特許第5886667号(P5886667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886667
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20160303BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20160303BHJP
【FI】
   B60R21/239
   B60R21/2338
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-72632(P2012-72632)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203167(P2013-203167A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】越川 公裕
(72)【発明者】
【氏名】村上 吉樹
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0151979(US,A1)
【文献】 特開2007−084063(JP,A)
【文献】 特開2005−014862(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007058656(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0289444(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/124759(WO,A1)
【文献】 特開2005−014861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/239
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、
前記エアバッグを構成する基布に形成されたベントホールと、
該ベントホールを被覆可能な幅を有し、前記ベントホールを挟むように両端が前記基布の表面に縫合された縫合部を有し、前記基布上における前記縫合部間の距離よりも長い全長を有する弁体と、
該弁体の裏面の中間部に接続されるとともに前記基布に形成されたスリット部から前記エアバッグの内部に挿通されるストラップと、
一端が前記ストラップに接続され他端が前記エアバッグの膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に接続されたテザーと、を有し、
前記テザーの緊張状態時に前記ストラップが前記弁体を折り畳み状態に変形させて前記基布の表面に密着させることにより前記ベントホールを閉塞し、前記テザーの弛緩状態時に前記弁体の折り畳み状態を解除することにより前記ベントホールを開放する、ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記弁体は、前記スリット部側の前記縫合部に他の部分よりも拡幅された幅広部を有し、該幅広部の外周を前記基布に縫合することによって、折り畳み状態に変形された前記弁体の折り畳み部を収容可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記弁体は、折り畳み状態に変形しやすくするための折目を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記ストラップは、幅方向に形成された突起部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記テザーは、前記エアバッグの膨張展開にしたがって段階的に伸張可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記弁体は、前記エアバッグの収容時に、前記折り畳み状態が解除された状態で前記ベントホールを開状態に移行可能に収容されている、又は、前記折り畳み状態が解除された状態で前記ベントホールを閉状態に保持可能に収容されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項7】
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有するエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のエアバッグである、ことを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ及びエアバッグ装置に関し、特に、開閉可能なベントホールを備えたエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になっている。かかるエアバッグ装置には、ステアリングに内装された運転席用エアバッグ装置、インストルメントパネルに内装された助手席用エアバッグ装置、車両側面部又はシートに内装されたサイドエアバッグ装置、ドア上部に内装されたカーテンエアバッグ装置、乗員の膝部に対応したニーエアバッグ装置、フード下に内装された歩行者用エアバッグ装置等、種々のタイプが開発・採用されている。
【0003】
これらのエアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有する。また、エアバッグには、内部のガスを外部に放出するベントホールが形成され、該ベントホールの開閉を制御してエアバッグの内圧を調整するようにしたものが既に提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたエアバッグ装置は、エアバッグの展開状態に応じてエアバッグの内外におけるガスの流通状態を許容又は抑制する可変ベントホールと、可変ベントホールにおけるガスの流通状態を変更する流通状態変更手段とを備え、エアバッグは、段階的に複数の方向に向かって展開されるものであり、流通状態変更手段は、エアバッグの初期展開段階ではガスの流通を許容する許容状態にあり、初期展開段階以降ではエアバッグの展開状態に応じて許容状態とガスの流通を抑制する抑制状態とを選択的に設定可能に構成されている。
【0005】
特許文献2に記載されたエアバッグ装置は、ストラップを保持及び離脱可能な開閉制御装置と、ストラップの先端部に接続されるとともにベントホールの周縁部にベントホールを被覆可能に配置されたフラップ材と、を有し、エアバッグの膨張時における開閉制御装置との連結維持時はベントホールの周縁を押えてベントホールを閉口させ、エアバッグの膨張時における開閉制御装置との連結解除時にベントホールを開口させるように構成されている。
【0006】
特許文献3に記載されたエアバッグ装置は、ベントホールの周囲とエアバッグの乗員側基布の下部とに連結される第1ストラップと、ベントホールの縁部とエアバッグの乗員側基布の後部とに連結される第2ストラップと、を有し、前記第1ストラップは、エアバッグの膨張展開に伴ってベントホールを閉じるように構成されており、前記第2ストラップは、乗員がエアバッグに拘束される際にベントホールの縁部とともに第1ストラップを引っ張ってベントホールを開くように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−14861号公報
【特許文献2】特開2007−307990号公報
【特許文献3】特開2010−58544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1〜特許文献3に記載されたエアバッグ装置では、ベントホールの開口部に弁体(フラップ材等)を被せたりスライドさせたり、ベントホールの開口部を絞ったりすることによって、ベントホールの開閉を制御している。しかしながら、かかるベントホールの開閉方法では、段階的なベントホールの開閉を制御するために、複雑な機構を採用しており、基布の使用量が増えて重量が増加してしまう、エアバッグが折り畳み難くなってしまう等の問題があった。また、開閉制御装置を配置した場合には、エアバッグ装置の重量増加及びコストアップの要因になってしまうという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、ベントホールの開閉を制御しやすく、重量増加及びコストアップを抑制することができる、エアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時にガスが供給されて膨張展開するエアバッグにおいて、前記エアバッグを構成する基布に形成されたベントホールと、該ベントホールを被覆可能な幅を有し、前記ベントホールを挟むように両端が前記基布の表面に縫合された縫合部を有し、前記基布上における前記縫合部間の距離よりも長い全長を有する弁体と、該弁体の裏面の中間部に接続されるとともに前記基布に形成されたスリット部から前記エアバッグの内部に挿通されるストラップと、一端が前記ストラップに接続され他端が前記エアバッグの膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に接続されたテザーと、を有し、前記テザーの緊張状態時に前記ストラップが前記弁体を折り畳み状態に変形させて前記基布の表面に密着させることにより前記ベントホールを閉塞し、前記テザーの弛緩状態時に前記弁体の折り畳み状態を解除することにより前記ベントホールを開放する、ことを特徴とするエアバッグが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有するエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記エアバッグを構成する基布に形成されたベントホールと、該ベントホールを被覆可能な幅を有し、前記ベントホールを挟むように両端が前記基布の表面に縫合された縫合部を有し、前記基布上における前記縫合部間の距離よりも長い全長を有する弁体と、該弁体の裏面の中間部に接続されるとともに前記基布に形成されたスリット部から前記エアバッグの内部に挿通されるストラップと、一端が前記ストラップに接続され他端が前記エアバッグの膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に接続されたテザーと、を有し、前記テザーの緊張状態時に前記ストラップが前記弁体を折り畳み状態に変形させて前記基布の表面に密着させることにより前記ベントホールを閉塞し、前記テザーの弛緩状態時に前記弁体の折り畳み状態を解除することにより前記ベントホールを開放する、ことを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【0012】
上述したエアバッグ及びエアバッグ装置において、前記弁体は、前記スリット部側の前記縫合部に他の部分よりも拡幅された幅広部を有し、該幅広部の外周を前記基布に縫合することによって、折り畳み状態に変形された前記弁体の折り畳み部を収容可能に構成されていてもよい。
【0013】
また、前記弁体は、折り畳み状態に変形しやすくするための折目を有していてもよい。また、前記ストラップは、幅方向に形成された突起部を有していてもよい。また、前記テザーは、前記エアバッグの膨張展開にしたがって段階的に伸張可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、前記弁体は、前記エアバッグの収容時に、前記折り畳み状態が解除された状態で前記ベントホールを開状態に移行可能に収容されていてもよいし、前記折り畳み状態が解除された状態で前記ベントホールを閉状態に保持可能に収容されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、弁体を折り畳み状態に変形させることによりベントホールを閉塞し、弁体の折り畳み状態を解除することによりベントホールを開放できるようにしたことによって、テザーの緊張及び弛緩に応じてベントホールを開閉することができ、ベントホールの開閉を制御しやすくすることができる。また、ベントホールの開閉機構は、弁体、ストラップ及びテザーにより構成されるシンプルな構成であることから、基布の使用量を低減することができるとともに、開閉制御装置のような火工品を使用する必要がなく、エアバッグ及びエアバッグ装置の重量増加及びコストアップを抑制することができる。
【0016】
また、弁体の幅広部に弁体の折り畳み部を収容するようにしたことによって、折り畳み部の緩みを抑制することができ、気密性を向上させて、ベントホール及びスリット部からのガスの漏洩を抑制することができる。
【0017】
また、弁体が所定の折目を有することにより、弁体の折り畳み状態を同じ形状に安定させて変形させることができ、機能的により安定させることができる。
【0018】
また、ストラップに突起部を形成することにより、ストラップをエアバッグ内に引き込むタイミングを調整することができ、エアバッグの特性に応じたベントホールの開閉制御を容易に行うことができる。
【0019】
また、テザーを段階的に伸張可能なテザーで構成することにより、エアバッグの膨張展開の段階に応じてベントホールの開閉を制御することができ、例えば、中期〜後期の膨張展開段階においてベントホールの閉状態を容易に維持することができる。
【0020】
また、エアバッグの収容時に弁体の折り畳み状態を解除した状態で収容することによって、エアバッグの膨張展開の初期段階において、速やかにベントホールを開状態に移行させることができる。また、エアバッグの収容時に弁体の折り畳み状態を解除した状態で縫合等によりベントホールを閉状態に保持可能に構成して収容することにより、エアバッグの膨張展開の初期段階において、ベントホールの閉状態を一定時間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置を示す図であり、(A)はエアバッグの背面図、(B)はエアバッグ装置の断面図、を示している。
図2図1に示した弁体及びストラップを示す平面図であり、(A)は弁体、(B)はストラップ、(C)は弁体の変形例、(D)はストラップの変形例、を示している。
図3】ベントホールの開閉制御の第一例を示す図であり、(A)は初期開状態、(B)は中期閉状態、(C)は後期開状態、を示している。
図4】ベントホールの開閉制御の第二例を示す図であり、(A)は初期閉状態、(B)は中期閉状態、(C)は後期開状態、を示している。
図5図1に示したテザーを示す図であり、(A)は第一実施形態、(B)は第一変形例、(C)は第二変形例、を示している。
図6図1に示したエアバッグ装置の作用を示す図であり、(A)は膨張展開の初期段階、(B)は膨張展開の中期段階、(C)は膨張展開の後期段階、(D)は乗員接触段階、を示している。
図7】エアバッグ装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、(D)は第四変形例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図1図7を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るエアバッグ及びエアバッグ装置を示す図であり、(A)はエアバッグの背面図、(B)はエアバッグ装置の断面図、を示している。図2は、図1に示した弁体及びストラップを示す平面図であり、(A)は弁体、(B)はストラップ、(C)は弁体の変形例、(D)はストラップの変形例、を示している。
【0023】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置は、図1及び図2に示したように、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグ1と、エアバッグ1にガスを供給するインフレータ2と、エアバッグ1及びインフレータ2を固定するリテーナ3と、を有し、エアバッグ1は、エアバッグ1を構成する基布に形成されたベントホール4と、ベントホール4を被覆可能な幅Waを有し、ベントホール4を挟むように両端が基布(例えば、第二基布1b)の表面に縫合された縫合部5a,5bを有し、基布上における縫合部5a,5b間の距離Lfよりも長い全長Lvを有する弁体5と、弁体5の裏面の中間部に接続されるとともに基布(例えば、第二基布1b)に形成されたスリット部61からエアバッグ1の内部に挿通されるストラップ6と、一端がストラップ6に接続され他端がエアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材(例えば、エアバッグ1の内面)に接続されたテザー7と、を有し、テザー7の緊張状態時にストラップ6が弁体5を折り畳み状態に変形させて基布(例えば、第二基布1b)の表面に密着させることによりベントホール4を閉塞し、テザー7の弛緩状態時に弁体5の折り畳み状態を解除することによりベントホール4を開放するように構成されている。
【0024】
図1(B)に示したエアバッグ装置は、例えば、運転席用エアバッグ装置であり、運転席の前面に配置されたステアリングホイール11の略中央部に配置されたステアリングボス部12に配置されており、図示しない樹脂製のパッドにより被覆されている。エアバッグ1は、インフレータ2の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、パッドを開裂させて車室内に放出され、運転席に着座した乗員の前方に膨張展開される。
【0025】
前記エアバッグ1は、例えば、乗員との接触面を形成する第一基布1aと、ステアリングホイール11側に配置される第二基布1bと、を有し、第一基布1aと第二基布1bとの縁部を縫合することによってエアバッグ1を構成する袋体が形成されている。第二基布1bの略中央部には、図1(A)に示したように、インフレータ2を装着するための開口部1cが形成されている。エアバッグ1は、例えば、開口部1cにインフレータ2の一部が挿入され、内側からバッグリング(図示せず)が配置され、ボルト・ナット等の固定具(図示せず)によりリテーナ3に固定される。なお、エアバッグ1の内部には、エアバッグ1の膨張展開時における突出幅(厚さ)を規制する幅規制テザー8が配置されていてもよい。
【0026】
前記インフレータ2は、エアバッグ1に供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円板形状の外形をなしている。図1(B)では、ディスク型のインフレータ2を使用した場合を図示しているが、略円柱形状の外形をなしたシリンダ型のインフレータを使用してもよい。インフレータ2は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ2はECUからの点火電流により点火され、インフレータ2の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ1にガスを供給する。
【0027】
前記リテーナ3は、エアバッグ1及びインフレータ2を固定する部材であり、パッドを接続することによってエアバッグモジュールが構成される。かかるエアバッグモジュールは、ステアリングボス部12に相対移動可能に接続され、パッドとステアリングボス部12との間でホーンスイッチを構成する。ステアリングホイール11は、複数のスポークを介してステアリングボス部12に接続されている。なお、上述した、エアバッグ1、インフレータ2及びリテーナ3により構成されるエアバッグ装置の基本構成は、単なる一例であり、図示したものに限定されるものではない。
【0028】
前記ベントホール4は、例えば、図1(A)及び(B)に示したように、エアバッグ1の背面側を構成する第二基布1bに形成された略円形状の開口部である。かかる構成により、ベントホール4から放出されるガスが乗員に吹きかからないようにすることができる。また、ベントホール4は、例えば、ステアリングホイール11の内側に形成されている。かかる配置により、乗員がエアバッグ1に接触して圧力が負荷される方向と対峙する位置にベントホール4を配置することができ、ガスを放出しやすくすることができる。
【0029】
ここで、図2は、弁体5及びストラップ6の構成を示す平面図である。図2(A)に示したように、弁体5は、ベントホール4を被覆可能な幅Waを有し、ベントホール4を挟むように両端が第二基布1bの表面に縫合される縫合部5a,5bを有し、第二基布1b上における縫合部5a,5b間の距離Lfよりも長い全長Lvを有するように構成されている。また、弁体5は、スリット部61側の縫合部5bに他の部分よりも拡幅された幅広部51を有し、幅広部51の外周を第二基布1bに縫合することによって、折り畳み状態に変形された弁体5の折り畳み部Fを収容可能に構成されている。なお、必要に応じて、弁体5と重ね合わされて縫合される補強布(パッチクロス)を使用するようにしてもよい。
【0030】
また、図2(A)において一点鎖線で示したベントホール4及びスリット部61の位置は、弁体5を距離Lfの長さに縮めて第二基布1bに接続した状態における弁体5との相対的な位置を図示したものである。したがって、実際の第二基布1b上におけるベントホール4とスリット部61との間隔は、図2(A)に示した間隔よりも、Lf/Lvの比率分だけ短くなることになる。なお、弁体5の全長Lvは、弁体5がエアバッグ1の表面から離隔して最大ガス放出部を形成した状態における開口面積が、エアバッグ4の開口面積の2倍以上となるように設定することにより、エアバッグ1内のガスを効率よく外部に放出することができる。
【0031】
ベントホール4側の縫合部5aは、ベントホール4の近傍に配置されるとともに、ベントホール4を閉塞したときの気密性を向上させるために、ベントホール4の外周に沿って円弧形状に形成される。なお、弁体5の気密性を十分に担保できる場合や気密性を考慮しなくてよい場合には、縫合部5aは、円弧形状に替えて直線形状に形成するようにしてもよい。
【0032】
スリット部61側の縫合部5bは、幅Wb>幅Waの関係を有する幅広部51によって構成されており、具体的には、縫合部5bは、幅広部51のベントホール4と反対側の端部に横幅方向に縫製される縫合線5cと、幅広部51の左右両端部に縦幅方向に縫製される一対の縫合線5d,5dと、を有する。これらの縫合線5c,5dによって幅広部51に弁体5の折り畳み部Fを収容可能なポケット部52が形成される。一対の縫合線5d,5dは、図示したように、縫合線5cに向かって間隔が狭くなるように形成してもよい。かかる構成により、間口が広く奥が狭いポケット部52を形成することができ、弁体5の折り畳み部Fを収納しやすく、かつ、折り畳み状態を保持しやすくすることができる。
【0033】
また、弁体5の幅Waから幅Wbの切り替え部において、幅広部51には幅Waの弁体5の延伸方向に形成された切込部5eが形成されていてもよい。この切込部5eは、弁体5の折り畳み状態と解除状態との動作を円滑に行うための遊びを形成する。
【0034】
また、弁体5は、折り畳み状態に変形しやすくするための折目5fを有していてもよい。折目5fは、例えば、弁体5を構成する基布に縫合糸を横幅方向に縫製した縫合線により形成される。図2(A)では、弁体5の幅広部51との境界線付近(すなわち、ポケット部52の入口近傍)及びストラップ6の接続部付近の二箇所に折目5fが形成されている。本実施形態では、弁体5は、ポケット部52寄りの折目5fが山、ベントホール4寄りの折目5fが谷を形成するように折り畳まれる。
【0035】
折目5fは、上述したように、縫合線によって部分的に剛性を高めた部分であってもよいし、パッチクロスとの間に配置された接着剤によって部分的に剛性を高めた部分であってもよいし、パッチクロスの一部に切れ目を入れて部分的に剛性を低くした部分であってもよい。また、弁体5が柔らかく、折目5fがなくても弁体5を容易に折り畳むことができるような場合には、折目5fを省略するようにしてもよい。なお、図2(A)において二本の縫合線5gはストラップ6との接続部を構成している。
【0036】
図2(B)に示したように、ストラップ6は、弁体5に接続される接続部62と、接続部62から延伸した二本のストラップ本体63と、テザー7に接続される接続部64と、幅方向に形成された突起部65と、を有している。なお、必要に応じて、ストラップ6と重ね合わされて縫合される補強布(パッチクロス)を使用するようにしてもよい。
【0037】
接続部62は、二本のストラップ本体63を一部品に纏める部分であるとともに、図2(B)に示した灰色着色部を図2(A)に示した灰色着色部に図の状態のまま(上下反転させずに)一致させて縫合線5gによってストラップ6を弁体5に接続する部分を構成する。なお、二本のストラップ本体63を一部品に纏める必要がない場合には、接続部62は略中央部で分割されていてもよい。
【0038】
接続部62とストラップ本体63との境界部には、ストラップ本体63の延伸方向に形成された切込部66が形成されていてもよい。この切込部66は、ストラップ本体63がエアバッグ1内に引き込まれて弁体5を第二基布1bの表面に押し付ける際に、スリット部61とストラップ本体63との隙間を低減し気密性を向上させる機能を有する。なお、必要に応じて、切込部66は省略するようにしてもよい。
【0039】
接続部62は、ストラップ6を図1に示したテザー7に接続する部分であり、どのような形状であってもよい。図示したように、ストラップ本体63から内側に折れ曲がった形状であってもよい、左右両側に拡幅した形状であってもよいし、ストラップ本体63をそのまま延伸させた形状であってもよい。なお、ストラップ6は、テザー7と同一の基布により一体に形成されていてもよく、その場合には接続部62は省略することができる。
【0040】
突起部65は、ストラップ本体63が挿通されるスリット部61よりも幅広に形成されており、ストラップ本体63がスリット部61を通過するときに突起部65が引っ掛かるように構成されている。したがって、突起部65がエアバッグ1の外側に引き出されている場合には、突起部65が変形してスリット部61を通過するまでは、突起部65から弁体5までの長さは変動しないこととなり、弁体5を折り畳み状態に移行させるタイミングを遅らせることができる。換言すれば、エアバッグ1の膨張展開時にテザー7に張力が作用した場合であっても、突起部65がストッパを構成し、その突起部65をスリット部61に通過させる程度の張力がテザー7に作用するまで、ベントホール4の折り畳み解除状態を維持することができる。なお、突起部65は、横幅方向の幅方向に突出するように形成してもよいし、厚さ方向の幅方向に突出するように形成してもよい。
【0041】
なお、スリット部61の形状は、図示した細孔形状に限定されるものではなく、例えば、スロット形状や丸孔形状等、任意に変更することができ、それに応じてストラップ本体63の断面形状も任意に変更することができ、これらの形状に合わせて突起部65の形状も任意に変更することができる。
【0042】
図2(C)に示した弁体5の変形例は、弁体5が幅広部51を有しておらず、したがって、ポケット部52を有していないものである。かかる構成であっても弁体5を折目5fに沿って折り畳むことができる。なお、弁体5の変形例において、他の構成については、図2(A)に示した弁体5と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
図2(D)に示したストラップ6の変形例は、図2(A)及び(C)に示した両方の弁体5に適用可能なものであって、突起部65を省略したものである。弁体5を折り畳み状態に移行させるタイミングを調整する必要がない場合や他の手段によって弁体5を折り畳み状態に移行させるタイミングを調整することができる場合には、図示したように、突起部65を省略してもよい。なお、ストラップ6の変形例において、他の構成については、図2(B)に示したストラップ6と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
次に、上述した弁体5を用いたベントホール4の開閉制御について説明する。ここで、図3は、ベントホールの開閉制御の第一例を示す図であり、(A)は初期開状態、(B)は中期閉状態、(C)は後期開状態、を示している。なお、各図において、上段は平面図、下段は平面図のX−X断面図、を示している。
【0045】
図3(A)に示した初期開状態は、エアバッグ1の膨張展開前の段階やエアバッグ1の膨張展開の初期段階において、ベントホール4を開状態に移行可能に構成した状態を示している。具体的には、弁体5は、ポケット部52から引き出されて、縫合部5a側に折り畳まれた状態又は弛ませた状態になっている。このとき、ストラップ6の突起部65は、エアバッグ1の外部に引き出された状態になっている。したがって、エアバッグ1の膨張展開によってストラップ6がエアバッグ1内に引っ張られ、一定の張力が生じて突起部65がエアバッグ1内に引き込まれるまで、図示した初期開状態が維持される。
【0046】
このとき、弁体5は、ポケット部52から引き出された状態になっていることから、ベントホール4の上部に配置されているだけであり、ベントホール4からガス圧が負荷された場合には、断面図に一点鎖線で示したように、弁体5は容易に外方に押し出され、エアバッグ1の表面から離隔し、エアバッグ1の外部にガスを放出することができる。すなわち、弁体5は、エアバッグ1の収容時に、折り畳み状態が解除された状態でベントホール4を開状態に移行可能に収容されている。
【0047】
図3(B)に示した中期閉状態は、エアバッグ1の膨張展開に伴って、ストラップ6に一定の張力が生じ、突起部65をエアバッグ1内に引き込んだ状態を示している。具体的には、ストラップ6は、弁体5との接続部がスリット部61まで達した緊張状態になっており、弁体5は、縫合部5b側に引っ張られて、折目5fによってポケット部52内に折り畳まれた状態になっている。このとき、弁体5は、ストラップ6によって引っ張られて、エアバッグ1の表面に押し付けられた状態になっていることから、ベントホール4を閉塞した閉状態になっている。
【0048】
図示したように、弁体5を折り畳んでポケット部52に収容するようにしたことによって、折り畳み部の緩みを抑制することができ、気密性を向上させて、ベントホール4及びスリット部61からのガスの漏洩を抑制することができる。
【0049】
図3(C)に示した終期開状態は、例えば、エアバッグ1に乗員が接触してエアバッグ1の内圧が急激に上昇した状態を示している。具体的には、ストラップ6は、エアバッグ1への乗員の接触によって弛緩状態になっており、弁体5は、ポケット部52から引き出し可能な状態になっており、ベントホール4からガス圧が弁体5に負荷されることによって、弁体5が外方に押し出され、エアバッグ1の表面から離隔した状態になっている。したがって、エアバッグ1内のガスは弁体5とベントホール4の隙間からエアバッグ1の外部に放出され、乗員の衝撃を緩和することができる。
【0050】
上述したベントホール4の開閉制御によれば、ベントホール4を所定のタイミングで開状態→閉状態→開状態と変化させることができる。したがって、乗員がエアバッグ1に近接した状態に存在している場合(例えば、アウト・オブ・ポジションの場合)等のように、エアバッグ1の膨張展開の初期段階において、エアバッグ1が乗員と接触した場合であっても、ベントホール4からガスを放出して乗員の衝撃を緩和することができる。また、エアバッグ1の膨張展開の中期段階〜終期段階において、ベントホール4を閉状態に保持することができるとともに、エアバッグ1の膨張展開の中期段階〜終期段階において、エアバッグ1が乗員と接触した場合には、ベントホール4からガスを放出して乗員の衝撃を緩和することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ベントホール4を必要なタイミングで開状態に移行させることができることから、いわゆる常開型のベントホールを形成する必要がないか、必要最小限の大きさに縮小することができ、エアバッグ1の膨張展開時における無駄なガスの放出を抑制することができ、インフレータ2を小型化することができ、エアバッグ装置の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0052】
次に、上述した弁体5を用いたベントホール4の開閉制御の第二例について説明する。ここで、図4は、ベントホールの開閉制御の第二例を示す図であり、(A)は初期閉状態、(B)は中期閉状態、(C)は後期開状態、を示している。なお、各図において、上段は平面図、下段は平面図のX−X断面図、を示している。
【0053】
図4(A)に示した初期閉状態は、エアバッグ1の膨張展開前の段階やエアバッグ1の膨張展開の初期段階において、ベントホール4を閉状態に保持した状態を示している。具体的には、弁体5は、ポケット部52から引き出されて、縫合部5a側に折り畳まれた状態になっており、その状態で縫合線5hによって弁体5が縫製された状態になっている。
【0054】
このとき、弁体5は全長が短くなった状態で縫合されていることから、縫合線5hが破断するまで、その状態を維持することができ、ベントホール4を閉塞した閉状態を保持することができる。すなわち、弁体5は、折り畳み状態が解除された状態でベントホール4を閉状態に保持可能に収容されている。
【0055】
このように縫合線5hによって初期閉状態を維持する場合には、縫合線5hによって、ベントホール4の中期閉状態に移行するタイミングを調整することができることから、ストラップ6の突起部65は省略するようにしてもよい。ただし、ストラップ6に突起部65を形成しておくことにより、図示した初期閉状態を安定的に保持することができる。また、初期閉状態におけるベントホール4の気密性を向上させるために、縫合線5hによって弁体5をエアバッグ1に縫合するようにしてもよい。なお、縫合線5hに替えて、接着剤によって初期閉状態を形成するようにしてもよいし、縫合線5hは弁体5の横幅方向ではなく縦幅方向に形成されていてもよい。
【0056】
図4(B)に示した中期閉状態及び図4(C)に示した終期閉状態については、図3(B)及び(C)に示したベントホール4の開閉制御の第一例と同じ状態であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0057】
上述したベントホール4の開閉制御の第二例によれば、ベントホール4を所定のタイミングで閉状態から開状態に変化させることができる。したがって、エアバッグ1の膨張展開の初期段階から終期段階において、乗員がエアバッグ1に接触するまでの間、ベントホール4を閉状態に保持することができ、エアバッグ1の膨張展開時における無駄なガスの放出を抑制することができ、インフレータ2を小型化することができ、エアバッグ装置の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0058】
また、かかる第二例の開閉制御を採用した場合には、乗員がエアバッグ1に近接した状態に存在している場合(例えば、アウト・オブ・ポジションの場合)等のように、エアバッグ1の膨張展開の初期段階において、エアバッグ1が乗員と接触した場合を考慮して、いわゆる常開型のベントホールをエアバッグ1に形成するようにしてもよい。
【0059】
前記テザー7は、エアバッグ1の膨張展開時にストラップ6を引っ張ることができる紐部材であれば、どのようなものであってもよい。テザー7は、一端がストラップ6に接続されており、他端がエアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に接続されている。エアバッグ構成部材は、例えば、エアバッグ1の内面であってもよいし、エアバッグ1の内部に配置された幅規制テザー8やガスの流れを制御する整流布等であってもよい。
【0060】
ここで、図5は、図1に示したテザーを示す図であり、(A)は第一実施形態、(B)は第一変形例、(C)は第二変形例、を示している。なお、図5(A)〜(C)に示したテザー7は、いずれもエアバッグ1の膨張展開にしたがって段階的に伸張可能に構成されたものであるが、テザー7はかかる構成に限定されるものではなく段階的に伸張しない通常のテザーにより構成されていてもよい。
【0061】
図5(A)に示したテザー7は、延伸方向の中間部に形成された拡幅部7aと、拡幅部7aに延伸方向と略垂直に形成された破断部7bと、を有している。破断部7bは、例えば、複数の切れ目又は開口により構成されており、所定の間隔で直線状又は曲線状に配列される。また、切れ目は、単なる切り込みであってもよいし、小幅のスリットであってもよい。また、開口は、いわゆるピンホールであってもよいし、円形状や多角形状の小穴であってもよい。
【0062】
破断部7bは、例えば、中央部に左右均等に破断を生じる一次破断部と、一次破断部の両側に形成され左右交互に破断を生じる二次破断部と、を有している。一次破断部は、テザー7が破断部7bで破断するきっかけ(起点)を与える部分である。二次破断部は、左右のスリット幅及びスリット間隔を調整することにより、テザー7に張力が生じた場合に左右交互に破断できるように構成される。このように破断部7bをエアバッグ1の膨張展開に伴って破断させることにより、テザー7に開口部7cを形成させながら、その長さを徐々に長くすることができる。
【0063】
かかる伸張可能な構成のテザー7をストラップ6に接続することにより、エアバッグ1の膨張展開段階に応じた適切な張力をストラップ6に負荷することができ、上述したベントホール4の開閉制御を適切なタイミングで行うことができる。また、エアバッグ1の膨張展開の中期段階〜終期段階において、乗員がエアバッグ1に接触した場合には、直ちにテザー7を弛緩させることができ、弁体5の作用によりベントホール4を開状態に移行させることができる。なお、上述したテザー7の構成は単なる一例であり、図5(B)及び(C)に示した変形例によりテザー7を構成するようにしてもよい。
【0064】
図5(B)に示したテザー7の第一変形例は、テザー7の中心部に沿って破断部7dを形成したものである。かかる構成により、テザー7は、縦方向に切り裂き可能に構成されており、矢印方向にテザー7を伸張させることができる。
【0065】
図5(C)に示したテザー7の第二変形例は、テザー7の折り畳み部に縫合部7eを形成したものである。かかる構成により、縫合部7eの縫合糸を破断させることによって、矢印方向にテザー7を伸張させることができる。
【0066】
なお、図5(A)〜(C)に示したテザー7の全ての構成は、エアバッグ1の膨張展開時における突出幅(厚さ)を規制する幅規制テザー8にも適用することができる。かかる伸張可能なテザーを幅規制テザー8に適用することにより、エアバッグ1を容易に段階的に膨張展開させることができ、エアバッグ1の膨張展開の初期段階における突出やその後のエアバッグ1の前後方向の振動等を抑制することができる。また、幅規制テザー8に伸張可能なテザーを採用した場合には、テザー7を伸張しない通常のテザーにより構成しやすくすることができる。
【0067】
次に、図1に示したエアバッグ装置の作用について説明する。ここで、図6は、図1に示したエアバッグ装置の作用を示す図であり、(A)は膨張展開の初期段階、(B)は膨張展開の中期段階、(C)は膨張展開の後期段階、(D)は乗員接触段階、を示している。なお、図6に示した作用は、図3に示したベントホール4の開閉制御の第一例に基づくものである。また、各図において、説明の便宜上、ストラップ6とテザー7とを峻別していない状態を図示している。
【0068】
図6(A)に示したように、エアバッグ1の膨張展開の初期段階では、テザー7は弛緩した状態又はエアバッグ1の突出幅(厚さ)に適した張力が作用した緊張状態にあり、この段階では、弁体5はベントホール4を開状態に移行可能に構成されており、弁体5にガス圧が負荷された場合には、ベントホール4からガスを放出可能に構成されている。したがって、乗員がステアリングホイール11に接近している場合(例えば、アウト・オブ・ポジションの状態)であっても、ベントホール4からガスを直ちに放出することができ、乗員への衝撃を緩和することができる。
【0069】
図6(B)に示したように、エアバッグ1の膨張展開の中期段階では、エアバッグ1の膨張展開に応じてテザー7に一定の張力が生じ、ストラップ6はエアバッグ1の内部に引き込まれ、弁体5はポケット部52に折り畳まれて収容され、ベントホール4が閉状態に移行する。この状態で乗員がエアバッグ1に衝突した場合であっても、テザー7には適切な張力が作用していることから、直ちにベントホール4を開状態に移行させることができ、乗員の衝撃を緩和することができる。
【0070】
図6(C)に示したように、エアバッグ1の膨張展開の後期段階では、エアバッグ1の膨張展開に応じてテザー7が伸張し、テザー7に一定の張力を負荷させつつ、ベントホール4の閉状態を維持することができる。この状態で、図6(D)に示したように、乗員(ダミーP)がエアバッグ1に衝突した場合であっても、テザー7には適切な張力が作用していることから、直ちにベントホール4を開状態に移行させることができ、乗員の衝撃を緩和することができる。
【0071】
上述した本実施形態に係るエアバッグ1及びエアバッグ装置によれば、弁体5を折り畳み状態に変形させることによりベントホール4を閉塞し、弁体5の折り畳み状態を解除することによりベントホール4を開放できるようにしたことによって、テザー7の緊張及び弛緩に応じてベントホール4を開閉することができ、ベントホール4の開閉を制御しやすくすることができる。また、ベントホール4の開閉機構は、弁体5、ストラップ6及びテザー7により構成されるシンプルな構成であることから、基布の使用量を低減することができるとともに、開閉制御装置のような火工品を使用する必要がなく、エアバッグ1及びエアバッグ装置の重量増加及びコストアップを抑制することができる。
【0072】
続いて、エアバッグ装置の変形例について説明する。ここで、図7は、エアバッグ装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、(D)は第四変形例、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るエアバッグ装置と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0073】
図7(A)に示した第一変形例は、ベントホール4をステアリングホイール11の外側に配置したものである。ベントホール4には、上述した弁体5が配置されており、第一実施形態と同様の作用により、ベントホール4を開閉することができる。なお、図示しないが、ベントホール4は、ステアリングホイール11の内側及び外側の両方に配置するようにしてもよい。
【0074】
図7(B)に示した第二変形例は、テザー7をエアバッグ1の幅規制テザー8の中間部に接続したものである。かかる幅規制テザー8は、エアバッグ1の膨張展開に伴って移動するエアバッグ構成部材に相当する。
【0075】
図7(C)に示した第三変形例は、ステアリングホイール11の内側に複数のベントホール4を配置したものである。ベントホール4を複数配置することにより、ガスの放出量を容易に増大させることができ、エアバッグ1の容量等に応じた設計を容易に行うことができる。
【0076】
図7(D)に示した第四変形例は、助手席用エアバッグ装置のエアバッグ1に上述したベントホール4及び弁体5を配置したものである。ここでは、エアバッグ1の背面側(ウインドシールドW側)にベントホール4を配置しているが、エアバッグ1の側面部に配置するようにしてもよい。エアバッグ1の側面部にベントホール4を配置した場合には、エアバッグ1の前後方向に配置されたテザーや仕切壁にテザー7の他端を接続するようにすればよい。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されず、エアバッグ装置は、助手席用エアバッグ装置の他、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等であってもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
1 エアバッグ
1a 第一基布
1b 第二基布
1c 開口部
2 インフレータ
3 リテーナ
4 ベントホール
4a,4b 縫合部
5 弁体
5a,5b 縫合部
5c,5d,5g,5h 縫合線
5e 切込部
5f 折目
6 ストラップ
7 テザー
7a 拡幅部
7b 破断部
7c 開口部
7d 破断部
7e 縫合部
8 幅規制テザー
11 ステアリングホイール
12 ステアリングボス部
51 幅広部
52 ポケット部
61 スリット部
62,64 接続部
63 ストラップ本体
65 突起部
66 切込部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7