【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、所望信号を強調する新規な方法を開示する。この新規な方法は、所望信号に集中する人の聴覚系の能力を利用する。この新規な方法を利用する新規な両耳用補聴器システムもまた開示する。
【0009】
複合的な音場における聴取は、聴覚系の両耳での処理によりかなりの程度容易になる。耳介、耳甲介、頭部および胴体による回折効果、および反響環境における反射効果に起因して、音場に手掛かり(キュー)が生じる。これらは、被験者毎に極めて個別的である。
【0010】
両耳処理において最も重要な手掛かりは、両耳間時差(ITD)および両耳間レベル差(ILD)である。ITDは、音源から両耳への距離の差から生じる。この手掛かりは基本的に最高約1.5kHzまで有用であり、この周波数を超えると聴覚系はITDの手掛かりを解くことができない。
【0011】
上記の両耳間レベル差は回折の結果であって、音源に対する耳の相対位置により決定される。この手掛かりは2kHz超で優位であるが、聴覚系はスペクトル全体にわたりILDの変化に等しく敏感である。
【0012】
周波数が低いほど聴力損失の程度が軽くなる傾向があるため、聴覚障害者はITDの手掛かりから最も恩恵を受けると主張されてきた。
【0013】
対象信号、すなわち聴取者が聞きたいと望む信号と、雑音信号、すなわち聴取者が邪魔だと感じる信号の、両耳間相対位相と両耳間相対レベルを操作することで、会話理解力が向上することが示されている。この事は、聴覚系が実際に、対象信号に集中し易くするために、異なるITDおよびILD符号化をなされた信号を分離して、自然な雑音抑制を実行すべく適応されているかのようである。
【0014】
両耳において、対象信号が逆位相で、すなわち位相を180°シフトして提示され、且つ雑音信号が同位相である場合、両信号が両耳に同位相で提示される場合と比較して、両耳マスキングレベル差(BMLD)を13dB増大できることが分かっている。雑音の種類に応じて、BMLDを20dB向上させることも可能である。
【0015】
雑音信号の位相がシフトしており、且つ対象信号が同位相で提示される逆の状況では、僅かに性能が低下する。
【0016】
新規な方法では、対象信号および雑音信号の少なくとも一方が推定されて、前記少なくとも1つの推定値が、使用者の雑音下での会話理解力を向上するように、両耳用補聴器システムの使用者に提示される。
【0017】
例えば、聴取者が聞き取りたいと望む信号Sと聴取者が邪魔だと感じる雑音Nを備える音声を聴取者は聞き取るであろう。すなわち、音声信号はS+Nである。音声信号S+Nに基づいて所望信号Sは推定される。推定値をESと表記する。音声信号S+Nから2回にわたって推定値ESを減算することにより、変更された信号S+N−ES−ESという結果が得られる。ESが概ねSに等しいため、減算の結果は概ねN−ESであり、これは−S+N、すなわち本来の音声信号において所望信号Sが180°位相シフトした信号Sで置き換えられたものに概ね等しい。そして、BMLDとSRTを向上するために、本来の信号S+Nは使用者の一方の耳に提示され、位相シフト済み信号N−ES、より正確にはS+N−2ESは他方の耳に提示される。
【0018】
代替的には、BMLDおよびSRTを向上させるべく、所望信号Sおよび雑音信号Nの両方を推定し、推定値の合計値ES+ENを使用者の一方の耳に提示して、位相シフトした合計値−ES+ENを他方の耳に提示してもよい。
【0019】
BMLDおよびSRTを向上させるべく、所望信号Sと雑音信号を入れ換えて、所望信号の代わりに雑音信号の推定値の位相をシフトしてもよいが、所望信号Sの位相をシフトする場合と比較して性能が低下する。
【0020】
雑音は周囲の会話音、レストランでの食器の音、音楽(会話音が所望信号である場合)、交通騒音等である。
【0021】
上記の方法の目的は、信号の一部を除去するのではなく、それらの信号を提示することによって、使用者の聴覚系が自然な雑音抑制を行ない、対象信号を雑音信号から分離できるようにすることである。
【0022】
この場合、何らかの理由(例えば、推定された対象の方向が誤っている、あるいは装置が十分な対象/雑音の分離を行うことができない)によって、対象信号と雑音信号が入れ替わっている場合、対象信号の強調をすることはできるものの、その性能は僅かに低下する。
【0023】
これは、従来の雑音抑制技術では不可能なことである。なぜなら、対象信号は、この場合雑音であると想定されて、抑制されてしまうからである。
【0024】
そして、新規な両耳用補聴器システムが提供される。両耳用補聴器システムは、受けた音声に応答して少なくとも1つのマイクロホン音声信号を提供する少なくとも1つのマイクロホンと、前記少なくとも1つのマイクロホン音声信号に基づいて、対象信号および雑音信号の一方の推定値を提供するように構成された信号分離装置と、対象信号および雑音信号の一方の推定値の位相をシフトするように構成された位相シフト回路と、前記少なくとも1つのマイクロホンで受けた音声を表す位相シフト済み信号を提供するように接続された位相シフト加算器であって、対象信号および雑音信号の一方の推定値によって、実質的に、本来の対象信号および雑音信号の一方が置き換えられている、位相シフト加算器と、レシーバ入力信号を両耳用補聴器システムの使用者の一方の鼓膜へ向けて伝達される音響信号へ変換する第1のレシーバと、レシーバ入力信号を使用者の他方の鼓膜へ向けて伝達される音響信号へ変換する第2のレシーバを備えている。第1のレシーバおよび第2のレシーバの一方の前記レシーバ入力は、位相シフト済み信号を表す信号に接続されている。第1のレシーバおよび第2のレシーバの他方の前記レシーバ入力は、前記少なくとも1つのマイクロホンで受けた音声を表す信号に接続されている。
【0025】
更に、両耳用補聴器システムにおいて両耳用信号を強調する新規な方法が提供される。その方法は、音声に応答して、少なくとも1つのマイクロホン音声信号を提供するステップと、前記少なくとも1つのマイクロホン音声信号に基づいて、対象信号および雑音信号の一方の推定値を提供するステップと、対象信号および雑音信号の一方の前記推定値の位相をシフトするステップと、前記少なくとも1つのマイクロホン音声信号を表す位相シフト済み信号を提供するステップであって、対象信号および雑音信号の一方の前記位相がシフトされた推定値によって、本来の対象信号および雑音信号の一方が置き換えられているステップと、前記両耳用補聴器システムの使用者の一方の鼓膜に位相シフト済み信号を表す信号を送信するステップと、前記使用者の他方の鼓膜に前記少なくとも1つのマイクロホン音声信号を表す信号を送信するステップを備えている。
【0026】
対象信号および雑音信号の一方の推定値が、対応する対象信号および雑音信号の一方の本来のものに等しい場合、位相シフトされた推定値によって正確に本来の信号と置き換えることができる。しかしながら、通常は、信号の推定値は本来の信号から外れており、本来の信号の推定値による置き換えはその偏差を置き換えることにはならない。このため、推定値によって実質的に本来の信号が置き換えられていると表現されている。
【0027】
本明細書の全体を通じて、1つの信号が他の信号を表すと言えるのは、当該1つの信号が他の信号の関数である場合、例えば、1つの信号が他の信号のアナログ/デジタル変換またはデジタル/アナログ変換により形成できる場合、または1つの信号が他の音響信号から電子信号へ、またはその逆の変換により形成できる場合、または1つの信号が他の信号のアナログまたはデジタルフィルタリングまたは混合により形成できる場合、あるいは1つの信号が他の信号の周波数変換等の変換により形成できる場合である。
【0028】
更に、特定の回路、例えば信号処理装置により処理される信号は、注目する信号の発生源から信号処理装置等、注目する回路への入力までの信号経路の一部をなす任意のアナログまたはデジタル信号の識別に利用される名称によって識別することもある。例えば、マイクロホンの出力信号、すなわちマイクロホン音声信号という名称は、マイクロホンの出力から信号処理装置の入力までの信号経路の一部をなす、事前処理されたマイクロホン音声信号を含む、任意のアナログまたはデジタル信号を識別するために使用されることもある。
【0029】
少なくとも1つのマイクロホンは単独のマイクロホンを含んでいてもよいが、好適には、少なくとも1つのマイクロホンは2つのマイクロホンを有している。さらに、少なくとも1つのマイクロホンは、対象信号と雑音信号の分離を改善するために、3つ以上のマイクロホンを有していてよい。
【0030】
信号強調を改善するために、第2の補聴器はまた、受けた音声に応答してマイクロホン音声信号を提供する、少なくとも1つのマイクロホンを含んでいてもよい。この場合、第1の補聴器のトランシーバは、第2の補聴器のマイクロホン音声信号を表す信号を受信すべく接続されていて、信号分離装置は、第1および第2の補聴器の音声信号に基づいて対象信号の推定値および雑音信号の推定値を提供すべく構成されている。
【0031】
好適には、位相シフト回路は、対象信号の推定値の位相をシフトさせ、好適には、位相シフトは150°〜210°の範囲であり、より好適には位相シフトは約180°に等しく、最も好適には180°に等しい。
【0032】
信号分離装置は、雑音抑制の技術分野で公知のように、音声信号のスペクトル特性に基づいて推定値を提供すべく構成されていてよい。しかし、新規な方法によれば、雑音信号推定値は、使用者に提示される出力において抑制されるわけではなく、むしろ対象信号推定値および雑音信号推定値は、使用者のSRTを向上させる態様で使用者に提示される。
【0033】
信号分離装置は、雑音抑制の当該技術分野で公知のように、音声信号の統計的特性に基づいて推定値を提供すべく構成されていてよい。しかし、新規方法によれば、雑音信号推定値は使用者に提示される出力において抑制されるわけではなく、むしろ対象信号推定値および雑音信号推定値は、使用者のSRTを向上させる態様で使用者に提示される。
【0034】
信号分離装置はビーム形成器を含んでいてよく、当該ビーム形成器は、第1および第2の補聴器のマイクロホン音声信号に基づいて推定値を提供すべく構成されていてよい。信号分離装置のビーム形成器は、雑音信号の推定値が使用者に提示される出力において抑制されるわけではなく、むしろ対象信号推定値および雑音信号推定値は、使用者のSRTを向上させる態様で使用者に提示される点で、従来のビーム形成器とは異なる。
【0035】
ビーム形成器は、少なくとも1つのマイクロホンの複数のマイクロホンにより出力されたマイクロホン音声信号を組み合せて、当該複数のマイクロホンに関して異なる方向の音源に対する感度が変化する対象信号とする。本明細書の全体を通じて、指向性パターンは、方向の関数としての感度変化のプロットで表される。通常、指向性パターンは、マイクロホン信号が互いに実質的に打ち消し合う少なくとも1つの方向を有する。本明細書の全体を通じて、そのような方向をヌル方向と表記する。指向性パターンは、当該複数のマイクロホンにおけるマイクロホンの個数に応じて、および信号処理に応じて、いくつかのヌル方向を含んでいてよい。
【0036】
ビーム形成器は、使用者の頭部に関して固定された指向性パターンを有する固定ビーム形成器であってよい。ビーム形成器は例えば、少なくとも2つのマイクロホンに基づいていてよく、指向性パターンは使用者の前方向、すなわち使用者が前方を視る方向に最大値を有し、反対方向、すなわち使用者の後向きにヌル方向を有している。
【0037】
ビーム形成器は、3つ以上のマイクロホンに基づいていてよく、無線または有線通信技術を用いる両耳補聴器のマイクロホンを含んでいてよい。マイクロホン間の距離の広さを利用して、細いビームを有する指向性パターンを形成して、対象信号推定値の雑音信号の推定値からの空間的分離を改善することができる。ビーム形成器の従来の出力を対象信号推定値として用いて、複数のマイクロホンのうち1つのマイクロホンのマイクロホン音声信号から対象信号推定値を減算することにより、雑音信号推定値を得ることができる。
【0038】
両耳用補聴器システムの両方の補聴器のマイクロホンがビーム形成器と協働する場合、各マイクロホン信号は実質的に同期的にサンプリングされなければならない。2つの補聴器の各マイクロホン信号のサンプリング時刻の20〜30μS程度の小さな時間のずれが、ビーム方向において無視できないずれをもたらす場合がある。更に、補聴器を非同期的に動作させた場合、必然的に各マイクロホン信号のサンプリング時刻の時間のずれが時間に伴い緩慢に変化し、その結果、方向が交互に入れ替わるような音響ビームを生じてしまう。
【0039】
従って、例えばWO02/07479号により詳細に開示しているように、両耳用補聴器システムの補聴器が同期されていてよい。
【0040】
ビーム形成器は、各マイクロホン音声信号をフィルタリングし、音源に向けた適応型ビーム形成のために各々のフィルタ係数を適応させるべく構成された適応型フィルタを含んでいてよい。例えば、ビーム形成器は、信号対雑音比を最適化すべく適応されていてよい。
【0041】
適応型ビーム形成器により、移動している音源に集中したり、補聴器システムの使用者が移動している際に静止している音源に集中することができるようになる。更に、適応型ビーム形成器は、新たな音源の出現、雑音源の消失、あるいは補聴器システムの使用者に対する雑音源の移動等、音声環境の変化に適応可能である。
【0042】
適応型ビーム形成器は、少なくとも1つのマイクロホンで受けた信号が、所定の対象方向からの対象信号に雑音を加えた組合せとしてモデル化可能であるとの仮定の下で設計することができる。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、h
i(n)は信号s(n)を発している音源からi番目のマイクロホンへの音声伝播のインパルス応答、v
i(n)は同じマイクロホンにおける雑音信号である。雑音信号は、指向性雑音およびと他の種類の雑音、例えば拡散性雑音またはバブル雑音の両方を含んでいてもよい。
【0045】
フィルタ係数は、以下の最適化問題を解くことにより適応的に決定することができる。
【0046】
【数2】
【0047】
上記最適化問題の解の導出は、最小平均二乗法、再帰的最小二乗法、最急降下法または他の種類の数値最適化アルゴリズムを用いて適応的に行なうことができる。
【0048】
対象信号の推定値および雑音信号の推定値が決定されると、当該信号が、使用者のSRTが向上するような態様で、使用者に提示される。
【0049】
好ましくは、使用者の両耳において、対象信号の推定値は逆位相で、すなわち互いに位相を180°シフトして提示され、雑音信号の推定値は同位相で提示される。そして、第1の補聴器において、第1の加算器が信号分離装置に接続されており、信号分離装置によって提供された対象信号の推定値と雑音信号の推定値の和を出力し、第1の加算器の出力は更なる処理、例えば聴力損失補償のための信号処理装置に接続されており、信号処理装置の出力は使用者の一方の耳に対応する出力を出力する出力トランスデューサに接続されており、あるいは第1の加算器の出力は直接的に出力トランスデューサに接続されている。第2の加算器が信号分離装置に接続されており、信号分離装置によって提供される対象信号の推定値と雑音信号の推定値の逆位相の和を出力し、第2の加算器の出力はトランシーバに接続されており、トランシーバは第2の加算器の出力を他方の補聴器に送信し、他方の補聴器は第2の加算器の出力を受信するためのトランシーバを備えている。そのトランシーバの出力は更なる処理、例えば聴力損失補償のための信号処理装置に接続されており、信号処理装置の出力は使用者の他方の耳に対応する出力を出力する出力トランスデューサに接続されており、あるいはトランシーバの出力は直接的に出力トランスデューサに接続されている。
【0050】
あるいは、使用者のSRTの向上はある程度軽減されるものの、使用者の両耳において、雑音信号の推定値を逆位相で、すなわち互いに位相を180°シフトして提示し、対象信号の推定値を同位相で提示してもよい。
【0051】
好ましくは、第1の補聴器は加算器と主力トランスデューサの間に遅延部を備えており、第1の補聴器および第2の補聴器のそれぞれの出力トランスデューサによって出力される信号の相対的な位相が維持される。
【0052】
位相シフトの関数としてのSRTの向上は180°が最大であるが、150°〜210°の範囲の位相シフトにより得られる向上が最大の向上に近くなるように、当該関数は平坦な最大値を有する正弦波形状をなしている。従って、位相シフトは必ずしも正確に180°である必要はなく、135°〜225°、より好適には150°〜210°の範囲に値を有している。
【0053】
新規な両耳用補聴器システムは、マイクロホン音声信号が複数の周波数チャネルに分割されるマルチチャネルの第1の補聴器を含んでいてよい。
【0054】
対応して、個別の対象信号推定値および雑音信号推定値が複数の周波数チャネルの各周波数チャネルで提供されてもよいし、複数の周波数チャネルの1つ以上の選択された周波数チャネルで提供されてもよいし、または1つ以上の対象信号の推定値および雑音信号推定値が複数の周波数チャネルのうち選択された周波数チャネルの1つ以上の各グループに提供されてもよいし、あるいは1つの対象信号推定値および雑音信号推定値が複数の周波数チャネルの全ての周波数チャネルに基づいて提供されてもよい。
【0055】
複数の周波数チャネルは、ワープ周波数チャネルを含んでいてよく、例えば周波数チャネルの全てがワープ周波数チャネルであってよい。
【0056】
新規な両耳用補聴器システムは更に、他の従来技術の聴力損失補償方法において用いられる回路を備えており、新規な回路または他の従来技術の回路が様々な種類の音声環境において適切に動作すべく選択できるように構成してもよい。様々な音声環境には、会話音、騒々しい会話音、レストランでの食器の音、音楽、交通騒音等が含まれる。
【0057】
新規な両耳用補聴器システムは、例えばデジタル信号処理装置(DSP)を含んでいてよく、その処理は選択可能な信号処理アルゴリズムにより制御され、各アルゴリズムは実行される実際の信号処理を調整する各種パラメータを有している。そのようなパラメータの例としては、マルチチャネル補聴器の各周波数チャネルのゲインがある。
【0058】
選択可能な信号処理アルゴリズムの一つは、新規な方法に従い動作する。
【0059】
例えば、各種のアルゴリズムによって、従来技術の雑音抑制、すなわち不要信号の減衰と、所望信号の増幅を提供してもよい。
【0060】
異なる音声環境から得られたマイクロホン音声信号は、極めて異なる特徴、例えば平均および最大音圧レベル(SPL)および/または周波数成分を有することがある。従って、各々の種類の音声環境には特定のプログラムが関連付けられていて、特定の信号処理アルゴリズムのアルゴリズムパラメータの設定により、特定の音声環境の最適な信号品質の処理済み音声を提供することができる。そのようなパラメータの組は、典型的には、広帯域ゲインや、周波数選択的なフィルタアルゴリズムのコーナー周波数またはスロープに関連するパラメータや、例えば自動ゲイン制御(AGC)アルゴリズムのニーポイントおよび圧縮比を制御するパラメータを含んでいてよい。
【0061】
各々のアルゴリズムの信号処理特性は、補聴器の販売店で初期フィッティング作業を行なう際に決定されて、新規な両耳用補聴器システムの不揮発メモリ領域にプログラミングすることができる。
【0062】
新規な両耳用補聴器システムは、ユーザーインターフェース、例えば補聴器筐体のボタン、トグルスイッチ等、またはリモコンを有していてよく、これにより新規な両耳用補聴器システムの使用者は、自身の音声環境において所望の聴力損失補償を得るべく利用可能な信号処理アルゴリズムのうち1つを選択できる。
【0063】
新規な両耳用補聴器システムは、使用者の音声環境を会話音、騒々しい会話音、レストランでの食器の音、音楽、交通騒音等、多くの音声環境カテゴリの一つに自動的に分類して、当該技術分野でよく知られている適切な信号処理アルゴリズムを自動的に選択するようにしてもよい。
【0064】
以下において、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら更に詳細に説明する。