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電子素子パターンを印刷法により形成する際に使用する溶剤であって、ジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテル及び/又はジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテルを含有し、セルロース系樹脂を含有する電子素子パターン印刷用ペースト組成物に使用することを特徴とする電子素子パターン印刷用溶剤。
太陽電池、有機薄膜トランジスター、ラジオ周波数識別タグ、電子ペーパー、有機エレクトロルミネッセンスデバイス、タッチパネル、及びプラズマディスプレイから選択される少なくとも1種を構成する素子のパターン形成方法であって、基板上に、請求項3に記載の電子素子パターン印刷用ペースト組成物を印刷法を用いて塗布することによりパターン層を形成する工程と、前記パターン層を固着及び/又は焼成させる工程とを有することを特徴とする電子素子パターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[電子素子パターン印刷用溶剤]
本発明の電子素子パターン印刷用溶剤は、電子素子パターンを印刷法により形成する際に使用する溶剤であって、ジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテル及び/又はジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテルを含有することを特徴とする。
【0022】
前記印刷法としては、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法等を挙げることができる。
【0023】
本発明の電子素子パターン印刷用溶剤全量(100重量%)における、ジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテル及び/又はジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテルの含有量(ジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテルとジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテルとを含有する場合はその総量)としては、例えば5重量%以上程度[好ましくは10重量%以上(例えば、10〜100重量%程度)、特に好ましくは20重量%以上]である。ジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテル及び/又はジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテルの含有量が上記範囲を下回ると、導電性低下等を引き起こすことなく印刷用ペースト組成物の初期せん断粘度を調整することが困難となる傾向がある。また、印刷用ペースト組成物に含有するバインダー樹脂の溶解性、パターン精度、生産性及び作業性が低下する傾向がある。更に、高温条件において速やかに乾燥させることが困難となる傾向がある。
【0024】
また、本発明の印刷用溶剤には、バインダー樹脂の溶解性、初期せん断粘度、及び速乾性を損なわない範囲であれば、ジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテル及びジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテル以外に、必要に応じて他の有機溶剤を添加することができる。
【0025】
他の有機溶剤としては、例えば、シクロアルキルアルコール、シクロアルキルアセテート、アルキレングリコール、アルキレングリコールジアセテート、アルキレングリコールモノエーテル、上記以外のアルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノエーテルアセテート、ジアルキレングリコールモノエーテル、上記以外のジアルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリアルキレングリコールモノエーテル、トリアルキレングリコールモノエーテルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、テルペン系化合物とその誘導体等を挙げることができる。
【0026】
シクロアルキルアルコールとしては、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクチルアルコール、メチルシクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、i−プロピルシクロヘキシルアルコール、ブチルシクロヘキシルアルコール、i−ブチルシクロヘキシルアルコール、s−ブチルシクロヘキシルアルコール、t−ブチルシクロヘキシルアルコール、ペンチルシクロヘキシルアルコール等のC
1-5アルキル基等の置換基を有していてもよい3員〜15員のシクロアルキルアルコール等を挙げることができる。
【0027】
シクロアルキルアセテートとしては、例えば、シクロヘキシルアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロオクチルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、エチルシクロヘキシルアセテート、プロピルシクロヘキシルアセテート、i−プロピルシクロヘキシルアセテート、ブチルシクロヘキシルアセテート、i−ブチルシクロヘキシルアセテート、s−ブチルシクロヘキシルアセテート、t−ブチルシクロヘキシルアセテート、ペンチルシクロヘキシルアセテート等のC
1-5アルキル基等の置換基を有していてもよい3員〜15員のシクロアルキルアセテート等を挙げることができる。
【0028】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0029】
アルキレングリコールジアセテートとしては、例えば、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−プロパンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,5−ペンタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等を挙げることができる。
【0030】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル等のエチレングリコールモノC
1-5アルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル等のプロピレングリコールモノC
1-5アルキルエーテル等を挙げることができる。
【0031】
アルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジペンチルエーテル等のエチレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールメチルプロピルエーテル、エチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールメチルペンチルエーテル、エチレングリコールエチルプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルペンチルエーテル、エチレングリコールブチルプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルペンチルエーテル、エチレングリコールブチルペンチルエーテル等のエチレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基非対称);プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジペンチルエーテル等のプロピレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルペンチルエーテル、プロピレングリコールエチルプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエチルエーテル、プロピレングリコールエチルペンチルエーテル、プロピレングリコールブチルプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルペンチルエーテル、プロピレングリコールブチルペンチルエーテル等のプロピレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基非対称)等を挙げることができる。
【0032】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノC
1-5アルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノC
1-5アルキルエーテルアセテート等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0033】
ジアルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル等のジエチレングリコールモノC
1-5アルキルエーテル;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル等のジプロピレングリコールモノC
1-5アルキルエーテル等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0034】
ジアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジペンチルエーテル等のジエチレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルペンチルエーテル、ジエチレングリコールブチルペンチルエーテル等のジエチレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキルエーテル(直鎖または分岐鎖)(末端アルキル基非対称);ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジペンチルエーテル等のジプロピレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基対称);ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルペンチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルペンチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルペンチルエーテルなどのジプロピレングリコールC
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)C
1-5アルキル(直鎖または分岐鎖)エーテル(末端アルキル基非対称)等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0035】
ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノC
1-5アルキルエーテルアセテート;ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノC
1-5アルキルエーテルアセテート等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0036】
トリアルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル等のトリエチレングリコールモノC
1-5アルキルエーテル;トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル等のトリプロピレングリコールモノC
1-5アルキルエーテル等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0037】
トリアルキレングリコールモノエーテルアセテートとしては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のトリエチレングリコールモノC
1-5アルキルエーテルアセテート;トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のトリプロピレングリコールモノC
1-5アルキルエーテルアセテート等を挙げることができる(異性体を含む)。
【0038】
テルペン系化合物とその誘導体としては、例えば、ターピネオール、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、メントール等を挙げることができる。
【0039】
他の有機溶剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲内において適宜調整することができる。更に他の有機溶剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
本発明に係る印刷用溶剤は、バインダー樹脂の溶解性に優れ、バインダー性能を十分に発揮させることができる。その上、エチルセルロース等のバインダー樹脂を溶解して得られる印刷用ペースト組成物に高い初期せん断粘度(25℃における)を付与することができる。すなわち、本発明に係る印刷用溶剤を使用すると、印刷用ペースト組成物に、低せん断速度領域において高い粘性を有する性質(すなわち、高いチキソトロピー性)を付与することができる。そのため、バインダー樹脂の添加量を増量する必要がなく、従来と同等、若しくは従来より少ない量のバインダー樹脂を使用して、基板上に塗布し配線・塗膜を形成する際に用いられる各印刷法に応じて最適な粘度を有する印刷用ペースト組成物を容易に調製することができる。
【0041】
[電子素子パターン印刷用ペースト組成物]
本発明の電子素子パターン印刷用ペースト組成物は、前記電子素子パターン印刷用溶剤とバインダー樹脂とを少なくとも含有する。
【0042】
バインダー樹脂としては、特に限定されることがなく、電子素子パターンの形成に使用される周知慣用の樹脂を使用することができ、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、メチルヒドロキシセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、なかでも、塗布時の版離れがよく、チクソトロピー性及び印刷物の形状安定性に優れる点で、セルロース系樹脂及び/又はアクリル系樹脂(特に、セルロース系樹脂)を使用することが好ましい。
【0043】
印刷用ペースト組成物全量(100重量%)における前記印刷用溶剤の含有量としては、用途に応じて適宜調整することができ、例えば10〜95重量%程度、好ましくは10〜80重量%程度、特に好ましくは10〜70重量%程度である。
【0044】
また、印刷用ペースト組成物全量(100重量%)におけるバインダー樹脂の含有量としては、用途に応じて適宜調整することができ、例えば、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度である。
【0045】
本発明の印刷用ペースト組成物は、導体機能、絶縁機能、半導体機能の何れを発現するものであってもよく、上記印刷用溶剤、バインダー樹脂以外に他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、ガラスフリット、金属酸化物、誘電体材料等の金属材料、有機TFT材料、導電性高分子材料、イオン伝導体材料、有機−無機ハイブリッドイオン伝導材料、有機又は無機顔料、分散剤、消泡剤、安定剤、酸化防止剤、硬化促進剤、増感剤、充填剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を挙げることができる。他の添加物の添加量としては、本発明の効果を損なわない範囲内であればよく、例えば、印刷用ペースト組成物(100重量%)に対して、25〜900重量%程度(好ましくは40〜900重量%、特に好ましくは40〜800重量%、最も好ましくは40〜700重量%)である。
【0046】
本発明の印刷用ペースト組成物は、例えば、上記印刷用溶剤、及びバインダー樹脂、及び必要に応じて他の有機溶剤、添加物を配合して、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分混練し、均一に分散することにより調製することができる。
【0047】
印刷用ペースト組成物の25℃における初期せん断粘度は、上記印刷用溶剤に含有するジプロピレングリコールメチルイソブチルエーテル及び/又はジプロピレングリコールメチルイソペンチルエーテルの含有量をコントロールすることにより調整することができる。
【0048】
印刷用ペースト組成物の25℃における初期せん断粘度の好ましい値は、印刷方法によって異なる。例えば、グラビア印刷用ペースト組成物の場合の25℃における初期せん断粘度としては、例えば、25mPa・s以上程度(例えば25〜1000mPa・s、好ましくは25〜500mPa・s程度、特に好ましくは25〜250mPa・s)である。グラビア印刷用ペースト組成物の25℃における初期せん断粘度が上記範囲を下回ると、弾性が低くなりすぎて微細パターンを精度良く形成することが困難となる。
【0049】
また、スクリーン印刷用ペースト組成物の場合の25℃における初期せん断粘度としては、例えば、1200mPa・s以上程度(例えば1200〜10000mPa・s、好ましくは1500〜10000mPa・s程度、特に好ましくは1800〜10000mPa・s)である。スクリーン印刷用ペースト組成物の25℃における初期せん断粘度が上記範囲を下回ると、弾性が低くなりすぎて微細パターンを精度良く形成することが困難となる。
【0050】
本発明の印刷用ペースト組成物は、バインダー樹脂の含有量が従来と同程度、或いは、従来に比べて少量でも、各印刷用に最適な初期せん断粘度を発現することができ、微細パターンを精度良く形成して、配線・塗膜パターンの微細化、高密度配線化に対応することができると共に、焼成により生じるバインダー樹脂の残渣増加を防止、或いは残渣を低減することができ、バインダー樹脂の残渣による導電性低下を防止することができる。
【0051】
更に、本発明の印刷用ペースト組成物は、含有する印刷用溶剤が印刷温度では蒸発し難いため、印刷中に経時的粘度変動が生じて印刷にムラが生じるといった問題が発生しない。また、前記印刷用溶剤は、高温では速やかに蒸発して乾燥するため、電子素子パターンの生産効率を著しく向上することができる。本発明の印刷用ペースト組成物は、例えば、太陽電池、有機TFT、ラジオ周波数識別タグ、電子ペーパー、有機ELデバイス、タッチパネル、及びプラズマディスプレイなどの印刷用ペースト組成物として有用である。
【0052】
[電子素子パターン形成方法]
本発明の電子素子パターン形成方法は、太陽電池、有機薄膜トランジスター、ラジオ周波数識別タグ、電子ペーパー、有機ELデバイス、タッチパネル、及びプラズマディスプレイから選択される少なくとも1種を構成する素子のパターン形成方法であって、下記工程を有することを特徴とする。
工程1:基板上に、前記電子素子パターン印刷用ペースト組成物を印刷法を用いて塗布することによりパターン層を形成する工程
工程2:前記パターン層を固着及び/又は焼成させる工程
【0053】
前記印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法からなる群より選択される少なくとも1種の方法を挙げることができる。
【0054】
上記印刷法により形成されたパターン層は、含有するバインダー樹脂の種類により適宜選択した方法により固着することができる。例えば、バインダー樹脂としてセルロース系樹脂を使用する場合は、印刷用溶剤を蒸発させることにより、乾燥・固化して固着することができる。また、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂及び/又はビニル系樹脂を使用する場合は、加熱処理及び/又は光照射処理を行うことにより重合・硬化させて固着することができる。乾燥・固化又は重合・硬化後は、更に焼成してもよい。
【0055】
印刷用溶剤を蒸発させることによる乾燥・固化は、室温(25℃程度)で行ってもよいが、作業性を向上することができる点で加熱して行うことが好ましく、例えば、80〜200℃程度(好ましくは、100〜180℃程度)の温度で、例えば0.02〜3時間程度加熱して乾燥させることが好ましい。
【0056】
加熱処理により重合・硬化を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、例えば50〜200℃程度である。また、加熱時間としては、例えば0.5〜3時間程度である。光照射により重合・硬化を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。光照射時間としては、例えば0.5〜30分程度である。
【0057】
乾燥・固化又は重合・硬化後に焼成を行う場合、焼成温度としては、例えば200〜1500℃程度である。また、焼成時間としては、例えば0.1〜5時間程度である。
【0058】
上記方法により得られるパターン層厚みは用途に応じて適宜調整することができ、例えば数nm〜200μm程度である。
【0059】
パターン層を形成する基板としては、耐熱性及び耐溶剤性を有する基板が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、シクロオレフィンコポリマー、導電性ポリマー、ナイロン、セルロース、ガラス、ITO等を挙げることができる。基板厚みとしては、例えば0.1〜50mm程度である。
【0060】
一般に、太陽電池(特に、有機太陽電池)はn型半導体層とp型半導体層とを含む光電変換層が光入射側電極(バス電極及びフィンガー電極からなる)と裏面側電極とで挟まれた構造を有する。
【0061】
太陽電池は、例えば、下記方法により製造することができる。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、太陽電池を精度良く形成することができる。
1:B(ボロン原子)等を不純物として添加したp型半導体を、印刷法により形成する。
2:得られたp型半導体表面にテクスチャ(凹凸)加工を施してから、P(リン原子)等を不純物として添加したn型半導体を印刷法により積層する。
3:p型半導体表面に窒化ケイ素、酸化チタン等の反射防止膜を形成する。
4:n型半導体表面にバス電極とフィンガー電極(光入射側電極)を印刷法により形成する。
【0062】
一般に、有機TFTは、電極層(ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層)、及び有機半導体層で構成される。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、有機TFTを精度良く形成することができる。
【0063】
一般に、ラジオ周波数識別タグは、基板上に回路を印刷することで形成できる。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、ラジオ周波数識別タグを精度良く形成することができる。
【0064】
一般に、電子ペーパーは、表示層とそれを制御するドライバ層が基板で挟まれた構造を有する。そして、ドライバ層として上記有機TFTを採用することにより、フレキシブルなディスプレイを実現することができる。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、電子ペーパーを精度良く形成することができる。
【0065】
一般に、有機ELデバイスは一層〜多層からなる発光層が2つの電極(陽極、陰極)に挟まれた構造を有する。
【0066】
有機ELデバイスは、例えば、下記工程を経て製造される。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、有機ELデバイスを精度良く形成することができる。
1:ガラス等の基板上に陽極を形成する。
2:ガラス等の基板上の、陽極を形成した部分以外の部分に隔壁を形成する。
3:陽極上に、赤、緑、青、又は白色の発光層を印刷法により形成する。
4:発光層及び隔壁の上に陰極を形成する。
【0067】
一般に、タッチパネルは上部電極板(可動電極板)と下部電極板(固定電極板)が、スペーサを介して相対した構造を有する。
【0068】
タッチパネルは、例えば、下記工程を経て製造される。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、タッチパネルを精度良く形成することができる。
1:ITO/PET基板上の動作領域部にレジストを印刷し、エッチングして周辺の銀回路印刷部分のITO膜を除去する。
2:可視領域以外の部分に銀インキを印刷して銀回路を形成する。
3:銀回路を覆うように絶縁インキを印刷して上部電極を得る。
4:ITO/ガラス基板上の動作領域部にレジストを印刷し、エッチングして周辺の銀回路印刷部分のITO膜を除去する。
5:ドットスペーサを印刷・焼成した後、銀インキを印刷して銀回路を形成し、銀回路を覆うように絶縁インキを印刷して下部電極を得る。
6:上下電極貼り付け用の糊を印刷し、引き出し線用のフレキシブルプリント基板と上下電極を貼り合わせ、導電性ペーストと熱圧着させることでタッチパネルを形成する。
【0069】
一般に、プラズマディスプレイは、電極を表面に形成した前面ガラス基板と、電極及び蛍光体層を形成した背面ガラス基板とを狭い間隔で対向させて希ガスを封入した構造を有する。
【0070】
プラズマディスプレイは、例えば、下記方法により製造することができる。本発明に係る電子素子パターン形成方法によれば、プラズマディスプレイを精度良く形成することができる。
1:前面ガラス基板上に表示電極、バス電極を形成する。
2:さらに誘電体層、MgO層を形成する。
3:背面ガラス基板上にデータ電極を形成し、誘電体層を形成し、さらにバリアリブ、蛍光体層を形成する。
4:前面ガラス基板と背面ガラス基板を張り合わせ、排気し、放電ガスを封入した後、プリント基板を実装する。
【0071】
本発明の電子素子パターン形成方法は印刷法を用いるため、基板に対して非接触の状態でパターンを形成することができ、大面積及び/又はフレキシブルな基板にも容易に微細な素子パターンを高精度に形成することができる。また、マスクの作成等の複雑な工程を経ることなく直接描写することが可能であり、微細加工技術を用いる必要がない。更に、常温常圧環境下で製造することができる。そのため、製造プロセスの大幅な簡素化、設備の簡素化、製造コストの低減化が可能である。以上より、本発明に係るパターン形成方法は、太陽電池、有機TFT、ラジオ周波数識別タグ、電子ペーパー、有機ELデバイス、タッチパネル、及びプラズマディスプレイ等の電子素子の製造において特に有用である。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0073】
実施例、比較例
下記表1に記載の溶剤について、蒸発速度、及び5重量%エチルセルロース溶液のせん断粘度(mPa・s、25℃)を測定した。
【0074】
(蒸発速度測定)
実施例及び比較例の溶剤(サンプル数:12個)の50℃、90℃、120℃、150℃における蒸発速度は、示差熱・熱重量同時測定装置(TG−DTA)を使用して、下記条件で測定し、試験開始2分後から試験終了までの重量変化を測定し、その平均を蒸発速度とした。
<TG−DTA測定条件>
サンプル容器:アルミパン
初期温度:20℃
昇温速度:40℃/分
最終温度:50℃、90℃、120℃、150℃
最終温度保持時間:10分間
【0075】
上記結果を下記表にまとめて示す。
【表1】
【0076】
表1中の略号は以下の通りである。
DPMIA:ジプロピレングリコールメチル−i−ペンチルエーテル((株)ダイセル製)
DPMIB:ジプロピレングリコールメチル−i−ブチルエーテル((株)ダイセル製)
DHTA:ジヒドロターピニルアセテート(商品名「メンタノールAC」、日本香料薬品(株)製)
DPMNB:ジプロピレングリコールメチル-n−ブチルエーテル((株)ダイセル製)
【0077】
続いて、実施例及び比較例の溶剤に、エチルセルロース(商品名「エトセルSTD」、DOW(株)製)を完溶して、5重量%エチルセルロース溶液を得た。
得られた5重量%エチルセルロース溶液のせん断粘度(mPa・s、25℃)を、粘弾性測定装置(商品名「Anton Paar Physica MCR 301」、(株)アントンパール製)を使用して、25℃でせん断速度を1〜100s
-1の間で1次連続的に変化させて、10秒毎に(合計20点)せん断粘度を測定した。上記結果を下記表2にまとめて示す。
【0078】
【表2】