【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、表1〜5において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。
【0062】
(実施例1〜25)
まず以下のようにして難燃剤を作製した。すなわちまず表1〜4に示す炭酸カルシウム粒子、タルク粒子又はクレイ粒子からなる無機化合物粒子に、表1〜4に示す配合割合でシリコーン1又は2を添加し、東洋精機社製ラボプラストミル・バンバリーミキサーB600Hを用いて、室温、攪拌速度50rpmにて10分間混合した。こうして難燃剤を得た。
【0063】
上記無機化合物粒子およびシリコーンとしては具体的には下記のものを用いた。
【0064】
(A)無機化合物粒子
(A−1)炭酸カルシウム粒子(平均粒径0.70μm)
ソフトン3200(商品名、白石カルシウム社製)
(A−2)炭酸カルシウム粒子(平均粒径1.7μm)
NCC−P(商品名、日東粉化社製)
(A−3)炭酸カルシウム粒子(平均粒径3.6μm)
BF100(商品名、白石カルシウム社製)
(A−4)炭酸カルシウム粒子(平均粒径8.0μm)
BF300(商品名、白石カルシウム社製)
(A−5)炭酸カルシウム粒子(平均粒径14.8μm)
NN#200(商品名、日東粉化社製)
(A−6)タルク粒子
タルク粒子(平均粒径1.0μm)
NANO ACE D−1000(商品名、日本タルク社製)
(A−7)タルク粒子(平均粒径8.0μm)
MICRO ACE K−1(商品名、日本タルク社製)
(A−8)クレイ粒子(平均粒径1.5μm)
Glomax LL(商品名、竹原化学工業社製)
(A−9)クレイ粒子(平均粒径5.3μm)
No.5カオリンクレイ(商品名、竹原化学工業社製)
【0065】
(B)シリコーン系化合物
(B−1)シリコーン1
X−21−3043(商品名、信越化学社製)シリコーンガム
(B−2)シリコーン2
KF−96−350cs(商品名、信越化学社製)シリコーンオイル
【0066】
上記のようにして得られた難燃剤、表1〜4に示すベース樹脂及び表1〜4に示す脂肪酸含有化合物を、表1〜4に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて5分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。
【0067】
次いで、この難燃性樹脂組成物をバンバリーミキサによって160℃にて15分間混練した。その後、この難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からからチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数1本/断面積2mm
2)上に、厚さ0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を得た。
【0068】
表1〜4に示すベース樹脂および脂肪酸含有化合物としては具体的には下記のものを用いた。
【0069】
(C)ベース樹脂
(C−1)ポリエチレン(PE)
エクセレンGMH GH030(商品名、住友化学社製)
(C−2)ポリプロピレン(PP)
E−150GK(商品名、プライムポリマー社製)
(C−3)エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)
レクスパールA115(商品名、日本ポリエチレン社製)
(C−4)エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)
LOTRYL 16MA003(商品名、アルケマ社製)
(C−5)スチレン−ブタジエンゴム(SBR)
ダイナロン1320P(商品名、JSR社製)
【0070】
(D)脂肪酸含有化合物
(D−1)ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg)
エフコケムMGS(商品名、ADEKA社製)
(D−2)ステアリン酸カルシウム(ステアリン酸Ca)
SC−P(商品名、堺化学社製)
(D−3)ステアリン酸
ステアリン酸さくら(商品名、日油社製)
(D−4)ラウリン酸
NAA−122(商品名、日油社製)
(D−5)ベヘン酸
NAA−222S(商品名、日油社製)
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0071】
(比較例1〜4)
難燃剤として、表5に示す難燃剤、表5に示すシリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)及び脂肪酸含有化合物を、ベース樹脂に対して表5に示す配合割合で配合したこと以外は実施例1と同様にして絶縁電線を得た。
【表5】
【0072】
なお、表5に示す難燃剤及びシリコーンMBとしては、以下のものを用いた。
(E)難燃剤
(E−1)炭酸カルシウム粒子(平均粒径1.7μm)
NCC−P(商品名、日東粉化社製)
(E−2)炭酸カルシウム粒子(平均粒径3.6μm)
BF100(商品名、白石カルシウム社製)
(E−3)炭酸カルシウム粒子(平均粒径14.8μm)
NN#200(商品名、日東粉化社製)
(E−4)炭酸カルシウム粒子(平均粒子径17μm)
K−270(商品名、旭鉱末社製)
(F)シリコーンMB
X−22−2125H(商品名、信越化学社製)
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PEとを含有
【0073】
上記のようにして得られた実施例1〜25及び比較例1〜4の難燃性樹脂組成物について、以下のようにして難燃性、シリコーン系化合物の偏析状態、機械的特性および表面平滑性の評価を行った。
【0074】
<難燃性>
実施例1〜25及び比較例1〜4の絶縁電線について、JIS C3005の60度傾斜燃焼試験を行い、難燃性を評価した。結果を表1〜5に示す。表1〜5においては、各実施例及び比較例ごとに、10本の絶縁電線を用意して難燃性試験を行い、10本の絶縁電線の消火時間(単位:秒)の平均値を測定した。ここで消火時間とは、接炎終了直後(バーナーの炎を電線から離した直後)から自己消火するまでの時間であり、消火時間が短ければ短いほど難燃性が高いことを表す。このとき、接炎は、30秒以内で電線に着火が起こるまで行った。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、消火時間の平均値の単位は秒であり、消火時間の平均値の合否基準は下記の通りとした。
60秒以下:合格
60秒超 :不合格
なお、表1〜5において、難燃性が優れる場合には、表1〜5の「60度傾斜燃焼試験」の欄に「○」と併記し、難燃性が劣る場合には、表1〜5の「60度傾斜燃焼試験」の欄に「×」と併記した。
【0075】
<シリコーン系化合物の偏析状態>
実施例1〜25及び比較例1〜4の絶縁電線の被覆から一部を試験片として切り取り、この試験片の切断面について、SEMで観察しながらエネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry:EDS)を行った。結果を表1〜5に示す。なお、切断面において、シリコーン系化合物の偏析が見られなかった場合には合格とし、表1〜5における「シリコーン系化合物の偏析」の欄に「○」と表示した。また、シリコーン系化合物の偏析が見られた場合には、不合格と判断し、表1〜5における「シリコーン系化合物の偏析」の欄に「×」と表示するようにした。このとき、直径10μm以上の凝集部が確認された場合、偏析有りと判断し、直径10μm以上の凝集部が確認されない場合、偏析なしと判断した。
【0076】
<機械的特性>
機械的特性の評価は、実施例1〜25及び比較例1〜4の難燃性樹脂組成物について、JIS C3005により引張試験を行い、測定された引張強度に基づいて行った。結果を表1〜5に示す。表1〜5において、引張強度の単位はMPaであり、引張強度の合否基準は下記の通りとした。引張試験において、引張速度は200mm/min、標線間距離は20mmとした。
【0077】
<表面平滑性>
表面平滑性は、実施例1〜25及び比較例1〜4の絶縁電線について、下記I〜IVの基準に従って評価した。結果を表1〜5に示す。
I :触っても凹凸が確認できず且つ表面に光沢が見られる
II :触っても凹凸が確認できず且つ表面に光沢が見られない
III:触ると凹凸が確認できるが、目視では凹凸が確認できない
IV :触ると凹凸が確認でき且つ目視でも凹凸が確認できる
【0078】
表1〜5に示す結果より、実施例1〜25の難燃剤を脂肪酸含有化合物とともにベース樹脂に配合して難燃性樹脂組成物を作製すると、難燃性樹脂組成物に優れた難燃性を付与でき、シリコーンの偏析を十分に抑制できることが分かった。
【0079】
このことから、本発明の難燃剤によれば、難燃性樹脂組成物に配合される場合に、優れた難燃性を付与でき、シリコーン系化合物の偏析を十分に抑制できることが確認された。