合流部および下流側通路5との合流部がともに、第1迂回通路11のものに対して下流側にシフトされて形成され、改質器2を介することなく上流側通路4と下流側通路5とを流体連通するという第2迂回通路12とを有して構成される。さらに、本改質システムにおける流入放出方向変更手段は、上流側通路4と下流側通路5と第1迂回通路11と第2迂回通路12とのそれぞれの通路に配置される、第3制御バルブ13、第4制御バルブ14、第5制御バルブ15及び第6制御バルブ16を有して構成される。
【0043】
図4は、
図3に示す改質システムの実施形態における、改質器に対する混合ガス及び改質ガスの順方向流れを示す図である。
図5は、
図3に示す改質システムの実施形態における、改質器に対する混合ガス及び改質ガスの逆方向流れを示す図である。
【0044】
図4において、Aは順方向に流入する混合ガスの流れを示し、Bは順方向に放出される改質ガスの流れを示す。この際、図面から理解されうるごとく、改質器に対する混合ガス及び改質ガスの順方向流れに制御する場合においては、流入放出方向変更手段は、第3制御バルブ13及び第4制御バルブ14を開き、第5制御バルブ15及び第6制御バルブ16を閉じるように制御する。一方で、
図5においては、Cは逆方向に流入する混合ガスの流れを示し、Dは逆方向に放出される改質ガスの流れを示す。この際、図面から理解されうるごとく、改質器に対する混合ガス及び改質ガスの逆方向流れに制御する場合においては、流入放出方向変更手段は、第3制御バルブ13及び第4制御バルブ14を閉じ、第5制御バルブ15及び第6制御バルブ16を開くように制御する。
【0045】
このように流入放出方向変更手段により各制御バルブを制御することより、改質器内を流れるガスの流れを、触媒前方部分から触媒後方部分へと流れる順方向流れと、触媒後方部分から触媒前方部分へと流れる逆方向流れとの間で変更する(切り替える)ことを可能とする。尚、流入放出方向変更手段の形態は、このような実施形態に限られるものではなく、改質器内を流れるガスの流れを順方向流れと逆方向流れとの間で変更することを可能とするような任意の構成が適用されうる。
【0046】
また、上記のような流入放出方向変更手段を有する改質システムにおいては、改質器内を流れるガスの流れが、触媒前方部分から触媒後方部分へと流れる順方向流れと、触媒後方部分から触媒前方部分へと流れる逆方向流れとの間で切り替えるがゆえに、改質器の運用中においては混合ガスの取入れ口となりうる触媒の両端部分のいずれか一方の端部分にて主として酸化反応が行われ、触媒の中央部分にて主として改質反応が行われることとなる。
【0047】
このことに基づいて、上記のような流入放出方向変更手段を有する改質システムの一実施形態においては、常温起動触媒が、水素系燃料の改質に関与する改質用触媒粒子を担体に担持して構成されるものとされ、該常温起動触媒の中央部分の担体に、該常温起動触媒の両端部分の担体に担持される改質用触媒粒子よりも多くの量の改質用触媒粒子が担持されるように構成されるものとする。このように構成された常温起動触媒によれば、改質器の運用中において主として改質反応が行われることとなる触媒の中央部分の担体に多くの量の改質用触媒粒子が担持されるので、より効率的に改質反応もたらすことが可能となる。また、改質器の運用中において主として酸化反応が行われることとなる触媒の両端部分の担体に担持される触媒粒子は少ないものとされるがゆえに、酸化反応熱により性能劣化してしまうような触媒粒子の低減を可能とするとともに、担体に担持される触媒粒子の全体量を低減することができ低コスト化をも図ることを可能とする。
【0048】
また、上記の各実施形態において、停止時に改質器2内の残存するガスを押出す際に供給した水素系燃料の余剰分を蓄えるタンクを改質器2に接続しても良い。この場合も停止期間中にわたり改質器2内が還元雰囲気となるように制御バルブで遮断すれば良い。タンクに蓄えた余剰の水素系燃料(および改質ガスとの混合物)は次回の起動時に使用すれば良い。
【0049】
以上の説明から理解されうるごとく、上述したような本発明の改質システムによれば、少なくとも水素を一構成成分として含む水素系燃料を空気とともに混合ガスとして取り入れて水素を生成する改質器であって、水素系燃料を改質して水素を生成する触媒を有する改質器を備える改質システムにおいて、改質器の運用停止期間中にわたり常温起動触媒の担体を還元状態に保持する還元雰囲気保持手段を有することで、上記のような常温起動触媒の効果を有効に引き出すことを可能とし、改質触媒の改質可能温度への到達時間の更なる短縮化を図ることを可能にするとともに、電力消費という観点においても優れた改質システムを提供すること可能とする。