【課題を解決するための手段】
【0004】
[発明の概要]
培養によりある量のオメガ3(n−3)および/またはオメガ6(n−6)油等の不飽和脂肪酸、例えば、DHA、EPAおよびDPA等を生産するスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目およびスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科の真核生物に関連する組成物および方法であって、それらの生産手段によりこれらの組成物全てがそれ自体使用される以上に、精製および利用が可能である組成物および方法が開示される。
【0005】
[図面の簡単な説明]
本明細書に採用されその一部を構成する付属の図面はいくつかの実施形態を説明し、同時に、開示の組成物および方法を例示する。
【0006】
図1は、ONC−T18由来の脂質の脂肪酸メチル化で得られた結果を示すチャートを図示する。
【0007】
図2は、Advocate Harborで採集した元のONC−T18単離物と、PTA−6245としてATCCに寄託されたスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種のONC−T18の単離物との間の脂肪酸メチルエステルの比較をグラフ表示する。全てのピークはガスクロマトグラフィーおよび質量分析法で同定された。
【0008】
図3は、行われたONC−T18バイオマス最適化実験からの分散プロットグラフを示す。様々な培地条件下でONC−T18の生育の最適条件を決定するため、これらの実験ではタグチ(Taguchi)法として知られる技術を用いた。
【0009】
図4は、最適条件(実施例4)下で9日間にわたって生育したONC−T18の脂肪酸プロフィールの棒グラフを示す。
【0010】
図5は、本明細書の別の箇所に記載したように分離した油生産微生物のチャートを示す。
【0011】
図6は、ONC−T18の18S rRNA遺伝子と他のスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)科との間の関係の分枝進化系統樹を示す。
【0012】
図7は、ONC−T18の異なった条件下の脂質およびDHA生産を示す。
【0013】
図8は、本明細書に開示された真核生物に対する生育条件についての情報を付けた、修正グラフを示す。
【0014】
図9は、開示された真核生物について、PUFAの生産の提案された代謝経路を示す。
【0015】
図10は、様々な低コスト炭素源の代替品における脂肪酸生産最大値および組成の比較を示す。
【0016】
図11は、C20およびC22PUFAプロフィールに基づき採集した単離物のグループ分けを示す。結果を2つの参照株ATCC20891およびMYA−1381と比較した。
【0017】
図12は、ONC−T18株の18S rRNAの近縁結合樹を示す。バーは遺伝的距離を示し、黒の四角形はこの進化系統樹内で用いられたGenBank由来の配列を示す。
【0018】
図13は、3つの異なったタイプの培養−寒天プレート(1.5%寒天、25℃、27日)、フラスコ(250mLフラスコ中50mL、120RPM、25℃、3日)および5Lバイオリアクター(4lpmの空気、pO
290%、25℃、3日)における、2gL
−1の酵母抽出物、8gL
−1のL−グルタミン、6gL
−1の海塩および60gL
−1のグルコースを含む培地中で生育したONC−18の脂肪酸プロフィールを示す。
【0019】
図14は、スラウストキトリウム(Traustochytrium)種OCN−T18から単離したカロテノイド化合物のHPLCクロマトグラムを示す。例えば、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノンおよびβ−カロテンがスラウストキトリウム(Traustochytrium)種OCN−T18から単離された。
【0020】
図15は、60gL
−1のグルコース、2gL−
−1の酵母抽出物、8gL
−1のグルタミン酸および6gL
−1の塩(4lpmの空気、pO
290%、pH7〜9)の組成の培地で168時間、5Lバイオリアクター中に維持されたスラウストキトリウム(Traustochytrium)種OCN−T18の典型的なバイオマス、全脂肪酸(TFA)、DHA生産およびグルコース消費を示す。
【0021】
図16は、スラウストキトリウム(Traustochytrium)種OCN−T18中のアスタキサンチン生成に関与する仮定経路を示す。
【0022】
[詳細な説明]
本発明の化合物、組成物、製品、装置および/または方法を開示し記述する前に、特に断らない限りそれらが特定の合成法または特定の組み替え生物工学法に制限せず、また特に断らない限り特定の試薬に限定されず、その結果、当然変化し得ることを理解する必要がある。本発明で用いた用語は特定の実施形態を記述する目的のためのみであり、本発明を制約することを意図するものではないことも理解すべきである。
【0023】
当業者は、本明細書に記載の方法および組成物の特定の実施形態に等価な多くのものを認識する、または通常の実験を用いて確認することができる。この様な等価なものは特許請求の範囲に包含されることを意図している。
A.定義
【0024】
明細書と付属のクレームに用いられる単数形「ある」、「1つの」および「その」には、文脈上特に断らない限り、複数の対象も含む。従って、例えば「医薬担体」とはこの様な担体の複数の混合物等も含む。
【0025】
本発明では、範囲は「約」特定の数値から、および/または「約」他の特定の数値までとして表される。この様な範囲が示される場合、他の実施形態にはある特定の数値から、および/またはある特定の数値までが含まれる。同様に、数値が「約」を用いて近似値として表される場合、その特定の数値は他の実施形態も形成すると理解されると思われる。さらに、各範囲の終点は他の終点との関連する、および他の終点とは独立であるという双方の意味があることも理解されると思われる。また、本明細書に開示された数値はいくつもあり、本明細書では、各数値はその数値そのものに加えて「約」その特定の数値として開示される。例えば、数値「10」が開示されている場合、約「10」も開示されている。ある数値が「その数値より小さい、またはその数値と等しい」、「その数値より大きい、またはその数値と等しい」として開示されている場合、当業者が理解し得る様にそれらの数値の間の可能な範囲も開示されていることも理解される。例えば、数値「10」が開示されている場合、「10より小さい、または10に等しい」の他、「10より大きいまたは10に等しい」も開示されている。本出願を通じて、データはいくつかの異なったフォーマットで提供され、このデータは終点および出発点を表し、データポイントの任意の組み合わせの範囲であることも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント「15」が開示されている場合、10および15より大きいまたは等しい、より小さいまたは等しい、および等しいの他、10と15との間も開示されていると考えられる。また、2つの特定の単位の間の各単位も開示されると理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13および14も開示されている。
【0026】
「減少」または減少の他の形は、ある事象または特性の低下を意味する。これは典型的には、ある標準または期待値との関連である、言い換えれば相対的であるが、その標準または相対値を必ずしも参照する必要がないことが理解される。例えば、「リン酸化を減少」とは標準または対照と比較して生じるリン酸化の量の低下を意味する。特に断らない限り、ある化合物または組成物または条件を他の化合物または組成物または条件に対して減少することができる。
【0027】
「阻害」または阻害の他の形は、特定の特性を妨げる、または制限することを意味する。これは典型的には、ある標準または期待値と関連する、言い換えれば相対的であるが、その標準または相対値を必ずしも参照する必要はないことが理解される。例えば、「リン酸化を阻害」とは、標準または対照と比較して生じるリン酸化の量の妨害または制限を意味する。特に断らない限り、ある化合物または組成物または条件を他の化合物または組成物または条件に対して阻害することができる。
【0028】
「阻止」または防止の他の形は、特定の特性または条件を停止することを意味する。これは典型的には、例えば減少または阻害より絶対的であるので、阻止は対象との比較を必要としない。本明細書で用いられる様に、あるものを減少し得るが阻害または阻止し得ないが、減少するあるものを阻害または阻止することもできる。減少、阻害または阻止が使用される場合、特に断らない限り、他の2つの用語の使用も明白に開示されることが理解される。従って、リン酸化の阻害が開示されている場合、リン酸化の減少または阻止も開示されている。
【0029】
用語「治療上有効」とは、使用される組成物の量が疾患または障害の1つ以上の原因または症状を改善するに十分な量であることを意味する。この様な改善は減少または変化のみを必要とし、必ずしも除去を必要としない。
【0030】
用語「担体」とは、ある組成物または化合物と組み合わせる場合、その意図する使用または目的に対する化合物または組成物の調製、貯蔵、投与、送達、有効性、選択性または任意の他の特性を幇助する、または促進するある化合物、組成物、物質または構造を意味する。例えば、ある担体を活性成分のどの様な劣化も最小にし、被検体に対するどの様な副作用も最小にする様に選ぶことができる。
【0031】
本発明の記述とクレームとを通じて、用語「含む」および「含んでいる」等のその用語の変形は「を含むがそれに限定されない」を意味し、例えばその他の添加物、成分、整数または工程を除外することを意図するものではない。
【0032】
本発明で用いる用語「細胞」は個々の微生物細胞、またはこの様な細胞由来の培養物も指す。「培養物」は同じまたは異なったタイプの単離細胞を含む組成物を指す。
【0033】
用語「代謝物」は、ある化合物を生物環境、例えば患者に導入される場合に産生される活性誘導体を指す。
【0034】
医薬品および栄養剤組成物に関連して用いられた場合、用語「安定」とは定められた期間中、特定の貯蔵条件下で活性成分のある量以下、通常10%の活性成分の損失を意味すると当該技術分野で一般的に理解されている。ある組成物が安定と考えられるに必要な時間は各製品の使用に相対的なものであり、その製品を製造し、品質管理または検査のために保存し、その製品が実際に使用される前に再度貯蔵される卸売業者または消費者に直接出荷する商業上の現実性により決定される。数ヶ月の安全因子を含み、医薬品に対する最低製品寿命は通常1年であり、好ましくは18ヶ月以上である。本明細書に用いる用語「安定」とは、これらの市場の現実と、冷凍条件2℃、8℃等の容易に達成し得る環境条件における製品の貯蔵および輸送能力とを参考にする。
【0035】
明細書およびそれを総括する特許請求の範囲における特定の要素または組成物または商品中の成分の重量部とは、重量部で表される組成物または商品中の要素または成分と、任意の他の要素または成分との重量関係を表す。従って、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yとを含む化合物において、XとYとは重量比2:5で存在し、更なる成分が化合物中に含まれるかどうかに係わらずこの様な比率で存在する。
【0036】
特に断らない限り、ある成分の重量パーセントはその化合物が含まれる調合物または組成物の全重量を基準としている。
【0037】
「単離する」および「単離」等の任意の形は、あるものが取り扱い得る、またはさらに精製される形である状態を指す。「単離された」および単離された形は、あるものが前の状態とは異なった現在の状態にあることを示す。例えば、器官から取り出し、合成または組み替えで製造された場合、リボソームRNA分子を「単離」し得る。あるものの「単離」は他のものとの関連であることが多い。例えば、真核細胞を培養することにより、該真核細胞が相当量の(検出可能な)他の微生物がなく生存できる様に、本明細書で議論する真核細胞を単離し得る。特に断らない限り、任意の開示された組成物を本明細書で開示する様に単離し得る。
【0038】
「精製」および「精製する」等の他の形は、物質または化合物または組成物がその以前の状態より均一性が大きい状態であることを指す。特に断らない限り、本明細書で示す様にあるものは少なくとも純度1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%であり得る。例えば、ある成分Aが純度90%である場合、これは組成物の90%がAであり、組成物の10%が分子、化合物または他の物質等の1つ以上のものであることを意味する。例えば、開示された真核微生物が例えば35%のDHAを生産する場合、最終脂質組成がDHA90%以上である様にさらに「精製」することができる。特に断らない限り、純度は組成物内の成分の相対「重量」で決定される。特に断らない限り、任意の開示された組成物を本発明で開示の通りに精製できる。
【0039】
「随意」または「随意に」とは、続いて記載する事象または状況が起こっても起こらなくてもよく、その記載は、その事象または状況が生じる場合、および生じない場合が含まれる。
【0040】
「プライマー」はあるタイプの酵素的操作を支援することが可能で、酵素的操作が起こり得る様に標的核酸とハイブリダイゼーションし得るプローブのサブセットである。プライマーはヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体、または酵素的操作を妨害しない、当業界で入手し得るアナログから製造できる。
【0041】
本出願を通じて、様々な出版物が参照される。本発明が係わる最新技術をより完全に記載するため、これらの出版物の開示を本明細書中に引用により含める。開示された参照文献は、参考文献に依存する文章中で議論された、その中に含まれる内容について、個別かつ具体的に引用により含める。
【0042】
開示された組成物を調製するために使用される化合物の他、本発明で開示された方法で使用される組成物そのものも開示される。これらの材料およびその他の材料が開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示されるが、これらの化合物の個々の、および全体的な様々な組み合わせおよび順序の入れ替えの具体的な記載が本明細書に明白に開示されないことがあることが理解される。例えば、スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科の特定の種が開示し議論され、スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科の種を含むいくつかの微生物に加えられるいくつかの修飾が議論される場合、具体的に示されない限り、それぞれ、および全てのスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来のこれらの種の組み合わせおよび順序の入れ替え、および可能な修飾が想定される。従って、分子A、BおよびCのクラスの他に分子D、EおよびFのクラスが開示され、分子の組み合わせの一例であるA−Dが開示された場合、それぞれが個別に列挙されなくても、それぞれが個別に全体的な組み合わせを意味すると想定され、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fが開示されたものと考えられる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示されている。従って、例えばサブグループA−E、B−FおよびC−Eが開示されているものと考えられる。この概念は、開示された組成物の製造および使用法の工程を含むがそれに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。従って、実行され得る様々な別な工程がある場合、これらの追加工程のそれぞれは、開示された任意の具体的な実施形態または実施形態の組み合わせで実行できると理解される。
B.組成物
【0043】
(n−3)シリーズのドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)等、(n−6)シリーズのドコサペンタエン酸(DPA)および(n−9)シリーズのパルミチン酸およびステアリン酸等の、オメガ−3脂肪酸、オメガ−6脂肪酸およびオメガ−9脂肪酸等の不飽和脂肪酸等の脂肪酸等の脂質の生産能を有する、スラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目の真核微生物、好ましくはスラウストキトリウム(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム(Schizochytrium)種が開示される。開示された真核微生物は、カロテノイド化合物であるカロテン(例えばβ−カロテン)、およびキサントフィル化合物であるアスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチンおよびエキネノン等であるがそれらに限定されない抗酸化剤も生産し得る。
【0044】
また、真核微生物の単離および生育条件も開示される。例えば、開示された脂質と抗酸化剤とを個々に、および累積的に製造するための従属栄養(heterotrophic)生育条件である。従って、この独自の真核細胞を用いて、栄養剤、食品添加物、医薬品として、または産業で有用である(n−3)シリーズのDHA、および/または(n−6)シリーズのDPA、および/またはカロテノイドシリーズの抗酸化剤化合物、および/またはキサントフィルシリーズの抗酸化剤化合物を効果的に製造することが可能である。
【0045】
スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種を含むかそれらで構成される真核微生物を含む組成物が開示され、本明細書に開示される一例はATCC受託番号PTA−6245の寄託番号を有するONC−T18株である。
【0046】
真核微生物、および任意のクローン、修飾微生物、またはONC−T18で示される上記微生物から単離された遺伝子も開示されることが理解される。開示された微生物は、オメガ−3シリーズのDHAおよびEPA、およびオメガ−6シリーズのDPA等の脂質などの不飽和脂肪酸、およびカロテノイド、キサントフィルおよびフェノール類等の様々な抗酸化剤を生産する能力を有する。
【0047】
また、上記化合物を含むバイオマスの製造プロセスも開示される。さらに、真核微生物を利用するオメガ−3、オメガ−6およびカロテノイド化合物の調製プロセスも開示される。また、微生物由来(または単細胞)の油の生産プロセスも開示される。
【0048】
さらに、開示された真核微生物およびその任意の子孫(遺伝的修飾その他)により生産される脂肪酸およびカロテノイド、脂質および抗酸化剤を補充された様々な食品素材、栄養剤、医薬品および食品の他、これらの化合物を様々な食品素材および食品用の添加剤として使用するプロセスも開示される。
【0049】
Barklayの米国特許第5,130,242号は、オメガ−3脂肪酸の生産のために、以下の特性を有する微生物株を単離するための収集およびスクリーニングプロセスを開示している:(1)従属栄養生育が可能;(2)高い含有量のオメガ−3脂肪酸を生産;(3)単細胞性;(4)低含有量の標準およびオメガ−6脂肪酸を生産;(5)色素を含まず、白色または無色の細胞;(6)耐熱性(例えば30℃以上での生育能);および(7)塩適応性(広い範囲の塩分で生育する能力を有するが、低塩分が好ましい)。
【0050】
また、‘242開示は、その後動物またはヒト用食品に使用できる高濃度のオメガ−3脂肪酸を有する全細胞または抽出微生物生成物の従属栄養生産プロセスを開示している。このプロセスは、その開示された収集およびスクリーニングプロセスで同定された微生物を使用する。スラウストキトリアレススラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目であることが多いこれらの微生物を穀粒粕中で培養する。オメガ−3脂肪酸の生産を増大するため、低温ストレスおよび高濃度溶存酸素が用いられる他、抗酸化剤、成長因子、ビタミンおよび燐が添加される。抽出された生成物は高濃度のオメガ−3脂肪酸(例えばC20:5w3、C22:5w3およびC22:6w3)と、低濃度のオメガ−6脂肪酸(例えばC20:4w6およびC22:5w6)を含む。具体的には、C20:5w3とC22:6w3脂肪酸の比率は1:1〜1:30の範囲になる。C22:5w3とC22:6w3脂肪酸の比率は1:12から微量のC22:5w3の範囲である。また、その微生物は全脂肪酸に対する重量%で0.6〜0.72%のDHA、0〜5%のDPAおよび0〜18.9%のEPAを生産する。
【0051】
Barkleyの米国特許第6,451,567号は、ナトリウム塩を含む非塩素培地(<3g/L)中のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)およびシゾキトリウムの生育プロセスを開示している。非塩素培地により、細胞凝集体のサイズが150μm以下になる。開示されたプロセスは、水産養殖用の飼料に有用である微生物と抽出物とを生産する。飼料の成分はさらに亜麻仁、菜種、大豆およびアボガドミールを含む。その微生物は1日あたり1.08g/1L培地のオメガ−3脂肪酸を生産できる。‘567の開示はさらに、海水、グルコース(1、3、5または10g/L)、酵母抽出物(0.01、0.2、0.4および5g/L)、蛋白質加水分解物(1g/L)、肝臓抽出物(1g/L)、グルタメート(5g/L)、MSG(3g/L)等の追加窒素源、および追加塩、微量のビタミンおよびミネラル(例えばKH
2PO
4、MgSO
4およびゼラチン抽出物)を含む様々な培地を開示している。
【0052】
Yokochiらの米国特許第6、582,941号は高濃度のオメガ−3DHAおよび/またはオメガ−6DPA、および低濃度のEPAを有する脂肪酸分画を生産する能力を有するシゾキトリウム種SR21株および同じ種に属する他のシゾキトリウム種を開示している。また、この様な微生物を培養し、この様な脂肪酸を単離する方法も開示されている。用いられた培地は海塩、酵母抽出物(0.2、1.0または10g/L)、コーンスティープリカー(0.5、1.0または10g/L)、グルコース(10〜120g/L)プラス追加の塩(NH
4OAc、リン酸塩等)を含む。脂肪酸組成物はバイオマスに対し15〜20重量%のDHAを含む(全脂肪酸の約28重量%)。その組成物を食品(例えば乳児用ミルク)に使用できる。
【0053】
Baileyらの米国特許第6,607,900号は、少なくとも20%のバイオマスをポリ不飽和脂質(特にオメガ−3および−6脂肪酸)として生産し得る真核微生物(例えばシゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC番号20888)を生育させるプロセスを開示している。そのプロセスには炭素および窒素源を含む培地中で微生物を培養する工程を含む。また、生産を増大するための低溶存酸素レベル(3%以下)と低塩素イオンレベル(3g/L以下)との使用も開示されている。その微生物は少なくとも0.5g/L/hの脂質生産速度を有している。脂質分画はバイオマスあたり15〜20重量%のDHAである(全脂肪酸メチルエステルの約35重量%)。
【0054】
Komazawaらの米国特許公開公報第2004/0161831号は、DHA生産能を有するスラウストキトリウム(Thraustochytrium)株(LEF1:ATCC No.FERM BP−08568)を開示している。通常の培地中で培養することにより、微生物は少なくとも50重量%のDHAを含む油を生産することができる。DHAの単離前に油をリパーゼで処理することができる。その油は食品または飲料中で使用することができ、DHAを加水分解してベヘン酸を製造することができる。
1.脂肪酸
【0055】
脂肪酸は末端にカルボキシル基を有する炭化水素鎖であり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む場合は不飽和と呼ばれ、複数のこの様な結合を含む場合はポリ不飽和と呼ばれる。長鎖ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)または高度不飽和脂肪酸(HUFA)はこれらの二重結合の位置により、(n−3)および(n−6)シリーズに分類し得る。DHA等の(n−3)高度不飽和脂肪酸は心臓循環疾患、慢性炎症および脳障害に有益な効果を有するという圧倒的な具体的事実がある。一方、(n−6)脂肪酸はプロスタグランジン、ロイコトリエン等のエイコサノイドステロイドの中間代謝物として注目されてきた。
【0056】
ポリ不飽和脂肪酸は1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の二重および/または三重炭素-炭素結合を有することができる。例えば、ポリ不飽和脂肪酸は3−8、4−7または5−6二重および/または3重炭素-炭素結合を含み得る。
【0057】
現在、これらの高度不飽和脂肪酸の主な資源は魚であり、DHAおよびEPAは様々な青い魚(イワシおよびマグロ等)中にそれぞれ約20%および10%の量である。しかしながら、これらの脂質の単なる資源として魚油を使用することを意図する場合、悪臭の問題、入手可能性の制御不能な変動、天然の魚油含有量の変動性の他、有害な環境汚染物蓄積の可能性等のいくつかの不利な点がある。さらに、上記資源から高度に精製された(n−3)または(n−6)油を得ようとする場合、選択的に分離し精製することが非常に困難である。特に、DHAの高度に濃縮された形に対する新生児栄養補助剤の市場で大きな需要がある。魚油が上記製品の資源である場合、EPAよりDHAを大量に選択的に単離しなければならない。これらの高度不飽和脂肪酸の高度に精製される代替資源および生産に適した資源が必要であることは明らかである。
【0058】
魚油の他に、様々な微生物(主として海洋微生物)が(n−3)シリーズのドコサヘキサエン酸を生産および/または蓄積することが可能である。微生物生産が季節性、天候および食物供給等の外部変数で生じる変動を受けないという事実は特に興味のあることである。例えば、以下の微生物がDHA生産能を有するとして知られている:深海由来のバクテリアであるビブリオ(Vibrio)martinus(ATCC15381)、ビブリオ種T3615、Photobacterium profundum SS9、Mortierella marina MP−1およびPhychromonas kaikaoe(ATCC BAA−363T);Crypthecodinium cohmi、Ctclotellla crypticaおよびMortieralla alpine(IS−4)等の微小藻類;および原生生物であるスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種(ATCC20892)、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)(ATCC34304)およびスラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)。しかしながら、これらの精製した生物を利用するプロセスによれば、リッターあたりバイオマスのグラムあたり生産されるドコサヘキサエン酸の量は低く、10〜500mgの範囲である。いくつかの例と代表的な微生物油生産生物とが
図5に示される。
【0059】
オメガ−3は有益な効果を有することが示され、本明細書に開示された油と組成物とを嚢胞性線維症(Cochrane Database Sys Rev.3)、関節リュウマチ(Drugs 63:845−53)、喘息(Ann Allergy Asthma Immunol:371−7)および血栓性脳卒中(Prev Cardiol 6:38−1)に対する抗炎症効果、心臓保護剤の他、粥状硬化症および不整脈(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids、63:351−62)、乳癌および前立腺癌細胞株の癌増殖阻害ならびに動物実験における減少に対する直接効果(Am J Clin Nutr 77:532−43)、精神分裂症(J Neural Transm Suppl 64:105−17)および他の精神医学疾患(Can J Psychiatry 48:195−203)に対する抗精神病効果、通常の新生児発達および新生児感染に対して用いられる免疫栄養補助剤(Eur J Pediatr 162:122−8)、および神経障害および炎症性の痛みの元になる神経および神経節プロセスを直接改善することによる病理学的痛みの治療(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acid 68:219−24)に使用できる。
2.スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)属
(a)ONC−T18
【0060】
本明細書に開示する海洋微生物ONC−T18をPURF生産微生物単離旅行の一部として採集し、60以上の純粋な培養物を単離した(詳細は表7)。さらに、ONC−T18をカナダのNova Scotia、Advocate Harbor、Fundy湾の塩水湖海草の葉から単離した。顕微鏡観察および系統培養精製技術により、その株はスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属に属する単一微生物であると考えられた。全ての株と2つのATCC比較培養物(ATCC20891およびMYA−1381)を海水(sw)中の0.5%グルコース、0.2%ペプトン、0.2%酵母抽出物で生育させ、GC分析を行った(脂肪酸メチルエステル)。
【0061】
図6はONC−T18と他の近縁生物との間の関連の提案された系統発生樹を示す。
【0062】
ONC−T18は古典的マツ花粉刺激技術と、それに続く選択性培地での培養を用いて単一微生物としてまず単離した。具体的には、1Lの0.2μmフィルターで濾過した海水中に5gl
−1のグルコース、2gl
−1のペプトン、2gl
−1の酵母抽出物を含む栄養培地を調製した。次にBlighおよびDyer抽出法とPUFAガスクロマトグラフィー技術とを用いてONC−T18の脂肪酸プロフィールを測定した。クロマトグラフィーの結果から、この株が大量のTFA、DHAの他、相当量のEPAおよびDPAを生産する能力を有することが示された。
【0063】
開示された真核微生物をDHA、EPAおよびDPAを含む油脂を調製するプロセスに使用できるが、その微生物は上記OCM−T18またはPTA−6245株に限られず、遺伝的修飾、化学突然変異体誘発、培養適応または任意の他の突然変異体株生産手段によるこれら株の変異株であってもよく、これらの修飾により生じたものは本明細書に開示される真核微生物等の遺伝的または形態的および機能的特徴を有する。
【0064】
明確な脂質クラスの性質を有する脂質組成物を生産できる真核微生物と、高い機能性およびそれに基づく付加価値を有するこの様な脂質に関して安定かつ信頼でき、経済的な資源を維持する問題の解決とが開示される。従って、(n−3)シリーズのDHAおよび(n−6)シリーズのDPAを大量に生産する野生株、およびこれらのポリ不飽和脂肪酸を大量に生産する様に設計された変異体および組み替え株が本明細書に開示される。この様な変異体または組み替え微生物には、同じ条件および培地を用いて培養した場合に元の野生型株が生産する脂質よりも高い上記脂質の含有率を有する様に設計されたものが含まれる。さらに、優れた費用効率を有する基質を効果的に使用して、対応する野生型株と比較して同様な量の(n−3)シリーズのDHA、EPAおよび(n−6)シリーズのDPAを含む脂質を生産する様に設計された微生物を選択し得ることも含まれる。
【0065】
スラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目の真核微生物を含み、その真核微生物が不飽和脂肪酸を生産する組成物が開示される。例えば、そのポリ不飽和脂肪酸はDHAおよびDPA等のオメガ−3またはオメガ−6脂肪酸でありうる。
【0066】
真核生物を含み、脂質を生産する組成物が開示される。
【0067】
また、脂質が本明細書に開示される脂質を含む組成物も開示される。
【0068】
また、真核生物がいくつかのスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目のメンバーを含む組成物も開示される。
【0069】
また、真核生物が配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有する18SリボソームRNA遺伝子配列を有する組成物も開示される。
【0070】
遺伝学、脂質の特徴または分類による、真核微生物に対する本明細書に記載したキャラクタリゼーションの任意の形を、本明細書に開示した微生物の特徴付けに使用し得ることが理解される。真核微生物はスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来の1つ以上の微生物を含み得、その例はATCC受託番号20888、20889、20890、10891および20892である。微生物およびそれらが生産する不飽和脂肪酸に関連して利用されうる様々な特性がある。例えば、生物または油または抗酸化剤のセット(単数または複数)を定義するための任意の組み合わせまたは順序の変更にこれらの特性を使用し得ることが理解される。例えば、1つの特性は生物自体の分類、生物の遺伝的同定、生物の脂質および抗酸化剤のプロフィール、および生物の生育条件である。
(b)分類
【0071】
真核微生物はフィラム・ラビリンツロマイコタ(phylum Labyrinthulomycota)由来であり得る。真核微生物は、ラビリンツロマイセテス(Labyrinthulomycetes)綱由来であり得る。真核微生物はスラウストキトリダエ(Thraustochytridae)亜綱由来であり得る。真核微生物はスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目由来であり得る。真核微生物はスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来であり得る。真核微生物はスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属由来であり得る。真核微生物はスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種であり得る。真核微生物はスラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)であり得る。真核微生物はスラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)であり得る。真核微生物はスラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)であり得る。真核微生物はシゾキトリウム属由来であり得る。真核微生物はシゾキトリウム種であり得る。真核微生物は任意の列記した真核微生物の修飾バージョンであることができる。真核微生物は上記の真核生物の綱、亜綱、目、科または属の現在知られていない、または単離されていない任意のメンバーも含むことができる。真核微生物の組み合わせは、1つ以上のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種、シゾキトリウム種、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)、スラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)およびスラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)を含む、本発明に開示された任意の生物の任意の組み合わせであることができる。
【0072】
スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来の真核微生物は、上記に開示した任意のものであり得る。真核微生物はATCC受託番号PTA−6245を有する生物を含むことができる。
(c)遺伝学
【0073】
真核微生物は配列番号1の18S rRNA配列を有することができる。真核微生物は配列番号1と、例えば約90%の相同性、または本明細書に開示した任意の他の同一性を有する18S rRNA配列を有することができる。真核微生物はストリンジェントな条件、または本明細書に開示した任意のその他の条件下に、配列番号1または配列番号1の一部とハイブリダイゼーションする18S rRNA配列を有することができる。
【0074】
生物の核酸の配列類似性/同一性および核酸ハイブリダイゼーションは本発明に記載の通りである。具体的には、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムを用いた、配列番号1とゲノムデータベースGenebank(National Centre for Biotechnology Information、National Institute of Health、Bethesda、MD、USA)中に見出された核酸配列との比較により、配列番号1がいくつかの真核スラウストキトリド(Thraustochytrid)種と関連し(91%の類似性)、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種CHN−1[AB126669](94.5%の類似性)およびスラウストキトリダエ(Thraustochytridae)種N1−27[AB073308](95.5%の類似性)と密接に関連し、スラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum) [AF65338](97.5%の類似性)と最も密接に関連しているとして同定された。
3.(1)配列類似性
【0075】
本明細書で議論した様に、相同性および同一性という用語の使用は類似性と同じであることが理解される。従って、例えば用語相同性の使用が2つの非天然配列間で用いられる場合、これは必ずしもこれらの2つの配列間の進化の関係を示すのではなく、むしろそれらの核酸配列間の類似性または関連性に注目している。2つの進化で関連する分子間の相同性を決定する多くの方法は、それらが進化上関連しているかどうかに係わらず、配列の類似性を測定する目的で任意の複数の核酸または蛋白質に日常的に適用される。
【0076】
一般に、開示された遺伝子および蛋白質の任意の既知の変異体および誘導体、または生じ得る変異体および誘導体を定義する1つの方法は、特定の既知の配列に対する相同性を考慮して変異体および誘導体を定義することで行われる。本明細書に開示された特定の配列のこの同一性は、本明細書の他の場所でも議論される。一般に、本発明に開示された核酸および蛋白質の変異体は、上記の配列または天然の配列に対して少なくとも約50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の相同性を有する。当業者は2つの蛋白質または遺伝子等の核酸の相同性をどのように決定するかを知っている。例えば、相同性が最高のレベルになる様に2つの配列を整列することにより、相同性を計算することができる。
【0077】
相同性を計算する他の方法を、公開されたアルゴリズムを用いて行うことができる。比較のための最適整列をSmithおよびWatermanの部分相同性アルゴリズム(Adv.Appl.Math.、2:482、1981)、NeedlemannおよびWunschの相同性整列アルゴリズム(J.Mol.Biol.48:443、1970)、PearsonおよびLipmanの類似性検索法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444、1988)、これらのアルゴリズムのコンピューター実装(Wisconsin Genetic Software Package、Genetic Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または目視で行うことができる。
【0078】
同じタイプの相同性を核酸に対して、例えばZuker、M.Science 244:48−52、1989;Jaegerら、Proc Natl.Acad.Sci USA 86:7706−7710、1989;Jaegerら、Method Enzymol.183:281−306、1989に開示されたアルゴリズムにより得ることができ、少なくとも核酸整列に関係した問題に対して本明細書に引用により含める。これらの方法のいずれもが典型的には使用され、ある場合はこれらの様々な方法の結果は異なることもあるが、これらの方法の少なくとも1つで同一性が見出された場合、その配列は言及した同一性を有すると言われ、本明細書に開示されることを当業者は理解すると思われる。
【0079】
例えば、本明細書で用いる様に、他の配列と特定の割合の相同性を有するとされる配列とは、任意の1つ以上の上記計算法で計算されたその相同性を有する配列を指す。例えば、第1配列が第2配列に対し他の計算法の任意の1つで計算された80%の相同性を持たなくても、第1配列がZuker計算法を用いて第2配列に対し80%の相同性を有すると計算された場合、本明細書で定義した様に第1配列は第2配列に対して80%の相同性を有する。他の例としては、SmithおよびWaterman計算法、NeedlemanおよびWunsch計算法、Jaeger計算法または任意の他の計算法で計算された様に第1配列が第2配列に対して80%の相同性を持たなくても、Zuker計算法およびPearsonおよびLipman計算法の双方を用いて第1配列が第2配列に対して80%の相同性を有すると計算された場合、本明細書で定義した様に第1配列は第2配列に対して80%の相同性を有する。また別な例として、各計算法(実際には異なった計算法は異なった相同性の割合を計算する結果になるが)を用いて第1配列が第2配列に対して80%の相同性を有すると計算された場合、本明細書で定義した様に第1配列は第2配列に対して80%の相同性を有する。
(2)ハイブリダイゼーション/選択的ハイブリダイゼーション
【0080】
典型的には、ハイブリダイゼーションという用語はプライマーまたはプローブおよび遺伝子等の少なくとも2つの核酸分子間の配列で駆動される相互作用を意味する。配列駆動相互作用は、2つのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体の間で生じる相互作用を意味する。例えば、Cと相互作用するG、またはTと相互作用するAは配列駆動相互作用である。具体的には、配列駆動相互作用はヌクレオチドのワトソン・クリック(Watson−Crick)面またはHoogsteen面で生じる。2つの核酸のハイブリダイゼーションは当業者に公知のいくつかの条件およびパラメーターに影響される。例えば、反応の塩濃度、pHおよび温度の全ては、2つの核酸分子がハイブリダイゼーションするかどうかに影響する。
【0081】
2つの核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションに対するパラメーターは当業者に公知である。例えば、ある実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件をストリンジェントなハイブリダイゼーション条件として定義することができる。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程の何れかまたは双方の温度および塩濃度の双方で制御される。例えば、選択的ハイブリダイゼーションを行うためのハイブリダイゼーション条件にはTm(半分の分子がそのハイブリダイゼーションパートナーから解離する融点)より約12〜25℃低い温度における高イオン強度溶液(6×SCCまたは6×SSPE)中のハイブリダイゼーションと、それに続く洗浄温度がTmより約5〜20℃低くなる様に選ばれた温度および塩濃度の組み合わせでの洗浄が含まれる。温度および塩濃度は、フィルター上に固定化された参照DNA試料が関連する標識核酸とハイブリダイゼーションし、異なったストリンジェンシーの条件下に洗浄される予備実験で実験的に容易に決定される。典型的には、ハイブリダイゼーション温度はDNA−RNAおよびRNA−DNAハイブリダイゼーションでより高くなる。ストリンジェンシーを達成するためにこれらの条件を上記の様に、または公知の様に使用できる(Sambrookら、Molecular Cloning:A laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989;Kunkelら、Methods Enzymol.154:367、1987、少なくとも核酸のハイブリダイゼーションに関連する内容に対して引用により含める)。DNA:RNAハイブリダイゼーションに対する好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は6×SCCまたは6×SSPE中68℃(水溶液中)、それに続く68℃での洗浄であり得る。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよび洗浄は、必要あれば所望の相補性の程度が減少すればそれに応じて、さらに可変性をサーチする任意の領域のG−CまたはA−Tの多さに応じて減少させることができる。同様に、公知の様に必要あればハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシーは所望の相同性が増加するにつれて、さらに高い相同性が望まれる任意の領域のG−CまたはA−Tの多さに応じて増加させることができる。
【0082】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別な方法は、他の核酸に結合した1つの核酸の量(割合)を調べることである。例えば、ある実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は制限核酸の少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントが非限定核酸に結合している場合である。典型的には、非限定プライマーは例えば10または100または1000倍過剰である。限定プライマーおよび非限定プライマーの双方が例えばそのk
dより10、100または1000倍小さい場合、または核酸分子の1個のみが10、100または1000倍である場合、または1つまたは2つの核酸分子がそのk
dより大きい場合にこのタイプの分析を行うことができる。
【0083】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別な方法は、ハイブリダイゼーションが所望の酵素操作を促進することが要求される条件下で酵素的に操作されるプライマーの割合を求めることによる。例えば、ある実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は少なくとも約50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントのプライマーが酵素操作を促進する条件下で酵素的に操作される場合、例えば酵素操作がDNAの延長である場合、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントのプライマー分子が延長される場合である。好ましい条件には酵素が操作を行うに適当であると製造業者が示唆した条件、またはその技術分野で示されている条件が含まれる。
【0084】
相同性と全く同様に、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションレベルを決定するために本明細書に開示された様々な方法があることが理解される。これらの方法および条件は2つの核酸分子間で異なった割合のハイブリダイゼーションを提供し得るが、特に断らない限り任意の方法のパラメーターが一致することで十分である。例えば、80%のハイブリダイゼーションが要求された場合、これらの方法の任意の1つで要求されたパラメーターの範囲でハイブリダイゼーションが生じる限り、本明細書で開示されたと考えられる。
【0085】
組成物または方法が全体的または単独でハイブリダイゼーションを決定するこれらの基準の何れか1つと合致する場合、それは本明細書で開示された組成物または方法であることを当業者は理解し得ると思われる。
(d)製造された分子の組成
【0086】
本発明に開示した真核生物が多数の化合物と組成物とを生産し得ることが理解される。化合物および組成物を1つのサイン、または生物を同定する1つの方法として用いることができる。例えば、ある生物を特徴付ける方法は、その生物が生産する脂質のプロフィールによるものである。本明細書に開示する様に、これらの様々な脂質プロフィールを、生物を特徴付けると同時に、様々な理由のために精製し、操作し採集するために使用できる。
(1)脂質
【0087】
本明細書に開示する様に、各生物はあるプロフィールの不飽和脂肪酸を製造することができることが理解される。これらのプロフィールは生物に特徴的である。以下に生物の不飽和および他の脂質プロフィールのいくつかの例を示す。
【0088】
例えば、真核微生物は少なくとも約4wt%〜6wt%(例えば約5wt%)の脂質または脂肪酸分画を生産可能で、その分画は乾燥細胞バイオマスあたり約0wt%〜約2wt%のミリスチン酸(例えば約1wt%)、約16wt%〜約20wt%のパルミチン酸(例えば約18wt%)、約0wt%〜約2wt%のパルミトレイン酸(例えば約1wt%)、約4wt%〜約8wt%のステアリン酸(例えば約6wt%)、約30wt%〜約34wt%のオレイン酸(例えば約32wt%)、約40wt%〜約44wt%のリノール酸(例えば約42wt%)、および約0wt%〜約3wt%のn−3EPA(例えば約2wt%)を含む。
【0089】
例えば、真核微生物は少なくとも約1wt%〜3wt%(例えば約1.25wt%)の脂質または脂肪酸分画を生産可能で、その分画は乾燥細胞バイオマスあたり約2wt%〜4wt%(例えば約3wt%)のミリスチン酸、約50wt%〜約60wt%(例えば約55wt%)のパルミチン酸、約2wt%〜約4wt%(例えば約3wt%)のパルミトレイン酸、約16wt%〜約20wt%(例えば約18wt%)のステアリン酸、約9wt%〜約13wt%(例えば約11wt%)のオレイン酸、約1wt%〜約3wt%(例えば約2wt%)のエイコサジエン酸、および約6wt%〜約10wt%(例えば約8wt%)のn−3EPAを含む。
【0090】
例えばONC−T18等の真核微生物は乾燥細胞バイオマスあたり少なくとも約30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、70wt%または80wt%(例えば約80wt%)の脂質組成物を生産できる。例えば、真核微生物は約25wt%〜40wt%(例えば少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55または60重量%)のn−3DHA等のオメガ−3脂肪酸、約0〜約3%(例えば少なくとも1または2重量%)のオメガ−3脂肪酸、EPA、および約4%〜12%(例えば少なくとも4、5、6、7、8、9または10重量%)のn−6DPA等のオメガ−6脂肪酸を含む脂質組成物を生産することができる。
【0091】
真核微生物が生産する脂質組成物を、真核微生物が存在する生育条件に基づいて操作し得ることが理解される。様々なパラメーターを変えることにより、本明細書に開示のように、組成物を操作して例えばより高い収率でDHAまたはDPAを製造することができる。例えば、その操作により、より多くのグラム数で製造し得ないかも知れないが、その操作により、EPAに対するDHAまたはDPAより高い比率、および他の所望のPUFAを製造し得、これは精製の観点から望ましいと思われる。様々な条件が本明細書で議論される。
【0092】
図10は開示された真核微生物により生産される様々なPUFAに対する可能な代謝経路を示し、これは脂肪酸メチルエステル代謝物の追跡と矛盾がない。例えば変性プライマーの研究を用いる本発明で開示された経路内で同定できる蛋白質はポリケタイドシンセターゼである(Metzら、(2001)、Scinece 293:290−3、およびKaulman & Hertweck(2002)、Angew.Chem.Chem.Int.Ed.41:1866−9)。例えばハイブリダイゼーションプローブの研究を用いてエロンガーゼおよびデサチュラーゼも同定できる。また、例えばハイブリダイゼーションプローブおよび/または変性プライマーの研究を用いて脂肪酸シンターゼも同定できる。
4.生育と培養
【0093】
炭素、窒素(ペプチド窒素)、燐および硫黄、浸透圧およびpHを含む表現型マイクロプレートの研究を行った。
【0094】
最適培地構成および窒素、炭素および塩濃度の変化を決めるため、直交アレー(Taguchi)法を用いた(Joseph & Piganatiells JR(1988)、Trans.20:247−254)。
【0095】
攪拌またはdO
2を増加した場合、バイオマスの生産およびTFAは増えるがDHAの生産は減少する。攪拌またはdO
2を減少した場合、細胞バイオマス(g)およびTFAが減少しDHAが増加するが、C16:0、C16:1およびC18:1も減少する。
【0096】
温度を上げた場合、バイオマスの生産およびTFAが増えるがDHAは減少する。温度を下げた場合、細胞バイオマス(g)およびTFAが減少するがDHAは増加し、C16:0、C16:1およびC18:1が減少する。
【0097】
開示された真核微生物由来の細胞バイオマスを、約2%〜約100%の海水を含む適当な天然または人工海水培地に接種することにより得ることができる。この真核微生物はこの培地中の様々な栄養成分を利用することができる。培地中に用いられる炭素源の例はグルコース、フラクトース、デキストロース、ガラクトース、マルトトリオース、マルトース、ラクトース、グリコーゲン、ゼラチン、デンプン(コーンまたはコムギ)等の炭水化物の他、アセテート、m−イノシトール(コーンスティープリカー由来)、ガラクチュロン酸(ペクチン由来)、L−フコース(ガラクトース由来)、ゲンチオビオース、グルコサミン、α−D−グルコース−1−燐酸(グルコース由来)、セロビオース(セルロース誘導体)、デキストリン(コーン誘導体)およびα−シクロデキストリン(デンプン由来)等の糖誘導体、マルチトール、エリトリトール、アドニトール等のポリオール、グリセロール等のオレイン酸、tween80、およびN−アセチル−D−ガラクトサミン、N−アセチル−D−グルコサミンおよびN−アセチル−β−マンノサミン等のアミノ糖である。窒素源の例はペプトン、酵母抽出物、モルト抽出物および魚肉等の天然窒素源、またはグルタミン酸ナトリウム等の有機窒素源であるが、それらに限定されない。さらに、必要あれば燐酸カリウムおよび燐酸ナトリウム等の燐酸塩、硫酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、オルトバナジン酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化コバルト、塩化鉄、塩化マンガンおよび塩化カルシウム等の無機塩を、微量栄養物として使用し得、キレート化合物であるエチレンジアミン四酢酸を単独またはピリドキシン塩酸塩、チミン塩酸塩、パントテン酸カルシウム、p−アミノ安息香酸、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、葉酸およびビタミンB12等のビタミンと組み合わせて使用できる。培地を調製後、pHを酸または塩基を用いて3.0〜10.0の間、適当な場合は例えばpH4.0〜6.5の間に調節し、例えばオートクレーブによって培地を滅菌する。エアレーション振盪培養、振盪培養、静置培養、バッチ培養、連続培養、ローリングバッチ培養または波動培養等により、4〜30℃、好ましくは18〜28℃の間の温度で1〜30日間、1〜21日間、1〜15日間、1〜12日間、1〜9日間、または好ましくは3〜5日間、培養を行うことができる。
【0098】
以下の条件は、1組の脂質を製品として使用可能な収率で生産できる条件の例である。ONC−T18に対する培養条件の研究から、本明細書で開示した真核微生物は天然または人工海水中、または5%までの濃度の天然または人工海水を含む培地中でよく生育することが明らかとなった。培地に添加する炭素および窒素源は、上記の様な通常用いられるものであり得る。天然または有機性である窒素源は相対的に等しく、培地中の全窒素濃度は一定に保たれる。これらの栄養源を標準の濃度で培地に添加する。この様な条件に合致した場合、本発明に開示する様に産生される脂質含有量、蓄積するDHA、DPAおよびEPAの比率または量に殆ど影響がない。
【0099】
ONC−T18の高濃度発酵では、細胞バイオマスと脂質生産率との双方を増加するいくつかの方法を用いることができる。これらには培地中の炭素および窒素濃度(6:1〜15:1の間の比、好ましくは6:1〜13:1の間の比、および4〜30℃、好ましくは18〜28℃の間の温度)をそれぞれ5gl
−1〜60gl
−1の範囲から100gl
−1〜160gl
−1の範囲へ、および4gl
−1〜10gl
−1の範囲から40gl
−1〜60gl
−1の範囲へ増加することが含まれる。この方法を用いると、バイオマスと生産される脂質との比率も同等な比率で増加する。さらに、窒素源を一定にして、5gl
−1〜60gl
−1の範囲から100gl
−1〜160gl
−1の範囲に増加した炭素源を用いることにより、脂質生産量を増加することが可能である。さらに、炭素源を一定にして、10gl
−1〜60gl
−1の範囲から窒素源の量を増加することにより、脂質含有量を保ちながらバイオマス生産量を増加することが可能である。さらに、攪拌を100〜1000rpmの範囲、より好ましくは350〜600rpmの範囲、最適条件としては350〜450rpmの範囲から増加すると、脂質含有量は僅かに減少し脂肪酸プロフィールに変化がなく、バイオマスおよび脂質の生産量が大きく増加することが実験で分かったが、従属栄養発酵の初期段階では攪拌が特に重要であった。また、培養培地の溶存酸素量が1〜10%、最適条件としては5%で脂質の最適生産が達成されることが実験でも示された。最後に、製造培地(上記)へのアセテート、微量元素、金属およびビタミンの添加は、全脂質価を減少させずに他の脂肪酸に対するDHA、EPAおよびDPAの生産を増加させる。
【0100】
上記のような従属栄養発酵を行うことにより、5g以上の高濃度、より好ましくは20g/L培地以上の濃度の高い濃度の培養で(n−3)シリーズのDHAを含む脂質を製造する細胞バイオマスを終始製造することが可能である。さらに、最大バイオマスレベルに達した後にこれらの脂質の殆どが培養の後期対数期/転移期中に蓄積されることが、実験により示された。しかしながら、発酵プロセス中、脂質含有量は典型的には全バイオマスの25%以下に減少せず、典型的には約80%で最大になる。上記条件下での培養を通常の攪拌培養器を用いて行うことができる。泡カラム培養器(バッチまたは連続培養)または波動発酵器を使用することも可能である。
【0101】
脂質分離のために処理する前に、細胞バイオマスの収集を遠心分離(固体排出遠心分離機等)または濾過(クロスフロー濾過等)の様々な通常の方法を用いて行うことができ、細胞バイオマスの収集を促進するための沈殿剤(燐酸ナトリウム、塩化カルシウムまたはポリアクリルアミド等)の使用も含まれ得る。
5.脂質の単離
【0102】
図7は様々なパラメーターの関数としての脂質およびDHAプロフィールを示す。このデータの全ては、ONC−T18真核微生物についての特異的な特性を抽出するために使用し得る。
図13は開示された真核生物についての全体的な脂肪酸プロフィールを示す。
【0103】
(n−3)シリーズのDHAおよび(n−6)シリーズのDPAを含む脂肪を、例えばすり潰し、超音波処理により収集した細胞バイオマスを破壊または崩壊させ、クロロホルム、ヘキサン、メタノール、エタノールなどの溶媒で抽出、または長臨界流体抽出法により得ることができる。(n−3)シリーズのDHAおよび(n−6)シリーズのDPAを含む得られた脂肪の乾燥細胞バイオマスのグラムあたりの含有量は、好ましくは0.25gより大きく、より好ましくは0.6gより大きい。
【0104】
OCN−T18等の開示された真核微生物、その任意の変異体および真核細胞の同種のメンバー間の任意の集合は、この様にして得られる脂質を製造することが可能であり、その脂質プロフィールは以下の通りである。中性脂質の割合は全脂質の少なくとも95重量%であり得る。中性脂質中のONC−T18等の真核微生物に対する典型的な脂肪酸組成は以下の通りである:ミリスチン酸15%、ペンタデカン酸8%、パルミチン酸35%、パルミトレイン酸7%、ステアリン酸1%、オレイン酸2%、エイコサペンタエン酸1%、ドコサペンタエン酸6%およびドコサヘキサエン酸25%(GCスペクトルを
図1に示す)。
【0105】
ONC−T18等の開示された真核微生物、その任意の変異体および同じ種の真核微生物の同じ種のメンバー間の任意の集合は、この様にして得られる脂質を製造することができ、その脂質プロフィールは以下の通りである。ONC−T18の中性脂質分画中のモノ、ジおよびトリグリセリドの割合はそれぞれ0〜約2%、0〜約2%および96〜約100%である。極性脂質分画は脂質分画の5%〜約10%であるが、それらにはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよび中性脂質に結合した、または結合しないホスファチジン酸が含まれる。
【0106】
これらの脂質が生物内の任意の組み合わせまたは順列中に見出し得ることが理解される。また、これらの脂質の濃度を、本発明で議論した様な生育条件および培地条件を変化することにより操作し得ることも理解される。
(1)脂質濃度
【0107】
真核微生物は、培地1l当たり約4.0gより多いか等しいn−3DHA、EPAおよびn−6DPAを含む脂質分画を製造できる。真核微生物は、培地1l当たり約20.0gより多いか等しいn−3DHA、EPAおよびn−6DPAを含む脂質組成物を製造できる。真核微生物は、培地1l当たり約14.0gより多いか等しいn−3DHA、EPAおよびn−6DPAを含む脂質組成物を製造できる。真核微生物は約1.5gl
−1〜約5.0gl
−1(例えば約4.6gl
−1)のn−3DHA、約0.5gl
−1〜約1.5gl
−1(例えば約0.22gl
−1)のn−3EPA、および約0.5gl
−1〜約1.5gl
−1のn−6DPAを生産できる。さらに、真核微生物はミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびドコサペンタエン酸を含む脂質分画を、細胞バイオマス1gに対し301.2〜360.3mgの濃度で、または790mgの濃度まで生産できる。真核微生物はまた、44.3〜57mgg
−1のミリスチン酸(1134.5〜1458.1mgl
−1に等しい)、0.5〜0.65mgg
−1のミリストレイン酸(13.3〜16.63mgl
−1に等しい)、33.5〜34.6mgg
−1のペンタデカン酸(856.9〜85.1mgl
−1に等しい)、121.9〜165.1mgg
−1のパルミチン酸(3118.2〜4223.3mgl
−1に等しい)、7.9〜28.5mgg
−1のパルミトレイン酸(202.1〜729mgl
−1に等しい)、4.38〜5.9mgg
−1のステアリン酸(112〜151mgl
−1に等しい)、6.95〜9.9mgg
−1のオレイン酸(177.5〜253.2mgl
−1に等しい)、0.4〜1.3mgg
−1のリノール酸(11.26〜33.3mgl
−1に等しい)、0.5〜1.0mgg
−1のエイコサジエン酸(12.8〜25.6mgl
−1に等しい)、0.4〜0.5mgg
−1のアラキドン酸(10.2〜13mgl
−1に等しい)、75〜100mgg
−1のドコサヘキサエン酸(1918〜2560mgl
−1に等しい)、1.9〜6mgg
−1のエイコサペンタエン酸(48.6〜153.5mgl
−1に等しい)、および17.1〜33.7mgg
−1のドコサペンタエン酸(437.4〜862.1mgl
−1に等しい)を含む、細胞バイオマス内に301〜790mgg
−1(7700〜20,209mgl
−1に等しい)全脂肪酸含有量を有する分画を生産することができる。
(2)他の分子
【0108】
真核微生物はさらにカロテノイドとキサントフィルとを製造することができる。この様なカロテノイドおよびキサントフィルの例にはβ−カロテン、リコペン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、フェニコキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、βクリプトキサンチン、カプサンチン、ルチン、アナット(annatto)、β−アポ−8−カロテナールおよびβ−アポ−8−カロテナールエステルが含まれる。
【0109】
開示された真核微生物が生産するキサントフィルを、開示された真核微生物によりまた生産される様々なPUFAと接合させることができる。
(a)抗酸化剤
【0110】
一般に、抗酸化剤は酸素と反応し、典型的には酸素により消費される化合物である。抗酸化剤は典型的に酸素と反応するので、抗酸化剤はまた典型的には遊離ラジカル発生剤および遊離ラジカルと反応する(“The Antioxidants−The Nutrients that Guard Your Body”、Richard A.Passwater、Ph.D、1985、Keats Publishing Inc.、少なくとも抗酸化剤に関連する内容について、本明細書に引用により含める)。組成物は任意の抗酸化剤を含み、その非限定リストにはマルチカロテン、β−カロテン、α−カロテン、γ−カロテン、リコペン、ルテインおよびゼアキサンチン等、セレン、α、βおよびγを含むビタミンE(トコフェロール、特にαトコフェロール、ビタミンEスクシナートおよびトロロックス(trolox)(可溶性ビタミンEアナログ))、ビタミンC(アスコルビン酸)およびナイアシン(ビタミンB
3、ニコチン酸およびニコチンアミド)、ビタミンA、13−シス−レチノイン酸、N−アセチル−L−システイン(NAC)、アスコルビン酸ナトリウム、ピロリジンエディチオカツバメートおよび補酵素Q
10;H
2O
2および有機パーオキサイドに作用するグルタチオンパーオキシダーゼ(GSHPX)、H
2O
2に作用するカタラーゼ(CAT)、O
2H
2O
2を不均一化するスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオントランスフェラーゼ(GSHTx)、グルタチオンレダクターゼ(GR)、グルコース6燐酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)およびその類似体、アナログおよびポリマー(SOD等の抗酸化酵素のアナログおよびポリマーは例えば米国特許第5,171,680号に記載され、少なくとも抗酸化剤および抗酸化酵素に関連する内容を本明細書に引用により含める)等のペルオキシダーゼを含む遊離ラジカルの分解を触媒する酵素;グルタチオン;セルロプラスミン;システインおよびシステアミン(βメルカプトエチルアミン)、フラベノイドおよび葉酸および葉酸塩等のフラベノイド様分子を含む遊離ラジカルを直接消去できる非フラボノイド抗酸化剤および栄養剤が含まれるが、それらに限定されない。抗酸化酵素およびその類似体、および抗酸化栄養剤の概説をKumarら、Pharmac.Ther.39:301、1988およびMachlin L.J.およびBendich、FASEB Journal、1:441−445、1987に見出すことができ、抗酸化剤に関連する内容について本明細書に引用により含める。
【0111】
「フェニルクロモン」としても知られるフラボノイドは、抗酸化特性を有する天然起源水溶性化合物である。フラボノイドは維管束植物に広く分布し、様々な野菜、果物および茶およびワイン等の飲料(特に赤ワイン)中に見出される。フラボノイドは接合芳香族化合物である。最も広く見られるフラボノイドはフラボンおよびフラボノール(例えば、ミリセチン、(3,5,7,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシフラボン)、ケルセチン(3,5,7,3’,4’−ペンタヒドロキシフラボン)、ケンフェロール(3,5,7,4’−テトラヒドロキシフラボン)、フラボンアピゲニン(5,7,4’−トリヒドロキシフラボン)、ルテオリン(5,7,3’,4’−テトラヒドロキシフラボン)およびそれらのグリコシドおよびケルセチン)である。
【0112】
カロテノイドは多くの微生物および植物で製造される重要な天然色素であり、通常その色は赤、オレンジまたは黄色である。伝統的にカロテノイドは飼料、食物および栄養食品産業で使用されてきた。それらは植物の成長および光合成に必須であることが知られ、ヒトにおけるビタミンAの主な食物源である。カロテノイド等の食物抗酸化剤(β−カロテン、リコピン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンシン、ルテイン、アンナット、β−アポ−8−カロテナールおよびβ−アポ−8−カロテナールエステル)は顕著な抗癌活性を示し、慢性疾患の予防に重要な役割を果たす。カロテノイドは、一重項酸素の励起エネルギーをカロテノイド鎖上に吸収できる強力な生物学的抗酸化剤であり、カロテノイド分子の劣化をもたらすが他の分子または組織の損傷を防止する。
【0113】
代謝活動に酸素は必要であるが、細胞を攻撃もする。細胞から酸素由来の分子を排除するため、ヒトの体は広範囲の代謝酵素と抗酸化剤とを有する。この酸化ストレスは関節リューマチ、虚血性心臓病および卒中、アルツハイマー痴呆、癌および加齢の病状に寄与する因子であると考えられる。従って、抗酸化剤は広い疾患スペクトルに対し防御する潜在能を有する。海洋微生物源からいくつかの抗酸化剤化合物が単離されているが、それらにはアスタキサンチン、β−カロテンその他のカロテノイドが含まれる。
【0114】
カロテノイドは天然起源色素の広く分布するグループであり、700種以上の天然の脂溶性色素がミクロ藻類、マクロ藻類、バクテリアおよび真菌類により主に生産され、アスタキサンチンおよびその誘導体が商業的に特に関心が高い。アスタキサンチンはきわめて効果的な抗酸化保護剤である。しかし、β−カロテンと異なり、アスタキサンチンは血液−脳/網膜障壁を容易に通過し、従って脳および目の疾患から守る能力がある。前臨床実験は(i)膀胱、結腸、肝臓、乳房および口腔の癌の形成および成長の阻害、(ii)目の網膜を酸化障害から保護し、加齢に関連する斑紋疾患に対し効果がある、(iii)免疫活性を高める、(iv)紫外線損傷からの保護を提供する、(v)筋肉の耐久性の増加を提供する等のアスタキサンチンを摂取する様々な有用な効果を示唆している。
(b)微生物の単離
【0115】
栄養(vegetative)試料を塩水(天然海水または人工海水)中で花粉刺激してインキュベーションする工程と;粒子を分離して従属栄養培地に移しインキュベーションする工程と;脂肪酸を生産する単離体を同定する工程と;同定された単離体からスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来の微生物を単離する工程とを含む方法で得られたスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来の微生物が開示される。単離の別な形式には適当な抗生物質を補充した培地と、上記の顕微鏡法または18S rRNA遺伝子プライマーまたはプローブの使用による同定が含まれる。従属栄養培地は以下に記載する通りである。
5.真核微生物により生産される脂質および他の分子
【0116】
約25wt%〜約40wt%のn−3DHA、約6wt%〜約10wt%のn−6DPAおよび約0wt%〜約3wt%のn−3EPAを含む脂質組成物が開示される。
【0117】
脂質組成物はさらに約11wt%〜約15wt%(例えば約13wt%)のミリスチン酸、約7wt%〜約11wt%(例えば約9wt%)のペンタデカン酸、約37wt%〜約41wt%(例えば約39wt%)のパルミチン酸、約3wt%〜約7wt%(例えば約5wt%)のパルミトレイン酸、約0wt%〜約3wt%(例えば約1wt%)のステアリン酸、または約1wt%〜約4wt%(例えば約2wt%)のオレイン酸を含むことができる。
【0118】
脂質組成物はバイオマスの約400mgを越える濃度のn−3DHAおよびバイオマスの100mgを越える濃度のn−6DHAを含むことができる。
【0119】
脂質組成物はさらにカロテノイドを含むことができる。この様なカロテノイドの例にはβ−カロテン、リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、フェニコキサンチン、カプサンチン、ルテイン、アンナット、β−アポ−8−カロテナールおよびβ−アポ−8−カロテナールエステルが含まれる。
【0120】
ある態様では、組成物は少なくとも約24wt%のn−3DHA、約1wt%のn−3DPA、約6wt%のn−6DPAおよび約1wt%のn−3EPAを含み得る。
6.真核微生物によって生産される分子を含む組成物
【0121】
ヒトおよび動物(海洋動物を含む)用の食品、栄養補助剤、医薬組成物は本組成物(脂質、抗酸化剤および脂質または抗酸化剤単独)を含むことができる。
【0122】
また、本組成物(脂質、抗酸化剤および脂質または抗酸化剤単独)を含む幼児用配合食も開示される。
C.方法
1.脂質の製造法
【0123】
スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来の1つ以上の微生物を含む真核微生物を培養し、脂質組成物を単離する工程を有する脂質組成物の調製法が開示される。
【0124】
濾過または遠心分離等、様々な培地中の発酵から得られた細胞バイオマスの回収に用い得る方法は様々である。次に細胞を洗浄し、凍結乾燥または噴霧乾燥し、加工食品または飼料製品中に添加する前に残存酸素を除去するために非酸化性雰囲気中で保存される。
【0125】
(n−3)DHA、EPAおよび(n−6)DPA PUFAを含む細胞脂質を、超臨界液体抽出またはクロロホルム、ヘキサン、塩化メチレンまたはメタノール等の溶媒抽出法により細胞バイオマスから抽出し、得られた抽出物を減圧下に蒸発させて濃縮脂質材料の試料を製造することができる。脂質を加水分解し、尿素内転または分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の伝統的な方法を用いて、または超臨界液体分画で高度不飽和分画を濃縮することにより、オメガ−3およびオメガ−6PUFAをさらに濃縮してよい。細胞を破壊または溶菌に、脂質を植物油または動物油(例えば魚油)中に抽出することもできる。抽出された油を、植物油を精製するために通常用いられる周知の方法で精製することができる(化学的または物理的精製により)。これらの精製プロセスは、それらが食用油として使用または販売される前に抽出油から不純物を除去する。精製後、油を飼料または食品添加物として直接使用し、オメガ−3および/またはオメガ−6強化製品を製造することができる。または、油を以下に概説する様にさらに加工精製し得、上記用途および医薬用途に使用し得る。
【0126】
強化(濃縮)オメガ−3またはオメガ−6油の他の製造プロセスでは、収穫した細胞バイオマス(新鮮または乾燥)を超音波処理、液体剪断破壊法、ビーズミリング、高圧圧縮、凍結解凍または細胞壁の酵素消化等の周知の技法で破裂または浸透させることができる。破壊された細胞から、脂質をヘキサン、クロロホルム、エーテルまたはメタノール等の溶剤または混合溶剤を用いて抽出する。溶剤を除去し、塩基、酸または酵素加水分解を含むトリグリセリドを遊離脂肪酸または脂肪酸エステルに変換する周知の方法を用いて、脂質を加水分解する。加水分解を終了後、非鹸化化合物をエーテル、ヘキサンまたはクロロホルム等の溶剤中に抽出し除去する。残った溶液に酸を加えて酸性にし、遊離の脂肪酸をヘキサン、エーテルまたはクロロホルム等の溶剤中に抽出する。遊離脂肪酸を含む溶剤溶液を次に非PUFA化合物が結晶化するに十分な低温に冷却し、結晶を濾過、遠心分離または静置により除去することができる。得られたPUFA化合物を濃縮し、ヒトに対する栄養補充剤、食品添加物または医薬用途として使用する。
【0127】
また、上記の方法により調製した脂質組成物も開示される。
【0128】
スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来の微生物は上記の任意の微生物であり得る。
(a)培地
【0129】
従属栄養培地は海塩(人工または天然)、1つ以上の炭素源および1つ以上の窒素源を含み得る。海塩の量は約2.0〜約40.0gl
−1であり得る。標準培養条件下(高濃度でなく、コスト効率の良い発酵)で用いられる炭素および窒素源の濃度はそれぞれ、5gl
−1〜60gl
−1および4gl
−1〜10gl
−1の範囲である。高濃度発酵では、標準培養条件下で用いられる炭素および窒素源の濃度はそれぞれ、100gl
−1〜160gl
−1および40gl
−1〜60gl
−1の範囲である。油蓄積の方向では、真核微生物は窒素の供給が約24〜約48時間後に制約される培地(上記の様な)中で生育するが、炭素は豊富に供給される。この真核微生物は炭素を同化し続ける(単糖の形で)が、関連する蛋白質と核酸との生成のための窒素を欠くため、細胞分裂を続けることができない。その結果、Ratledge C.(Lipid Tech.16:34−39、2004)により記載され、
図9がこの現象がこの生物に特異的であることを示すと同様に、糖は貯蔵油に変換される。
【0130】
窒素源はペプトン、酵母抽出物、モルト抽出物およびグルタミン酸ナトリウムの1つ以上であり得る。窒素源はコーンスティープリカーまたは綿実抽出物でもよい。窒素源は酵母抽出物および/またはペプトンまたはグルタミン酸1ナトリウムを含むことができる。例えば、窒素源はEMD(商標)YE−MSG、EMD(商標)YE、EMD(商標)ペプトン−MSG、Sigma(商標)YE−MSG、Sigma(商標)YE、Fermtech(商標)YE−MSG、Fermtech(商標)YEまたは魚肉(蛋白質62%)を含み得るが、それらに限定されない。酵母抽出物の量は約2gl
−1であり得る。グルタミン酸1ナトリウムの量は約8gl
−1であり得る。
【0131】
炭素源はD−トレハロース、グリセロール、D−グルコン酸、L−乳酸、D,L−リンゴ酸、D−リボース、Tween20、D−フラクトース、酢酸塩、酢酸、α−D−グルコース、マルトース、チミジン、L−アスパラギン、D−キシロース、Tween40、α−ケトグルタル酸、スクロース、L−グルタミン、Tween80、βメチル−D−グルコシド、マルトトリオース、アデノシン、フマル酸、ブロモコハク酸、L−セリン、D−セロビオース、L−アラニルグリシン、ピルビン酸メチル、L−リンゴ酸、グリシル−L−プロリン、D−パルコース、L−キシロース、ピルビン酸、α−D−ラクトース、デキストリン、D−アラビノース、2−デオキシ−D−リボース、ゼラチン、デキストロース、デンプン、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−D−アラビノース、D−タガトース、5−ケト−D−グルコン酸、オキサロリンゴ酸、ソルビン酸、L−オルニチンおよびジヒドロキシアセテートの1つ以上であり得る。ある態様では、炭素源はD,L−リンゴ酸、D−フラクトース、D−キシロース、フマル酸、D−セロビオース、5−ケト−D−グルコン酸、ピルビン酸、α−D−ラクトース、コーンデキストリン、ゼラチン、コーンデンプンまたはコムギデンプンであり得る。炭素源の量は約1gl
−1〜約60gl
−1であり、約200gl
−1までであり得る。
【0132】
ある例では、培地は塩水(天然または人工)1リッターあたり約5gのD−グルコース、約2gのペプトンおよび約2gの酵母抽出物を含むことができる。他の例では、塩水(天然または人工)1リッターあたり培地は約60gのD−グルコース、約10gの酵母抽出物を含むことができる。他の例では、培地は1リッターあたり約8gの酵素抽出物、32gのMSG、24gの海塩(天然または人工)および300gのD−グルコースを含むことができる。
【0133】
培地はさらにリン酸塩(例えば燐酸カリウムおよび燐酸ナトリウム)を含むことができる。培地はさらに無機塩(例えば硫酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、オルソバナジン酸ナトリウム、クロム酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、亜セレン酸、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化コバルト、塩化鉄、塩化マンガン)を含むことができる。培地はさらにキレート剤(例えばEDTA)を含むことができる。培地はさらにビタミン(例えばピリドキシン塩酸塩、チアミン塩酸塩、パントテン酸カルシウム、p−アミノ安息香酸、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、葉酸およびビタミンB12)を含むことができる。培地のpHは約4.0〜約6.5であり得る。
【0134】
インキュベーション時間は約1〜約9日(例えば約3〜約5日)であり得る。インキュベーション温度は約18〜約30℃(例えば約8〜約25℃)であり得る。さらに振盪またはエアレーションを行ってよい。
【0135】
脂質の単離には微生物を抽出溶剤と接触させる工程が含まれ得る。溶剤はクロロホルム、ヘキサン、メタノールまたはエタノール、または超臨界CO
2から選ばれた1つ以上の溶剤であり得る。
【0136】
本方法で上記の任意の組成物を製造し得る。
【0137】
真核微生物はn−3DHAを含む脂質組成物を培地1l当たり約20gより大きいか等しい濃度で生産できる。真核微生物はn−3DHAを含む脂質組成物を培地1l当たり約40gより大きいか等しい濃度で生産できる。真核微生物はn−3DHAを含む脂質組成物を培地1l当たり約80glより大きいか等しい濃度で生産できる。
2.スクリーニングおよび同定法
【0138】
本明細書に開示した真核微生物は(n−3)シリーズのドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸、および(n−6)シリーズのDPAを含む脂質を生産できる。これらの真核微生物を例えば以下のスクリーニング法で選択できる。それぞれ300および500mgl
−1のペニシリンおよびストレプトマイシンを含む、10mlの滅菌した0.2μmにて濾過した天然海水を含む20mlバイアル中に増殖期試料を入れることができる(入れた)。バイアルを滅菌花粉粒で刺激し、18〜25℃で48時間インキュベーションした。次に花粉粒を、抗生物質を含む寒天プレート上に移し(上記の通り)、同じ条件でインキュベーションした。球状またはウミウシ様細胞で構成され、変則的な酵母またはバクテリアコロニー状の単一の不規則なガラス状コロニーをつまみ上げ、上記と同じ培地上および同じ条件下で継代培養した。次に5gl
−1のグルコース、2gl
−1のペプトンおよび2L
−1の酵母抽出物を含む0.2μmにて濾過した天然海水で調製した栄養液体培地を用いて、これらの単離体を生育および脂肪酸についてスクリーニングし、得られた細胞バイオマスを遠心分離または液体培地内の沈降で集めた。定法を用いてエステル交換により脂肪酸を直接エステル化し、脂肪酸メチルエステル組成をガスクロマトグラフィーで分析し、適当な量のn−3シリーズのDHAおよびn−6シリーズのDPAを生産する株を以後の実験のために選択した。
【0139】
真核微生物を同定する方法を開示するが、その方法は塩水(天然または人工)中の増殖期試料(vegetative sample)を花粉粒で刺激し、インキュベーションする工程と;粒子を従属栄養培地に移しインキュベーションする工程と;脂肪酸を生産する単離体を同定する工程とを有する。
【0140】
上記の同定された真核微生物により生産される脂質組成物も開示される。
【0141】
本発明に開示した真核微生物を用いる方法と本発明に開示した方法とで生産される脂質組成物も開示される。
【0142】
American Type Collection受託番号PTA−6245を有する真核微生物(ONC−T18)も開示される。
【0143】
配列番号1等の18S rRNAを有し、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種であると同定されたスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目に属する真核微生物も開示される。
【0144】
それぞれ400mgl
−1および100mgl
−1を越える濃度でDHAおよびDPAを生産し得るスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種の真核微生物も開示される。
【0145】
上記の様な従属栄養発酵によりカロテノイドを50〜1250mgkg
−1の範囲で、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、エキネニンおよびβ−カロテンをそれぞれ1〜20mgkg
−1、0.25〜10mgkg
−1、1〜20mgkg
−1、1〜20mgkg
−1および1〜200mgkg
−1の範囲で生産できる真核微生物スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種も開示される。
【0146】
人工海水(栄養海水)としての2.0〜15.0gl
−1の塩化ナトリウム、それぞれ酵母抽出物およびグルタミン酸1ナトリウムとしての2.0〜8.0gl
−1の窒素源、およびグルコースとしての130gl
−1までの炭素源を含む培地を有する条件下で、真核微生物を培養する工程を有する真核微生物の培養プロセスも開示される。
【0147】
開示されたプロセスは例えばONC−T18を生育可能で、全脂肪酸の少なくとも24重量%はDHA、少なくとも6重量%はDPA、少なくとも1重量%はEPAである。
【0148】
例えば少なくとも1重量%がカロテノイド材であり、その1〜2重量%、少なくとも1.2重量%はアスタキサンチンであり、0.25〜1重量%、少なくとも0.45重量%はゼアキサンチンであり、5〜16重量%、少なくとも9重量%はカンタキサンチンであり、1〜2重量%、少なくとも1.2重量%はエキネノンであり、12〜16重量%、少なくとも14重量%はβ−カロテンである様に、生育のための開示されたプロセスはONC−T18を生育することができる。
3.核酸
【0149】
例えばrRNAをコードする核酸を含む核酸塩基の他、本明細書で開示されるその他の蛋白質および様々な機能性核酸等の様々な分子が本明細書に開示される。開示された核酸は例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド置換体で構成される。これらの、および他の分子の非限定例を本明細書で議論する。例えば、あるベクターが細胞中で発現した場合、発現したmRNAは典型的にはA、C、GおよびU/Tで構成されることが理解される。同様に、例えばアンチセンス分子が例えば外因性送達で細胞または細胞環境中に導入された場合、細胞環境中でアンチセンス分子の分解を減少するヌクレオチドアナログでアンチセンス分子が構成されることが有利であることが理解される。
(a)ヌクレオチドおよび関連分子
【0150】
ヌクレオチドは塩基部分、糖部分および燐酸部分を有する分子である。ヌクレオチドをその燐酸部分で相互に結合し、糖部分がヌクレオシド間結合を生成することができる。ヌクレオチドの塩基部分はアデニン−9−イル(A)、シトシン−1−イル(C)、グアニン−9−イル(G)、ウラシル−1−イル(U)およびチミン−1−イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分はリボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドの燐酸部分は5価の燐酸である。ヌクレオチドの非限定例は3’−AMP(3’−アデノシンモノホスフェート)または5’−GMP(5’−グアノシンモノホスフェート)である。
【0151】
ヌクレオチドアナログは塩基、糖または燐酸部分にあるタイプの修飾を含むヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する修飾は周知であり、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ハイポキサンチンおよび2−アミノアデニンの他、糖または燐酸部分に対する修飾も含まれる。
【0152】
ヌクレオチド置換体は、ペプチド核酸(PNA)等のヌクレオチドと類似の機能性を有するが、燐酸部分を含まない分子である。ヌクレオチド置換体はワトソン・クリックまたはHoogsteen方式で核酸を認識するが、燐酸部分以外の部分で相互に結合している分子である。ヌクレオチド置換体は適当な標的核酸と相互作用する場合、二重螺旋に適合することができる。
【0153】
例えば細胞取り込みを促進するために、他のタイプの分子をヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログと結合(接合)することが可能である。接合体をヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログに化学的に結合することができる。この様な接合体にはコレステロール部分等の脂質部分が含まれるが、それに限定されない(Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:6553−6556、1989)。
【0154】
ワトソン・クリック相互作用はヌクレオチド、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド置換体のワトソン・クリック面との少なくとも1つの相互作用である。ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド置換体のワトソン・クリック面にはプリン系ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド置換体のC2、N1およびC6位、およびピリミジン系ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド置換体のC2、N3およびC4位が含まれる。
【0155】
Hoogsteen相互作用は、二重鎖DNAの主溝中に暴露されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログのHoogsteen面上で行われる相互作用である。Hoogsteen面にはプリンヌクレオチドのN7位およびC6位の反応基(NH
2またはO)が含まれる。
(b)配列
【0156】
例えば配列番号1に関連する配列の他、Genbankで開示できる本発明に記載の他の核酸および蛋白質は様々であり、これらの配列および他の配列、およびそれに含まれる個々のサブ配列がその全体を引用により含める。
【0157】
様々な配列が本明細書で提供され、それらはwww.pubmed.govでGenbank中に見出される。当業者は配列の矛盾および差異をどのようにして解決し、特定の配列に関連する組成物および方法を他の関連する配列にどのようにして合わせるかを理解している。本発明に開示され、公知である情報が与えられると、いずれの配列に対してもプライマーおよび/またはプローブを設計することができる。
(c)プライマーおよびプローブ
【0158】
本明細書に開示した遺伝子と相互作用し得るプライマーおよびプローブを含む組成物は開示される。ある実施形態ではプライマーはDNA増幅反応を支援するために用いられる。典型的には、プライマーは配列特異的に延長できる。配列特異的プライマー延長には、プライマーがハイブリダイゼーションする、または会合する核酸分子の配列および/または組成が、プライマーの延長により生成する産物の組成または配列を目的とする、またはそれに影響する任意の方法が含まれる。従って、配列特異的プライマー延長にはPCR、DNA配列決定、DNA延長、DNA重合、RNA転写または逆転写が含まれるが、それらに限定されない。配列特異的にプライマーを増幅する技術および条件が好ましい。ある態様では、プライマーを本発明で述べるスラウストキトリウム(Thraustochytrium)またはバシラス(Bacillus)に対する種または属特異的プローブとして使用し得る。この場合、真核微生物に特異的である様にプライマーを設計し、その後PCR反応を行う。PCR生成物がうまく得られた場合、標的種の存在が決定されたと考えられる。ある態様ではプライマーをPCR等のDNA増幅反応または直接配列決定に用いることができる。ある態様ではプライマーを、非酵素的技術を用いても延長でき、例えばプライマーを延長するために用いたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを、それらが化学的に反応してプライマーを配列特異的に延長する様に修飾されることが理解される。典型的には、開示されたプライマーは核酸または核酸領域とハイブリダイゼーションするか、または核酸の相補体または核酸領域の相補体とハイブリダイゼーションする。
(d)核酸の送達
【0159】
被検体の細胞中へ外因性DNAの投与または取り込みを含む上記の方法(すなわち遺伝子導入またはトランスフェクト)で、開示された核酸はそのままのDNAまたはDNAであるか、または核酸を細胞に送達するためのベクター中であり得、当業者が理解し得る様に、抗体をコードするDNA断片はプロモーターの転写制御下にある。ベクターはアデノウイルスベクター(Quantum Biotechnologies、Inc.(Laval、Quebec、Canada))等の市販ベクターであり得る。核酸またはベクターの細胞への送達は様々な機構で行い得る。1つの例として、LIPOFECTIN、LIPOFECTAMINE(GIBCO−BRL、Inc.、Gaithersburg、MD)、SUPERFECT(Quiagen、Inc.、Hilden、Germany)およびTRANSFECTAM(Promega Biotecc Inc.、Madison、WI)の他、当業界の標準法に従って開発されたリポソーム等の市販リポソーム製剤を用いるリポソームで行われる。さらに、開示された核酸またはベクターをエレクトロポーレーションによりインビボで送達できるが、そのための技術はGenetronics、Inc.(San Diego、CA)から入手し得る他、SONOPORATION装置(imarx Pharmaceutical Co.、Tuscon、AZ)により行うことができる。
【0160】
1つの例として、ベクターの送達を、組み替えレトロウイルスゲノムを含み得るレトロウイルスベクター系等のウイルス系で行うことができる(Pastanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:4486、1988;Mullerら、Mol.Cell Biol.6:2895、1986を参照)。次いで組み替えレトロウイルスを使用して感染させ、それにより広く中和する抗体をコードする核酸(またはその活性断片)を感染細胞に送達する。変化させた核酸を哺乳動物細胞中へ導入する正確な方法は、当然レトロウイルスベクターの使用のみに限定されない。アデノウイルスベクター(Mitaniら、Hum.Gene Ther.5:941−948、1944)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(Goodmanら、Blood84:1492−1500、1994)、レンチウイルスベクター(Naidiniら、Science272:263−267、1966)、シュード型レトロウイルス(Agrawalら、Expr.Hematol.24:738−737、1966)の使用を含め、この方法のために他の技術も広く利用できる。リポソーム送達および受容体媒介および他のエンドサイトーシス機構等の物理的導入法を用いることもできる(例えばSchwartzenbergerら、Blood87:472−478、1996を参照)。この開示された組成物と方法とを任意の他の通常用いられる遺伝子導入法と組み合わせて使用することができる。
4.発現系
【0161】
細胞へ送達される核酸は発現制御系を典型的に含む。例えば、ウイルスまたはレトロウイルス系中の挿入遺伝子は通常、所望の遺伝子生産物の発現制御を助けるためにプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。プロモーターは、一般に、転写開始部位に関して相対的に固定された場所にある場合に機能するDNA配列(単数または複数)である。プロモーターは、RNAポリメラーゼと転写因子との基本的な相互作用に必要なコア要素を含み、上流要素と応答要素とを含んでよい。
【0162】
以下に議論する一般的な系に加えて、本明細書に開示される生物で使用できる様々な転写制御系が存在することが理解される。本明細書で開示された微生物が本明細書で議論するマーカー遺伝子、または増進した、または独自の生育特性等の他の望ましい寄与をする遺伝子等の様々な遺伝子によりトランスフェクトし形質転換できることが理解される。
(a)ウイルスプロモーターおよびエンハンサー
【0163】
哺乳動物宿主細胞中でベクターからの転写を制御する好ましいプロモーターを、例えばポリオーマウイルス、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはサイトメガロウイルス等のウイルスゲノム;または例えばβアクチンプロモーター等の異種哺乳動物プロモーター等の様々な起源から得ることができる。SV40の初期および後期プロモーターを、SV40ウイルス複製開始点も含むSV40制限断片として得るのが便利である(Fiersら、Nature、273:113、1978)。ヒトサイロメガロウイルスの最初期プロモーターをHindIII E制限断片として得るのが便利である(Greenway、P.J.ら、Gene 18:355−360、1982)。当然、宿主細胞または関連種由来のプロモーターも本発明で有用である。
【0164】
エンハンサーとは一般に転写開始部位から一定でない距離で作用するDNA配列を指し、転写単位に対して5’(Laminis、L.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.78:993、1981)または3’(Lusky、M.L.ら、Mol.Cell Bio.3:1108、1983)の何れかであり得る。さらに、エンハンサーはイントロン内であるか(Banerji、J.L.ら、Cell、33:729、1983)、それ自体のコード配列内(Osborne、T.F.ら、Mol.Cell Bio.4:1293、1984)であり得る。それらの長さは通常10〜300bpであり、シス(cis)で機能する。エンハンサーは近辺のプロモーターからの転写を増加する様に機能する。エンハンサーはまた、転写調節を媒介する応答要素も含むことが多い。プロモーターは転写の調節を媒介する応答要素も含むことができる。エンハンサーは遺伝子発現の調節を決定することが多い。現在では哺乳動物遺伝子(グロブリン、エラスターゼ、アルブミン、αフェト蛋白質およびインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が知られているが、典型的なエンハンサーは全体的な発現のために真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを利用する。好ましい例は複製開始点の後期側上のSV40エンハンサー(100〜270bp)、サイトメガロウイルス初期エンハンサー、複製開始点の後期側上のポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーである。
【0165】
プロモーターおよび/またはエンハンサーを光またはその機能の引き金を引く特別な化学反応により特異的に活性化することができる。系をテトラサイクリンおよびデキサメタゾン等の試薬で調節することができる。γ線等の放射線、またはアルキル化化学療法剤に暴露することにより、ウイルスベクター遺伝子発現を活性化する方法もある。
【0166】
ある実施形態では、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は転写される転写ユニットの領域の発現を最大にするための構成的プロモーターおよび/またはエンハンサーとして作用することができる。あるコンストラクトでは、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は、それが特定のタイプの細胞中で特定の時間でのみ発現しても、全ての真核細胞タイプ中で活性である。このタイプの好ましいプロモーターはCMVプロモーター(650bp)である。他の好ましいプロモーターはSV40プロモーター、サイトメガロウイルス(完全長プロモーター)およびレトロウイルスベクターLTFである。
【0167】
特定の調節要素をクローン化し、メラノーマ細胞等の特定の細胞型中で選択的に発現する発現ベクターを構築するために使用することができることが示された。グリア線維性酢酸蛋白質(GFAP)プロモーターがグリア起源の細胞中で遺伝子を選択的に発現するために使用されている。
【0168】
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、動物、ヒトまたは有核細胞)中で使用される発現ベクターは、mRNA発現に影響し得る転写の停止に必要な配列も含み得る。これらの領域は、組織因子蛋白質をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニルか部分として転写される。3’非翻訳領域には転写停止部位も含まれる。転写ユニットがポリアデニル化領域も含むことが好ましい。この領域の利点の1つは、転写されたユニットがプロセシングされ、mRNAの様に輸送される可能性を増加することである。発現コンストラクト中のポリアデニル化信号の同定および使用は十分に確立されている。同種ポリアデニル化信号が導入遺伝子コンストラクト中で使用されることが好ましい。ある転写ユニットでは、ポリアデニル化領域はSV40初期ポリアデニル化信号由来であり、約400塩基で構成される。転写ユニットが他の標準配列のみを含むか、上記配列と組み合わせた配列を含み、コンストラクトからの発現、またはコンストラクトの安定性を改善することも好ましい。
(b)マーカー
【0169】
ウイルスベクターはマーカー生成物をコードする核酸配列を含むことができる。マーカー生成物は遺伝子が細胞に送達され、送達された後に発現するかどうかを決定するために用いられる。好ましいマーカー遺伝子はβ−ガラクトシダーゼをコードする大腸菌(E.Coli)lacZ遺伝子および緑色蛍光蛋白質である。
【0170】
ある実施形態では、マーカーは選択性マーカーであり得る。哺乳動物細胞に対し適当な選択性マーカーの例はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシンアナログG418、ハイドロマイシンおよびプロミシンである。この様な選択性マーカーを哺乳動物宿主細胞中へ成功裏に移した場合、形質転換哺乳動物宿主細胞は選択性圧力の下に置いた場合も生存することができる。選択的な方法には広く用いられる2つの異なるカテゴリーがある。第1のカテゴリーは細胞の代謝と、補充培地に独立に生育する能力を欠いた突然変異細胞株の使用とに基づいている。2つの例はCHO DHFR細胞およびマウスLTK細胞である。これらの細胞はチミジンまたはヒポキサンチン等の栄養素の添加なしで生育する能力を持たない。これらの細胞は完全なヌクレオチド合成経路に必要なある遺伝子を欠くので、それらは失われたヌクレオチドが補充培地中に提供されなければ生存できない。培地に補足する代わりに、インタクトなDHFRまたはTK遺伝子をそれぞれの遺伝子を欠く細胞中に導入し、生育要求を変えることもできる。DHFRまたはTK遺伝子で形質転換されない個々の細胞は、非補充培地中で生存できないと思われる。
【0171】
第2のカテゴリーは、任意の型の細胞に用いられ、突然変異株の使用を必要としない選択スキームと呼ばれる優性選択である。これらのスキームは宿主細胞の成育を遅らせる薬品を典型的に使用する。新規遺伝子を有するこれらの細胞は薬剤耐性を有する蛋白質を発現し、選択に打ち勝つと思われる。この様な優性選択の例では、薬剤ネオマイシン(Southern、P.およびBerg、P.、J.Molec.Appl.Genet.、1:327、1982)、マイコフェノール酸(Mulligan、R.C。およびBerg、P.、Science 209:1422、1980)またはハイグロマイシン(Sugden、B.ら、Mol.Cell.Biol.5:410−413、1985)が使用される。この3つの例では、適当な薬剤G418またはネオマイシン(ジェネクチン)、xgpt(マイコフェノール酸)またはハイグロマイシンに対する抵抗性をそれぞれ有するために、真核性制御下にあるバクテリア遺伝子が用いられる。その他の例ではネオマイシンアナログG418およびプラマイシンが含まれる。
5.ペプチド
(a)タンパク質変異体
【0172】
本明細書で議論する様に、既知であり本明細書に意図する開示された生物蛋白質の突然変異体は多数ある。さらに、既知の機能的なスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)株に対し、開示された方法および組成物でも機能するスラウストキトリアレス(Thraustochytriales)蛋白質の誘導体が存在する。蛋白質の変異体および誘導体は当業者に十分に理解され、アミノ酸配列の修飾も含まれる。例えば、アミノ酸配列の修飾は典型的には置換、挿入または欠失変異体の1つ以上に分類される。挿入にはアミノおよび/またはカルボキシ末端融合の他、1個または複数個アミノ酸残基の配列間挿入が含まれる。挿入は通常、アミノまたはカルボキシ末端の融合より小さい挿入であり、例えば1〜4残基のオーダーである。実施例に記載される様な免疫原性融合蛋白質誘導体は、インビトロ架橋または融合をコードするDNAで形質転換された組み換え細胞培養により、標的配列を免疫原性にするために十分に大きいポリペプチドの融合により生成する。欠失の特徴は、蛋白質配列から1つ以上のアミノ酸残基の除去である。典型的には、約2〜6以下の残基が蛋白質分子内の任意の1つの部位にて除かれる。これらの変異体は通常、蛋白質をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異誘発で生成し、その結果、変異体をコードするDNAを生成し、その後組み替え細胞培養でそのDNAを発現する。既知の配列を有するDNA中の所定の部位で置換突然変異体を生じる技術は、例えばM13プライマー突然変異体誘発およびPCR突然変異体誘発等が周知である。アミノ酸置換は典型的には1個の残基の置換であるが、いくつかの異なった位置で同時に生じることもあり、一方、挿入は通常約1〜10アミノ酸残基のオーダーであり、欠失は約1〜30残基の範囲である。欠失または挿入は好ましくは隣接したペアで生じる、すなわち2個の残基の欠失または2個の残基の挿入である。置換、欠失、挿入またはその任意の組み合わせにより最終的なコンストラクトに到達し得る。突然変異は配列を読み取り枠の外に置いてはならず、mRNAの2次構造を作成できる相補領域を生成しないことが好ましい。置換変異体とは、少なくとも1個の残基が除去され、その場所へ異なった残基が挿入されたものである。この様な置換は通常、以下の表1、2に従って行われ、保存的置換と呼ばれる。
【0173】
表2のものより保存性の少ない置換、すなわち(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えばシート状または螺旋状空間配置、(b)標的部位の分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩高さを維持する上でその効果がより顕著に異なる残基を選択することにより、機能または免疫的同一性が実質的に変化する。蛋白質の性質に最大の変化を生じると一般に期待される置換は(a)親水性残基、例えばセリルまたはトレオニル残基が疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニル基に対して(またはそれらにより)置換される;(b)システインまたはプロリンが任意の他の残基に対して(またはそれらにより)置換される;(c)電気的に陽性の側鎖を有する残基、例えばリジル、アルギニルまたはヒスチジル基が電気的に陰性の残基、例えばグルタミルまたはアスパルチル基に対して(またはそれらにより)置換される;または(d)嵩高い側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが側鎖を持たない残基、例えばグリシンに対して(またはグリシンにより)置換される様な置換であると思われるが、この場合、(e)硫酸化および/またはグリコシル化に対する部位を増加することにより変化を生じる。
表1:アミノ酸の略号
【0174】
【表1】
表2:アミノ酸の置換
【0175】
【表2】
*その他は文献に公知
【0176】
例えば、1つのアミノ酸残基を生物学的および/または化学的に類似の他のアミノ酸残基で置き換えることは、保存性置換として公知である。例えば、保存性置換とは1つの疎水性残基を他の残基で、または極性残基を他の残基で置き換えることである。この置換には例えばGly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、The;Lys、Arg;およびPhe、Tyr等の組み合わせが含まれる。各々明白に開示された配列のこの様な保存的に置換された変異体は、本明細書で提供するモザイクポリペプチドの範囲に含まれる。
【0177】
置換または欠失突然変異体誘発を、N−グリコシル化(Asn−X−Thr/Ser)またはO−グリコシル化(SerまたはThr)のための部位を挿入するために用いることができる。システインまたは他の反応性残基の欠失も望ましい。潜在的蛋白質分解部位、例えばArgの欠失または置換は、例えば塩基性残基の1つの欠失、または1つの残基のグルタミルまたはヒスチジル残基の置換により行われる。
【0178】
ある種の翻訳後誘導体化は、組み換え宿主細胞の発現ポリペプチドに対する作用の結果である。グルタミニルまたはアスパラギニル残基はしばしば翻訳後に脱アミノ化されて対応するグルタミルおよびアスパリル残基となる。または、これらの残基は若干酸性の条件下に脱アミノ化される。他の翻訳後修飾にはプロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基の燐酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のo−アミノ基のメチル化(T.E,Greighton、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman & Co.、San Fransisco、pp79−86、1983)、N−末端アミンのアセチル化およびある場合はC−末端カルボキシルのアミド化が含まれる。
【0179】
本明細書に開示された蛋白質の変異体および誘導体を定義する1つの方法は、特定の既知の配列に対する相同性/同一性に関して変異体および誘導体を定義することにより行われる。記載した配列に対して少なくとも60%、70%または80%または85%または90%または95%の相同性を有する、本明細書に開示された蛋白質の変異体が具体的に開示されることが理解される。当業者は2つの蛋白質の相同性をどの様に決定するかを理解し得ると思われる。例えば、相同性が最高のレベルになる様に2つの配列を整列した後に、相同性を計算することができる。
【0180】
相同性を計算する別な方法を、公開されたアルゴリズムにより行うことができる。比較のための最適整列を、SmithおよびWaterman、Ad.Appl.Math.2:482、1981の局所相同性アルゴリズム;NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443、1970の相同性整列アルゴリズム;PearsonおよびBunsch、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:2444、1988の類似性検索法;これらのアルゴリズムの実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetic Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA);または目視により行うことができる。
【0181】
同じタイプの相同性を、例えばZucker、M.、Science 244:48−52、1989;Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:7706−7710、1989;Jaegerら、Methods Emzymol.183:281−306、1989に開示されたアルゴリズムにより得ることができる。これらは少なくとも核酸整列に関連する内容に対して本明細書に含める。
【0182】
保存性突然変異および相同性の記載を、特定の配列に対し少なくとも70%の相同性を有するが、それらの変異体は保存性突然変異体である実施形態等の任意の組み合わせで行うことができることが理解される。
【0183】
本出願は様々な蛋白質および蛋白質配列を議論するが、これらの蛋白質配列をコードすることができる核酸も開示されていることが理解される。これには特定の蛋白質配列に関連する全ての縮重配列、すなわちある特定の蛋白質配列をコードする配列を有する全ての核酸の他、開示された変異体をコードする縮重核酸およびその蛋白質配列の誘導体が含まれる。従って、特定の核酸配列のそれぞれを本明細書に列記しないが、各配列および全ての配列が、開示された蛋白質配列によって実際に本明細書に開示され記載されていることが理解される。どの特定のDNA配列が生物中の蛋白質をコードするかをアミノ酸配列は示さないが、開示された蛋白質の特定の変異体が本発明に開示されている場合、その蛋白質が由来する特定の株中のその蛋白をコードする既知の核酸配列も知られており、本明細書に開示され記載されていることが理解される。
【0184】
開示された組成物に含まれ得る様々なアミノ酸およびペプチドアナログがあることが理解される。例えば、D−アミノ酸または異なった官能置換基を有するアミノ酸が存在し、それらのアミノ酸は表1および2に示されている。天然起源ペプチドの反対の立体異性体の他、ペプチドアナログの立体異性体も開示されている。選んだアミノ酸と共にtRNA分子を加え、例えばアンバーコドンを利用する遺伝子コンストラクトを操作してアナログアミノ酸を部位特異的にペプチド鎖中に挿入することにより、これらのアミノ酸を容易にポリペプチド鎖中に取り込むことができる(Thorsonら、Methods in Mol.Biol.77:43−73、1991;Zoller、Curr.Opin.Biotech.3:348−354、1992;Ibba、Biotech.Genet.Eng.13:197−216、1995;Cahillら、Trends Biochem.Sci.、14:400−403、1989;Benner、Trends Biotechnol.12:158−163、1994、少なくともアミノ酸アナログに関連する内容について、これらは全て本明細書に引用により含まれる)。
【0185】
ペプチドに類似するが、天然のペプチド結合で結合していない分子を製造できる。例えば、アミノ酸またはアミノ酸アナログに対する結合にはCH
2NH−、−CH
2S−、−CH
2−CH
2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH
2−、−CH(OH)CH
2−および−CHH
2SO
2(これらはSpatola、A.F、Chemistry and Biotechnology of Amino Acids、Peptides、and Protein、B.Weinstein編集、Marcel Decker、New York、p267、1983;Spotola、A.F.、Vega Data(March 1983)、Vol I、第3版、Peptide Backbone Modifications(レビュー);Morley、Trends Pharm. Sci.463−468、1980;Hudson D.ら、Int J Pept.Prot.Res.14:177−185、1979(−CH
2−NH−、CH
2CH
2−);Spatolaら、Life Sci.38:1243−1249、1986(−CH
2H
2−S−);Hann、J.Chem.Soc.Perkin Trans.I 307−324、1982(−CH=CH−、シスおよびトランス);Almquistら、J.Med.Chem.23:1392−1398、1980(−COCH
2−);Jenning−Whiteら、Tetrahedron Lett.、23:2533、1982(−COCH
2−);Szelkeら、European Appln.、EP45665、CA:97:39405、1982(CH(OH)CH
2−);Holladayら、Tetrahedron Lett.24:4401−4404、1983(−C(OH)CH
2−);およびHruby、Life Sci.31:189−199、1982(−CH
2−S−)に見出され、そのそれぞれを本明細書に引用により含める)が含まれる。特に好ましい非ペプチド結合はCH
2NH−である。β−アラニン、γ−アミノ酪酸等、ペプチドアナログは結合原子間に1つ以上の原子を持ち得ることが理解される。
【0186】
アミノ酸アナログおよびアナログならびにペプチドアナログは、より経済的な製造、より大きい化学安定性、薬学的効果の増大(半減期、吸収、力価、効力等)、特異性の変化(例えば生物活性の広いスペクトル)、抗原性の減少その他の、強化された、または望ましい性質を持つことが多い。
【0187】
D−アミノ酸はペプチダーゼ等で認識されないため、より安定なペプチドを作成するためにD−アミノ酸を使用することができる。共通配列の1つ以上のアミノ酸を同じタイプのD−アミノ酸(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)により系統的に置換することにより、より安定なペプチドを生成することができる。環状化または複数のペプチドを一緒に結合させるためにシステイン残基を使用できる。これは特定の空間配置中にペプチドを閉じ込めるために有益である(RizoおよびGierash、Ann.Rev.Biotech.61:387、1992、本明細書に引用により含める)。
6.補助剤
【0188】
本明細書には栄養補助剤も開示される。栄養補助剤は栄養素(単数または複数)(例えばビタミン、ミネラル、必須微量元素、アミノ酸、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、脂質、コレステロール、ステロイド、炭水化物等)を提供、補給または増加するために被検体に投与または服用される任意の化合物または組成物である。ある態様では、本明細書で開示した任意の化合物を含む栄養補助剤が開示される。例えば、栄養補助剤は本明細書で開示した任意の脂質を含むことができる。これらの脂質の脂肪酸残基は本明細書で開示した任意の脂肪酸であり得る(例えば不飽和または飽和脂肪酸残基)。
【0189】
栄養補助剤は本明細書に開示した任意の量の化合物を含むことができるが、典型的には被検体に所望の用量のベンゼンジオール誘導体(例えばCoQ
10)および/または脂肪酸を供給するために決定された量を含むと考えられる。栄養補助剤中に必要な正確な化合物の量は、種、年齢、体重および被検体の全般的な状態、処置される栄養欠陥の重症度、具体的な投与法等によって被検体間で変化すると思われる。従って、全ての栄養補助剤に対して正確な量を特定することは不可能である。しかしながら、本発明の知見が与えられれば日常的な実験を用いて当業者は適量を決定することができる。ある具体例では、栄養補助剤は約0.05〜約20重量%、約1〜約7.5重量%、または約3〜約5重量%の化合物を含み得る。他の例では、栄養補助剤は約0.05、0.10、0.15、0.20、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0,70、0.75、0.80.0.85、0.90.0.95、1.0.1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5,0、5.5、6.0、6.5、7.0.7.5、8.0.8.5、9.0、9.5、10.10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5または20.0重量%を含むことができ、ここで述べた任意の価は適当と思われる上限または下減である。他の態様では、栄養補助剤を100%までの補助剤で構成することができる。
【0190】
栄養補助剤はまた、ビタミン、微量元素、ミネラル等の他の栄養素(単数または複数)を含むことができる。さらに、栄養補助剤は保存剤、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤および/または結合剤等の他の成分を含むことができる。
【0191】
栄養補助剤は一般に経口服用され、経口投与に適した任意の形態であり得る。例えば、栄養補助剤は典型的には錠剤、ゲルキャップ、カプセル、液体、小袋またはシロップの形であり得る。
7.送達手段
【0192】
本発明に記載の任意の化合物を送達手段中に導入することができる。送達手段の例にはマイクロカプセル、ミクロ球体、ナノ球体またはナノ粒子、リポソーム、ノイソーム、ナノエリスロソーム、液体−固体ナノ粒子、ゲル、ゲルカプセル、錠剤、ローション、クリーム、スプレーまたは乳液が含まれるがそれらに限定されない。非経口投与に適した送達手段の他の例にはパルモスフェアが含まれる。本発明で有用な粒子状送達手段の例は以下に記載される。
【0193】
開示された化合物をリポソーム中に取り込むことができる。公知の様に、リポソームは一般にリン脂質または他の脂質物質由来である。リポソームは水性媒体中に分散した一重または多重ラメラ水和液晶により生成する。リポソームを形成できる任意の無毒で生理学的に許容され、代謝し得る脂質を使用することができる。リポソーム形態の開示された組成物には、本明細書で開示した化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤等を含むことができる。安定な脂質の例は天然および合成のリン脂質およびホスファチジルコリンである。リポソームの形成法は公知である。例えばPrescott編集、Methods in Cell Biology、第XIV巻、Academic Press、New York、p33他、1976参照。リポソームおよびその調製の知見に関して、本明細書に引用により含める。
【0194】
他の例では、リポソームは陽イオン性リポソーム(例えばDOTMA、DOPE、DCコレステロール)または陰イオン性リポソームであり得る。必要あれば特定の細胞を標的化することを促進するために、リポソームはさらに蛋白質を含むことができる。ある化合物と陽イオン性リポソームとを含む組成物を、標的器官を目標に血液中に投与するか、または気道の細胞を標的とするために気道中に吸入することができる。リポソームに関しては例えばBrighamら、Am.J.Resp.Cell Mol.Biol、1:95−100、1989;Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci USA、84:7413−7、1987;および米国特許第4,897,355号を参照。リポソームの知見に関して本明細書に引用により含める。一例として、LIPOFECTIN、LIPOFECTAMINE(GIBCO−BRL Inc.、Gaitherburg、MD)、SUPERFECT(Qiagen Inc.、Madison、WI)の他、当業界で標準の手順に従って開発された他のリポソーム等の市販リポソームを用いてリポソーム経由で送達することができる。リポソームからの化合物の拡散または送達が特定の速度または投与量に対して設計されたリポソームを用いることもできる。
【0195】
本明細書に記載のように、ノイソームは本明細書に開示した組成物を送達するために使用される送達手段である。ノイソームは非イオン性界面活性剤を含む多重ミセルまたは単一ミセル小胞体である。溶質の水溶液が界面活性剤分子の組織に由来する2重層に封じ込められている。リポソームと同様、ノイソームは例えばメトトレキサン、ドキソルブシンを含む抗癌剤、および免疫アジュバントの標的送達に用いられる。それらは一般にトランスフェロソームとは異なると考えられ、両親媒性炭水化物およびアミノ基含有ポリマー、例えばキトサンから調製される小胞体である。
【0196】
本明細書に記載のように、ナノエリスロソームは本明細書に開示した組成物を送達するために用いることのできる送達手段である。ナノエリスロソームは一定の孔径のフィルターを通る透析により調製された赤血球で作成されたナノ小胞体である。これらの小胞体に、蛋白質および本明細書に開示された組成物を含む広範囲の生物活性分子を乗せることができる。それらは一般にブレオマイシン、アクチノマイシンD等の抗腫瘍剤に対する理想的な担体となるが、ステロイド、他の脂質等にも使用できる。
【0197】
本明細書に記載のように、人工赤血球も、本明細書に開示した組成物を送達するために使用できる送達手段である。人工赤血球も、界面重合および複合乳化法で作成することができる。一般に、「細胞」壁をポリフタロイル−L−リジンポリマー/ポリスチレンで作成し、コアをヒツジ溶血物由来のヘモグロビン溶液で生成する。ヘモグロビン搭載ミクロ球体の典型的な粒径は約1〜約10nmである。そのサイズ、柔軟性および酸素運搬能は赤血球に類似している。
【0198】
本明細書に記載のように、固体−脂質ナノ粒子は、本発明に開示した組成物を送達するために使用し得るまた別の送達手段である。固体−脂質ナノ粒子は界面活性剤水溶液中に分散されたナノ粒子である。ナノ粒子はリン脂質被覆の単層を有する疎水性コアで構成され、通常、高圧均質化技術で調製される。免疫調節複合体(ISCOMS)は固体−脂質ナノ粒子の例である。ナノ粒子はリン脂質、コレステロールおよび疎水性抗原で構成されるカゴ状の40nmの超分子集合体であり、ほとんど免疫アジュバントとして使用される。例えば、ISCOMSは皮下注射シクロスポリンの血漿レベルを延長するために使用される。
【0199】
本明細書に記載のように、ミクロ球体およびマイクロカプセルとは、本明細書に開示した組成物を送達するために用いることのできるまた別の送達手段である。リポソーム送達系とは対照的に、ミクロ球体およびマイクロカプセルは典型的には水性コアを持たず、固体ポリマーマトリックスまたは膜である。これらの送達手段はポリマーの制御された沈殿、可溶性ポリマーの化学的架橋、および2つのモノマーの界面重合、または高圧均一化技術で得られる。カプセル化化合物は、粒子からの侵食または拡散により貯蔵場所から徐々に放出される。ロイプロレリンおよびトリプトレインのようなLHRHアゴニスト等の作用時間の短いペプチドの製剤化の開発に成功している。ポリラクチド−コ−グリコライド(PLGA)ミクロ球体は、進行型前立腺癌、子宮内膜症および他のホルモン応答性病状の治療における1月または3月投与製剤として現在使用されている。LHRHスーパーアゴニストであるロイプロリドが、溶剤抽出/蒸発法を用いる様々なPLGAマトリックス中に取り込まれた。この様に、これらの送達手段を全て本明細書に開示の方法に用いることができる。
【0200】
パルモスフェアは本発明で用いることのできる送達手段のまた別の例である。パルモスフェアは密度の低い(約0.1m/mL以下)中空多孔性粒子である。パルモスフェアは典型的に優れた再分散性を有し、通常は超臨界液体濃縮法で調製される。炭水化物、ヒト血清アルブミン等のあるマトリックスとの共スプレー乾燥は、蛋白質およびペプチド(例えばインスリン)、および肺送達用の他の生物分子の安定性を改善することができる。このタイプの送達を、機械的エネルギーを殆ど加えることなく自発的に生成する微小の薄い透明な水中油(o/w)エマルジョンであるミクロエマルジョンおよび脂質エマルジョンで行うこともできる。この技術で、系の相反転温度より高い温度でエマルジョンを調製することができる。高い温度では、エマルジョンは油中水(w/o)タイプであり、相反転温度に冷却するとこのエマルジョンは反転してo/wとなる。その内部相が非常に小さいので、エマルジョンはきわめて安定であり、ステロイドおよびワクチンの持続放出に用いられる。脂質エマルジョンは、卵レシチントリグリセリドおよびミグリトールのような界面活性剤を用いる両親媒性脂質(すなわちリン脂質)の単層により安定化した中性脂質コア(すなわちトリグリセリド)を有する。それらは能動および受動標的化に適している。
【0201】
浸透圧調節、pH調節、膨潤調節、密度および浮遊系の変化、皮膚粘着性等に基づく調査において、他の経口送達系がある。現在使用中または調査中の疾患の日周リズムに従う薬剤を送達するためのこれらの製剤、および時間遅延製剤を、本発明に開示の組成物の送達のために応用することができる。
【0202】
本明細書に開示されたある態様では、栄養補助剤およびその医薬製剤を含む開示された化合物を、本明細書に記載のマイクロカプセル中に取り込むことができる。
【0203】
本明細書に記載のある態様では、開示された化合物をマイクロカプセル中に取り込むことができる。ある態様では、マイクロカプセルは1次マイクロカプセルと本明細書に記載のクロム化合物との凝集体を有し、個々の1次マイクロカプセルは1次殻を有し、クロム化合物は1次殻でカプセル化され、凝集体は外殻でカプセル化されている。これらのマイクロカプセルを本明細書では「多重核マイクロカプセル」と称する。
【0204】
他の態様では、クロム化合物、1次殻および2次殻を有するマイクロカプセルが本明細書に記載され、1次殻がクロム化合物をカプセル化し、2次殻が搭載物質と1次殻とをカプセル化している。これらのマイクロカプセルを本明細書で「単一核マイクロカプセル」と称する。
【0205】
必要あれば、他の搭載物質をクロム化合物とともにカプセル化することができる。搭載物質は水性混合物中に完全に溶解しない任意の物質であり得る。ある態様では、搭載物質は固体、疎水性液体または固体と疎水性液体との混合物である。他の態様では、搭載物質はグリース、油、脂質、薬物(例えば低分子)、生物活性物質、栄養補助剤(例えばビタミン)、風味化合物またはそれらの混合物を含む。油の例には動物油(例えば魚油、海洋動物油)、植物油(例えばカノーラ油またはナタネ油)、鉱物油、その誘導体またはその混合物が含まれるが、それらに限定されない。搭載物質は脂肪酸、トリグリセリドまたはそのエステル等の精製または部分精製油状物質であってよい。他の態様では、搭載物質はカロテノイド(例えばリコピン)、満腹剤、風味化合物、薬剤(例えば水不溶性薬剤)、粒状体、農薬(例えば除草剤、殺虫剤、肥料)または水産養殖成分(例えば餌、色素)であってよい。
【0206】
ある態様では、搭載物質はオメガ−3−脂肪酸であり得る。オメガ−3−脂肪酸の例にはα−リノレン酸(18:3n3)、オクタデカテトラエン酸(18:4n3)、エイコサペンタエン酸(20:5n3、EPA)、ドコサヘキサエン酸(22:6n3、DHA)、ドコサペンタエン酸(22:5n3、EPA)、エイコサテトラエン酸(20:4n3)、ウンコサペンタエンサン(21:5n3)、ドコサペンタエン酸(22:5n3)、およびそれらの誘導体および混合物が含まれるが、それらに限定されない。オメガ−3−脂肪酸の多くのタイプの誘導体は公知である。適当な誘導体の例にはフィトステロールエステル、分枝または非分枝C
1−C
30アルキルエステル、分枝または非分枝C
2−C
30アルケニルエステル、またはフィトステロールエステル等の分枝または非分枝C
3−C
30シクロアルキルエステル、およびC
1−C
6アルキルエステル等のエステルが含まれるが、それらに限定されない。油の源は水棲生物(例えばアンチョビ、シシャモ、大西洋タラ、大西洋ニシン、大西洋サバ、大西洋メンヘーデン、サケ類、イワシ、サメ、マグロ等)、および植物(亜麻、野菜等)および微生物(例えば真菌類および藻類)由来であり得る。
【0207】
ある態様では、搭載物質は抗酸化剤を含むことができる。抗酸化剤の例にはビタミンE、CoQ
10、トコフェロール、アスコル脂肪酸エステル等のより極性の高い抗酸化剤の脂溶性誘導体(例えばアスコルビンパルミテート)、植物抽出物(例えばローズマリー、セージおよびオレガノ油)、藻類抽出物、および合成抗酸化剤(例えばBHT、TBHQ、エトキシキン、アルキルガレート、ヒドロキノン、トコトリエノール)が含まれるが、それらに限定されない。
【0208】
多くの異なったポリマーを単一または多重核マイクロカプセルの殻層を製造するために使用できる。この様なポリマーの例には蛋白質、ポリ燐酸、多糖またはそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。他の態様では、単一または多重核マイクロカプセルを調製するために用いられる殻材料はさらに含む。他の態様では、単一または多重核マイクロカプセルを調製するために用いられる殻材料はさらに、タイプAゼラチン、タイプBゼラチン、ポリ燐酸、アラビアゴム、アルギン酸塩、キトサン、カラギーナン、ペクチン、デンプン、修飾デンプン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトアルブミン、オボアルブミン、ポリソルビトン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ミルク蛋白質、ホエー蛋白質、大豆蛋白質、カノーラ蛋白質、アルブミン、キチン、ポリ乳酸、ポリ乳酸−コ−グリコライド、誘導体化キチン、キトサン、ポリリジン、様々な無機−有機組成物、またはそれらの任意の混合物を含む。これらのポリマーの誘導体も使用し得ると考えられる。他の態様では、ポリマーはコーシャゼラチン、非コーシャゼラチン、ハラールゼラチンまたは非ハラールゼラチンであり得る。
【0209】
ある態様では、単一または多重核マイクロカプセルの1つ以上の殻層は、50未満のブルーム数を有するゼラチンを含む。このゼラチンは本発明では「低ブルームゼラチン」と称する。ブルーム数とは、18時間ゲル化した6.67%の溶液で10℃において生成したゲルのゲル強度を言う。ある態様では、低ブルームゼラチンは40未満、30未満、20未満または10未満のブルーム数を有する。他の態様では、ゼラチンは45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1または0のブルーム数を有し、任意の2つの値を用いて範囲を表すことができる。他の態様では、低ブルームゼラチンは多重核マイクロカプセルの1次殻および外部の両方に含まれる。ある態様では、低ブルームゼラチンはタイプAゼラチンである。他の態様では、低ブルームゼラチンはKenney & Ross Ltd.、R.R.#3 Ahelbilne、NS、カナダで製造されたタイプAゼラチンである。他の態様では、ブルーム数ゼロを有するゼラチンは多重核マイクロカプセルの1次殻と外殻との双方に含まれる。
【0210】
ある態様では、単一または多重核マイクロカプセルの殻を生成するために用いられる材料は、2つの異なったタイプのポリマーの混合物で製造される2成分系である。ある態様では、その材料はポリマー成分間の複合コアセルベートである。複合コアセルベート化は2つの反対電荷のポリマー間の相互作用で生じる。ある態様では、単一および多重核マイクロカプセルを製造するために用いられる殻材料は、(1)低ブルームゼラチンおよび(2)タイプBゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸塩、キトサン、カラギーナン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ホエー蛋白質、大豆蛋白質、カノーラ蛋白質、アルブミン、またはそれらの混合物で構成される。異なったポリマーのモル比は変化し得る。例えば、ブルームゼラチンの他のポリマー成分に対するモル比は1:5〜15:1である。例えば、低ブルームゼラチンおよびポリ燐酸が用いられる場合、低ブルームゼラチンとポリ燐酸とのモル比は約8:1〜約12:1であり、低ブル−ムゼラチンおよびタイプBゼラチンが使用される場合、モル比は2:1〜1:2であり、低ブルームゼラチンおよびアルギン酸塩が使用される場合、モル比は3:1〜8:1である。
【0211】
加工助剤を殻材料(例えば1次または外殻)に加えることができる。加工助剤は様々な理由で使用される。例えば、加工助剤は1次マイクロカプセルの凝集体の促進、乳化系の安定化、外殻の性質の改善、マイクロカプセルサイズの制御および/または抗酸化剤作用としての作用のために使用できる。ある態様では、加工助剤は乳化剤、脂肪酸、脂質、ワックス、ミクロ微生物細胞(例えば酵母細胞株)、粘土または無機化合物(例えば炭酸カルシウム)であってよい。理論に制約されるものではないが、これらの加工助剤はマイクロカプセルの障壁の性質を改善することができる。ある態様では、1つ以上の抗酸化剤を殻材料に添加することができる。抗酸化性は加工中(例えばコアセルベート化または噴霧乾燥中)およびマイクロカプセル形成後(例えば商品寿命の延長等)の双方で有用である。多数の機能を果たす少数の加工助剤が好ましい。ある態様では、抗酸化剤はフェノール性化合物、植物抽出物または硫黄含有アミノ酸であり得る。ある態様では、アスコルビン酸(またはアスコルビン酸ナトリウムまたはカリウム等の塩)を1次マイクロカプセルの凝集促進、マイクロカプセルサイズの制御および抗酸化剤としての作用で使用できる。抗酸化剤は約100ppm〜約12,000ppm、または約1,000ppm〜約5,000ppmの量で使用し得る。例えば金属配位体等の他の加工助剤も使用できる。例えば、エチレンジアミン四酢酸を使用して金属イオンを結合することができる、搭載物質の触媒的酸化を減少することができる。
【0212】
ある態様では、1次マイクロカプセル(1次殻)は約40nm〜約10μm、約0.1μm〜約10μm、約1μm〜約10μm、約1μm〜約8μm、約1μm〜約6μm、約1μm〜約4μm、約1μm〜約2μm、または約1μmの平均直径を有する。他の態様では、多重核マイクロカプセルは約1μm〜約2,000μm、約20μm〜約1,000μm、約20μm〜約100μm、または約30μm〜約80μmの平均直径を有する。他の態様では、単一核マイクロカプセルは1μm〜2,000μmの外径を有する。
【0213】
本明細書に記載のマイクロカプセルは一般に高い有効積載量および構造的強度を有する。例えば、搭載物質の有効搭載量は単一または多重マイクロカプセルの20〜90重量%、50〜70重量%または60重量%である。
【0214】
ある態様では、その内容を引用により含める米国特許出願第2003/0193102号に開示された方法を、本明細書に記載のクロム化合物をカプセル化するために使用できる。1つ以上の別な殻層を単一または多重核マイクロカプセルの外殻上に置くことができるとも考えられる。ある態様では、その内容を引用により含める国際公報WO2004/041251A1に記載された技術を、単一または多重核マイクロカプセルに対する別な殻層を加えるのに用いることができる。
(a)医薬および栄養組成物
【0215】
これらの脂質および抗酸化剤は、動物飼料、医薬品、栄養剤(特に幼児用配合食)の他、工業用が目的である。これにはゲルカプセル等の栄養剤形、一般的なマイクロカプセル化等も含まれる。
【0216】
上記の通り、組成物を薬学的に許容し得る担体中インビボで投与できる。「薬学的に許容し得る」とは、生物学的またはその他で望ましい材料、すなわち望ましくない生物学的効果を生じず、またはそれが含まれる医薬組成物の他のいずれの成分とも有害な相互作用をせずに、その材料を核酸またはベクターと一緒に被検体に投与し得る材料を意味する。当業者に公知の様に、担体は当然、活性成分の分解を最小にし、被検体中での副作用を最小にする様に選ばれる。
【0217】
組成物を経口、非経口(経静脈)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮膚、体外循環、局所鼻内投与または吸入投与を含む局所等で投与し得る。本発明で用いる「局所鼻内投与」とは、片方または両方の鼻孔を通って組成物を鼻および鼻通路中へ送達することを意味し、スプレー機構または液滴機構、または核酸またはベクターのエアゾル化による送達を含む。吸入剤による組成物の投与は噴霧または液滴機構による送達で鼻または口を通って行われ得る。チューブ挿入により、呼吸系(例えば肺)の任意の領域に直接送達することもできる。必要な組成物の正確な量は、種、年齢、被検体の体重および全般的な状態、処置されるアレルギー性疾患の重症度、用いられる特定の核酸またはベクター、投与法等に応じて、被検体によって変わると思われる。従って、全ての組成物に対して正確な量を特定することは不可能である。しかしながら、本明細書の知見で与えられる通常の実験のみを用いて、当業者は適当な量を決定することができる。
【0218】
組成物の非経口投与は、使用に応じて、注射によるのが一般的である。液体溶液または懸濁液、注射前に液体中で懸濁液を調製するに適した固体、またはエマルジョンの何れかとして、注射剤は通常の形式で調製される。非経口投与に対してより最近開発されたアプローチには、一定の投与量が維持される様な遅延放出または持続放出の使用が含まれる。例えば、本明細書に引用により含める米国特許第3、610、795号を参照。
【0219】
材料は溶液または懸濁液中に存在し得る(例えばミクロ粒子、リポソームまたは細胞中に取り込まれる)。これらは抗体、受容体または受容体リガンドにより特定の細胞を標的とし得る。以下の参考文献は、特定の蛋白質が腫瘍組織を標的とするこの技術の使用例である(Senterら、Bioconjugate Chem.2:447−451、1991;Bagshawe、K.D.、Br.J Cancer、60:275−281、1989;Bagshaweら、Br.J.Cancer、58:700−703、1988;Senterら、Bioconjugate Chem.、4:3−9、1993;Batteliら、Cancer Immunol.Immnother.、32:421−425、1992;PieterszおよびMckenzie、Immunolog.Reviews、129:57−80、1992;およびRofflerら、Biochem.Pharmacol.、42:2062−2065、1991)。「ステルス」、および他の抗体接合リポソーム(結腸癌腫を標的とする脂質媒介薬剤も含む)、細胞特異的リガンドによるDNAの受容体媒介標的、リンパ球を目的とする腫瘍標的、およびインビボのマウスグリコーマ細胞の特異性の高い治療用レトロウイルス標的等の媒体も含まれる。以下の参考文献は特定の蛋白質が腫瘍組織を標的とするこの技術の使用例である(Hughesら、Cancer Research、49:6214−6220、1989;LitzingerおよびHuang、Biochemica Biophysica Acta、1104:179−187、1992)。一般に、受容体は、構成的に、またはリガンド誘導によりエンドサイトーシスの経路に含まれる。これらの受容体はクラスリン被覆ピット中に集中し、クラスリン被覆小胞体を経由して細胞に入り、受容体がソートされる酸性エンドソームを通過し、次に細胞表面に循環するか、細胞内に蓄えられるか、またはリゾソーム中で分解される。内部取り込み経路は、栄養素の取り込み、活性化蛋白質の除去、高分子の整理、ウイルスおよび毒素の日和見侵入、リガンドの解離および分解、および受容体レベルの調節等の様々な機能を果たす。細胞タイプ、受容体濃度、リガンドのタイプ、リガンドの結合価、およびリガンドの濃度によって、多くの受容体は1つ以上の細胞間経路をたどる。受容体媒介エンドサイトーシスの分子および細胞機構は以下にレビューされている(BrownおよびGreene、DNA and Cell Biology、10:399−409、1991)。
(1)薬学的に許容し得る担体
【0220】
抗体を含む組成物を、薬学的に許容し得る担体と組み合わせて治療用に使用することができる。
【0221】
適当な担体およびその製剤化はRemington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版)、A.R.Gennaro編集、Mack Publishing Company、Easton、PA、1995に記載されている。典型的には、適当量の薬学的に許容し得る塩を、製剤を等張にするために製剤中で使用する。薬学的に許容し得る担体の例にはリンガー液およびデキストロース溶液が含まれるが、それらに限定されない。溶液のpHは約5〜約8であることが好ましく、約7〜約7.5であることがより好ましい。さらに、担体には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスであって、例えばフィルム、リポソームまたはミクロ粒子等の成形物の形態である持続放出製剤も含まれる。例えば投与経路および投与される組成物の濃度によって、ある担体がより好ましいことが当業者に明らかであると思われる。
【0222】
医薬担体は当業者に公知である。最も典型的には、これらは滅菌水、食塩水および生理pHの緩衝液等の溶液を含む、薬剤をヒトに投与するための標準担体である。組成物を筋肉内または皮下投与することができる。その他の化合物も、当業者が用いる標準手順に従って投与される。
【0223】
医薬組成物には担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤等の他、選択した分子が含まれる。医薬組成物には抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤等の1つ以上の活性成分も含まれていてよい。
【0224】
局所または全身治療が必要であるかどうか、および治療する領域に応じて医薬組成物を様々な方法で投与し得る。投与は局所(目、膣、直腸、鼻内を含む)、経口、吸入または非経口で、例えば静脈内点滴、皮下、直腸内または筋肉内注射でもよい。開示された抗体を静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腹腔内または皮膚経由で投与できる。
【0225】
非経口投与用製剤には滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液および乳化液が含まれる。非水溶剤の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射用エステルである。水性担体には食塩水および緩衝液を含む水、アルコール性水溶液、乳化液および懸濁液が含まれる。非経口媒体には塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンガー液、または不揮発性油が含まれる。静脈内媒体には液体および栄養素補充液、電解質補充液(リンガーデキストロースに基づくもの等)等が含まれる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガス等の保存剤および他の添加剤も含み得る。
【0226】
局所投与用製剤には軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、スプレー、液体および粉末が含まれる。通常の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等が必要であるか望ましい場合がある。
【0227】
経口投与用組成物には粉末または顆粒、懸濁液または水または非水媒体中の溶液、カプセル、小袋または錠剤が含まれる。増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤も望ましい場合がある。
【0228】
いくつかの組成物は薬学的に許容し得る酸または塩基付加塩として投与される可能性があり、これらの塩は塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸および燐酸無機酸等の無機酸、ならびに蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、蓚酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸およびフマル酸等の有機酸との反応、または、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等の無機塩基、およびモノ−、ジ−およびトリアルキルおよびアリールアミンおよび置換エタノールアミン等の有機塩基との反応で生成する。
(2)治療用途
【0229】
組成物を投与するための投与量およびスケジュールを実験的に決定し得るが、この様な決定を行うことは当業者の範囲である。組成物の投与量範囲は、症状に有効な所望の効果得るために十分に大きい範囲である。しかしながら、投与量は望ましくない交差反応、過敏症反応等の副作用を生じるほど多くあってはならない。一般に、投与量は年齢、状態、性別および被検体の疾病の程度、投与経路、または療法に他の薬剤が含まれているかどうかで変わり、当業者で決定することができる。何らかの使用禁忌の事象においては、個々の医師が投与量を調整することができる。投与量を変えて、毎日一回以上の用量の投与を1日〜数日間行うことができる。所与の分類の医薬製品の適当な投与量については、文献に指針がある。例えば、抗体に対する適当な用量を選ぶ指針は抗体の治療用途に関する文献、例えばHandobook of Monoclonal antibodies、Ferroneら編集、Noges Publications、Park Ridhe、N.J.、(1985)、22章およびpp303−357;Smithら、Antibodies in Human Diagnosis and Therapy、Haberら編集、Raven Press、New York(1977)、pp365−389に見出すことができる。単独で用いられる抗体の典型的な1日あたりの投与量は、上記の因子によって体重kgあたり約1μg〜約100mgの範囲である。
(b)標的化送達
【0230】
開示されたリポソームおよびマイクロカプセルが、抗体、受容体または受容体リガンドを経て小島細胞等の特定の細胞を標的とすることができる。以下の参考文献は、特異的組織を標的とするこの技術の例である(Santerら、Bioconjugate Chem.、2:447−51、1991;Bagshawe、Br.J.Cancer、60:275−81、1989;Bagshaweら、Br.J.Cancer、58:700−3、1988;Senterら、Bioconjugate Chem.、4:3−9、1993;Battelliら、Cancer Immunol.Immunother.、35:421−5、1992;PieterszおよびMcKenzie、Immunol.Reviews、129:57−80、1992;およびRofferら、Biochem.Pharmacol.、42:2062−5、1991)。これらの技術を他の様々な特異的細胞タイプに使用することができる。
8.食品
【0231】
また、本明細書に開示されたマイクロカプセルおよびエマルジョンの何れかを含む食品も開示される。「食品」とは、消費され得る(例えば食する、飲むまたは摂取する)任意の製品を意味する。ある態様では、マイクロカプセルを食品に対する栄養補助剤として使用することができる。例えば、マイクロカプセルおよびエマルジョンにビタミン、オメガ−3−脂肪酸および健康上有益である他の化合物を搭載することができる。ある態様では、食品は焼き製品、パスタ、肉製品、凍結乳製品、ミルク製品、チーズ製品、卵製品、調味料、スープミックス、スナック食品、ナッツ製品、植物蛋白質製品、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、鶏肉製品、加工果汁、グラニュー糖(例えば白または褐色)、ソース、肉汁、シロップ、栄養バー、飲料、乾燥飲料粉末、ジャムまたはゼリー、魚製品、またはペットコンパニオン食である。他の態様では、食品はパン、トルティーヤ、穀物、ソーセージ、チキン、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルク、サラダドレッシング、米ぬか、果汁、乾燥飲料粉末、ロール、クッキー、クラッカー、スナック食品、フルーツパイ、またはケーキである。
9.チップおよびマイクロアレー
【0232】
少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示した任意の核酸配列で示される配列またはその配列の一部であるチップが開示される。また、少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示した任意のペプチド配列で示される配列または配列の一部であるチップも開示される。
【0233】
また、少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示した任意の核酸配列で示される配列または配列の一部の変異体であるチップも開示される。また、少なくとも1つのアドレスが、本明細書に開示した任意のペプチド配列で示される配列または配列の一部の変異体であるチップも開示される。
10.コンピューター読み取り可能媒体
【0234】
開示された核酸および蛋白質がヌクレオチドとアミノ酸で構成される配列で表され得ることが理解される。これらの配列を表示する様々な方法がある:例えばヌクレオチドグアノシンをGまたはgで表すことができる。同様に、アミノ酸バリンをValまたはVで表すことができる。当業者は、任意の核酸または蛋白質配列を任意の存存する様々な方法でどのように表示し表現するかを理解し、そのそれぞれが本明細書に開示されていると考えられる。具体的には、市販フロッピー(登録商標)ディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスクおよびビデオディスク、または他のコンピューター読み取り可能媒体等のコンピューター読み取り可能媒体上に、これらの配列を表示することがここで考えられる。また、開示された配列の二進コード表現も開示される。当業者はどのコンピューターが媒体を読み取り得るかを理解する。従って、コンピューター読み取り可能媒体上に核酸または蛋白質配列が記録され、保存またはセーブされる。
【0235】
配列と本発明に示された配列に関する情報とを有するコンピューター読み取り可能媒体が開示される。
11.キット
【0236】
本明細書で開示された方法の実行、または本明細書に開示された組成物の使用または保持に使用できる試薬に関するキットが開示される。キットは本明細書に開示された、または開示された方法の実施に必要または有益と理解され得る任意の試薬または試薬の組み合わせを含むことができる。例えば、そのキットは本発明で開示された1つ以上の真核微生物と共に、例えばその維持のための培地を含むことができる。そのキットはまた、例えば脂質または抗酸化剤と共にこれらを使用または投与する手段を含むことができる。
12.類似の機能を有する組成物
【0237】
本明細書に開示された組成物は、ある比率の脂質を製造する等のある機能を有することが理解される。開示された機能を果たすために必要なある構造的、遺伝的および機能的要求が本発明に開示されるが、多様な構造、遺伝的背景、および開示された構造に関連する同じ機能を果たす機能的背景があり、これらの構造は最終的には同じ結果、例えばある比率の脂質の製造を達成することが理解される。
D.組成物の製造方法
【0238】
本明細書に開示された組成物、および開示された方法の実施に必要な組成物を、他に断らない限りその具体的な試薬または化合物に対する任意の公知の方法で製造することができる。
1.核酸合成
【0239】
例えば、プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチド等の核酸を、標準的な化学合成法、または酵素法または任意の他の方法を用いて製造することができる。この様な方法は標準的な酵素消化工程後のヌクレオチド断片を単離する工程を含み得るし、または、例えば、MilliganまたはBeckman System 1Plus DNAシンセサイザー(例えばMilligan−Bioserarch、BurlingtonのModel8700自動シンセサイザー、MAまたはABI Model 380B)を用いるシアノエチルホスホラミダイト法による純粋な合成法も含みうる。(例えばSambrookら、Molacular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、COLD Spring Harbor、N.Y.、1989、第5、6章)を参照)。オリゴヌクレオチド生成に有用な合成法はIkutaら、Ann.Rev.Biochem.53:323−356、1984(ホスホトリエステルおよびホスファイトトリエステル法)、およびNarangら、Methods Enzymol.65:610−620、1980(ホスホトリエステル法)に記載されている。蛋白質核酸分子を、Nielsenら、Bioconjug.Chem.、5:3−7、1994に記載の方法等により製造できる。
【0240】
開示された蛋白質を製造する1つの方法は、複数のペプチドまたはポリペプチドを蛋白質化学技術により結合することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを、現在使用し得る実験室装置を用い、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)試薬(Applied Biosyntesis、Inc.、Foster City、CA)を用いて化学的に合成できる。当業者は、例えば開示された蛋白質に対応するペプチドまたはポリペプチドを標準的な化学反応により合成できることを容易に理解し得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを合成することができ、その合成樹脂から切り出さないが、他のペプチドまたは蛋白質の断片を合成し、次いで樹脂から切り出すことにより、もう一方の断片上で機能的にブロックされた末端基を露出させることができる。ペプチド縮合反応により、これらの2つの断片をそのカルボキシルおよびアミノ末端におけるペプチド結合によりそれぞれ共有結合させ、抗体またはその断片を形成することができる(Gtant GA(1992)、Syntetic Peptides:A User Guide、W.H. Freeman and Co.、N.Y,(1992);Bodansky、M.およびTrost、B.編集、(1993)、Principle of Peptide Synthesis、Springer−Verlag Inc.、NY(少なくともペプチド合成に関連する材料に関して本明細書に引用により含める))。または、ペプチドまたはポリペプチドを本明細書に記載の通りにインビボで独立に合成する。単離後、これらの独立のペプチドまたはポリペプチドを結合して、類似のペプチド縮合反応によりペプチドまたはその断片を生成することができる。
【0241】
例えば、クローン化または合成ペプチドセグメントの酵素連結により、比較的短いペプチド断片を結合し、より大きいペプチド断片、ポリペプチドまたは全蛋白質ドメインを生成することができる(Abrahmsen、L.ら、Biochanistry、30:4151、1991)。または、合成ペプチドの自然化学連結を、より短いペプチド断片からより大きいペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築するために利用できる。この方法は2工程化学反応で構成される(Dawsonら、Science、266:776−779、1994)。第1工程は未保護合成ペプチドチオエステルと、アミノ末端Cys残基を含む他の未保護ペプチドセグメントとの化学的選択反応であり、最初の共有結合生成物としてチオエステル結合中間体が得られる。反応条件を変えずに、この中間体は自発的な速い分子間反応を行い、連結部位に天然のペプチド結合を形成する(Baggiolini、M.ら、FEBS Lett.307:97−101、1992;Clark−Lewis Iら、J.Biol.Chem.、269:16075、1994;Clark−Lewis Iら、Biochenistry、30:3128、1991;Rajarathnam、Kら、Biochemistry、33:6623−30、1994)。
【0242】
または、未保護ペプチドセグメントが化学的に結合し、化学的連結の結果としてのペプチドセグメント間に形成した結合は非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer、M.ら、Science、256:221、1992)。この技術は蛋白質ドメインアナログの他、完全な生物活性を有する大量の比較的純粋な蛋白質を合成するために用いられている(de Lisle Milton R.C.ら、Techniques in Protein Chemistry IV、Academic Press、New York、pp257−267、1992)。
3.組成物の製造プロセス
【0243】
組成物の製造プロセスの他、その組成物を導く中間体の製造法も開示される。例えば、所望の脂質および抗酸化剤を製造できる真核微生物の他、所望の脂質および抗酸化剤の単離精製法も開示される。合成化学法および標準分子生物学法等の、これらの組成物を製造するために使用し得る様々な方法がある。これらの開示された組成物の製造法が具体的に開示されていることが理解される。
【0244】
任意の核酸による細胞の形質転換プロセスで製造された細胞が開示される。非天然起源の開示された核酸による細胞の形質転換プロセスで製造された細胞が開示される。
【0245】
開示された真核微生物により製造された任意の脂質が開示される。開示された生物におけるペプチド発現プロセスで製造された任意のペプチドが開示される。組成物の使用法。
4.研究ツールとしての組成物の使用法
【0246】
開示された組成物を、例えば脂質および抗酸化剤の生産の研究ツールとして様々な方法で使用できる。
【0247】
本明細書で述べる様に、開示された組成物をマイクロアレー中の試薬、または存在するマイクロアレーを検出、分析するための試薬として使用できる。開示された組成物を、一塩基多形を単離または同定するための任意の既知の方法で使用できる。例えば本明細書で開示された生物株の対立形質の分析、特に脂質および抗酸化物の生産に関係する対立形質の分析のための任意の方法で、組成物を使用することもできる。また、チップ/マイクロアレーに関連するスクリーニングアッセイの任意の既知の方法に組成物を使用することもできる。また、例えば関連性の研究または開示された組成物に関連する分子モデリング分析を行うために、開示された組成物のコンピューター読み取り可能な実施形態を用いる任意の既知の方法で組成物を使用することもできる。
5.遺伝子修飾および遺伝子破壊法
【0248】
開示された組成物および方法を、標的化遺伝子破壊および修飾に、これらの事象を経験し得る任意の動物中で使用できる。遺伝子修飾と遺伝子破壊とは、修飾を生物の複製により伝播する様な方法による遺伝子の選択的除去または変化、または本明細書で開示された真核生物等のある生物中の染色体のストレッチの選択的除去または変化に関連する方法、技法および組成物を指す。一般に、例えば本明細書に記載の細胞内に含まれる特定の染色体または核酸のある領域と相同的に組み合わされる様に設計されたベクターで細胞が形質転換される。この相同組み換え事象は、周囲のDNAに対し外因性である、例えばフレーム中の導入DNAを有する染色体を生成できる。このタイプのプロトコールにより、点突然変異等のきわめて特異的な突然変異を、細胞内に含まれるゲノム中に導入できる。このタイプの相同組み換えを行う方法が本明細書に開示される。
V.具体的な実施形態
【0249】
18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物が本発明に開示される。その真核微生物は
図2に示すプロフィールを有する不飽和脂肪酸を生産することができる。その真核微生物はフィラム・ラビリンツロマイコタ(phylum Labyrinthulomycota)、ラビリンツロマイセテス(Labyrinthulomycetes)綱、スラウストキトリダエ(Thraustochytridae)亜綱、スラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目、スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科、および/またはスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属由来であり得る。その真核微生物はスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)、スラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)、またはスラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)であり得る。真核微生物はまたスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来であり、ATCC受託番号20888、20889、20890、20891または20892を有するものであり得る。
【0250】
本発明はまた、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、真核微生物がシゾキトリウム属由来である、18S配列を有する真核微生物を開示する。真核微生物は、シゾキトリウム種であり得る。
【0251】
本発明はまた、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、真核微生物がオメガ−3またはオメガ−6脂肪酸を含む、18S配列を有する真核微生物を開示する。真核微生物はDHAまたはDPAも含み得る。
【0252】
本発明はまた、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、微生物が少なくとも約4wt%〜6wt%の脂質または脂肪酸分画を製造する、18S配列を有する真核微生物を開示する。脂質はDHAを含み得る。脂質組成は約25wt%脂肪酸分画〜約40wt%脂肪酸分画のn−3DHA、約6wt%脂肪酸分画〜10wt%脂肪酸分画のn−6DPA、および約0wt%脂肪酸分画〜約3wt%脂肪酸分画のn−3EPAを含み得る。
【0253】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物も開示される。その組成物はさらに培地および/または栄養素を含み得る。
【0254】
18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、組成物はバイオマスである、18S配列を有する真核微生物を含む組成物も開示される。組成物の真核微生物はフィラム・ラビリンツロマイコタ(phylum Labyrinthulomycota)、ラビリンツロマイセテス(Labyrinthulomycetes)綱、スラウストキトリダエ(Thraustochytridae)亜綱、スラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目、スラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科、またはスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属由来であり得る。真核微生物はスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)、スラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)、またはスラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)であり得る。真核微生物はスラウストキトリアセアエ(Thraustochytriaceae)科由来であってもよく、ATCC受託番号20888、20889、20890、20891または20892を有し得る。
【0255】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、微生物がシゾキトリウム属由来である、18S配列を有する真核微生物を含む組成物が開示される。真核微生物はシゾキトリウム種であり得る。
【0256】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、真核微生物が
図2に示すプロフィールを有する不飽和脂肪酸を生産する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物が開示される。不飽和脂肪酸はオメガ−3またはオメガ−6脂肪酸を含み得る。不飽和脂肪酸はDHAまたはDPAも含み得る。
【0257】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有し、真核微生物が少なくとも約4wt%〜6wt%の脂質または脂肪酸分画を生産し得る、18S配列を有する真核微生物を含む組成物が開示される。脂質はDHAを含み得る。脂質はまた、約25wt%脂肪酸分画〜約40wt%脂肪酸分画のn−3DHA、約6wt%〜約10wt%脂肪酸分画のn−6DPA、および約0wt%〜約3wt%脂肪酸分画のn−3EPAも含み得る。
【0258】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも80%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物が開示される。
【0259】
また、約25wt%〜約40wt%脂肪酸分画のn−3DHA、約6wt%〜約10wt%脂肪酸分画のn−6DPA、および約0wt%〜約3wt%脂肪酸分画のn−3EPAを含む組成物が開示される。
【0260】
本明細書に記載の真核微生物を従属栄養培地中で培養する工程と、脂質組成物を単離する工程とを有する、脂質組成物の調製法が開示される。また、この方法に従って調製される脂質組成物も開示される。
【0261】
上記の組成物の任意の1つを含む送達手段も開示される。例えば、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む送達手段が開示される。送達手段はマイクロカプセル、ミクロ球体、ナノ球体またはナノ粒子、リポソーム、ノイソーム、ナノエルスロソーム、固体−液体ナノ粒子、リュープロライド、ゲル、ゲルカプセル、錠剤、ローション、クリーム、スプレー、エマルジョンまたは粉末を含むことができる。
【0262】
各1次マイクロカプセルが1次殻を有する、1次マイクロカプセルと搭載物質との凝集体を含むマイクロカプセルも開示され、搭載物質は上記の任意の1つの組成物を有し1次殻でカプセル化され、凝集体は外殻でカプセル化される。1次殻および/または外殻は界面活性剤、ゼラチン、ポリ燐酸、多糖、またはそれらの混合物を含み得る。1次殻および/または外殻はタイプBゼラチン、ポリ燐酸、アラビアゴム、アルギン酸塩、キトサン、カラギーナン、ペクチン、デンプン、修飾デンプン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、オボアルブミン、ポリソルビタン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ミルク蛋白質、ホエー蛋白質、大豆蛋白質、カノーラ蛋白質、アルブミン、コーシャゼラチン、非コーシャゼラチン、ハラールゼラチン、非ハラールゼラチン、またはそれらの混合物も含み得る。1次殻および/または外殻はまた、複合コアセルベート、タイプAゼラチン、魚ゼラチン、ブルーム数約0〜約300を有するゼラチン、ブルーム数約0〜約50を有するゼラチン、ブルーム数約51〜約300を有するゼラチン、ブルーム数約0、約210、約220または約240を有するゼラチン、ゼラチンとポリ燐酸とのコアセルベートも含み得る。
【0263】
開示されたマイクロカプセルの搭載物質はスラウストキトリウム(Thraustochytrium)、シゾキトリウム、またはそれらの混合物由来の油を含み得る。搭載物質はマイクロカプセルの重量%で約20%〜約90%または約50%〜70%であり得る。
【0264】
開示されたマイクロカプセルの外殻は、約1μm〜約2,000μm、約20μm〜約1,000μm、約30μm〜約80μm、約40nm〜約10μm、または約0.1μm〜約5μmの平均直径を有し得る。
【0265】
また、任意の上記組成物、送達手段またはマイクロカプセルを含む栄養補助剤が開示される。開示された栄養補助剤は錠剤、ゲルキャップ、カプセルまたはシロップの形であり得る。
【0266】
また、任意の上記組成物、送達手段またはマイクロカプセルを含む食品が開示される。食品は焼き製品、パスタ、肉製品、凍結乳製品、ミルク製品、チーズ製品、卵製品、調味料、スープミックス、スナック食品、ナッツ製品、植物蛋白質製品、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、鶏肉製品、加工果汁、グラニュー糖、ソース、肉汁、シロップ、栄養バー、飲料、乾燥飲料粉末、ジャムまたはゼリー、幼児用配合食、またはベビーフードであり得る。食品はまた、魚製品、コンパニオンペットーフード、家畜または水産養殖飼料でもあり得る。食品はまた、パン、トルティーヤ、穀物、ソーセージ、チキン、アイスクリーム、ヨーグルト、サラダドレッシング、米ぬか、果汁、乾燥飲料粉末、ロール、クッキー、クラッカー、フルーツパイ、またはケーキでもあり得る。
【0267】
また、上記の任意の組成物、送達手段、ミクロカプセルまたは食品を被検体に投与する工程を含む、被検体に組成物を送達する方法も開示される。被検体は哺乳動物であってよい。また、被検体はヒトであってもよい。
【0268】
また、上記の任意のマイクロカプセルの使用、および搭載物質を被検者に送達するための薬剤の調製法も開示される。
【0269】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検体中のコレステロールレベル、トリグリセリドレベル、またはその組み合わせを低下させる方法が開示される。
【0270】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含み、組成物、送達手段、マイクロカプセル、補助剤および食品が必須微量元素を含む、必須微量元素を被検体に補充する方法が開示される。
【0271】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検体のインスリン感受性を改善する方法が開示される
【0272】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検体中の高血糖症を軽減する方法が開示される。
【0273】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検体中の高コレステロール血症を軽減する方法が開示される。
【0274】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検者の体脂肪を減少する方法が開示される。
【0275】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検体の減量を促進する方法が開示される。
【0276】
また、有効量の任意の上記組成物、送達手段、マイクロカプセル、栄養補助剤または食品を被検体に投与する工程を含む、被検体の糖尿病を治療または予防する方法が開示される。
【0277】
また、任意の上記組成物、送達手段、またはマイクロカプセルと、医薬担体とを有する医薬製剤が開示される。
【0278】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品が開示される。食品は焼き製品、パスタ、肉製品、凍結乳製品、ミルク製品、チーズ製品、卵製品、調味料、スープミックス、スナック食品、ナッツ製品、植物蛋白質製品、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、鶏肉製品、加工果汁、グラニュー糖、ソース、肉汁、シロップ、栄養バー、飲料、乾燥飲料粉末、ジャムまたはゼリー、幼児用配合食、またはベビーフードであり得る。食品はまた、魚製品、ペットコンパニオン食、家畜または水産養殖餌であってもよい。食品はまた、パン、トルティーヤ、穀物、ソーセージ、チキン、アイスクリーム、ヨーグルト、サラダドレッシング、米ぬか、果汁、乾燥飲料粉末、ロール、クッキー、クラッカー、フルーツパイ、またはケーキでもあり得る。
【0279】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体のコレステロールレベル、トリグリセリドレベル、またはその組み合わせを低下する方法が開示される。
【0280】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体に必須微量元素を補充する方法が開示される。
【0281】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体のインスリン感受性を改善する方法が開示される。
【0282】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体の高血糖症を軽減する方法が開示される。
【0283】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体の高コレステロール血症を軽減する方法が開示される。
【0284】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体の体脂肪を減少する方法が開示される。
【0285】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体の減量を促進する方法が開示される。
【0286】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む栄養補助剤;18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む送達手段;または18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む食品;を有効量で投与する工程を含む、被検体の糖尿病を治療または予防する方法が開示される。
【0287】
また、18S配列が配列番号1で示される配列と少なくとも94%の同一性を有する、18S配列を有する真核微生物を含む組成物を含む医薬製剤が開示される。
VI.実施例
【0288】
本発明の特許請求の範囲による化合物、組成物、製品、手段および/または方法をどのように作成し評価するか、それらが純粋に例示であり、本発明の開示を制限する意図ではないことを当業者に提供するために以下の実施例が提示される。数値(例えば量、温度等)に関して精度を保障する努力がなされたが、幾分かの誤差および偏差を考慮する必要がある。特に断らない限り、部は重量部であり、温度は℃または常温であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
実施例1:ONC−T18スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種の株の単離
【0289】
Advocate Harbor、Nova Scotiaで採集したマングローブの葉からONC−T18を単離するために、古典的な生物学的株精製技術を採用した。0.2μmのフィルターで濾過した1Lの海水に5gL
−1のグルコース、2gL
−1のペプトン、2gL
−1の酵素抽出物および15.0gL
−1の寒天を含む栄養培地寒天上で、純度を確認するまでOCN−T18を25℃で逐次培養した。次いでそれぞれ60gL
−1のグルコースおよび10gL
−1の酵母抽出物である窒素および炭素源を補充した、15%の人工海水(栄養海水)を含む液体培地を調製した。この培地(250mLフラスコ中の50mLの培地)にOCN−T18を接種し、25℃でインキュベーションし120rpmで振盪して空気を入れた。
【0290】
OCN−T18を遠心分離により培地から分離し、細胞バイオマスを洗浄し、遠心分離および凍結乾燥で仕上げた。次に培養効率を決定するために細胞バイオマスを秤量し、培地リッターあたりのバイオマス値を記録した。バイオマスからの脂質分画の抽出、次いで脂肪酸メチルエステルの分離をBlighおよびDyer法で行った。凍結乾燥細胞材料を10mLのねじ蓋付き試験管に移し、10%メタノール性HClとジクロロメタンとを該管に加え、混合物を90℃で2時間反応させてエステル交換を行った。次にヘキサン:クロロホルムを加えて脂肪酸メチルエステルを抽出し、各微生物と共生群(ONC−T18)との脂肪酸プロフィールを測定するため、メチルエステル成分をガスクロマトグラフィー(FID)で測定した。エステル交換プロセスの最初(C23:0)および最後(C19:0)の双方で一定量を添加した2つの内部標準(C19:0およびC23:0)のGCピーク面積の比較により、各脂肪酸メチルエステル(C14:0〜C23:0)の濃度を決定した。乾燥細胞バイオマスのグラムあたりの脂肪酸の全量、および各脂肪酸の含有割合を、
図2に示すようにこの方法で計算した。
【0291】
図1に示される結果と関連したこれらの結果の分析から、ONC−T18はより多くのDHAを生産し、かつ、EPAおよびDPAをかなりの量で生産する能力を有することが理解できる。この非最適化発酵培地中で約25%のDHA、8.0%の(n−6)DPAおよび1.0%のEPAをONC−T18は生産した。次に、ONC−T18を以下の経済的に望ましい特性に基づいて選択した:(1)最大の従属栄養生育の能力(対照株と比較して);(2)高い割合のオメガ−3高度脂肪酸を含む;(3)安価な栄養素で生育可能;(4)耐熱性;および(5)広塩性。
【0292】
さらに、油生産微生物の複数の異なった株をONC−T18と比較した。これらの微生物はスラウストキリド(Thraustochyrid)を含むと考えられ、表3に示す量の油を生産する。
表3、[]=mg/g
【0293】
【表3-1】
【0294】
【表3-2】
【0295】
本明細書に記載されるONC−T18のみに関して、例えば全油生産に対するDHAの割合、または全DHA生産等により、本明細書で開示される油生産能で表される油生産微生物のセットが開示されることが理解される。
実施例2:遺伝子技術を用いるONC−T18の真核スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種の同定
【0296】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術と、全ての真核種に共通である18SリボソームRNA遺伝子を標的とするプライマーとを用いて、ONC−T18(実施例1参照)から単離された真核微生物の構造遺伝子のPCR生成物を作成することが可能であった。次にPCR生成物の配列決定を行い、当該真核生物種について配列番号1とした(
図2参照)。
【0297】
配列番号1と、GenBank(National Centre for Biotechnology Information、National Institute of Health、Bethesda、MD、USA)のゲノムデータベース中に見出される核酸配列とのBLAST(Basic local alignment search tool)アルゴリズムを用いる比較から、配列番号1がスラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)[AF265338]に最も関連性がある(類似性97%)と同定された。
【0298】
ONC−T18スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種に対するBLASTの結果を以下に示す。
【0299】
【表4-1】
【0300】
【表4-2】
【0301】
【表4-3】
実施例3:ONC−T18株を用いるバイオマスの最適生産
【0302】
微生物(または単細胞生物)由来の油の生産は、最初の接種レベル、基質のタイプ、培地の組成、温度およびpH等の様々なプロセス変数に依存する。具体的には、スラウストキトリド(Thraustochytrid)株を用いる高度不飽和脂肪酸の微生物に基づく生産は、バイオマスと脂肪酸生産との間で直接的な相関を示す。その結果、基本的な要件の理解またはパラメーターの最適化は最大の生産量を達成するための重要な因子である。従って、より多い量の脂肪酸の生産のための最良の培地を決定するために、バイオマス最適化実験を最初に行った。具体的には、(バイオマス生産に直接関連する)光学濃度を増加するための最適培地像を決定するために、直交配列に基づく、最近開発されたTaguchi法(Joseph、J.およびPiganatirlls、JR、IIE Trans 20:274−254、1998)を使用した。この場合、バイオマス生産に強い影響を及ぼす変数の累積効果を理解するためにTaguchi法を使用した。窒素(酵母抽出物、ペプトン、L−グルタミン酸)、炭素(グルコース)および塩(人工海水)の濃度の変化がバイオマス生産に効果を及ぼした。従って、グルコースおよび海塩溶液の量の変化(それぞれ5、40、100、160、200gL
−1および0、6、20、30、40gL
−1)と関連させて、酵母抽出物、ペプトンおよびL−グルタミン酸(0、4、10、20、50gL
−1)の量を変えて様々な液体培地を調製した。選択した窒素培地が48時間および120時間における信号−雑音比(SNL)分析を用いて識別される様に、以下の式を用い、L
25直交配列に従って濃度を計算した。
【0303】
【数1】
ここでn=レベルの数、y=収量(3回の実験からの平均OD
600)
【0304】
以下の
図2に示す様なこれらの実験の結果(具体的には標的バイオマス事項を対象)は、光学密度(OD
600)に関連するONC−T18による窒素利用の比率の順は最初にペプトン、次に酵母抽出物、その次にL−グルタミンであった。しかしながら、成長の最大の点では、バイオマス生産の増加に最も良い窒素源は酵母抽出物であり、次にペプトン、その次にL−グルタミン酸であった。さらに、グルコースと塩濃度(海塩濃度)とを変化させた類似の実験を用いると、ONC−T18バイオマス生産に対する最適で最も安価な培地組成は酵母抽出物2gL
−1、MSG8gL
−1、グルコース60gL
−1および海塩6gL
−1を含む培地であった。
実施例4:ONC−T18株によるドコサヘキサエン酸(DHA)の最適生産
【0305】
塩水溶液(人工海水)中に窒素源(ペプトン、酵母抽出物、L−グルタミン酸(MSG)の何れか、またはその組み合わせ)および炭素源(グルコース)を含む培地を、実施例3に記載と同様な方法で最適バイオマスとDHA生産とに対する最良の培地組成を決定するために調製した(表4に示す)。25℃、130rpmで3日間培養後、バイオマス、培地リッターあたりの全脂肪酸、脂肪酸の重量パーセント含有量、全脂肪酸中のDHAの重量パーセント含有量、および培地リッターあたりのDHA量を実施例1に記載の方法により、ガスクロマトグラフィーによって測定した。その結果を以下の表4に示す。
【0306】
この場合、ガスクロマトグラフィー−マススペクトロメトリーおよびピークロッキング法を用い、DHAの既知の標準物質と比較することによりDHAを確認した。窒素の天然および有機形態の変化を調べた実験パッケージ(1)からの発見は、バイオマスおよびDHAの最適生産に対し最適培地組成物が酵母抽出物およびL−グルタミン酸の双方を4.0〜6.0gL
−1の範囲で含む必要があることを示した。一方、培地に添加したナトリウム組成の変化を調べた実験パッケージ(2)は、人工海塩を使用するとDHA生産およびバイオマス生産が最適になることを示した。さらに、培地内のナトリウム濃度を変化させた実験パッケージ(3)は、dH
2Oリッターあたり人工海水が5〜15%でDHAおよびバイオマス生産の最大を示した。グルコースレベルの変化を評価した実験パッケージ(4)の結果は、グルコースの40〜160gL
−1以下の範囲でバイオマスとDHAとの最適生産が得られることを示した。最後に、実験パッケージ(5)の結果は、グルコースまたはグリセロールを炭素源として使用した場合、ONC−T18が細胞バイオマスおよびDHA濃度の双方について等しい値を生産することを示した。
表4:培地組成の変化に関するDHA生産最適化実験の結果
【0307】
【表5】
実施例5:最大DHA生産のためのONC−T18収穫最適時間
【0308】
ONC−T18を実施例1に示したものと同じ培地組成および条件で培養した。この場合に興味のあることは、最大量のDHA、DPAおよびEPAを得るためにONC−T18を収穫すべき時間の他、上記の量を得るために必要な時間を考慮することである(
図3参照)。
【0309】
時間経過実験の結果は、フラスコおよびバイオリアクター内でDHAの最適生産のためのONC−T18の収穫のための最適時間はそれぞれ3〜5日の間で変化することを示した。
実施例6:ONC−T18由来の脂質の分析
【0310】
ONC−T18の全脂質分画を改良BlighおよびDyer法を用いて抽出した。具体的には、2.0gの乾燥細胞マスを8mLの蒸留H
2O中、4℃で終夜再水和した。30mLのメタノール:クロロホルム(容積比2:1)を混合物に加え、120rpmで20分間穏やかに振盪し、得られた上澄を傾斜流出させた。ペレットをメタノール:クロロホルム:H
2O(体積比2:1:0.8)中に再懸濁し、このプロセスを繰り返して上澄をプールし、分液ロートに移した。次に5mLのクロロホルムと5mLのH
2Oとをロートに加え、2相液系を生成した。分液ロート内で激しく混合後、クロロホルム層を取り出し、N
2ガス下に濃縮し、クロロホルム中に再懸濁し、分析まで−20℃で保存した。約1μLの全脂質分画を複数のクロマロッド上にスポットし、Iatroscan MK6 TLC/FID装置を用いて分離分析した。
【0311】
分析結果は、従属栄養発酵下にONC−T18が生産した脂肪酸成分は、本質的に殆ど全体(少なくとも95%)がトリグリセリドであることを示した。上記の中性脂肪酸分画に加えて、ONC−T18は識別し得るカロテノイドおよびリン脂質分画も生産する。最初に50%、次に75%の燃焼、その後に溶媒系による分離によりリン脂質分画を単離すると、大きく複雑なリン脂質分画が存在することが分かった。これらの結果は試料中にホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスホチジン酸が存在することを示した。
実施例7:ONC−T18株を用いる抗酸化剤の生産
【0312】
真核微生物ONC−T18を上記の条件と培地とを用いて培養した。従属栄養発酵後に得られた細胞バイオマスを遠心分離、濾過または沈降で集めた。3800×gの遠心分離で細胞を収穫し、燐酸緩衝食塩水で洗浄した。細胞バイオマス(新鮮または凍結乾燥)を10倍容量のアセトンに懸濁し、200rpmで5分間攪拌し、3800×gで5分間遠心分離し、N
2蒸発により乾固するまで濃縮した。次に色素を最小量の10%アセトン/ヘキサン中にすぐに再懸濁し、HPLC分析まで−20℃で保存した。カロテノイド抽出物の同定を、470nmに設定した波長可変検出器を備えたAgilent 1100HPLC(Agilent、Palo Alto、CA、USA)で行った。試料をSymmetry C18ガードカラム(Waters、Mulford、MA、USA)を通してBondclone C18逆相カラム(Phenomenex、Torrance、CA、USA;10μm粒子;3.9mm(内径)×300mm)に注入した。注入容積は10μm、流速1.00mL/分でヘキサン中10%のアセトンを25分間使用した。既知の標準物質(この場合はアスタキサンチン、カンタキサンチン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノンおよびβ−カロテン;ChromaDex、Santa Ana、CA、USA)のピーク面積との比較に基づき、カロテノイドの定量データを得た。カロテノイド、フェニコキサンチンの場合の様に既知の標準物質がない場合は、濃度を計算するためにアスタキサンチンピーク面積を使用した。ホトダイオードアレー(Watersモデル996)を備えたWaters HPLCを用いてMicromass ESI−Q−Tofマススペクトロメーター(Waters、Milford、MA、USA)中に導き、HPLC−MSでカロテノイドの実体をさらに確認した。その後ONC−T18のHPLC分析により、細胞バイオマス内にいくつかの抗酸化剤分子の存在が明らかとなった(50〜1250mg/kg)。これらの化合物には抗酸化剤カロテノイドであるアスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノンおよびβ−カロテンがそれぞれ、1〜20mg/kg、0.25〜10mg/kg、1〜20mg/kg、1〜20mg/kgおよび1〜200mg/kgの他、いくつかの未同定フラベノイドポリフェノール化合物が含まれていた。
実施例8:既知の微生物との比較
【0313】
OCN−T18がDHA、EPAおよびDPAを生産する能力を、既知の微生物と比較した。培地リッターあたりの細胞バイオマスの量、乾燥細胞バイオマスあたりの脂肪または脂肪酸の含有量比、全脂肪酸中のDHA、EPAおよびDPAの含有量比、および得られたDHA、EPAおよびDPAの量を、DHA、EPAおよびDPAがスラウストキトリウム(Thraustochytrium) ATCC34304、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ATCC20891、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ATCC20892、スラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum) ATCC28210、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ATCC26185、シゾキトリウム種ATCC20888、シゾキトリウム aggregatumATCC28209、およびシゾキトリウムlimacinumMYA−1381の培養で得られた場合の他、DHA、EPAおよびDPAが本明細書に記載のONC−T18の培養で生産された場合で比較した。
表5:いくつかの代表的なスラウストキトリド(Thraustochytrid)株の脂質生産およびバイオマスの特徴の比較
【0314】
【表6】
【0315】
表5に示す様に、本明細書に記載のONC−T18を用いて培養を行った場合、培地リッターあたりの細胞バイオマス値は試験した他の株と比較して非常に高かったことが明らかである。その上、本発明によれば、ONC−T18は上記の他の株と比較してきわめて高い脂質の含有率を有していた。さらに、本発明によれば、ONC−T18内のDHAとDPAとの含有率は極めて高く、EPAレベルはスクリーニングした全ての株で同程度であることが示された。従って、ONC−T18は実施例1で述べた発酵条件下で大量のDHA、EPAおよびDPAを生産する能力を有する。
実施例9:別な炭素源の情報
【0316】
ONC−T18は主な窒素源が酵母抽出物、グルタミン酸ナトリウムおよび/またはペプトン、主な炭素源がD−グルコースである培地上で優先的に生育することが示されている。ONC−T18の詳細な代謝のプロファイリングの結果として、グリセロール(炭素源)も有用な代替品であることが注目された。さらに、グリセロールを含む魚油加工排液も、低コスト栄養代替品としての利用可能性が試験された。グリセロールの場合、500mLフラスコ中の200mLの培地を用いて、120rpm、25℃で3日間培養する実験を行った。2つの魚油加工排液−GWW(グリセロール水洗浄液)とGAW(グリセロール酸洗浄液)−のグリセロール含有量は200mL培地(pH6.5に調節)の40体積%であり、対照として6%(重量/体積)のグリセロールを200mLの培地に添加した。
表6:別な炭素源の研究に対する脂肪酸、バイオマスおよびグリセロール含有量
【0317】
【表7】
【0318】
これらの結果の分析は、グリセロール副産物等の魚油排液成分のONC−T18の大量発酵における炭素源としての使用により全脂肪酸量が減少したが、微生物細胞内のDHA含有量は維持されることを示した(
図10)。
実施例10:乾燥細胞重量の倍加
【0319】
スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18を、100,000Lまでの様々な形式のバイオリアクター中でオメガ−3油の生産のために生育させることができる。全ての発酵は、発酵培養を確立するために用いられる最終容積10〜20%の接種液の調製で始まる。初期培地は6g/Lまでの海塩、10g/Lの窒素源および60g/Lの炭素源を含み、別な75g/Lの炭素源を初期発酵の24〜36時間後にバッチ添加し、さらに72〜96時間、温度範囲18〜25℃で培養を続ける。例えば、6g/Lの海塩、2g/Lの酵母抽出物、8g/LのL−グルタミン酸および60g/LのD−グルコース(36時間後に75g/Lを添加)の培地を用い、25℃で96時間生育させて、ONC−T18は40g/Lの乾燥細胞重量(dcw)、80%(dcw)の全脂肪酸(TFA)/脂質分画(C14:0〜C24:0)、および30%(TFA)のDHAを生産可能であった。同様に、TFA含有量およびDHA含有量のいずれにも影響せず類似の倍加効果をバイオマスに与えるために、窒素および炭素培地成分の双方を倍加することにより乾燥細胞重量を増加することが可能である。例えば、24g/Lの海塩、8g/Lの酵母抽出物、32g/LのL−グルタミン酸および300g/LのD−グルコースの培地を使用し、25℃で312時間培養すると、ONC−T18は80g/Lの乾燥細胞重量(dcw)、60%(dcw)の全脂肪酸(TFA)/脂質分画(C14:0〜C24:0)および38%(TFA)のDHAを生産することが可能であった。
実施例11:様々な代替培地、炭素(C)および窒素(N)源上のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18の生育、および乾燥細胞重量および脂質に対する効果
【0320】
様々な低コスト窒素および炭素源上のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18の生育を調べた。具体的には、50mLのONC−T18を6g/Lの人工海塩を含む250mLフラスコ中、25℃で72時間培養した。炭素および窒素源濃度は以下に示す通りであり、2g/Lの表中の窒素源を8g/LのL−グルタミン酸(4gを使用した魚油を除く)と組み合わせて使用した。炭素源を表に示す様に変えた。全ての実験を3回繰り返し、GC注入を3回行って、脂肪酸メチルエステルの分析のための全抽出を3回繰り返した。
【0321】
その結果は、窒素源EMD酵母抽出物と魚肉とで生育した場合、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18が最適の乾燥細胞バイオマス(すなわち2つの対照培地より多い)を生産することを示す。逆に、脂質は対照より少なく、DHAはコーンスティープリカーおよびEMDペプトンを使用した場合、最適であった。最後に、炭素源デキストロースは脂質含有量を増加することが見出され、フラクトースとデキストロースとは対照より高いDHA含有量を製造する。
表7:スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18の生育
【0322】
【表8】
略号:MSG=L−グルタミン酸(ナトリウム)、YE=酵母抽出物
実施例12:全脂質および分画の単離のための抽出技術
【0323】
選択したオメガ−3油の単離のための様々な方法を、最適単離効率を決定するために試験した。これらの方法には:標準Bligh & Dyer法(Bligh & Dyer、Can.J.Biochem.Physiol.、37:912−917、1959);迅速GC FAME分析のための試料加工を可能にする、特にスラウストキトリド(Thraustochytrid)種で用いられる抽出およびエステル交換の組み合わせ法(Lewisら、J.Microbiol.Methods、43:107−116、2000);同時鹸化による抽出(Cartensら、J.Am.Oil.Chem.Soc.、73:1025−1031、1996);およびトリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドを選択的に単離できるシリカゲルカラムを用いる固相抽出(Pinkartら、J.Microbiol.Methods、34:9−15、1998;Bateman & Jenkins、J.Agric.Food Chem.、45:132−135、1997)が含まれた。
【0324】
具体的には、1回の発酵実施(実施例1参照)で製造した40グラムの乾燥細胞重量のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18バイオマスを0.44gのロットに分け、各技術に使用した。試料毎の3回の実施で3回行ったFID−GCによる脂肪酸メチルエステルの測定を用いて、効率分析を全ての技術について3回行った。その結果は、全脂肪酸含有量がそれぞれの方法間で変化し、溶剤:化合物の飽和、バイオマス破壊の考慮および検討した他の物理的条件(例えば温度および時間)のために変動が最も生じやすいと思われた。
表8:全脂質および分画の単離のための抽出技術
【0325】
【表9】
N.B:上記の各値は、FAME分析に対するFID−GCの3回の実施の平均
実施例13:
(a)材料および方法
(1)スラウストキトリド(Thraustochytrids)の単離および維持
【0326】
Spartina anlerniflora、Zostera marinaおよび堆積物を含む70種の海洋試料を、Nova Scotia、Prince Edward島、New Brunswick、NewfoundlandおよびLabradorの西カナダ海岸地域から、2002年7月〜8月の間に採集した。試料を、10mLの滅菌0.2μmフィルターで濾過した天然海水、300mg/Lのペニシリン、500mg/mLのストレプトマイシンを含む20mLバイアル中に入れた。懸濁液を滅菌花粉(Acer種)で刺激し、(Bremer、Marine Mycology−A Practical Approach、Fungak Diversity Press、Hong Kong、pp49−61(2000))に従って18℃で48時間インキュベーションした。花粉粒子をループで移し、抗生物質を含むB1寒天プレート(1Lの天然海水に酵母抽出物1g/L、ペプトン1g/L、寒天1g/L)上にストリークし、インキュベーションした。酵母またはバクテリアコロニーの変則的な、球状またはナメクジ状細胞で構成される、単一で不規則なガラス状コロニーをつまみ上げ、精製するためにB1プレート上で少なくとも3回継代培養した。
(2)脂肪酸スクリーニングのためのバイオマス生産
【0327】
生育および脂肪酸生産用の分離株をスクリーニングするために、オートクレーブ処理で滅菌した2g/Lのペプトン(BD、Flanklin Lakes、NJ、USA)および2g/Lの酵母抽出物(BD、Flanklin Lanes、NJ、USA)を含む、0.2μmのフィルターで濾過した天然海水を用いて液体培地を調製し、次いで0.2μmのフィルターで濾過した5g/Lの滅菌グルコース(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)を添加した(Bowelsら、J.Biotechnol.70:193−202(1999))。30mL容積の培養物を寒天プレートからループで接種し、100RPMのシェーカー上、18℃で4日間生育させた。この培養物5mLを使用して95mLの培地に接種し、さらに4日間インキュベーションした(静置)。4,500RPMの遠心分離で細胞を収穫し、5mLの蒸留水で濯ぎ、再度遠心分離した。細胞ペレットを凍結乾燥し、秤量して脂肪酸分析のために誘導体化するまで−80℃で保存した。
(3)脂肪酸メチルエステル(FAME)の調製
【0328】
Lewisら(J.Microbiol.Meth.、43:107−116(2000))を改良した直接エステル交換法により脂肪酸メチルエステル(FAME)抽出物を調製した。具体的には、20mgの凍結乾燥材料と3mLのエステル交換反応混合液(体積比、メタノール:塩酸:クロロホルム=10:1:1)とを添加した。バイオマスの均等な分散を保証するため細胞を10秒間渦流攪拌し、90℃で120分間静置した。エステル交換が終了すると、試料を取り出し室温に冷却した。次に水(1mL)を加え、10秒間渦流攪拌した。3×2mLアリコートのヘキサン:クロロホルム(4:1)を加え、10秒間渦流攪拌してFAMSを抽出し、溶液が透明に分離するまで静置した。
(4)FAMEのガスクロマトグラフィー(GC)分析
【0329】
2つの内部標準(各200μl)を用いてFAMEのGC分析を行った。1つはヘキサコサエン酸(23:0)でエステル交換前に添加し、他方はノナデカエン酸(C19:0)を分析前に直接添加した。30m×0.32mm(内径)のOMEGAWAX320溶融シリカキャピラリーカラム(フィルム厚さ0.25μm;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)と炎イオン化検出器を備えたAgliment 6890 GC(Agliment Technologies、Palo Alto、CA、USA)を用いて分析を行った(注入容積1μL、キャリアガスH
2、流速5.0mL/分一定、250℃に設定、275℃でFID検出器へのスプリット比50:1)。FAMEの実体の確認をTrace GC−DSQマススペクトロメーター(Thermo Electron、Boston、MA、USA)を用いて行い、保持時間を実験用標準物質と比較した。
(5)遺伝的同定
【0330】
ゲノムDNAを製造業者の指針に従い、MoBio UltraClean Microbial DNA Isolation Kit(MoBio Laboratories、Carlsbad、CA、USA)を用いて抽出した。18S rRNA遺伝子を増幅するために用いたオリゴヌクレオチドプライマーをHondaら(J.Eukaryot Mictobiol.、46:637−647、1999)から修飾した:すなわちT18S1F5’−CAACCTGGTTGATCCTGCGAGTA−3’およびT18S5R5’−TCACTACGGAAACCTTGTTACGAC−3’。20μLのPCR反応混合物は2U Biolase(商標)DNAポリメラーゼ(Bioline、Boston、MA、USA)、1×NH
4反応緩衝液、3mM MgCl
2、1Mベタイン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)、200μMのPCRヌクレオチド混合物(Promega、Madison、WI、USA)、各1μMのフォワードおよびリバースプライマー(High Point、NC、USA)および100ngのゲノムDNA鋳型を含んでいた。94℃、3分間の初期変性工程後、Eppendorf Master Cycle Gradientサーマルサイクラー(Eppendorf、Westbury、NY、USA)を用い、94℃で45秒、64℃で30秒、および72℃で2分を30サイクル、その後72℃で10分の最終延長反応のプログラムを用いてPCR増幅を行った.プライマーFA2、FA3、RA1、R(Moら、Mar.Biol.140:883−889、2002)、T18S1FおよびT18S5Rを用いる直接配列決定(MWG Biotach、High Point、NC、USA)のため、PCR生成物をMoBio UltraClean PCR Clean−up Kit(MoBio Laboratories Inc.、Carlsburg、CA、USA)を用いて精製した。得られた配列を整列し、DS Gene(Accelrys、Dan Diego、CA、USA)を用いてGenBank(Bensonら、Nucleic Acid Res.33:D34−38、(2005))に保存された類似に微生物のヌクレオチド配列と比較した。次に1,000個のブートストラップ再サンプリングで統計的有意性を評価するNeighbor−Joinining法(SaitoおよびNei、Mol.Biol.Evol.4:406−425、(1987))を用いて進化系統樹を作成した(Felesenstein、Evolution 39:783−791、(1985))。
(6)カロテノイドの同定
【0331】
3800×gの遠心分離で細胞を収穫し、燐酸緩衝食塩水で洗浄した。次に10倍容積のアセトン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、USA)に再懸濁し、200rpmで5分間攪拌し、3,800×gで5分間遠心分離し、N
2蒸発により乾固するまで濃縮した。HPLC分析前にヘキサン中の最小量の10%アセトンに再懸濁した。波長可変検出器を備えたAgilent 1100 HPLC(Agilent、Palo Alto、USA)により470nmで同定を行った。対称C
18ガードカラム(Waters、Milford、MA、USA)を通して試料をBondcloneC18逆相カラム(Phenomenex、Torrance、CA、USA;10μm粒子、3.9×300mm(内径))に注入した。注入容積は10μLであり、ヘキサン中10%アセトンを流速1mL/分で25分間使用した。カロテノイドの同定をさらにマススペクトロメトリー分析(Micromass ESI−QTof MS、Waters、Milford、MA、USA)で確認した。各カロテノイドの定量データは、標準物質(アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノンおよびβ−カロテン)を用いる較正曲線の作成、および一定濃度のピーク面積の比較に基づいていた。
(7)発酵の最適化
【0332】
脂肪酸およびDHAの生産に対する炭素、窒素および海塩の効果を、130rpm、25℃で3日間振盪する250mLのエレンマイヤーフラスコ中のバッチ培養を用いて調べた。さらに、Biostat(登録商標)Bplus Twin 5Lバイオリアクター(Sartorius BBI Systems Inc.、Betlehem、PA、USA)を用いて培養の実験を行った。バイオリアクター中の4.9Lの培地に接種するために、100mLの接種溶液を用いた。製造業者の指針に従い、Glucose Assay Kit(Sigma−Aldrich、St. Louis、MO、USA)を用いてグルコース濃度を測定した。バイオリアクターで用いた培地組成および条件は、以下の結果に詳細に述べる。
(b)結果
【0333】
収集およびスクリーニングプロセスを開発し、花粉刺激および選択的細菌学培地を用いて、原性動物ファミリーのメンバーLabyrinthulida、特にその属、シゾキトリウムおよびスラウストキトリウム(Thraustochytrium)を単離した。カナダ大西洋岸中に分散した20箇所の独自の採集地点をカバーするこの研究から68の純粋な株が得られ、顕微鏡で同定された。細胞乾燥重量の20%以上が脂肪酸である油性株の選択は、(Levisら、J.Microbiol.Meth.43:107−116、(2000))の方法に従って、GC FUFAプロフィール、バイオマス生産性、最大のTFA、DHAおよびより少量のEPA濃度の結果に基づいていた(
図11)。バイオマスの値、TFAおよびそれに続くDHAおよびEPAの生産性はそれぞれ100〜2300mg/L、27.1〜321.4、5.18〜83.63および2.97〜21.25mg/gであった(
図11)。
【0334】
液体培地中で生育する全ての分離株(68中の54)は相当量のオメガ−3ポリ不飽和脂肪酸を生産し、特にこれらの細胞の全C20〜C22脂肪酸含有量の22〜88%がDHAであった(
図11)。このことは、低温帯環境から単離されたスラウストキトリド(Thraustochytrids)が、全脂肪酸含有量の53%までのDHAである脂肪酸プロフィールを有するという先の知見を確認するものである(Bowlesら、J.Biotechnol.70:193−202、1999;Huangら、Mar.Biotechnol. 5:450−457、(2003))。特に興味のあることは、ONC−T18が90%までのC20〜C22脂肪酸含有量をDHAとして生産し、DHAが全細胞内脂肪酸の約35%であることである。このDHA含有量は、シゾキトリウム種ATCC20888(32%)およびS.limacinum MYA−1381/SR21(34%)等のいくつかの市販生産株の含有量に匹敵することが示された(Barclayら、J.Appl.Phycol.6:123−129,1994;およびYokochiら、Appl.Microbiol.Biotechnol.49:72−76、(2003))。さらに、全ての分離株はエイコサペンタエン酸(EPA)を合成し、同定された全PUFAの2〜20w/w%の間で変化した(
図11)。生産されたオメガ−3油に加えて、全分離株の約80%はオメガ−6PUFA、すなわちアラキドン酸(AA)またはドコサペンタエン酸(DPA)をそれぞれ1〜18w/w%および3〜7w/w%の濃度で合成した(
図11)。
【0335】
Huangら(Mar.Biotechnol.5:450−457、(2003))は、日本およびフィジーの熱帯性湾岸水から単離されたスラウストキトリド(Thraustochytrids)で5種のポリ不飽和脂肪酸プロフィール、すなわちDHA/DPA(n−6)、DHA/DPA/EPA、DHA/EPA、DHA/DPA/EPA/AAおよびDHA/DPA/EPA/AA/ドコサテトラエン酸が記録されることを示唆した(Huangら、Mar.Biotechnol.5:450−457、(2003))。このカナダ温帯大西洋から単離されたスラウストキトリド(Thraustochytrids)のコレクションの場合、4種のPUFAプロフィールが決定でき、その3種は上記のものと同一、すなわちDHA/DPA/EPAがコレクションの7.4%、DHA/EPAがコレクションの13%、およびDHA/DPA/EPA/AAがコレクションの74%であり、第4番目が5.6%のDHA/EPA/AA混合物を含んでいた。
【0336】
18S rDNA遺伝子の直接の配列決定により、ONC−T18がスラウストキトリド(Thraustochytrid)ファミリー(GenBank寄託番号:DQ374149)のメンバーであることが明確に同定された。系統発生分析は、ONC−T18がスラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum) T91−6と独自のグループ(97.5%の同一性)を形成することを示した(
図12:LeaderおよびPorter、Mycologia、93:459−464、(2001))。スラウストキトリダエ(Thraustochytridae)種MBIC 11093、N1−27および日本の沿岸熱帯水から収集し、DHAの主要な生産菌であることが見出されたスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種CHN−1(Carmonaら、Biosci.Biotechnol.Biochem.、67:884−888、(2003)およびMar Biotechnol 5:450−457(2003))は、それぞれ96、95.5および94.5%の類似性であることが示された。
図12に示されたスラウストキトリダエ(Thraustochytridae)の全てのメンバー間での遺伝的多様性はきわめて低く、全体で97.5〜91.0%の類似性の範囲であった。しかし、これらの種は世界的に分布し、その2/3は日本、中国およびイスラエルの沿岸熱帯水から分離され、残りはアメリカ、ヨーロッパおよびカナダの温帯の水から単離されている。
【0337】
ONC−T18の脂肪酸プロフィールは、シゾキトリウム種KH105またはS.Limacinum SR21と同様に高含有率のC22 PUFA、極めて低レベルのC18およびC20FAを含み、奇数鎖飽和脂肪酸(15:0および17:0)も生成していた。さらに、ONC−T18、SR21およびKH105株に対する炭素および窒素利用プロフィールの分析は、同様な同化パターンを示した。ONC−T18株中のn−6DPAの含有量は6〜10%の範囲であり、生物圏におけるn−6DPAの出現が限られていることを考えると非常に高いように思われる。しかしながら、同様なn−6DPAのレベルがNakamuraら(J.Am.Oil Chem.Soc.73:1421−1426、(1996))によりシゾキトリウム種SR21(6〜10%)で、Ellenbogenら(Comp.Biochem.Physiol.29:805−81、(1969))によりT.aureum(9.5%)およびT.roseum(6.6%)で報告されている。
【0338】
3つの異なった培養形態(1)寒天プレート、(2)三角フラスコおよび(3)バイオリアクター中、同じ培地(
図13)上で生育したONC−T18の脂肪酸プロフィールの分析は、寒天プレートからバイオリアクターへの存在するPUFAの多様性の減少と、TFAの全体的な増加とを示す。具体的には、寒天プレートは一連のPUFAを示すが、フラスコおよびバイオリアクターで生育した培養物は1つまたは2つの中間体が優性であった(
図13)。攪拌タンク培養器中よりフラスコ培養でよく育つスラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)(Iidaら、J.Ferment.Bioeng.81:76−78、(1996))と比較して、ONC−T18はバイオリアクター中でよりよく生育した。この結果は、シゾキトリウム種SR21が機械的攪拌に対する耐性が高く、したがってバイオリアクターの条件下で生存することを見出したNakamuraら(J.Am.Oil Chem.Soc.73:1421−1426、(1996))の結果と一致した。
【0339】
さらに、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18のプレート、フラスコおよびバイオリアクター発酵でカロテノイド色素が製造されることが見出され、プレートを淡いオレンジ色に着色した。これらの抗酸化剤の生産は、脂肪酸生産と平行してバイオリアクター発酵内で最大である。さらに、HPLC−マススペクトロメトリーを使用してこれらの抗酸化剤化合物が様々なPUFAと接合しているアスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノンおよびβ−カロテンであることが同定された(
図14)。同様な結果が原生動物のスラウストキチド(Thraustochytid)グループのメンバー間で報告された。具体的には、シゾキトリウム aggregatumがエキネノンおよびカンタキサンチンを生産する(Valadon、Trans.Br.Mycol.Soc.67:1−15、1976)ことが示されたが、Carmonaら(Biosci.Biotechnol.Biochem.67:884−888、2003)およびHuangら(Mar.Biotechnol.5:450−457、2003)はONC−T18の近縁種であるスラウストキトリウム(Thraustochytrium)種CHN−1によるアスタキサンチン、エキネノン、カンタキサンチン、フォエニコキサンチン(ONC−T18における様なゼアキサンチンではない)およびβ−カロテンの生産を示した(
図12)。この研究で、これらのカロテノイドの濃度は、主な化合物がアスタキサンチンでなくβ−カロテンであるCHN−1による濃度より1桁少ないことが見出された。従って、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ではPUFAとカロテノイドの生産は、生産される貯蔵脂質が酸化から保護され得る様に結合している可能性がある。
【0340】
主要な脂肪酸成分(ミリスチン酸、パルミチン酸およびオレイン酸)の相対量が、培養物の生育条件を変えることにより変化し得ることが先に示されている(Iidaら、J.Ferment.Bioeng.81:76−78、(1996))。この様にして、最終脂肪酸の組成、従って発酵中に制御して所望のPUFAの物性を操作することができる(Sijtsmaら、Recent Res.Devel.Microbiol.2:219−232、1998)。ONC−T18におけるバイオマスおよびオメガ−3PUFA生産の双方を阻害する因子を制限する試みで、栄養培地中の炭素、窒素および海塩成分を操作する(表9)と共に、培養期間も操作した(
図15)。
表9:スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ONC−T18の平均バイオマス生産(SD≦15%)、全脂肪酸(TFA)およびDHA含有量
【0341】
【表10】
【0342】
この研究において、窒素の濃度が減少すると全脂肪酸含有量が増加し、酵母抽出物およびグルタミン酸ナトリウムの濃度が1%(w/v)で最高の全脂肪酸含有量(約80%)が得られた。しかしながら、低窒素濃度での培養も細胞の成育、従って全脂肪酸の生産を制限した。この実験で8g/Lのグルタミン酸ナトリウムおよび2g/Lの酵母抽出物を用いて最適な生産が得られ、26.1g/Lのバイオマスおよび4.5g/LのDHAが製造された(表9)。さらに、炭素を100g/Lまで増加するとDHA収量を効果的に増加したが、これはシゾキトリウム種SR21で得られた結果と一致し(Yokochiら、Appl.Microbiol.Biotech.49:72−76、(2003))、10g/L以上のグルコース濃度が阻害的であるというT.aureumの結果と対照的である(Iidaら、J.Ferment.Bioeng.81:76−78、(1996))。4.0g/L以上の最大のDHA収量がグルコース培地で得られ、その収量はT. aureum(Bajpaiら。J.Am.Oil Chem.Soc.68:509−514、(1991))およびT.roseum(LiおよびWard、J.Ind.Microbiol.13:238−241、(1994))による収量の5倍以上であり、シゾキトリウム種SR21およびKH105の収量と同等であった(Akiら、J.Am.Oil Chem.Soc.80:789−794、(2003))。最後に、ONC−T18は古典的な広塩性能力を示し、2.0〜50.0g/Lの範囲の塩濃度に耐性であり、バイオマス生産性は25〜30%の範囲で変化した(
図9)。同じ実験でDHAのg/L値は最適の4.6g/Lから最小の2.5g/Lの間で45%まで変化することが見出された(表9)。
【0343】
5Lバイオリアクター中で168時間にわたってONC−T18により生産されたバイオマス、TFAおよびDHAを
図15に示す。示された生育曲線は、同じ条件下で達成されたものの典型例である。最大のバイオマス生産は炭素源(すなわちグルコース)の飢餓点に近い120時間後に到達した。これは、70%バイオマス付近でバイオマスの全脂肪酸含有量が最大に達するポイントでもある。僅か24時間の培養後にDHA含有量が全脂肪酸の30%に達し、その後は20〜25%の一定値であることは興味のあることである。これらの結果は他の脂肪酸生産スラウストキチド(Thraustochytid)株の結果と符合するが、これらの反応を生じる速度に関しては相違がある。
(c)考察
【0344】
以前の最もよく研究されたLabyrinturomycotaの同定された株は、バイオマスの20%以上の量の全脂肪酸を蓄積することができなかった。例えば、バイオマスの50%までを脂肪として蓄積することができるシゾキトリウム種SR21の単離前は、T.aureumが20%の最良の蓄積株であった(Bajpaiら、J.Am. Oil.Chem.Soc.68:509−514、(1991))。一方、ONC−T18はそのバイオマスの80%までを脂質として蓄積することができる。
【0345】
ONC−T18等の油性微生物が油を蓄積するためには、典型的には窒素量を制限(通常は24〜36時間で消費される)し、炭素源を豊富に含む培地で生育する必要がある。窒素が欠乏すると、油性微生物は炭素源を同化し続けるが、窒素が欠乏するために細胞分裂を行うことができない(従って蛋白質および核酸合成が阻止される)。その結果は、これらの炭素源(すなわちグルコース等の糖)の貯蔵油への変換である。この点に関して、ONC−T18はG13等の他のスラウストキトリド(Thraustochytrid)株(Bpwlesら、J.Biotechnol.70:193−202、1999;およびHuangら、Mar.Biotechnol.5:450−457、2003)より遅く生育すると考えられるが、DHAをより速い速度で生産し、上昇した量の全脂肪酸を取り込む独特の能力を示す。最後に、ONC−T18は極めて低い塩濃度で生育する能力を示すが、高いバイオマスおよび全脂肪酸の生産性は顕著である。工業的発酵装置に対する塩水の腐食性を無視してスペールアップが可能になる。