特許第5886684号(P5886684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886684
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/625 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   H01R13/625
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-117495(P2012-117495)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-246884(P2013-246884A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 英彦
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−163056(JP,A)
【文献】 実公昭62−5009(JP,Y2)
【文献】 特許第4247542(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04−13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が収容されたコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できる回転部材と、前記回転部材に設けられ、撓み変形自在でロック爪を有する係止アームと、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合開始位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第1位置規制壁と、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合完了位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第2位置規制壁とを備え、
前記コネクタハウジングを相手コネクタハウジングに対してコネクタ嵌合開始位置にセットし、前記回転部材をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、
前記回転部材をコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第2位置規制壁及び前記第1位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合開始位置に移動するコネクタであって、
前記係止アームの前記ロック爪は、嵌合解除方向の係止面がストレートな傾斜面に形成されていると共に頂上箇所が曲面に形成され
前記係止アームが撓み変形していない状態における第1位置規制壁の移動方向に対する係止面の傾斜角度より、前記係止アームが撓み変形した状態における係止面の傾斜角度が大きくなるように構成されていることを特徴するコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記係止アームがコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に向かう回転時に突き当たる前記第1位置規制壁の係止壁面がテーパ状に形成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のコネクタ間のロック・ロック解除を低操作力で行うバヨネット構造を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対のコネクタ間のロック・ロック解除を低操作力で行うバヨネット構造を備えたコネクタが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のコネクタの一従来例として、図14図17に示すように、オスコネクタハウジング110と、コネクタハウジング110に装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できるバヨネットリング(回転部材)120とから構成されたオスコネクタ100がある。
【0004】
オスコネクタハウジング110の内部には、図示しないオス端子を収容する複数の端子収容室111が形成される。オスコネクタハウジング110の後端部には、それぞれ側方へ突出する第1位置規制壁112及び第2位置規制壁113が設けられる。第1位置規制壁112の両側の係止壁面112a,112bは、それぞれ垂直に形成されている。
【0005】
バヨネットリング120の内壁の先端近傍には複数のカム突起121が設けられており、各カム突起121は相手側のメスコネクタ200のメスコネクタハウジング201に設けられるカム溝202に係合する。バヨネットリング120の後端部には、撓み変形自在でロック爪122を有する係止アーム123と、過剰回転規制突部124とが設けられている。ロック爪122は、バヨネットリング120を嵌合解除方向へ回転させたときにオスコネクタハウジング110の第2位置規制壁113及び第1位置規制壁112と順次突き当たる係止面122aを備え、この係止面122aは、外側に膨らむ方向の曲面から構成されている。
【0006】
バヨネットリング120がコネクタ嵌合完了位置に位置するとき、図17(a)に示すように、オスコネクタハウジング110の第2位置規制壁113は係止アーム123のロック爪122に係止する。次いで、バヨネットリング120を嵌合解除方向へ回転開始すると、図17(b)に示すように、第2位置規制壁113がロック爪122の係止面122aに突き当たることにより、係止アーム123が撓み変形するので、第2位置規制壁113が乗り越えてロック爪122の上部を通過することが許容される。
【0007】
上記構成では、オスコネクタ100の端子収容室111にオス端子を収容し、相手側のメスコネクタ200の図示しない端子収容室にメス端子を収容する。次いで、オスコネクタハウジング110をメスコネクタハウジング201に対してコネクタ嵌合開始位置にセットすることにより、カム突起121とカム溝202の入口位置との位置合わせを行なった後、バヨネットリング120をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転すると、係止アーム123の撓み変形によってロック爪122が第1位置規制壁112を乗り越え、次に、第2位置規制壁113を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動する。その結果、図18及び図19に示すように、係止アーム123のロック爪122が第2位置規制壁113によって回転を阻止され、ここで位置保持される。また、上記移動によってオスコネクタハウジング110とメスコネクタハウジング201間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、オスコネクタハウジング110がメスコネクタハウジング201のカム溝201に沿って移動するので、オスコネクタ100及びメスコネクタ200が嵌合する結果、オス端子及びメス端子間の電気的導通が行なわれる。
【0008】
また、バヨネットリング120をコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転すると、係止アーム123の撓み変形によってロック爪122が第2位置規制壁113を乗り越え、次に、第1位置規制壁112を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によってオスコネクタハウジング110とメスコネクタハウジング201間がコネクタ嵌合開始位置に移動する。このとき、係止アーム123のロック爪122が第1位置規制壁112によって回転を阻止され、ここで位置保持される。
【0009】
上記したバヨネット構造を備えたコネクタにあって、強い振動を受ける状況下で使用する等の理由によって、図18及び図19に示すコネクタ嵌合完了位置にてバヨネットリング120を保持する力をアップさせたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−163056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来例のオスコネクタ100では、ロック爪122の係止面122aが第2位置規制壁113に突き当たるとき、係止面122aが外側に膨らむ方向の曲面であるので、第2位置規制壁113から係止面122aで受ける反力によってロック爪122が付勢されて嵌合解除方向に変移し易い。又、図17(a)、(b)に示すように、係止アーム123が撓み変形していない状態での第2位置規制壁113の移動方向に対する係止面122aの傾斜角度Iと、係止アーム123が撓み変形した状態での係止面122aの傾斜角度Jとはほぼ等しいため、この理由からも嵌合解除方向への変移が容易である。そのため、コネクタ嵌合完了位置におけるバヨネットリング120を保持する力のアップには限界がある。
【0012】
ここで、コネクタ嵌合完了位置における上記保持力をアップさせるには、ロック爪122の係止面122aの傾斜角度を大きくすることが考えられるが、係止面122aの傾斜角度をあまりに大きくし、例えば、ほぼ垂直とすると、係止アーム123が破損する可能性が高くなるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、回転部材に設けられる係止アームの破損を防止しつつ、コネクタ嵌合完了位置にて回転部材を保持する力を向上させることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、端子が収容されたコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できる回転部材と、前記回転部材に設けられ、撓み変形自在でロック爪を有する係止アームと、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合開始位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第1位置規制壁と、前記コネクタハウジングに設けられ、コネクタ嵌合完了位置に位置する前記係止アームの前記ロック爪に係止する第2位置規制壁とを備え、前記コネクタハウジングを相手コネクタハウジングに対してコネクタ嵌合開始位置にセットし、前記回転部材をコネクタ嵌合開始位置からコネクタ嵌合完了位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第1位置規制壁及び前記第2位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、前記回転部材をコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に回転すると、前記係止アームの撓み変形によって前記ロック爪が前記第2位置規制壁及び前記第1位置規制壁を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によって前記コネクタハウジングと前記相手コネクタハウジング間がコネクタ嵌合開始位置に移動するコネクタであって、前記係止アームの前記ロック爪は、嵌合解除方向の係止面がストレートな傾斜面に形成されていると共に頂上箇所が曲面に形成され、前記係止アームが撓み変形していない状態における第1位置規制壁の移動方向に対する係止面の傾斜角度より、前記係止アームが撓み変形した状態における係止面の傾斜角度が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
前記係止アームがコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に向かう回転時に突き当たる前記第1位置規制壁の係止壁面がテーパ状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コネクタ嵌合完了位置にあって回転部材を嵌合解除方向に回転し、回転部材のロック爪の係止面がコネクタハウジングの第2位置規制壁に突き当たるとき、上記係止面がストレートな傾斜面に形成されているため、第2位置規制壁のエッジがロック爪の係止面に食い込むので、この係止面の傾斜角度を大きくすることなく、コネクタ嵌合完了位置における回転部材を保持する力を向上させることができる。また、上記のようにロック爪の係止面がストレートな傾斜面であるため、ロック爪が撓み変形してロック爪の変移量が大きくなるにつれて係止面の傾斜角度が大きくなる。これによって、ロック爪の撓み変形していない状態での傾斜角度を大きくしなくても、コネクタ嵌合完了位置における回転部材を保持する力が上がる。そして、ロック爪の係止面の頂上箇所が曲面であることから、ロック爪が第2位置規制壁を乗り越え完了付近では、第2位置規制壁をスムーズに乗り越えることができ、乗り越えた際の節度感があり、また、第2位置規制壁がロック爪を乗り越えると共にロック爪の撓み変形が解除されてロック爪が当初の位置に戻るので、確実に音が発生する。これにより、作業者の解除操作性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示し、コネクタ装置の分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、(a)はオスコネクタハウジングの正面図、(b)は(a)のA部を拡大して示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は回転部材の正面図、(b)は(a)のB部を拡大して示す正面図である。
図4】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材を前端側から見た斜視図である。
図5】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材を後端側から斜視図である。
図6】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジングにフロントホルダを取り付ける状態を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態を示し、最終形態のハーネス製品として完成したオスコネクタの斜視図である。
図8】本発明の一実施形態を示し、回転部材がコネクタ嵌合開始位置にある状態を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態を示し、回転部材がコネクタ嵌合完了位置にある状態を示す斜視図である。
図10】本発明の一実施形態を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材の後端部を示す図である。
図11】本発明の一実施形態を示し、(a)はオスコネクタハウジング及び回転部材の正面図、(b)は(a)のC部を拡大して示す正面図である。
図12】本発明の一実施形態を示し、(a)は回転部材の係合アーム及びロック爪の説明図、(b)は回転部材のロック爪にオスコネクタハウジングの第2位置規制壁が突き当たった状態を示す図、(c)は(b)のE部を拡大して示す図、(d)は回転部材のロック爪にオスコネクタハウジングの第2位置規制壁が突き当たることにより係合アームが撓み変形した状態を示す図である。
図13】本発明の一実施形態を示し、(a)は回転部材のロック爪及びオスコネクタハウジングの第2位置規制壁の説明図、(b)は回転部材のロック爪にオスコネクタハウジングの第2位置規制壁が完全に嵌合した状態を示す図、(c)はロック爪及び第2位置規制壁の嵌合が完了した状態を示す図である。
図14】一従来例を示し、オスコネクタ及びメスコネクタの分解斜視図である。
図15】一従来例を示し、(a)はオスコネクタハウジングの正面図、(b)は(a)のG部を拡大して示す正面図である。
図16】一従来例を示し、(a)は回転部材の正面図、(b)は(a)のH部を拡大して示す正面図である。
図17】一従来例を示し、(a)は回転部材のロック爪にオスコネクタハウジングの第2位置規制壁が突き当たった状態を示す図、(b)は回転部材のロック爪にオスコネクタハウジングの第2位置規制壁が突き当たることにより係合アームが撓み変形した状態を示す図である。
図18】一従来例を示し、オスコネクタハウジング及び回転部材の後端部を示す図である。
図19】一従来例を示し、(a)はオスコネクタハウジング及び回転部材の正面図、(b)は(a)のK部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図13は本発明の一実施形態を示す。図1に示すコネクタ装置1は、コネクタであるオスコネクタ2と、相手側のメスコネクタ3とから構成される。オスコネクタ2は、オスコネクタハウジング4と、コネクタハウジング4に装着され、コネクタ嵌合開始位置とコネクタ嵌合完了位置の間で回転できる回転部材であるバヨネットリング5とを備えている。コネクタハウジング4内にはシール材6が収容されている。このシール材6は、コネクタ2、3を嵌合させたとき、メスコネクタ3の先端部が当接してコネクタ2、3間をシールする。
【0020】
オスコネクタハウジング4の前端部には、フロントホルダ41が装着されている。オスコネクタハウジング4の内部には、電線42に圧着されたオス端子43を収容する複数の端子収容室44が形成される。オスコネクタハウジング4の後端部には、それぞれ側方に突出し、後述する係止アーム53のロック爪52を係止する第1位置規制壁45及び第2位置規制壁46が設けられている。オスコネクタハウジング4の後端部には、それぞれ側方に突出し、後述する過剰回転規制突部54に干渉する過剰回転規制壁47が2箇所に設けられている。
【0021】
第1位置規制壁45は、図8に示すように、コネクタ嵌合開始位置に位置する係止アーム53のロック爪52に係止し、バヨネットリング5をコネクタ嵌合開始位置に位置決めすることにより、後述するカム突起51とカム溝32の入口位置の位置合わせを行なう。一方、第2位置規制壁46は、図9及び図10に示すように、コネクタ嵌合完了位置に位置する係止アーム53のロック爪52に係止し、バヨネットリング5をコネクタ嵌合完了位置に位置決めする。
【0022】
第1位置規制壁45は、図2(a),(b)に示すように、テーパ状に形成される一方の係止壁面45aと、垂直に形成される他方の係止壁面45bとを備えている。テーパ状の係止壁面45aには、係止アーム53がコネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置に向かう回転時に突き当たり、その結果、第1位置規制壁45の移動と共に係止アーム53がテーパ状の係止壁面45aに沿って徐々に撓み変形する。
【0023】
バヨネットリング5の外壁の先端近傍には、周方向に間隔を置いて回転支持用突部50が内周に向かって突設されている。この各回転支持用突部50がオスコネクタハウジング4の円周溝40に入り込んでいる。バヨネットリング5は、回転支持用突部50が円周溝40内を摺動することによって、オスコネクタハウジング4に回転自在に支持されている。
【0024】
バヨネットリング5の内壁の先端には、複数のカム突起51が設けられている。各カム突起51は、相手側のメスコネクタ3のメスコネクタハウジング31に設けられるカム溝32に係合する。バヨネットリング5の後端部には、撓み変形自在でロック爪52を有する係止アーム53と、過剰回転規制突部54とが設けられている。
【0025】
ロック爪52は、図3(a),(b)に示すように、オスコネクタハウジング4の位置規制壁45,46と突き当たる係止面55、56を備えている。これらのうち嵌合解除方向の係止面、すなわち、バヨネットリング5が嵌合完了位置から嵌合解除方向へ回転するときに位置規制壁45,46と突き当たる一方の係止面55は、ストレートに形成される根元側の傾斜面55aと、この傾斜面55aと連続する頂上箇所の曲面55bとからなっている。バヨネットリング5が嵌合開始位置から嵌合方向へ回転するときに位置規制壁45,46と突き当たる他方の係止面56は、垂直方向に延びている。
【0026】
相手側のメスコネクタ3のメスコネクタハウジング31にも、図示しないメス端子が収容される複数の図示しない端子収容室が形成される。
【0027】
オスコネクタ2の端子収容室44にオス端子43を収容し、相手側のメスコネクタ3の端子収容室にメス端子を収容する。次いで、オスコネクタハウジング4をメスコネクタハウジング31に対してコネクタ嵌合開始位置にセットすることにより、カム突起51とカム溝32の入口位置との位置合わせを行なう。
【0028】
次いで、バヨネットリング5をコネクタ嵌合開始位置から嵌合方向(図8の矢印で示す時計方向)へ回転すると、係止アーム53の撓み変形によってロック爪52が第1位置規制壁45を乗り越え、次に、第2位置規制壁46を乗り越えてコネクタ嵌合完了位置まで移動する。その結果、図9に示すように、係止アーム53のロック爪52が第2位置規制壁46によって回転を阻止され、ここで位置保持される。また、上記移動によってオスコネクタハウジング4とメスコネクタハウジング31間がコネクタ嵌合完了位置に移動し、オスコネクタハウジング4がメスコネクタハウジング31のカム溝32に沿って移動するので、オスコネクタ2及びメスコネクタ3が嵌合する。その結果、オス端子43及びメス端子間の電気的導通が行なわれる。
【0029】
また、バヨネットリング5をコネクタ嵌合完了位置から嵌合解除方向(図9の矢印で示す反時計方向)へ回転すると、図13(a)に示すように、ロック爪52が第2位置規制壁46に係合し、図13(b)に示すように、係止アーム53の撓み変形によってロック爪52が第2位置規制壁46を乗り越え、図13(c)に示すように、ロック爪52が第2位置規制壁46を通過する。次に、ロック爪52が第1位置規制壁45を乗り越えてコネクタ嵌合開始位置まで移動し、この移動によってオスコネクタハウジング4とメスコネクタハウジング31間がコネクタ嵌合開始位置に移動する。このとき、図8に示すように、係止アーム53のロック爪52が第1位置規制壁45によって回転を阻止され、ここで位置保持される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態では、コネクタ嵌合完了位置にあってバヨネットリング5を嵌合解除方向に回転すると、図12(b)に示すように、ロック爪52の根元側の傾斜面55aがオスコネクタハウジング4の第2位置規制壁46に突き当たる。これにより、ロック爪52の根元側の係止面55aがストレートであるため、図12(c)に示すように、第2位置規制壁46のエッジ46aがロック爪52の傾斜面55aに食い込むので、この傾斜面55aの傾斜角度を大きくすることなく、コネクタ嵌合完了位置におけるバヨネットリング5を保持する力をアップさせることができる。また、上記のようにロック爪52の係止面55がストレートな傾斜面55aであるため、ロック爪52が撓み変形してロック爪52の変移量が大きくなるにつれて傾斜面55aの傾斜角度が大きくなる。すなわち、図12(b)、(d)に示すように、係止アーム53が撓み変形していない状態における第1位置規制壁45の移動方向に対する係止面45aの傾斜角度Dより、係止アーム53が撓み変形した状態における係止面45aの傾斜角度Fが大きくなる。これにより、ロック爪52の撓み変形していない状態での傾斜角度を大きくしなくても、コネクタ嵌合完了位置におけるバヨネットリング5を保持する力が向上する。
【0031】
本実施形態では、ロック爪52の係止面55の頂上箇所が曲面55bであることから、図13(b)に示すように、ロック爪52が第2位置規制壁46を乗り越え完了付近では、第2位置規制壁46をスムーズに乗り越えることができ、乗り越えた際の節度感がある。また、図13(c)に示すように、第2位置規制壁46がロック爪52を乗り越えると共にロック爪52の撓み変形が解除されてロック爪52が当初の位置に戻るので、確実に音が発生する。これにより、作業者の解除操作性を維持することができる。
【0032】
本実施形態では、輸送などの振動によって係止アーム53が第1位置規制壁45と第2位置規制壁46の間に位置する位置にバヨネットリング5が移動する場合があり、バヨネットリング5をコネクタ嵌合開始位置に戻す必要がある。この戻し回転を行う際に、第1位置規制壁45の一方の係止壁面45aがテーパ状に形成されているため、このテーパ状の係止壁面45aに沿ってロック爪52が徐々に撓み変形しつつロック爪52が容易に移動できるので、従来例のように第1位置規制壁の係止壁面が垂直に形成された場合と比べて、バヨネットリング5をスムーズに戻すことができる。また、コネクタ嵌合完了位置からコネクタ嵌合開始位置への解除回転の際にも、テーパ状の係止壁面45aに沿ってロック爪52が容易に移動でき、バヨネットリング5のスムーズな回転に寄与する。つまり、コネクタ嵌合完了位置でのバヨネットリング5を保持する力のアップを図りつつ、解除操作性を極力良くすることができる。
【0033】
本実施形態では、ロック爪52の係止面を、図12(a)の実線で示す曲面(既存品のロック爪の係止面)から図12(a)の破線で示す傾斜面55aに基本的に変更すれば足りるため、金型のわずかな変更で対応できる。なお、バヨネットリング5を保持する力をアップさせるには、係止アーム53のばね定数をアップさせる方法もあるが、金型を大きな変更する必要があるので、上記のロック爪52の係止面の形状を変更する方が安価である。
【0034】
本実施形態では、既存品のロック爪を図12(a)に示す破線に沿って切削加工すればロック爪52の係止面55を形成可能であるため、既存品に簡単な加工を施すことで足りるので、既存品の有効利用が可能である。
【0035】
なお、上記実施形態では、回転部材であるバヨネットリング5をオスコネクタハウジング4に装着する場合について例示したが、本発明はこれに限定されず、バヨネットリングをメスコネクタハウジングに装着することもできる。
【符号の説明】
【0036】
2 オスコネクタ(コネクタ)
4 オスコネクタハウジング(コネクタハウジング)
5 バヨネットリング(回転部材)
31 メスコネクタハウジング(相手コネクタハウジング)
43 オス端子(端子)
45 第1位置規制壁
45a 係止壁面
46 第2位置規制壁
52 ロック爪
53 係止アーム
55 係止面
55a 傾斜面
55b 曲面
図1
図2
図3
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図5
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