特許第5886513号(P5886513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886513
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】レーザスキャナを伴う関節式測定アーム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20160303BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G01B11/00 A
   G01B21/00 E
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2009-238997(P2009-238997)
(22)【出願日】2009年10月16日
(65)【公開番号】特開2010-122209(P2010-122209A)
(43)【公開日】2010年6月3日
【審査請求日】2012年9月20日
【審判番号】不服2014-22878(P2014-22878/J1)
【審判請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】61/106,096
(32)【優先日】2008年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/487,535
(32)【優先日】2009年6月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509287304
【氏名又は名称】ヘキサゴン メトロロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール フェラーリ
【合議体】
【審判長】 森 竜介
【審判官】 清水 稔
【審判官】 堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−517914(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/100908(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/125081(WO,A1)
【文献】 特表2009−534969(JP,A)
【文献】 特開2008−98924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00, G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的位置取得部材であって、
取り付け時にCMM測定プローブが通るように位置決めされた開口を含む基板と、
前記基板に取り付けられたレーザと、
前記レーザ及び前記開口と概ね同一線上にあるように前記基板に取り付けられた光学センサであって、前記開口は、前記レーザと前記センサとの間にあり、且つ、前記レーザとともに、前記レーザと前記光学センサから離れたケース内に位置決めされたエレクトロニクスと関連付けられた、光学センサと、
を備える光学的位置取得部材。
【請求項2】
前記基板は、インバー、セラミック、スチール、アルミニウム、プラスチック、又は炭素複合材料からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の光学的位置取得部材。
【請求項3】
前記レーザは、前記開口の中心から100mm以内にある、請求項1に記載の光学的位置取得部材。
【請求項4】
前記基板に取り付けられ前記光学センサを実質的に取り囲む第1のケースを、更に備える、請求項1に記載の光学的位置取得部材。
【請求項5】
前記基板には、2つ又は3つ以上の光学センサが取り付けられる、請求項1に記載の光学的位置取得部材。
【請求項6】
前記光学センサに作動式に接続されたエレクトロニクスを前記第1のケース内に更に備える、請求項4に記載の光学的位置取得部材。
【請求項7】
前記エレクトロニクスは、前記レーザから熱的に隔離される、請求項5に記載の光学的位置取得部材。
【請求項8】
前記基板は、前記プローブに無関係に回転可能であるように、前記プローブに回転可能式に取り付けられるように構成される、請求項1に記載の光学的位置取得部材。
【請求項9】
関節付きアームCMMであって、
複数の関節付きアーム部材と、測定プローブと、遠位端における受け部分と、近位端における基部とを含む、関節付きアームと、
前記受け部分に取り付けられた基板であって、前記基板は、取り付け時に前記測定プローブが通るように位置決めされた穴を含み、前記基板は、前記穴の両側に配置されたレーザ及び光学センサであって、前記レーザと前記光学センサと前記測定プローブから離れたケース内に位置決めされたエレクトロニクスと関連付けられた前記レーザと前記光学センサに結合される、基板と、
を備える関節付きアームCMM。
【請求項10】
前記関節付きアームは、更に、最後の回転軸を含み、
前記レーザは、前記最後の回転軸に概ね平行に方向付けられ、前記最後の回転軸から100mm以内にある、請求項9に記載の関節付きアームCMM。
【請求項11】
前記関節付きアームは、更に、最後から2番目の回転軸を含み、
前記光学センサは、更に、焦点を含み、
前記焦点は、前記最後から2番目の回転軸から100mm以内にある、請求項9に記載の関節付きアームCMM。
【請求項12】
前記基板には、2つ又は3つ以上の光学センサが取り付けられる、請求項9に記載の関節付きアームCMM。
【請求項13】
前記受け部分は、軸受けを含み、
前記レーザ又は前記光学センサの少なくとも一部分が、前記軸受けに重なる、請求項9に記載の関節付きアームCMM。
【請求項14】
前記基板は、前記プローブに無関係に回転可能であるように、前記受け部分に回転可能式に取り付けられる、請求項9に記載の関節付きアームCMM。
【請求項15】
座標測定機器であって、
第1の端と、第2の端と、それらの間の複数の継ぎ合わせアームセグメントと、を有する関節付きアームであって、各アームセグメントは、少なくとも1つの回転軸を定め、最後の回転軸は、前記アームの遠位端近くの軸受けによって定められる、関節付きアームと、
前記アームの前記第2の端に結合され、前記関節付きアームの前記最後の回転軸を中心に回転可能である、レーザスキャナアセンブリであって、前記レーザスキャナアセンブリは、レーザと画像センサであって前記レーザと前記画像センサから離れたケース内に位置決めされたエレクトロニクスと関連付けられた前記レーザと前記画像センサとを含み、前記レーザは、前記最後の回転軸を挟んで前記画像センサの反対側に位置決めされ、前記レーザ及び前記画像センサの少なくともいずれかが、前記軸受けに重なる、レーザスキャナアセンブリと、
を備え、
前記レーザ及び前記画像センサは、共通の板に取り付けられ、
前記共通の板は、前記最後の回転軸が通って伸びる開口を含み、
前記共通の板の前記開口を通ってプローブが伸びる、
座標測定機器。
【請求項16】
前記プローブは、タッチプローブである、請求項15に記載の座標測定機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<優先権情報>
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、引用によって本明細書に全体を明示的に組み込まれる米国仮特許出願第61/106,096号(2008年10月16日出願)の利益を主張するものである。
【0002】
<背景技術>
本発明は、座標測定機に関するものであり、特に、レーザスキャナを伴う座標測定機に関するものである。
【0003】
<関連技術>
座標測定機(CMM)とも、関節付きアーム測定機とも称される直線測定システムが、高精度の幾何学情報を生成するために使用される。一般に、これらの器具は、品質制御、電子的レンダリング、及び/又は複製における使用のために、物体の構造特性を捕獲する。座標データの取得に使用される従来の装置の一例は、携帯型座標測定機(PCCM)であり、これは、機器の測定範囲内で高精度の測定を行うことができる携帯型の機器である。このような機器は、多くの場合、継ぎ手によってつなぎ合わされた複数の移動部材を含むアームの端に取り付けられたプローブを含む。プローブと反対側のアームの端は、可動の基部に結合されるのが通常である。通常は、継ぎ手は、個々の回転自由度に分解され、それぞれ、専用の回転トランスデューサを使用して測定される。測定中、アームのプローブは、オペレータによって、測定範囲内の様々な地点へ手動で移動される。各地点では、所定の瞬間における各継ぎ手の位置を決定する必要がある。したがって、各トランスデューサは、その自由度での継ぎ手の移動にしたがって変化する電気信号を出力する。通常は、プローブもまた、信号を生成する。これらの位置信号及びプローブ信号は、アームを通して記録器又は解析器へ送られる。位置信号は、次いで、測定範囲内でプローブの位置を決定するために使用される。例として、引用によって本明細書に全体を組み込まれる米国特許第5,829,148号及び第7,174,651号を参照せよ。
【0004】
PCCMは、光学式スキャナ又はレーザスキャナと組み合わせて使用されることが増えている。このような用途では、光学式スキャナ又はレーザスキャナは、通常は、全て1つのボックスに収容される光学系と、レーザ光源若しくは光源と、センサと、エレクトロニクスとを含む。そして、レーザスキャナボックスは、PCMMのプローブ端に、プローブの横で結合される。レーザスキャナボックスを取り付ける場所として、ブローブの上、プローブの軸の前方下側、及び/又はプローブの脇などにボックスを位置決めすることが挙げられる。こうして、レーザスキャナによって二次元及び/又は三次元のデータを収集し、PCMMによって生成される位置信号と組み合わせることができる。例として、米国特許第7,246,030号を参照せよ。
【0005】
このような、PCMMとレーザスキャナとの組み合わせが有用である一方で、上述のように、PCMMの目的は、高精度の測定を行うことにある。したがって、このような機器の精度を高めることが、引き続き必要とされている。
【0006】
<発明の概要>
本発明の一態様は、このような先行技術のシステムが数々の非効率に見舞われることを認識することである。例えば、先行技術のシステムは、通常は、アームに対してレーザスキャナを容易に取り外し及び交換することを可能にする再現性の運動学的取り付けを必要とする。このような取り付けは、一般的なものであるので、同じCMMに、多くの異なる
種類のスキャナを取り付けることが可能である。これらの一般的な取り付けは、レーザスキャナを最適でない場所に配置し、その結果、レーザスキャン特性の精度を低下させる。レーザスキャンボックスを取り付ける場所としては、以下で更に議論されるように、最後の軸の上、最後の軸の前方下側又は最後の軸の脇などが挙げられる。
【0007】
したがって、本発明の一実施形態は、光学的位置取得部材を含む。該部材は、CMM測定プローブを受けるように構成された開口を有する基板を含むことができる。基板には、レーザ及び光学センサの両方を、センサがレーザ及び開口と概ね同一線上にあるように取り付けることができ、このとき、開口は、レーザとセンサとの間にある。
【0008】
別の実施形態では、関節付きアームCMMが提供される。関節付きアームは、複数の関節付きアーム部材と、測定プローブと、遠位端における受け部分と、近位端における基部とを含むことができる。受け部分には、基板を取り付け可能であり、該基板は、取り付け時にプローブが通るように位置決めされた穴を含むことができる。基板は、穴の両側に配置されたレーザ及び光学センサに結合することができる。
【0009】
更に別の実施形態では、座標測定機器は、関節付きアームと、レーザスキャナアセンブリとを含む。関節付きアームは、第1の端と、第2の端と、それらの間の複数の継ぎ合わせアームセグメントと、を有することができる。各アームセグメントは、関節付きアームの少なくとも1つの回転軸を定めることができ、アームの最後の軸は、アームの遠位端近くの軸受けによって定めることができる。レーザスキャナアセンブリは、アームの第2の端に結合することができ、関節付きアームの最後の回転軸を中心に回転可能であることができる。また、レーザスキャナアセンブリは、レーザと画像センサとを含むことができ、レーザは、最後の回転軸を挟んで画像センサの反対側に位置決めされる。更に、レーザ及び画像センサの少なくともいずれかが、軸受けに重なることができる。
【0010】
これらの実施形態は、全て、本明細書に開示される発明の範囲内であることを意図される。当業者ならば、添付の図面を参照にした好ましい実施形態の以下の詳細な説明から、本発明のこれらの及びその他の実施形態が容易に明らかであり、本発明は、開示されたいかなる特定の好ましい実施形態にも限定されない。また、個々の実施形態は、上述の全ての又は任意の利点を提供する必要はない。
【0011】
本発明の例示的な実施形態を示した添付の図面に関連した以下の詳細な説明から、本発明の更なる目的、特徴、及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】レーザスキャナを伴うCMMアームの実施形態の斜視図である。
図1A図1のCMMアームの側面図である。
図1B図1のCMMアームの上面図である。
図2図1のCMMアームの座標取得部材の斜視図である。
図2A図2の座標取得部材の側面図である。
図2B図2の座標取得部材の上面図である。
図2C図2の座標取得部材を2C−2Cから見た側断面図である。
図2D図2の座標取得部材の輪郭側面図であり、様々な寸法を示している。
図3図2の座標取得部材の分解側面図である。
図3A図3の非接触式座標検出機器を3A−3Aから見た背面図である。
図3B図3の座標取得部材の本体を3B−3Bから見た正面図である。
図4A】別の座標取得部材を示している。
図4B図4Aの座標取得部材の輪郭側面図であり、様々な寸法を示している。
図5A】別の座標取得部材を示している。
図5B図5Aの座標取得部材の輪郭側面図であり、様々な寸法を示している。
図6A】別の座標取得部材を示している。
図6B図6Aの座標取得部材の輪郭側面図であり、様々な寸法を示している。
図7A】別の座標取得部材を示している。
図7B図7Aの座標取得部材の輪郭側面図であり、様々な寸法を示している。
図7C図7Aの座標取得部材の輪郭正面図であり、様々な寸法を示している。
【0013】
<好ましい実施形態の詳細な説明>
図1〜1Bは、本発明にしたがった携帯型座標測定機(PCMM)1の一実施形態を示している。図示された実施形態では、PCMM1は、基部10と、複数の剛性移動部材20と、座標取得部材50と、剛性移動部材20を互いに接続する複数の関節部材30〜36とを含む。各関節部材30〜36は、1つ又は2つ以上の回転自由度及び/又は角度自由度を付与するように構成される。個々の関節部材30〜36を通じて、PCMM1は、様々な空間的向きに合わせることができ、そうして、三次元空間内における座標取得部材50の微細な位置決め及び向き合わせを可能にしている。
【0014】
剛性移動部材20及び座標取得部材50の位置は、手動式、ロボット式、半ロボット式、及び/又はその他の任意の調整方法を使用して調整されてよい。一実施形態では、PCMM1は、個々の関節部材30を通じて7本の回転運動軸を提供される。しかしながら、使用されえる運動軸の数に厳密な制限はなく、7本より少ない又は多い運動軸がPCMM設計に組み入れられてよいことがわかる。
【0015】
図1に示されたPCMM1の実施形態では、関節部材30〜36は、それらの動作に基づいて、2つの機能グループに分けることができる。即ち、1)特定の移動部材に関連した旋回運動を可能にする関節部材30、32、34、36(以下では「回り継ぎ手」)と、2)2つの隣り合う部材間又は座標取得部材30とその隣りの部材との間に形成される相対角度の変化を可能にする関節部材31、33、35(以下では「ヒンジ継ぎ手」)とに分けられる。図示された実施形態は、7本の運動軸を形成するように配置された4つの回り継ぎ手と3つのヒンジ継ぎ手とを有するが、その他の実施形態では、PCMMにおいて異なる運動特性を実現するために、ヒンジ継ぎ手及び回り継ぎ手の数と位置とを変更することができると考えられる。例えば、6本の運動軸を伴う実質的に同様の機器は、座標取得部材50とその隣りの関節部材20との間の回り継ぎ手30を単純に欠いている。更に他の実施形態では、回り継ぎ手とヒンジ継ぎ手とを組み合わせる及び/又は異なる組み合わせで使用することができる。
【0016】
様々な実施形態では、座標取得部材50は、図2〜3に示されるように、選択された物体の表面に係合してプローブ接触に基づいて座標データを生成するように構成された接触感知式部材55(ハードプローブとして示される)を含む。図示された実施形態では、座標取得部材50は、幾何学データを取得するために被選択物体との直接的な接触を必ずしも必要としない非接触走査&検出コンポーネントも含む。図示されるように、非接触走査機器は、物体との直接的な接触なしに幾何学データを得るために使用され得る非接触座標検出機器60(レーザ座標検出機器/レーザスキャナとして示される)を含む。なお、座標を取得する目的には、接触感知式プローブ、非接触走査機器、レーザ走査機器、接触検出用に歪みゲージを使用するプローブ、接触検出用に圧力センサを使用するプローブ、位置決め用に赤外線ビームを使用する機器、及び静電応答式に構成されるプローブを含む様々な座標取得部材構成が使用されてよいことがわかる。更に、一部の実施形態では、座標取得部材50は、1つ、2つ、3つ、又は4つ以上の座標取得メカニズムを含むことができる。
【0017】
特に図3を参照すると、PCMM1の様々な実施形態において、座標の取得に用いられ
得るレーザ座標検出機器60などの様々な機器は、オペレータが専用ツールを用いずに座標取得機器を変更することができるように、PCMM1に対して手動で切り離し及び再接続を行われるように構成されてよい。したがって、オペレータは、とある座標取得機器を迅速に尚且つ容易に取り外し、それを別の座標取得機器に交換することができる。このような接続は、任意の迅速な切り離し機器又は手動の切り離し機器を含んでいてよい。座標取得機器のこの迅速な接続能力は、比較的短期間に多岐にわたる様々な測定技術に使用される可能性がある(例えば、座標取得部材を表面に物理的に接触させる必要がある測定の後に、座標取得部材を光学的に接触させるのみでよい測定が続くなど)PCMM1において、特に有利である。図では、レーザ座標検出機器60のみが取り外されているが、実施形態によっては、類似の形で接触感知式部材55も取り外して交換することができる。
【0018】
図2の実施形態では、座標取得部材30は、オペレータによってアクセス可能であるように構成されたボタン41も含む。1つ又は2つ以上のボタン41を、1回、複数回、又は所定の順序で押すことによって、オペレータは、PCMM1に対して様々なコマンドを入力することができる。一部の実施形態では、ボタン41は、座標の読み取りを記録する用意が整ったことを示すために使用することができる。その他の実施形態では、ボタン41は、測定されている場所がホーム位置であること、そしてその他の位置が当該ホーム位置を基準に相対的に測定されるべきであることを示すために使用することができる。その他の実施形態では、ボタン41は、接触感知式部材55を使用して地点を記録するため、非接触座標検出機器60を使用して地点を記録するため、又は2つの機器間で切り替えを行うために使用されてよい。その他の実施形態では、ボタン41は、オペレータの具体的なニーズに応えるようにプログラム可能であってよい。座標取得部材50上におけるボタン41の場所は、オペレータが座標取得部材50を使用している最中にPCMM1の様々な機能をアクティブにするために基部10又はコンピュータにアクセスする必要がないという点で、有利であるということができる。この位置決めは、とりわけ長い移動部材20を有するゆえに大半の位置において基部10を座標取得部材50のオペレータの手の届かない場所に配されているようなPCMMの実施形態で、特に有利であろう。PCMM1の一部の実施形態では、任意の数の(例えば図示された2つよりも多い又は少ない)オペレータ入力ボタンを提供することができる。図示されるように、ボタン61は、ハンドル40上のトリガ位置に有利に配されているが、その他の実施形態では、座標取得部材50上のその他の位置又はPCMM1上の任意の位置にボタンを配することも望ましいであろう。PCMMのその他の実施形態は、PCMM上又は座標取得部材50上に位置決めされたスイッチ、回転ダイヤル、又はタッチパネルなどのその他のオペレータ入力機器を、オペレータ入力ボタンの代わりに又はオペレータ入力ボタンの追加で含むことができる。
【0019】
特に図1を参照すると、一部の実施形態では、基部10は、磁気的取り付け具、真空取り付け具、ボルト、又はその他の結合機器を通して作業面に結合することができる。また、一部の実施形態では、基部10は、プラグ、ソケット、又は接続ポートなどの様々な電気的インターフェースを含むことができる。一部の実施形態では、接続ポートは、PCMM1と、汎用コンピュータなどのプロセッサとの接続用のUSBインターフェース、電源との接続用のAC電源インターフェース、又はモニタとの接続用のビデオインターフェースと、の間の接続機能を含むことができる。一部の実施形態では、PCMM1は、WiFi接続、Bluetooth接続、RF接続、赤外接続、又はその他の無線通信プロトコルによるなどして、外部のプロセッサ又は汎用コンピュータとの無線接続を有するように構成することができる。一部の実施形態では、様々な電気的インターフェース又は接続ポートを、特定のPCMM1の要件を満たすように特別に構成することができる。
【0020】
引き続き図1を参照すると、移動部材20は、該部材20に十分な剛性を付与するために、概ね円筒状の中空管部材で構成されることが好ましい。移動部材20は、PCMM1のために十分に剛性の延長を提供する任意の適切な材料で作成することができる。移動部
材20は、移動部材20に更なる剛性を付与するために、二重管アセンブリを画定することが好ましい。更に、移動部材20は、その他の様々な実施形態では、三角形又は八角形を含むなどの別の形状にも作成することができると考えられる。
【0021】
一部の実施形態では、移動部材20の少なくとも一部分を構成するために、炭素繊維材料などの複合材料を使用すると望ましいことがある。一部の実施形態では、PCMM1のその他のコンポーネントも、炭素繊維材料などの複合材料を含むことができる。炭素繊維などの複合材料で移動部材20を構成すると、炭素繊維がスチール又はアルミニウムなどの金属性材料と比べて熱的影響にあまり反応しないという点で、特に有利であるということができる。したがって、様々な温度で、正確に尚且つ一貫性をもって座標測定を実施することができる。その他の実施形態では、移動部材20は、金属性材料を含むことができ、又は金属性材料、セラミック、熱可塑性プラスチック、若しくは複合材料などの材料の組み合わせを含むことができる。また、当業者ならばわかるように、PCMM1のその他の多くのコンポーネントも、炭素繊維などの複合材料で作成することができる。現在のところ、複合材料に対する製造能力は、一般に、金属に対する製造能力ほど正確ではないので、一般に、より高い寸法精度を必要とするPCMM1のコンポーネントは、一般に、アルミニウムなどの金属で作成される。複合材料の製造能力が向上するにつれ、複合材料で作成することができるPCMM1の数も増すと予測される。
【0022】
引き続き図1を参照すると、PCMM1の一部の実施形態は、移動部材20及び関節部材30〜36の重さの影響を軽減することによってオペレータを補助することができる釣り合いシステム110も含んでよい。向き次第では、移動部材20が基部10から遠ざかるときに、移動部材20の重さがオペレータに困難をもたらすことがある。したがって、釣り合いシステム110は、簡便な測定のために、オペレータがPCMM1の位置決めに必要とする努力を軽減させるのに、特に有利であることができる。一部の実施形態では、釣り合いシステム110は、移動部材20を片持ちするための重いおもりを必要とすることなく移動部材20の動きを緩和するように構成された抵抗ユニット(不図示)を含むことができる。当業者ならば、その他の実施形態では、抵抗ユニットの代わりに又は抵抗ユニットと合わせて単純な片持ち釣り合いおもりを使用できることがわかる。更に、図では、1つの釣り合いシステム110ユニットのみが示されるが、その他の実施形態では、2つ以上あることが可能である。
【0023】
一部の実施形態では、抵抗ユニットは、移動部材20の動きを補助するために流体抵抗を使用する水圧抵抗ユニットを含むことができる。その他の実施形態では、抵抗ユニットは、空気抵抗デバイス、又は線形式若しくは回転式のバネシステムなどのその他の抵抗装置を含んでよい。
【0024】
当該分野で知られるように、とある瞬間における空間内の接触感知式部材55の位置は、各剛性移動部材20の長さ及び各関節部材30〜36の具体的な位置を知ることによって計算することができる。各関節部材30〜36は、個々の回転可動度に分解可能であり、それぞれ、専用の回転トランスデューサを使用して測定される。各トランスデューサは、その可動度での関節部材の動きにしたがって変化する信号(例えば電気信号)を出力する。信号は、配線を通じて又はその他の手法で、基部10に伝送することができる。座標取得部材50及びその様々なパーツの空間内における位置を決定するために、該信号は、処理され及び/又はそこからコンピュータに転送されることができる。
【0025】
一実施形態では、トランスデューサは、光学エンコーダを含むことができる。一般に、各エンコーダは、連続する透明バンドと不透明バンドとを有する1対の内部車輪に動きを結合することによって、その車軸の回転位置を測定する。このような実施形態では、1対の電気出力を供給する光学センサ上に、車輪を通じて光を当てることができる。車軸が弧
を描くにつれ、アナログエンコーダの出力は、位相が90度ずれた実質的に2つの正弦波信号になることができる。粗い位置決めは、2つの信号の極性の変化の観測を通じて行うことができる。微細な位置決めは、問題の瞬間における2つの信号の実際の値を測定することによって決定することができる。特定の実施形態では、出力を、それが電子雑音によって破損される前に正確に測定することによって、最大精度を得ることができる。図示されたPCMM1の実施形態の更なる詳細及び実施形態については、引用によって本明細書に全体を組み込まれる米国特許第5,829,148号に見受けられる。
【0026】
図1図1A、及び図1Bを参照すると、一部の実施形態では、PCMM1は、1つ又は2つ以上の回転把持アセンブリ122、124を含むことができる。図示された実施形態では、PCMM1は、下側の回転把持アセンブリ122と、上側の回転把持アセンブリ124とを含むことができる。有利なことに、下側の回転把持アセンブリ122及び上側の回転把持アセンブリ124を最後の移動部材21に設けることによって、オペレータは、容易に両手を使用してPCMM1を位置決めすることが可能になる。その他の実施形態では、PCMM1は、1つ又は3つ以上の回転把持部を含むことができる。把持アセンブリについての更なる詳細は、引用によって本明細書に全体を組み込まれる本出願人によ2008年3月28日出願の同時係属米国特許出願第12/057,966号に見受けられる。
【0027】
本明細書では、PCMM1の幾つかの実施形態及び関連の特徴が概述されているが、PCMM1の更なる詳細及び実施形態については、引用によって本明細書に全体を組み込まれる米国特許第5,829,148号及び第7,174,651号に見受けられる。以下の特定の特徴は、上述されたPCMM1の実施形態を参照にして議論されるが、それらの特徴は、米国特許第5,829,148号又は第7,174,651号、2007年12月21日に出願され「IMPROVED JOINT AXIS FOR COORDINATE MEASUREMENT MACHINE(座標測定機のための改善された継ぎ手軸)」と題された米国特許出願第11/963,531号、2007年11月20日に出願され「COORDINATE MEASUREMENT DEVICE WITH IMPROVED JOINT(改善された継ぎ手を伴う座標測定機器)」と題された米国特許出願第11/943,463号、及び2007年7月9日に出願され「JOINT FOR COORDINATE MEASUREMENT DEVICE(座標測定機器のための継ぎ手)」と題された米国特許出願第11/775,081号に記載されるようなPCMMのその他の実施形態にも適用することができると考えられる。これらの特許及び特許出願は、その全内容を引用によって本明細書に組み込まれるものとする。
【0028】
図1に示されるように、PCMMは、そのアームの端に座標取得部材50を含むことができる。図2〜3は、座標取得部材50を、より詳細に示している。図に示されるように、座標取得部材50は、接触感知式部材55と、前端54に面するレーザ座標検出機器60とを含むことができる。座標取得部材50は、更に、下端51においてハンドル40に、後端52においてPCMM1に、取り付けることができる。座標取得部材50は、上端53を更に含むことができる。後端52において、座標取得部材50は、スリップリング接続、直接的な有線接続、又はその他の何らかの接続など、ヒンジ31とのデータ接続(不図示)を更に含むことができる。これは、座標取得部材50とPCMM1との間のデータ転送を可能にすることができる。PCMM1は、そのアームに沿って類似のデータ転送要素を含むことによって、座標取得部材50と、基部10、又はPCMMアームに外付けされた任意の周辺計算媒体と、の間のデータ伝送を可能にすることができる。
【0029】
レーザ座標検出機器60は、光源65(レーザとして示される)と光学センサ70(カメラとして示される)とを含むことができ、三角計量法によって位置データを取得することができる。レーザ、即ち光源65は、レーザラインL4を含む受照レーザ面を形成することができる。カメラ70は、レーザ面から離れて、更にレーザ面に非平行に設けること
ができる。したがって、カメラ70は、点を、それらの位置がレーザ65に遠いか又は近いかに応じて、より高い又はより低いものとして見る。同様に、カメラ70は、レーザによって照射される点を、レーザ65に対して相対的なそれらの実際の位置にしたがって、より左又はより右のものとして見る。レーザ65及びカメラ70の位置と向きとの間の幾何学的関係を比較することによって、当業者は、カメラ70によってとらえられる画像内におけるレーザ受照点の画像の位置を、座標取得部材50自体の位置との関連において、空間内における実際の位置に適切に変換することが可能になる。
【0030】
図1では、複数の運動軸が、座標取得部材50に対するそれらの近さにしたがって記されている。図に示されるように、座標取得部材50は、回り継ぎ手30上を最後の回転軸L1を中心に旋回することができる。最後の回転軸L1及び回り継ぎ手30は、図2Cに、より明確に示されている。図に示されるように、レーザ座標検出機器60は、PCMMアーム1の端に軸受け150、151を取り付ける。軸受け150、151の向き及び位置は、最後の軸L1を実質的に定めることができる。したがって、レーザ座標検出機器60は、接触感知式部材(プローブとして示される)55とは無関係に、最後の軸L1を中心に回転することができる。一部の実施形態では、接触感知式部材55は回転可能ではなく、これは、接触感知式部材55と最後の軸L1との間の任意の偏心による潜在的誤差を低減させる。回り継ぎ手30は、最後の剛性移動部材21の端において、ヒンジ継ぎ手31上を最後から2番目の回転軸L2を中心に回転することができる。軸受け150、151及び最後の軸L1と同様に、最後から2番目の軸L2は、ヒンジシャフト140によって実質的に定めることができる。図に示されるように、最後の軸L1は、ロール軸と見なすこともでき、最後から2番目の軸は、ピッチ軸と見なすこともできる。同様に、最後から3番目の軸L3を中心とする回転は、ヨー軸と見なすことができる。
【0031】
ハンドル40は、概ねピストルグリップ形式であることも可能であり、これは、人の指に対応する人間工学的な溝(不図示)を更に含むことができる。ハンドルは、概ね中心の軸L5を有することもできる。随意として、ハンドル40内に、電池42を保持することができる。一部の実施形態では、ハンドル40は、引用によって全体を本明細書に組み込まれる2007年11月8日発行の米国公報第2007/0256311A1に記載されるように、密閉型電池を含むことができる。更に、電池42は、ハンドル40の底部から挿入することができる。その他の実施形態では、電池42は、ハンドル40の上部から挿入することができ、ハンドル40は、電池の挿入及び取り外しのために開口部を露出させるために、座標取得部材50から外すことができる。電池は、レーザスキャナ、関節部材30〜36の1つに従事する回転モータ、及び/又はその他のタイプのプローブ若しくは機器に電力供給するために提供することができる。これは、アームを通じた電流の引き込みを低減させ、全体的な所要電力を小さくし、尚且つ/又はアームの様々なパーツで生成される熱を減少させることができる。
【0032】
一実施形態では、座標取得部材50又は非接触座標検出機器60のいずれかと、PCMM1の基部又はコンピュータなどの外付け機器との間で、データを無線方式でやり取りすることができる。これは、PCMM1を通る内部配線の数を減らすことができる。また、PCMM1とコンピュータとの間の配線の数を減らすこともできる。
【0033】
ハンドル40の上方において、座標取得部材50は、図3に最もよく示されるように、本体90を含むことができる。本体90は、座標取得部材50の後端52において、ヒンジ31に直接接続することができる。本体90は、更に、接触感知式部材55を保持することができる。好ましい実施形態では、本体90は、接触感知式部材55の軸が回り継ぎ手30の最後の軸L1の近くを伸びるように、接触感知式部材55を回り継ぎ手30の近くに揃えて保持することもできる。一部の実施形態では、接触感知式部材55の軸は、回り継ぎ手30の最後の軸L1を通ることができる。その他の実施形態では、接触感知式部
剤55の軸は、最後の軸L1から10mm以内を通ることができ、この距離は、D3(図2Dに示される)に対応している。
【0034】
図3Bに最もよく示されるように、本体90は、レーザ座標検出機器(レーザスキャナとして示される)60と相互作用するように構成された取り付け部分91と、凹所92と、データポート93とを更に含むことができる。レーザスキャナ60は、図3Aに最もよく示されるように、上側ケース80と、レーザ65と、データポート101とを含むことができる。図3に示されるように、レーザスキャナ60は、補助体(その他の実施形態では異なる機器を含むことができる)として本体90に取り付けられるように構成することができる。上側ケース80は、取り付け部分91に合致するように成形することができ、したがって、取り付け部分91によって受けることが可能である。凹所92は、取り付け部分91が上側ケース80を受けるときにレーザ65を受けるように成形することができる。これらの相互作用に際して、データポート93、101は、本体90とレーザスキャナ60との間で(したがって、更には上述のようにPCMMアーム1に沿って)情報の引き渡しを行うように相互作用することができる。レーザ座標検出機器60は、基板75を更に含むことができる。基板75は、レーザスキャナ60を本体90に取り付けるときに接触感知式部材55を受けるように構成されたポート85を含むことができる。また、基板75は、本体90とレーザスキャナ60とを留め合わせるために留め具(不図示)とともに本体90上の組み立て穴94と相互作用することができる組み立て穴104を含むことができる。レーザスキャナ60に対する本体90の取り付けには、様々なネジ及びその他の留め具を使用可能であることが明らかである。例えば、一部の実施形態では、それらは、容易な取り付け及び取り外しを可能にするスナップ固定式メカニズムによって取り付けることができる。更に、一部の実施形態では、器具を用いることなく本体90に対してレーザスキャナ60の取り外し及び再取り付けを行うことができる再現性の運動学的取り付けを使用することができる。当該業界で知られるように、3点運動学的シートを使用すれば、高レベルの再現性で再取り付けを行うことが可能である。
【0035】
正確な位置データの提供を意図した場合のPCMM1は、接触感知式部材55及び非接触座標検出機器60の両方における誤差を最小にするように設計することができる。座標取得部材50の誤差は、最後3本の軸の誤差が接触感知式部材55及び非接触座標検出機器60の両方に及ぼす影響を最小にすることによって低減させることができる。接触感知式部材55の最大誤差は、Epとして以下の式で表され、主に、最後3本の各軸(L1〜L3)の誤差及びプローブの中心からそれらの軸までの距離の関数である。同様に、非接触座標検出機器60の誤差は、Esとして表され、主に、最後3本の各軸(L1〜L3)の誤差及び光中心点P1からそれらの軸までの距離の関数である。
【0036】
Ep=(d1×e1)+(d2×e2)+(d3×e3)
【0037】
Es=(d1’×e1)+(d2’×e2)+(d3’×e3)
【0038】
ここで、e1、e2、e3は、関節部材30、31、32における最後3本の各回転軸における角度誤差の絶対値をそれぞれ表しており、d1、d2、d3、d1’、d2’、d3’は、それぞれの軸からプローブ中心又は光中心点(即ちレーザ焦点)P1までの距離を表している。以下で更に詳しく説明されるように、PCMM1は、図2Dに示されるように、誤差Ep及びEsの両方を低減させるための優れた幾何学的構成を提供すると同時に、ハンドル40の上方において座標取得部材50の重心(CG)のバランスをとらせ、座標取得部材50の全高(d4)を低くすることによって、座標取得部材50の正確さを高めることができる。
【0039】
レーザスキャナ60が本体90に取り付けられるときは、座標取得要素間に、様々な幾
何学的特性が生じる可能性がある。例えば、図に示されるように、カメラ70、接触感知式部材55、及びレーザ65は、最後の軸L1に直接一体化させることができる。例えば、図に示されるように、カメラ70、接触感知式部材55、及びレーザ65は、前方から(例えば軸L1に沿って)見たときに、接触感知式部材55が真ん中にあって最後の軸L1に揃えられている状態(即ちd1=0)で、概して同一線上にあることができる。更に、図に示されるように、上側ケース80、接触感知式部材55、及びレーザ65は、最後の軸L1に概して平行に配置することができる。しかしながら、カメラ70は、レーザ面を見ることができるように、最後の軸L1に対して一定の角度に方向付けることができる。
【0040】
このような配置構成は、数々の点で有利であることができる。例えば、この配置構成では、L1を中心とする要素の角度位置を、(最後の軸L1の両側にある場合は180度ずれるという例外を除いて)ほぼ等しくし、データ処理要件を簡単にすることができる。別の一例としては、これらの要素を最後の軸L1に揃えることによって、最後の軸を中心とするこれらの要素の重さの釣り合いを促し、潜在的偏向による誤差を減らし、軸を中心とする動きを軽減することができる。図2Dに示されるように、座標取得部材50の重心(CG)は、軸L1沿いに位置することができる。更には、最後の軸L1を中心とする回転角度に関連した誤差は、その軸から、レーザ65によって照射されるレーザ面の中心までの、垂直距離(図2Dにおいてd1’として示される)によって増幅される。この向きでは、垂直距離が最短にされる。一部の実施形態では、レーザ面の中心から最後の軸までの垂直距離は、35mm以下であってよい。特に、その他の実施形態では、最後の軸L1に直接揃えるなどのように、レーザ65を最後の軸L1に更に近づけることが望ましいであろう。しかしながら、接触感知式部材55の正確さも、最後の軸L1への近さに一部依存するので、後述のように、レーザ65をカメラ70から離すことによって、その他の何らかの利点が得られる。
【0041】
更に図示されるように、レーザスキャナ60が本体90に取り付けられるときに、接触感知式部材55及びレーザ座標検出機器60は、コンパクト設計を形成することができる。例えば、レーザ65及び/又はカメラ70は、軸受け150、151の1つ又は両方を越えて伸びることができる。図に示されるように、レーザ65は、軸受け151を少なくとも部分的に越えて伸びているが、軸受け150を越えてはおらず、カメラ70は、両方の軸受けを越えて伸びている。その他の実施形態では、これらの要素は、軸受けにまで達しているが、それらを越えることはない。一般に、これらの要素を重複させると、座標取得部材50の所要長さが短くなる。
【0042】
一部の実施形態では、このようなコンパクト設計は、座標取得要素を最後の軸L1はもちろん最後から2番目の軸L2にも近づかせることを可能にする。したがって、最後から2番目の軸L2と、(例えば接触感知式部材55の先端及び/又はカメラ70の焦点P1にある)測定点との間の距離を短くすることができる。最後から2番目の軸L2に沿った座標取得部材50の角度位置の誤差は、これらの距離によって増幅されるので、これは、PCMM1の誤差も、その他の形で低減させる。例えば、コンパクト設計は、焦点P1から最後から3番目の軸L3までの、d3’によって表される距離に関連した誤差を低減させることもできる。また、座標取得部材50の要素を、最後から2番目及び3番目の軸L2、L3に近づけることによって、偏向を低減させ、よりいっそう誤差を低減させることができる。一部の実施形態では、接触感知式部材55は、最後から2番目の軸L2及び/又は最後から3番目の軸L3から185mm以内であってよく、カメラ70の焦点P1は、最後から3番目の軸L3から285mm以内であってよい。図2Dに最もよく図示されるように、コンパクト設計は、更に、座標取得部材50の重心(CG)をハンドル40の中心軸L5に近づけることができる。一部の実施形態では、重心とハンドル40の中心軸との間の距離は、20mm以下であってよい。コンパクト設計の更に別の利点として、座
標取得部材50の鉛直高さd4を低減させ、より密集した点の測定を可能にすることができる。一部の実施形態では、高さは、260mm以下であってよい。特に、図示された実施形態の座標取得部材50は、最後の軸L1を中心に回転するので、高さd4は、座標取得部材50の最大長を表すこともできる。
【0043】
一部の実施形態では、レーザスキャナ60は、更なる利点を含むことができる。例えば、レーザスキャナ60は、レーザ65を、PCMMアーム1のその他のパーツによって生成される熱から隔離することができる。例えば、図3に図示されるように、基板75は、レーザを一方の端に、カメラをもう一方の端に保持し、それらの間を接触感知式部材55によって隔てられる。一部の実施形態では、基板75は、インバー、セラミック、炭素繊維などの低熱膨張率の材料を含むことができる。熱膨張の低減は、測定に更なる誤差を導入するなどの問題を生じることがあるレーザ65及び/又はカメラ70の位置及び向きの変化を低減させることができる。同様に、基板75は、低熱伝導率の材料を含むことによって、例えばカメラ70からレーザ65又はPCMM1への伝熱を妨げることもできる。
【0044】
図示されるように、カメラ70は、レーザスキャナ60の上側ケース80内に保持することができ、一部の実施形態では、上側ケースは、複数のカメラを含むことができる。上側ケース80は、アルミニウム又はプラスチックなどの材料を含むことができる。また、上側ケース80は、埃、液体、周辺光などの大気汚染物質からカメラ70を保護することができる。同様に、レーザ65は、本体90の凹所92によって保護することができる。一部の実施形態では、凹所92は、熱膨張率及び/又は熱伝導率の低い熱分離用の円盤又は板を含むことによって、レーザを外部熱から保護し、その照準を実質的に維持することができる。
【0045】
多くの実施形態において、レーザ座標検出機器60に関連付けられたエレクトロニクス160は、かなりの量の熱を生成する可能性がある。上述のように、各種のコンポーネントは、例えば熱膨張率及び熱伝導率の低い材料によって、この熱から保護することができる。図示されるように、エレクトロニクス160は、レーザスキャナ60の上側ケース80内に位置決めすることができる。
【0046】
しかしながら、その他の実施形態では、エレクトロニクス160は、完全に別のケース内などのように、センサ55、60から離して位置決めすることができる。例えば、一部の実施形態では、エレクトロニクス160は、やはり基板75に取り付けられた別のケース内において、レーザスキャナ60によって保持することができる。その他の実施形態では、エレクトロニクス160は、剛性移動部材20内又は基部10内などのように、PCMM1の更に下方に配置することができる。エレクトロニクス160をPCMM1の更に下方に移動させることによって、アームの端における重さを低減させ、アームの偏向を最小にすることができる。同様に、一部の実施形態では、エレクトロニクス160は、別のコンピュータ内などのように、PCMM1の完全に外側にあることができる。センサ55、70からのデータは、アーム内の内部ケーブル伝いにPCMM1を通して、又は無線方式で、又はその他のデータ伝送方法で、伝送することができる。一部の実施形態では、データポート93、101は、ケーブルを外に露出させないように、バネ仕掛けのピンを含むことができる。
【0047】
図示された実施形態の別の利点として、図示されたシステム配置は、より小さい体積を使用することができる。レーザ座標検出機器60は、場合によっては、三角測量の理論に基づいて動作することができる。したがって、レーザ65とカメラ70との間に幾らかの距離を残すことが望ましいであろう。図示された実施形態は、この空間内に接触感知式部材55を有利に配置して、座標取得部材50の体積を低減させている。また、最後の軸L1もこの空間を通らせることによって、システムのバランスを図り、座標取得部材50の
回転体積を小さくしている。設計がコンパクトであるほど偏向が低減され、したがって、より重い荷重に耐える材料の必要性が低減されるので、この構成では、軸とレーザスキャナとの組み合わせを、重さを低減させるように更に固有に最適化することができる。
【0048】
上述された実施形態の利点を更に示すために、図4〜7は、レーザスキャナ及び/又は画像センサを異なる場所に位置決めされた変更された構成を示している。図4A及び図4Bでは、接触感知式部材に代わり、スキャナが、その中心を最後の軸に置かれ、更に前方にある。したがって、d1’はゼロに減らされているが、d1は増しており、必然的に、非接触測定機器から接触測定機器へ誤差を伝える。また、この実施形態では、測定機器55、60は、ともに、最後から2番目及び3番目の軸L2、L3から遠ざかり、d2、d2’、d3、d3’を増大させている。更にまた、重心CGは、ハンドルの軸L5から離れて前方にずれるので、座標取得部材は、d5の増大とともに更に操縦が困難になり、より大きな偏向に見舞われる可能性がある。
【0049】
図5A及び図5Bでは、スキャナは、最後の軸の上方にある。したがって、最後の軸とレーザ領域との間の距離(d1’)が大きいうえに、座標取得部材50の最大長d4も大きい。更に、重心CGが最後の軸からずれることによって、座標取得部材50の操縦性が妨げられる可能性がある。また、スキャナは、更に僅かに前方にあり、焦点P1から最後から2番目及び3番目の軸までの距離(d3’)を増大させている。
【0050】
図6A及び図6Bでは、スキャナは、更に前方に、尚且つ最後の軸の下方にある。したがって、最後の軸とレーザ領域との間の距離(d1’)が大きく、同様に、最後から2番目及び3番目の軸とスキャナの焦点P1との間の距離(d3’)も大きい。更に、重心CGは、最後の軸L1及びハンドルからずれ(d5)、座標取得部材50の操縦性を妨げている。
【0051】
図7A、7B、及び7Cでは、スキャナは最後の軸の脇にあり、最後の軸とレーザ領域との間の距離(d1’)は大きく、最後から2番目及び3番目の軸とスキャナの焦点P1との間の距離(d3’)も大きい。更に、重心CGが最後の軸L1及びハンドルの軸L5からずれることによって、座標取得部材50の操縦性が妨げられる可能性がある。
【0052】
上述された様々な機器、方法、手順、及び技術は、本発明を実施するための数々の方法を提供する。もちろん、本明細書に記載されるどの特定の実施形態も、上述された目的又は利点の必ずしも全てをその実施形態にしたがって実現されえるとは限らない。また、本発明は、特定の実施形態及び実施例との関連で開示されているが、当業者ならば、本発明が、具体的に開示された実施形態にとどまらず、その他の代替の実施形態及び/又は用途、並びにそれらの自明の変更形態及び等価形態も網羅することを理解できる。したがって、本発明は、本明細書に具体的に開示された好ましい実施形態に限定されることを意図していない。
図1
図1A
図1B
図2
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C