(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上述の目的、特徴及びメリットをより理解し易くするために、以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)について詳しく説明する。本発明について理解し易くなるように、以下の説明では、詳細な内容を記載しているが、本発明は、以下に実施された形態以外でも実施可能であり、以下の実施形態に限定されない。さらに、図面は、実際の寸法に基づいて作成されたものではなく、概略図又は模式図に過ぎないので、図面によって、本発明は限定されない。また、図面においては、本発明の特徴部分を強調するために、一部の構成を省略して示している場合がある。
【0016】
[第一実施形態]
図1は、本願発明の第一実施形態に係る固体電解コンデンサを模式的に示す概略縦断面図である。
図2は、第一実施形態に係る固体電解コンデンサの固体電解質形成前の分解構造を模式的に示す概略斜視図である。
【0017】
図2に示すように、固体電解コンデンサ1は、陽極箔11、陰極箔12、及び陽極箔11と陰極箔12の間に配置されたセパレータ13によって巻回された巻回素子を直方体状に扁平し、固体電解質を形成した直方体素子10と、陽極箔11に接続された陽極引出端子21と、陰極箔12に接続された陰極引出端子22と、直方体素子10を樹脂モールドにより外装する外装体30(
図1参照)とを備える。
【0018】
図2では、巻止テープ14の端部が自由になっているが、実際には、巻止テープ14の端部は直方体素子10の側面に貼り付けられる。また、巻止テープを使用せず接着剤で貼り付ける方法もある。
図2に示すように、陽極箔11及び陰極箔12は全体的に帯状である。陽極箔11と陰極箔12との間に、セパレータ13が設けられている。陽極箔11と陰極箔12の各々の表面およびセパレータ13で保持させる固体電解質として、導電性高分子が用いられている。導電性高分子としては、例えば、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0019】
陽極箔11は、第一弁金属層(図示せず)と第一弁金属層表面に形成された誘電体酸化皮膜(図示せず)からなる。ここでの弁金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の金属が挙げられる。本実施の形態では、アルミニウムが用いられている。前記誘電体酸化皮膜は、エッチング処理された第一弁金属層の表面に化成処理(陽極酸化処理)を経て形成される。本実施の形態では、誘電体酸化皮膜は、酸化アルミニウムである。
【0020】
陰極箔12は、第二弁金属層(図示せず)及び第二弁金属層表面に附着した炭化物粒子層(図示せず)からなる。ここでの弁金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の金属が挙げられる。本実施の形態には、アルミニウムが用いられている。
本発明では、必ずしも陰極箔が炭化物粒子層を備えている必要は無く、陰極箔として、例えば、第二弁金属層のみからなる陰極箔、第二弁金属層表面に蒸着金属層又は蒸着金属化合物層等を備える陰極箔等、公知の陰極箔を採用できる。
なお、
図5に示すように、陰極箔12の箔長(陰極箔12の長手方向における長さ)は、陽極箔11の箔長(陽極箔11の長手方向における長さ)よりも長く、後述するように陰極箔12は陽極箔11に対して巻回軸に対して外側に巻回される。
【0021】
図1に示すように、固体電解コンデンサ1は、陽極引出端子21と、陰極引出端子22とを備える。陽極引出端子21は、陽極箔(
図2参照)に接続されている。陰極引出端子22は、陰極箔(
図2参照)に接続されている。
【0022】
図1に示すように、陽極引出端子21及び陰極引出端子22の両方が、直方体素子10の巻芯10cに対して片側に配置されている。
【0023】
図1に示すように、陰極引出端子22は、直方体素子10の最外殻に配置されている。即ち、陰極引出端子22は、直方体素子10の側面(直方体素子10の底面、
図1における下の面)において露出している。なお、ここでいう最外殻とは、直方体素子10の前記片側(陽極引出端子21及び陰極引出端子22と同じ側)にて当該引出端子より外周側に陽極箔及び陰極箔がない位置をいう。固体電解コンデンサ1では、陽極引出端子21と、陰極引出端子22と、後述するリードフレーム40(40a、40b)は、前記片側に配置されている。
陰極引出端子22は、少なくとも直方体素子10の長手方向(図中左右方向)の端面10a、10b間で露出している。陰極引出端子22は、直方体素子10の巻芯10cに対する片側(陽極引出端子21及び陰極引出端子22が配置された側、即ち図中下側)の側面において露出している。そして、当該露出した陰極引出端子22とリードフレーム40bとが接続されている。陰極引出端子22とリードフレーム40bとの接続部分は、少なくとも直方体素子10の長手方向の端面10a、10b間に位置する。
【0024】
図1に示すように、陽極引出端子21は、直方体素子10の一方の端面10aから露出している。陰極引出端子22は、直方体素子10の他方の端面10bから露出している。端面10a、10bは、直方体素子10における陽極箔11及び陰極箔12の巻回の軸線と垂直な面である。言い換えれば、陽極箔11と陰極箔12の幅方向と垂直な面のことである。また、直方体素子10における陽極箔11と陰極箔12との巻回の軸線と平行な面が直方体素子10の側面である。
【0025】
陽極引出端子21の露出部21a(
図5参照)及び陰極引出端子22の露出部22a(
図5参照)は、非弁金属からなる。本発明において、陽極引出端子21の露出部21a及び陰極引出端子22の露出部22aは、弁金属からなってもよい。陽極引出端子21の接続部21b(
図5参照)は、弁金属からなる。陰極引出端子22の接続部22b(
図5参照)は、銅母材からなり、銅母材の表面には、ニッケル又は銀のメッキが施されている。このような材質の陰極引出端子22を用いることにより、陰極引出端子22とリードフレーム40とを接続する際の接続抵抗を低下させることができる。このように、陰極引出端子は銅母材からなることが好ましいが、本発明において、陰極引出端子の材質は特に限定されない。
【0026】
また、陽極引出端子21の直方体素子10外における厚さ、即ち、陽極引出端子21のうち端面から露出した部分の厚さは、陰極引出端子22(直方体素子10の最外殻に配置された端子)の厚さよりも大きい。これにより、陽極引出端子21のリードフレーム40aとの溶接面(図中、下側の表面)の高さと、陰極引出端子22のリードフレーム40bとの溶接面(図中、下側の表面)の高さとを、より精度良く揃えることができる。
【0027】
図1に示すように、直方体素子10の外部にリードフレーム40(40a及び40b)が設けられている。リードフレーム40が外装体30に嵌め込まれている。また、リードフレーム40aに陽極引出端子21が接続され、リードフレーム40bに陰極引出端子22が接続されている。この構成では、固体電解コンデンサ1の製造時において、一つのリードフレーム40に複数の直方体素子10が接続される(
図9、
図12参照)。
【0028】
陽極引出端子21とリードフレーム40aとは、金属間結合により接続されている。陽極引出端子21とリードフレーム40aとの接続には、導電性接着剤が用いられていない。金属間結合による接続方法としては、溶接(レーザー溶接や抵抗溶接等)が挙げられる。
【0029】
また、リードフレーム40aは、陽極引出端子21のうち直方体素子10外に露出した部分(直方体素子10の端面10aから露出した部分)と接続されている。また、リードフレーム40aは、陽極引出端子21の直方体素子10外に露出した部分(陽極引出端子21のうち直方体素子10の端面から露出した部分)のうち、直方体素子10の最外殻に近い側の面と接続されている。
【0030】
陰極引出端子22とリードフレーム40bとは、導電性接着剤により接続されている。導電性接着剤としては、例えば、絶縁性の熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を主成分とし、当該樹脂中に導電性物質(例えば、銀、銅、黒鉛)が分散されたもの等、従来公知のものを使用することができる。本実施形態において、導電性接着剤としては、銀ペーストが使用されている。
【0031】
また、リードフレーム40bは、陰極引出端子22のうち直方体素子10の側面(直方体素子10の底面、
図1における下の面)を構成する部分と接続されている。陰極引出端子22は、直方体素子10の長手方向(
図1の左右方向)の端面10a、10b間においてリードフレーム40bと接続される。
【0032】
本実施形態において、陽極引出端子21が直方体素子10から露出した部分は、扁平状である。当該部分が円柱状である場合に比べると、陽極引出端子21と、直方体素子10外部のリード線(例えばリードフレーム40)とを接続させるときに面接触になるので、より大きな接触面積が得られ、電気的接続を確保することができる。本発明において、陽極引出端子21の露出した部分の形状は、この例に限定されず、例えば、陽極引出端子21が陽極箔11と接続される部分及び陰極引出端子22が陰極箔12と接続される部分よりも厚い板状であってもよい。陽極引出端子21が直方体素子10から露出した部分の表面は、平面であってもよく、曲面であってもよく、平面と曲面とからなっていてもよい。
【0033】
図1に示すように、外装体30によって、直方体素子10と、直方体素子10と接続させたリードフレーム40とが外装(封止)され、外部との絶縁が確保されている。外装体30としては、例えば、エポキシ樹脂や液晶ポリマー等が挙げられる。また、外装体30の形成には、一般的なモールド成型のプロセスが用いられる。外装体30内において、リードフレーム40は、平板状を有しており、陽極引出端子21及び陰極引出端子22の各々と面接触している。リードフレーム40には、曲げ加工が施されておらず、リードフレーム40は、平板状に形成されており、端面10a、10bと対向していない。従って、直方体素子10の端面10a、10bと、端面10a、10bと対向する外装体30の表面との間の距離を短くすることができる。その結果、陽極箔11の幅を広くすることができ、静電容量を増加させることができる。
【0034】
本実施形態では、直方体素子10を適切な厚さ(例えば、1.8mm)に設定することにより、樹脂モールド時に、素子径による制約が無く、より低背要求に応えることができるチップ式の固体電解コンデンサを実現できる。従って、本実施形態に係る固体電解コンデンサ1によれば、占める厚さのスペースが少なく、電子設備の低背化に対する要求をより高いレベルで満足することができる。
【0035】
次に、
図3を用いて、第一実施形態に係る固体電解コンデンサ1が備える直方体素子10と、従来の固体電解コンデンサ101が備える素子110及び比較例としての固体電解コンデンサ1001が備える素子1010との対比を行う。
図3(a)は、第一実施形態に係る直方体素子10を示す模式図であり、(b)は、従来の素子110を示す模式図であり、(c)は、比較歴としての素子1010を示す模式図であり、(d)は、(c)に示す素子1010を備えた比較例としての固体電解コンデンサ1001を模式的に示す概略縦断面図である。
【0036】
図3(a)に示すように、直方体素子10では、陽極引出端子21及び陰極引出端子22が、巻芯10cに対して片側に配置されている。巻芯10cは、最内周に位置するセパレータ13からなる(
図4参照)。
【0037】
一方、
図3(b)に示す従来の素子110では、陽極引出端子121と陰極引出端子122との間に、巻芯110cが位置している。
図3(a)、(b)に示すように、直方体素子10内における陽極引出端子21と陰極引出端子22との距離は、直方体素子110における陽極引出端子121と陰極引出端子122との距離よりも短い。従って、本実施形態に係る直方体素子10では、直方体素子10の厚さ方向における陽極引出端子21と陰極引出端子22との高さの差を小さくすることができる。
【0038】
本実施形態に係る直方体素子10と同様、
図3(c)に示す比較例としての素子1010においても、陽極引出端子1021及び陰極引出端子1022が、巻芯1010cに対して片側に配置されている。
図3(b)、(c)に示すように、素子1010内における陽極引出端子1021と陰極引出端子1022との距離は、素子110における陽極引出端子121と陰極引出端子122との距離よりも短い。従って、比較例としての素子1010では、本実施形態に係る直方体素子10と同様、素子1010の厚さ方向における陽極引出端子1021と陰極引出端子1022との高さの差を小さくすることができる。
【0039】
これに対し、本実施形態に係る直方体素子10と比較例としての素子1010との間には、以下のような相違点が存在する。
図3(a)に示すように、直方体素子10では、陰極引出端子22が直方体素子10の最外殻に配置されている。即ち、陰極引出端子22は、直方体素子10の側面(直方体素子10の底面、
図3(a)における下の面)において露出している。一方、
図3(c)に示す素子1010では、陰極引出端子1022が素子1010の最外殻に配置されていない。即ち、陰極引出端子1022は、素子1010の側面(素子1010の底面、
図3(c)における下の面)において露出していない。このことに起因して、
図1、
図3(d)に示すように、本実施形態に係る固体電解コンデンサ1におけるリードフレームの引出経路は、固体電解コンデンサ1001におけるリードフレームの引出経路よりも短い。その結果、本実施形態に係る固体電解コンデンサ1によれば、同サイズの固体電解コンデンサ1001に比べて、電極箔の幅及び静電容量値を、さらに増加させることができる。
【0040】
なお、巻芯10cは、
図3(a)に示すように、直方体素子10にプレス加工が施されることにより、巻芯10cの軸線方向からみて、端面10bの長手方向に延びている。直方体素子10の厚さ方向(
図3の上下方向)において、陽極引出端子21及び陰極引出端子22が巻芯10cと重なり合っている。巻芯10cの軸線方向からみて、端面10b(又は端面10a)の長手方向に沿った巻芯10cの長さは、陽極引出端子21及び陰極引出端子22の幅よりも長い。陽極引出端子21及び陰極引出端子22のうち、直方体素子10内に位置する部分全体と、巻芯10cとが、直方体素子10の厚さ方向に重なり合っている。言い換えると、端面10b(又は端面10a)の長手方向において、陽極引出端子21及び陰極引出端子22の幅は、巻芯10cの幅よりも狭い。これにより、プレス時に陽極引出端子21が接続された陽極箔11と、陰極引出端子22が接続された陰極箔12に加わる力を低減することができる。また、直方体素子10内において、陽極引出端子21と陰極引出端子22とは直方体素子10の厚さ方向に重なっている。本発明において、陽極引出端子21及び陰極引出端子22の少なくとも一部が重なり合っていればよく、その程度は、特に限定されないが、例えば、直方体素子10内において陽極引出端子21及び陰極引出端子22の少なくとも半分が重なり合っていることが好ましく、2/3以上が重なり合っていることがより好ましい。なお、本実施形態では、両端子は同じ幅を有しているが、両端子の幅が異なる場合には、両端子の重なり合いの程度は、幅の短い端子を基準として算出される。
【0041】
図4(a)は、第一実施形態に係るプレス成型前の素子を模式的に示す横断面図であり、(b)は、第一実施形態に係るプレス成型後の素子を模式的に示す横断面図である。
図4では、
図1〜
図3と同じ構成には、
図1〜
図3における符号と同じ符号を付した。
【0042】
図4(a)に示すように、巻回素子16(プレス成型前の素子)は、比較的広くて大きな巻芯10cを備えている。
図4(a)に示す巻回素子16が、プレス加工されることにより、
図4(b)に示す直方体状の素子17になる。陽極箔11は、陰極箔12よりも厚い。本実施形態では、
図4(b)に示すように、素子17の巻芯10cの片側において、陽極引出端子21は、陽極箔11の外側の面に接続され、陰極引出端子22は、陰極箔12の外側の面に接続されている。なお、本発明においては、少なくとも陰極引出端子22が陰極箔12の外側の面に接続されていることが好ましい。直方体素子10の側面に陰極引出端子22を露出させ易く、引出距離を短くすることができるからである。
【0043】
また、
図4(b)に示すように、陽極引出端子21と陰極引出端子22との間には、1枚のみの陰極箔12と、セパレータ13とが配置されている。即ち、陽極引出端子21と陰極引出端子22との間に配置されている電極箔は1枚である。従って、直方体素子10の厚さ方向における陽極引出端子21と陰極引出端子22との距離を短くすることができる。なお、本発明において、陽極引出端子21と陰極引出端子22との間に配置されている電極箔は、この例に限定されない。
【0044】
また、
図4(b)に示すように、素子17の厚さ方向(図中上下方向)において、陰極引出端子22の外側には、1枚のセパレータ13が配置されているのみであり、陽極箔11及び陰極箔12は配置されていない。陰極引出端子22の外側に配置されたセパレータ13が取り除かれることにより、陰極引出端子22が露出する。セパレータ13が取り除かれる前の素子が素子17(
図4(b)参照)であり、セパレータ13が取り除かれた後の素子が直方体素子10(
図3(a)参照)である。なお、本発明において、陰極引出端子の外側には、複数枚のセパレータが配置されていてもよい。この場合、複数枚のセパレータを取り除くことにより、陰極引出端子22を露出させることができる。
【0045】
次に、
図5〜
図12を参照して、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
【0046】
<ステップS1>
図5の通り、所定の幅に裁断された陽極箔11および陰極箔12を準備する。具体的に、陽極箔11と陰極箔12は共に帯状である。陽極箔11及び陰極箔12については、上述した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0047】
<ステップS2>
図5の通り、陽極箔11及び陰極箔12に電極引出端子21、22を接合する。具体的に、陽極箔11に陽極引出端子21を接合し、陰極箔12に陰極引出端子22を接合する。陽極引出端子21は、円柱形の露出部21aと平板状の接続部21bとからなる。陰極引出端子22は、円柱形の露出部22aと平板状の接続部22bとからなる。陽極引出端子21の接続部21bは、陽極箔11と接合される。陰極引出端子22の接続部22bは、陰極箔12と接合される。各電極引出端子21、22と、電極箔11、12との接合は、カシメや超音波溶接等により行われる。
また、ステップS2では、陰極引出端子22を陰極箔12に接合するとともに、陰極引出端子22のうち、陰極箔12から露出している直方体素子1の端面10a側の部分を切除する。本実施形態では、素子17の厚さ方向における陽極引出端子21と陰極引出端子22との距離が短く、且つ陽極引出端子21の露出部21aが接続部21bよりも厚いので、陽極引出端子21と陰極引出端子22との短絡を防止するために、陰極引出端子22の露出部22aが丁寧に取り除かれる。従って、
図1に示すように、直方体素子10において、陰極引出端子22は、直方体素子10の端面10aから突出しない。但し、短絡防止の観点からみて、若干量(例えば、製造時の不可避的誤差)の突出であれば許容される。
【0048】
<ステップS3>
図6に示すように、陽極箔11及び陰極箔12、並びに陽極箔11と陰極箔12との間に配置されたセパレータ13を巻回して所定の長さで切断することにより、円柱体を形成し、端部を巻止テープ14により円柱体の側面に固定する。ここで、陰極箔12は陽極箔11に対して巻回軸に対して外側に巻回され、陰極箔12が円柱体の最外周に位置する。この構成によれば、陽極箔11に形成される誘電体酸化皮膜を抵抗の低い陰極箔12で覆う(誘電体酸化皮膜に陰極箔12を近づける)ことにより、ESRを低下させることができる。また、陽極箔11より陰極箔12の方が柔らかいので、陰極箔12を陽極箔11の外側に配置して巻回することにより、モールド樹脂による素子へのストレスを緩和することができる。なお、端部を巻止テープ14により円柱体の側面に固定することに対しては、巻止テープを使用せず接着剤で貼り付ける方法もある。これにより巻回素子16が形成される。このとき、陽極引出端子21の接続部21b及び陰極引出端子22の接続部22bは、巻回素子16の内部に位置する。また、陽極引出端子21の露出部21aは、巻回素子16の一端から露出する。セパレータ13は、例えば、天然繊維(セルロース)または、化学繊維からなる。セパレータ13として使用され得る天然繊維や化学繊維は、特に限定されるものではない。化学繊維としては、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリイミド繊維、ナイロン繊維等の合成繊維を用いることができる。
【0049】
<ステップS4>
図7の通り、巻回素子16を直方体状の素子17に変形する(
図4(a)、(b)参照)。具体的に、所定の冶具(図示せず)に巻回素子16を固定し、荷重を加えて変形することにより、所定寸法の直方体状の素子17を形成する。次に、素子17をバーに固定する。
さらに、本実施形態では、陽極引出端子21が素子17から露出した部分が円柱状である場合には、巻回素子16を素子17に変形してから、円柱状の露出部21aをプレスし、扁平状(又は平板状)に成形する。
【0050】
<ステップS5>
素子17に化成処理及び熱処理を行う。具体的に、素子17を化成液容器中の化成液に浸し、化成容器を陰極、陽極引出端子21を陽極として、陽極箔11に化成処理を施す。化成液に用いる溶質は、カルボン酸基を有する有機酸塩類、リン酸塩等の無機酸塩等の溶質である。本実施の形態においては、化成液としてアジピン酸アンモニウムを用いる。この化成処理は、アジピン酸アンモニウム濃度0.5wt%〜3wt%を主体とした化成液を用いて、誘電体酸化皮膜の耐電圧に近似した電圧で行う。次に、素子17を化成液から取り出し、熱処理を行う。熱処理は200℃〜300℃の温度範囲で数分間〜数十分間程度行う。化成および熱処理の動作を数回繰り返す。これらの処理により、陽極箔11の断面に露出した弁金属、または端子接続による傷等に起因する金属露出面に酸化皮膜が形成されている。それにより、より耐熱性に優れた誘電体酸化皮膜を形成することができる。
【0051】
<ステップS6>
上述の素子の陽極箔11と陰極箔12の間に固体電解質層(陽極箔11と陰極箔12の各々の表面およびセパレータ13により保持される固体電解質の層)の形成を行う。本実施の形態においては、固体電解質は導電性高分子であり、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェンと酸化剤であるp−トルエンスルホン酸鉄塩の化学重合によって形成される。具体的に、まず、モノマー溶液は、例えば、エタノールで希釈され25wt%濃度とされる。素子17をモノマー溶液に浸し、そして、加熱乾燥により溶剤であるエタノールを除去させ、モノマーのみを残す。加熱乾燥の温度は、好ましくは40℃〜60℃であり、例えば50℃とすることができる。60℃を超える温度では、エタノールの沸点に近くなり急激な蒸発を招き、素子17内部にモノマーが均一に残らなくなる。また、40℃以下では蒸発に時間を要する。乾燥時間は、素子17の体積によるが、素子17では、10分〜20分程度が好ましい。次にモノマーを残留させた素子17に酸化剤を含浸させ、3,4−エチレンジオキシチオフェンを形成させる。上述の酸化剤の含浸は、減圧含浸法により素子17に含浸させる。酸化剤としては、p−トルエンスルホン酸鉄塩の55wt%のブタノール溶液を用い、素子17を酸化剤に浸漬させ、減圧含浸させる。次に、素子17を30℃から180℃まで段階的に昇温させ、化学重合反応により、導電性高分子であるポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンを形成させることができる。なお、素子に形成する導電性高分子は、素子内で化学重合により形成する方法だけでなく、予め導電性高分子を合成し、溶媒に分散させた溶液に素子を浸漬し乾燥して形成してもよく、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンに替えて、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の公知の導電性高分子を単独または複数で使用することができる。
【0052】
<ステップS7>
図8の通り、陽極引出端子21の余分な部分を切断し、
図9の通り、直方体素子10の電極引出端子21、22を、リードフレーム40に接続させる。リードフレーム40が外部引出端子となる。
【0053】
具体的な接続方法について、
図10を用いて説明する。
まず、素子17において、陰極引出端子22の外側(背面)に配置されているセパレータ13及び固体電解質をレーザーにより削り取る。これにより、素子の側面(素子の底面)において陰極引出端子22が露出し、素子17は直方体素子10となる。
図10(a)に示すように、本実施形態において、陰極引出端子22は、端面10a、10b間に位置しており、そのうち、端面10b側の一部が露出している。なお、本発明において、陰極引出端子の表面のうち露出した部分の割合は限定されず、直方体素子の一方の端面から他方の端面に亘る全体において、陰極引出端子が露出していてもよい。
【0054】
陰極引出端子22がニッケルメッキ銅母材からなる場合、セパレータ13及び固体電解質をレーザーにより削り取る。接続抵抗を小さくするためである。なお、陰極引出端子22が銀メッキ銅母材からなる場合にも同様にセパレータ13及び固体電解質をレーザーにより削り取る。
【0055】
図10(b)に示すように、先端が錐形状である針(図示せず)をリードフレーム40aに貫通させることにより、リードフレーム40aに、突起部41を形成する。突起部41は、針で貫通した時の針の周縁に沿うように形成される。突起部41は、陽極引出端子21との接続時に陽極引出端子21に向かうように形成されている。突起部41の数は特に限定されない。なお、
図10(b)では、リードフレーム40b中に、陰極引出端子接合部50が示されている。
【0056】
次に、
図10(c)に示すように、陽極引出端子21とリードフレーム40aの突起部41とが接触するように、また、直方体素子10の側面に露出した陰極引出端子22(
図10(a)参照)とリードフレーム40b中の陰極引出端子接合部50とが接触するように、直方体素子10をリードフレーム40上に配置する。
【0057】
次に、
図10(d)に示すように、レーザー溶接や抵抗溶接等の金属間結合による接続方法により、陽極引出端子21をリードフレーム40aに接合する。例えば、陽極引出端子21がアルミニウムからなり、リードフレーム40が銅からなる場合、溶接時に陽極引出端子21が溶融する。また、導電性接着剤により、陰極引出端子22をリードフレーム40bに接合する。
【0058】
<ステップS8>
図11、
図12及び
図1の通り、リードフレーム40に接続させた直方体素子10をモールド外装することにより、外装体30を形成し、続いて外装体30から外部に露出しているリードフレーム40を切断排除し、チップ型の固体電解コンデンサ1が完成する。
【0059】
[第二実施形態]
以下においては、第一実施形態に係る固体電解コンデンサ1の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明することとする。また、第一実施形態における説明が第二実施形態においても当てはまる部分については、説明を省略することとする。
【0060】
図13〜
図16を用いて、第二実施形態について説明する。
図13は、第二実施形態に係る固体電解コンデンサを模式的に示す概略縦断面図である。
【0061】
図13に示すように、第二実施形態においても、第一実施形態と同様に、陰極引出端子22が直方体素子10の最外殻に配置されている。即ち、陰極引出端子22は、直方体素子10の側面(直方体素子10の底面、
図13における下の面)において露出している。そして、当該露出した陰極引出端子22とリードフレーム40bとが接続されている。
【0062】
第二実施形態においては、第一実施形態と異なり、陰極引出端子22が折り曲げられた形状を有している。
【0063】
以下、第二実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法について説明する。ステップS1〜ステップS6までの工程については、第一実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
<ステップS7>
直方体素子10の電極引出端子21、22とリードフレーム40とを接続するに際し、陰極引出端子22に対して折り曲げ加工が行われる。
【0065】
図14及び
図15は、第二実施形態に係るプレス成型後の素子の模式図である。
図14に示すように、巻回素子16(プレス成型前の素子、
図4(a)参照)に対してプレス加工された時点の素子17において、陰極引出端子22は折り曲げられた形状を有していない。素子17において、陰極引出端子22に対して折り曲げ加工を行うことにより、
図15に示す直方体素子10が得られる。陰極引出端子22が折り曲げられる前の素子が素子17(
図14参照)であり、陰極引出端子22が折り曲げられた後の素子が直方体素子10(
図15参照)である。
【0066】
折り曲げ加工は以下のように行われる。
図14に示すように、折り曲げ加工前の素子17において、陰極引出端子22は素子の端面から露出している。また、第二実施形態においても、第一実施形態と同様に、素子17において、陰極引出端子22の外側には、1枚のセパレータ13が配置されている(
図4(b)参照)。以下、当該1枚のセパレータ13を最外殻セパレータと呼ぶ。折り曲げ加工に際しては、陰極引出端子22のうち素子の端面から露出した部分が、最外殻セパレータの辺(端面の長手方向に沿った辺)を折り目として、折り返される。これにより、素子の側面(素子の底面)において陰極引出端子22が露出する。
【0067】
第一実施形態と同様、陰極引出端子22がニッケルメッキ銅母材からなる場合、折り返された陰極引出端子22の固体電解質をレーザーにより削り取る。なお、陰極引出端子22が銀メッキ銅母材からなる場合にも固体電解質をレーザーにより削り取る。
【0068】
その後、第一実施形態と同様の方法により、陽極引出端子21とリードフレーム40aとが接続され、直方体素子10の側面に露出した陰極引出端子22とリードフレーム40bとが接続される(
図10(b)〜
図10(d)参照)。
【0069】
<ステップS8>
図16、
図12及び
図13の通り、リードフレーム40に接続させた直方体素子10をモールド外装することにより、外装体30を形成し、続いて外装体30から外部に露出しているリードフレーム40を切断排除し、チップ型の固体電解コンデンサ1が完成する。
【0070】
図13に示すように、固体電解コンデンサ1において、直方体素子10の側面のうち陰極引出端子22の露出した側面(直方体素子10の底面、
図13における下の面)は、折り返された陰極引出端子22と最外殻セパレータとによって構成される。折り返された陰極引出端子22と巻芯10cとの距離は、最外殻セパレータと巻芯10cとの距離よりも長い。従って、折り返された陰極引出端子22の表面と最外殻セパレータの表面とは段差を有しているが、本明細書では、便宜上、両平面は直方体素子の1つの面を構成するものとして説明している。
【0071】
本実施形態において、陰極引出端子22のうち側面に露出していない部分(折り返されていない部分)の外側には、1枚のセパレータ13が配置されているのみであり、陽極箔11及び陰極箔12は配置されていない。即ち、陰極引出端子22のうち側面に露出している部分と露出していない部分との間には、1枚のセパレータが挟まれているのみである。但し、陰極引出端子22のうち側面に露出している部分(折り返されている部分)と露出していない部分(折り返されていない部分)との間には、複数枚のセパレータが挟まれていてもよい。
【0072】
上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、本発明を何ら制限するものではない。本発明の当業者であれば、本発明の範囲内において、上記の方法及び技術内容を用いて、本発明に対して、種々の改変が可能であり、又は均等な実施形態に変更できる。従って、本発明の内容から逸脱しない限り、本発明に基づく実施形態に対する全ての改変、均等物への置換及び修飾は、本発明の範囲内にある。
【0073】
<実施例1>
実施例1として、上述した第一実施形態に示す固体電解コンデンサ1(6.3V、100μF)を製造した(
図1)。この固体電解コンデンサ1の外装ケースのサイズは、7.3mm×4.3mm×2.8mmであった。リードフレーム40(40a及び40b)としては、表面にニッケルメッキ処理が施された厚さ100μmの銅フレーム材を用いた。なお、製造時において、リードフレーム40aと陽極引出端子21(アルミ製陽極タブ)とを接続する前に、リードフレーム40aにおける陽極引出端子21との接続位置に針を貫通させ、これにより、前記接続位置に突起部41を形成した。針としては、先端が四角錐形状であるφ0.26mmの針を用いた。インバーター式抵抗溶接機を用いて、リードフレーム40aと、陽極引出端子21との接続を行った。また、リードフレーム40bと陰極引出端子22(ニッケルメッキ銅母材陰極タブ)とを接続する前に、陰極引出端子22の外側(背面)に配置されているセパレータ13及び固体電解質をレーザーにより削り取った。これにより、直方体素子10の側面において陰極引出端子22のニッケルメッキ表面を露出させた。そして、導電性接着剤(銀ペースト)を用いて、リードフレーム40bと、直方体素子10の側面に露出した陰極引出端子22との接続を行った。
【0074】
<実施例2>
実施例2として、上述した第二実施形態に示す固体電解コンデンサ1(6.3V、100μF)を製造した(
図13)。リードフレーム40bと陰極引出端子22(銀メッキ銅母材陰極タブ)とを接続する前に、陰極引出端子22のうち素子の端面から露出した部分を、最外殻セパレータの辺(端面の長手方向に沿った辺)を折り目として、折り返した。これにより、直方体素子10の側面(底面)において陰極引出端子22を露出させた。また、折り返された陰極引出端子22の外側(背面)に配置されているセパレータ13及び固体電解質をレーザーにより削り取って銀メッキ表面を露出させた。上記の点以外は、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサ1を製造した(
図13)。
【0075】
<比較例1>
比較例1として、従来の固体電解コンデンサ101(6.3V、100μF)を製造した(
図17)。この固体電解コンデンサ101の外装ケースのサイズは、実施例1〜2と同様であり、7.3mm×4.3mm×2.8mmであった。リードフレームとしては、表面にニッケルメッキ処理が施された厚さ100μmの銅フレーム材を用いた。なお、製造時において、リードフレームと陽極引出端子(アルミ製陽極タブ)及び陰極引出端子(アルミ製陰極タブ)とを接続する前に、リードフレームにおける陽極引出端子及び陰極引出端子との接続位置に針を貫通させ、これにより、前記接続位置に突起部を形成した。針としては、先端が四角錐形状であるφ0.26mmの針を用いた。インバーター式抵抗溶接機を用いて、リードフレームと、陽極引出端子及び陰極引出端子との接続を行った。
【0076】
<比較例2>
比較例1における固体電解コンデンサ101に代えて、固体電解コンデンサ1001(
図3(d))(6.3V、100μF)を製造した以外、比較例1と同様にして、比較例2を行った。この固体電解コンデンサ1001の外装ケースのサイズは、実施例1〜2と同様であり、7.3mm×4.3mm×2.8mmであった。
【0077】
実施例1〜2の固体電解コンデンサ1と、比較例1の固体電解コンデンサ101、及び比較例2の固体電解コンデンサ1001との性能比較を行った。その結果を表1に示す。なお、Tanδは、損失角の正接を示す。LCは、漏れ電流を示す。 ESRは、等価直列抵抗を示す。
【0079】
表1に示すように、実施例1〜2の固体電解コンデンサ1では、比較例1の固体電解コンデンサ101に比べると、静電容量が約50%増加し、比較例2の固体電解コンデンサ1001に比べても、静電容量が約20%増加し、低抵抗化(ESRの改善)が確認され、本発明の有効性が明確に確認された。
本発明は、固体電解コンデンサであって、前記固体電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、並びに陽極箔及び陰極箔の間に介したセパレータによって巻回された巻回素子を直方体状に扁平し、固体電解質を形成した直方体素子と、前記陽極箔と接続された陽極引出端子と、前記陰極箔と接続された陰極引出端子と、前記直方体素子を外装する外装体とを備え、前記陽極引出端子及び前記陰極引出端子の両方が、前記直方体素子の巻芯に対して片側に配置されており、前記陽極引出端子又は前記陰極引出端子が、前記直方体素子の最外殻に配置されている。