(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の「食品容器」は、
図8に示すように、容器本体の中ほどに「仕切部2」を突設し、この「仕切部2」の上端に蓋体側の当接部を密着状態で嵌合したものである。これにより、食品容器内を密閉状態で区画できることにはなるが、蓋体側の嵌合部の両側に「溝」が形成されることになる。この溝は、蓋体側の嵌合部を「仕切部2」の上端に合わせた形状に突設しなければならないものであることから、当然に生ずるものである。
【0006】
この特許文献1における上記「溝」は、この部分での蓋体の剛性を著しく損なう虞があると考えられる。何故なら、この「溝」は、収納部を区画するための仕切りの全幅に亘って長く存在したものであるはずだからである。そうなると、この蓋体側の「溝」と、容器本体側の仕切りの凹みとによって、食品容器全体の剛性が損なわれることにもなるから、収納部内に食品等を入れた後の容器を手で持ったときに、容器が曲がって中身が飛び出すこともあり得ることになる。
【0007】
一方、特許文献2の「包装容器」は、「つけ汁、たれなどの液体を固体と共に収納できる包装容器を提供すること」を目的としてなされたものであり、
図9に示すように、「容器本体1と蓋20より成る包装容器において、容器本体1に複数の収納室3、4を設け、収納室3の外周に、一段と高くなった凸条8を設け、蓋20に、前記凸条8と対応する凹条22を設けて、凸条8と凹条22を嵌合可能とした」ものである。
【0008】
この特許文献2の「包装容器」においても、容器本体の底面から立ち上げた「仕切り6」と、この仕切り6の上端にて嵌合され、蓋体に形成した「凹条22」とを有したものであり、この凹条22の周囲に、
図9に示すように、「溝」が形成されているものである。特に、この特許文献2の「包装容器」では、この凹条22の上面が天板面と同一の高さとなるように、図示されている。
【0009】
そうなると、この特許文献2の「包装容器」では、上述した特許文献1の場合と同様に、蓋体の剛性が「凹条22」の近傍で弱くなるだけでなく、蓋体を合成樹脂シートによって型成形する場合に、この「凹条22」に該当する部分の合成樹脂シートを大きく延伸させなければならなくなる。
【0010】
「包装容器」とすべき材料である合成樹脂シートを部分的に大きく延伸させると、その部分で剛性が不足することになるだけでなく、場合によっては、「亀裂」や「破れ」が発生して、密閉容器とすることができなくなってしまうことは、よく知られた事実である。
【0011】
そこで、本発明者等は、上端が蓋体にも係合されることになる仕切りを備えた包装用容器について、
(1)本体側仕切りに嵌合される、蓋側仕切りの左右に形成される溝を、他の溝より浅くして、蓋側仕切り及び蓋体自体の剛性を高めること(剛性の確保)
(2)蓋側仕切りの左右に形成される溝を、他の溝より浅くして、この蓋側仕切りの近傍での延伸を大きくしないようにすること(シート成形性の向上)
(3)蓋体の天板を、蓋側仕切りの左右に形成される溝によっては小さくならないようにすること(視認性の確保)
とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、上記の(1)の剛性の確保、(2)のシート成形性の向上、及び(3)の視認性の確保、の全ての要請を満たすことのできる包装用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「開口周縁に突条フランジ11を有する容器本体10
と、
突条フランジ11に内外嵌合される嵌合フランジ21
と、この嵌合フランジ21の内側
に形成した溝22と、この溝22の内側にて立ち上げ壁23によって嵌合フランジ21上面より
高い天板24
と、を有した蓋体20
と、
からなる包装用容器100であって、
容器本体10を、底壁12から立ち上がる本体側仕切り13を備えたものとし、
蓋体20を、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25を備えたものとするとともに、この蓋側仕切り25の
両側であって嵌合フランジ21の上端よりも高い位置に形成した各段差26の外端部に、これに隣接している立ち上げ壁23の下端部を連続させるようにしたことを特徴とする包装用容器100」
である。
【0014】
すなわち、本発明に係る包装用容器100は、合成樹脂シートを真空または圧空成形することにより形成(所謂、シート成形)されるもので、
図1〜
図4に示すように、開口周縁に突条フランジ11を有する容器本体10と、この包装用容器100の突条フランジ11に内外嵌合される嵌合フランジ21を有した蓋体20とからなるものである。
【0015】
容器本体10は、
図1、
図2、及び
図4の(a)に示すように、底壁12から立ち上がる本体側仕切り13を備えたものである。また、蓋体20は、
図4の(a)及び
図6に示すように、嵌合フランジ21の内側に溝22が形成され、この溝22の内側にて立ち上げ壁23によって嵌合フランジ21上面より高くされた天板24を有したものである。
【0016】
この包装用容器100を構成している蓋体20は、
図4の(a)に示すように、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25を備えたものである。この蓋側仕切り25は、後述する溝22の一部を言わば盛り上げて形成した各段差26から立ち上がるものであり、その上面は、各天板24の上面とほぼ同じ位置にしたものである。なお、この蓋側仕切り25の下部断面形状は、本体側仕切り13の上部への嵌合が容易に外れないようにするために、当該蓋側仕切り25の上部に対して少しくびれたものとしてある。
【0017】
また、この包装用容器100を構成している蓋体20は、
図4の(a)に示すように、蓋側仕切り25の両側に一体的に形成されて、溝22の底面22aより高く、かつ天板24より低い段差26を備えたものである。勿論、この蓋体20は、合成樹脂シートをシート成形することによって形成したものであるから、
図4の(a)に示した蓋側仕切り25を中心にしてみたとき、蓋側仕切り25の両底辺、その外側の段差26、この段差26の外側になる立ち上げ壁23の下端、立ち上げ壁23の上端に連続する各天板24は、それぞれ連続しているものであ
る。つまり、この蓋体20では、その蓋側仕切り25の両側であって嵌合フランジ21の上端よりも高い位置に形成した各段差26の外端部に、これに隣接している立ち上げ壁23の下端部を連続させるようにしたものである。
【0018】
以上のように構成された容器本体10に蓋体20を嵌合すると、
図4の(a)に示すように、蓋側仕切り25の両側に一体的に形成した段差26は、溝22の底面22aより高く、かつ天板24より低い位置に存在することに
なり、従来はここに形成されていた溝に代わる。
【0019】
換言すれば、この段差26は、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25の左右に形成されるものとなり、従来、この段差26が形成される筈の場所に形成されていた溝
がなくなるのである。従って、この段差26は、蓋側仕切り25及び蓋体20自体の剛性を高めることになるのである。(上記(1)の達成)
【0020】
また、この段差26は、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25の左右に形成されるものとなり、従来、この段差26が形成される筈の場所に形成されていた溝
がなくなるのである。従って、この段差26は、蓋側仕切り25の高さを低くすることができるのであり、蓋側仕切り25の近傍での、合成樹脂シートの「延伸」を他の部分と同程度にすることができて、当該段差26や蓋側仕切り25に破れや亀裂を発生させないことになる。(上記(2)の達成)
【0021】
さらに、蓋側仕切り25の両側に一体的に形成した段差26は、溝22の底面22aより高く、かつ天板24より低い位置に存在するから、結果的に、蓋体20の天板24が、蓋側仕切り25の左右に形成される段差26によっては小さくならない。このため、各天板24の面積を十分確保できることになるから、これらの天板24を通しての当該包装用容器100内の視認を良好に行うことができるのである。(上記(3)の達成)
【0022】
従って、本発明に係る包装用容器100は、蓋側仕切り25自体やこれを有する蓋体20の剛性が高くなり、蓋側仕切り25及びその周辺を構成する合成樹脂シートに亀裂や破損が発生しないようにするという成形性の向上を図ることができ、しかも各天板24を小さくする必要がなくてこれらを通して中身を確認する視認性に優れたものとなっているのである。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明した通り、本発明においては、
「開口周縁に突条フランジ11を有する容器本体10
と、
突条フランジ11に内外嵌合される嵌合フランジ21
と、この嵌合フランジ21の内側
に形成した溝22と、この溝22の内側にて立ち上げ壁23によって嵌合フランジ21上面より
高い天板24
と、を有した蓋体20
と、
からなる包装用容器100であって、
容器本体10を、底壁12から立ち上がる本体側仕切り13を備えたものとし、
蓋体20を、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25を備えたものとするとともに、この蓋側仕切り25の
両側であって嵌合フランジ21の上端よりも高い位置に形成した各段差26の外端部に、これに隣接している立ち上げ壁23の下端部を連続させるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、(1)の剛性の確保、(2)のシート成形性の向上、及び(3)の視認性の確保、の全ての要請を満たすことのできる包装用容器100を提供することができるのである。
【0024】
つまり、本発明に係る包装用容器100は、
(1)この包装用容器100を構成している段差26は、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25の左右に形成されるものとなり、この段差26
を、ここに従来形成されていた溝に代えるとともに、この段差26の位置を他の溝22より高くすることができる。従って、この段差26は、蓋側仕切り25及び蓋体20自体の剛性を高めることができることになるのである。
(2)この包装用容器100を構成している段差26は、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25の左右に形成されるものとなり、この段差26
を、ここに従来形成されていた溝に代えるとともに、この段差26の位置を他の溝22より高くすることができる。従って、この段差26は、蓋側仕切り25の高さを低くすることができるのであり、蓋側仕切り25の近傍での、合成樹脂シートの「延伸」を他の部分と同程度にすることができて、当該段差26や蓋側仕切り25に破れや亀裂を発生させないようにすることができるのである。
(3)蓋側仕切り25の両側に一体的に形成した段差26は、溝22の底面22aより高く、かつ天板24より低い位置に存在するから、蓋体20の天板24が、蓋側仕切り25の左右に形成される段差26によっては小さくならない。このため、各天板24の面積を十分確保できることになるから、これらの天板24を通しての当該包装用容器100内の視認を良好に行うことができる。
といった優れた効果を有しているのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る包装用容器100の分解斜視図である。
【
図3】同包装用容器100の正面図(a)、及び側面図(b)である。
【
図4】同包装用容器100の縦断面を示すもので、(a)は
図2中に示したA―A線に沿って見た縦断面図、(b)は
図2中に示したB―B線に沿って見た縦断面図である。
【
図5】同包装用容器100を構成している容器本体10を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図6】同包装用容器100を構成している蓋体20を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図7】同包装用容器100の他の実施例を示すもので、蓋側仕切り25を平行な2本にした場合の平面図である。
【
図8】特許文献1に提案されている「食品容器」の縦断面図である。
【
図9】特許文献2に提案されている「包装容器」の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明を、図面に示した実施の形態である包装用容器100について説明すると、
図1及び
図2には、実施形態に係る包装用容器100の分解斜視図及び平面図が示してある。また、
図3には、この包装用容器100の正面図及び側面図が、
図4には包装用容器100の縦断面図が示してある。この包装用容器100は、共に合成樹脂シートをシート成形することによって形成した容器本体10と、これに嵌合される蓋体20とからなっている。
【0027】
容器本体10は、
図5に示したように、開口周縁に突条フランジ11を有したもので、また、その底壁12から立ち上がる本体側仕切り13を備えたものである。この本体側仕切り13は、実施形態の容器本体10では底壁12のほぼ中央に直線状のものとして1本形成したものであるが、これに限るものではない。例えば、
図7に示したように、互いに平行な2本の、後述する蓋体20に合わせて2本(以上)形成して実施してもよく、また2本を十字状に交差させたり、「人文字型」に形成したりして実施してもよいものである。
【0028】
なお、本実施形態の容器本体10では、
図1にも示したように、突条フランジ11の外側部分につまみ14を一体化してある。このつまみ14は、後述する蓋体20側のつまみ27と重なることになるものであり、これらのつまみ14及びつまみ27を利用することにより、当該容器本体10に嵌合されていた蓋体20の外しを容易にするものである。
【0029】
蓋体20は、
図1、
図3、
図4、及び
図7に示したように、上記容器本体10側の突条フランジ11に内外嵌合される嵌合フランジ21を有したものであり、この嵌合フランジ21の内側には、
図6の(a)に示したように、各天板24を囲む溝22が形成されている。つまり、これらの溝22の内側には、
図4に示したように、立ち上げ壁23によって嵌合フランジ21上面より高くされた天板24が形成されているのである。勿論、この蓋体20は、
図4に明瞭に示したように、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25を備えている。
【0030】
この蓋側仕切り25は、実施形態の容器本体10では底壁12のほぼ中央に直線状のものとして1本形成したものであるが、これに限るものではない。例えば、
図7に示したように、また前述した本体側仕切り13の場合と同様に、互いに平行な2本(以上)形成して実施してもよく、また2本を十字状に交差させたり、「人文字型」に形成したりして実施してもよいものである。
【0031】
また、この蓋体20は、
図4及び
図6の(a)に示したように、上述した蓋側仕切り25の両側に段差26をそれぞれ形成したものである。これら各段差26は、
図4の(a)にて明瞭に示したように、溝22の底面22aより高位置であって、天板24より低い位置に形成したものである。つまり、蓋体20は、本体側仕切り13に嵌合される蓋側仕切り25を備えたものとするとともに、この蓋側仕切り25の両側に溝22の一部を盛り上げて形成され、この溝22の底面22aより高く天板24より低い段差26を備えたものとしたのであ
る。そして、図3及び図4の各(a)に示したように、各段差26の外端部には、これに隣接している立ち上げ壁23の下端部が連続している。
【0032】
なお、この蓋体20についても、
図6の(a)に示したように、容器本体10側のつまみ14に重なることになるつまみ27が形成してある。