特許第5886786号(P5886786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886786
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】バッテリ式穿孔機
(51)【国際特許分類】
   B23B 45/02 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   B23B45/02
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-98268(P2013-98268)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-217915(P2014-217915A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】横山 聡哉
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−251370(JP,A)
【文献】 米国特許第05342153(US,A)
【文献】 実開平3−26416(JP,U)
【文献】 実開平3−15012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00−49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔機において、
穿孔加工を受ける被加工物に取り外し可能に取り付けられる下面壁部、及び該下面壁部に連接し該下面壁部から上方に延びて該下面壁部とともにL型をなす前面壁部を有するフレームと、
穿孔工具を回転駆動するためのモータを有する穿孔駆動部であって、前記前面壁部の前側に取り付けられ、前記下面壁部が前記被加工物に固定された状態で、前記穿孔工具を該被加工物に対して近づけたり離したりするために前記前面壁部に沿って上下動される穿孔駆動部と、
前記フレームとは別体に用意され、該フレームに取り付けられて、前記モータの駆動電源としてのバッテリを、前記前面壁部の後側で且つ前記下面壁部の上側の位置に保持するためのバッテリハウジングと、
を備え、
前記フレームは、前記穿孔工具による前記穿孔加工の際に生じる負荷を支持する強度を有するようにされた、穿孔機。
【請求項2】
前記フレームと前記バッテリハウジングとの間に前記モータを制御する駆動制御回路を配置するための内部空間が形成されるようにされた、請求項1に記載の穿孔機。
【請求項3】
前記バッテリハウジングが右側部分及び左側部分からなり、該右側部分及び左側部分のそれぞれが前記フレームに取り付けられるようにされている、請求項1又は2に記載の穿孔機。
【請求項4】
前記下面壁部の下面に取り付けられ、前記下面壁部を前記被加工物に対して取り外し可能に固定する固定部をさらに備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載の穿孔機。
【請求項5】
前記固定部が前記バッテリに接続された電磁石式固定部である、請求項4に記載の穿孔機。
【請求項6】
前記電磁石式固定部を起動するための電磁石スイッチと、前記モータを起動するためのモータスイッチとをさらに備え、前記電磁石スイッチと前記モータスイッチとが、前記バッテリハウジングの左右の異なる側の側面に設けられている、請求項5に記載の穿孔機。
【請求項7】
前記駆動制御回路が、前記内部空間内において前記フレームの前記前面壁部又は前記下面壁部と並行に配置されるようにされた、請求項2に記載の穿孔機。
【請求項8】
前記フレームが金属製であり、前記バッテリハウジングが樹脂製である、請求項1乃至7の何れか一項に記載の穿孔機。
【請求項9】
前記フレームが、前記下面壁部および前記前面壁部の左右の両側縁間に設けられた左右のリブを有する、請求項1乃至8の何れか一項に記載の穿孔機。
【請求項10】
前記バッテリハウジングが、前記前面壁部の後側で該前面壁部から離れて並行に延びる中間壁部と、該中間壁部の左右の両側縁から後方に延びる左右の側壁部とを有し、前記中間壁部と前記左右の側壁部とによって前記バッテリを着脱可能に収容するバッテリ収納空間を画定するようにされている、請求項1乃至9の何れか一項に記載の穿孔機。
【請求項11】
前記バッテリ収容空間は前記左右の側壁部に挟まれた底面壁部をさらに有し、該底面壁部が前方から後方に向かって下方に傾斜している、請求項10に記載の穿孔機。
【請求項12】
前記ハウジングの前記右側部分の上部には右側取っ手部が設けられ、前記ハウジングの前記左側部分の上部には左側取っ手部が設けられており、前記右側部分及び左側部分が前記フレームに取り付けられたときに前記右側取っ手部及び左側取っ手部が一つの取っ手を形成し、該右側取っ手部から左側取っ手部にまで延在するネジにより前記右側取っ手部及び左側取っ手部が連結固定されている、請求項3に記載の穿孔機。
【請求項13】
前記フレームの前記前面壁部の前面にアリ溝が設けられ、前記穿孔駆動部に前記アリ溝と摺動係合するスライダが設けられている、請求項1乃至12の何れか一項に記載の穿孔機。
【請求項14】
前記駆動制御回路は前記内部空間内の下方位置に配置され、前記内部空間内の上方位置には前記駆動制御回路と配線接続された回路部材が設けられており、前記バッテリハウジングは、前記駆動制御回路と前記回路部材との間で前記内部空間を上下に分割する仕切り板を有し、該仕切り板には上下方向に連通する開口部が設けられ、前記開口部には該開口部と密封係合するシール部材が設けられており、前記配線は、前記開口部を通って配線されて前記シール部材によって前記仕切り板に対して密封されている、請求項2又は7に記載の穿孔機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリにより駆動される可搬型の穿孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬型の穿孔機は、例えば特許文献1に記載されているように、フレームと、ドリル等の穿孔工具を回転駆動するモータを有しフレームに対して上下動するように取り付けられた穿孔駆動部と、フレームの下部に設けられていて当該穿孔機を被加工物に対して取り外し可能に固定保持する固定部とを備えている。フレームは、内部空間を有し、その内部空間には穿孔駆動部のモータ等を制御する駆動制御部や電気配線等が配置される。該フレームは、通常、十分な強度を確保するために金属の鋳物で作製されており、そのため、作製可能な形状が限られ、壁厚が大きくなり、装置全体としてのサイズ及び重量が大きくなっていた。
【0003】
近年は、この種の穿孔機の可搬性を高めるために穿孔工具駆動用にバッテリを使用するものが用いられるようになってきており、通常、バッテリはフレームに設けられるバッテリ収納部に保持されるようになっている。このため、鋳物として成型されるフレームはサイズ及び重量がより大きいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−35698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、バッテリを用いた穿孔機であって、このような従来のものよりも小型軽量化を可能とする穿孔機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
穿孔機において、
穿孔加工を受ける被加工物に取り外し可能に取り付けられる下面壁部、及び該下面壁部に連接し該下面壁部から上方に延びて該下面壁部とともにL型をなす前面壁部を有するフレームと、
穿孔工具を回転駆動するためのモータを有する穿孔駆動部であって、前記前面壁部の前側に取り付けられ、前記下面壁部が前記被加工物に固定された状態で、前記穿孔工具を該被加工物に対して近づけたり離したりするために前記前面壁部に沿って上下動される穿孔駆動部と、
前記フレームとは別体に用意され、該フレームに取り付けられて、前記モータの駆動電源としてのバッテリを、前記前面壁部の後側で且つ前記下面壁部の上側の位置に保持するためのバッテリハウジングと、
を備え、
前記フレームは、前記穿孔工具による前記穿孔加工の際に生じる負荷を支持する強度を有するようにされた、穿孔機を提供する。
【0007】
当該穿孔機においては、穿孔駆動部を支持するとともに穿孔工具による穿孔加工の際に生じる負荷を支持する強度を有するようにされたフレームと、該フレームに取り付けられるバッテリハウジングとを別体の部材として構成することで、バッテリハウジングの機械的強度は小さいものでよいこととなる。従って、前述したような鋳物などで作る必要はなく樹脂などで造ることも可能となり、また、形状の選択の自由度も大きくなり、当該穿孔機を、より小型且つ軽量なものにすることが可能となる。
【0008】
好ましくは、前記フレームと前記バッテリハウジングとの間に前記モータを制御する駆動制御回路を配置するための内部空間が形成されるようにすることができる。
【0009】
好ましくは、前記バッテリハウジングが右側部分及び左側部分からなり、該右側部分及び左側部分のそれぞれが前記フレームに取り付けられるようにすることができる。
【0010】
バッテリハウジングを左右に分割した構造をすることで、内部に回路や配線等を組み付ける際の作業性を向上させることが可能となる。
【0011】
また好ましくは、前記下面壁部の下面に取り付けられ、前記下面壁部を前記被加工物に対して取り外し可能に固定する固定部をさらに備えるようにすることができる。
【0012】
好ましくは、前記固定部が前記バッテリに接続された電磁石式固定部であるようにすることができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記電磁石式固定部を起動するための電磁石スイッチと、前記モータを起動するためのモータスイッチとをさらに備え、前記電磁石スイッチと前記モータスイッチとが、前記バッテリハウジングの左右の異なる側の側面に設けられているようにすることができる。
【0014】
2つのスイッチを左右の異なる側の側面に配置することで、スイッチへの配線が干渉しにくくなり、装置をより小型にすることが可能となる。また、組み付け性も向上する。
【0015】
また好ましくは、前記駆動制御回路が、前記内部空間内において前記フレームの前記前面壁部又は前記下面壁部と並行に配置されるようにすることができる。
【0016】
駆動制御回路をこのような配置とすることにより、無駄な空間が少なくなり、当該穿孔機をさらに小型なものにすることが可能となる。
【0017】
好ましくは、前記フレームが金属製であり、前記バッテリハウジングが樹脂製であるようにすることができる。
【0018】
比較的に重量があり且つ穿孔加工中に穿孔工具から大きな力を受ける穿孔駆動部を支持するL型のフレームは金属製として十分な強度を持たせつつ、あまり大きな力がかからないバッテリハウジングは樹脂製とすることで装置全体としての軽量化を図ることが可能となる。また、バッテリを保持するバッテリハウジングを樹脂製とすることで、バッテリの接続端子の金属部材への接触による短絡を防止するとともに、通常は樹脂の筐体で覆われているバッテリがバッテリハウジングに対して着脱されたときにバッテリが摩耗したり傷ついたりすることを防止することも可能となる。
【0019】
好ましくは、前記フレームが、前記下面壁部および前記前面壁部の左右の両側縁間に設けられた左右のリブを有するようにすることができる。
【0020】
左右のリブを設けることでフレームの強度を向上させることができる。
【0021】
また好ましくは、前記バッテリハウジングが、前記前面壁部の後側で該前面壁部から離れて並行に延びる中間壁部と、該中間壁部の左右の両側縁から後方に延びる左右の側壁部とを有し、前記中間壁部と前記左右の側壁部とによって前記バッテリを着脱可能に収容するバッテリ収納空間を画定するようにすることができる。
【0022】
バッテリを収容するためのバッテリ収容空間が穿孔駆動部が取り付けられる前面壁部から後方に離れた位置にあり、比較的に重量のある駆動制御部とバッテリとが前後方向で離れた位置に配置されるので、装置全体の重量バランスが良くなり、装置が転倒しにくくなると共に、持ち運び時にも安定した姿勢を保つことが可能となる。また、発熱体であるモータとバッテリが離れた位置に配置となるので、効率的な廃熱と冷却も可能となる。
【0023】
さらに好ましくは、前記バッテリ収容空間は前記左右の側壁部に挟まれた底面壁部をさらに有し、該底面壁部が前方から後方に向かって下方に傾斜しているようにすることができる。
【0024】
このような構造により、バッテリ収容空間内に水が入ったときにその水が自然に排出されるようになる。
【0025】
好ましくは、前記ハウジングの前記右側部分の上部には右側取っ手部が設けられ、前記ハウジングの前記左側部分の上部には左側取っ手部が設けられており、前記右側部分及び左側部分が前記フレームに取り付けられたときに前記右側取っ手部及び左側取っ手部が一つの取っ手を形成し、該右側取っ手部から左側取っ手部にまで延在するネジにより前記右側取っ手部及び左側取っ手部が連結固定されているようにすることができる。
【0026】
当該穿孔機を持ち運ぶ際に大きな力がかかる取っ手内にネジを延在させることにより、該ネジの強度を利用して取っ手の強度を高めることが可能となる。
【0027】
好ましくは、前記フレームの前記前面壁部の前面にアリ溝が設けられ、前記穿孔駆動部に前記アリ溝と摺動係合するスライダが設けられているようにすることができる。
【0028】
フレームの前面壁部に直接アリ溝を設けるようにすることにより、部品点数を減らすと共に装置をより小型にすることが可能となる。
【0029】
好ましくは、前記駆動制御回路は前記内部空間内の下方位置に配置され、前記内部空間内の上方位置には前記駆動制御回路と配線接続された回路部材が設けられており、前記バッテリハウジングは、前記駆動制御回路と前記回路部材との間で前記内部空間を上下に分割する仕切り板を有し、該仕切り板には上下方向に連通する開口部が設けられ、前記開口部には該開口部と密封係合するシール部材が設けられており、前記配線は、前記開口部を通って配線されて前記シール部材によって前記仕切り板に対して密封されているようにすることができる。
【0030】
内部空間の上方に位置する回路部材の周囲に水が浸入した場合でも、駆動制御回路が配置される内部空間の下方にまで水が侵入することを防止することが可能となる。
【0031】
以下、本発明に係る穿孔機の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る穿孔機の前方左側面側の斜視図である。
図2図1に示す穿孔機の前方右側面側の斜視図である。
図3図1に示す穿孔機の部分断面図である。
図4】本体部の分解図である。
図5図1に示す穿孔機のバッテリが外された状態の後方斜視図である。
図6図5に示す穿孔機のバッテリが装着された状態の図である。
図7図1に示す穿孔機の穿孔駆動部を本体部から分離した状態の斜視図である。
図8図7に示す穿孔駆動部の別の角度からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施形態に係る穿孔機10は、図1乃至図3に示すように、本体部12と、本体部12に対して上下方向に往復動するように該本体部12の前方に取り付けられた穿孔駆動部14と、本体部12の後方上部に装着されたバッテリ16と、本体部12の下方に取り付けられ、本体部12を当該穿孔機10による穿孔作業位置に固定保持するための電磁石式固定部18と、を備えたバッテリ式の可搬型の穿孔機10である。この穿孔機10は、電磁石式固定部18により所定の穿孔作業位置に固定された状態で、穿孔駆動部14の下端に取り付けられた穿孔工具44をモータ48により回転駆動し、本体部12に取り付けられた送りハンドル66を回転することにより、ラック64とピニオン65とからなるギア装置を介して、穿孔駆動部14を本体部12に対して下方に移動させて穿孔工具44による加工対象物への穿孔加工を行うものである。
【0034】
本体部12は、図3に示すように、穿孔駆動部14が取り付けられる前面壁部20−1及び電磁石式固定部18が取り付けられる下面壁部20−2によりL型をなすフレーム20と、該フレーム20に取り付けられてバッテリ16を着脱可能に保持するようにしたバッテリハウジング22とからなる構造とされている。比較的に大きな力がかかる穿孔駆動部14と電磁石式固定部18とが直接取り付けられるフレーム20はアルミニウム製として必要十分な強度を確保し、一方でそれほど大きな力のかからないバッテリハウジング22は樹脂製とすることで軽量化を図っている。また、バッテリハウジング22を樹脂製とすることにより、バッテリ16の接続端子(図示しない)が触れても短絡することがないようにもなっている。なお、ここでいう「L型をなすフレーム」とは、例えば、下面壁部20−2の一部が前面壁部20−1よりもさらに前方にまで延在していて全体としての形状がL字状ではない場合であっても、そのフレーム20の構造の中にL字状の部分が構成されているのであれば、そのようなフレームもこの「L型をなすフレーム」に含まれることを意味している。
【0035】
図4に示すように、フレーム20には、前面壁部20−1及び下面壁部20−2の右側縁間に設けられた右側リブ20−3と左側縁間に設けられた左側リブ20−4とが設けられており、この左右のリブ20−3、20−4により穿孔駆動部14を支えるフレーム20の強度を向上させている。左右のリブ20−3、20−4の上端部分の間には、左右の側面20−10、20−11の間で延びるハンドル取付用穴20−8が形成されており、このハンドル取付用穴20−8の中に、送りハンドル66が取り付けられるシャフト23−1及び送りハンドル66による該シャフトの回転を穿孔駆動部14の上下動に変換するためのピニオン65(図3図7)を収納する円筒状のギア機構部23が設けられている。
【0036】
バッテリハウジング22は、中央部分で分割された右側部分22−1と左側部分22−2とからなっており、この右側部分22−1と左側部分22−2はフレーム20を左右両側から挟み込むようにして該フレーム20に取り付けられる。バッテリハウジング22がフレーム20に取り付けられると、バッテリハウジング22とフレーム20との間に内部空間24(図3)が形成される。この内部空間24における左右のリブ20−3、20−4の間に挟まれた位置には、前面壁部20−1と並行に駆動制御回路36(図4)が配置される。この駆動制御回路36は、後述するように、バッテリ16から穿孔駆動部14のモータ48や電磁石式固定部18内の電磁石18−1に供給される電力を制御する。なお、この駆動制御回路36は下面壁部20−2と並行に配置するようにしてもよい。
【0037】
図4に示すように、フレーム20には、前面壁部20−1の上面20−12から右側面20−10及び左側面20−11の下端にまでそれぞれ延びる係合溝20−5が設けられている。下面壁部20−2は、上部板状部20−2a及び該上部板状部20−2aと一体成形された下部ブロック状部20−2bを有する。一方、バッテリハウジング22には、フレーム20の前面壁部20−1を受け入れる前面開口部22−4と下面壁部20−2を受け入れる下面開口部22−5が設けられ、前面開口部22−4の上部及び上下方向の縁並びに下面開口部22−5の縁に沿って内側に突出した縁部22−6が形成されていて、フレーム22に取り付けた際に、この突出した縁部22−6がフレームの係合溝20−5及び上部板状部20−2aの縁部の下面20−6に係合するようになっている。バッテリハウジング22には、さらに、フレーム20のハンドル取付用穴20−8に係合される突出した円環状縁部22−8も形成されている。フレーム20とバッテリハウジング22の縁部との係合部分をこのようにすることにより外部から駆動制御回路36が位置する内部空間24内に埃や水が浸入しにくいようになっている。
【0038】
また、バッテリハウジング22には、フレーム20の左右のリブ20−3、20−4に形成された円形の係合凹部20−9に係合する6つの突起が円形状に並んだ係合突起部22−9が形成されており、バッテリハウジング22とフレーム20との係合がより強固になるようにしている。バッテリハウジング22は、その右側面22−14及び左側面22−15(図1)にそれぞれ設けられたネジ挿通穴22−11を通してフレーム20の右側面20−10及び左側面20−11にそれぞれ設けられた4つのネジ穴21にネジ82(図1)によってフレーム20に固定される。さらに右側部分22−1に設けられた6つのネジ挿通穴22−12を通されたネジを左側部分22−2に設けられた6つのネジ穴22−13にネジ係合することにより、右側部分22−1と左側部分22−2とを直接連結固定するようになっている。このようにバッテリハウジング22がフレーム20に対して多くの箇所で固定されるようになっているので、バッテリハウジング22に大きな力がかかった際にも応力集中が起こりにくくなり、バッテリハウジング22が破損する危険性が低くなる。
【0039】
バッテリハウジング22の上部に設けられた取っ手26は、図4に示すようにバッテリハウジング22の右側部分22−1に形成された右側取っ手部26−1と左側部分22−2に形成された左側取っ手部26−2とからなり、右側部分22−1と左側部分22−2とがフレーム20に取り付けられたときに右側取っ手部26−1及び左側取っ手部26−2が一つの取っ手26(図1)を形成するようになっている。右側取っ手部26−1と左側取っ手部26−2は、右側取っ手部26−1から左側取っ手部26−2にまで延在するネジ27(図2)により連結固定されるようになっており、このネジが補強材としても機能して取っ手26の強度を大きくしている。
【0040】
図5に示すように、バッテリハウジング22の後方上部にはバッテリ16を受け入れるためのバッテリ収容空間28が設けられており、このバッテリ収容空間28にバッテリ16が着脱可能に装着されるようになっている。バッテリ収容空間28は、フレーム20の前面壁部20−1の後側で該前面壁部20−1から離れて並行に延びる中間壁部28−1と、この中間壁部28−1に連接した底面壁部28−2と、中間壁部28−1の左右の両側縁からそれぞれ後方に延びる右側壁部28−3及び左側壁部28−4とにより囲まれた空間として画定されている。バッテリ収容空間28の上部及び後部は開放されており、バッテリ16は開放された上部から下方に向かってバッテリ収容空間28内に摺動挿入されて装着される。底面壁部28−2は前方から後部に向かって下方に僅かに傾斜しており、バッテリ収容空間28に侵入した水が自然に排出される構造としている。バッテリ16は、バッテリ収容空間28内に装着された状態において、接続端子が下を向くようになっており、水や埃がバッテリ16の中に侵入しにくいようになっている。
【0041】
バッテリハウジング22の上部には、バッテリカバー30が前後方向に摺動可能に設けられており、図6に示すバッテリ16が装着された状態では、バッテリカバー30がバッテリハウジング22から後方に突出してバッテリ16の傾斜したカバー係合面16−1(図3)に当接してバッテリ16をバッテリハウジング22から取り外すことができない状態となっている。この状態では、バッテリカバー30がバッテリハウジング22の中間壁部28−1とバッテリ16との間の隙間を部分的ではあるが上部から覆い隠すので、切粉や水などがバッテリ16の端子部に侵入しにくくなる。バッテリ16を取り外す際には、バッテリカバー30を前方に押してバッテリハウジング22内に退避させてから、バッテリ16を上方に引き出すようにする。このようなバッテリカバー30を設けることによって、バッテリ16が不用意に外れてしまうことも防止できる。図3から分かるように、バッテリカバー30のバッテリハウジング22内に位置する部分には、下方に突出したスイッチ係合突起部30−1が設けられており、バッテリカバー30が後方に突出してバッテリ16に当接しているときには本体部12に設けられたリミットスイッチ32を押してONにし、前方に退避した状態ではリミットスイッチ32をOFFにするようになっている。このリミットスイッチ32は内部空間24に配置された駆動制御回路36に接続されていて、バッテリ16が正しく装着されているか、また、バッテリ16が外せる状態になっていないかを監視するために使用される。装着されたバッテリ16は、駆動制御回路36に電気的に接続され、該駆動制御回路36を介してモータ48及び電磁石式固定部18に電力を供給する。バッテリ16からモータ48及び電磁石式固定部18に供給される電力は、駆動制御回路36によって適宜制御される。
【0042】
図3に示すように、バッテリハウジング22とフレーム20との間に形成される内部空間24内の上部に位置する上方内部空間24−1には、駆動制御回路36からの信号に基づいて当該穿孔機10の状態をバッテリハウジング22の上部のLED表示部33(図1)に表示するためのLED表示回路34が、バッテリハウジング22の外部から見えるように配置されている。このLED表示回路34は緑、黄、赤のLEDを有し、これらLEDの点滅状態により、作業者にバッテリ16の残量やモータ48への負荷の程度を知らせたり、異常発生時の警告をしたりする。なお、緑、黄、赤の別個のLEDの代わりに、1つの素子としてパッケージングされて異なる色を発光できる1つのLEDを使用するようにしてもよい。LED表示回路34の下側には、上述のリミットスイッチ32が配置されている。駆動制御回路36とLED表示回路34及びリミットスイッチ32との間は、それぞれ、収縮チューブ等で覆われた配線35により電気的に接続されている。バッテリハウジング22には、駆動制御回路36とLED表示回路34及びリミットスイッチ32との間の位置に仕切り板38が設けられており、駆動制御回路36が配置される下方内部空間24−2をLED表示回路34及びリミットスイッチ32が配置される上方内部空間24−1から分離している。具体的には、図4に示すように、バッテリハウジング22の右側部分22−1に設けられた右側仕切り板38−1と左側部分22−2に設けられた左側仕切り板38−2とがその間にL字状の開口部を形成するように対向し、該開口部にL字状のシール部材39が密封係合するように取り付けられている。シール部材39の中央部には配線挿通穴39−1が形成されており、この配線挿通穴39−1にLED表示回路34及びリミットスイッチ32に接続された配線35が通されて密封されるようになっている。仕切り板38は後方から前方に向かって下方に傾斜するように設けられており、また上方内部空間24−1に位置するフレーム20の前面壁部20−1の部分には排水口80が形成されている。上方内部空間24−1は、バッテリハウジング22の外部に突出するバッテリカバー30を摺動可能に受け入れているので、外部に対して密封されていない。したがって、外部から雨等の水が浸入する虞がある。しかし、上述のような傾斜した仕切り板38と排水口80とを有する構造により、上方内部空間24−1に水が浸入した場合でも、駆動制御回路36が位置する下方内部空間24−2には浸入させることなくその水を排水口80から外部に排出することができる。これにより、駆動制御回路36が水に濡れて故障することを防止することができる。また、上部板状部20−2aの上面は前方から後方に向かって下方に傾斜しており、万一、下方内部空間24−2に水が侵入した場合でも、上部板状部20−2aの後端に設けられた排水溝20−13から外部に水が排出されるようにもなっている。
【0043】
フレーム20の前面壁部20−1の前面に取り付けられた穿孔駆動部14の下部に位置するアーバ40には、ドリルや環状カッターなどの穿孔工具44が装着されるようになっている。図3に示すように、アーバ40は減速機45を介して穿孔駆動部14の上部のモータカバー46内に設けられたモータ48に連結されており、このモータ48を駆動することで穿孔工具44を回転駆動するようになっている。図1等に示すように、モータカバー46の側面50には複数の通気孔52が設けられており、該通気孔52から内部に流入する空気によりモータ48を冷却するようになっている。通気孔52を上面54ではなく側面50に設けているのは、水や切粉、粉塵等のゴミができるだけ内部に入らないようにするためである。穿孔駆動部14の左側面には、切削油の注入口となるプラグ56が設けられており、該プラグ56にホース付のワンタッチ式ソケットを取り付けることで、穿孔加工中の穿孔工具44に切削油を供給するようになっている。
【0044】
フレーム20の前面壁部20−1の前面には、図7に示すように、その左右両側に、上下方向に延びるアリ溝62が形成され、穿孔駆動部14には、図8に示すように、その左右両側縁が、アリ溝62の形状に対応する形状とされたスライダ63が設けられている。このスライダ63にはラック64(図8)が設けられ、フレーム20にはラック64に係合するピニオン65(図7)が設けられており、フレーム20の右側面20−10(図2)に突出しているシャフト23−1の端部に取り外し可能に取り付けられた送りハンドル66を手動で回転させることでピニオン65を回転させて穿孔駆動部14をフレーム20に対して上下動させるようになっている。なお、この送りハンドル66はフレーム20の左側面20−11から突出するシャフト23−1の端部に取り付けることもでき、状況に応じて左右どちらにでも取り付けられるようになっている。
【0045】
穿孔駆動部14のモータ48から延びる配線68は、図3に示すようにアリ溝62とスライダ63に形成された配線挿通路69(図7、8)を通って本体部12の内部空間24内に至り駆動制御回路36に接続されていて、外部にはほとんど露出しないようになっている。このようにすることで配線が引っ掛かるなとして過大な力がかかり配線が断線してしまうことを防止している。
【0046】
本体部12の下方に取り付けられた電磁石式固定部18は内部の電磁石18−1に電力を供給することにより磁界を発生し、鉄などの磁性体に磁気吸着して、当該穿孔機10を固定保持するようになっている。電磁石式固定部18とフレーム20との間には位置調整機構58が設けられており、位置調整機構58に着脱可能に取り付けられた位置調整ハンドル60を回すことにより本体部12の位置を電磁石式固定部18に対して前後左右に位置調整可能になっていて、穿孔位置を微調整できるようになっている。なお、この位置調整ハンドル60は位置調整機構58の右側面に取り付けることもできる。
【0047】
図1に示すように、バッテリハウジング22の左側面22−15には、電磁石式固定部18を起動するための電磁石スイッチ70が設けられている。電磁石スイッチ70の周囲には壁72が設けられており、電磁石スイッチ70が不用意に操作されにくくなっている。電磁石スイッチ70は後方側(図1で見て左側)の部分を押すとOFFとなるようになっているが、壁72はその後方側の部分が高くなっており、電磁石スイッチ70が特にONからOFFに誤って切り替わりにくくなっている。また、図2に示すように、バッテリハウジング22の右側面22−14には、モータ48を起動するためのモータスイッチ74が設けられている。モータスイッチ74の周囲にも壁76が設けられており、モータスイッチ74が不用意に操作されにくくなっている。電磁石スイッチ70とモータスイッチ74をバッテリハウジング22の左右の異なる側の側面22−14、22−15に配置することにより、スイッチを配置する場所の確保が容易になり、また内部空間24内での配線の干渉も小さくなるので、バッテリハウジング22を小さく設計することが可能となる。また、電磁石スイッチ70とモータスイッチ74とを誤って操作することも防止できる。
【0048】
本実施形態に係る穿孔機10は、本体部12を別体とされたアルミニウム製のL型のフレーム20と樹脂製のバッテリハウジング22とにより上述のように構成することにより装置全体の小型軽量化を実現している。また、比較的に重量のあるバッテリ16を同じく重量のある穿孔駆動部から後方に離した位置に配置することで重量バランスを良くして高い安定性を実現し、穿孔加工中の転倒を防止するとともに可搬性を向上させている。さらに、発熱体であるモータ48とバッテリ16とを熱伝導率の小さい樹脂を介して離れた位置に配置することにより、互いの熱の影響を小さくし冷却性を良くしている。
【0049】
なお、本実施形態においては、フレーム20の前面壁部20−1と下面壁部20−2は平板状の部材となっているが、円柱や円筒状の部材などを組み合わせて構成することもできる。また、フレーム20はアルミニウム製としているが、十分な強度を得られる材料であれば、他の金属材料や高強度プラスチックなどの非金属材料、又は複数の材料の組合せにより形成することもできる。また、バッテリハウジング22は樹脂製としているが、金属材料を含む他の材料により形成することもでき、特に金属などの導電性材料で形成した場合には、バッテリ収容空間28を構成する部分、特にバッテリ16の接続端子が触れる可能性が高い部分を樹脂等の非導電性材料で構成するようにして、バッテリ16の短絡を防止するようにすることもできる。さらに、当該穿孔機10の固定部は電磁石式ではなく、永久磁石を利用したものやクランプ機構によるものなど他の方式を採用した固定部とすることもできる。
【符号の説明】
【0050】
穿孔機10;本体部12;穿孔駆動部14;バッテリ16;カバー係合面16−1;電磁石式固定部18;電磁石18−1;フレーム20;前面壁部20−1;下面壁部20−2;上部板状部20−2a;下部ブロック状部20−2b;右側リブ20−3;左側リブ20−4;係合溝20−5;下面20−6;ハンドル取付用穴20−8;係合凹部20−9;右側面20−10;左側面20−11;上面20−12;排水溝20−13;ネジ穴21;バッテリハウジング22;右側部分22−1;左側部分22−2;前面開口部22−4;下面開口部22−5;突出した縁部22−6;突出した円環状縁部22−8;係合突起部22−9;内側面22−10;ネジ挿通穴22−11;ネジ挿通穴22−12;ネジ穴22−13;右側面22−14;左側面22−15;ギア機構部23;シャフト23−1;内部空間24;上方内部空間24−1;下方内部空間24−2;取っ手26;右側取っ手部26−1;左側取っ手部26−2:ネジ27;バッテリ収容空間28;中間壁部28−1;底面壁部28−2;右側壁部28−3;左側壁部28−4;バッテリカバー30;スイッチ係合突起部30−1;リミットスイッチ32;LED表示部33;LED表示回路34;配線35;駆動制御回路36;仕切り板38;右側仕切り板38−1;左側仕切り板38−2;シール部材39;配線挿通穴39−1;アーバ40;穿孔工具44;減速機45;モータカバー46;モータ48;側面50;通気孔52;上面54;プラグ56;位置調整機構58;位置調整ハンドル60;アリ溝62;スライダ63;ラック64;ピニオン65;送りハンドル66;配線68;配線挿通路69;電磁石スイッチ70;壁72;モータスイッチ74;壁76;排水口80;ネジ82
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8