特許第5886573号(P5886573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886573
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/24 20060101AFI20160303BHJP
   F16C 1/10 20060101ALI20160303BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20160303BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20160303BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20160303BHJP
【FI】
   F16B2/24 B
   F16C1/10 A
   H02G3/22 260
   F16L3/00 G
   !B60R16/02 623Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-187731(P2011-187731)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-50151(P2013-50151A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志賀 浩之
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭63−24246(JP,Y2)
【文献】 米国特許第05011055(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02993616(FR,A1)
【文献】 米国特許第02942314(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/24
F16C 1/10
F16L 3/00
H02G 3/22
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲折した1本の金属線によって線状部材の配索経路を規制するクランプ装置であって、
前記1本の金属線は、線状部材を保持する第1保持部と、第1保持部とは異なる位置で線状部材を保持する第2保持部と、第1保持部と第2保持部とを接続する接続部と、を少なくとも有しており、
第1保持部は、前記1本の金属線をU字状に曲折することで形成されており、U字状の金属線の底となる底部と、U字状の金属線の開口となる開口部を有しており、
第2保持部は、前記1本の金属線をU字状に曲折することで形成されており、U字状の金属線の底となる底部と、U字状の金属線の開口となる開口部を有しており、
第1保持部と第2保持部のそれぞれは、その開口部から底部に向かって線状部材が挿し込まれることで、その底部に線状部材を保持しており、
U字状の第1保持部への線状部材の挿し込み方向が、U字状の第2保持部への線状部材の挿し込み方向と相違し、
第1保持部への線状部材の挿し込み方向と、第2保持部への線状部材の挿し込み方向とがなす角は90°となっており、
第1保持部の開口部の幅は線状部材の外径より小さくされると共に、第2保持部の開口部の幅は線状部材の外径より小さくされており、
接続部は、第1保持部及び第2保持部に線状部材が保持されたときに線状部材と当接する当接部分を有しており、
第1保持部及び第2保持部に線状部材が保持された状態を線状部材の軸線方向に沿って見ると、接続部の当接部分は、第1保持部への線状部材の挿し込み方向と直交すると共に、第2保持部への線状部材の挿し込み方向と平行に伸びていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
第1保持部及び第2保持部に線状部材が保持された状態では、第1保持部と線状部材の軸線とが直交すると共に、第2保持部と線状部材の軸線とが直交することを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、自動車等に装備される線状部材(例えば、ワイヤハーネス、ケーブル(アクセルケーブル、トランスミッションケーブル等))の配索経路を規制するクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置としては、曲折した1本の金属線によって線状部材を保持することで、線状部材の配索経路を規制するものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1のクランプ装置では、1本の金属線にU字状に曲折された保持部が複数形成されている。線状部材は、複数の保持部のそれぞれに挿し込まれ、複数の保持部でそれぞれ保持される。これによって、線状部材の配索経路が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−24246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車等に装備される線状部材には、種々の外力が作用する。例えば、排気管に設置されるセンサのワイヤハーネスには排気管の振動等が作用し、あるいは、エンジンルーム内に配置されるケーブルにはエンジンの振動等が作用する。特許文献1のクランプ装置では、隣り合う保持部の間に直線状の制振部を形成することで、線状部材に作用する振動が抑えられるようになっている。しかしながら、このクランプ装置では、各保持部への線状部材の挿し込み方向が同一のため、挿し込み方向と逆向きに大きな力が線状部材に作用すると、線状部材が保持部から外れてしまうという問題があった。
【0005】
本願は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、線状部材の外れを好適に防止することができるクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するクランプ装置は、曲折した1本の金属線によって線状部材の配索経路を規制する。このクランプ装置では、1本の金属線は、線状部材を保持する第1保持部と、第1保持部とは異なる位置で線状部材を保持する第2保持部を少なくとも有している。第1保持部は、1本の金属線をU字状に曲折することで形成され、U字状の金属線の底となる底部と、U字状の金属線の開口となる開口部を有している。第2保持部は、1本の金属線をU字状に曲折することで形成され、U字状の金属線の底となる底部と、U字状の金属線の開口となる開口部を有している第1保持部と第2保持部のそれぞれは、その開口部から底部に向かって線状部材が挿し込まれることで、その底部に線状部材を保持している。そして、U字状の第1保持部への線状部材の挿し込み方向が、U字状の第2保持部への線状部材の挿し込み方向と相違している。さらに、第1保持部の開口部の幅は線状部材の外径より小さくされると共に、第2保持部の開口部の幅は線状部材の外径より小さくされている。
【0007】
このクランプ装置では、第1保持部から線状部材が外れることを第2保持部が防止し、第2保持部から線状部材が外れることを第1保持部が防止する。すなわち、線状部材に対して、一方の保持部の線状部材挿し込み方向と反対の方向に外力が作用しても、他方の保持部が線状部材を保持する。このため、金属線に保持部からの線状部材の外れを防止するための特別の部位を形成する必要はなく、クランプ装置の構成が複雑化することを防止することができる。したがって、このクランプ装置は、線状部材がクランプ装置から外れることを好適に防止することができる。
【0008】
上記のクランプ装置では、さらに、第1保持部への線状部材の挿し込み方向と、第2保持部への線状部材の挿し込み方向とがなす角が、90〜270°の範囲となることが好ましい。このような構成によると、クランプ装置から線状部材がより外れ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例に係るクランプ装置の斜視図。
図2】第1実施例に係るクランプ装置の側面図。
図3】第2実施例に係るクランプ装置の斜視図。
図4】第2実施例に係るクランプ装置の側面図。
図5】第3実施例に係るクランプ装置の斜視図。
図6】第3実施例に係るクランプ装置の側面図。
図7】参考例に係るクランプ装置の斜視図。
図8】参考例に係るクランプ装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施例) 本発明を具現化した第1実施例に係るクランプ装置10を説明する。第1実施例に係るクランプ装置10は、自動車の排気管に取付けられるセンサ(例えば、排気ガス中の酸素濃度を検知する酸素センサ等)のワイヤハーネスを保持し、そのワイヤハーネスの配索経路を規制するために用いられる。図1,2に示すように、クランプ装置10は、1本の金属線(例えば、硬鋼線,ピアノ線,ステンレス鋼線等)を曲折して形成されている。クランプ装置10は、ワイヤハーネスHを保持する第1保持部12と、第1保持部とは異なる位置でワイヤハーネスHを保持する第2保持部14を有している。
【0011】
図2によく示されるように、第1保持部12は、金属線を略U字状に曲折することで形成されている。第1保持部12の上方(略U字状に曲折された金属線の上端)は開口しており、その幅はワイヤハーネスHの外径よりも小さくされている。第1保持部12の底部は、ワイヤハーネスHの外形に倣うように半円状に形成されており、その径はワイヤハーネスHの外径よりわずかに小さい。第1保持部12にワイヤハーネスHを取付けるには、第1保持部12の上方より第1保持部12の底部に向かってワイヤハーネスHを挿し込む。第1保持部12の開口の幅はワイヤハーネスHの径より小さいため、ワイヤハーネスHを挿し込む際は、第1保持部12の上端が外側に開く方向に変形する。ワイヤハーネスHが第1保持部12の底部まで挿し込まれると、第1保持部12はその復元力によって元の形状に戻ろうとする。この復元力によって、ワイヤハーネスHが第1保持部12に保持(挟持)される。上記の説明から明らかなように、第1保持部12へのワイヤハーネスHの挿し込み方向は下方(すなわち、矢印Aの方向)となっている。
【0012】
第1保持部12の一端側には取付部18が形成されている。取付部18は、第1保持部12の一端より伸びている金属線を曲折することで形成されており、図示しないブラケットに固定される。取付部18をブラケットに固定することで、クランプ装置10がブラケットに固定される。一方、第1保持部12の他端側には接続部16が形成されている。接続部16は、第1保持部12の他端より伸びている金属線を曲折することで形成されており、その先端が第2保持部14に接続されている。すなわち、接続部16は、第1保持部12と第2保持部14の間に配置され、第1保持部12と第2保持部14を接続している。第1保持部12と第2保持部14の間に接続部16が配置されるため、第1保持部12と第2保持部14は、ワイヤハーネスHの軸方向に離れた部位をそれぞれ保持する。
【0013】
第2保持部14は、第1保持部12と略同様の構成を備えており、金属線を略U字状に曲折することで形成されている。ただし、第2保持部14は、第1保持部12と異なり、図2の右側方が開口する一方で、図2の左側方がワイヤハーネスHの外形に倣うように半円状に形成されている。したがって、第2保持部14にワイヤハーネスHを取付けるには、第2保持部14の右側方よりワイヤハーネスHを挿し込むこととなる。すなわち、第2保持部14へのワイヤハーネスHの挿し込み方向は左側方(すなわち、矢印Bの方向)となる。したがって、図2に示すように、第1保持部12へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Aの方向)と、第2保持部14へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Bの方向)とがなす角(すなわち、後者の方向(矢印B)を表す単位ベクトルと前者の方向(矢印A)を表す単位ベクトルの終点とが一致するように2つのベクトルを描いたときになす角度であって、後者から前者に向かって時計回りに計測したときの角度)は90°となっている。
【0014】
なお、第2保持部14の開口部では、上方の金属線が下方の金属線より右側に突出して形成されている。(すなわち、U字状に形成された金属線の一方が他方より長くされている(図2参照)。)このため、第2保持部14にワイヤハーネスHを挿し込む際は、第2保持部14の上方の金属線にワイヤハーネスHを案内させながら行うことができる。これによって、第2保持部14へのワイヤハーネスHの挿し込みを容易に行うことができる。
【0015】
上述したクランプ装置10にワイヤハーネスHを取付けるには、クランプ装置10の第1保持部12にワイヤハーネスHを挿し込むと共に、第2保持部14にワイヤハーネスHを挿し込む。すなわち、第1保持部12には上方からワイヤハーネスHを挿し込み、第2保持部14には図2の右側方よりワイヤハーネスHを挿し込む。第1保持部12へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Aの方向)と、第2保持部14へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Bの方向)とは相違しているが、第1保持部12と第2保持部14の間には接続部16が形成され、第1保持部12と第2保持部14はワイヤハーネスHの軸方向に離れた位置に配置されている。また、接続部16は、図2の方向から見たときにワイヤハーネスHの周囲を一巡することなく、第2保持部14の開口部の方向(矢印Bと逆の方向)を開放している。これらのため、クランプ装置10をブラケットに固定した状態のままワイヤハーネスHのみを曲げ変形させて、ワイヤハーネスHを第1保持部12及び第2保持部14に挿し込むことができる。これによって、ワイヤハーネスHをクランプ装置10に容易に取付けることができる。ワイヤハーネスHが第1保持部12及び第2保持部14に保持されると、ワイヤハーネスHはクランプ装置10に2箇所で保持され、その配索経路が規制される。
【0016】
ここで、クランプ装置10にワイヤハーネスHを保持した状態で、第1保持部12からワイヤハーネスHを外す方向(図2の矢印Aと逆向きの方向)に外力が作用した場合、その外力は第2保持部14を形成する金属線によって受けることができる。これによって、第1保持部12からワイヤハーネスHが外れることが防止される。また、仮に第1保持部12からワイヤハーネスHが外れてしまったときでも、ワイヤハーネスHに作用する外力の方向(矢印Aと逆向きの方向)は、第2保持部14からワイヤハーネスHを外す方向(図2の矢印Bと逆向きの方向)に対して直交している。このため、第2保持部14からワイヤハーネスHが外れることを防止できる。
【0017】
逆に、クランプ装置10にワイヤハーネスHを保持した状態で、第2保持部14からワイヤハーネスHを外す方向(図2の矢印Bと逆向きの方向)に外力が作用した場合、その外力は第1保持部12を形成する金属線によって受けることができる。これによって、第2保持部14からワイヤハーネスHが外れることが防止される。また、仮に第2保持部14からワイヤハーネスHが外れてしまったときでも、ワイヤハーネスHに作用する外力の方向(矢印Bと逆向きの方向)は、第1保持部12からワイヤハーネスHを外す方向(図2の矢印Aと逆向きの方向)に対して直交する。このため、第1保持部12からワイヤハーネスHが外れることを防止できる。
【0018】
上述した説明から明らかなように、第1実施例のクランプ装置10では第1保持部12へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印A)と、第2保持部14へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印B)とがなす角が90°となっている。これによって、クランプ装置10からワイヤハーネスHが外れることを好適に防止することができる。
【0019】
(第2実施例) 次に、第2実施例のクランプ装置について説明する。第2実施例のクランプ装置は、第1実施例のクランプ装置10と異なり、第2保持部の開口する方向が相違しており、その他の点は第1実施例のクランプ装置10と略同一となっている。このため、第1実施例のクランプ装置10と相違する点を主に説明する。
【0020】
図3,4に示すように、第2実施例のクランプ装置30も、1本の金属線を曲折して形成されており、取付部38と第1保持部32と接続部36と第2保持部34を有している。取付部38と第1保持部32は、第1実施例と同様に構成されており、第2保持部34と接続部36が第1実施例とは異なる。
【0021】
第2保持部34は、金属線を略U字状に曲折することで形成されており、図4に示されるように、下方が開口する一方で、上方がワイヤハーネスHの外形に倣うように半円状に形成されている。このため、第2保持部34にワイヤハーネスHを取付けるには、第2保持部34の下方よりワイヤハーネスHを挿し込むこととなる。したがって、第1保持部32へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Aの方向)と、第2保持部34へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Bの方向)とがなす角は180°となっている。
【0022】
上述したように、第2保持部34へのワイヤハーネスHの挿し込み方向が第1実施例とは異なるため、それに応じて接続部36の形状が第1実施例とは相違している。ただし、接続部36の機能(すなわち、第1保持部32と第2保持部34を接続するという機能)については、第1実施例と同様である。
【0023】
第2実施例のクランプ装置30では、第1保持部32へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印A)と、第2保持部14へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印B)とがなす角が180°となっている。このため、第1保持部32からワイヤハーネスHを外す方向(図4の矢印Aと逆向きの方向)に作用する外力を第2保持部34によって受けることができ、また、第2保持部34からワイヤハーネスHを外す方向(図4の矢印Bと逆向きの方向)に作用する外力を第1保持部32によって受けることができる。このため、クランプ装置30からのワイヤハーネスHの外れを好適に防止することができる。
【0024】
また、第1保持部32と第2保持部34の間には接続部36が形成され、接続部36は、図4の方向から見たときにワイヤハーネスHの左側方にのみ位置している。このため、クランプ装置30をブラケットに固定した状態のままワイヤハーネスHのみを曲げ変形させて、ワイヤハーネスHをクランプ装置30に取付けることができる。
【0025】
(第3実施例) 次に、第3実施例のクランプ装置について説明する。第3実施例のクランプ装置50は、第1実施例のクランプ装置10と異なり、第2保持部が開口する方向が相違し、その他の点は第1実施例のクランプ装置10と略同一となっている。
【0026】
すなわち、図5,6に示すように、第3実施例のクランプ装置50も、1本の金属線を曲折して形成されており、取付部58と第1保持部52と接続部56と第2保持部54を有している。取付部58と第1保持部52は、第1実施例の取付部18と第1保持部12と同一構成であり、第2保持部54と接続部56が第1実施例とは異なる。
【0027】
第2保持部54は、金属線を略U字状に曲折することで形成されており、図6に示されるように、左側方が開口する一方で、右側方がワイヤハーネスHの外形に倣うように半円状に形成されている。このため、第2保持部54にワイヤハーネスHを取付けるには、第2保持部54の左側方よりワイヤハーネスHを挿し込むこととなる。したがって、第1保持部52へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Aの方向)と、第2保持部54へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(矢印Bの方向)とがなす角は270°となっている。なお、第2保持部54へのワイヤハーネスHの挿し込み方向に応じて、接続部56の形状が第1実施例と相違している点は、上述した第2実施例と同様である。
【0028】
第3実施例のクランプ装置50でも、第1保持部52からワイヤハーネスHを外す方向(図6の矢印Aと逆向きの方向)に作用する外力を第2保持部54によって受けることができ、また、第2保持部54からワイヤハーネスHを外す方向(図6の矢印Bと逆向きの方向)に作用する外力を第1保持部52によって受けることができる。このため、クランプ装置30からのワイヤハーネスHの外れを好適に防止することができる。
【0029】
また、第1保持部52と第2保持部54の間には接続部56が形成され、また、接続部56は、図6の方向から見たときにワイヤハーネスHの周囲を一巡していない。このため、クランプ装置50をブラケットに固定した状態のままワイヤハーネスHのみを曲げ変形させて、ワイヤハーネスHをクランプ装置50に取付けることができる。
【0030】
(参考例) 次に、参考例のクランプ装置について簡単に説明する。図7,8に示すように、参考例のクランプ装置70は、1本の金属線を曲折して形成されており、取付部78と第1保持部72と接続部76と第2保持部74を有している。取付部78と第1保持部72は、第1実施例の取付部18と第1保持部12と同一構成であり、第2保持部74と接続部76が第1実施例とは異なる。
【0031】
第2保持部74は、金属線を略U字状に曲折することで形成され、図7,8に示されるように、第1保持部72と同様に構成されている。すなわち、第2保持部74の上方が開口する一方で、下方がワイヤハーネスHの外形に倣うように半円状に形成されている。このため、第2保持部74へのワイヤハーネスHの挿し込み方向は、第1保持部72へのワイヤハーネスHの挿し込み方向と同一となっている。接続部76は、その一端が第1保持部72に接続される一方で、その他端が第2保持部74に接続されている。図7,8に示すように、接続部76は、第1保持部72及び第2保持部74に保持されたワイヤハーネスHの上方に位置するように形成されている。すなわち、接続部76は、第1保持部72及び第2保持部74から見て、第1保持部72及び第2保持部74からワイヤハーネスHを外す方向に位置するように形成されている。
【0032】
したがって、参考例のクランプ装置70では、ワイヤハーネスHに対して、保持部72,74から外れる方向(すなわち上向き)の力が作用しても、接続部76がワイヤハーネスHの上方(すなわち、保持部72,74からワイヤハーネスHを外す方向)に位置し、この接続部76によって保持部72,74からワイヤハーネスHを外す方向の外力を受けることができる。したがって、参考例のクランプ装置70でも、クランプ装置70からのワイヤハーネスHの外れが防止される。
【0033】
以上、本発明の具体例及び参考例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0034】
例えば、上記のクランプ装置では、第1保持部へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(図2,4,6の矢印A方向)と、第2保持部へのワイヤハーネスHの挿し込み方向(図2,4,6の矢印B方向)とがなす角(矢印Bから矢印Aに時計回りに測定したときの角度)が90°,180°,270°となっていたが、本願のクランプ装置は、これらの例に限られない。第1保持部へのワイヤハーネスHの挿し込み方向と、第2保持部へのワイヤハーネスHの挿し込み方向とが相違していれば、それによって、ワイヤハーネスがクランプ装置から外れることをある程度は防止することができる。ただし、第1保持部へのワイヤハーネスHの挿し込み方向と、第2保持部へのワイヤハーネスHの挿し込み方向とがなす角(一方から他方に時計回りに測定したときの角度)を、90〜270°の範囲とすれば、一方の保持部からワイヤハーネスが外れる方向に作用する外力を他方の保持部が好適に受けることができ、クランプ装置からワイヤハーネスが外れることを適切に防止することができる。
【0035】
また、上述した各実施例は、排気管に設置されるセンサのワイヤハーネスの配索経路を規制するクランプ装置に関するものであったが、本願のクランプ装置は、その他の種々の用途に用いることができる。例えば、各種電装品のワイヤハーネスや、各種ケーブル(例えば、アクセルケーブル、トランスミッションケーブル等)の配索経路を規制するために用いることができる。また、上述した各実施例のクランプ装置は、ワイヤハーネス等の線上部材を保持する保持部を2箇所に有していたが、本願のクランプ装置はこのような例に限られず、3箇所以上に保持部を有していてもよい。
【0036】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
10,30,50,70 クランプ装置
12,32,52,72 第1保持部
14,34,54,74 第2保持部
16,36,56,76 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8