特許第5886669号(P5886669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886669
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   B61D17/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-74747(P2012-74747)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203255(P2013-203255A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】多田 章彦
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0005957(KR,A)
【文献】 特開平11−334589(JP,A)
【文献】 特開昭50−086013(JP,A)
【文献】 特開2001−151108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を備えた鉄道車両であって、
前記運転室のうち車両幅方向の一方側の部分は第1運転台機器ユニットにより形成され、他方側の部分は第2運転台機器ユニットにより形成されており、
前記第1運転台機器ユニットは、前記運転室の車両幅方向の一方側の複数のエリアに分散して配置された複数の第1運転台側機器と、異なるエリアの前記第1運転台側機器同士を連結する第1運転台側機器配線と、前記運転室の一方側の外縁を形成する第1運転台側床面板、第1運転台側側面板、第1運転台側背面板、及び第1運転台側天井板と、を含んでおり、これらが一体となって箱状に形成されている、鉄道車両。
【請求項2】
前記第2運転台機器ユニットは、前記運転室の車両幅方向の他方側の複数のエリアに分散して配置された複数の第2運転台側機器と、異なるエリアの前記第2運転台側機器同士を連結する第2運転台側機器配線と、前記運転室の他方側の外縁を形成する部分を構成する第2運転台側床面板、第2運転台側側面板、第2運転台側背面板、及び第2運転台側天井板と、を含んでおり、これらが一体となって箱状に形成されている、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記運転室は、
前記第1運転台機器ユニットと前記第2運転台機器ユニットの間に位置して前記運転室の外縁の一部を形成するとともに、前記第1運転台機器ユニット及び前記第2運転台機器ユニットが互いに近寄る方向へ移動するのを防止する合わせ部材
を有する請求項2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記運転室は、
前記第1運転台側機器と前記第2運転台側機器を連結し、前記第1運転台機器ユニットの上面と前記第2運転台機器ユニットの上面を渡すようにして配置されたユニット間配線
を有する請求項2又は3に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記第1運転台機器ユニットは、前記合わせ部材の車両幅方向の一方側の端辺に密着して設置されているとともに、前記第2運転台機器ユニットは前記合わせ部材の車両幅方向の他方側の端辺に密着して設置されている、請求項3に記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記各第1運転台側機器は、前記第1運転台機器ユニットの前方側の第1運転台側前方エリア、前記第1運転台機器ユニットの背面側の第1運転台側背面エリア、及び前記第1運転台機器ユニットの天井側の第1運転台側天井エリアに少なくとも分散して配置されており、
前記第1運転台側背面エリアに配置された第1運転台側背面機器と前記第1運転台側天井エリアに配置された第1運転台側天井機器とを連結する第1運転台側機器配線が、前記第1運転台側背面板及び前記第1運転台側天井板の前記運転室室外面側に配置されている、請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記各第2運転台側機器は、前記第2運転台機器ユニットの前方側の第2運転台側前方エリア、前記第2運転台機器ユニットの背面側の第2運転台側背面エリア、及び前記第2運転台機器ユニットの天井側の第2運転台側天井エリアに少なくとも分散して配置され、
前記第2運転台側背面エリアに配置された第2運転台側背面機器と前記第2運転台側天井エリアに配置された第2運転台側天井機器とを連結する第2運転台側機器配線が、前記第2運転台側背面板及び前記第2運転台側天井板の前記運転室室外面側に配置されている、請求項2乃至5のうちいずれか一の項に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転室を備えた鉄道車両の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の運転室には、その限られたスペースに多くの機器が配置されている。例えば、中央に通路を有する運転室であれば、通路を挟んで車両幅方向一方側の前方に設けられた運転台や他方側の前方に設けられた運転台だけでなく、運転席の側の壁面や天井にも機器が配置される。さらに、これらの機器の一部は、信号をやり取りするために互いに電線で接続されている。従来、機器同士を連結する接続作業は、配線を運転室の壁面の裏側に敷設し、機器を運転室に取り付け、その上で敷設した配線をそれぞれの機器に接続するという手順で行われていた。しかしながら、この一連の作業は並行して行うことができないため非常に時間がかかり、製造ライン全体の製造工程を遅らせる原因となっていた。
【0003】
ここで、鉄道車両の製造において、ユニット工法(モジュール工法)と呼ばれる工法が採用されることがある。このユニット工法は、鉄道車両の一部をユニット(モジュール)として車外で製造し、これを車内に搬入して所定の位置に取り付ける工法である。ユニット工法に関する文献としては引用文献1及び引用文献2がある。特許文献1及び特許文献2では、ユニット化した艤装品(装備品)を車内に搬入して取り付ける鉄道車両の製作方法が開示されており、作業の効率化を図ることができるとしている。ただし、特許文献1や特許文献2は、運転室のユニット工法については触れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−76905号公報
【特許文献2】特開2002−29418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転室の場合は、機器の設置のみならず、配線の接続作業に多くの時間が割かれる。特に、異なるエリアの機器を電線で接続する接続作業は非常に手間がかる。そのため、単に運転室を部分的にユニット化したとしても、異なるユニット同士をつなぐ接続作業は車内で行う必要があり、製造工程を遅らせる接続作業は減らない。本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車内における配線の接続作業が軽減される運転室を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある形態に係る鉄道車両は、運転室を備えた鉄道車両であって、前記運転室のうち車両幅方向の一方側の部分は第1運転台機器ユニットにより形成されており、前記第1運転台機器ユニットは、前記運転室の車両幅方向の一方側の複数のエリアに分散して配置された複数の第1運転台側機器と、異なるエリアの前記第1運転台側機器同士を連結する第1運転台側機器配線と、前記運転室の一方側の外縁を形成する第1運転台側床面板、第1運転台側側面板、第1運転台側背面板、及び第1運転台側天井板と、を含んでおり、これらが一体となって箱状に形成されている。
【0007】
かかる構成の第1運転台機器ユニットには、運転室の外縁部分が含まれる。また、この外縁部分は、第1運転台側機器配線が取り付けられる箇所でもある。そのため、かかる構成によれば、第1運転台側機器配線をこの第1運転台機器ユニットに含めることができ、第1運転台側機器配線の接続作業を車外で行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、本発明によれば、第1運転台側機器配線の接続作業を車外で行うことができるため、車内での配線の接続作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両の運転室周辺の一部分解斜視図である。
図2図2は、図1に示す第1運転台機器ユニット及び第2運転台機器ユニットの斜視図である。
図3図3は、図1に示す鉄道車両の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る鉄道車両100について説明する。なお、以下の説明において用いる方向に関する用語は、運転室で運転操作を行う運転士の視点を基準としたものである。例えば、「前方」というときは、運転士からみて前方の方向を意味することとする。ここで、図1は、鉄道車両100の運転室10周辺の一部分解斜視図である。図1では、各種の配線を省略している。また、図2は、後述する第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30の斜視図である。なお、図1及び図2中、左斜め下方が前方である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る鉄道車両100は、鉄道車両100の外縁を形成する構体11と、この構体11の内側に配置された運転室10を備えている。構体11は、ステンレスやアルミなどの金属を溶接して形成されている。構体11は、前方側に開口部12が形成された筒状の構体本体13と、構体本体13の開口部12を覆う妻構体14とによって主に構成されている。本実施形態では妻構体14は構体本体13から取り外しできるように構成されている。図1は、この構体本体13からと妻構体14を取り外した状態の図である。また、構体本体13は、天井部分が円弧状に形成されており、車両幅方向中央部分が両端部分よりも高く形成されている。
【0013】
運転室10は、第1運転台機器ユニット20と、第2運転台機器ユニット30と、ユニット間配線40と、合わせ部材50と、背面仕切板60と、によって主に構成されている。以下、これらの各構成要素について順に説明する。
【0014】
第1運転台機器ユニット20は、運転室10のうち車両幅方向の一方側(図1の紙面右側)に位置するユニットである。第1運転台機器ユニット20は、図2に示すように、箱状に形成されており、車外で組み立てられた後、構体本体13の内部に搬入される。第1運転台機器ユニット20は、運転室10のうち一方側の外縁を形成する第1運転台側床面板21、第1運転台側側面板22、第1運転台側背面板23、及び第1運転台側天井板24、を含んでいる。これらの各板21〜24は、第1運転台機器ユニット20が箱状の形態を維持できるように、剛性を有する部材によって形成されている。各板21〜24を形成する部材は特に限定されないが、例えば金属板と非発泡樹脂の板を積層した複合材板を使用することができる。なお、各板21〜24の主面は、長方形となるように形成されている。また、第1運転台側側面板22については、乗務員の出入り用の扉を取り付けるための開口部25が形成されている。
【0015】
また、第1運転台機器ユニット20には、第1運転台26、背面機器箱27、及び天井機器箱28が取り付けられている。このうち第1運転台26は第1運転台機器ユニット20の前方側のエリアである第1運転台側前方エリアに位置し、機器(以下、「第1運転台側前方機器」と称す)が取り付けられるか又は収容されている。背面機器箱27は第1運転台機器ユニット20の背面側のエリアである第1運転台側背面エリアに位置し、機器(以下、「第1運転台側背面機器」と称す)が取り付けられるか又は収容されている。天井機器箱28は第1運転台機器ユニット20の天井側のエリアである第1運転台側天井エリアに位置し、機器(以下、「第1運転台側天井機器」と称す)が取り付けられるか又は収容されている。以下、「第1運転台側前方機器」、「第1運転台側背面機器」、「第1運転台側天井機器」をまとめて、「第1運転台側機器」と称する。つまり、第1運転台側機器は、運転室10の車両幅方向の一方側の複数のエリアに分散して配置されている。
【0016】
さらに、第1運転台機器ユニット20は、第1運転台側機器を連結する第1運転台側機器配線29を含んでいる。第1運転台側機器配線29は、同じエリアのみならず、異なるエリアの第1運転台側機器を連結している。このうち、背面機器箱27に収容された第1運転台側背面機器と、天井機器箱28に収容された第1運転台側天井機器とを連結する第1運転台側機器配線29は、第1運転台側背面板23の運転室10の室外側面(以下、単に裏面ともいう)及び第1運転台側天井板24の運転室10の室外側面(以下、単に裏面ともいう)に配置される。また、第1運転台26に取り付けられた第1運転台側前方機器と、天井機器箱28に収容された第1運転台側天井機器を連結する第1運転台側機器配線29は、第1運転台機器ユニット20の前面側を通り、第1運転台側天井板24の裏面を通るようにして配置される。このように、異なるエリアに配置された第1運転台側機器を連結する第1運転台側機器配線29は、運転室10の室外面側に配置される。このように第1運転台側機器配線29が第1運転台機器ユニット20に含めることができたのは、第1運転台機器ユニット20に運転室10の外縁を形成する各板21〜24が含まれているからである。かかる構成により、第1運転台側機器配線29の接続作業を車外で行うことができ、車内での配線の接続作業を軽減することができる。
【0017】
第2運転台機器ユニット30は、運転室10のうち車両幅方向の他方側(図1の紙面左側)に位置するユニットである。第2運転台機器ユニット30は設置される具体的な機器等は第1運転台機器ユニット20と異なるが、その構成は第1運転台機器ユニット20と基本的に同じである。つまり、第2運転台機器ユニット30は、箱状に形成されており、車外で組み立てることができる。そして、第2運転台機器ユニット30には、運転室10のうち他方側の外縁を形成する第2運転台側床面板31、第2運転台側側面板32、第2運転台側背面板33、及び第2運転台側天井板34が含まれる。
【0018】
また、第2運転台機器ユニット30には、第2運転台36、背面機器箱37、及び天井機器箱38が取り付けられている。このうち第2運転台36は第2運転台機器ユニット30の前方側のエリアである第2運転台側前方エリアに位置し、機器(以下、「第2運転台側前方機器」と称す)が取り付けられるか又は収容されている。背面機器箱37は第2運転台機器ユニット30の背面側のエリアである第2運転台側背面エリアに位置し、機器(以下、「第2運転台側背面機器」と称す)が取り付けられるか又は収容されている。天井機器箱38は第2運転台機器ユニット30の天井側のエリアである第1運転台側天井エリアに位置し、機器(以下、「第2運転台側天井機器」と称す)が取り付けられるか又は収容されている。以下、「第2運転台側前方機器」、「第2運転台側背面機器」、「第2運転台側天井機器」をまとめて、「第2運転台側機器」と称する。つまり、第2運転台側機器は、運転室10の車両幅方向の他方側の複数のエリアに分散して配置されている。
【0019】
また、第2運転台機器ユニット30は、第2運転台側機器を連結する第2運転台側機器配線39を含んでいる。そして、第2運転台側機器配線39は、同じエリアのみならず、異なるエリアの第2運転台側機器を連結している。このうち、背面機器箱37に収容された第2運転台側機器と、天井機器箱38に収容された第2運転台側機器とを連結する第2運転台側機器配線39は、第2運転台側背面板33の運転室10室外側面(以下、単に裏面ともいう)及び第2運転台側天井板34の運転室10室外側面(以下、単に裏面ともいう)に配置される。また、第2運転台36に取り付けられた第2運転台側機器と、天井機器箱38に収容された第2運転台側機器を連結する第2運転台側機器配線39は、第2運転台機器ユニット30の前面側を通り、第2運転台側天井板34の裏面を通るようにして配置される。
【0020】
ユニット間配線40は、第1運転台機器ユニット20内に取り付けられた第1運転台側機器と、第2運転台機器ユニット30内に取り付けられた第2運転台側機器を連結する配線である。本実施形態では、ユニット間配線40は、第1運転台機器ユニット20の上面と第2運転台機器ユニット30の上面を渡るように配置される。なお、本実施形態では上方側に膨らむ弧状に形成されているが、下方側に垂れていてもよい。また、ユニット間配線40は、汎用の電気配線が使用されており、可撓性を有している。
【0021】
合わせ部材50は、第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30の間に配置される部材である。合わせ部材50は、床面側に位置する床面合わせ部材51と、天井側に位置する天井合わせ部材52とにより主に構成されている。このうち、床面合わせ部材51は運転室10の通路を形成し、天井合わせ部材52は通路部分の天井を形成している。床面合わせ部材51及び天井合わせ部材52は、いずれも主面が長方形の板形状を有しており、いずれも車両幅方向の一方側(図1の紙面右側)の端辺に第1運転台機器ユニット20が密着しており、車両幅方向の他方側(図1の紙面左側)の端辺に第2運転台機器ユニット30が密着している。
【0022】
ここで、床面合わせ部材51及び天井合わせ部材52は、その車両幅方向の寸法が、完成状態における第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30の距離に一致するように構成されている。つまり、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30は、床面合わせ部材51及び天井合わせ部材52の車両幅方向の両側の端辺に密着させることで、寸法測定等をすることなく、予め定められた距離で配置することができる。また、合わせ部材50は、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30が互いに近寄る方向へ移動するのを防止するストッパとしても機能する。別の言い方をすれば、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30が移動可能であれば、合わせ部材50を取り除くと両ユニット20、30が互いに近寄る方向へ移動することができる。このように、本実施形態では、第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30を1つの剛体とせず、それらの間に合わせ部材50を設け、合わせ部材50を取り除くことで両ユニット20、30を近づけることができるように構成している。このように構成したことによる効果については後述する。
【0023】
背面仕切板60は、運転室10と客室15を仕切る部材である。背面仕切板60に用いる部材は特に限定されないが、例えば金属板と非発泡樹脂の板を積層した複合材板を使用することができる。なお、背面仕切板60には、運転室10と客室15の間の通路扉が取り付けられる開口部(不図示)が形成されている。また、背面仕切板60は、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30の車両長手方向の位置決めの基準としても機能する。ただし、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30は、背面仕切板60との間に隙間が生じるように配置される。このように配置することで、上述した第1運転台側機器配線29及び第2運転台側機器配線39の設置スペースが確保される。
【0024】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る鉄道車両100の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る鉄道車両100の分解斜視図である。ここでは、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30が車外で既に組み立てられており、両ユニット20、30がユニット間配線40で連結されていることとする。また、図3に示すように、ここでは妻構体14は構体本体13から取り外された状態にあることとする。
【0025】
まず、図3に示すように、構体本体13に背面仕切板60を所定の位置に設置する。背面仕切板60は、構体本体13の開口部12から搬入する。背面仕切板60を設置した後は、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30を構体本体13に搬入する。具体的には、第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30を近づけ、その状態で構体本体13に搬入する。上述したように、ユニット間配線40は可撓性を有しているため、両ユニット20、30が近づくことで多少歪んだとしても破損することはない。さらに、ユニット間配線40は、第1運転台機器ユニット20の上面と第2運転台機器ユニット30の上面を渡るように配置されるため、ユニット間配線40は、両ユニット20、30が近づくと上方又は下方に変位することになる。
【0026】
なお、第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30を近づける理由は次のとおりである。第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30は運転室10の側面や天井を含む外縁部分を形成するものでもあるから、車両幅方向および上下方向寸法が非常に大きい。一方、構体11の内部における車両幅方向および上下方向寸法は、運転室10の車両幅方向および上下方向寸法に対してそれほど大きくない。構体11の車両幅方向寸法に関して言えば、構体11からは各ユニット20、30を構体11に結合するための内骨(図示せず)が突出しており、両ユニット20、30をそのまま搬入すると構体本体13と接触してしまうおそれがある。また、構体11の上下方向寸法に関して言えば、構体本体13のうち車両幅方向の両端部分は高さが低いため、両ユニット20、30をそのまま搬入すると構体本体13と接触してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、両ユニット20、30を近づけ、その状態で構体本体13の車両幅方向中央付近から搬入している。この場合、各ユニット20、30と構体本体13の側面および天井部分との間に比較的大きな隙間が生じるため、構体本体13と各ユニット20、30が接触する危険性が低下する。そして、このように第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30を近づけることが可能となるよう、本実施形態では両ユニット20、30を1つの剛体とせず、それらの間に両ユニット20、30とは別体の合わせ部材50を設けているのである。
【0027】
続いて、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30を構体本体13に搬入した後は、両ユニット20、30をそれらの間が広くなるよう移動し、それぞれが構体本体13の側壁近傍に位置するように配置する。このとき、両ユニット20、30を予め決められた正確な位置に配置する必要はない。その後、床面合わせ部材51及び天井合わせ部材52を第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30の間に挿入する。上述したように、第1運転台機器ユニット20及び第2運転台機器ユニット30は、床面合わせ部材51及び天井合わせ部材52の車両幅方向の両側の端辺に密着させることで、互いに予め定められた距離で配置することができる。なお、ユニット間配線40は、天井合わせ部材52の寸法を考慮して長さを決定しているため、第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30の距離を天井合わせ部材52に合わせれば、天井合わせ部材52の設置の障害になるほど垂れ下がることはない。そのため、ユニット間配線40は、天井合わせ部材52を設置する際の障害にはならない。
【0028】
続いて、第1運転台機器ユニット20と第2運転台機器ユニット30を構体本体13に固定するとともに、電源用の配線の接続など、運転室外部との間の最小限の配線の接続作業を行う。なお、第1運転台機器ユニット20内での接続作業、第2運転台機器ユニット30内での接続作業、及び両ユニット20、30を渡っての接続作業は車外において既に完了しているため不要である。このように、本実施形態によれば、時間のかかる配線の接続作業の多くを車内で行う必要がないため、効率よく作業を進めることができる。
【0029】
このようにして運転室10を形成した後、最後に構体本体13の開口部12を妻構体14で塞ぎ、妻構体14を構体本体13に固定する。そして、その他の必要な組立作業を行うことで鉄道車両100は完成する。以上が、本実施形態に係る鉄道車両100の製造方法である。
【0030】
以上のとおり、本実施形態に係る鉄道車両は、運転室を備えた鉄道車両であって、前記運転室のうち車両幅方向の一方側の部分は第1運転台機器ユニットにより形成されており、前記第1運転台機器ユニットは、前記運転室の車両幅方向の一方側の複数のエリアに分散して配置された複数の第1運転台側機器と、異なるエリアの前記第1運転台側機器同士を連結する第1運転台側機器配線と、前記運転室の一方側の外縁を形成する第1運転台側床面板、第1運転台側側面板、第1運転台側背面板、及び第1運転台側天井板と、を含んでおり、これらが一体となって箱状に形成されている。このように、第1運転台機器ユニットには運転室の外縁部分が含まれるため、第1運転台側機器配線も含むことができ、車外で第1運転台側機器配線の接続作業を行うことができる。よって、車内での配線の接続作業を軽減することができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、前記運転室のうち車両幅方向の他方側の部分は第2運転台機器ユニットにより形成されており、前記第2運転台機器ユニットは、前記運転室の車両幅方向の他方側の複数のエリアに分散して配置された複数の第2運転台側機器と、異なるエリアの前記第2運転台側機器同士を連結する第2運転台側機器配線と、前記運転室の他方側の外縁を形成する部分を構成する第2運転台側床面板、第2運転台側側面板、第2運転台側背面板、及び第2運転台側天井板と、を含んでおり、これらが一体となって箱状に形成されている。かかる構成により、車内での配線の接続作業を軽減できることは、第1運転台機器ユニットの場合と同様である。
【0032】
また、前記運転室は、前記第1運転台機器ユニットと前記第2運転台機器ユニットの間に位置して前記運転室の外縁の一部を形成するとともに、前記第1運転台機器ユニット及び前記第2運転台機器ユニットが互いに近寄る方向へ移動するのを防止する合わせ部材を有している。上述のように、第1運転台機器ユニット及び第2運転台機器ユニットとは別体の合わせ部材を設けることで(すなわち両ユニットが1つの剛体となるのを避けることで)、両ユニットを近づけることができ、その結果として構体本体への搬入が容易となる。
【0033】
また、前記運転室は、前記第1運転台側機器と前記第2運転台側機器を連結し、前記第1運転台機器ユニットの上面と前記第2運転台機器ユニットの上面を渡すようにして配置されたユニット間配線を有している。かかる構成によれば、ユニット間配線は、第1運転台機器ユニットの上面と第2運転台機器ユニットの上面を渡すようにして配置されているため、合わせ部材(天井合わせ部材)の挿入の障害になることもない。
【0034】
また、前記第1運転台機器ユニットは、前記合わせ部材の車両幅方向の一方側の端辺に密着して設置されているとともに、前記第2運転台機器ユニットは前記合わせ部材の車両幅方向の他方側の端辺に密着して設置されている。これは、合わせ部材がゲージとして機能しているからであり、第1運転台機器ユニットと第2運転台機器ユニットの位置合せが容易となる。
【0035】
また、前記各第1運転台側機器は、前記第1運転台機器ユニットの前方側の第1運転台側前方エリア、前記第1運転台機器ユニットの側面側の第1運転台側背面エリア、及び前記第1運転台機器ユニットの天井側の第1運転台側天井エリアに少なくとも分散して配置されており、前記第1運転台側背面エリアに配置された第1運転台側背面機器と前記第1運転台側天井エリアに配置された第1運転台側天井機器とを連結する第1運転台側機器配線が、前記第1運転台側背面板及び前記第1運転台側天井板の前記運転室室外側面側に配置されている。このように、第1運転台側機器配線が、第1運転台側背面板及び第1運転台側天井板の運転室室外側面側に配置される場合でも、車外で第1運転台側機器配線の接続作業を行うことができる。
【0036】
また、前記各第2運転台側機器は、前記第2運転台機器ユニットの前方側の第2運転台側前方エリア、前記第2運転台機器ユニットの背面側の第2運転台側背面エリア、及び前記第2運転台機器ユニットの天井側の第2運転台側天井エリアに少なくとも分散して配置され、前記第2運転台側背面エリアに配置された第2運転台側背面機器と前記第2運転台側天井エリアに配置された第2運転台側天井機器とを連結する第2運転台側機器配線が、前記第2運転台側背面板及び前記第2運転台側天井板の前記運転室室外側面側に配置されている。このような場合でも、車外で第1運転台側機器配線の接続作業を行うことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、鉄道車両を製造する際、車内での配線の接続作業を軽減することができる。よって、本発明は、鉄道車両の技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0039】
10 運転室
11 構体
20 第1運転台機器ユニット
21 第1運転台側床面板
22 第1運転台側側面板
23 第1運転台側背面板
24 第1運転台側天井板
29 第1運転台側機器配線
30 第2運転台機器ユニット
31 第2運転台側床面板
32 第2運転台側側面板
33 第2運転台側背面板
34 第2運転台側天井板
39 第2運転台側機器配線
40 ユニット間配線
50 合わせ部材
100 鉄道車両
図1
図2
図3