(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記満空状況の判定を所定の期間毎に行なうと共に、前記一つの期間における満空の判定を、該期間の前の期間での満空の判定結果により修正する請求項1ないし請求項3のいずれか記載の駐車場満空判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、具体例を挙げて説明する。
図1は、駐車場満空判定システムの概略構成図である。
図1に示した駐車場満空判定システム10は、以下に説明するいくつかの実施例に共通で用いられるハードウェア構成を例示している。図示するように、駐車場満空判定システム10は、プローブ車両AMに搭載された車両ナビゲーションシステム(以下、「ナビゲーション」は単に「ナビ」と記載することがある)20、車両ナビシステム20とネットワークNWを介して接続されるセンタサーバ50から構成されている。この駐車場満空判定システム10は、ネットワークNWとして、携帯電話用の3G回線およびインターネットを用いたネットワークを採用しており、各種端末からアクセス可能となっている。各種端末としては、スマートフォンなどの携帯電話60、タブレット端末70、ナビゲーションシステムを搭載した車両80、一般のコンピュータ90等がある。これらの端末は、3G回線用の基地局を介して、ネットワークNWに接続される。なお、ネットワークの構成としては、3G回線を用いたものに限られず、無線LANとインターネットを組み合わせた構成、FM波によるVICS(商標)を一部に用いた構成など、種々の構成が採用可能である。
【0018】
車両ナビシステム20について説明する。この車両ナビシステム20は、制御部21を中心に、地図データベース(以下、「データベース」を「DB」と略記することがある)22、GPS受信部24、車載センサ25、表示部26、通信部27などを備えている。地
図DB22には、少なくとも走行用の道路に関する情報を記憶した地図データと、地域に存在する駐車場の詳細な情報からなる駐車場データ(場内情報に相当するデータ)が含まれる。地
図DB22に保存されているデータの一例を
図2に示した。地図データは、複数のレイヤに別れてデータを管理しており、地域に存在する各種施設のデータを、特定のレイヤに集めて管理している。
図2では、商業施設SMとこれに隣接する駐車場PSとが表示されている。これらの施設データは、他のレイヤに記憶された道路のデータや緯度経度のデータと関連づけて記憶されている。また、地
図DB22に含まれる駐車場データは、駐車場を特定するための駐車場IDと共に、
図2の下段に示したように、場内のエリアAないしCや、車両出入口の位置情報、歩行者用出入口の位置情報なども記録されている。なお、地図データは、車両AMにおける走行案内(ナビゲーション)にも用いられるが、本実施例では、走行案内自体は、直接関係しないので、走行案内の手法については説明しない。もとより、地図データは、駐車場の位置の表示の際などに参照される。
【0019】
GPS受信部24は、GPS測位システムの信号を受信して、現在の位置を特定する機能を有する。制御部21は、このGPS受信部24とデータのやり取りすることで、現在の車両の位置を正確に把握することができる。なお、後述するように、駐車場内での車両AMの位置は、メートル単位で測定される。地下駐車場や都市のビルの林立した地域の駐車場内などで、GPS衛星からの電波の受信状態が悪い場合には、駐車場内にGPS信号と同じ信号を発信する発信装置を設け、いわゆる屋内測位技術(IMES)を併用する構成とすることも差し支えない。制御部21は、GPSにより測定された位置の情報を用いて、後述する駐車場内での走行距離や駐車位置を認識しているが、車両AMに搭載された各種車載センサ25からの信号を用いたり、併用することも可能である。例えば、各種センサの一つである車輪の回転数センサからの信号を取り込み、車輪の回転数Nと車輪の外周長Lとから、走行距離を求める構成とすることも可能である。これはいわゆるディップメータとしての機能である。したがって、ディップメータから、直接走行距離のデータを読み込むこととしても良い。
【0020】
車両ナビシステム20は、走行中の場所の地図や駐車場の満空状況の判定結果などを、表示部26に表示する。また、通信部27を用いて、センタサーバ50とデータのやり取りを行なう。こうした車両ナビシステム20での各種制御については、後でフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0021】
センタサーバ50は、全体の制御を司るCPU51、データを一時的に記憶するメモリ52、駐車場の所在など駐車場に関する固定的な情報や、車両ナビシステム20から送られる駐車情報などを蓄積する駐車場データベース54、ネットワークを介したデータのやり取りを行なう通信部55などが備えられている。CPU51は、メモリ52に記憶されたプログラムを実行することにより、駐車場の満空状況の判定処理や車両ナビシステム20および各種端末との間でデータのやり取りを行なう処理などを行なう。この処理の内容は、フローチャートを用いて後述する。なお、CPU51が実行するプログラムは、図示しないROMあるいはハードディスクからメモリ52にロードされて実行される。もとより、ROMなどから直接実行することも差し支えない。
【0022】
[第1実施例]
次に、駐車場満空判定システム10の第1実施例について説明する。第1実施例の駐車場満空判定システム10では、車載の車両ナビシステム20とセンタサーバ50とがデータをやり取りして、満空状況の判定に関する処理を行なっている。駐車場満空判定システム10としての処理は、大きくは、
(A)プローブ車両AMからの情報をセンタサーバ50が受け取り、
(B)この情報に基づいて、センタサーバ50が満空状況の判定を行ない、
(C)その結果を、各種端末60ないし90からの問い合わせに対して出力する、
というものである。第1実施例では、上記(A)の処理を
図3に、(B)の処理を
図6および
図8に、(C)の処理を
図10に、それぞれ示した。以下、順次これらの処理について説明する。
【0023】
図3は、プローブ車両AMに搭載された車両ナビシステム20が行なう制御ルーチンと、車両ナビシステム20からの情報を受け取るセンタサーバ50の処理とを対応付けて示すフローチャートである。車両ナビシステム20は、
図3左側に示した処理S102ないしS108を、所定のインターバルで繰り返し実施している。この処理を開始すると、制御部21は、GPS受信部24からの信号を受け取り、車両の位置を検出する処理を行なう(ステップS102)。制御部21は、検出した位置を用いて地
図DB22を参照することにより、自身が、いずれかの駐車場内に位置しているか否かについて判断する(ステップS104)。駐車場内に入ったか否かは、GPSからの信号のみで判断しても良いし、IMESなどが駐車場に取り付けられていれば、その信号を検出しているか否かの情報を併せて判断しても良い。あるいは、駐車場の入口に設けられたゲートとの間で信号をやり取りすることで、駐車場内への進入を判断するものとしても良い。
【0024】
車両が駐車場内に入っていなければ、制御部21は、駐車場満空判定に係わる特別な処理を行なわず、ナビ装置としての通常の処理(地図を表示部26に表示する処理や経路案内の処理など)を行ない(ステップS106)、その後、「NEXT」に抜けて、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0025】
他方、プローブ車両AMが、駐車場内に位置していると判断した場合には(ステップS104)、制御部21は、駐車情報を生成する処理を行なう(ステップS107)。プローブ車両AMにおいて生成される駐車情報の一例を
図4に示した。駐車情報は、実際には、車両AMが駐車場内に入った後、駐車された時点で生成される。車両が駐車したか否かは、車両の停車位置およびイグニッションスイッチオフ(あるいはシフトポジションが「パーキング」)などの判定を行なうことにより判断可能である。これらの条件は、各種の車載センサ25からの信号に基づいて判断可能である。
図4に示した例では、駐車情報は、プローブ車両を識別する「車両ID」、駐車した駐車場を示す「駐車場ID」、駐車場内の駐車したエリアを示す「エリア番号」、駐車場に入ってから駐車するまでに要した「駐車所要時間」、駐車した位置から歩行者用出入口までの距離を示す「駐車距離」、駐車した時刻を示す「駐車時刻」などのデータから構成されている。なお、第1実施例では、プローブ車両AMが駐車した駐車場は平地の駐車場であり、駐車用のフロアは一つであり、そのフロア内にエリアの区別は特にされていない。
図2に即して言えば、符号AないしCの区別はなく、プローブ車両AMは、駐車場内が全てエリア番号Aとされている駐車場に駐車したものとして以下説明する。駐車場IDやエリア番号、あるいは歩行者用出入口の位置などは、予め地
図DB22内の駐車場データに記録されている。これらの情報は、予め収集して、地
図DB22に、駐車場データとして記録しておいたが、車両AMが駐車場内に入ったときに、駐車場側とデータ交換して取得するものとしても良い。
【0026】
車両ナビシステム20は、ステップS107において駐車情報を生成すると、これを、センタサーバ50に向けて送信する処理を行なう(ステップS108)。車両ナビシステム20は、駐車場の満空の判定に必要となる駐車情報を、必要があれば、他の情報と共にパケットにまとめ、
図4に示した駐車車両データA1として、ネットワークNWを介してセンタサーバ50に送信するのである。
【0027】
センタサーバ50は、
図3に示したセンタサーバ受信処理ルーチンを、パケットが通信部55に到達するたびに繰り返し実行する。プローブ車両AMから送信された駐車車両データA1のパケットが通信部55に到達した場合には、そのデータは、センタサーバ50により受け取られる(ステップS110)。ネットワークNWに向けて送信されたパケットには、ヘッダ部に、送信先であるセンタサーバ50のIPアドレスなどの情報が付加されているので、センタサーバ50が、自分宛のパケットを識別してこれを取り込むことは容易である。センタサーバ50は、プローブ車両AMから送信された駐車車両データA1を受け取ると、ここから駐車情報を抽出し、駐車場データベース54内に記憶した駐車場データのうち、対応する駐車場のデータを更新する処理を行なう(ステップS112)。なお、こうした駐車場データの更新は、予め駐車場毎に用意されたテーブル内のデータを、受信した駐車車両データにより最新のデータに書き換え、書き換えられた時間を記録することによって行なっても良いし、受信した最新の駐車車両データを、後述する満空判定の処理で用いられるまでバッチファイルとして単に蓄積しておくだけでも良い。本実施例では、後者の態様を採用している。
【0028】
以上の処理の後、
図3に示した車両ナビ制御ルーチンおよびセンタサーバ受信処理ルーチンは、それぞれ一旦終了する。プローブ車両AMは、実際には、複数台存在しており、そのうちの1台でもいずれかの駐車場に駐車すれば、
図4に例示した駐車車両データを送信してくる。センタサーバ50は、このデータを順次受け取り、駐車場毎に蓄積していく。その上で、センタサーバ50は、上述した(B)の処理、即ち、駐車場の満空状況を判定する処理を実行する。この処理は、第1実施例では、15分おきに実行されるものとした。
図5は、この処理の様子を示す説明図である。センタサーバ50は、15分を一つの期間として、各駐車場の満空状況の判定を行なう。
図5では、符号Tn が、センタサーバ50が満空状況の判定を行なおうとしているタイミングを示している。センタサーバ50は、現在の時点Tn では、その前の15分間(Tn-1 からTn まで)に蓄積された駐車情報に基づいて、判定を行なう。15分前の時刻Tn-1 では、同様にその前の15分間(時刻Tn-2 から時刻Tn-1 まで)に蓄積された駐車情報に基づいて、判定を行なう。
図5では、判定を行なおうとしている駐車場に、直前の15分間に4台の車両Z1ないしZ4が駐車した場合を例示している。この場合、各車両Z1ないしZ4は、それぞれ駐車車両データA1ないしA4を、センタサーバ50に送信し、センタサーバ50は、これを蓄積している。
【0029】
センタサーバ50が実行するセンタサーバ満空判定処理ルーチンを
図6に示した。センタサーバ50は、15分毎に、このルーチンを起動すると、まず未処理の駐車情報が存在するか否かの判断を行なう(ステップS120)。未処理のデータとは、車両から受け取った駐車車両データが、バッチファイルとして蓄積されているか否かにより判断することができる。15分の間に蓄積された未処理の駐車車両データがあると判断されれば、満空状況の判定を行なおうとしている駐車場に該当する駐車車両データをバッチファイルから全て読み出す処理を行なう(ステップS122)。判定の対象となる駐車場に関する駐車車両データであるか否かは、駐車場IDにより容易に識別することができる。
【0030】
こうして読み出した駐車車両データから満空状況の判定に必要な駐車情報を抽出し、センタサーバ50は、満空状況判定処理(ステップS130)を実行し、判定の対象となった駐車場についての満空状況の判定を行なう。その後、判定の結果を、送信可能に準備し(ステップS150)、未処理のデータがなくなるまで、上述した処理を繰り返す。バッチファイルに未処理のデータがなくなれば、「NEXT」に抜けて処理を終了する。
【0031】
第1実施例における満空状況判定処理(ステップS130)について、例を挙げて詳しく説明する。
図7は、満空状況の判定を行なう駐車場とブロック車両の駐車の一例を示す平面図である。
図7に例示した駐車場は、平地駐車場であり、その内部は一つのエリアしか設定されていない。破線で示された矩形は、各駐車スペースを示す。図示左上に、左から車両が進入可能な車両出入口があり、図示右側下方に歩行者用の出入口がある。満空状況の判定期間(第1実施例では15分)の間に、この駐車場には、2台の車両ZA,ZBが駐車したものとする。図示したように、車両ZAは、駐車場内を進行案内方向に沿って約1周半して、歩行者用出入口に近い駐車位置に駐車した。他方、車両ZBは、車両出入口から入ってすぐの駐車スペースに駐車した。この結果、車両ZAの駐車情報は、駐車所要時間は、例えば600秒と長く、歩行者用出入口までの駐車距離は5メートルと短いものとなり、車両ZBの駐車情報は、駐車所要時間は、例えば45秒と短く、歩行者用出入口までの駐車距離は25メートルと長いものとなる。2台のプローブ車両ZA,ZBは、この駐車情報を含む駐車車両データを、駐車後、センタサーバ50に送信している。
【0032】
第1実施例において行なわれる駐車場の満空状況の判定処理の詳細を
図8に示した。
図8の処理は、
図6に示したセンタサーバ満空判定処理ルーチンにおけるステップS130に相当する。センタサーバ50が、未処理のデータがあると判定してこれを読み出した後、満空状況判定処理を開始すると、まず駐車車両データから駐車情報を特定する処理を行なう(ステップS132)。駐車した各プローブ車両は、駐車情報を含む駐車車両データを送信してきているので、駐車車両データから必要な駐車情報を特定するのである。次に、この駐車情報を、満空判定マトリクスにプロットする処理を行なう(ステップS134)。
【0033】
満空判定マトリクスの一例を
図9に示した。第1実施例における満空判定マトリクスは、2軸のうちの一つを駐車所要時間とし、他を歩行者用出入口までの距離(駐車距離)とするものであり、
図9では、両軸が直交する二次元マップとして示した。
図9において、駐車所要時間は縦軸に割り当てられ、所要時間は下が短く上が長いものとして設定されている。同様に、駐車距離(歩行者用出入口との関係)は、横軸の左が短く(近く)、右が長い(遠い)ものとして設定されている。この満空判定マトリクスには、「空車傾向」「混雑傾向」「満車傾向」の3の領域が設定されている。空車傾向は、
図9における左下の領域、即ち駐車所要時間が短くかつ歩行者用出入口が近い(駐車距離が短い)領域として設定されている。満車傾向は、空車傾向の領域とはほぼ正反対の性質を持つ領域として設定されているが、空車傾向の領域より広く、駐車所要時間が長いものの歩行者用出入口が近い(駐車距離が短い)という条件や、逆に、駐車所要時間が短いものの歩行者用出入口が遠い(駐車距離が長い)という条件を含む領域として設定されている。混雑傾向の領域は、空車傾向と満車傾向の領域の中間の帯域として設定されている。
【0034】
第1実施例における駐車情報は、この駐車所要時間と駐車距離とが含まれている。即ち、第1実施例では、この2つの情報を、駐車場内における車両の挙動として扱っている。
図7に示した例では、各車両の挙動を示す駐車情報は以下の通りであった。
(1)車両ZAについての駐車情報
・駐車所要時間:600秒
・駐車距離:5メートル
(2)車両ZBについての駐車情報
・駐車所要時間:45秒
・駐車距離:25メートル
この両データを、
図9に示した満空判定マトリクス上にプロットすると、車両ZAについては、
図9左上の満車傾向の領域の端に、車両ZBについては、
図9右下の満車傾向の領域の端に、それぞれプロットされる。その上で、センタサーバ50は、この駐車場の満空状況を判定する処理を行なう(ステップS136)。この例では、2台のプローブ車両ZA,ZBは、いずれも満車傾向の領域にブロットされたので、この駐車場は、満車傾向にあるとして記録する。以上で、一つの駐車場についての満空状況判定処理を完了する。なお、複数台のプローブ車両からの駐車情報を満空判定マトリクスにプロットした結果が一致しない場合には、本実施例では、最も満車傾向側の傾向を、その駐車場についての満空状況として判定するものとしている。例えば、車両ZAが満車傾向を示し車両ZBが混雑傾向を示せば「満車傾向」と判定し、車両ZAが混雑傾向を示し車両ZBが空車傾向を示せば、「混雑傾向」と判定するのである。
【0035】
以上説明した満空状況判定処理(
図6、ステップS130)を完了すると、既に、
図6を用いて説明したように、その結果を送信可能に準備し(ステップS150)、全ての駐車場についての処理が完了するまで、
図6に示した処理を繰り返す。
【0036】
以上説明した処理により、15分おきに、各駐車場についての満空状況の判定結果が用意され送信可能に準備されるから、
図1に示した各種端末60ないし90は、この判定結果をいつでも利用することができる。各種端末からの問い合わせとセンタサーバ50による応答処理を、
図10に示した。
【0037】
端末として車両80が問い合わせるケースを想定して以下説明する。この車両80は、説明の都合上、
図1のプローブ車両AMと同様のハードウェアを有するものとする。この車両80における車両ナビシステム20が
図10に示した処理を開始すると、車両ナビシステム20は、現在位置を含む近隣地域の地図を表示部26に表示する(ステップS160)。現在位置は、GPS受信部24からの信号を処理することにより、取得する。その上で、ユーザからの問い合わせたい駐車場または地域の指定を受け付ける処理を行なう(ステップS162)。表示部26に現在車両が所在する地域の地図が表示されるので、ユーザは、この地図を見ながら、例えば表示部26を直接指でタップするといった手法により、容易に、指定を行なうことができる。車両ナビシステム20は、指定された駐車場や地域などの情報を、センタサーバ50に送信する(ステップS164)。
【0038】
センタサーバ50は、受信処理を行なって(ステップS170)、受け取った情報が端末からの問い合わせであると判断すると(ステップS172)、該当駐車場、つまり問い合わせを受けた駐車場あるいは問い合わせを受けた地域に属する駐車場として、満空状況の判定結果を記憶している駐車場があるか否かを判断する(ステップS174)。該当駐車場の満空判定結果を記憶している場合には、次に満空状況の判定結果を出力する処理を行なう(ステップS176)。判定結果を、問い合わせた端末に返送するのである。問い合わせた端末は、ネットワークNW上のアドレスを付けたパケットにより、問い合わせをしてくるので、問い合わせた端末に、判定結果を届けることは容易である。なお、該当駐車場についての判定結果を記憶していない場合には、その旨の回答を行なう。
【0039】
ステップS164で問い合わせを送信した車両ナビシステム20は、回答があるまで受信処理を繰り返し(ステップS165、166)、センタサーバ50からの回答を待つ。回答があれば、その結果を表示部26に表示する処理を行なう(ステップS168)。回答の表示は、問い合わせが駐車場に関するものであれば、その駐車場の満空状況の判定結果であり、問い合わせが地域に関するものであれば、その地域に属する駐車場の満空状況の判定結果である。表示は、可読性を高めるために、駐車場毎に「空」(空車傾向)、「混」(混在傾向)、「満」(満車傾向)のように、アイコンにより表示するものとしている。なお、判定結果がないとの回答があった場合には、駐車場毎の表示は行なわず、単に「満車/空車に関する情報はありません」と表示すればよい。もとより音声によって回答するものとしても良い。
【0040】
以上説明した第1実施例の駐車場満空判定システム10によれば、駐車場の満空状況の判定を、車両駐車場内での挙動を示す駐車情報、即ち駐車所要時間と駐車距離(歩行者用出入口までの距離)との組み合わせにより行なっているので、少ないプローブ車両からの駐車情報しか得られない状況でも、駐車場の満空状況を、精度良く判定することができ、これを問い合わせた端末において表示させることができる。したがって、利用者は、精度の良い満空状況の判定結果を得て、適切な駐車場に駐車したり、車に代わる交通機関を選択するなどの行動をとることができ、高い利便性を得ることができる。
図9に示した例では、駐車所要時間のみで判断したのでは、車両ZBの駐車情報では、空車傾向と誤って判定してしまいがちである。本実施例によれば、例え車両ZBの駐車情報しか得られなかった場合でも、実際の駐車場の満空状況に即した判定結果が得られる可能性が高い。
【0041】
なお、駐車情報の内容は同一でも、その条件が、駐車場における満空判定において持つ意味は駐車場の規模、設置箇所などの駐車場の条件によっても変化する。駅に隣接した大規模駐車場における「歩行者用出入口に近い」という距離と、郊外の小規模駐車場におけるそれとは異なる。したがって、
図9に例示した満空判定マトリクスは、駐車場の種別(例えば駐車台数の大中小など)などの条件毎に異なるものとしても良いし、各駐車場毎に個別に用意しても良い。更に、満空状況の判定結果をモニタして、より実情に即した判定結果となるように、満空判定マトリックスにおける空車傾向、混雑傾向、満車傾向などの領域を修正するものとしても良い。モニタによる満空判定マトリクスの修正は、同様に条件を備えた他の駐車場の満空判定マトリクスに反映することも望ましい。
【0042】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について説明する。第2実施例では、満空状況の判定を行なう際のインターバル(第1実施例では15分)間に所定数以上のプローブ車両から駐車車両データが得られるケースを想定した処理を行なっている。第2実施例の駐車場満空判定システム10は、ハードウェア構成は第1実施例と同一であり、
図11に示した満空状況判定処理(第1実施例では
図8)以外は同様の処理がなされている。したがって、プローブ車両が駐車場に入ると駐車情報を生成し、駐車車両データとしてセンタサーバ50に送信してくることや、センタサーバ50は、この情報を蓄積し、15分毎に、満空判定処理ルーチン(
図6)を実行して、満空状況判定処理を行ない、端末からの問い合わせに対して満空状況の判定結果を返すといった点では、第1実施例と同様である。そこで、以下、第2実施例に固有の処理を中心に説明する。
【0043】
第2実施例では、端末である車両80からの問い合わせがあり、満空状況判定処理が開始されると、
図11に示したように、まず駐車車両データから駐車情報を特定する処理を行なう(ステップS212)。駐車した各プローブ車両は、駐車情報を含む駐車車両データを送信してきているので、駐車車両データから必要な駐車情報を特定するのである。第2実施例で扱う車両駐車データについて
図12を用いて説明する。この例では、判定の期間に、4台のプローブ車両Z1ないしZ4が、駐車場内に駐車している。なお、駐車場内における駐車スペースや、駐車場の車両出入口と歩行者用出入口の配置などは、第1実施例(
図7)と同様である。この4台のプローブ車両Z1ないしZ4の駐車情報を、第1実施例と同様に満空判定マトリクスにプロットすると、
図13に例示した結果となる。この場合、第1実施例では、最も満車傾向側の傾向をその駐車場についての満空状況として判定することから、車両Z1の満空状況が、「混雑傾向」と判定されるので、駐車場としては、「混雑傾向」と判断される可能性が高い。
【0044】
第2実施例では、こうした複数台からの駐車車両データが蓄積されている場合には、平均駐車所要時間を算出し(ステップS214)、更に平均駐車距離を算出する(ステップS216)。平均駐車所要時間は、
図14に示したように、判定のタイミングの前の時間帯Tn-1 に駐車した車両の駐車所要時間を、駐車情報から取り出し、これを平均することにより求めるのである。この例では、4台のプローブ車両Z1ないしZ4の平均駐車所要時間は、単純な算術平均により、338秒となった。もとより、単純な算術平均に代えて、重み付け平均や、中央値あるいは最頻値などの統計的処理を施した値を、平均駐車所要時間としても良い。重み付けをする場合には、より直近の駐車情報ほど重み付けを重くしたり、プローブ車両毎に重み付けを変えたりすることが考えられる。後者は、例えば、プローブ機能が高精度な車両ほど重み付けを重くしたり、その駐車場を以前に利用した人ほど重み付けを重くするといった対応が考えられる。走行位置や走行距離の精度が高いほどデータの信頼性が高く、利用経験者や常連ユーザほど、的確に利便性の高い位置に駐車しようとすると想定されるからである。
【0045】
同様に、平均駐車距離は、
図15に示したように、判定のタイミングの前の時間帯Tn-1 に駐車した車両の駐車距離を、駐車情報から取り出し、これを平均することで求めるのである。この例では、4台のプローブ車両Z1ないしZ4の平均駐車距離は、単純な算術平均により、17.3メートルとなった。平均所要時間同様、単純な算術平均に代えて、重み付け平均や、中央値あるいは最頻値などの統計的処理を施した値を、平均駐車距離としても良い。重み付けをする場合に、より直近の駐車情報ほど、あるいはその駐車場に慣れた人ほど重み付けを重くすると行った手法は、平均駐車所要時間と同様に適用することができる。
【0046】
こうして駐車情報を構成する駐車所要時間と駐車距離とをそれぞれ平均化した平均駐車所要時間と平均駐車距離とにより、満空判定マトリクスへのプロットを行なう(ステップS217)。このプロットを
図13に符号AVZとして示した。満空判定マトリクスへのブロットの結果により、満空状況の判定結果を得て、これを記憶する(ステップS218)。以上の処理により、第2実施例の満空状況判定処理は完了する。この結果、第2実施例では、複数のプローブ車両からの駐車車両データを受け取ると、その駐車情報を平均化して満空状況の判定を行なうので、平均的な状況を反映した的確な判定を行なうことができる。複数のプローブ車両のうちの一台が、何らかの事情で特異な挙動をした場合でも、平均化することにより、特異なデータによる誤判定を行なうことがない。その余の作用効果は、第1実施例と同様である。
【0047】
[第3実施例]
次に本発明の第3実施例を説明する。第3実施例では、第1,第2実施例と同一のハードウェア構成は第1,第2実施例と同一であり、満空状況判定処理(第1実施例では
図8、第2実施例では
図11)以外は、ほぼ同様の処理がなされている。したがって、プローブ車両が駐車場に入ると駐車情報を生成し、駐車車両データとしてセンタサーバ50に送信してくることや、センタサーバ50は、この情報を蓄積し、15分毎に、満空判定処理ルーチン(
図6)を実行して、満空状況判定処理を行ない、端末からの問い合わせに対して満空状況の判定結果を返すといった点では、第1実施例と同様である。そこで、以下、第3実施例に固有の処理を中心に説明する。
【0048】
第1,第2実施例では、平地駐車時用を例としたが、実際には立体駐車場や平地の駐車場であっても複数のエリアに区分されている駐車場なども少なくない。また、物理的には複数のエリアに区分されていなくても、満空状況の傾向等により、複数のエリアに区分した場内情報を設定して記憶することもできる。こうした場合には、駐車場内にいくつかのエリアを設定し、エリア毎の満空状況を組み合わせることで、満空状況の判定を行なう点で、第1,第2実施例と相違する。例えば
図16に示した平地駐車場では、歩行者用出入口の属する矩形の領域をエリアA、その外側の領域をエリアB、更にその外側に相当する残余の領域をエリアC、としてそれぞれ設定している。符号「○」は車両にとっての駐車場入口を、符号「◎」は歩行者用出入口を、それぞれ示している。その上で、駐車しようとする人は、例えエリアBやCに空きがあっても、歩行者用出入口に近いエリアAに駐車スペースがあれば、エリアAへの駐車を優先すると想定している。エリアAへの駐車を優先するとは、
図2や
図7に例示した駐車場では、通路を何周かしたりエリアAから出ていく車両があるのを待ってでも、つまり駐車所要時間が長くなっても、エリアAに駐車しようとすることである。そうした優先度を考慮して、エリアA,B,C間に、エリア間満空傾向順列として、A>B>C、を設定する。このエリア間満空傾向順列は、エリアBがエリアAより先に満車になることはなく(同様に、エリアCがエリアBより先に満車になることはなく)、エリアCが満車になった時点で、駐車場が満車になったと判断できるということを意味している。これが、本発明における「指標」に相当する。
【0049】
こうした駐車場におけるエリア毎の駐車車両の挙動の違いは、立体駐車場では更に顕著に現われることが多い。
図17は、4つのフロアを有する単独接地の立体駐車場の模式図である。単独接地とは、商業施設などに付設の駐車場ではない、という意味である。
図17に例示した立体駐車場では、各階に各階のエリアAないしDと歩行者用出入口が設けられ、1階フロアには更に車両用の入口と2階フロアへの車両出入口とがあり、2、3階には上下階への、4階には下階への車両用出入口が設けられている。こうした立体駐車場では、駐車した利用者は、歩行者用出入口から駐車位置までの平均距離はいずれのフロアでも同じであるが、歩行者用出入口から地上に降りていくため、各フロアの利便性には違いがあり、実際には1階または1階に近いフロアのエリアから順に駐車していく傾向が強い。このため、各階のエリアA,B,C,D間に、エリア間満空傾向順列として、A>B>C>D、を設定する。この場合、エリア間満空傾向順列の意味は、エリアBがエリアAより先に満車になることはなく(同様に、エリアC,DがエリアB,Cより先に満車になることはなく)、エリアDが満車になった時点で、立体駐車場が満車になったと判断できるということである。なお、商業施設に付設の立体駐車場の場合の扱いや、各フロアの満車・空車情報を示す表示板などが接地されている場合の扱いについては、後で説明する。
【0050】
第3実施例では、
図17に示したエリア間満空傾向順列が設定された立体駐車場についての満空状況の判定処理について説明する。立体駐車場におけるプローブ車両の挙動を検出するためには、各立体駐車場の構造を記述する必要がある。
図18は、立体駐車場内での車両の挙動を解析するために予め駐車場毎に作成された駐車場データの一例を示している。図における各符号の意味は以下の通りである。
【0051】
Pa:エリアを示す。ポリゴンにより事前に定義される。プローブ車両がこのポリゴン内に進入した際に、エリア内での駐車移動中と判断する領域。数字は満空状況を定義されるエリア単位に設定される。
Pen:エリアへの車両にとっての入口を示す。ポリゴン、ポリライン、ポイント等により事前に定義される。エリアに進入後、駐車までの挙動の記録を開始する位置。数字は駐車場への入口が複数ある場合に入口単位に設定される。
Pex:エリアからの出口を示す。ポリゴン、ポリライン、ポイント等により事前に定義されるデータ。エリアに進入後、ここを通過した際にエリア内での記録を破棄する位置である。数字は駐車場への出口が複数ある場合に出口単位に設定される。
【0052】
Be:エリアから施設への歩行者用出入口を示す。ポリゴン、ポリライン、ポイント等により事前に定義される。駐車位置までの距離を判定される際に用いる基準となる位置。数字は駐車場への出口が複数ある場合に出口単位に設定される。
Ptr:エリア間の満空傾向順列を示す。事前に現地調査、施設管理者へのヒアリングなどにより取得し記憶する。後述する満空状況判定処理で用いられる。この実施例では、エリアPa1ないしPa4間の満空傾向順列は、Pa1>Pa2>Pa3>Pa4である。
また、
図18らおける矢印付きの太線は、エリアへのエリア外部からの、あるいはエリア外部への車両の進行方向を示している。エリア外部とは、駐車場の外および他のフロアである。
【0053】
図19は、例示する立体駐車場における車両の挙動を示す駐車情報の一例を示している。
図19における点線は、プローブ車両の挙動を示している。
Pt:駐車所要時間を示す。各フロアの車両用の出入口から進入後、駐車するまでに要した時間。
図19において、駐車番号p1の駐車スペースに駐車した車両ZZ1の駐車所要時間は、Pt(p1)として表わされる。
Pd:駐車距離を示す。各フロアにおいて、駐車した位置から歩行者用出入口までの距離。
図19において、駐車番号p1の駐車スペースに駐車した車両ZZ1の駐車距離は、Pt(p1)として表わされる。なお、
図19では、歩行者用出入口Beは、Be1,Be2の2つが存在するが、エリアから見た場合、歩行者用出入口Be1からの距離だけでほぼ足りるので、本実施例では、歩行者用出入口Be1からの距離で、駐車距離Pdを定義している。歩行者用出入口Be1、Be2が離れているような場合、例えば駐車スペースを挟んで対面しているような場合には、近い出入口Be1,Be2からの距離を用いて定義すればよい。各駐車番号pnの駐車用スペースには、駐車距離Pdが一義的に与えられる。最も遠いところまでの距離が、最長駐車距離Pdmax であり、最も近いところまでの距離が、最短駐車距離Pdmin である。したがって、番号pnの駐車スペースに停車した車両の駐車距離Pd(pn)は、最短駐車距離Pdmin 〜最長駐車距離Pdmaxの間となる。
【0054】
以上説明した駐車場に関する情報は、プローブ車両AMの地
図DB22内に駐車場データとして記憶されている。したがって、プローブ車両AMは、この駐車場データを利用して、駐車場内で駐車すると、駐車所要時間と駐車距離とを求め、これをセンタサーバ50に送信する。センタサーバ50は、これを受け取り、第2実施例と同様の処理を行なって、各フロアのエリアP1ないしP4での満空状況の判定を行なう。この判定処理を
図20に示した。
図20は第2実施例の
図11の処理(
図6に示したステップS130の処理)の後、ステップS150の処理の前に実施される処理である。ステップS130(
図11におけるステップS212ないしS218)が実行された後では、プローブ車両が存在したフロアのエリアについては、満空状況の判定処理がなされ、プローブ車両が駐車したエリアの満空状況の判定がなされている。
【0055】
この状態で
図20に示した処理を開始すると、まず満空状況の判定結果が付与されていないエリア、つまり判定結果の未付与のエリアがあるか否かの判断を行なう(ステップS310)。判定の期間に立体駐車場のすべてのフロアにプローブ車両が駐車するとは限らないから、すべてのエリアに満空状況の判定結果が設定されているとは限らない。例えば
図21に示すように、4フロアある立体駐車場の2階と4階には期間内にプローブ車両が駐車し、2階に設定されたエリアBと4階に設定されたエリアDについては、満空状況の判定がなされて、それぞれ「満車」と「混雑」という満空状況の判定結果が設定されていたとする。この場合、エリアAとCについては、満空状況の付与はなされていないことになる。
【0056】
そこで、この場合には、満空状況の判定結果が未付与のエリアがあるとして、次に未付与のエリアの一つを選択する処理を行なう(ステップS312)。未付与のエリアの選択の順序は特に問わないが、例えば満空傾向順列の低い側(
図21の例ではエリアDの側)から選択しても良いし、その逆でも良い。あるいはランダムに選択するものとしても良い。未付与のエリアを一つ選択すると、次に選択したエリアが満空状況の判定結果が付与されているエリアに挟まれているか否かを判断する(ステップS315)。選択されたエリアが、エリアCであったとすると、エリアCの下層階Bと上層階Dにはいずれも満空状況の判定結果(エリアBについては「満車」、エリアDについては「混雑」)が付与されているから、エリアCは、挟まれていると言える。そこでこの場合には、未付与のエリアに、満空状況の判定結果として、これを挟んでいる両側の満空状況の中間の状態を仮設定する(ステップS316)。
図21に示した例では、エリアCには、「満車」が仮設定される。「中間の状態」とは、満空状況が、「空車」「混雑」「満車」のように3段階で判定されている場合には、「空車」と「満車」であれば中間の「混雑」の状態を意味する。「空車」と「混雑」、「混雑」と「満車」のように隣り合った判定結果の場合には、より満車側の判定結果を「中間の状態」として設定する。なお、この設定は「仮設定」であり、最終的な設定は、後述するように、本ルーチンの最後で行なわれる。
【0057】
他方、ステップS312で選択したエリアが、
図21に例示したエリアAのように、「挟まれていない」と判断された場合には(ステップS315:NO)、下位に「混雑または満車」に設定されているエリアが存在するか否かについて判断する(ステップS320)。「下位」とは、エリアの満空傾向における下位である。
図21に示した例では、エリアAの下位のエリアBは、「満車」と判定されているので、ステップS320での判断は「YES」となり、このエリアには、「満車」が仮設定される(ステップS322)。他方、下位に、「混雑または満車」に設定されているエリアがなければ(ステップS320:NO)、「空車」が仮設定される(ステップS324)。
【0058】
こうして未付与のエリアの一つを選択した上で、そのエリアに判定結果を仮設定するいずれかの処理(ステップS316、S322、S324)を行なった後、すべてのエリアに判定結果が付与(設定または仮設定)されているか否かについて判断する(ステップS325)。付与が完了していない場合には(ステップS325:NO)、ステップS312に戻って、上記の処理を繰り返す。
【0059】
すべてのエリアへの判定結果の付与が完了すると(ステップS325:YES)、次に、各エリアに付与された判定結果に矛盾がないか否かを確認する(ステップS330)。判定結果の矛盾とは、複数のエリアに付与された判定結果が、エリア間の満空傾向に相反していることを言う。
図21に示した例では、仮設定を含む満空状況の判定結果は、同図下段に示したように、エリアA、Bが「満車」、エリアC、Dが「混雑」となり、満空傾向A>B>C>Dに矛盾しない。しかし、例えばエリア毎に行なわれた最初の満空状況の判定(例えば
図11に示した処理)により、エリアAにプローブ車両が存在しており、「混雑」との判定結果が記憶されていれば、
図20に示した処理によって各エリアAないしDには、「混雑」「満車」「満車」「混雑」のように判定結果が付与される。エリアB、CはエリアAより先に満車にならないという満空傾向が付与されていることに、これは矛盾する。
【0060】
そこで、各エリアの満空状況の判定結果に矛盾がある場合には(ステップS330:有り)、満空傾向順列に従い、これを修正する処理(ステップS332)を行なう。具体的には、上記の例では、エリアAの満空状況の判定結果を「混雑」から「満車」に変更するのである。ステップS330で矛盾はないと判断された場合(ステップS330:なし)、または矛盾があるとされてステップS332でこれを修正した場合、満空状況の判定結果を最終的に決定する処理を行ない(ステップS340)、その後、判定結果を送信可能に準備する既述のステップS150へと移行する。ステップS340での処理は、要するに各エリア毎に行なった満空状況判定処理(ステップS130)による判定結果を、
図20に示した一連の処理により、仮設定を正式の満空状況判定結果とすることを含めて、最終的な判定結果とするものである。
【0061】
以上説明した第3実施例によれば、各エリア毎の満空状況の判定は、第1,第2実施例同様、高い精度で行なうことができ、更にその判定結果を踏まえて、複数のエリアを有する駐車場の満空状況を的確に判定することができる。特に立体駐車場などの大規模駐車場においては、判定期間(実施例では15分)に、すべてのエリアにプローブ車両が駐車するとは限らないが、そうした場合でも各エリアについての満空状況の判定を行なうことができる。立体駐車場などでは、各フロアに至るスロープなどに各フロアの満車・空車を示す表示設備が設けられていることがあり、一旦満車と判断されて表示が行なわれると、そのフロアに駐車する車両は極端に少なくなる。従って、判定期間内にプローブ車両が駐車しないという状況は生じやすくなるが、本実施例によれば、そうした場合でも、そのエリアを引き続き「満車」と適正に判定することができる。
【0062】
次に第3実施例の変形例として、立体駐車場が商業施設などに付設されており、満空傾向順列が、必ずしも階層の順に一致しない場合について説明する。
図22に例示し駐車場は、
図21と同様、4フロアの立体駐車場ではあるものの、3階フロアに、商業施設への連絡通路が設けられている。つまり、3階フロアに施設への歩行者用出入口が存在する。この駐車場に駐車する人は、通常商業施設に向かうため、利便性の良い3階フロアのエリア駐車しようとする。このためこの駐車場の満空傾向順列は、
図22に示したように、1ないし4階をエリアAないしDとすると、C>B>D>Aとなる。この満空傾向順列は、商業施設に付設されたこの駐車場の実際の駐車状況をモニタした結果により決定している。もとより、駐車状況のモニタがある程度の期間行なわれるまでは、施設設計上の予想により設定しても良いし、他の類似施設でのデータを流用しても良い。
【0063】
図22に示した駐車場に関して、第3実施例と同様の処理を行なった結果、
図22上段に示した満空状況の判定結果(エリアA及びBが「不明」、エリアCが混雑、エリアDが空車)が得られたとする。第3実施例の変形例では、
図20に示したステップS315、S320における「挟まれている」「下位」は、立体駐車場のフロア順ではなく、満空傾向順列の順序に沿って判断する。このため、満空状況の判定結果が「不明」の2つのエリアA、Bに関する判断は、エリアBについては「満空状況の判定結果が得られているエリアに挟まれている」となり(ステップS315)、エリアAについては「下位に混在または満車と判断されたエリアはない」(ステップS320)となる。このため、エリアBは「混雑」と判断され、エリアAは「空車」と判断されることになる。
【0064】
以上説明した第3実施例の変形例では、歩行者用の出入口が、途中のフロアにあり、駐車の傾向が階層に従っていない場合でも、立体駐車場の各フロアにおける満空状況を、少数のプローブ車両からの情報により、高い精度で判定することができる。他の作用効果は第3実施例と同様である。
【0065】
[第3実施例の展開]
第3実施例では、ステップS330ないしS340の処理により、満空状況の判定結果と、各エリアに付与された満空傾向順列との間に矛盾がないかを判断し、矛盾がある場合には、これを解消するよう、各エリアの満空状況の判定結果を修正している。この手法は、単に立体駐車場など複数のエリアを有する駐車場における判定のみならず、判定期間毎に行なわれた満空状況の判定結果の時系列的な変化にも応用することができる。
【0066】
例えば、判定期間の直前に「満車」と判定されていたエリアが、少ない台数のプローブ車両からの駐車情報により、「空車」と判定された場合、僅かな時間(本実施例では15分)で「満車」から「空車」に変化することは考えにくいとして、判定結果を直前の判定期間での判定結果「満車」のまま維持する、または「混雑」にするといった態様を採用することができる。このとき、駐車情報を提供するプローブ車両の台数が多ければ、そのまま判定結果を用い、2台以下などの条件で、時系列的な修正を行なうものとしても良い。
【0067】
[変形例]
次に、変形例について説明する。
図23は、時系列的に満空状況の判定がなされている様子を示す説明図である。図示横軸は、各判定期間Tzを示し、縦軸はその判定期間内に得られたプローブ車両からの情報の件数を矩形の領域の数により示す。ハッチングの施されていない領域は「空車」と判定した車両の数を、シングルハッチの施された領域は「混雑」と判定した車両の数を、ダブルハッチの施された領域は「満車」と判定した車両の数を、それぞれ各矩形の高さにより示している。また各期間Tzの下には、修正前の判定結果を「従来」として示し、本実施例で修正された判定結果を「実施例」として示した。
【0068】
第1実施例では複数の満空状況の判定結果が得られた場合には、より混雑している側の駐車情報を用いて判断した。また第2実施例では、複数のプローブ車両からの駐車情報の平均的な値を用いて判断した。これに対して。変形例では、判定結果が最も多いものを採用している。つまり多数決により、満空状況の判定結果を決定している。なお、この判定結果に対して、第3実施例で示した修正の考え方を適用することも可能である。また、判定期間内における全判定結果の数が増加傾向にあると判断できる場合(例えば、判定期間Tz3、Tz7)などには、駐車する車両の数が増えつつあるとして、一つ前の期間での判定結果を参照して、最終的な判定結果とすることができる。例えば、判定期間Tz3であれば、判定結果は「空車」だが、一つ前の期間での判定結果は「混雑」なので、これを採用するものとしても良い。同様に、判定期間Tz7のように、判定結果が「混雑」であっても、プローブ車両の数が増加傾向にあり、一つの前の期間での判定結果が「満車」であれば、判定結果を「満車」に修正することも好適である。
【0069】
上述した第3実施例では、満空傾向順列は、立体駐車場など一施設内に複数のエリアがある場合を想定して説明したが、複数の駐車場間に満空傾向順列を設定して、複数の駐車場での満空状況の判定を行なうことも可能である。例えば
図24に例示したように、大規模商業施設LSMの周辺に4つの駐車場(エリア)P1、P2、P3、P4が存在するとして、これらの駐車場に、満空傾向順列として、
P2>P3>P1>P4
を設定する。また、この満空傾向順列は、大規模商業施設LSMからの距離のみに基づいて付与するものではなく、利便性を基準に付与してある。駐車場P1は、駐車場P3より直線距離では近いものの、駐車した人は橋を渡って大規模商業施設LSMに向かうことになるため、歩く時間が長くなり、利便性は、駐車場P3より低いと判断されている。このように、複数の駐車場P1〜P4に、満空傾向順列を設定しておき、第3実施例の手法を適用して、例えばプローブ車両からの情報により、駐車場P3が「満車」と判定される状況になっていれば、駐車場P2に関する駐車情報が得られなくても、これを「満車」と判定することができる。
【0070】
図24に示した複数駐車場の満空傾向の判定は、センタサーバ50によって行なっても良いが、各駐車場の満空状況の判定を個別に行なう駐車場満空判定装置を駐車場毎に設け、その判定結果を、地域に設けられた地域駐車場満空判定装置に送信し、地域駐車場満空判定装置によって複数の駐車場の満空傾向の判定を行なうものとしても良い。この場合、各駐車場満空判定装置は、インターネットなどの汎用ネットワークあるいは専用回線等により接続され、定期的にあるいは地域駐車場満空判定装置からの問い合わせに応じて、各駐車場の満空状況の判定結果を、地域駐車場満空判定装置に送信するものとすればよい。こうした複数の駐車場満空判定装置構成をネットワークなどで結んだ構成を採用すれば、地域全体の駐車場の満空状況をより的確かつ柔軟に判断することができる。各駐車場における満空状況の判断とは別に、地域全体の車の流れや駐車を生じさせる要因を細かく設定できるからである。また複数の駐車場を対象とすることから、駐車場内に存在するプローブ車両の総数も増加することが期待され、判定の精度向上に資することができる。
【0071】
地域における複数の駐車場の満空傾向順列を設定する場合、近隣の施設としては、単一の施設に限る必要はなく、複数の施設を想定して、満空傾向順列を設定することも差し支えない。例えば、
図25、
図26に示したように、大規模商業施設と野球場のようなスポーツ施設が隣接して存在する場合、両施設にとっての利便性を考えて、満空傾向順列を設定すれば良い。例えば両施設から共に遠い駐車場が「満車」と判定されていれば、両施設に対してその駐車場より近い駐車場を「満車」と判定することは容易である。あるいは、施設の性質によっては、季節や時間帯により、満空傾向順列を変更することも望ましい。
図25、
図26に示した例では、野球場は11月から2月の利用が少ないこと、また3月から10月でも昼〜夕方の利用は少ないと想定されることから、各駐車場の満空傾向順列は、PP1>PP2>PP3>PP4となる。他方、3月〜10月の夜から深夜にかけては、各駐車場の満空傾向順列を設定は、これとは丁度逆となる。
【0072】
このように、複数の施設に対して季節や時間などの条件により、満空傾向順列を設定を変更すれば、各駐車場の満空状況の判定を更に精度良く行なうことができる。もとより、季節や時間だけでなく、イベントの開催や事故の発生などの事象の有無により、満空傾向順列を設定するようにしても差し支えない。例えば、野球場で、人気タレントの野外コンサートが昼間に行なわれることが分かっていれば、この時間帯について満空傾向順列を、
図26に示したものに設定するなどの対応を取ることができる。また、特定の駐車場の周辺で事故が起きた場合には、その駐車場での満空状況の判定を「満車」側に修正しても良い。事故発生現場の近くに車両を誘導しない方が望ましいからである。こうした種々の対応を行なう場合、各駐車場毎の満空判定を行なう装置と、地域全体の満空判定を行なう地域駐車場満空判定装置とを分けておくと、システム設計やその変更が容易となる。
【0073】
上述した各実施例において、駐車情報は、いずれも駐車所要時間と駐車距離(歩行者用出入口までの距離)としたが、
図2に示したように、駐車距離に基づいてエリアを設定しておけば、駐車情報としては駐車所要時間だけで足りる。また、駐車情報は、駐車所要時間と駐車距離に限るものではなく、例えば駐車時刻などの他の情報を加えるものとしても良い。この場合、
図9などに示した判定用のマップは、三次元にすればよい。駐車時刻の情報を加えれば、満空傾向順列が利用しやすくなる。あるいは車両ナビシステム20において目的地として設定された施設名などを含む場合には、
図25、
図26に示した地域における駐車場の満空状況の判定に利用することができる。3月から10月の間の夜に、駐車場PP1に駐車した車が、車両ナビシステム20において、大規模商業施設を目的地に設定していれば、そのプローブ車両の駐車情報を、他の駐車場PP2ないしPP4の満空状況の判定に反映させる必要はないと判断することができる。また、駐車情報に含まれ、判定に用いられるパラメータがN個になれば、N次元のマップを用意すれば良い。
【0074】
以上本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様で実施できることはもちろんである。例えば、上記実施例では、駐車場の満空判定システム10は、プローブ車両AMとセンタサーバ50と各種端末とから構成したが、いずれの処理をどの装置において実施するから任意である。例えばプローブ車両では、車両の位置の情報だけを検出するものとし、駐車情報をセンタサーバ50側で生成するものとしても良い。あるいは逆に、全ての装置構成を、端末、例えば車両80に集約することも可能である。また、センタサーバ50は、駐車場についての満空情報の問い合わせを端末から受け取ったか否かに関係なく、満空情報の判定結果の情報を定期的に送信するようにしてもよい。もとより、定期的な送信と共に、端末からの問い合わせを受け取ったときにも送信するものとしても良い。さらにこの場合は、対象となる駐車場付近に設置した路上通信設備から、PHSや無線LAN等の狭域エリア通信を利用して、情報を送受信するものとしても良い。エリアの利便性は、歩行者用出入口からの距離である駐車距離に限らず、例えば施設への移動がエレベータ、エスカレータ、動く歩道などの有無などにより判断するものとしても良い。あるいは駐車料金が駐車場内で相違する場合には、駐車料金を利便性とみて、指標を付与するものとしてもよい。