(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2部材は、前記第1部材が配される第1開口を有し、かつ、前記クラウン部において、前記第1開口を囲んで環状にのびる第1周縁部を有する請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
前記第2部材は、前記第1部材が配される第1開口を有し、かつ、前記ソール部において、前記第1開口を囲んで環状にのびる第1周縁部を有する請求項5記載のゴルフクラブヘッド。
ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、ヘッド上面をなすクラウン部と、ヘッド底面をなすソール部とを含み、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部は、金属材料からなるフェース部材にて形成され、
前記クラウン部及び前記ソール部は、それぞれ金属材料からなる第1部材と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材を前記フェース部材と接触させることなく保持する第2部材とを含み、
ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzであり、かつ、1次固有モードの振動の腹が前記クラウン部の前記第1部材及び前記ソール部の前記第1部材に位置することを特徴とするゴルフクラブヘッド。
前記第2部材は、前記第1部材が配される第1開口を有し、かつ、前記クラウン部及びソール部のそれぞれにおいて、前記第1開口を囲んで環状にのびる第1周縁部を有する請求項9記載のゴルフクラブヘッド。
前記第2部材は、前記フェース部材の後方において、前記クラウン部、前記ソール部、及び、前記クラウン部と前記ソール部との間のサイド部とを構成する前側に前側開口を有するカップ状である請求項9又は10に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ヘッドの1次固有振動数を規定するとともに、1次固有モードの振動の腹をクラウン部及び/又はソール部の金属材料からなる第1部材に位置させることを基本として、打球の方向安定性に優れかつ、打球音のフィーリングを向上させた複合タイプのゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、ヘッド上面をなすクラウン部とを含み、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部は、金属材料からなるフェース部材にて形成され、前記クラウン部は、金属材料からなる第1部材と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材を前記フェース部材と接触させることなく保持する第2部材とを含み、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzであり、かつ、1次固有モードの振動の腹が前記クラウン部の前記第1部材に位置することを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記第2部材は、前記第1部材が配される第1開口を有し、かつ、前記クラウン部において、前記第1開口を囲んで環状にのびる第1周縁部を有する請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記第2部材は、板状である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、ウッド型である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
また請求項5記載の発明は、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、ヘッド底面をなすソール部とを含み、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部は、金属材料からなるフェース部材にて形成され、前記ソール部は、金属材料からなる第1部材と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材を前記フェース部材と接触させることなく保持する第2部材とを含み、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzであり、かつ、1次固有モードの振動の腹が前記ソール部の前記第1部材に位置することを特徴とするゴルフクラブヘッドである。
【0011】
また請求項6記載の発明は、前記第2部材は、前記第1部材が配される第1開口を有し、かつ、前記ソール部において、前記第1開口を囲んで環状にのびる第1周縁部を有する請求項5記載のゴルフクラブヘッドである。
【0012】
また請求項7記載の発明は、前記第2部材は、板状である請求項5又は6に記載のゴルフクラブヘッドである。
【0013】
また請求項8記載の発明は、ウッド型である請求項5乃至7のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0014】
また請求項9記載の発明は、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、ヘッド上面をなすクラウン部と、ヘッド底面をなすソール部とを含み、かつ、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部は、金属材料からなるフェース部材にて形成され、前記クラウン部及び前記ソール部は、それぞれ金属材料からなる第1部材と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材を前記フェース部材と接触させることなく保持する第2部材とを含み、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzであり、かつ、1次固有モードの振動の腹が前記クラウン部の前記第1部材及び前記ソール部の前記第1部材に位置することを特徴とするゴルフクラブヘッドである。
【0015】
また請求項10記載の発明は、前記第2部材は、前記第1部材が配される第1開口を有し、かつ、前記クラウン部及びソール部のそれぞれにおいて、前記第1開口を囲んで環状にのびる第1周縁部を有する請求項9記載のゴルフクラブヘッドである。
【0016】
また請求項11記載の発明は、前記第2部材は、前記フェース部材の後方において、前記クラウン部、前記ソール部、及び、前記クラウン部と前記ソール部との間のサイド部とを構成する前側に前側開口を有するカップ状である請求項9又は10に記載のゴルフクラブヘッドである。
【0017】
また請求項12記載の発明は、ウッド型である請求項9乃至11のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃するフェースを前面に有するフェース部と、ヘッド上面をなすクラウン部とを含み、かつ、内部に中空部が設けられる。そして、前記フェース部は、金属材料からなるフェース部材にて形成され、前記クラウン部は、金属材料からなる第1部材と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材を前記フェース部材と接触させることなく保持する第2部材とを含む。このようなヘッドは、クラウン部に繊維強化樹脂が配されるため、重量マージンを利用して、ヘッドの体積を大きくすることが可能となり、ひいてはヘッドの慣性モーメントが大きくなる。また、クラウン部が、金属材料からなる第1部材を有して形成されているため、打球音が高く維持される。さらに、第1部材がフェース部材と接触(連設)していないため、金属材料からなる第1部材が自由振動できる。これにより、打球音の残響が長く継続する。
【0019】
また、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzで規定される。このようなヘッドは、打球音が心地良い高さで確保される。また、1次固有モードの振動の腹が前記クラウン部の前記第1部材に位置する。即ち、ヘッドの最も振動し易い位置に金属材料が配されるため、打球音の残響がさらに長く継続する。従って、本発明のゴルフクラブヘッドは、打球の方向安定性が優れるとともに、打球音のフィーリングが向上する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態(第1の実施形態)が図面に基づき説明される。
図1乃至4には、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1の基準状態が示される。ここで、ヘッド1の基準状態とは、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ規定のライ角α(図示省略)で傾けるとともにフェース2のスイートスポットSSをロフト角βに保持(フェース角は零にセットされる)して水平面HPに接地させた状態とする。特に言及されていない場合、クラブヘッド1は、この基準状態にあるものとする。なお、ロフト角は0度よりも大きい角度として与えられる。また、本明細書において、フェース・バックフェース方向とは、
図2に示されるように、基準状態における平面視において、ヘッド重心Gからフェース2に下ろした法線Nと平行な方向THとする。また、トウ・ヒール方向とは、前記平面視における法線Nと直角な方向TKとする。なお、前記法線Nとフェース2との交点が前記スイートスポットSSになる。
【0022】
前記ヘッド1は、ボールを打撃する打撃面をなすフェース2を有するフェース部3と、このフェース2の上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間を継ぎ前記フェース2のトウ側縁2cからバックフェースBFを通り前記フェース2のヒール側縁2dにのびるサイド部6と、前記クラウン部4のヒール側に設けられかつゴルフクラブシャフト(図示省略)の先端が挿入される円筒状のシャフト差込孔7aを有するホーゼル部7とが設けられる。なお、このホーゼル部7のシャフト差込孔7aに、ゴルフクラブシャフトが取り付けられて、ゴルフクラブ(図示省略)が構成される。
【0023】
前記ヘッド1は、内部に中空部iが設けられた中空構造を具え、好ましくはウッド型として構成される。なお、ウッド型のゴルフクラブヘッドとは、少なくともドライバー(#1)、ブラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)及びクリーク(#5)を含み、かつこれらとは番手ないし名称が異なるが、ほぼ類似した形状を持つヘッドをも含む概念である。
【0024】
特に限定されるものではないが、ヘッド1の体積Vは、好ましくは200cm
3 以上、より好ましくは220cm
3 以上が望ましい。このような大きい体積は、ヘッド1の慣性モーメントや重心をより深くするのに役立つ。他方、クラブヘッド1の体積が大きすぎても、ヘッド重量の増加、スイングバランスの悪化及びゴルフ規則違反等の問題があるため、好ましくは460cm
3 以下が望ましい。
【0025】
また、ヘッド1の質量は、小さすぎるとヘッドの運動エネルギーが小さくなり、飛距離の向上が期待できない傾向がある。逆に、質量が大きすぎると、振り切るのが困難となり、打球の方向安定性や飛距離が悪化する傾向がある。このような観点より、ヘッド1の質量は、好ましくは180g以上、より好ましくは185g以上が望ましく、また好ましくは210g以下、より好ましくは205g以下が望ましい。
【0026】
本実施形態のクラブヘッド1は、金属材料からなりかつクラウン部4にクラウン開口Ocが設けられたヘッド本体1Aと、前記クラウン開口Ocを閉じるクラウン部材1Bとを含み、これらが接合されて構成されている。
【0027】
本実施形態において、前記クラウン開口Ocは、クラウン部4からはみ出すことなくその領域の中に収められている。これにより、前記ヘッド本体1Aは、
図4に良く示されるように、前記フェース部3、前記ソール部5、前記サイド部6、前記ホーゼル部7及びクラウン部4においてクラウン開口Ocの周りを形成するクラウン縁部8とを有する。ただし、クラウン開口Ocは、例えばクラウン部4とサイド部6とを跨るように設けても良いのは言うまでもない。
【0028】
本実施形態では、ヘッド本体1Aは、生産性を向上させる観点から、フェース部3を形成するフェース部材Fと、ソール部5、サイド部6、ホーゼル部7及び前記クラウン縁部8を形成する各部材とが、予め一体に成形された一つの鋳造品(より詳しくはロストワックス精密鋳造品)で形成されるのが望ましい。なお、ヘッド本体1Aは、前記フェース部材Fと前記各部材とが、鍛造や鋳造、圧延材等の2以上の曲げ加工品等の接合により製造されてもよいのは言うまでもない。
【0029】
このようなヘッド本体1Aを形成する金属材料としては、特に限定されるものではないが、好ましくはステンレス鋼、マルエージング鋼、純チタン又はチタン合金等が望ましい。
【0030】
前記クラウン開口Ocの輪郭形状は特に限定されないが、応力の集中などを防止するために、本実施形態のように、クラウン部4の輪郭にほぼ沿うような滑らかな曲線で形成されたものが望ましい。
【0031】
図3に良く示されるように、前記クラウン縁部8は、実質的にクラウン部4の外面4a(仕上がり面)を形成する主部9と、前記外面4aからステップ状に凹んで設けられるとともにクラウン部材1Bの内面1Bi及び周縁部1Bsと重ねられてこれを支える受け部10とを含む。なおクラウン部材1Bの内面1Biとは、ヘッド1の中空部i側を向く面である。
【0032】
本実施形態において、前記主部9及び受け部10は、クラウン部材1Bの周縁への応力集中を防止するため、いずれもクラウン開口Ocの周りを環状に連続して設けられる。
【0033】
前記クラウン部材1Bは、金属材料からなる第1部材11と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材11を前記フェース部材F(本実施形態では、ヘッド本体1A)と接触させることなく保持する第2部材12とを含んで形成される。これにより、繊維強化樹脂からなる第2部材12が、大きな重量マージンを生じさせるため、ヘッドの体積を大きくすることが可能となり、ひいてはヘッド1の慣性モーメントが大きくなる。また、金属材料からなる第1部材11がクラウン部4に設けられているため、打球音が高く維持される。さらに、フェース部材Fと第1部材11とが接触することがない(連設されていない)ため、第1部材11をフェース部材Fとは切り離して自由振動させることができる。これによって、さらに打球音が高く、かつ残響音を長くする。さらに第2部材12をより大きく形成することができ、さらに重量マージンを確保することができる。即ち、本実施形態のヘッド1では、打球音の維持と重量マージンの増加とがバランスよく高められる。また、クラウン部4の一部が第2部材12で構成されることにより、ヘッド上部側で大きな重量削減効果が得られヘッド1が低重心化される。
【0034】
なお、本明細書では、「慣性モーメント」とは、基準状態におけるヘッド重心Gを通る垂直軸A1(
図3に示す)周りの慣性モーメント(以下、単に「左右の慣性モーメント」という。)Maをいうものとする。
【0035】
図4に良く示されるように、本実施形態の第1部材11は、前記クラウン部4の外面4aを形成する外表面11aと、第2部材12に嵌合されかつ該外表面11aからステップ状に凹むステップ面11bとを有し、断面視、略凸状に形成される。
【0036】
本実施形態の第2部材12は、第1部材11が配される第1開口O1と、該第1開口O1を囲んで環状にのびる第1周縁部13とを含み、かつ板状に形成される。即ち、本実施形態では、前記第1周縁部13によって、第1部材11とフェース部材Fとの接触が抑制される。
【0037】
第1部材11のステップ面11bと第2部材12の第1周縁部13とは、例えば接着剤などで固着されるのが望ましい。
【0038】
前記第1部材11を形成する金属材料としては、特に限定されるものではないが、打球音を高く維持するため、例えば、チタン合金、ステンレス合金、マグネシウム合金及びアルミニウム合金等が望ましい。
【0039】
前記第2部材12を形成する繊維強化樹脂に用いられる樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。
【0040】
また、繊維強化樹脂に用いられる強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維又はアルミナ繊維等の無機繊維、ポリエチレン又はポリアミド等の有機繊維、さらには金属繊維が挙げられ、これらの1種又は複数種類の繊維を用いることができる。
【0041】
強化繊維の弾性率については、耐久性や引張強度を確保する観点より、50GPa以上、より好ましくは100GPa以上が望ましく、また、好ましくは450GPa以下、より好ましくは350GPa以下が望ましい。また繊維の弾性率は引張弾性率であって、JISR7601の「炭素繊維試験方法」に準じて測定された値とする。また2種以上の繊維が含まれている場合には、下記式(1)で表されるように、それぞれの繊維の弾性率を、その重量比で重み付けして計算した平均弾性率とする。
平均弾性率=Σ(Ei・Vi)/ΣVi (i=1,2…)
(ここで、Eiは繊維の弾性率、Viは繊維の総重量とする。)
【0042】
また、第2部材には、種々の方法で成形しうる。例えば、未硬化ないし半硬化状態のプリプレグシートの複数枚を重ね合わせた積層体を、金型等の中で熱と圧力とを作用させて所望の形状に成形しかつ硬化させることで製造することができる。なお、第2部材12は、前記クラウン開口Ocの受け部10に配され、例えば接着剤等によりヘッド本体1Aと一体に接合される。
【0043】
また、本実施形態のヘッド1は、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzに規定される必要がある。これにより、打球音が心地良い高さで確保されるため、打球フィーリングが向上する。すなわち、前記1次固有振動数が3800Hz未満になると、打球音が過度に低くなり、ゴルファーに打球の飛距離が低下する感じを与える。逆に、前記1次固有振動数が6500Hzを超えると、打球音が過度に高くなり、ゴルファー耳障りな感じを与える。このため、前記1次固有振動数は、好ましくは4000Hz以上、より好ましくは4300Hz以上が望ましく、また好ましくは6000Hz以下、より好ましくは5500Hz以下が望ましい。
【0044】
また、本実施形態では、1次固有モードの振動の腹が、クラウン部4の金属材料からなる第1部材に位置する必要がある。即ち、振動の腹は、最も振動の振幅が大きく、かつ、最も振動しやすい位置であるが、この位置に、フェース部材Fと切り離された金属材料が配されるため、打球音の残響が長く継続し、打球音のフィーリングがさらに向上する。
【0045】
上述の作用をより効果的に発揮させるため、1次固有モードの腹が、第1部材11の重心(前記基準状態の平面図での図心)Za(
図2に示す)に位置することが望ましい。
【0046】
なお、「ヘッドの1次固有振動数」とは、モード解析で得られるヘッド全体における固有振動数のうち、最小の固有振動数をいう。また、「固有モード」とは、「物体に固有の振動形態」をいう。即ち、「1次固有モード」とは、モード解析で得られるヘッド全体における最小の固有の振動形態である。
【0047】
前記「モード解析」には、試験解析(実験モード解析とも称される)又はシミュレーション解析が用いられ得る。試験解析では、加振実験を行い、この実験の結果に基づいて、固有モードが求められる。シミュレーション解析では、例えば、有限要素法などの数値解析により、固有モードが求められる。なお、このようなモード解析は、拘束条件がフリーとされる自由支持条件で行われるのが望ましい。
【0048】
前記試験解析では、例えば、ヘッドのいずれかの部位(例えばネック端面)に糸を取り付け、ヘッドを糸につるした状態で、ヘッド各部をインパクトハンマーで叩き、フェース中心の加速度応答との伝達関数を計測することで、固有モードが求められる。
【0049】
前記シミュレーション解析では、例えば、市販の固有値解析ソフトウェアが用いられる。このようなソフトウェアとして、例えば、商品名「ABAQUS」(ABAQUSINC.製)、MARC(MSC SOFT社製)及び商品名「IDEAS」(EDS PLM Solutions社製)などが好ましい。そして、ゴルフクラブヘッド1の外形、各部分の肉厚、材料の種類(物性)等の諸元が変数として用いられる。なお、
図5には、
図1のヘッドを有限要素法によりシミュレーション解析したクラウン部4の1次固有モードの結果が示される。この図には、1次固有モードの振動における、最大振幅に対する振幅比Siが等しい振幅等高線が示される(t1は、Si=90%、t2は、Si=70%、t3は、Si=50%、t4は、Si=30%、t5は、Si=10%)。また、
図5には、1次固有モードの最も振幅が大きい最大振幅点Pe1が示されている。このように、モード解析により固有モード、ひいては固有モードの振動の腹を求めることができる。
【0050】
なお、上述のモード解析により、クラウン部4のみならず、ソール部5、サイド部6、及びフェース部3の各部における固有モード、固有モードの振動の腹を求めることができる。
【0051】
このようなモード解析の結果を踏まえ、種々の実験により、前記第1部材11を振動の腹に位置させること、即ち、前記基準状態の平面視において、第1部材11は、前記振幅比が大きくとも70%以上の領域内に金属材料が配されるのが望ましいことが判明した。即ち、第1部材11が振幅比Siの小さい振幅等高線tを含んで形成されると、重量マージンを確保できず、慣性モーメントを大きくできないおそれがある。逆に、第1部材11が振幅比Siの大きな振幅等高線tだけを含んで形成されると、打球音の残響が低減して、打球音のフィーリングが悪化するおそれがある。このため、第1部材11は、前記振幅比が小さくとも90%の領域内には金属材料が配されるのが望ましい。
【0052】
上述の作用をより、効果的に発揮させるため、
図2に示されるように、第1部材11の前記平面図における面積は、好ましくは300mm
2以上、より好ましくは450mm
2以上が望ましく、また好ましくは1200mm
2以下、より好ましくは1000mm
2以下が望ましい。同様の観点より、第1部材11の質量は、好ましくは1.0g以上、より好ましくは2.0g以上が望ましく、また好ましくは6.0g以下、より好ましくは5.0g以下が望ましい。
【0053】
また、
図2に示されるように、本実施形態の第1部材11の前記平面図における形状は、打球時の振動を効果的に反射させて、残響を長く確保しつつ第2部材12の剛性を高く確保するため、楕円形状に形成されるのが望ましい。とりわけ、第1部材11の長径raに対する短径rbの比rb/raは、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上が望ましく、また好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下が望ましい。なお、第1部材11の形状は、このような態様に限定されるものではなく、円形状でもよい。
【0054】
また、前記作用をより効果的に発揮させるため、第1部材11の長径raのトウ・ヒール方向TKに対する角度θ(
図2に示す)は 、好ましくは13°以下、より好ましくは7°以下が望ましい。
【0055】
また、第2部材12は、十分な重量マージンを確保しつつ、クラウン部4の耐久性を確保するために、
図2の平面視における面積が、好ましくは20〜80cm
2であるのが望ましい。
【0056】
また、
図6には、本発明の他の実施形態のヘッド1が示される。このヘッド1は、金属材料からなりかつソール部5からはみ出すことなくその領域の中に収められているソール開口Osが設けられたヘッド本体1Aと、前記ソール開口Osを閉じる板状のソール部材1Cとを含み、これらが接合されて構成されている。ヘッド本体1Aは、フェース部3を形成するフェース部材Fと、クラウン部4、サイド部6、ホーゼル部7及びソール開口Osの周りに設けられるソール縁部14を形成する各部材とが、予め一体に成形された一つの鋳造品(より詳しくはロストワックス精密鋳造品)で形成される。また、ソール部材1Cは、金属材料からなる第1部材11と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材11を前記フェース部材F(本実施形態では、ヘッド本体1A)と接触させることなく保持する第2部材12とを含んで構成される。
【0057】
そして、このヘッド1においても、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzに規定され、かつ1次固有モードの振動の腹が、ソール部5の第1部材11に位置する必要がある。
【0058】
また、
図7には、本発明のさらに他の実施形態のヘッド1が示される。このヘッド1は、フェース部3を構成するフェース部材Fと、前側に前記フェース部材Fが固着される後側部1Dとから形成される。
【0059】
本実施形態のフェース部材Fは、金属材料からなるフェース部3と、フェース2の前記各縁2a乃至2dからヘッド後方に小長さでのびる延長部15と、ホーゼル部7とを含む。前記延長部15は、クラウン側の延長部15a、ソール側の延長部15b、トウ側の延長部15c、及びヒール側の延長部15dを含む。
【0060】
本実施形態の後側部1Dは、クラウン部4、ソール部5及びサイド部6それぞれの後側の主要部を形成するクラウン後部4b、ソール後部5b及びサイド後部6bを一体に有するとともに、前側に前記延長部15が嵌合される前側開口Ofを有するカップ状に形成される。
【0061】
また、後側部1Dは、金属材料からなる第1部材11と、繊維強化樹脂からなりかつ前記第1部材11を前記フェース部材Fと接触させることなく保持する第2部材12とを含んで形成される。
【0062】
本実施形態の第1部材11は、クラウン部4及びソール部5のそれぞれに配されるクラウン側の第1部材16、ソール側の第1部材17とからなる。該クラウン側の第1部材16は、クラウン部4の外面4aを形成する外表面16aと、第2部材12に嵌合されかつ該外表面16aからステップ状に凹むステップ面16bとを有する。また、ソール側の第1部材17も、ソール部5の外面5aを形成する外表面17aと、第2部材12に嵌合されかつ該外表面17aからステップ状に凹むステップ面17bとを有する。
【0063】
本実施形態の第2部材12は、クラウン側の第1部材16が配される第1開口O1と、該第1開口O1を囲んで環状にのびる第1周縁部13と、ソール側の第1部材17が配される第2開口O2と、該第2開口O2を囲んで環状にのびる第2周縁部18とを含む。即ち、本実施形態では、前記第1周縁部13によって、クラウン側の第1部材16とフェース部材Fとの接触が抑制され、第2周縁部18によって、ソール側の第1部材17とフェース部材Fとの接触が抑制される。
【0064】
そして、このヘッド1でも、ヘッドの1次固有振動数が3800〜6500Hzに規定され、かつ1次固有モードの振動の腹が、クラウン側の第1部材16及びソール側の第1部材17に位置する必要がある。即ち、この実施形態では、クラウン部4及びソール部5のそれぞれの領域内において、1次固有モードの各振動の腹が求められる。
【0065】
この実施形態のヘッド1では、第2部材12がさらに大きな重量マージンを生じさせ、ヘッド1の慣性モーメントをより一層大きくして、方向安定性が向上するとともに、打球音を心地良い高さで確保しつつその残響が長く継続するため、打球音のフィーリングが高められる。
【0066】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定させることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。例えば、
図8(a)に示されるように、第1部材11が第2部材12の内部に埋設されるような態様でも構わない。これにより、打球音の残響向上効果を過度に低減することなく、クラウン部4の剛性を高めることができる。また、
図8(b)に示されるように、内外2枚に分割された第1部材11x、11yによって、前記第1周縁部13を挟み込む態様のものでもよい。また、
図8(a)、(b)に示される態様は、ソール部5に配された第1部材11を形成するものであってもよいのは言うまでもない。
【実施例】
【0067】
本発明の効果を確認するために、
図1、6、7及び9(a)、(b)に示されるヘッドが試作され、反発係数、重心高さ、左右の慣性モーメント、1次固有振動数、打球音の高さ、残響及び打球音のフィーリングがテストされた。
表1に示すパラメータ以外はすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである。
ヘッド質量:190g(統一)
フェース部材(ヘッド本体)の材質:チタン合金(比重:4.5)
第1部材の材質:チタン合金(比重:4.5)
第2部材の材質:CFRP(比重:1.9)
前側部の材質:CFRP(比重:1.9)
テスト方法は、次の通りである。
【0068】
<反発係数>(スプリング効果テスト USGA方式)
フェース部の反発係数の測定が、U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e, Revision 2 (February 8, 1999)に基づき行われた。具体的には、ゴルフボールをボール発射装置を用いて発射し、台座上に固着することなく載置されたヘッドのフェース部のスイートスポットに衝突させ、ゴルフボールの衝突直前の入射速度Vi、跳ね返り速度Vo、ヘッド質量をM、ゴルフボールの平均質量をmを測定し、次式により反発係数eを算定した。
(Vo/Vi)=(eM−m)/(M+m)
なおゴルフボールの発射口からフェース部までの距離は55インチとし、ボールがヘッドのスイートスポットの位置から5mm以上離れない位置かつフェース面に対して直角に衝突させる。また、ゴルフボールはタイトリスト社製のピナクルゴールドを使用し、ボール初速は160フィート±0.5フィート(48.768±0.1524m/s)に設定される。
【0069】
<重心高さ>
基準状態において、水平面からスイートスポットSSまでの垂直高さH(
図3に示される)である重心高さが測定された。数値が小さいほど良好である。
【0070】
<左右の慣性モーメント>
ヘッドの基準状態において、シャフトの軸中心線CL周りの慣性モーメントMaを INERTIA DYNAMICS Inc 社製のMOMENT OF INERTIA MEASURING INSTRUMENTの MODEL NO.005-002を用いて測定した。数値が大きいほどミスショット時のヘッドのブレが小さく良好である。
【0071】
<1次固有振動数>
一次固有振動数は、ヘッド単体の状態で測定された。測定方法は、以下の通りである。
(a)ヘッドのソール(ソール外面)に加速度ピックアップを付ける。
(b)ヘッドのネック端面に糸を取り付け、ヘッドを糸で吊るす。
(c)フォースピックアップを備えるインパクトハンマーで、ヘッドのソール(ソール外面)を叩く。
(d)インパクトハンマーのフォースピックアップから、入力加振力Fのデータを得る。
(e)加速度ピックアップから応答加速度Aを得る。
(f)「動質量=入力加振力F/応答加速度A」を算出し、その動質量の一次の極小値の周波数を「一次の固有振動数」とした。
【0072】
また、上記(a)における加速度ピックアップの取り付け位置が、ソールの一次の振動の節の位置になる場合、上記(f)において、その一次の振動(一次の極小値)が現れない。よって、加速度ピックアップをソールの何箇所かの位置に取り付けて測定を行い、その一次の振動(一次の極小値)が現れる位置を探した。そして、一次の振動(一次の極小値)が現れる位置に加速度ピックアップを取り付けた際の測定結果が採用された。なお、この一次の固有振動数の測定には、特開2004−65570号公報に記載されている「インパクトハンマー法」での測定機器が用いられうる。また、ソールへの加速度ピックアップの取り付けには、例えば、接着剤が用いられる。
【0073】
<打球音の高さ、残響及び打球音のフィーリング>
各供試ヘッドにFRP製の同一のシャフト(SRIスポーツ株式会社製のMP700、フレックスR)を装着し45インチのウッド型ゴルフクラブが試作された。そして、ハンディキャップ5〜15のゴルファー5名が、各クラブで市販の3ピースゴルフボール(SRIスポーツ株式会社製の「XXIO XD)を10球ずつ打球し、このときの、打球音の高さ、打球音の残響の長さ及びこれらを総合した打球音のフィーリングが、上記5名のゴルファーの官能により評価された。結果は、5点を満点とする5点法であり、比較例1の結果を3点とした。
テストの結果などを表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
テストの結果、実施例のヘッドは、比較例のヘッドに比して打球音のフィーリングと打球の方向安定性(慣性モーメント)とがバランス良く向上している。また、ヘッド質量やシャフトの長さ、ヘッドの材質を変化させたものを用いて、同様のテストを行ったが、このテスト結果と同じ傾向が示された。