特許第5886784号(P5886784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886784
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】ユニット式建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   E04B1/348 G
   E04B1/348 E
   E04B1/348 V
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-87945(P2013-87945)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-211045(P2014-211045A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩司
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−264512(JP,A)
【文献】 特開2003−278300(JP,A)
【文献】 特開2001−073493(JP,A)
【文献】 特開平02−043454(JP,A)
【文献】 特開平09−217395(JP,A)
【文献】 特開2000−204663(JP,A)
【文献】 特開平03−244732(JP,A)
【文献】 特開平08−239942(JP,A)
【文献】 特開2001−159197(JP,A)
【文献】 特開2001−123539(JP,A)
【文献】 実開平06−063673(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅に立設される柱の隣り合う上端部同士および下端部同士を、それぞれ四本の天井梁および床梁によって連結した矩形状の箱形からなる建物ユニットを複数組み合わせて構築される建物本体と、当該建物本体の上部に配置され、内部に所定の空間を有する屋根ユニットによって構築される屋根と、を備えたユニット式建物において、
前記建物本体における前記複数の建物ユニットのうち、前記屋根ユニットの直下に位置する建物ユニットは、前記矩形状に連結された前記各天井梁からなり、当該建物ユニット内の空間における天井部を形成する矩形枠部を有し、
前記矩形枠部は、前記各天井梁のうち長辺方向の天井梁間に、短辺方向の天井梁と平行且つ、前記長辺方向に沿って所定の間隔で複数の木製の根太および複数の鋼製の根太を架設すると共に、前記各天井梁および前記複数の木製の根太および複数の鋼製の根太の上面に床材を敷設することで、直上に位置する前記屋根ユニット内の空間における床部を兼用しており、
前記複数の鋼製の太が
下方側に配置される鋼製梁と、上方側に配置されて前記床材を受ける床材受部材と、を積層してなる合成部材からなり、
前記床材受部材には、各種設置物に対応する所定の位置に、当該各種設置物を配置する配置スペース用の切欠部が設けられ
前記合成部材は、前記鋼製梁に沿って当該鋼製梁を挟持するように配置される一対の野縁を備えていることを特徴とするユニット式建物。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット式建物において、
前記矩形枠部は、前記天井同士を連結するブレースを備えており、
前記ブレースは、前記床材受部材の切欠部に配置されることを特徴とするユニット式建物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のユニット式建物において、
前記床材受部材は、前記鋼製梁の上面に対して当該鋼製梁の上面の長さ方向に間隔を空けて複数設けられており、
これら複数の床材受部材間の隙間が前記切欠部とされていることを特徴とするユニット式建物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物において、
前記各種設置物の一つとして、建物内に外気を取り入れると共に、建物内の室内空気を外部に排出する換気装置が備えられており、
前記換気装置に接続される配管および導管が、前記床材受部材の切欠部に配置されることを特徴とするユニット式建物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のユニット式建物において、
前記屋根ユニット内部の天井高が、0.8m〜1.4mに設定されていることを特徴とするユニット式建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物に関し、とりわけ建物内部に大型の収納空間を有すると共に、建物内に新鮮な外気を取り入れつつ建物内の室内空気を取り出して外部に放出する24時間換気を行う換気装置を備えるユニット式建物に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物として、予め工場で製造した建物ユニットや屋根ユニットを建築現場で組み合わせて構築されるユニット式建物が知られている。これら建物ユニットや屋根ユニットは平面寸法がモジュール化されており、一つの建物ユニット上に一つの屋根ユニットが載置されることにより、全体として強固な構造の建物が形成される。また、ユニット式建物では、内装および外装の殆どが予め工場にて形成されるため、建築現場における作業が軽減され、短期間で施工が完了するという利点がある。
【0003】
一方、近年、住宅室内の気密性向上および建築材からの化学物質発生による空気汚染防止のため、室内の24時間連続換気が建築基準法によって義務付けられるようになり、換気扇とダクトとを使用した換気方法も一般的に普及してきている。かかる24時間連続換気を行う装置としては、例えば、住宅の建物内に設置されるセントラル換気装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このセントラル換気装置は、上下に複数のフロアを有する建物における屋内を換気可能なものであり、屋内と屋外との間や屋内の各室同士を連通する各種配管(外部の空気を吸入する外部吸入配管、内部の空気を排気する外部排気配管、外部吸入配管から吸入された空気を建物内部の複数の室内に供給する室内供給配管)と、この配管の内部における強制的な空気の流れを形成する換気ユニット本体と、を備えている。そして、このセントラル換気装置では、建物内に新鮮な外気を取り入れると共に、建物内の室内空気を取り出して外部に放出するようになっている。
【0005】
また、このセントラル換気装置では、室内側に位置する室内吸入口から吸入されて外部排気配管から室外に排出される空気と、室外側に位置する外部吸入配管から吸入されて室内供給配管から室内に供給される空気との間で、熱交換をする熱交換部を備えている。このため、室内を暖房した状態において、室内吸入口および外部排気配管を介して室内から室外に排気される暖かい空気は、熱交換部により熱が吸収され、その吸収された熱は、外部吸入配管から室内に吸い込まれる室外の冷たい空気に加えられる。これにより、室内には、室内供給配管を介して室外より温度が高い空気が送られることとなり、暖房状態における熱効率の低下を抑えることができる。これとは逆に、室内を冷房した状態において、外部吸入配管および室内供給配管を介して室外から室内に吸い込まれた暖かい空気は、熱交換部により熱が吸収され、その吸収された熱は、冷やされた室内から室外に排出される空気に加えられる。これにより、室内には、室外より温度が低い空気が送られることとなり、冷房状態における熱効率の低下を抑えることができる。
【0006】
他方、近年、都市部等の住宅密集地では土地が狭くなってきており、かかる狭い土地(敷地)に建てられる住宅(所謂、狭小住宅)においては、敷地を無駄なく有効活用しつつ居住空間を可能な限り広く確保する要望が強まっている。加えて、近年における生活の質の向上や多様化に伴い、生活に使用する物品が多種多様化および多数化する傾向にあり、これらの物品を保管、収容するための大きな収納空間を備えた建物が望まれている。このとき、狭小住宅では敷地の有効利用という観点から、屋外物置等の設置は望ましくない。そこで、建物本体の上部に配設される陸屋根ユニットを従来に比べて嵩上げすることで、その内部に大型の収納空間を設けるようにしたユニット式建物が本出願人によって提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−351633号公報
【特許文献2】特願2012−269973号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したセントラル換気装置においては、換気ユニット本体が各フロアの天井の裏側に設けられ、当該換気ユニット本体により供給される空気を屋内へ吹き出す吹き出し口が天井面に複数設けられ、換気ユニット本体に屋内の空気を吸い込ませる吸入口が一フロア全体で一箇所設けられている構成が一般的である。このため、セントラル換気装置における各種配管や電気配線等は、建物本体の上下に位置する建物ユニット同士の当該上下に隣接する床梁と天井梁とによって形成される梁2つ分のスペースに、ダクトスペースやパイプスペース等を設けて配設されていた。
【0009】
ここで、特許文献2のユニット式建物のように、敷地を無駄なく有効活用しつつ居住空間を可能な限り広く確保することを目的として、屋根面が略平坦な陸屋根を採用し、且つ、建物本体の上部に配設される陸屋根ユニットを従来に比べて嵩上げすることで、その内部に大型の収納空間を設けるようにしたユニット式建物では、陸屋根ユニットに床梁が存在しない。
【0010】
これは、以下のようなことに起因する。すなわち、このような陸屋根ユニットや建物ユニットによるユニット式の住宅の場合、陸屋根の一部を柱や梁などの構造耐力部材を用いて嵩上げすると、当該嵩上げ部分が最上階とみなされる可能性がある。その場合、最上部の位置する梁までが軒高として判断され、建築基準法における日影規制等の制限をオーバーしてしまう虞があるためである。
【0011】
よって、かかる陸屋根ユニットは、建物本体の上階を形成する建物ユニットの上部に載置されるベースパネルとしての小屋パネルと、当該小屋パネルの外周縁部に配設されるパラペットと、当該パラペットの内側に防水シート等を介して緩勾配を有するように配設される屋根材(屋根パネル)とにより構成されている。そして、陸屋根ユニットの床面は、床梁を用いることなく、その直下に位置する上階の建物ユニットの天井梁の上に直接パーティクルボード等の合板を敷設することで形成されている。つまり、特許文献2のユニット式建物の場合、陸屋根ユニットと、その直下に位置する上階の建物ユニットと、の上下間においては上階の建物ユニットにおける天井梁のみが存在し、上下に梁が隣接しない。
【0012】
従って、特許文献2のようなユニット式建物に対して特許文献1のようなセントラル換気装置を備える場合、上述の各種配管や電気配線等を設けるためのダクトスペースやパイプスペース等は、梁2つ分のスペースを利用していた従来のものと比較して梁が半減してなる、建物本体の上階側における建物ユニットの天井梁のみで形成される梁1つ分のスペースに配設しなければならない。
【0013】
このため、梁2つ分のスペースを利用していた従来のものと比較して梁が半減する前記梁1つ分のスペースに対し、ダクトスペースやパイプスペース等を、剛性の低下を招くことなく配設する技術の開発が望まれている。
【0014】
そこで、本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットを備えるユニット式建物であっても、当該屋根ユニットと直下の建物ユニットとの間の省スペース化された領域に、各種配管、配線等の配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図6に示すように、四隅に立設される柱2の隣り合う上端部同士および下端部同士を、それぞれ四本の天井梁3および床梁4によって連結した矩形状の箱形からなる建物ユニット1を複数組み合わせて構築される建物本体Hと、当該建物本体Hの上部に配置され、内部に所定の空間(例えば、収納スペースSP)を有する屋根ユニットR2によって構築される屋根R2aと、を備えたユニット式建物において、
前記建物本体Hにおける前記複数の建物ユニット1のうち、前記屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’は、前記矩形状に連結された前記各天井梁3からなり、当該建物ユニット1’内の空間における天井部F2bを形成する矩形枠部30を有し、
前記矩形枠部30は、前記各天井梁3のうち長辺方向の天井梁3a,3a間に、短辺方向の天井梁3b,3bと平行且つ、前記長辺方向に沿って所定の間隔で複数の木製の根太31および複数の鋼製の根太32を架設すると共に、前記各天井梁3および前記複数の木製の根太31および複数の鋼製の根太32の上面に床材(床板8)を敷設することで、直上に位置する前記屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)における床部(屋上階F3の床部F3a)を兼用しており、
前記複数の鋼製の太32が
下方側に配置される鋼製梁33と、上方側に配置されて前記床材(床板8)を受ける床材受部材34と、を積層してなる合成部材からなり、
前記床材受部材34には、各種設置物(例えば、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管など)に対応する所定の位置に、当該各種設置物(ダクト用配管DA)を配置する配置スペース用の切欠部35が設けられ
前記合成部材は、前記鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟持するように配置される一対の野縁36,36を備えていることを特徴とする。
【0016】
この場合、建物本体Hを構築する複数の建物ユニット1のうち、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’は、矩形状に連結された各天井梁3からなる矩形枠部30によって、その内部空間(上階F2)の天井部F2bと、直上に位置する前記屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)における床部F3aと、を兼用している。このとき、この矩形枠部30には、各天井梁3のうち長辺方向の天井梁3a,3a間に、短辺方向の天井梁3b,3bと平行且つ、長辺方向に沿って所定の間隔で複数の木製の根太31および複数の鋼製の根太32が架設されると共に、各天井梁3および複数の根太31,32の上面に床材(床板8)が敷設されている。
【0017】
すなわち、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下の建物ユニット1’と、を積層してなるユニット式建物において、下方の建物ユニット1’と、上方の屋根ユニットR2と、の間に形成される当該建物ユニット1’内部の天井部F2bと、屋根ユニットR2内部の床部F3aとを兼用する矩形枠部30による梁1つ分のスペースからなる領域を、床梁等の構造耐力部材を用いた屋根ユニットR1と、通常の建物ユニット1と、を積層してなる一般的なユニット式建物において、下方の建物ユニット1と、上方の屋根ユニットR1との間に形成される天井梁3および床梁等による梁2つ分のスペースからなる領域に比較して、省スペース化することができる。
【0018】
しかも、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’の矩形枠部30によって形成される天井部F2bが、屋上階F3に配置される屋根ユニットR2の床部F3aを兼用しているので、当該屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)を直下の建物ユニット1’内の部屋のロフトや小屋裏空間として利用することができる。このとき、屋根ユニットR2内の空間(すなわち、その直下の建物ユニット1’と当該屋根ユニットR2による屋根(屋根面R2a)との間に形成される空間)を収納スペースSPとして利用すれば、建物内部に必要上十分な収納空間を設けることができる。
【0019】
また、前記収納スペースSPは、内部空間を持たない屋根ユニットR1による屋根(屋根面R1a)に比べて高さ方向の寸法が嵩上げされた屋根ユニットR2における屋根(屋根面R2a)の下部に設けられるので、屋根面R1aより下方の建物本体H側に設けられる居住空間にステップ床等を設けて収納空間を形成する場合に比べて、当該居住空間が削られることがない分、居住空間を広く確保(維持)することもできる。さらに、屋根ユニットR2による屋根面R2aと、その直下の建物ユニット1’との間に形成される空間(収納スペースSP)が下方側の居住空間(すなわち、下階F1および上階F2側)に対する有効な断熱層となる利点もある。
【0020】
とりわけ、天井部F2bを形成する矩形枠部30は、各天井梁3のうち長辺天井梁3a,3a間に、短辺天井梁3b,3bと平行且つ、その長辺方向に沿って所定の間隔で架設される複数の木製の根太31および複数の鋼製の根太32を有しており、複数の鋼製の根太32が、下方側に配置される鋼製梁33と、上方側に配置されて床材(床板8)を受ける床材受部材34と、を積層してなる合成部材からなるので、当該一部の根太32における剛性を格段と向上させることができる。しかも、床材受部材34には、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物に対応する所定の位置に、当該各種設置物(ダクト用配管DA)を配置する配置スペース用の切欠部35が設けられているので、当該配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0021】
さらに、これらに加えて、屋根ユニットR2は高さ方向の寸法が嵩上げされていることを除き、規定寸法からなる内部空間を持たない屋根ユニットR1と略同一の寸法からなると共に、建物ユニット1’も矩形枠部30の構成を除き、規定寸法からなる通常の建物ユニット1と略同一の寸法からなるので、それぞれ平面寸法をモジュール化して共通とすることで、製造コストの削減を図ることができると共に、工場において製造した屋根ユニットR1,R2および建物ユニット1,1’を用いることで、建築現場における作業の軽減および施工期間の短期化を図ることもできる。
【0022】
かくして、請求項1に記載の発明によれば、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下に配置され、屋根ユニットR2内の空間における床部F3aと直下の空間(上階F2)の天井部F2bとを兼用する矩形枠部30を有する建物ユニット1’と、を備えており、これら上下間の領域が、梁1つ分のスペースに省スペース化されるユニット式建物であっても、天井梁3によって構成される矩形枠部30に設けられる複数の根太31,32のうち、複数の鋼製の根太32が、下方の鋼製梁33と、上方の床材受部材34と、を積層してなる合成部材によって構成されており、床材受部材34には、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物に対応する所定の位置に、それらを配置する配置スペース用の切欠部35が設けられているので、当該配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
また、矩形枠部30において剛性が向上された複数の鋼製の根太32を構成する合成部材が、鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟み込むように配置される一対の野縁36,36を更に備えているので、当該根太32の剛性をより一層向上させることができる。よって、床材受部材34に換気装置のダクト用配管や電気配線用の導管などの各種設置物を配置するための切欠部35を設ける際の剛性の低下を防止することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1に記載のユニット式建物において、
前記矩形枠部30は、前記天井梁3同士を連結するブレースBRを備えており、
前記ブレースBRは、前記床材受部材34の切欠部35に配置されることを特徴とする。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、矩形枠部30は、天井梁3同士を連結するブレースBRを備えており、当該ブレースBRは床材受部材34の切欠部35に配置されるので、当該切欠部35を利用して配置可能なブレースBRにより、矩形枠部30ひいては建物ユニット1’における剛性を格段と向上させることができる。
【0025】
請求項3に記載の発明は、例えば図3図4および図に示すように、請求項1または2に記載のユニット式建物において、
前記床材受部材34は、前記鋼製梁33の上面に対して当該鋼製梁33の上面の長さ方向に間隔を空けて複数設けられており、
これら複数の床材受部材34間の隙間が前記切欠部35とされていることを特徴とする。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物において、
前記各種設置物の一つとして、建物内に外気を取り入れると共に、建物内の室内空気を外部に排出する換気装置が備えられており、
前記換気装置に接続される配管および導管(例えば、ダクト用配管DA)が、前記床材受部材34の切欠部35に配置されることを特徴とする。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2を備えるユニット式建物に、近年、義務付けされている24時間換気を行うための換気装置を設置する場合においても、当該換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などを、床材受部材34の所定の位置に設けられた切欠部35を利用して配置することで、剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0031】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載のユニット式建物において、
前記屋根ユニットR2内部の天井高が、0.8m〜1.4mに設定されていることを特徴とする。
【0032】
請求項に記載の発明によれば、屋根ユニットR2内部の天井高を、0.8m〜1.4mに設定することによって、例えば屋根ユニットR2内部の空間を収納スペースSPとして利用する場合、人が収納スペースSPに入って、何とか作業ができる最低限の高さを確保でき、また、このように天井高を必要最小限に抑えることで、ユニット式建物の高さが高くなることによって隣接する建物に及ぼす日照減少等の影響を極力少なくする(最小限に抑える)ことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットを備えるユニット式建物であっても、当該屋根ユニットと直下の建物ユニットとの間の省スペース化された領域に、各種配管、配線のスペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係るユニット式建物を側方から見て概略的に示す断面図である。
図2図1のユニット式建物における基本的な建物ユニットを示す斜視図である。
図3図1のユニット式建物における屋上階の直下に位置する建物ユニットを上方から見て示す上面図である。
図4図3の建物ユニットをA−A方向から見て示す断面図である。
図5図3の建物ユニットをB−B方向から見て示す断面図である。
図6図3の建物ユニットの要部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るユニット式建物を側方から見て概略的に示す断面図であり、図2は、図1のユニット式建物における基本的な建物ユニット1を示す斜視図である。また、図3は、図1のユニット式建物における屋上階F3の直下に位置する建物ユニット1’を上方から見て示す上面図である。なお、以下に説明する建物ユニット1および1’は、上部に位置する天井部分の構成が異なることを除いて、ほぼ同様に構成されているため、基本的な構成については、規定寸法からなる所謂、通常の建物ユニットとしての建物ユニット1を用いて説明し、重複する説明は割愛するものとする。
【0036】
図1に示すように、本実施形態のユニット式建物は、垂直方向および水平方向に複数配置される建物ユニット1および建物ユニット1’を適宜組み合わせることで、下階F1と上階F2とを有して構築される建物本体Hを備えている。また、ユニット式建物は、当該建物本体Hの上部に配置される屋根ユニットR1によって構築される屋根(屋根面R1a)と、同じく当該建物本体Hの上部に配置され、内部に所定の空間(例えば、収納スペースSP)を有する屋根ユニットR2によって構築される屋根(屋根面R2a)と、を備えている。このように、かかるユニット式建物は、建物本体Hと屋根面R1a,R2aからなる屋根とを有する住宅として構築されている。
【0037】
まず、屋根ユニットR1および屋根ユニットR2について説明する。建物本体Hの上階F2において、建物ユニット1の上部に載置される屋根ユニットR1は規定寸法からなり、略平坦な屋根面R1aを形成する所謂、通常の陸屋根ユニットである。つまり、屋根ユニットR1は、建物ユニット1の上部に載置され、当該建物ユニット1と平面寸法を共通化した平面矩形状の小屋パネルと、当該小屋パネル上に立設される複数の屋根受材と、当該各屋根受材を介して取り付けられる屋根面R1aを形成する屋根パネルとを備えた既存の陸屋根ユニットである。よって、屋根ユニットR1は、従来から広く使用されている通常の陸屋根を構築する陸屋根ユニット(すなわち、後述する屋根ユニットR2における複数の束や外壁材およびその取付部材等の構成を備えていない構造)であるため、ここでは図面を用いた詳細な説明は割愛する。
【0038】
また、建物本体Hの上階F2において、建物ユニット1’の上部に載置される屋根ユニットR2は、屋根ユニットR1に比べて高さ方向の寸法が嵩上げされている点を除いて、屋根ユニットR1とほぼ同様に構成されており、内部に所定の空間(例えば、収納スペースSP)を有して略平坦な屋根面R2aを形成する陸屋根ユニットである。具体的に、屋根ユニットR2は、小屋パネル上に立設される複数の束と、当該複数の束に取り付けられる外壁受部と、外壁受部に取り付けられるパラペット下地と、を備え、小屋パネルの外周縁部と、外壁受部と、パラペット用下地と、に対して外壁材が取り付けられていることで、パラペット用下地に取り付けられた上部側がパラペット部となる外周壁が形成されている。また、パラペット用下地の内周側にはサイディングが設けられると共に、複数の束の上端部には屋根面R2aを形成する屋根パネルが設けられている。なお、この屋根ユニットR2は、本出願人による前述した特許文献2に開示された陸屋根ユニットであるため、ここでの詳細な図示および説明は割愛する。
【0039】
ここで、この屋根ユニットR2は、床梁などの構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットであり、直下に位置する建物ユニット1’の上面(具体的には、後述する図3に示す4本の天井梁3からなる矩形枠部30の上面)に、床板8(後述する図6参照)を配設することで屋上階F3における床部F3aが形成されている。このため、当該屋根ユニットR2内の所定の空間を直下の建物ユニット1’内の空間(部屋)のロフトや小屋裏空間として利用することができるようになっている。これにより、屋根ユニットR2による屋根(屋根面R2a)と直下の建物ユニット1’との間に形成される当該屋根ユニットR2内の所定の空間を収納スペースSPとして利用すれば、建物内部に必要上十分な収納空間を設けることができるようになっている。
【0040】
また、屋根ユニットR2は、複数の束の高さ寸法を適宜変更することで、内部に形成される所定の空間の天井高を、0.8m〜1.4mの範囲で任意に設定可能となっている。
従って、屋根ユニットR2内部の天井高を、0.8m〜1.4mの範囲で任意に設定することにより、例えば屋根ユニットR2内部の空間を収納スペースSPとして利用する場合、人が収納スペースSPに入って、何とか作業ができる最低限の高さを確保でき、また、このように天井高を必要最小限に抑えることで、ユニット式建物の高さが高くなることによって隣接する建物に及ぼす日照減少等の影響を極力少なくする(最小限に抑える)ことができるようになっている。
【0041】
また、収納スペースSPは、内部空間を持たない屋根ユニットR1による屋根(屋根面R1a)に比べて高さ方向の寸法が嵩上げされた屋根ユニットR2における屋根(屋根面R2a)の下部に設けられるので、屋根面R1aより下方の建物本体H側に設けられる居住空間にステップ床等を設けて収納空間を形成する場合に比べて、当該居住空間が削られることがない分、居住空間を広く確保(維持)することも可能となっている。さらに、屋根ユニットR2による屋根面R2aと、その直下の建物ユニット1’の天井部F2bとの間に形成される空間(収納スペースSP)が下方側の居住空間(すなわち、下階F1および上階F2側)に対する有効な断熱層となる利点を備えることも可能となっている。
【0042】
次に、建物本体Hを構築する建物ユニット1および建物ユニット1’について説明する。図2に示すように、建物ユニット1は、4本の柱2と、これらの柱2の上端間同士を結合する4本の天井梁3と、当該柱2の下端間同士を結合する4本の床梁4とを備えている。4本の天井梁3は、長辺方向に配置された互いに対向する一対の長辺天井梁3a,3aと、これより短く設定され、短辺方向に配置された互いに対向する一対の短辺天井梁3b,3bと、によって構成されている。4本の床梁4は、長辺方向に配置された互いに対向する一対の長辺床梁4a,4aと、これより短く設定され、短辺方向に配置された互いに対向する一対の短辺床梁4b,4bと、によって構成されている。なお、柱2は正方形筒状に形成されており、天井梁3と床梁4は、それぞれ断面コ字型に形成されている。
【0043】
2本の長辺天井梁3a,3a間には複数の天井小梁5が架設されており、当該天井小梁5は短辺天井梁3b,3bと平行且つ、長辺天井梁3a,3aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら天井小梁5の下面には天井板6が固定されており、これにより、下階F1の天井部F1bおよび上階F2の天井部F2bが形成されている。
【0044】
2本の長辺床梁4a,4a間には複数の根太7が架設されており、当該根太7は短辺床梁4b,4bと平行且つ、長辺床梁4aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら根太7の上面には床板8が固定されており、これにより、下階F1の床部F1aおよび上階F2の床部F2aが形成されている。
なお、柱2の上端部と天井梁3の端部とは柱頭接合部材9によって接合され、柱2の下端部と床梁4の端部とは柱脚接合部材10によって接合されている。
【0045】
続いて、建物ユニット1’は、上述した建物ユニット1における天井部分の構成が異なっている点を除いて、当該建物ユニット1とほぼ同様に構成されており、建物本体Hを構築する複数の建物ユニット1および建物ユニット1’のうち、屋根ユニットR2の直下に位置するように配置される。具体的に建物ユニット1’は、図3に示すように、矩形状に連結された4本の天井梁3(長辺天井梁3a,3aおよび短辺天井梁3b,3b)からなり、当該建物ユニット1’内の空間における天井部F2b(図1参照)を形成する矩形枠部30を有している。
【0046】
この矩形枠部30は、各天井梁3のうち長辺方向の天井梁3(すなわち、長辺天井梁3a,3a)間に、短辺方向の天井梁3(すなわち、短辺天井梁3b,3b)と平行且つ、長辺方向に沿って所定の間隔で、複数の天井小梁5に替えて複数の根太31,32が架設されている。これら根太31,32のうち、木製の根太31の下面および後述する鋼製の根太32における野縁36(後述の図5参照)の下面には、天井板6(図2参照)が固定されている。これにより、建物ユニット1’内の空間(例えば、上階F2)における天井部F2bが形成されている。また、矩形枠部30における各天井梁3および複数の根太31,32の上面には、床材である床板8が敷設されている(後述の図6参照)。これにより、直上に位置する屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)における床部(屋上階F3の床部F3a)が形成されている。つまり、この矩形枠部30は、下面側に形成される上階F2の天井部F2bと、上面側に形成される最上階F3の床部F3aと、を兼用するようになっている。
【0047】
すなわち、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下の建物ユニット1’と、を積層してなるユニット式建物において、下方の建物ユニット1’と、上方の屋根ユニットR2と、の間に形成される当該建物ユニット1’内部の天井部F2bと、屋根ユニットR2内部の床部F3aとを兼用する矩形枠部30による梁1つ分のスペースからなる領域を、床梁等の構造耐力部材を用いた屋根ユニットR1と、通常の建物ユニット1と、を積層してなる一般的なユニット式建物において、下方の建物ユニット1と、上方の屋根ユニットR1との間に形成される天井梁3および床梁等による梁2つ分のスペースからなる領域に比較して、省スペース化することができるようになっている。
【0048】
このとき、複数の根太31,32のうち、一部の根太32は、図3図6に示すように、下方側に配置される断面矩形状の鋼製梁33と、上方側に配置されて床板8を受ける断面コの字状の床材受部材34と、を積層してなる合成部材によって構成されている。これにより、他の根太31に比べて一部の根太32における剛性を格段と向上させることができるようになっている。
【0049】
本実施形態の場合、ユニット式建物は、各種設置物の一つとして、建物内に外気を取り入れると共に、建物内の室内空気を外部に排出する換気装置(不図示)が備えられている。そして、この換気装置に接続される配管および導管(例えば、ダクト用配管DA)が、床材受部材34の切欠部35に配置されるようになっている。具体的に、床材受部材34には、各種設置物としての換気装置に接続されると共に、建物内の天井部分に設けられる換気口50と接続されるダクト用配管DAや、電気配線用の導管(図示省略)などに対応する所定の位置に、当該各種設置物(ダクト用配管DA)を配置する配置スペース用の切欠部35が設けられている。これにより、床材受部材34に対して、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物を配置する配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができるようになっている。
【0050】
また、矩形枠部30は、天井梁3同士を連結するブレースBRを備えており、当該ブレースBRは、床材受部材34の切欠部35に配置されている。これにより、当該切欠部35を利用して配置可能なブレースBRによって、矩形枠部30ひいては建物ユニット1’における剛性を格段と向上させることができるようになっている。
【0051】
さらに、矩形枠部30の合成部材によって構成される根太32は、下方側に配置される鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟持するように配置される一対の野縁36,36を備えている。すなわち、矩形枠部30において剛性が向上された一部の根太32を構成する合成部材が、鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟み込むように配置される一対の野縁36,36を補強部材として更に備えている。これにより、根太32の剛性をより一層向上させることができるようになっている。よって、床材受部材34に換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物を配置するための切欠部35を設ける際の剛性の低下を防止することが可能となっている。また、これら一対の野縁36,36の下面には、天井板6(図2参照)が固定されている。
【0052】
このような建物ユニット1’は、工場にて製造される際、不図示の換気装置に接続されるダクト用配管DAや電気配線用の導管などの配置処理を施した(すなわち、ダクト用配管DAの設置や電気配線処理を仕上げた)状態で形成されている。このとき、図3に示すように、矩形枠部30の上面側には吊り込み作業に用いられる吊受材としての吊ナット40が設けられている。この吊ナット40は、建物ユニット1’において、矩形枠部30の連結された各天井梁3における四隅近傍の直上付近に位置するように配設されている。そして、建物ユニット1’は、建築現場にて不図示のクレーン装置等によって矩形枠部30の上面側の吊ナット40を介して建物本体Hの上方から吊り込まれ、当該建物本体Hを構築する他の建物ユニット1の上面に載置されるようになっている。
【0053】
従って、建物ユニット1’は、矩形枠部30に設けられた吊ナット40を用いて建物本体Hを構築する他の建物ユニット1の上方から吊り込むことができるので、当該建物ユニット1’に対して、予め工場において、ダクト用配管DAの設置処理や電気配線処理を仕上げた状態で建築現場に輸送することができるようになっている。よって、建築現場における当該ダクト用配管DAの設置処理や電気配線処理等の各種配設処理を省くことができ、建築現場における作業をより一層軽減できると共に、施工期間の更なる短期化を図ることが可能となっている。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態のユニット式建物では、建物本体Hを構築する複数の建物ユニット1のうち、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’が、矩形状に連結された各天井梁3からなる矩形枠部30によって、その内部空間(上階F2)の天井部F2bと、直上に位置する前記屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)における床部F3aと、を兼用している。このとき、この矩形枠部30には、各天井梁3のうち長辺方向の天井梁3a,3a間に、短辺方向の天井梁3b,3bと平行且つ、長辺方向に沿って所定の間隔で複数の根太31,32が架設されると共に、各天井梁3および複数の根太31,32の上面に床材(床板8)が敷設されている。
【0055】
すなわち、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下の建物ユニット1’と、を積層してなるユニット式建物において、下方の建物ユニット1’と、上方の屋根ユニットR2と、の間に形成される当該建物ユニット1’内部の天井部F2bと、屋根ユニットR2内部の床部F3aとを兼用する矩形枠部30による梁1つ分のスペースからなる領域を、床梁等の構造耐力部材を用いた屋根ユニットR1と、通常の建物ユニット1と、を積層してなる一般的なユニット式建物において、下方の建物ユニット1と、上方の屋根ユニットR1との間に形成される天井梁3および床梁等による梁2つ分のスペースからなる領域に比較して、省スペース化することができる。
【0056】
しかも、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’の矩形枠部30によって形成される天井部F2bが、屋上階F3に配置される屋根ユニットR2の床部F3aを兼用しているので、当該屋根ユニットR2内の空間(収納スペースSP)を直下の建物ユニット1’内の部屋のロフトや小屋裏空間として利用することができる。このとき、屋根ユニットR2内の空間(すなわち、その直下の建物ユニット1’と当該屋根ユニットR2による屋根(屋根面R2a)との間に形成される空間)を収納スペースSPとして利用すれば、建物内部に必要上十分な収納空間を設けることができる。
【0057】
また、この収納スペースSPは、内部空間を持たない屋根ユニットR1による屋根(屋根面R1a)に比べて高さ方向の寸法が嵩上げされた屋根ユニットR2における屋根(屋根面R2a)の下部に設けられるので、屋根面R1aより下方の建物本体H側に設けられる居住空間にステップ床等を設けて収納空間を形成する場合に比べて、当該居住空間が削られることがない分、居住空間を広く確保(維持)することもできる。さらに、屋根ユニットR2による屋根面R2aと、その直下の建物ユニット1’との間に形成される空間(収納スペースSP)が下方側の居住空間(すなわち、下階F1および上階F2側)に対する有効な断熱層となる利点もある。
【0058】
とりわけ、天井部F2bを形成する矩形枠部30は、各天井梁3のうち長辺天井梁3a,3a間に、短辺天井梁3b,3bと平行且つ、その長辺方向に沿って所定の間隔で架設される複数の根太31,32を有しており、当該根太31,32の一部(根太32)が、下方側に配置される鋼製梁33と、上方側に配置されて床材(床板8)を受ける床材受部材34と、を積層してなる合成部材からなるので、当該一部の根太32における剛性を格段と向上させることができる。しかも、床材受部材34には、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物に対応する所定の位置に、当該各種設置物(ダクト用配管DA)を配置する配置スペース用の切欠部35が設けられているので、当該配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0059】
さらに、これらに加えて、屋根ユニットR2は高さ方向の寸法が嵩上げされていることを除き、規定寸法からなる内部空間を持たない屋根ユニットR1と略同一の寸法からなると共に、建物ユニット1’も矩形枠部30の構成を除き、規定寸法からなる通常の建物ユニット1と略同一の寸法からなるので、それぞれ平面寸法をモジュール化して共通とすることで、製造コストの削減を図ることができると共に、工場において製造した屋根ユニットR1,R2および建物ユニット1,1’を用いることで、建築現場における作業の軽減および施工期間の短期化を図ることもできる。
【0060】
かくして、本実施形態のユニット式建物によれば、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2と、その直下に配置され、屋根ユニットR2内の空間における床部F3aと直下の空間(上階F2)の天井部F2bとを兼用する矩形枠部30を備える建物ユニット1’と、を備えており、これら上下間の領域が、梁1つ分のスペースに省スペース化されるユニット式建物であっても、天井梁3によって構成される矩形枠部30に設けられる複数の根太31,32の一部(根太32)が、下方の鋼製梁33と、上方の床材受部材34と、を積層してなる合成部材によって構成されており、床材受部材34には、換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などの各種設置物に対応する所定の位置に、それらを配置する配置スペース用の切欠部35が設けられているので、当該配置スペースを剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0061】
また、矩形枠部30は、天井梁3同士を連結するブレースBRを備えており、当該ブレースBRは床材受部材34の切欠部35に配置されるので、当該切欠部35を利用して配置可能なブレースBRにより、矩形枠部30ひいては建物ユニット1’における剛性を格段と向上させることができる。
【0062】
さらに、矩形枠部30において剛性が向上された一部の根太32を構成する合成部材が、鋼製梁33に沿って当該鋼製梁33を挟持するように配置される一対の野縁36,36を更に備えているので、当該根太32の剛性をより一層向上させることができる。よって、床材受部材34に換気装置のダクト用配管や電気配線用の導管などの各種設置物を配置するための切欠部35を設ける際の剛性の低下を防止することができる。
【0063】
しかも、床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニットR2を備えるユニット式建物に、近年、義務付けされている24時間換気を行うための換気装置を設置する場合においても、当該換気装置のダクト用配管DAや電気配線用の導管などを、床材受部材34の所定の位置に設けられた切欠部35を利用して配置することで、剛性の低下を招くことなく配設することができる。
【0064】
また、屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット1’に設けられた吊ナット40を用いて、当該建物ユニット1’を、建物本体Hを構築する他の建物ユニット1の上方から吊り込むことができるので、建物ユニット1’に対して予め工場において換気装置に接続される配管および導管など(例えば、ダクト用配管DA)の配置処理を施した(ダクト用配管DAの設置や電気配線処理を仕上げた)状態で建築現場に輸送することができる。よって、建築現場における当該配管・導管等の配設処理を省くことができ、建築現場における作業をより一層軽減できると共に、施工期間の更なる短期化を図ることができる。
【0065】
加えて、屋根ユニットR2内部の天井高を、0.8m〜1.4mに設定することによって、例えば屋根ユニットR2内部の空間を収納スペースSPとして利用する場合、人が収納スペースSPに入って、何とか作業ができる最低限の高さを確保でき、また、このように天井高を必要最小限に抑えることで、ユニット式建物の高さが高くなることによって隣接する建物に及ぼす日照減少等の影響を極力少なくする(最小限に抑える)ことができる。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0067】
例えば、上述した実施形態の場合、ユニット式建物は、垂直方向および水平方向に複数配置される建物ユニット1および1’を組み合わせることによって構築される建物本体Hを有する住宅である場合について述べるが、一例であってこれに限ることはない。
【0068】
また、上述した実施形態の場合、ユニット式建物は、建物本体Hの上部に載置される屋根ユニットR1およびR2として、略平坦な屋根面R1aおよびR2aからなる陸屋根を構築する陸屋根ユニットを採用する場合について述べるが、一例であってこれに限ることはない。
【符号の説明】
【0069】
1…建物ユニット(通常の建物ユニット)
1’…建物ユニット(屋根ユニットR2の直下に位置する建物ユニット)
3a…長辺天井梁
3b…短辺天井梁
30…矩形枠部
31,32…根太
33…鋼製梁
34…床材受部材
35…切欠部
36…野縁
8…床板(床材)
40…吊ナット(吊受材)
50…排気口
F1…下階
F2…上階
F3…屋上階
F1a,F2a,F3a…床部
F1b,F2b,F3b…天井部
R1…屋根ユニット(通常の屋根ユニット)
R2…屋根ユニット(床梁等の構造耐力部材を用いることのない屋根ユニット)
BR…ブレース
図1
図2
図3
図4
図5
図6