(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1位置決め部は、前記可動片が前記第2ケースと当接して押される方向に対して垂直な方向に沿って、連続して又は複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーカー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
小型化が図られたブレーカーにおいて、安定した温度追従性と抵抗値(固定接点と可動接点との接触抵抗)を確保するためには、固定片に設けられた固定接点と可動片の先端に設けられた可動接点との相対的な位置関係(姿勢)を安定させる必要がある。特許文献1に示された構成のブレーカーにおいては、固定片が樹脂ケースに固定されているため、可動片の樹脂ケースに対する組み込み精度が重要になる。樹脂ケースに対する可動片の姿勢が僅かながらも変動すると、その先端に設けられている可動接点の位置が変動し、固定接点との相対的な位置関係に影響を及ぼすからである。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、安定した温度追従性と抵抗値を確保しつつ、小型化を実現できるブレーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のブレーカーは、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容する第1ケースと、前記第1ケースに装着される第2ケースとを備えたブレーカーにおいて、前記第2ケースは、前記可動片の一部と当接する斜面を有し、前記第1ケースは、前記斜面によって押された前記可動片の他の一部と当接し、該可動片を位置決めする第1位置決め部を有するものである。
【0009】
また、本発明のブレーカーは、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容する第1ケースと、前記第1ケースに装着される第2ケースとを備えたブレーカーにおいて、前記可動片は、前記第2ケースの一部と当接する斜面を有し、前記第1ケースは、前記可動片の一部と当接し、該可動片を位置決めする第1位置決め部を有するものである。
【0010】
この発明において、前記第1位置決め部は、前記可動片が前記第2ケースと当接して押される方向に対して垂直な方向に沿って、連続して又は複数箇所に設けられていることが好ましい。
【0011】
この発明において、前記第1ケースは、前記第2ケースの一部と当接し、該第2ケースを位置決めする第2位置決め部を有することが好ましい。
【0012】
この発明において、前記第2位置決め部は、前記可動片が前記第2ケースと当接して押される方向に対して垂直な方向に沿って、連続して又は複数箇所に設けられていることが好ましい。
【0013】
この発明において、前記可動片は、前記弾性部を挟んで前記可動接点とは反対側に該可動片の厚み方向に貫通する貫通穴を有し、前記第1ケースは、前記貫通穴に挿通される突起を有することが好ましい。
【0014】
この発明において、前記第1ケースと前記第2ケースとは、超音波溶着によって接合されることが好ましい。
【0015】
この発明において、前記第1ケースの突起は、前記第2ケースの内壁面と接合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のブレーカーによれば、第2ケースに形成されている斜面が可動片の一部と当接し、可動片が所定の方向に押される。このとき、可動片の他の一部が第1ケースの第1位置決め部と当接される。これにより、可動片が第1位置決め部によって正確に位置決めされ、第1ケースに対する可動片の姿勢が安定する。従って、可動片の先端部に設けられている可動接点と固定接点との相対的な位置関係のばらつきが抑制され、安定した温度追従性と抵抗値を確保しつつ、ブレーカーを小型化することができる。
【0017】
また、可動片に形成されている斜面が第2ケースの一部と当接し、可動片が所定の方向に押される形態においても、上記と同様に、安定した温度追従性を確保しつつ、ブレーカーを小型化することができる。
【0018】
また、可動片が押される方向に対して垂直な方向に沿って、連続して又は複数箇所に第1位置決め部が設けられている形態によれば、第1ケースに対する可動片の回転によるずれを抑制できる。これにより、可動接点と固定接点との相対的な位置関係をより一層安定させることができる。
【0019】
また、第1ケースの第2位置決め部と、第2ケースの一部とが当接する形態によれば、第2ケースが第1ケースに対して正確に位置決めされる。これにより、可動片と第2ケースの当接状態が安定し、可動片の姿勢のばらつきを抑制できる。
【0020】
また、可動片が押される方向に対して垂直な方向に沿って、連続して又は複数箇所に第2位置決め部が設けられている形態によれば、第1ケースに対する第2ケースの回転によるずれを抑制できる。これにより、可動片と第2ケースの当接状態をさらに安定させて、可動片の姿勢のばらつきをより一層抑制できる。
【0021】
また、第1ケースの突起が挿通される貫通穴が可動片に設けられる形態によれば、可動片の第1ケースへの組み込み作業が容易に行える。この場合にあっても、上記斜面を介して押された可動片と第1位置決め部の作用によって、第1ケースに対する可動片の姿勢の安定は維持される。
【0022】
また、第1ケースと第2ケースとが超音波溶着によって接合される形態によれば、容易かつ強固に第1ケースと第2ケースとが接合され、可動接点と固定接点との相対的な位置関係をより一層安定させることができる。
【0023】
また、第1ケースの突起が第2ケースの内壁面と接合される形態によれば、可動片の貫通穴の周辺における第1ケースと第2ケースの接合構造が強固となる。これにより、可動片の姿勢をより一層安定させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。
図1乃至
図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容する樹脂ケース7等によって構成されている。樹脂ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)72等によって構成されている。
【0026】
固定片2は、リン青銅を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部と電気的に接続される端子22が形成され、他端部の近傍にはPTCサーミスター6が載置されている。PTCサーミスター6は、固定片2の他端部の近傍に3箇所形成された凸状のダボ(小突起)の上に載置される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口73の一部から露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に突出されている。
【0027】
可動片4は、固定片2と同等の金属板をプレス加工することによりアーム状に形成されている。可動片4の長手方向の一端には外部と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に突出される。本実施形態においては、固定片2の端子22と可動片4の端子41の高さを揃えるために、可動片4は、樹脂ケース7の内部の段曲げ部46においてクランク状に屈曲されている。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、固定部42(アーム状の可動片4の基端に相当)、弾性部43を有している。固定部42において樹脂ベース71とカバー部材72によって挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0028】
また、可動片4には、可動片4の厚み方向に貫通し、樹脂ベース71の突起74が挿通される貫通穴45と、クランク状に形成された段曲げ部46と、段曲げ部46に形成された斜面47及び樹脂ベース71の第1位置決め部75と係合される一対の係合部48が形成されている。貫通穴45、段曲げ部46、斜面47及び係合部48は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側に設けられている。斜面47は、斜面47以外の場所に、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されている。係合部48は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。
【0029】
また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して一対の小突起44が形成されている。小突起44と熱応動素子5とは接触して、小突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(
図2及び
図3参照)。可動片4の材料としては、リン青銅を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。なお、可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収容できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。
【0030】
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレスなど各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0031】
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。
【0032】
樹脂ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材72は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂により成形されている。樹脂ベース71には、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための開口73などが形成されている。なお、樹脂ベース71に組み込まれた可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、開口73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0033】
また、樹脂ベース71は、可動片4の貫通穴45に挿通される突起74と、可動片4を位置決めするための一対の第1位置決め部75と、カバー部材72の凸部79と嵌合される一対の凹部(第2位置決め部)76を有する。第1位置決め部75は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。本実施形態では、樹脂ベース71の側壁の一部が第1位置決め部75を構成する。凹部76も、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って2箇所に設けられている。なお、第1位置決め部75及び凹部76は、3箇所以上設けられていてもよい。この場合、第1位置決め部75に対応する係合部48及び凹部76に対応する凸部79も、3箇所以上設けられる。
【0034】
カバー部材72は、その内壁面から可動片4の段曲げ部46に対応する形状に突出する段部77と、段部77に形成された斜面78(
図5参照)と、樹脂ベース71の凹部76に挿入される凸部79とを有する。斜面78は、可動片4の斜面47と対応し、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されている。凸部79は、樹脂ベース71の凹部76に対応する位置に2箇所設けられている。
【0035】
カバー部材72には、カバー片8がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片8は、上述したリン青銅を主成分とする金属板又はステンレス等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片8は、
図2及び
図3に示すように、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、カバー部材72のひいては筐体としての樹脂ケース7の剛性・強度を高める。
【0036】
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容した樹脂ベース71の開口73を塞ぐように、カバー部材72が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
【0037】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0038】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0039】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、
図2に示す導通状態に復帰する。
【0040】
図4は、樹脂ベース71に可動片4が組み込まれる様子を示す。可動片4は、樹脂ベース71の開口73a,73bに案内されて樹脂ベース71に組み込まれる。このとき、可動片4に形成されている貫通穴45に樹脂ベース71の突起74が挿通される。これにより、可動片4が突起74によって案内されるので、樹脂ベース71に対する可動片4の仮の位置合わせがなされる。
【0041】
この仮の位置合わせの段階では、樹脂ベース71に対する可動片4の位置合わせが正確になされている必要はない。また、可動片4は、後の工程で最終的な位置合わせができるように、樹脂ベース71の上に載置された状態であり、固定されてはいない。なお、樹脂ベース71の開口73a,73b及び突起74の位置、形状、寸法等は、仮の位置合わせがなされた位置から完全に位置決めされる定位置まで可動片4を案内し易くなるように、可動片4の対応する箇所と相似形に形成されている。
【0042】
図5は、樹脂ベース71にカバー部材72が装着される様子を、凹部76及び凸部79が含まれる断面で示す。カバー部材72は、凹部76に凸部79を挿入すると共に、可動片4の段曲げ部46にカバー部材72の段部77を押し当てることで可動片4を位置合わせしながら、樹脂ベース71に装着される。
【0043】
図6は、樹脂ベース71にカバー部材72が完全に装着される際に、カバー部材72によって可動片4が樹脂ベース71とカバー部材72に挟まれた状態で押される様子を示す。同図において(b)は、ブレーカー1の内部構造を明確に示すため、カバー部材72を透視している。樹脂ベース71にカバー部材72が装着される最中に、カバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧される(図中白抜き矢印)と、可動片4の斜面47とカバー部材72の斜面78とが当接する。斜面47及び斜面78は、可動片4の長手方向に対して垂直な方向に沿って連続して形成されているので、なおもカバー部材72が樹脂ベース71の方向に押圧されると、可動片4の斜面47はカバー部材72の斜面78によって可動片4の長手方向に押される(付勢される)。その結果、可動片4の全体が長手方向すなわち固定片2の存在する矢印A方向に押されて移動し、係合部48が第1位置決め部75と当接して係合する。これにより、
図5において突起74等によって仮の位置合わせがなされていた可動片4は、樹脂ベース71に対して正確に位置決めされる。すなわち、樹脂ベース71に対して可動片4が組み込まれる際に生じている仮の位置合わせ時の誤差は軽減され、樹脂ベース71に対する可動片4の位置決め誤差を、実質的に樹脂ベース71の第1位置決め部75と可動片4の係合部48の製造時における寸法誤差程度に留めることができる。
【0044】
なお、
図6(b)において、可動片4の係合部48から可動接点3の接触箇所(
図2参照)までの距離と、樹脂ベース71の第1位置決め部75から固定接点21の接触箇所(
図2参照)までの距離は平面視で等しく設定さている。そのため、可動片4が正確に位置決めされると、可動接点3と固定接点21とが適正な接触箇所で接触する。これにより、通電時における両者間の接触抵抗が適正化される。
【0045】
本実施形態においては、係合部48及び第1位置決め部75が可動片4の短手方向(
図6(b)中、紙面の上下方向)に沿って、それぞれ一対設けられる。さらに、一対の係合部48及び一対の第1位置決め部75は、可動片4の短手方向において斜面47、斜面78を挟んで外側の部分に位置しているので、可動片4の回転による樹脂ベース71とのずれを抑制できる。また、これにより、可動片4の先端部と樹脂ベース71の開口73bとのクリアランスを小さく設定しても、可動片4の先端部と樹脂ベース71との干渉を防止できるので、樹脂ベース71のさらなる小型化を図ることができる。
【0046】
可動片4の斜面47を押圧するカバー部材72の斜面78は、その反作用によって斜面47から押し返され、カバー部材72全体は矢印A方向とは逆の方向、すなわち可動片4の端子41が存在する矢印B方向に移動する。これに伴い、樹脂ベース71の凹部76とカバー部材72の凸部79とが、矢印B方向の側の壁面で当接する。これにより、カバー部材72が樹脂ベース71に対して正確に位置決めされることになる。本実施形態においては、凹部76及び凸部79が可動片4の短手方向に沿って、それぞれ一対設けられる。さらに、一対の凹部76及び一対の凸部79は、可動片4の短手方向において斜面47、斜面78を挟んで外側の部分に位置しているので、可動片4の回転による樹脂ベース71とのずれを抑制できる。その結果、樹脂ベース71に対する斜面78の姿勢が安定し、可動片4を正確な方向に押圧することが可能となり、斜面47、斜面78、第1位置決め部75、係合部48による可動片4の位置決め作用と相まって、可動片4の姿勢をより一層安定させることができる。
【0047】
図7に示すように、樹脂ベース71にカバー部材72が完全に装着されると、樹脂ベース71又はカバー部材72のいずれか一方又は両方に超音波振動が付与され、樹脂ベース71とカバー部材72が溶着される。このとき、樹脂ベース71の突起74の先端がカバー部材72内壁面と当接し、超音波溶着によって接合される。これに伴い、可動片4が、貫通穴45の周辺すなわち固定部42において、樹脂ベース71及びカバー部材72によって上下方向から強固に接合される。これにより、可動片4が、樹脂ベース71に対して定位置(あるべき位置)で固定される。なお、カバー部材72が樹脂ベース71に溶着され、可動片4が固定された後も、斜面47と斜面78とは当接状態を維持し、可動片4は、矢印A方向に押され続ける。また、これに伴い、第1位置決め部75と係合部48とは係合状態を維持し、樹脂ベース71に対する可動片4の位置及び姿勢は、正常に維持され続ける。
【0048】
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、カバー部材72が樹脂ベース71に装着されるとき、カバー部材72に形成されている斜面78が可動片4の斜面47と当接し、斜面78,47によって力の方向が変換されることにより、可動片4が長手方向である矢印A方向に押されて移動する。これに伴い、可動片4の係合部48が樹脂ベース71の第1位置決め部75と係合される。これにより、可動片4が第1位置決め部75によって正確に位置決めされ、樹脂ベース71に対する可動片4の姿勢が安定する。従って、可動片4の先端部に設けられている可動接点3と固定接点21との相対的な位置関係のばらつきが抑制され、安定した温度追従性と抵抗値を確保しつつ、ブレーカー1を小型化することができる。
【0049】
また、可動片4が押される矢印A方向に対して垂直な方向に沿って複数箇所に第1位置決め部75が設けられているので、樹脂ベース71に対する可動片4の回転によるずれを抑制できる。これにより、可動接点3と固定接点21との相対的な位置関係をより一層安定させることができる。
【0050】
また、樹脂ベース71の凹部76と、カバー部材72の凸部79とが係合することにより、カバー部材72が樹脂ベース71に対して正確に位置決めされるので、可動片4とカバー部材72の当接状態が安定し、可動片4の姿勢のばらつきを抑制できる。
【0051】
また、可動片4が押される矢印A方向に対して垂直な方向に沿って複数箇所に凹部76が設けられているので、樹脂ベース71に対するカバー部材72の回転によるずれを抑制できる。これにより、可動片4とカバー部材72の当接状態をさらに安定させて、可動片4の姿勢のばらつきをより一層抑制できる。
【0052】
また、樹脂ベース71の突起74が挿通される貫通穴45が、可動片4に設けられているので、可動片4の樹脂ベース71への組み込み作業が容易に行える。この場合にあっても、斜面47,78を介して押された可動片4と第1位置決め部75の作用によって、樹脂ベース71に対する可動片4の姿勢の安定は維持される。
【0053】
また、樹脂ベース71とカバー部材72とが超音波溶着によって接合されるので、容易かつ強固に樹脂ベース71とカバー部材72とが接合され、可動接点3と固定接点21との相対的な位置関係をより一層安定させることができる。また、樹脂ベース71の突起74がカバー部材72の内壁面と接合されるので、可動片4の貫通穴45の周辺における樹脂ベース71とカバー部材72の接合構造が強固となる。これにより、可動片4の姿勢をより一層安定させることが可能となる。
【0054】
また、固定片2が樹脂ベース71にインサート成形により埋設されているので、固定片2が樹脂ベース71に強固に固定される。これにより、固定接点21と可動接点3との相対的な位置関係をより一層安定させることができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも斜面47,78によって押された可動片4の係合部48と樹脂ベース71の第1位置決め部75が係合し、可動片4を位置決めするように構成されていればよい。
【0056】
また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、斜面47,78は、可動片4又はカバー部材72のいずれか一方に設けられていればよい。可動片4のみに斜面47が設けられている場合は、斜面47は、カバー部材72の段部77等の一部と当接し、可動片4が矢印A方向に押される。このとき、斜面47と当接するカバー部材72の一部は、斜面78を有する段部77に限られず、例えば突起、穴、切欠き等のように、カバー部材72の装着時に斜面47との当接により可動片4を所定の方向に押すことのできる形態であれば、その位置や形状は限定されない。一方、カバー部材72のみに斜面78が設けられている場合は、可動片4の段曲げ部46等の一部が斜面78と当接し、可動片4が矢印A方向に押される。このとき、斜面78と当接する可動片4の一部も、斜面47を有する段曲げ部46に限られず、例えば突起、穴、切欠き等のように、カバー部材72の装着時に斜面78との当接により可動片4が所定の方向に押されることのできる形態であれば、その位置や形状は限定されない。
【0057】
また、斜面47,78等によって可動片4が押される方向は、可動片4の長手方向である矢印A方向に限られない。斜面47,78の向きを変更することにより、任意の方向に設定できる。これに伴い、第1位置決め部75、係合部48、凹部76及び凸部79の位置等も適宜変更される。また、斜面47,78が設けられる位置は、段曲げ部46、段部77に限られず、可動片4が所定の方向に押される限り、任意の場所に配置することができる。
【0058】
また、第1位置決め部75は、樹脂ベース71の側壁のみならず、任意の位置に任意の形状で設けられていてもよい。例えば、可動片4が押される方向に対して垂直な方向に沿って連続して設けられていてもよい。これに伴い、第1位置決め部75に対応する係合部も移動・変形される。より具体的には、樹脂ベース71において段曲げ部46に対向する部分を段曲げ部46に対応する形状に形成し、これを第1位置決め部75としてもよい。この場合、段曲げ部46が係合部48に相当する。この場合においても、斜面47,78を挟んで可動片4が押される方向に対して垂直な方向に連続するように第1位置決め部75を形成することにより、可動片4の回転をより一層抑制できる。
【0059】
また、第1位置決め部75に当接して可動片4を位置決めする部分(以下、当接部)は、第1位置決め部75と係合する係合部48に限られることなく、第1位置決め部75と当接して可動片4を位置決めする構成であれば、特に限定されない。例えば、第1位置決め部75及び当接部が、凹部とそれに対応する凸部、切り欠きとそれに対応する凸部又は貫通穴とそれに対応する凸部で構成されていてもよい。これらの各構成は、第1位置決め部75に一方が形成され、当接部に他方が形成されていればよい。
【0060】
また、第2位置決め部の位置・形状についても同様である。例えば、樹脂ベース71に凸部を、カバー部材72に凹部を形成してもよい。この場合においても、斜面47,78を挟んで可動片4が押される方向に対して垂直な方向に連続するように第2位置決め部を形成することにより、カバー部材72の回転をより一層抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、安定した温度追従性と抵抗値を確保しつつ、ブレーカー1の小型化を図ることができる。また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0062】
また、斜面47及び斜面78は、その傾斜角度が一定である形態に限られず、傾斜角度が漸増又は漸減する形態であってもよい。また、樹脂ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材72によって構成される形態に限られることなく、2つの部品で構成される形態であれば他の形態であってもよい。この場合は、一方が第1ケース、他方が第2ケースとされる。
【0063】
また、特開2005−203277号公報に示されるような、固定部42又はその近傍において、端子41の側と可動接点3の側に分割されている構造に、本発明を適用してもよい。さらにまた、本発明は、特開2006−331705号公報に示されるような、2つの可動接点(同文献中、第1の接点141、第2の接点142)を有する形態にも適用可能である。