【実施例1】
【0016】
図1に、半導体装置1の要部断面図を概略して示す。
図2に、
図1のII-II線に対応した断面図を示す。半導体装置1は、縦型のダイオード内蔵IGBTであり、シリコン単結晶の半導体層20と、半導体層20の裏面に形成されているアルミニウムの裏面電極10と、半導体層20の表面に形成されているアルミニウムの表面電極30とを備えている。半導体層20は、IGBT範囲とダイオード範囲に区画されている。IGBT範囲にはノンパンチスルー型のIGBT構造が形成されており、ダイオード範囲にはPIN型のダイオード構造が形成されている。裏面電極10は、IGBT範囲ではコレクタ電極と称され、ダイオード範囲ではカソード電極と称されてもよい。表面電極30は、IGBT範囲ではエミッタ電極と称され、ダイオード範囲ではアノード電極と称されてもよい。
【0017】
半導体層20は、ダイオード範囲において、n
+型のカソード領域21とn
+型のバッファ領域22とn
−型の低濃度領域23とp型のアノード領域24を有している。カソード領域21とバッファ領域22は、イオン注入技術を利用して、半導体層20の裏層部に形成されている。アノード領域24は、イオン注入技術を利用して、半導体層20の表層部に形成されている。低濃度領域23は、半導体層20に他の半導体領域を形成した残部である。
【0018】
半導体層20は、IGBT範囲において、p
+型のコレクタ領域29とn
+型のバッファ領域22とn
−型の低濃度領域23とp型のボディ領域27とn
+型のエミッタ領域26とを有する。コレクタ領域29とバッファ領域22は、イオン注入技術を利用して、半導体層20の裏層部に形成されている。ボディ領域27とエミッタ領域26は、イオン注入技術を利用して、半導体層20の表層部に形成されている。低濃度領域23は、半導体層20に他の半導体領域を形成した残部である。ここで、IGBT範囲とは、半導体層20の裏面にコレクタ領域29が形成されている半導体層20の一部である。また、ダイオード範囲とは、半導体層20の裏面にカソード領域21が形成されている半導体層20の一部である。
【0019】
バッファ領域22は、IGBT範囲とダイオード範囲において共通であり、同一の製造工程で作成される。このため、バッファ領域22の厚み方向の濃度分布は、IGBT範囲とダイオード範囲において一致している。ボディ領域27とアノード領域24も、同一の製造工程で作成される。このため、ボディ領域27の厚み方向の濃度分布とアノード領域24の厚み方向の濃度分布が一致している。
【0020】
半導体装置1はさらに、IGBT範囲に設けられてる複数のトレンチゲート46と、ダイオード範囲に設けられている複数のダミートレンチゲート43とを備えている。
図2に示されるように、複数のトレンチゲート46と複数のダミートレンチゲート43はいずれも、平面視したときに(z軸方向から観測したときに)、y軸方向に沿って伸びているとともに、半導体層20の面内において、x軸方向に繰り返して設けられており、ストライプ状に配置されている。隣り合うトレンチゲート46の間隔は、いずれの隣り合うトレンチゲート47を選択しても一定である。同様に、隣り合うダミートレンチゲート43の間隔は、いずれの隣り合うダミートレンチゲート43を選択しても一定である。なお、複数のトレンチゲート46のうち、IGBT範囲とダイオード範囲の間に設けられているトレンチゲート46を特に、境界トレンチゲート46と称する。
【0021】
トレンチゲート46は、ポリシリコンのトレンチゲート電極44と、そのトレンチゲート電極44を被覆している酸化シリコンのゲート絶縁膜45を有している。トレンチゲート電極44は、図示しないゲート配線に電気的に接続されており、駆動電圧が供給される。トレンチゲート電極44は、エミッタ領域26と低濃度領域23の間のボディ領域27に、ゲート絶縁膜45を介して対向している。
【0022】
ダミートレンチゲート43は、ポリシリコンの導電部41と、その導電部41を被覆する酸化シリコンの絶縁被覆部42を有している。導電部41は、表面電極30に電気的に接続されている。なお、導電部41は、表面電極30に代えて、図示しないゲート配線に電気的に接続されていてもよく、あるいは、その他の配線に接続されていてもよい。トレンチゲート46とダミートレンチゲート43は、同一の製造工程で作成される。
【0023】
半導体装置1はさらに、IGBT範囲に設けられているn型の第1キャリア蓄積層28と、ダイオード範囲に設けられているn型の複数の第2キャリア蓄積層25とを備えている。第1キャリア蓄積層28は、ボディ領域27内に設けられており、ボディ領域27によって低濃度領域23及びエミッタ領域26から隔てられている。このため、第1キャリア蓄積層28の電位はフローティングである。複数の第2キャリア蓄積層25は、アノード領域24内に設けられており、アノード領域24によって低濃度領域23から隔てられている。このため、第2キャリア蓄積層25の電位もフローティングである。
【0024】
第1キャリア蓄積層28と複数の第2キャリア蓄積層25は、半導体層20の共通の深さに設けられており、半導体層20の同一面内に配置されている。
図2に示されるように、第1キャリア蓄積層28は、IGBT範囲の全域に亘って設けられている。換言すると、第1キャリア蓄積層28は、隣り合うトレンチゲート46の間において、一方のトレンチゲート46の側面から他方のトレンチゲート46の側面まで連続して設けられており、ボディ領域27を上下に分断している。
【0025】
複数の第2キャリア蓄積層25は、x軸方向に沿って分散して設けられており、ダミートレンチゲート43の側面に接触して設けられている。また、第2キャリア蓄積層25は、ダミートレンチゲート43の側面に沿ってy軸方向に伸びて形成されている。複数の第2キャリア蓄積層25は、隣り合うダミートレンチゲート43の間において、一方のダミートレンチゲート43の側面から他方のダミートレンチゲート43の側面まで連続して設けられていない。一方のダミートレンチゲート43の側面に設けられている第2キャリア蓄積層25の横方向(x軸方向)の長さは、他方のダミートレンチゲート43の側面に設けられている第2キャリア蓄積層25の横方向(x軸方向)の長さに一致する。
図1及び
図2に示されるように、ダイオード範囲では、複数の第2キャリア蓄積層25が分散して形成されており、隣り合うダミートレンチゲート43の間を単位とすると、各単位の形態が一致している。
【0026】
次に、半導体装置1の動作を説明する。半導体装置1は、例えば、モータ等の負荷に接続されるインバータ回路に用いられる。このようなインバータ回路では、PMW制御に応じてIGBT範囲がオフしているときに、ダイオード範囲には還流電流が流れる。第2キャリア蓄積層25は、還流電流が流れるときに、表面電極30から注入される正孔に対して障壁を形成する。半導体装置1では、上記したように、各単位の形態が一致しているので、正孔の注入量に関して各単位で均一となる。次に、ダイオード範囲に逆バイアスが印加されると(リカバリ時に)、注入された正孔はアノード電極30から排出される。このとき、第2キャリア蓄積層25は、アノード電極30から排出される正孔に対して障壁を形成する。半導体装置1では、上記したように、各単位の形態が一致しているので、正孔の排出量に関して各単位で均一となる。このように、半導体装置1では、半導体層20の面内で観測したときに、ダイオード範囲における正孔の注入量及び排出量が均一化されている。この結果、高電圧が印加されるリカバリー時に流れる電流量が均一化され、高いリカバリ耐量を有することが可能となる。
【0027】
図3に、第1キャリア蓄積層28と複数の第2キャリア蓄積層25を形成する工程を示す。
図3に示されるように、半導体層20のダイオード範囲にレジスト50が選択的に形成されている。さらに、レジスト50は、ダイオード範囲のアノード領域24の表面に選択的に形成されており、ダミートレンチゲート43の表面を露出するように形成されている。レジスト50がこのようにパターニングされると、チルト角を付けてイオン注入を実施したときに、IGBT範囲の全域には所定深さにイオンが注入され(28a参照)、ダイオード範囲ではダミートレンチゲート43の側面に沿って所定深さにイオンが注入される(25a参照)。この結果、
図1に示す半導体装置1が製造される。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、ダイオード範囲には、ダミートレンチゲートが設けられていなくてもよい。この場合も、複数の第2キャリア蓄積層がアノード領域内に分散して設けられていることにより、リカバリ耐量が改善される。
また、
図4及び
図5に示すように、終端範囲の耐圧構造62内に、第3のキャリア蓄積層64が設けられていてもよい。耐圧構造62は、p型の拡散領域であり、IGBT範囲のボディ領域27及びダイオード範囲のアノード領域24よりも深く形成されている。第3のキャリア蓄積層64は、IGBT範囲の第1キャリア蓄積層28とダイオード範囲の複数の第2キャリア蓄積層25と共通の深さに設けられており、半導体層20の同一面内に配置されている。
図4では、第3のキャリア蓄積層64がダイオード範囲との境界のみに設けられており、
図5では、複数の第3のキャリア蓄積層64が耐圧構造62内に分散して設けられている。このように、第3のキャリア蓄積層64が耐圧構造62内に設けられていると、リカバリ時に流れる耐圧構造62付近の電流(耐圧構造62の表面をアノードとする寄生ダイオードのリカバリ電流)が不均一に流れることを抑制し、電流集中による破壊を抑制するという効果を有することができる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。