特許第5886816号(P5886816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886816
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160303BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   B60C11/03 300D
   B60C11/03 300B
   B60C11/12 D
   B60C11/03 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-253518(P2013-253518)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-110394(P2015-110394A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】沼田 一起
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−020714(JP,A)
【文献】 特表2004−520990(JP,A)
【文献】 特開2012−111438(JP,A)
【文献】 特開昭62−103205(JP,A)
【文献】 特開2007−069692(JP,A)
【文献】 特開2013−193463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ赤道の両外側に配されタイヤ周方向にジグザク状に連続してのびる一対のセンター主溝と、前記センター主溝のタイヤ軸方向外側に配されタイヤ周方向に直線状に連続してのびる一対のショルダー主溝とが設けられることにより、前記一対のセンター主溝間のセンター陸部と、前記センター主溝とショルダー主溝との間の一対のミドル陸部と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部とが区分された重荷重用タイヤであって、
前記ショルダー主溝の溝幅Wsと前記センター主溝の溝幅Wcとの比Ws/Wcは、1.5〜2.0であり、
前記各ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、前記センター主溝のタイヤ軸方向の外側頂部と前記ショルダー主溝とを連通する複数本のミドル傾斜溝が形成され、
前記各ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、前記ショルダー主溝とトレッド接地端とを連通する複数本のショルダー傾斜溝が形成され、
前記ショルダー傾斜溝の溝幅は、前記ミドル傾斜溝の溝幅よりも大きく、
前記センター陸部には、
タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、前記センター主溝のタイヤ軸方向の内側頂部同士を連通する第1センター傾斜サイプと、
前記第1センター傾斜サイプと同方向に傾斜してのび、かつ、前記センター主溝のタイヤ軸方向の外側頂部同士を連通する第2センター傾斜サイプとが形成されていることを特徴とする重荷重用タイヤ。
【請求項2】
タイヤ赤道の一方側の前記ミドル傾斜溝は、タイヤ赤道の他方側の前記ミドル傾斜溝と逆向きに傾斜している請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
タイヤ赤道の一方側の前記ショルダー傾斜溝は、タイヤ赤道の他方側の前記ショルダー傾斜溝と逆向きに傾斜している請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記第1センター傾斜サイプ及び前記第2センター傾斜サイプのタイヤ軸方向に対する角度は、前記ミドル傾斜溝及び前記ショルダー傾斜溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に隣り合う前記ミドル傾斜溝の間には、前記ミドル傾斜溝と平行かつ一直線状にのびるミドル傾斜サイプが形成され、
タイヤ周方向に隣り合う前記ショルダー傾斜溝の間には、前記ショルダー傾斜溝と平行かつ一直線状にのびるショルダー傾斜サイプが形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記ミドル傾斜サイプは、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を連通しており、
前記ミドル陸部は、前記ミドル傾斜サイプと前記センター主溝とで挟まれる第1コーナー部に前記センター主溝に向かって下降する第1面取り部が設けられるとともに、
前記ミドル傾斜サイプと前記ショルダー主溝とで挟まれる第2コーナー部に前記ショルダー主溝に向かって下降する第2面取り部が設けられている請求項5記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記第1センター傾斜サイプは、前記センター主溝を介して、前記ミドル傾斜サイプと連続するように形成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項8】
前記トレッド部のランド比が80%以上である請求項1乃至7のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項9】
前記センター主溝は、タイヤ軸方向内側の第1溝縁と、タイヤ軸方向外側の第2溝縁を有し、
前記第1溝縁は、タイヤ軸方向の内側に突出しタイヤ周方向に沿ってのびる第1縦縁部と、タイヤ軸方向の外側に突出しタイヤ周方向に沿ってのびる第2縦縁部とを含む請求項1乃至8のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項10】
前記センター主溝は、タイヤ周方向に対して10゜〜15゜の角度を有している請求項1乃至9のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項11】
前記ショルダー陸部の前記ショルダー主溝の溝縁の接地長さLsと、前記タイヤ赤道における接地長さLcとの比Ls/Lcは、0.9〜1.0である請求項1乃至10のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり抵抗性能とウエット性能とを高次元で両立させた重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック及びバスなどに用いられる重荷重用タイヤにおいては、高いウエット性能が要求されている。例えば、下記特許文献1においては、トレッド部のセンター陸部、ミドル陸部及びショルダー陸部に多数の横溝が設けられることにより、溝容積を大きくし、ウエット性能を高めたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−34614号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている重荷重用タイヤにあっては、溝容積の増加に伴い、トレッド部の剛性が低下し、転がり抵抗性能及び耐摩耗性能が悪化する。耐摩耗性能を高めるためには、トレッド部のゴムボリュームを増加させる手法が有効であるが、ゴムボリュームの増加は、転がり抵抗性能のさらなる悪化を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、転がり抵抗性能とウエット性能とを高次元で両立させた重荷重用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、タイヤ赤道の両外側に配されタイヤ周方向にジグザク状に連続してのびる一対のセンター主溝と、前記センター主溝のタイヤ軸方向外側に配されタイヤ周方向に直線状に連続してのびる一対のショルダー主溝とが設けられることにより、前記一対のセンター主溝間のセンター陸部と、前記センター主溝とショルダー主溝との間の一対のミドル陸部と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部とが区分された重荷重用タイヤであって、前記ショルダー主溝の溝幅Wsは、前記センター主溝の溝幅Wcよりも大きく、前記各ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、前記センター主溝のタイヤ軸方向の外側頂部と前記ショルダー主溝とを連通する複数本のミドル傾斜溝が形成され、前記各ショルダー陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、前記ショルダー主溝とトレッド接地端とを連通する複数本のショルダー傾斜溝が形成され、前記ショルダー傾斜溝の溝幅は、前記ミドル傾斜溝の溝幅よりも大きく、前記センター陸部には、タイヤ軸方向に対して傾斜してのび、かつ、前記センター主溝のタイヤ軸方向の内側頂部同士を連通する第1センター傾斜サイプと、前記第1センター傾斜サイプと同方向に傾斜してのび、かつ、前記センター主溝のタイヤ軸方向の外側頂部同士を連通する第2センター傾斜サイプとが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、タイヤ赤道の一方側の前記ミドル傾斜溝は、タイヤ赤道の他方側の前記ミドル傾斜溝と逆向きに傾斜していることが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、タイヤ赤道の一方側の前記ショルダー傾斜溝は、タイヤ赤道の他方側の前記ショルダー傾斜溝と逆向きに傾斜していることが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記第1センター傾斜サイプ及び前記第2センター傾斜サイプのタイヤ軸方向に対する角度は、前記ミドル傾斜溝及び前記ショルダー傾斜溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きいことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、タイヤ周方向に隣り合う前記ミドル傾斜溝の間には、前記ミドル傾斜溝と平行にのびるミドル傾斜サイプが形成され、タイヤ周方向に隣り合う前記ショルダー傾斜溝の間には、前記ショルダー傾斜溝と平行にのびるショルダー傾斜サイプが形成されていることが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ミドル傾斜サイプは、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を連通しており、前記ミドル陸部は、前記ミドル傾斜サイプと前記センター主溝とで挟まれる第1コーナー部に前記センター主溝に向かって下降する第1面取り部が設けられるとともに、前記ミドル傾斜サイプと前記ショルダー主溝とで挟まれる第2コーナー部に前記ショルダー主溝に向かって下降する第2面取り部が設けられていることが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記第1センター傾斜サイプは、前記センター主溝を介して、前記ミドル傾斜サイプと連続するように形成されていることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記トレッド部のランド比が80%以上であることが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー主溝の溝幅Wsと前記センター主溝の溝幅Wcとの比Ws/Wcは、1.5〜2.0であることが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記センター主溝は、タイヤ周方向に対して10゜〜15゜の角度を有していることが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記重荷重用タイヤにおいて、前記ショルダー陸部の前記ショルダー主溝の溝縁の接地長さLsと、前記タイヤ赤道における接地長さLcとの比Ls/Lcは、0.9〜1.0であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の重荷重用タイヤは、ショルダー主溝がタイヤ周方向に直線状に形成され、かつ、ショルダー主溝の溝幅Wsは、センター主溝の溝幅Wcよりも大きい。かかるショルダー主溝によって、トレッド部の排水性能が高められ、ウエット性能が向上する。さらに、タイヤ軸方向に対して傾斜するミドル傾斜溝及びショルダー傾斜溝がミドル陸部及びショルダー陸部に設けられているので、ミドル陸部からトレッド接地端にかけての排水が促進され、より一層ウエット性能が向上する。
【0018】
一方、センター陸部に設けられている第1センター傾斜サイプ及び第2センター傾斜サイプが、接地時に閉じることにより、隣り合うサイプ側壁が密着して支え合い、トレッド部の剛性を高める。これにより、接地圧の高いセンター陸部の変形が抑制され、転がり抵抗性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2図1のトレッド部の展開図である。
図3図2のクラウン陸部の拡大展開図である。
図4図2のミドル陸部の拡大展開図である。
図5図2のショルダー陸部の拡大展開図である。
図6図1の重荷重用タイヤの接地形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、正規状態とは、タイヤを正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態である。以下、特に言及されない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
図1に示されるように、本発明の重荷重用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るトロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されるベルト層7等を具える。本実施形態では、重荷重用タイヤ1が、15°テーパリムRMに装着されるチューブレスタイヤである場合が示されている。
【0024】
カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して例えば80〜90°の角度で配列したカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、ビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されたプライ折返し部6bを一連に具えている。このプライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびる断面三角形状のビードエーペックスゴム8が配されている。
【0025】
ベルト層7は、カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配される。ベルト層7は、スチール製のベルトコードを用いた複数枚のベルトプライにより構成される。本実施形態のベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば60±10°程度の角度で配列した最も内側のベルトプライ7Aと、その外側に順次配されかつベルトコードをタイヤ赤道Cに対して15〜35°程度の小角度で配列したベルトプライ7B、7C及び7Dとの4層を含んでいる。ベルト層7は、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所が1箇所以上設けられることにより、ベルト剛性を高め、トレッド部2のほぼ全幅を強固に補強する。
【0026】
ビードコア5は、偏平横長の断面六角形状をなし、そのタイヤ半径方向内面を、タイヤ軸方向に対して12〜18°の角度で傾斜させることにより、リムRMとの間の嵌合力を広範囲に亘って高めている。
【0027】
図2は、本実施形態の重荷重用タイヤ1のトレッド部2の展開図である。図2に示されるように、本実施形態の重荷重用タイヤ1は、そのトレッド部2に、タイヤの回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。
【0028】
トレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側に配されかつタイヤ周方向にジグザグ状で連続してのびる一対のセンター主溝11と、このセンター主溝11のタイヤ軸方向外側かつトレッド接地端Teの内側をタイヤ周方向に直線状で連続してのびる一対のショルダー主溝12とが形成されている。
【0029】
トレッド接地端Teとは、正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷しかつキャンバー角0゜で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地端を意味している。「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。
【0030】
本実施形態の重荷重用タイヤ1は、ジグザグ状のセンター主溝11によってセンター主溝11のタイヤ軸方向のエッジ成分を確保して、転がり抵抗性能を向上させる。さらに、重荷重用タイヤ1は、直線状のショルダー主溝12によってトレッド部2の排水性能を高め、ウエット性能を向上させる。
【0031】
センター主溝11のタイヤ周方向に対するジグザグの角度θ1、θ2は、例えば、好ましくは10゜以上であり、好ましくは15゜以下、より好ましくは12.5゜以下である。上記角度θ1、θ2が10゜未満の場合、センター主溝11のタイヤ軸方向のエッジ成分が不足し、ウエット路面におけるブレーキ性能及びトラクション性能が低下するおそれがある。一方、上記角度θ1、θ2が15゜を超えると、センター主溝11の排水性能が低下するおそれがある。
【0032】
タイヤ赤道Cの一方側のセンター主溝11は、他方側のセンター主溝11に対して、ジグザグ位相が周方向にずれて配置されている。
【0033】
センター主溝11は、タイヤ赤道C側すなわちタイヤ軸方向内側の第1溝縁11aと、トレッド接地端Te側すなわちタイヤ軸方向外側の第2溝縁11bとを有している。ショルダー主溝12は、タイヤ赤道C側の第3溝縁12aと、トレッド接地端Te側の第4溝縁12bとを有している。
【0034】
図3には、一対のセンター主溝11を含むトレッド部2のタイヤ赤道C近傍の拡大図が示されている。センター主溝11の第1溝縁11aは、最もタイヤ軸方向の内側に突出する内側頂部11c及び最もタイヤ軸方向の外側に突出する外側頂部11dを有する。本実施形態の内側頂部11cは、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁部11eで、外側頂部11dは、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁部11fでそれぞれ形成されている。すなわち、内側頂部11c及び外側頂部11dは、第1溝縁11aのうちタイヤ周方向に沿って連続する領域で構成されている。縦縁部11e及び縦縁部11fは、省略されていてもよい。この場合、第1溝縁11aのジグザグ頂点が内側頂部11c又は外側頂部11dとなる。
【0035】
センター主溝11の第2溝縁11bは、最もタイヤ軸方向の内側に突出する内側頂部11g及び最もタイヤ軸方向の外側に突出する外側頂部11hを有する。本実施形態の内側頂部11gは、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁部11iで形成されている。すなわち、内側頂部11gは、第2溝縁11bのうちタイヤ周方向に沿って連続する領域で構成されている。縦縁部11iは、省略されていてもよい。この場合、第1溝縁11bのタイヤ赤道C側に突出するジグザグ頂点が内側頂部11gとなる。縦縁部11e、11f及び11iによって、水がタイヤ周方向に排出されやすくなり、トレッド部2の排水性能が高められる。
【0036】
図2に示されるように、ショルダー主溝12の溝幅Wsは、センター主溝11の溝幅Wcよりも大きいのが望ましい。センター主溝11の溝幅Wcがショルダー主溝12の溝幅Wsより大きい場合、接地圧の高いタイヤ赤道Cの近傍でトレッド部2の剛性が不足して、転がり抵抗性能が悪化するおそれがある。
【0037】
ショルダー主溝12の溝幅Wsとセンター主溝11の溝幅Wcとの比Ws/Wcは、例えば、1.5〜2.0が望ましい。上記比Ws/Wcが1.5未満の場合、ショルダー主溝12の周辺部で排水性能が低下するおそれがある。一方、上記比Ws/Wcが2.0を超える場合、ショルダー主溝12の周辺部の剛性が低下し、トレッド部2の変形が大きくなり、転がり抵抗性能が悪化するおそれがある。ショルダー主溝12の溝深さは、例えば、センター主溝11の溝深さと同等である。
【0038】
一対のセンター主溝11及び一対のショルダー主溝12によってトレッド部2が複数の陸部領域に区分される。具体的には、トレッド部2は、タイヤ赤道Cの一方側のセンター主溝11と他方側のセンター主溝11との間のセンター陸部13、センター主溝11とショルダー主溝12との間の一対のミドル陸部14、及び、ショルダー主溝12のタイヤ軸方向外側に位置する一対のショルダー陸部15の領域に区分される。すなわち、センター主溝11の両側には、センター陸部13及びミドル陸部14が設けられ、ショルダー主溝12の両側には、ミドル陸部14及びショルダー陸部15が設けられている。
【0039】
センター陸部13のタイヤ軸方向の平均幅W13と、ミドル陸部14のタイヤ軸方向の平均幅W14と、ショルダー陸部15のタイヤ軸方向のW15との比W13:W14:W15は、例えば、1.00:1.00〜1.08:1.03〜1.13が望ましい。上記比W14/W13が1.00未満、上記比W15/W13が1.08未満である場合、センター陸部13の接地圧が過度に高くなり、センター陸部13に偏摩耗が生ずるおそれがある。一方、上記比W14/W13が1.03を超え、上記比W15/W13が1.13を超える場合、ミドル陸部14及びショルダー陸部15の接地圧が過度に高くなり、転がり抵抗の低減が困難となる。
【0040】
図3に示されるように、センター陸部13には、複数本の第1センター傾斜サイプ21及び複数本の第2センター傾斜サイプ22が設けられている。各第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22は、タイヤ軸方向に対して傾斜してのびており、タイヤ赤道Cの一方側のセンター主溝11とタイヤ赤道Cの他方側のセンター主溝11とを連通している。本実施形態において、センター陸部13には、タイヤ赤道Cの一方側のセンター主溝11とタイヤ赤道Cの他方側のセンター主溝11とを連通する横溝又は傾斜溝は設けられていない。このようなセンター陸部13は、タイヤ周方向に高い剛性を有し、転がり抵抗性能の向上に寄与する。
【0041】
第1センター傾斜サイプ21は、タイヤ赤道Cに対して一方側の第1溝縁11aの内側頂部11cと他方側の第1溝縁11aの内側頂部11cとを連通している。互いのジグザグ位相がタイヤ周方向にずれて配置された一対のセンター主溝11及び第1センター傾斜サイプ21によって区分されたセンター陸部13は、略樽型の六角形状である。このような略樽型の六角形状に区分されたセンター陸部13は、その外側頂部11dの近傍領域で剛性が高く、かかる領域で接地時の変形が抑制される。
【0042】
第2センター傾斜サイプ22は、タイヤ赤道Cに対して一方側の第1溝縁11aの外側頂部11dと他方側の第1溝縁11aの外側頂部11dとを連通している。センター陸部13は、第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22によって区分された複数個のセンターブロック23が並ぶブロック列である。
【0043】
縦縁部11eのタイヤ周方向の長さLeと、タイヤ周方向に隣り合う第1センター傾斜サイプ21、21の間隔Pcとの比Le/Pcは、例えば、0.1〜0.4が望ましい。比Le/Pcが0.1未満である場合、センターブロック23の内側頂部11cの剛性が局所的に低下し、内側頂部11cが偏摩耗の起点になりやすい。比Le/Pcが0.4を超える場合、センターブロック23全体の剛性が低下し、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。
【0044】
上記と同様に、縦縁部11fのタイヤ周方向の長さLfと、タイヤ周方向に隣り合う第1センター傾斜サイプ21、21の間隔Pcとの比Lf/Pcも、例えば、0.1〜0.4が望ましい。
【0045】
第1センター傾斜サイプ21の幅Wcs1と、タイヤ周方向に隣り合う第1センター傾斜サイプ21、21の間隔Pcとの比Wcs1/Pcは、例えば、好ましくは0.02以下であり、より好ましくは0.01以下である。上記比Wcs1/Pcが0.02を超えると、隣り合うセンターブロック23の側壁同士が当接する面積が減少するため、隣り合うセンターブロック23同士、すなわちサイプ側壁同士で支え合って剛性を高める作用が得られにくくなる。
【0046】
第2センター傾斜サイプ22の幅Wcs2は、第1センター傾斜サイプ21の幅Wcs1と同等である。第2センター傾斜サイプ22は、第1センター傾斜サイプ21と平行に設けられている。このような第2センター傾斜サイプ22によって、センターブロック23の剛性分布が適正化されるとともに、センター陸部13のウエット性能が高められる。
【0047】
本実施形態においては、タイヤ赤道Cの一方側のセンター主溝11は、他方側のセンター主溝11に対して、ジグザグ位相がタイヤ周方向にずれて配置されているので、第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22は、タイヤ軸方向に対して傾斜し、センター陸部13の排水性能が高められる。
【0048】
第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22の深さは、例えば、好ましくはセンター主溝11の深さの50%〜80%であり、より好ましくは65%〜75%である。第1センター傾斜サイプ21等の深さがセンター主溝11の深さの50%未満である場合、各ブロック単体での高い剛性が得られる反面、隣り合うブロックの側壁同士が当接する面積が減少するため、隣り合うブロック同士で支え合って剛性を高める作用が得られにくくなる。従って、センター陸部13全体としての剛性が低下し、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。一方、第1センター傾斜サイプ21等の深さがセンター主溝11の深さの80%を超える場合、各ブロック単体での剛性の低下が著しく、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。
【0049】
センター主溝11と第1センター傾斜サイプ21とが交差するブロック頂点のうち、鋭角な頂点には、面取り部24が形成されている。面取り部24は、ブロック頂点での応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部24に替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0050】
図4には、センター主溝11、ミドル陸部14及びショルダー主溝12の拡大図が示されている。ミドル陸部14には、複数本のミドル傾斜溝31、複数本のミドル傾斜サイプ32が設けられている。ミドル傾斜溝31、ミドル傾斜サイプ32は、タイヤ軸方向に傾斜してのびており、センター主溝11とショルダー主溝12とを連通している。
【0051】
ミドル傾斜溝31は、一端がセンター主溝11の第2溝縁11bの外側頂部11hに、他端がショルダー主溝12の第3溝縁12aにそれぞれ連通している。これにより、ミドル陸部14は、複数個のミドルブロック33が並ぶブロック列である。ジグザク状のセンター主溝11、直線状のショルダー主溝12及び隣り合うミドル傾斜溝31、31によって、本実施形態のミドルブロック33の踏面33sは、略5角形状である。
【0052】
図2に示されるように、タイヤ赤道Cの一方側のミドル傾斜溝31aは、他方側のミドル傾斜溝31bと、タイヤ軸方向に対して逆向きに傾斜している。これにより、トレッド部2は、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。このような方向性パターンにより、トレッド部2の排水性能が高められ、重荷重用タイヤ1のウエット性能が向上する。
【0053】
縦縁部11iのタイヤ周方向の長さLiと、タイヤ周方向に隣り合うミドル傾斜溝31、31の間隔Pmとの比Li/Pmは、例えば、0.1〜0.4が望ましい。上記比Li/Pmが0.1未満である場合、ミドルブロック33の内側頂部11gの剛性が局所的に低下し、内側頂部11gが偏摩耗の起点になりやすい。上記比Li/Pmが0.4を超える場合、ミドルブロック33全体の剛性が低下し、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。
【0054】
ミドル傾斜サイプ32は、センター主溝11の第2溝縁11bの内側頂部11gとショルダー主溝12の第3溝縁12aとを連通している。ミドル傾斜サイプ32は、ミドル傾斜溝31と平行に設けられ、ミドルブロック33の踏面33sを二分する。このようなミドル傾斜サイプ32によって、ミドルブロック33の剛性分布が適正化されるとともに、ミドル陸部14のウエット性能が向上する。さらに、ミドル傾斜サイプ32が、接地時に閉じることにより、隣り合うサイプ側壁が密着して支え合い、ミドル陸部14の剛性を高める。これにより、ミドル陸部14の変形が抑制され、転がり抵抗性能が向上する。
【0055】
図2に示されるように、第1センター傾斜サイプ21は、センター主溝11を介して、ミドル傾斜サイプ32と連続するように形成されている。ここで、第1センター傾斜サイプ21が、センター主溝11を介して、ミドル傾斜サイプ32と連続するとは、第1センター傾斜サイプ21の延長線とミドル傾斜サイプ32の延長線とが、センター主溝11内で交差していることを意味している。このような第1センター傾斜サイプ21及びミドル傾斜サイプ32の配置によって、ウエット性能が向上する。
【0056】
ミドル傾斜サイプ32の幅Wmsと、タイヤ周方向に隣り合うミドル傾斜溝31、31の間隔Pmとの比Wms/Pmは、例えば、好ましくは0.02以下であり、より好ましくは0.01以下である。上記比Wms/Pmが0.02を超える場合、隣り合うサイプ側壁同士が当接する面積が減少するため、ミドルブロック33が支え合って剛性を高める作用が得られにくくなる。
【0057】
ミドル傾斜溝31の深さは、例えば、センター主溝11の深さの10%〜30%が望ましい。ミドル傾斜溝31の深さがセンター主溝11の深さの10%未満である場合、ミドル陸部14の排水性能が低下するおそれがある。一方、ミドル傾斜溝31の深さがセンター主溝11の深さの30%を超える場合、ミドル陸部14の剛性が低下し、転がり抵抗性能が低下するおそれがある。
【0058】
ミドル陸部14は、ミドル傾斜サイプ32の両端に、一対の第1面取り部36及び一対の第2面取り部37を有している。各第1面取り部36は、ミドル傾斜サイプ32とセンター主溝11とで挟まれる第1コーナー部36cに設けられている。第1面取り部36は、ミドルブロック33の踏面33sからセンター主溝11の溝底に向かって下降する。同様に、各第2面取り部37は、ミドル傾斜サイプ32とショルダー主溝12とで挟まれる第2コーナー部37cに設けられている。第2面取り部37は、ミドルブロック33の踏面33sからショルダー主溝12の溝底に向かって下降する。このような第1面取り部36及び第2面取り部37は、第1コーナー部36c及び第2コーナー部37cの頂点での応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部36、37に替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0059】
ミドル陸部14は、ミドル傾斜溝31の両端に、第3面取り部38及び第4面取り部39を有している。第3面取り部38は、ミドル傾斜溝31とセンター主溝11とで挟まれる鋭角の第3コーナー部38cに設けられている。第3面取り部38は、ミドルブロック33の踏面33sからセンター主溝11の溝底に向かって下降する。同様に、第4面取り部39は、ミドル傾斜溝31とショルダー主溝12とで挟まれる鋭角の第4コーナー部39cに設けられている。第4面取り部39は、ミドルブロック33の踏面33sからショルダー主溝12の溝底に向かって下降する。このような第3面取り部38及び第4面取り部39は、第3コーナー部38c及び第4コーナー部39cの頂点での応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部38、39に替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0060】
ミドル傾斜溝31及びミドル傾斜サイプ32のタイヤ軸方向に対する角度βは、例えば、5゜〜20゜が望ましい。角度βが5゜未満である場合、ミドル陸部14の排水性能が低下するおそれがある。一方、角度βが20゜を超える場合、ミドル陸部14の剛性が低下し、転がり抵抗が増大するおそれがある。ミドル傾斜溝31のタイヤ軸方向に対する角度及びミドル傾斜サイプ32のタイヤ軸方向に対する角度は、上記範囲内であれば、それぞれが異なっていてもよい。
【0061】
1本のミドル陸部14に設けられているミドル傾斜溝31及びミドル傾斜サイプ32の各本数は、例えば、好ましくは35〜45であり、より好ましくは38〜42である。上記各本数が35未満である場合、ミドル陸部14の排水性能が低下するおそれがある。一方、上記各本数が45を超える場合、ミドル陸部14の剛性が低下し、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。
【0062】
図5には、ショルダー主溝12及びショルダー陸部15の拡大図が示されている。ショルダー陸部15には、複数本のショルダー傾斜溝41、複数本のショルダー傾斜サイプ42が設けられている。ショルダー傾斜溝41及びショルダー傾斜サイプ42は、タイヤ軸方向に傾斜してのびており、ショルダー主溝12とトレッド接地端Teとを連通している。
【0063】
ショルダー傾斜溝41は、一端がショルダー主溝12の第4溝縁12bに、他端がトレッド接地端Teにそれぞれ連通している。これにより、ショルダー陸部15は、複数個のショルダーブロック43が並ぶブロック列である。直線状のショルダー主溝12及び隣り合うショルダー傾斜溝41によって、本実施形態のショルダーブロック43の踏面43sは、略平行四辺形状である。
【0064】
ショルダー傾斜溝41の深さは、例えば、ショルダー主溝12の深さの10%〜30%が望ましい。ショルダー傾斜溝41の深さがショルダー主溝12の深さの10%未満である場合、ショルダー陸部15の排水性能が低下するおそれがある。一方、ショルダー傾斜溝41の深さがショルダー主溝12の深さの30%を超える場合、ショルダー陸部15の剛性が低下し、転がり抵抗性能が低下するおそれがある。
【0065】
図2に示されるように、タイヤ赤道Cの一方側のショルダー傾斜溝41aは、ショルダー主溝12を挟んで隣り合うミドル傾斜溝31aとタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。タイヤ赤道Cの他方側のショルダー傾斜溝41bも、ショルダー主溝12を挟んで隣り合うミドル傾斜溝31bとタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。すなわち、一方側のショルダー傾斜溝41aは他方側のショルダー傾斜溝41bと、タイヤ軸方向に対して逆向きに傾斜している。上述したミドル傾斜溝31a、31bと相まって、このようなショルダー傾斜溝41a、41bにより、トレッド部2は、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。このような方向性パターンにより、トレッド部2の排水性能が高められ、重荷重用タイヤ1のウエット性能が向上する。
【0066】
ショルダー傾斜サイプ42は、一端がショルダー主溝12の第4溝縁12bに、他端がトレッド接地端Teにそれぞれ連通している。ショルダー傾斜サイプ42は、ショルダー傾斜溝41と平行に設けられ、ショルダーブロック43の踏面43sを二分する。このようなショルダー傾斜サイプ42によって、ショルダーブロック43の剛性分布が適正化されるとともに、ショルダー陸部15のウエット性能が高められる。さらに、ショルダー傾斜サイプ42が、接地時に閉じることにより、隣り合うサイプ側壁が密着して支え合い、ショルダー陸部15の剛性が高められる。これにより、ショルダー陸部15の変形が抑制され、転がり抵抗性能が向上する。
【0067】
ショルダー傾斜サイプ42の深さは、例えば、センター主溝11の深さの50%〜80%が望ましい。ショルダー傾斜サイプ42の深さがセンター主溝11の深さの50%未満である場合、各ブロック単体での高い剛性が得られる反面、隣り合うサイプ側壁同士が当接する面積が減少するため、ブロックが支え合って剛性を高める作用が得られにくくなる。従って、ショルダー陸部15全体としての剛性が低下し、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。一方、ショルダー傾斜サイプ42の深さがセンター主溝11の深さの80%を超える場合、各ブロック単体での剛性の低下が著しく、タイヤの転がり抵抗の低減が困難となる。
【0068】
ショルダー主溝12とショルダー傾斜溝41とが交差するブロック頂点のうち、鋭角な頂点には、面取り部44が形成されている。面取り部44は、ブロック頂点での応力集中を緩和し、チッピング等の損傷を抑制する。面取り部44に替えて、角丸め部が形成されていてもよい。
【0069】
本実施形態において、1本のショルダー陸部15に設けられているショルダー傾斜溝41及びショルダー傾斜サイプ42の各本数は、1本のミドル陸部14に設けられているミドル傾斜溝31及びミドル傾斜サイプ32の各本数と同じである。このようなショルダー傾斜溝41及びショルダー傾斜サイプ42によって、ショルダー陸部15の排水性能を悪化させることなく、転がり抵抗を低減できる。
【0070】
図2に示されるように、第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22のタイヤ軸方向に対する角度αは、ショルダー傾斜溝41及びショルダー傾斜サイプ42のタイヤ軸方向に対する角度γより大きいのが望ましい。このような第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22によって、センター陸部13のタイヤ周方向の剛性が確保され、転がり抵抗性能の低下が抑制される。さらに、上記角度γは、ミドル傾斜溝31及びミドル傾斜サイプ32のタイヤ軸方向に対する角度βより大きいのが望ましい。このようなショルダー傾斜溝41及びショルダー傾斜サイプ42によって、ショルダー陸部15の排水性能が高められ、ウエット性能が向上する。
【0071】
上述したパターンが形成されたトレッド部2のランド比は、例えば、80%以上が望ましい。ランド比が80%未満である場合、トレッド部2のゴムボリューム不足により、トレッド部2の剛性が低下し、転がり抵抗性能が悪化する。
【0072】
図6には、重荷重用タイヤ1の接地形状が示されている。ショルダー陸部15のショルダー主溝12の第4溝縁12bの接地長さLsと、センター陸部13のタイヤ赤道Cにおける接地長さLcとの比Ls/Lcは、例えば、0.9〜1.0が望ましい。上記比Ls/Lcが0.9未満の場合、ショルダー陸部15の接地圧が低下し、肩落ち摩耗と称される偏摩耗が生ずるおそれがある。上記比Ls/Lcが1.0を超える場合、接地時のミドル陸部14等に局所的な滑りが発生し、偏摩耗が生ずるおそれがある。
【0073】
以上のような構成を有する本実施形態の重荷重用タイヤ1によれば、ショルダー主溝12がタイヤ周方向に直線状に形成され、かつ、ショルダー主溝12の溝幅Wsは、センター主溝11の溝幅Wcよりも大きい。かかるショルダー主溝12によって、トレッド部2の排水性能が高められ、ウエット性能が向上する。さらに、タイヤ軸方向に対して傾斜するミドル傾斜溝31及びショルダー傾斜溝41がミドル陸部14及びショルダー陸部15に設けられているので、ミドル陸部14からトレッド接地端Teにかけての排水が促進され、より一層ウエット性能が向上する。
【0074】
一方、センター陸部13に設けられている第1センター傾斜サイプ21及び第2センター傾斜サイプ22が、接地時に閉じることにより、隣り合うサイプ側壁が密着して支え合い、トレッド部2の剛性を高める。これにより、接地圧の高いセンター陸部13の変形が抑制され、転がり抵抗性能が向上する。
【0075】
以上、本発明の重荷重用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0076】
図2のトレッドパターンが形成されたサイズ315/80R22.5の重荷重用タイヤが、表1の仕様に基づき試作され、リム22.5×9.00に装着されて、転がり抵抗性能及びウエットブレーキ性能がテストされた。各タイヤのセンター主溝及びショルダー主溝の溝深さは、16.3mmである。テスト方法は、以下の通りである。
【0077】
<転がり抵抗性能>
転がり抵抗試験機を用い、内圧850kPa、荷重33.34kN、時速80km/hの条件で各試供タイヤの転がり抵抗が測定された。結果は、実施例1を100とした指数であり、数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、燃費性能に優れることを示す。
【0078】
<ウエットブレーキ性能>
内圧595kPa、荷重27.63kN、時速50km/hの条件で、各試供タイヤの軸に制動力が加えられ、摩擦係数のピーク値が測定された。結果は、実施例1の値を100とする指数であり、数値が大きいほどウエットブレーキ性能が良好である。
【0079】
<耐偏摩耗性能>
各試供タイヤが、最大積載量10トン積みのトラック(2−D車)の全輪に装着された。上記車両は、定積載の状態で10000km走行し、センター陸部、ミドル陸部及びショルダー陸部の各ブロック列について、偏摩耗の有無を肉眼により観察した。結果は、実施例1を100とする指数で表示し、数値が大きいほど耐偏摩耗性能が良好である。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から明らかなように、実施例の重荷重用タイヤは、比較例に比べて、ウエット性能及び耐偏摩耗性能を高めつつ、転がり抵抗性能が有意に向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0082】
1 重荷重用タイヤ
2 トレッド部
11 センター主溝
11c 内側頂部
11d 外側頂部
11g 内側頂部
11h 外側頂部
12 ショルダー主溝
13 センター陸部
14 ミドル陸部
15 ショルダー陸部
21 第1センター傾斜サイプ
22 第2センター傾斜サイプ
31 ミドル傾斜溝
32 ミドル傾斜サイプ
36 第1面取り部
36c 第1コーナー部
37 第2面取り部
37c 第2コーナー部
41 ショルダー傾斜溝
42 ショルダー傾斜サイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6