特許第5886618号(P5886618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886618
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】電子鍵盤楽器の鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10B 3/12 20060101AFI20160303BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20160303BHJP
   G10C 3/16 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   G10B3/12 130
   G10H1/34
   G10C3/16 100
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-275292(P2011-275292)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-125236(P2013-125236A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】石田 秀行
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−008972(JP,A)
【文献】 特開平09−265287(JP,A)
【文献】 特開2008−191568(JP,A)
【文献】 特開2006−039252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B 3/12
G10C 3/16
G10H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延び、中央付近を中心として揺動自在の鍵と、
ハンマー支点を中心として回動自在のハンマーと、
前記鍵および前記ハンマーの一方に設けられるとともに、前記鍵および前記ハンマーの他方に当接するキャプスタンスクリューと、を備え、
前記ハンマーは、前記キャプスタンスクリューを介して、前記鍵の後部に載置されるとともに、前記鍵の押鍵に伴い、当該鍵に突き上げられ、
前記キャプスタンスクリューを側方から見たときの、前記キャプスタンスクリューの鉛直に対する角度は、前記鍵が離鍵状態にあるときよりも、前記鍵が押しきられたときの方が小さく設定されていることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記鍵が離鍵状態にあるときに、前記ハンマー支点および前記ハンマーの重心が互いにほぼ同じ高さに位置していることを特徴とする、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動自在の鍵と、押鍵された鍵で突き上げられることによって回動するハンマーを備える電子鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子鍵盤楽器の鍵盤装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この鍵盤装置は、揺動自在の鍵と、回動自在のハンマーと、鍵の押鍵情報を検出するスイッチを備えており、ハンマーには、キャプスタンスクリューがねじ込まれている。ハンマーは、キャプスタンスクリューを介して、鍵に載置されている。鍵が押鍵されると、鍵は、キャプスタンスクリューを介して、ハンマーを突き上げる。これにより、ハンマーが回動し、スイッチを押圧することによって、押鍵情報が検出され、それに応じて楽音が発生する。また、キャプスタンスクリューを側方から見たときの、キャプスタンスクリューの鉛直に対する角度は、鍵が離鍵状態にあるときよりも、鍵を押しきったとき(押鍵の終了時)の方が大きく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3591579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種の鍵盤装置では、スイッチを押圧するハンマーの回動速度に応じて楽音の音量が制御されるので、豊かな演奏表現を得るためには、ハンマーの回動速度を細かく調整できるようにすることが好ましい。例えば、ピアニッシモのような弱音は、ハンマーをスイッチの付近まで一旦、回動させ、その状態からさらに回動させることにより、スイッチを押圧する際のハンマーの回動速度を小さくすることによって得ることができる。
【0005】
また、鍵盤装置の良好な演奏性を得るべく、演奏者がハンマーの回動速度を調整し易くするためには、鍵のタッチ重さ(演奏者の指先にかかる荷重)を適度な大きさに設定することが重要である。特に、弱音を適切に得るには、スイッチの付近まで回動したハンマーをさらに回動させるときのタッチ重さ、すなわち押鍵の終了直前におけるタッチ重さを、適度な大きさに設定することが重要である。ハンマーがキャプスタンスクリューを介して鍵に載置されているため、このタッチ重さは、キャプスタンスクリューを介して鍵に作用するハンマーの反力などによって定まる。また、ハンマーの反力は、ハンマーの自重によるものであり、主として鉛直に作用する。
【0006】
上述した従来の鍵盤装置では、キャプスタンスクリューの鉛直に対する角度が、鍵が離鍵状態にあるときよりも押鍵の終了時の方が大きく設定されている。このため、押鍵の終了直前に、鉛直に作用するハンマーの反力のうち、キャプスタンスクリューの軸に対して直角な方向の分力が大きくなることで、ハンマーの反力がキャプスタンスクリューを介して鍵に適切に伝達されなくなり、それによりタッチ重さが減少する。これにより、従来の鍵盤装置では、押鍵の終了直前に、タッチ重さが不足してしまい、その結果、ハンマーの回動速度を適切に調整できず、ひいては、良好な演奏性を得ることができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、押鍵時にタッチ重さを十分に確保でき、それにより、良好な演奏性を得ることができる電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、前後方向に延び、中央付近を中心として揺動自在の鍵と、ハンマー支点を中心として回動自在のハンマーと、鍵およびハンマーの一方に設けられるとともに、鍵およびハンマーの他方に当接するキャプスタンスクリューと、を備え、ハンマーは、キャプスタンスクリューを介して、鍵の後部に載置されるとともに、鍵の押鍵に伴い、鍵に突き上げられ、キャプスタンスクリューを側方から見たときの、キャプスタンスクリューの鉛直に対する角度は、鍵が離鍵状態にあるときよりも、鍵が押しきられたときの方が小さく設定されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、鍵が、前後方向に延びるとともに、中央付近を中心として揺動自在になっており、ハンマーが、ハンマー支点を中心として回動自在になっている。また、鍵およびハンマーの一方に設けられたキャプスタンスクリューが、鍵およびハンマーの他方に当接している。また、ハンマーは、キャプスタンスクリューを介して、鍵の後部に載置されるとともに、鍵の押鍵に伴い、鍵に突き上げられ、それにより上方に回動する。このように、ハンマーがキャプスタンスクリューを介して鍵に載置されているので、鍵には、ハンマーの自重による反力が作用し、ハンマーの反力は、主として鉛直に作用する。また、このハンマーの反力などによって、鍵のタッチ重さ(演奏者の指先にかかる荷重)が定まる。
【0010】
上述した構成によれば、キャプスタンスクリューを側方から見たときの、キャプスタンスクリューの鉛直に対する角度は、鍵が離鍵状態にあるときよりも、鍵が押しきられたとき、すなわち押鍵の終了時の方が小さく設定されている。これにより、鍵の押鍵時に、すなわち、押鍵が開始されてから終了されるまでの間にわたって、鉛直に作用するハンマーの反力のうち、キャプスタンスクリューの軸に対して直角な方向の分力を低減することができ、それにより、ハンマーの反力を、キャプスタンスクリューを介して鍵に適切に伝達することができる。したがって、押鍵時にタッチ重さを十分に確保でき、それにより、良好な演奏性を得ることができる。特に、前述した従来の鍵盤装置と異なり、押鍵の終了直前においてタッチ重さを十分に確保できるので、良好な演奏性をより有効に得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、鍵が離鍵状態にあるときに、ハンマー支点およびハンマーの重心が互いにほぼ同じ高さに位置していることを特徴とする。
【0012】
前述したように、ハンマーは、ハンマー支点を中心として回動自在であり、鍵に載置されている。このように、ハンマーは、ハンマー支点と鍵に支持されている。また、鍵が離鍵状態にあるときに、ハンマー支点がハンマーの重心よりも低い場合には、鉛直方向に作用するハンマーの重力(反力)のうち、ハンマーの長さ方向の分力が大きくなることで、ハンマー支点で支持される分が大きくなり、その分、鍵で支持される分が小さくなる。このため、鍵が押鍵されると、それによりハンマーが上方に回動するのに伴い、ハンマー支点が重心に対してさらに低くなるので、それによりハンマーの長さ方向の分力がさらに大きくなることで、鍵に作用するハンマーの反力は、さらに小さくなる。上述した構成によれば、鍵が離鍵状態にあるときに、ハンマー支点およびハンマーの重心が互いにほぼ同じ高さに位置しているので、ハンマー支点がハンマーの重心よりも低い場合と比較して、ハンマーの長さ方向の分力を低減でき、それにより、押鍵時に鍵に作用するハンマーの反力すなわちタッチ重さを増大させることができる。これにより、請求項1に係る発明による効果、すなわち、押鍵時にタッチ重さを十分に確保でき、それにより良好な演奏性を得ることができるという効果を、より有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を、鍵が離鍵状態にある場合において、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
図2図1の一部を拡大して示す側面図である。
図3図1の鍵盤装置を、鍵が押しきられた場合において、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
図4図3の一部を拡大して示す側面図である。
図5】比較例による電子ピアノの鍵盤装置を、鍵が離鍵状態にある場合において、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
図6図5の鍵盤装置を、鍵が押しきられた場合において、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
図7】比較例における、(a)クロスに直交する垂直線に対するキャプスタンスクリューの角度を示す図、(b)クロスに対するキャプスタンスクリューの接触面積を示す図である。
図8】本実施形態における、(a)クロスに直交する垂直線に対するキャプスタンスクリューの角度を示す図、(b)クロスに対するキャプスタンスクリューの接触面積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示す電子ピアノの鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向(図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2(白鍵2aおよび黒鍵2bを各1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部(図1の右端部)に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、押鍵された鍵2に連動して回動する多数のハンマー5(1つのみ図示)と、ハンマー5ごとに設けられ、鍵2の押鍵時にレットオフ感を付与するための多数のレットオフ部品6(1つのみ図示)と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7などで構成されている。
【0015】
鍵盤シャーシ3は、左右方向に延びる前レール9a、中レール9bおよび後レール9cから成る3本の支持レール9と、前後方向に延びる5本の補強用のリブ10とを、井桁状に組み立てたものであり、水平な棚板(図示せず)上に固定されている。これらの支持レール9およびリブ10はいずれも、プレスによる打抜きおよび折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成されている。支持レール9の板厚は、その軽量化のためにより薄く(例えば1.0mm)、リブ10の板厚は、補強のためにより厚く(例えば1.6mm)設定されている。
【0016】
前レール9aの下面および中レール9bの上面にはそれぞれ、筬前11および筬中12が固定されている。筬前11および筬中12は、合成樹脂から成る肉厚の板状のものであり、前レール9aおよび中レール9bの全体にわたって左右方向に延びている。筬中12には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のバランスピン13が、左右方向に並んだ状態で立設されている。また、筬前11には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のフロントピン14が、左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0017】
鍵2は、前後方向に延びるとともに矩形状の横断面を有する木製の鍵本体15と、その前部の上面および前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー16で構成されている。鍵本体15の前後方向の中央には、バランスピン孔17が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔17を介して、バランスピン13に揺動自在に支持されている。また、鍵本体15の前端部には、フロントピン孔18が形成されており、このフロントピン孔18がフロントピン14に係合することによって、鍵2が回動する際の左右方向のぶれが防止される。また、鍵2の後端部の上面には、フェルトなどで構成されたクロスCが貼り付けられている。
【0018】
ハンマーサポート4は、合成樹脂で構成され、例えば1オクターブ分の複数の成形品を互いに連結したものであり、すべてのハンマー5にわたるように左右方向に延びており、鍵盤シャーシ3の後レール9cにねじ止めされている。ハンマーサポート4は、この後レール9c付近から直立するハンマー支持部19と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部20などで構成されている。ハンマー支持部19の上端部には、各ハンマー5を支持するためのピン状のハンマー支点21が形成されている。
【0019】
ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体22と、その左右の側面の前端部に取り付けられた錘板23(1つのみ図示)を有する。ハンマー本体22は合成樹脂の成形品で構成され、錘板23は、比重が比較的大きな鉄などの金属材料で構成されている。ハンマー本体22の後端部には、円弧状の軸穴24が形成されており、ハンマー5は、この軸穴24がハンマー支点21に係合することによって、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。鍵2が離鍵状態にあるときには、ハンマー支点21およびハンマー5の重心GGは、互いにほぼ同じ高さに位置している(図2参照)。
【0020】
また、ハンマー本体22の下面には、軸穴24のすぐ前側の位置に、キャプスタンスクリュー25が進退自在にねじ込まれている。キャプスタンスクリュー25は、正面から見て、鉛直に延びており、クロスCを介して鍵2の後端部に当接している。ハンマー5は、このキャプスタンスクリュー25を介して、鍵2の後端部に載置されている。図2に示すように、鍵2が離鍵状態にあるときには、キャプスタンスクリュー25は、鉛直に対して前方に若干、傾いており、この場合における、キャプスタンスクリュー25を側方(左右方向の一方)から見たときの、キャプスタンスクリュー25の鉛直に対する角度(以下「キャプスタン角度」という)は、第1所定値θ1に設定されている。
【0021】
また、ハンマー本体22の上面の軸穴24とキャプスタンスクリュー25との間の部分は、押鍵時に鍵スイッチ7を作動させるためのアクチュエータ部26になっている。さらに、ハンマー本体22の上面の前後方向の中央には、押鍵時にレットオフ部品6に係合する板状の係合突起27が設けられている。
【0022】
レットオフ部品6は、所定の弾性材料(例えば、スチレン系の熱可塑性エラストマーなど)の成形品で構成されており、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20に取り付けられている。レットオフ部品6は、スイッチ取付部20から後ろ下がりに斜めに延びておりその先端部には、くびれ部を介して頭部28が形成されている。この頭部28は、離鍵状態において、ハンマー5の係合突起27に対向している。
【0023】
また、鍵スイッチ7は、プリント基板から成るスイッチ基板29と、このスイッチ基板29の下面に、鍵2ごとに設けられたゴムスイッチから成るスイッチ本体30で構成されている。スイッチ基板29は、その後端部がスイッチ取付部20に差し込まれるとともに、中央の部分で、スイッチ取付部20にねじ止めされている。また、スイッチ本体30は、スイッチ基板29の下面に取り付けられており、離鍵状態において、ハンマー5のアクチュエータ部26に若干の間隔をもって対向している。さらに、スイッチ取付部20の下面の前端部には、上方へのハンマー5の回動を規制する、発泡ウレタンなどで構成されたハンマーストッパ31が設けられている。
【0024】
次に、上記構成の鍵盤装置1の動作について説明する。図1に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2は、バランスピン13を中心として、同図の反時計方向に揺動し、それに伴い、ハンマー5は、キャプスタンスクリュー25を介して鍵2に突き上げられ、ハンマー支点21を中心として、上方(同図の時計方向)に回動する。それに伴い、キャプスタンスクリュー25は、そのキャプスタン角度(側方から見たときの、キャプスタンスクリュー25の鉛直に対する角度)を変化させながら、クロスCに沿って前方に摺動する。
【0025】
このハンマー5の回動の途中で、その係合突起27が、レットオフ部品6の頭部28に係合し、頭部28を介してレットオフ部品6を圧縮させながら押圧することにより、レットオフ部品6からハンマー5に作用する反力が増大する。ハンマー5の回動が進むと、係合突起27が頭部28から外れることで、レットオフ部品6からの反力が急激に消失する。このようなレットオフ部品6の反力の増大と消失によって、アコースティックピアノに近似したレットオフ感が得られる。
【0026】
そして、図3に示すように、鍵2が押しきられると、ハンマー5がハンマーストッパ31に当接することによって、上方へのハンマー5の回動が終了する。また、上方へのハンマー5の回動の間、そのアクチュエータ部26が鍵スイッチ7のスイッチ本体30を押圧し、鍵スイッチ7をONすることによって、ハンマー5の回動速度に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0027】
その後、鍵2が離鍵されると、鍵2は押鍵時と反対方向に揺動し、図1に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー5も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0028】
また、図4に示すように、鍵2が押しきられたときには、キャプスタンスクリュー25は、鉛直に対して後方に若干、傾いており、この場合におけるキャプスタン角度は、第2所定値θ2である。この第2所定値θ2は、図4と前述した図2との比較から明らかなように、鍵2が離鍵状態にあるときにキャプスタン角度として設定された第1所定値θ1よりも小さく設定されている。
【0029】
このように、本実施形態によれば、キャプスタン角度(キャプスタンスクリュー25を側方から見たときの、キャプスタンスクリュー25の鉛直に対する角度)は、鍵2が離鍵状態にあるとき(第1所定値θ1)よりも、押しきられたとき(第2所定値θ2)、すなわち押鍵の終了時の方が小さく設定されている。これにより、鍵2の押鍵時に、すなわち、押鍵が開始されてから終了されるまでの間にわたって、鉛直に作用するハンマー5の反力のうち、キャプスタンスクリュー25の軸に対して直角な方向の分力を低減することができ、それにより、ハンマー5の反力を、キャプスタンスクリュー25を介して鍵2に適切に伝達することができる。したがって、押鍵時にタッチ重さを十分に確保でき、それにより、良好な演奏性を得ることができる。特に、前述した従来の鍵盤装置と異なり、押鍵の終了直前においてタッチ重さを十分に確保できるので、良好な演奏性をより有効に得ることができる。
【0030】
また、鍵2が離鍵状態にあるときに、ハンマー支点21およびハンマー5の重心GGが互いにほぼ同じ高さに位置しているので、ハンマー支点21がハンマー5の重心GGよりも低い場合と比較して、ハンマー5の反力(重力)のうち、ハンマー5の長さ方向の分力を低減でき、それにより、押鍵時に鍵2に作用するハンマー5の反力を増大させることができる。これにより、上述した効果、すなわち、押鍵時にタッチ重さを十分に確保でき、それにより良好な演奏性を得ることができるという効果を、より有効に得ることができる。
【0031】
さらに、本実施形態による鍵盤装置1とは異なり、鍵が離鍵状態にあるとき、および押しきられたときのいずれにも、キャプスタンスクリューが前方に傾くように構成した場合、あるいは、鍵が離鍵状態にあるときにキャプスタンスクリューが前方に傾くとともに、押しきられたときに垂直になるように構成した場合には、鍵が離鍵状態にあるときのキャプスタン角度は、非常に大きくなる。それにより、押鍵の初期に、キャプスタン角度が大きくなる結果、ハンマーの反力がキャプスタンスクリューを介して鍵に適切に伝達されなくなり、ひいては、タッチ重さが不足してしまう。これに対して、本実施形態によれば、図1および図3に示すように、キャプスタンスクリュー25は、鉛直に対して、鍵2が離鍵状態にあるときには前方に、押しきられたときには後方に、それぞれ傾いている。これにより、鍵2が離鍵状態にあるときのキャプスタン角度が小さくなるので、それにより、押鍵の初期にタッチ重さを十分に得ることができる。
【0032】
また、図5および図6は、比較例による電子ピアノの鍵盤装置51を示している。この鍵盤装置51は、本実施形態による鍵盤装置1とほぼ同様に構成されているので、その構成および動作について、以下、簡単に説明する。鍵盤装置51は、電子ピアノの左右方向(図5の表裏方向)に並んだ多数の鍵52(白鍵52aおよび黒鍵52bを各1つのみ図示)と、これらの鍵52を、その中央部において揺動自在に支持する鍵盤シャーシ53と、この鍵盤シャーシ53の後端部(図5の右端部)に連結されたハンマーサポート54と、鍵52ごとに設けられた多数のハンマー55(1つのみ図示)と、ハンマー55ごとに設けられた多数のレットオフ部品56(1つのみ図示)と、鍵52の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ57などで構成されている。
【0033】
鍵52の後端部は、その上面に切欠きが設けられ、階段状に形成されており、この切欠き部分の上面には、クロスCが貼り付けられている。ハンマー55の後端部には、円弧状の軸孔55aが形成されており、ハンマー55は、この軸孔55aがハンマーサポート54のハンマー支点54aに係合することによって、ハンマーサポート54に回動自在に支持されている。また、ハンマー55の下面には、軸孔55aのすぐ前側の位置に、キャプスタンスクリュー58がねじ込まれており、キャプスタンスクリュー58は、上記のクロスCを介して鍵52の後端部に当接している。ハンマー55は、このキャプスタンスクリュー58を介して、鍵52の後端部に載置されている。
【0034】
以上の構成の鍵盤装置51では、図5に示す離鍵状態から鍵52が押鍵されると、鍵52は、その前後方向の中央部を中心として、同図の反時計方向に揺動し、それに伴い、ハンマー55は、キャプスタンスクリュー58を介して突き上げられ、ハンマー支点54aを中心として、上方(同図の時計方向)に回動する。それに伴い、キャプスタンスクリュー58は、側方から見たときの、鉛直に対する角度を変化させながら、クロスCに沿って前方に摺動する。
【0035】
そして、図6に示すように、鍵52が押しきられると、ハンマー55が、上方に設けられたハンマーストッパ59に当接することによって、上方へのハンマー55の回動が終了する。また、上方へのハンマー55の回動の間、ハンマー55のアクチュエータ部55bが鍵スイッチ57を押圧し、鍵スイッチ57をONすることによって、ハンマー55の回動速度に応じた鍵52の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0036】
その後、鍵52が離鍵されると、鍵52は押鍵時と反対方向に揺動し、図5に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー55も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0037】
図7(a)に示すように、鍵52が押しきられたときにおける、キャプスタンスクリュー58を側方から見たときの、クロスCに直交する垂直線に対するキャプスタンスクリュー58の角度θaは、比較的大きくなっている。このため、図7(b)に示すように、鍵52が押しきられたときにおける、クロスCに対するキャプスタンスクリュー58の接触面積Saは、比較的小さくなっている。
【0038】
これに対して、本実施形態による鍵盤装置1では、図8(a)に示すように、鍵2が押しきられたときにおける、キャプスタンスクリュー25を側方から見たときの、クロスCに直交する垂直線に対するキャプスタンスクリュー25の角度θbは、図7(a)に示す比較例の場合(θa)よりも小さくなっている。このため、図8(b)に示すように、鍵2が押しきられたときにおける、クロスCに対するキャプスタンスクリュー25の接触面積Sbは、図7(b)に示す比較例の場合(Sa)よりも大きくなっている。これにより、鍵2の押鍵時、キャプスタンスクリュー25がクロスCに沿って摺動しているときに、クロスCに対するキャプスタンスクリュー25の真実接触面積を増大させることができるので、両者25、Cの間の摩擦を増大させることができ、それにより、より大きなタッチ重さを得ることができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、キャプスタンスクリュー25は、ハンマー5に設けられるとともに、鍵2に当接しているが、これとは逆に、鍵2に設けるとともに、ハンマー5に当接してもよい。また、実施形態では、鍵2が離鍵状態にあるときには前方に、押しきられたときには後方に、キャプスタンスクリュー25がそれぞれ傾くように構成しているが、鍵2が離鍵状態にあるときよりも、押しきられたときの方が、キャプスタン角度(側方から見たときの、鉛直に対する角度)が小さくなるのであれば、キャプスタンスクリュー25を次のようにして構成してもよい。すなわち、鍵2が離鍵状態にあるとき、および押しきられたときのいずれにも、キャプスタンスクリュー25が前方に傾くように構成してもよく、あるいは、鍵2が離鍵状態にあるときにキャプスタンスクリュー25が前方に傾くとともに、押しきられたときに垂直になるように構成してもよい。
【0040】
さらに、実施形態は、電子ピアノの鍵盤装置1に、本発明を適用した例であるが、本発明は、これに限らず、他の適当な電子鍵盤楽器、例えばシンセサイザーの鍵盤装置にも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 鍵盤装置
2 鍵
5 ハンマー
21 ハンマー支点
25 キャプスタンスクリュー
GG ハンマーの重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8