【0009】
本発明における滑沢剤とは、日本薬学会の定義に従うものとする。日本薬学会のホームページの定義は次のとおりである。
錠剤の製造に用いる医薬品添加物の一種。錠剤の原料となる粉末や顆粒に少量(1%以下)加えると、粉体表面に付着し、粉体間の付着力が弱まるため、粉体の流動性が高くなる。また、粉体の装置への付着を防ぐことにより、錠剤の製造をスムースにする。ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油などが用いられる。
【実施例】
【0017】
1.葉酸含有製剤の調製と評価(粉体混合後直接打錠による評価)
各種食物繊維ならびに既存の滑沢剤と本発明に用いられる小麦フスマ由来の粉末について滑沢剤としての効果を比較評価した。
葉酸0.267重量部、製剤用でんぷん(パーフィラー102:フロイント産業製)99.773重量部をミクロ型透視式混合機(筒井理化学機械社)を用いて混合し、これに表1に示す各粉末を添加して混合し、単発打錠機N−30E(岡田精工社)で打錠した。打錠圧は1000Kg、錠剤重量を150ミリグラムに設定した。
かくして得られた錠剤の外観、錠剤硬度を評価した。また打錠杵への付着状態、打錠下杵/上杵の圧力比、錠剤硬度を測定し評価した。
錠剤硬度はニュースピードチェカーTS−75N型(岡田精工社製)を用いて測定した。
【0018】
【表1】
【0019】
上記表1に示すとおり実施例1の小麦フスマ由来の粉末を2%含有する錠剤は、ショ糖脂肪酸エステルや比較例8の大豆粉末のような公知の滑沢剤を配合した場合と同等かそれ以上の製剤適性を示し、杵への付着やスティッキングも発生しなかった。また錠剤の口解けや味覚もなんら問題がなかった。一方、比較例1〜7の他の食物繊維を配合した製剤は打錠適性も不良であり、さらにスティッキング、キャッピングが発生した。
【0020】
2.葉酸含有製剤の調製と評価(連続打錠による生産性評価)
上記表1で打錠適性が優れていると評価した実施例2、ポジティブコントロールのショ糖脂肪酸エステル、比較例8の大豆粉末の組成、コントロールとして滑沢剤無添加の各組成を実生産装置を用いて連続生産し、生産適性を評価した。なお混合機としてミクロ型透視式混合機S−3(筒井理化学機械)を用いて10分間混合し、超小型回転式錠剤機VEL20310SW4MZ(菊水製作所)を用い、打錠圧は1000Kg、錠剤重量を150ミリグラムに設定して連続生産を行った。
得られた錠剤は上記の1.と同様に下杵の付着、錠剤硬度を測定し評価した。結果を下記表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
上記表2に示すとおり、本発明の組成は連続生産に適する製剤であった。一方公知の滑沢剤を使用したショ糖脂肪酸エステル、比較例8は連続生産した場合錠剤硬度が低く、連続生産に適していないことが判明した。
【0023】
3.カルシウム含有製剤の調製と評価(連続打錠による評価)
小麦フスマ由来の粉末ならびに既存の滑沢剤をそれぞれ含有するカルシウム製剤を製造して発明の効果を評価した
カルシウム原料としてミルクカルシウム−28(ユニオンフーズ)80重量%、結着剤としてアルファ化モチゴメデンプン(モチールアルファ)20重量%を流動槽造粒乾燥機(FD−MP−01)を用いて造粒し、これに小麦フスマ由来粉末(ブランエース)10重量%をミクロ型透視式混合機(筒井理化学機械社)を用いて混合し、超小型回転式錠剤機VEL20310SW4MZ(菊水製作所)を用い、打錠圧は1000Kg、錠剤重量を250ミリグラムに設定して連続生産を行った。
同様に表3に示すショ糖脂肪酸エステル、部分アルファ化澱粉(PSC 旭化成ケミカルズ製、比較例9)、大豆粉末(比較例10)の公知の滑沢剤を用いて同様に連続生産を行った。得られた錠剤は上記の1.と同様に下杵の付着、錠剤硬度を測定し評価した。結果を下記表3に示す。なお下杵/上杵比は単発打錠機を用いて測定した。
【0024】
【表3】
【0025】
上記表3に示すとおり、本発明のカルシウム製剤の組成は連続生産に適するものであった。
【0026】
4.鉄ハードカプセル製造の際のスティッキングの発生評価
ヘム鉄95重量%、澱粉4.696重量%、ビタミンB12 1%粉末0.152重量%、葉酸0.152重量%を流動層造粒乾燥機FD−MP−01型((株)パウレック)を用いて造粒し、これに小麦フスマ由来粉末(ブランエース)5重量%添加しミクロ形透視式混合機S−3(筒井理化学器械(株))を用いて混合した。これをカプセル充填機:GKF400(BOSCH社(ドイツ))を用いてハードカプセルに160ミリグラム充填し、カプセル製剤を調製した(実施例3)。
同様にデキストリン(パインフロー)5重量%(比較例11)又は澱粉(モチールアルファ(α化澱粉、上越スターチ(株)))5重量%(比較例12)を混合し、次いでカプセルに充填してカプセル製剤を調製した。
得られたカプセル製剤の表面を観察してスティッキングの状態を評価した。評価結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】
上記表4に示すとおり本発明はカプセル製剤のスティッキングを抑制した。