【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したセントラル換気装置においては、換気ユニット本体が各フロアの天井の裏側に設けられ、当該換気ユニット本体により供給される空気を屋内へ吹き出す吹き出し口が天井面に複数設けられ、換気ユニット本体に屋内の空気を吸い込ませる吸入口が一フロア全体で一箇所設けられている構成が一般的である。このため、セントラル換気装置における各種配管や電気配線等は、建物本体の上下に位置する建物ユニット同士の当該上下に隣接する床梁と天井梁とによって形成される梁2つ分のスペースに、ダクトスペースやパイプスペース等を設けて配設されていた。
【0009】
ここで、特許文献2のユニット式建物のように、敷地を無駄なく有効活用しつつ居住空間を可能な限り広く確保することを目的として、屋根面が略平坦な陸屋根を採用し、且つ、建物本体の上部に配設される陸屋根ユニットを従来に比べて嵩上げすることで、その内部に大型の収納空間を設けるようにしたユニット式建物では、陸屋根ユニットに床梁が存在しない。
【0010】
これは、以下のようなことに起因する。すなわち、このような陸屋根ユニットや建物ユニットによるユニット式の住宅の場合、陸屋根の一部を柱や梁などの構造耐力部材を用いて嵩上げすると、当該嵩上げ部分が最上階とみなされる可能性がある。その場合、最上部の位置する梁までが軒高として判断され、建築基準法における日影規制等の制限をオーバーしてしまう虞があるためである。
【0011】
よって、かかる陸屋根ユニットは、建物本体の上階を形成する建物ユニットの上部に載置されるベースパネルとしての小屋パネルと、当該小屋パネルの外周縁部に配設されるパラペットと、当該パラペットの内側に防水シート等を介して緩勾配を有するように配設される屋根材(屋根パネル)とにより構成されている。そして、陸屋根ユニットの床面は、床梁を用いることなく、その直下に位置する上階の建物ユニットの天井梁の上に直接パーティクルボード等の合板を敷設することで形成されている。つまり、特許文献2のユニット式建物の場合、陸屋根ユニットと、その直下に位置する上階の建物ユニットと、の上下間においては上階の建物ユニットにおける天井梁のみが存在し、上下に梁が隣接しない。
【0012】
従って、特許文献2のようなユニット式建物に対して特許文献1のようなセントラル換気装置を備える場合、上述の各種配管や電気配線等を設けるためのダクトスペースやパイプスペース等は、梁2つ分のスペースを利用していた従来のものと比較して梁が半減してなる、建物本体の上階側における建物ユニットの天井梁のみで形成される梁1つ分のスペースに配設しなければならない。
【0013】
このため、梁2つ分のスペースを利用していた従来のものと比較して梁が半減する前記梁1つ分のスペースに対し、ダクトスペースやパイプスペース等を、剛性の低下を招くことなく配設する技術の開発が望まれている。
【0014】
そこで、本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットを備えるユニット式建物であっても、当該屋根ユニットと直下の建物ユニットとの間の省スペース化された領域に、各種配管、配線等の配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1〜
図6に示すように、四隅に立設される柱2の隣り合う上端部同士および下端部同士を、それぞれ四本の天井梁3および床梁4によって連結した矩形状の箱形からなる建物ユニット1を複数組み合わせて構築される建物本体Hと、当該建物本体Hの上部に配置され、内部に所定の空間(例えば、収納スペースSP)を有する屋根ユニットR2によって構築される屋根R2aと、を備えたユニット式建物において、
前記建物本体Hにおける前記複数の建物ユニット1のうち、前記屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’は、前記矩形状に連結された前記各天井梁3からなり、当該建物ユニット1’内の空間における天井部F2bを形成する矩形枠部30を有し、
前記矩形枠部30は、前記各天井梁3のうち長辺方向の天井梁3a,3a間に、短辺方向の天井梁3b,3bと平行且つ、前記長辺方向に沿って所定の間隔で複数の
木製の根太31
および複数の鋼製の根太32を架設すると共に、前記各天井梁3および前記複数の
木製の根太31
および複数の鋼製の根太32の上面に床材(床板8)を敷設することで、直上に位置する前記屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)における床部(屋上階F3の床部F3a)を兼用しており、
前記複数の
鋼製の根
太32が、
下方側に配置される鋼製梁33と、上方側に配置されて前記床材(床板8)を受ける床材受部材34と、を積層してなる合成部材からなり、
前記床材受部材34には、各種設置物(例えば、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管など)に対応する所定の位置に、当該各種設置物(ダクト用配管DA)を配置する配置スペース用の切欠部35が設けられ
、
前記合成部材は、前記鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟持するように配置される一対の野縁36,36を備えていることを特徴とする。
【0016】
この場合、建物本体Hを構築する複数の建物ユニット1のうち、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’は、矩形状に連結された各天井梁3からなる矩形枠部30によって、その内部空間(上階F2)の天井部F2bと、直上に位置する前記屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)における床部F3aと、を兼用している。このとき、この矩形枠部30には、各天井梁3のうち長辺方向の天井梁3a,3a間に、短辺方向の天井梁3b,3bと平行且つ、長辺方向に沿って所定の間隔で複数の
木製の根太31
および複数の鋼製の根太32が架設されると共に、各天井梁3および複数の根太31,32の上面に床材(床板8)が敷設されている。
【0017】
すなわち、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下の建物ユニット1’と、を積層してなるユニット式建物において、下方の建物ユニット1’と、上方の屋根ユニットR2と、の間に形成される当該建物ユニット1’内部の天井部F2bと、屋根ユニットR2内部の床部F3aとを兼用する矩形枠部30による梁1つ分のスペースからなる領域を、床梁等の構造耐力部材を用いた屋根ユニットR1と、通常の建物ユニット1と、を積層してなる一般的なユニット式建物において、下方の建物ユニット1と、上方の屋根ユニットR1との間に形成される天井梁3および床梁等による梁2つ分のスペースからなる領域に比較して、省スペース化することができる。
【0018】
しかも、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’の矩形枠部30によって形成される天井部F2bが、屋上階F3に配置される屋根ユニットR2の床部F3aを兼用しているので、当該屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)を直下の建物ユニット1’内の部屋のロフトや小屋裏空間として利用することができる。このとき、屋根ユニットR2内の空間(すなわち、その直下の建物ユニット1’と当該屋根ユニットR2による屋根(屋根面R2a)との間に形成される空間)を収納スペースSPとして利用すれば、建物内部に必要上十分な収納空間を設けることができる。
【0019】
また、前記収納スペースSPは、内部空間を持たない屋根ユニットR1による屋根(屋根面R1a)に比べて高さ方向の寸法が嵩上げされた屋根ユニットR2における屋根(屋根面R2a)の下部に設けられるので、屋根面R1aより下方の建物本体H側に設けられる居住空間にステップ床等を設けて収納空間を形成する場合に比べて、当該居住空間が削られることがない分、居住空間を広く確保(維持)することもできる。さらに、屋根ユニットR2による屋根面R2aと、その直下の建物ユニット1’との間に形成される空間(収納スペースSP)が下方側の居住空間(すなわち、下階F1および上階F2側)に対する有効な断熱層となる利点もある。
【0020】
とりわけ、天井部F2bを形成する矩形枠部30は、各天井梁3のうち長辺天井梁3a,3a間に、短辺天井梁3b,3bと平行且つ、その長辺方向に沿って所定の間隔で架設される複数の
木製の根太31
および複数の鋼製の根太32を有しており、
複数の鋼製の根太3
2が、下方側に配置される鋼製梁33と、上方側に配置されて床材(床板8)を受ける床材受部材34と、を積層してなる合成部材からなるので、当該一部の根太32における剛性を格段と向上させることができる。しかも、床材受部材34には、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物に対応する所定の位置に、当該各種設置物(ダクト用配管DA)を配置する配置スペース用の切欠部35が設けられているので、当該配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0021】
さらに、これらに加えて、屋根ユニットR2は高さ方向の寸法が嵩上げされていることを除き、規定寸法からなる内部空間を持たない屋根ユニットR1と略同一の寸法からなると共に、建物ユニット1’も矩形枠部30の構成を除き、規定寸法からなる通常の建物ユニット1と略同一の寸法からなるので、それぞれ平面寸法をモジュール化して共通とすることで、製造コストの削減を図ることができると共に、工場において製造した屋根ユニットR1,R2および建物ユニット1,1’を用いることで、建築現場における作業の軽減および施工期間の短期化を図ることもできる。
【0022】
かくして、請求項1に記載の発明によれば、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下に配置され、屋根ユニットR2内の空間における床部F3aと直下の空間(上階F2)の天井部F2bとを兼用する矩形枠部30を有する建物ユニット1’と、を備えており、これら上下間の領域が、梁1つ分のスペースに省スペース化されるユニット式建物であっても、天井梁3によって構成される矩形枠部30に設けられる複数の根太31,32の
うち、複数の鋼製の根太3
2が、下方の鋼製梁33と、上方の床材受部材34と、を積層してなる合成部材によって構成されており、床材受部材34には、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物に対応する所定の位置に、それらを配置する配置スペース用の切欠部35が設けられているので、当該配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
また、矩形枠部30において剛性が向上された複数の鋼製の根太32を構成する合成部材が、鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟み込むように配置される一対の野縁36,36を更に備えているので、当該根太32の剛性をより一層向上させることができる。よって、床材受部材34に換気装置のダクト用配管や電気配線用の導管などの各種設置物を配置するための切欠部35を設ける際の剛性の低下を防止することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、例えば
図3に示すように、請求項1に記載のユニット式建物において、
前記矩形枠部30は、前記天井梁3同士を連結するブレースBRを備えており、
前記ブレースBRは、前記床材受部材34の切欠部35に配置されることを特徴とする。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、矩形枠部30は、天井梁3同士を連結するブレースBRを備えており、当該ブレースBRは床材受部材34の切欠部35に配置されるので、当該切欠部35を利用して配置可能なブレースBRにより、矩形枠部30ひいては建物ユニット1’における剛性を格段と向上させることができる。
【0025】
請求項3に記載の発明は、例えば
図3,図4および図
6に示すように、請求項1または2に記載のユニット式建物において、
前記床材受部材34は、前記鋼製梁33の上面に対して当該鋼製梁33の上面の長さ方向に間隔を空けて複数設けられており、
これら複数の床材受部材34間の隙間が前記切欠部35とされていることを特徴とする。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物において、
前記各種設置物の一つとして、建物内に外気を取り入れると共に、建物内の室内空気を外部に排出する換気装置が備えられており、
前記換気装置に接続される配管および導管(例えば、ダクト用配管DA)が、前記床材受部材34の切欠部35に配置されることを特徴とする。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2を備えるユニット式建物に、近年、義務付けされている24時間換気を行うための換気装置を設置する場合においても、当該換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などを、床材受部材34の所定の位置に設けられた切欠部35を利用して配置することで、剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0031】
請求項
5に記載の発明は、請求項1〜
4のいずれか一項に記載のユニット式建物において、
前記屋根ユニットR2内部の天井高が、0.8m〜1.4mに設定されていることを特徴とする。
【0032】
請求項
5に記載の発明によれば、屋根ユニットR2内部の天井高を、0.8m〜1.4mに設定することによって、例えば屋根ユニットR2内部の空間を収納スペースSPとして利用する場合、人が収納スペースSPに入って、何とか作業ができる最低限の高さを確保でき、また、このように天井高を必要最小限に抑えることで、ユニット式建物の高さが高くなることによって隣接する建物に及ぼす日照減少等の影響を極力少なくする(最小限に抑える)ことができる。