(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス流通路は、第1開閉弁が設けられ、前記流入端と前記圧縮機の吸入部とを接続する第1流路と、第2開閉弁が設けられ、前記圧縮機の吐出部と前記貯留部とを接続する第2流路と、第3開閉弁が設けられ、前記第2流路と前記流出端とを接続する第3流路と、第4開閉弁が設けられ、前記貯留部と前記圧縮機の吸入部とを連通させる第4流路と、を有し、
前記運転制御部は、前記第2圧縮充填運転を行うときに、前記第4開閉弁及び前記第3開閉弁を開放するとともに前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉鎖する請求項1又は2に記載のガス充填装置。
前記流出端におけるガス圧力又はこれに相当する圧力を検出する第2圧力検出器による検出値と、前記貯留部内のガス圧力又はこれに相当する圧力を検出する第1圧力検出器による検出値とから得られる圧力差が、予め定められた所定値以下になると、前記圧縮機の回転数を上昇させつつ前記圧縮充填運転を行う前記ステップへ移行する請求項11に記載のガス充填方法。
前記ガス流通路の流入端に接続されたガスの供給源からガスの供給を受けて前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行うステップを含む請求項11又は12に記載のガス充填方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたガス充填装置では、2系統からのガス供給を同時に行うため、迅速なガス充填が可能となっている。しかしながら、2系統からの同時供給では、タンク内のガス圧力及び緩衝容器62内のガス圧力が変化するのに伴って、圧縮機61によるガス圧縮容量を調整したり、緩衝容器62から放出されるガスの流量を調整する必要があるため、ガス充填装置によるタンクへの充填制御が煩雑となるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガス充填装置による蓄圧器への充填制御が煩雑となることを抑制することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、ガスの供給源を接続可能な流入端と、蓄圧器を接続可能な流出端とを有するガス流通路と、前記ガス流通路に接続された圧縮機と、前記ガス流通路に接続された貯留部と、前記流入端に接続されたガスの供給源から供給されたガスを前記圧縮機によって圧縮して前記流出端から流出させる第1圧縮充填運転と、前記貯留部に溜められたガスを前記圧縮機によって圧縮して前記流出端から流出させる第2圧縮充填運転と、を行う制御を実行可能な運転制御部と、を備え、前記運転制御部は、前記流出端でのガス圧力又はこれに相当する圧力が所定の圧力になるまで前記第1圧縮充填運転を行い、所定の圧力に達すると前記第2圧縮充填運転に切り換える制御を実行するように構成されているガス充填装置である。
【0007】
本発明では、第1圧縮充填運転が行われた後に第2圧縮充填運転に切り換えられる。つまり、蓄圧器へのガスの供給を行うにあたり、ガスの供給源からのガス供給うと貯留部からのガス供給とを同時に行うことがない。このため、ガス充填装置による蓄圧器へのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。また、流出端でのガス圧力又はこれに相当する圧力が所定圧力に達するまで第1圧縮充填運転を行い、その後、第2圧縮充填運転に切り換えるため、圧縮機における昇圧幅を抑えることができる。このため、圧縮機の小型化を図ることができる。すなわち、圧縮機の圧縮室の段数を抑えることができるため、より小型の圧縮機を採用することができる。
【0008】
ここで、前記運転制御部は、前記第2圧縮充填運転において、前記貯留部内のガス圧力に対する前記流出端におけるガス圧力の
比が予め設定された貯留開始閾値以上になった場合に、前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行ってもよ
く、または、前記貯留部内の前記ガス圧力が予め設定された貯留開始閾値以下になった場合に前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行ってもよい。
【0009】
この態様では、貯留部から蓄圧器へのガス供給を行う第2圧縮充填運転において、ガス供給に伴って貯留部のガス圧力が低下した場合に貯留運転が行われる。このため、貯留部内のガス圧力を所定値以上に確保することができる。したがって、圧縮機での圧縮比を低く抑えることが可能となり、圧縮機の小型化を図ることができる。すなわち、圧縮機の圧縮室の段数を抑えることができ、より小型の圧縮機を採用することができる。
【0010】
前記ガス流通路は、第1開閉弁が設けられ、前記流入端と前記圧縮機の吸入部とを接続する第1流路と、第2開閉弁が設けられ、前記圧縮機の吐出部と前記貯留部とを接続する第2流路と、第3開閉弁が設けられ、前記第2流路と前記流出端とを接続する第3流路と、第4開閉弁が設けられ、前記貯留部と前記圧縮機の吸入部とを連通させる第4流路と、を有してもよい。この場合、前記運転制御部は、前記第2圧縮充填運転を行うときに、前記第4開閉弁及び前記第3開閉弁を開放するとともに前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉鎖してもよい。
【0011】
本発明は、ガスの供給源を接続可能な流入端と、蓄圧器を接続可能な流出端とを有するガス流通路と、前記ガス流通路に接続された圧縮機と、前記ガス流通路に接続された貯留部と、を備え、前記流入端に接続されたガスの供給源からガスの供給を受けて前記貯留部にガスを溜める貯留運転と、前記貯留部に溜められたガスを、前記貯留部内のガス圧力と前記蓄圧器内のガス圧力又はこれに相当するガス圧力との圧力差によって前記流出端から流出させる差圧充填運転と、前記貯留部に溜められたガスを前記圧縮機によって圧縮して前記流出端から流出させる圧縮充填運転と、を行い、前記差圧充填運転の後に前記圧縮充填運転に移行するガス充填装置である。
【0012】
本発明では、差圧充填運転が行われた後に圧縮充填運転に切り換わる。そして、圧縮機によってガスを圧縮しながら流出端からガスを流出させる。つまり、蓄圧器へのガスの供給を行うにあたり、圧力差を利用したガス供給と圧縮機による圧縮を行うガス供給を同時に行うことがない。このため、ガス充填装置による蓄圧器へのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。しかも、貯留部内のガス圧力と蓄圧器内のガス圧力との圧力差を利用した差圧充填運転を行った後に圧縮機による圧縮を利用した圧縮充填運転を行うため、貯留部内のガス圧力に近い圧力又はそれ以上の圧力のガスを、簡単な圧縮機制御を行いながら供給することができる。また、貯留部に溜められていたガスを圧縮機で圧縮するため、圧縮機における昇圧幅を抑えることができる。このため、圧縮機の小型化を図ることができる。すなわち、圧縮機の圧縮室の段数を抑えることができるため、より小型の圧縮機を採用することができる。
【0013】
前記ガス流通路において、前記圧縮機と並列に配列される他の圧縮機をさらに備えてもよい。この場合、前記差圧充填運転および前記圧縮充填運転において、前記供給源から送られたガスを前記他の圧縮機で圧縮して前記貯留部に貯留する補給運転制御を実行し、前記貯留運転において、前記供給源から供給されたガスを前記他の圧縮機及び前記圧縮機のそれぞれにて圧縮し、前記貯留部に貯留してもよい。
【0014】
この態様では、貯留部に導入されるガスを圧縮する他の圧縮機と、貯留部から流出したガスを圧縮する圧縮機とが設けられるため、貯留部のガスを蓄圧器に充填する運転を行いながら、ガスの供給源から貯留部にガスを供給する運転を行うことができる。このため、貯留部の容量が大きな場合や、蓄圧器からの充填要求が多い場合にもガス充填装置の連続運転を行うことができる。
【0015】
前記ガス充填装置は、前記貯留部内のガス圧力又はこれに相当する圧力を検出する第1圧力検出器と、前記流出端におけるガス圧力又はこれに相当する圧力を検出する第2圧力検出器とを備えてもよい。この場合、前記運転制御部は、前記第2圧力検出器による検出値と前記第1圧力検出器による検出値とから得られる圧力差が、予め定められた所定値以下になると前記圧縮機の回転数を上昇させた状態で前記圧縮充填運転に移行してもよい。
【0016】
この態様では、流出端におけるガス圧力を検出する第2圧力検出器による検出値と、貯留部内のガス圧力を検出する第1圧力検出器による検出値とから得られる圧力差が所定値以下になった場合に、圧縮機の回転数を上昇させることにより、圧縮機から吐出されるガスの圧力(又は流量)が僅かに増大する。これにより、蓄圧器へのガスの供給に関し、充填時間と目標圧力(又は目標流量)との関係が決められている場合に差圧充填運転から圧縮充填運転への移行時に、蓄圧器へのガスの供給圧(又は供給量)が目標圧力(又は目標流量)を下回ってしまうことが防止される。
【0017】
本発明は、ガスの供給源を接続可能な流入端と、蓄圧器を接続可能な流出端とを有するガス流通路と、前記ガス流通路に接続された圧縮機と、前記ガス流通路に接続された貯留部と、前記流入端に接続されたガスの供給源からガスの供給を受けて前記貯留部にガスを溜める貯留運転と、前記貯留部に溜められたガスを、前記貯留部内のガス圧力と前記蓄圧器内のガス圧力又はこれに相当するガス圧力との圧力差によって前記流出端から流出させる差圧充填運転と、を行う制御を実行可能な運転制御部と、を備え、前記運転制御部は、前記貯留運転において、前記供給源から前記圧縮機を通して前記貯留部にガスを貯留する第1貯留運転と、前記第1貯留運転によって前記貯留部に貯留されたガスを前記圧縮機に送り該圧縮機で圧縮して前記貯留部に貯留する第2貯留運転とを行う制御を実行するように構成されているガス充填装置である。
【0018】
この態様では、貯留運転が第1貯留運転と第2貯留運転とに分かれている。このため、まず、第1貯留運転で第1の所定圧力まで貯留部内のガス圧力を昇圧させ、その後、第2貯留運転によって貯留部内のガス圧力を第1の所定圧力から第2の所定圧力まで昇圧させることができる。したがって、貯留部内のガス圧力を直接所定圧力(第2の所定圧力に相当する圧力)まで昇圧させるものに比べて、圧縮機での昇圧幅を抑えることができる。また、差圧充填にて蓄圧器にガスが充填されるため、ガス充填装置による蓄圧器へのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。
【0019】
ここで、前記貯留部は、第1タンク部と第2タンク部とを有してもよい。この場合、前記運転制御部は、前記第2貯留運転において、前記第1タンク部に貯留されていたガスを前記圧縮機で圧縮して前記第2タンク部に貯留する制御を実行するように構成されていてもよい。
【0020】
この態様では、貯留部に潮流されていたガスを圧縮機で圧縮して、貯留部に戻す場合に、圧縮されたガスを効果的に貯留することができる。
【0021】
本発明は、圧縮機及び貯留部が接続されたガス流通路の流出端に接続された蓄圧器にガスを供給する方法であって、前記ガス流通路の流入端に接続されたガスの供給源から供給されたガスを前記圧縮機によって圧縮して前記流出端から流出させる第1圧縮充填運転を行うステップと、前記第1圧縮充填運転を行うステップの後に行われ、前記貯留部に溜められたガスを前記圧縮機によって圧縮して前記流出端から流出させる第2圧縮充填運転を行うステップと、を含むガス充填方法である。
【0022】
前記第2圧縮充填運転を行うステップにおいて、前記貯留部内のガス圧力に対する前記流出端におけるガス圧力の
比が予め設定された貯留開始閾値以上になった場合に、前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行ってもよ
く、または、前記貯留部内の前記ガス圧力が予め設定された貯留開始閾値以下になった場合に前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行ってもよい。
【0023】
本発明は、圧縮機及び貯留部が接続されたガス流通路の流出端に接続された蓄圧器にガスを供給する方法であって、前記貯留部に溜められたガスを、前記貯留部内のガス圧力と前記蓄圧器内のガス圧力又はこれに相当するガス圧力との圧力差によって前記流出端から流出させる差圧充填運転を行うステップと、前記差圧充填運転を行うステップの後に行われ、前記貯留部に溜められたガスを前記圧縮機によって圧縮して前記流出端から流出させる圧縮充填運転を行うステップと、を含むガス充填方法である。
【0024】
前記流出端におけるガス圧力又はこれに相当する圧力を検出する第2圧力検出器による検出値と、前記貯留部内のガス圧力又はこれに相当する圧力を検出する第1圧力検出器による検出値とから得られる圧力差が、予め定められた所定値以下になると、前記圧縮機の回転数を上昇させつつ前記圧縮充填運転を行う前記ステップへ移行してもよい。
【0025】
前記ガス充填方法は、前記ガス流通路の流入端に接続されたガスの供給源からガスの供給を受けて前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行うステップを含んでもよい。
【0026】
本発明は、圧縮機及び貯留部が接続されたガス流通路の流出端に接続された蓄圧器にガスを供給する方法であって、前記ガス流通路の流入端に接続されたガスの供給源からガスの供給を受けて前記貯留部にガスを溜める貯留運転を行うステップと、前記貯留部に溜められたガスを、前記貯留部内のガス圧力と前記蓄圧器内のガス圧力又はこれに相当するガス圧力との圧力差によって前記流出端から流出させる差圧充填運転を行うステップと、を含み、前記貯留運転を行うステップは、前記供給源から前記圧縮機を通して前記貯留部にガスを貯留する第1貯留運転を行うステップと、前記第1貯留運転によって前記貯留部に貯留されたガスを前記圧縮機に送り該圧縮機で圧縮して前記貯留部に貯留する第2貯留運転を行うステップとを含むガス充填方法である。
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、ガス充填装置による蓄圧器への充填制御が煩雑となることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るガス充填装置10は、例えば水素ガスの供給スタンドとしての水素ステーションに設けられた蓄圧器12a,12bに水素ガスを充填するためのものである。蓄圧器12a,12bには、予め定められた所定の圧力の水素ガスが溜められる。蓄圧器12a,12bには図外のディスペンサが接続されており、蓄圧器12a,12bに溜められた水素ガスは、このディスペンサを通して、タンク搭載装置である燃料電池車に設けられたタンクに供給される。
【0031】
ガス充填装置10は、水素ガスを流通させるためのガス流通路16と、ガス流通路16に接続された圧縮機18と、ガス流通路16に接続された貯留部20と、コントローラ22とを備えている。貯留部20は1つ又は複数の容器にて構成される。
【0032】
ガス流通路16は、第1流路16aと第2流路16bと第3流路16cと第4流路16dとを有する。
【0033】
第1流路16aの上流端には、ガス供給源25を接続可能な流入端16eが設けられている。第1流路16aの下流端は圧縮機18の吸入部に接続されている。つまり、第1流路16aは、流入端16eと圧縮機18の吸入部とを接続している。第1流路16aには、第1開閉弁V1及び逆止弁26が設けられている。逆止弁26は、流入端16eから圧縮機18の吸入部(又は貯留部20)に向かう方向の流れのみを許容する。
【0034】
第2流路16bの一端部は、圧縮機18の吐出部に接続され、第2流路16bの他端部は、貯留部20に接続されている。つまり、第2流路16bは、圧縮機18の吐出部と貯留部20とを接続している。第2流路16bには、第2開閉弁V2が設けられている。なお、水素ガスの逆流を防止するために第2流路16bに逆止弁等が設けられてもよい。第3流路16c及び第4流路16dにおいても同様である。以下の他の実施形態における各流路においても同様である。
【0035】
第3流路16cの一端部は、第2流路16bにおける第2開閉弁V2よりも上流側の部位に接続されている。第3流路16cは、その途中で複数(図例では2つ)の流路16f,16gに分岐している。各分岐流路16f,16gの下流端には、それぞれ蓄圧器12a,12bを接続可能な流出端16hが設けられている。すなわち、第3流路16cの他端部には、蓄圧器12a,12bを接続可能な流出端16hが設けられている。分岐流路16f,16gには、それぞれ第3開閉弁V3が設けられている。
【0036】
なお、第3流路16cは、その途中で分岐している構成に限られない。第3流路16cは、分岐することなく延びており、1つの流出端16hが設けられた構成としてもよい。この場合には、1つの第3開閉弁V3が設けられた構成となる。
【0037】
蓄圧器12a,12bには、それぞれ例えば90MPaの水素ガスが溜められる。なお、第1蓄圧器12aと第2蓄圧器12bに異なる圧力の水素ガスが蓄えられる構成であってもよい。
【0038】
第4流路16dの一端部は、貯留部20に接続されており、第4流路16dの他端部は、第1流路16aにおける第1開閉弁V1(又は流入端16e)と圧縮機18の吸入部との間の部位に接続されている。つまり、第4流路16dは、貯留部20と圧縮機18の吸入部とを連通している。第4流路16dには、第4開閉弁V4が設けられている。
【0039】
ガス供給源25としては、水素ガスが封入されたガスボンベ、水素ガスの製造システム、水素ガスを分配するガスパイプ等が挙げられる。ガス供給源25からは、例えば1MPa以下の水素ガスが供給される。
【0040】
圧縮機18は、図略のモータの駆動により図略のクランク軸を回転させてピストンを往復動させる往復動圧縮機によって構成されている。なお、圧縮機18は、往復動圧縮機に限られるものではなく、これ以外のタイプの圧縮機によって構成されていてもよい。
【0041】
コントローラ22には、貯留部20内のガス圧力を検出する第1センサ(第1圧力検出器)31から出力された信号と、流出端16hにおけるガス圧力を検出する第2センサ(第2圧力検出器)32から出力された信号とが入力される。
【0042】
コントローラ22は、ガス充填装置10の運転制御を実行するプログラムが記憶されていて、プログラムを実行することにより、所定の機能を発揮する。コントローラ22の機能には、少なくとも運転制御部22aと切換制御部22bとが含まれている。
【0043】
運転制御部22aは、ガス供給源25から水素ガスの供給を受けて貯留部20に水素ガスを溜める貯留運転を行う制御を実行する。貯留運転は、ガス供給源25から導入された水素ガスを圧縮機18で圧縮しつつ貯留部20に貯留する運転であり、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が開放される一方、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4が閉鎖される。
【0044】
また運転制御部22aは、圧縮機18による水素ガスの圧縮を行いながら水素ガスを蓄圧器12a,12bに供給する充填運転を行う制御を実行する。充填運転には、一部の蓄圧器12a,12bにのみ水素ガスを供給する場合と、全ての蓄圧器12a,12bに水素ガスを供給する場合とがある。一部の蓄圧器12a,12bにのみ水素ガスを供給する場合には、一方の第3開閉弁V3が開放される一方、他方の第3開閉弁V3が閉鎖される。全ての蓄圧器12a,12bに水素ガスを供給する場合には、全ての第3開閉弁V3が開放される。以下の第3実施形態においても同様である。
【0045】
充填運転には、第1圧縮充填運転と第2圧縮充填運転とが含まれている。第1圧縮充填運転は、流入端16eに接続されたガス供給源25から供給された水素ガスを圧縮機18によって圧縮して流出端16hから流出させる運転であり、第1開閉弁V1が開放される一方、第2開閉弁V2及び第4開閉弁V4が閉鎖される。第2圧縮充填運転は、貯留部20に溜められた水素ガスを圧縮機18によって圧縮して流出端16hから流出させる運転であり、第4開閉弁V4が開放される一方、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が閉鎖される。
【0046】
切換制御部22bは、第1圧縮充填運転から第2圧縮充填運転に切り換える指令を運転制御部22aに与える。具体的には、切換制御部22bは、第1センサ31による検出値と第2センサ32による検出値を検出しており、第2センサ32による検出値が予め定められた所定値以上になると第1圧縮充填運転から第2圧縮充填運転に切り換えるための指令を運転制御部22aに与える。この所定値は、例えば25〜45MPa程度(
図2の例では、45MPa)に設定されている。運転制御部22aは、切換制御部22bからの指令を受けると第1圧縮充填運転から第2圧縮充填運転に切り換える制御を実行する。
【0047】
また、切換制御部22bは、第2圧縮充填運転において、貯留部20内のガス圧力に対する流出端16hでのガス圧力の比が予め設定された値以上になると、第2圧縮充填運転を中断して貯留運転を行うための切換指令を運転制御部22aに与える。具体的には、第1センサ31による検出値P1に対する第2センサ32の検出値P2の比P2/P1が、圧縮比限界Pr以上の値になると切換指令を出す。この圧縮比限界Prは、圧縮機18を設計する際に設定された圧縮比の限界値であって、目標圧力(例えば90MPa程度)まで圧縮する際に許容される圧縮比に基づいて設定されている。したがって、貯留部20のガス圧力の水素ガスを圧縮機18によって圧縮比限界Pr内で目標圧力まで圧縮できるときには、第2圧縮充填運転が行われる。一方、圧縮機18で圧縮されたとしても、圧縮比限界Pr未満の圧縮比で目標圧力に到達できない程度に貯留部20のガス圧力が低下したときには、切換制御部22bが切換指令を出力する。運転制御部22aは、切換指令を受けると、第2圧縮充填運転を中断して、ガス供給源25から供給された水素ガスを貯留部20に溜める貯留運転を行う。
【0048】
ここで、第1実施形態に係るガス充填装置10の動作制御について説明する。ガス充填装置10が以下のように動作することにより、蓄圧器12a,12bにガスを充填するためのガス充填方法が実施される。
【0049】
図2に示すように、ガス充填方法には、貯留運転を行うステップ(ステップST1,ST7)と、第1圧縮充填運転を行うステップ(ステップST2)と、第2圧縮充填運転を行うステップ(ステップST4)とが含まれる。貯留運転では、ガス充填装置10による蓄圧器12a,12bへの水素ガスを供給する動作の開始前に貯留部20へ水素ガスを供給する開始前貯留運転(ST1)と、蓄圧器12a,12bへの水素ガスの供給開始後において、水素ガスの供給を一時中断して貯留部20へ水素ガスを供給する開始後貯留運転とを含む。
【0050】
ステップST1の開始前貯留運転では、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が開放される一方、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4が閉鎖され、圧縮機18が駆動される。そして、第1流路16aの流入端16eに接続されたガス供給源25からガス流通路16に導入された水素ガスは、第1流路16aから圧縮機18に吸入され、圧縮機18で圧縮されて昇圧される。圧縮機18で圧縮された水素ガスは、第2流路16bを通して貯留部20に導入される。第1センサ31によって検出された圧力(検出値P1)が予め定められた所定圧力(例えば、45MPa)に達すると、開始前貯留運転を終了する。
【0051】
ディスペンサから供給指令を受けると蓄圧器12a,12bに水素ガスを供給するための第1圧縮充填運転を開始する(ステップST2)。第1圧縮充填運転では、供給指令に応じて、一方の蓄圧器12a,12bに水素ガスを供給する場合と、両蓄圧器12a,12bに水素ガスを供給する場合とがある。ここでは、第1蓄圧器12aに水素ガスを供給する場合について説明する。この場合の第1圧縮充填運転では、第1蓄圧器12aが接続された第1分岐流路16fに設けられた第3開閉弁V3が開放される一方、第2蓄圧器12bが接続された第2分岐流路16gに設けられた第3開閉弁V3が閉鎖される。
【0052】
第1圧縮充填運転では、圧縮機18が駆動される。また、第1圧縮充填運転では、第1開閉弁V1が開放される一方、第4開閉弁V4及び第2開閉弁V2が閉鎖される。したがって、ガス供給源25からガス流通路16に導入された水素ガスは、第1流路16aを通して圧縮機18に吸入される。圧縮機18で圧縮された水素ガスは、第3流路16cの流出端16hから流出して第1蓄圧器12aに充填される。
【0053】
第1圧縮充填運転においては、第2センサ32によって流出端16hの圧力が監視されている(ステップST3)。そして、流出端16hにおけるガス圧力(第2センサ32の検出値P2)が予め設定された所定値(図例では、45MPa)に達したか否かが判断される。流出端16hにおけるガス圧力が所定値に達すると、第2圧縮充填運転に移行する(ステップST4)。なお、この所定値としては、目標圧力を圧縮比限界Prで除した値である下限値Pmin以上の値が採用されていることが好ましい。
【0054】
第2圧縮充填運転でも、第1蓄圧器12aが接続された第1分岐流路16fに設けられた第3開閉弁V3が開放されている一方、第2蓄圧器12bが接続された第2分岐流路16gに設けられた第3開閉弁V3が閉鎖されている。また第2圧縮充填運転では、第4開閉弁V4が開放される一方、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が閉鎖される。したがって、貯留部20から第4流路16d及び第1流路16aを通して圧縮機18に吸入された水素ガスは、圧縮機18で圧縮される。この水素ガスは、圧縮機18から吐出されて第3流路16cを通して第1蓄圧器12aに充填される。
【0055】
第2圧縮充填運転においては、第1センサ31により、貯留部20内のガス圧力が検出されるとともに、第2センサ32により、流出端16hにおけるガス圧力が検出されている。そして、第1センサ31の検出値P1(圧縮機18の吸入側圧力に相当する圧力)に対する第2センサ32の検出値P2(圧縮機18の吐出側圧力に相当する圧力)の比P2/P1が、貯留開始閾値(本実施形態では、圧縮比限界Pr)よりも低いか否かが判断されており(ステップST5)、貯留開始閾値未満であれば、ステップST6に移る。
【0056】
ステップST6において、第2センサ32によって流出端16hの圧力が監視されており、第2センサ32の検出値P2が目標圧力に相当する所定値(図例では、90MPa)になると、第2圧縮充填運転を終了する。
【0057】
前記のステップST5において、第1センサ31の検出値P1に対する第2センサ32の検出値P2の比P2/P1が貯留開始閾値以上になると、ステップST7に移り、第2圧縮充填運転を中断して、開始後貯留運転を行う。この開始後貯留運転は、ステップST1の開始前貯留運転と同様の運転であり、第1流路16aの流入端16eに接続されたガス供給源25から導入された水素ガスを圧縮機18で圧縮して貯留部20に貯留する運転である。この開始後貯留運転において、貯留部20内の圧力が検出されており、第1センサ31の検出値P1が予め設定された所定値である下限値Pmin(図例では、45MPa)に達したか否かが判断される(ステップST8)。そして、検出値P1が下限値Pmin以上の値に達すると、開始後貯留運転を終了して、第2圧縮充填運転を再開する(ステップST4)。このようにして、流出端16hにおけるガス圧力が目標圧力になるまで、第2圧縮充填運転が行われる。
【0058】
以上説明したように、第1実施形態では、第1圧縮充填運転が行われた後に第2圧縮充填運転に切り換えられる。つまり、蓄圧器12a,12bへのガスの供給を行うにあたり、ガス供給源25からのガス供給と貯留部20からのガス供給とを同時に行うことがない。このため、ガス充填装置10による蓄圧器12a,12bへのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。また、流出端16hでのガス圧力が所定圧力に達するまで第1圧縮充填運転を行い、その後、第2圧縮充填運転に切り換えるため、圧縮機18における昇圧幅を抑えることができる。このため、圧縮機18の小型化を図ることができる。すなわち、圧縮機18の圧縮室の段数を抑えることができるため、より小型の圧縮機を採用することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図3に示すように、ガス充填装置10は、ガス流通路16を備えており、ガス流通路16は、第1流路16aと、第2流路16bと、第3流路16cと、第6流路16jと、第7流路16kと、を有している。
【0061】
第1流路16aの上流端には、ガス供給源25を接続可能な流入端16eが設けられている。第1流路16aの下流端は圧縮機18の吸入部に接続されている。第1流路16aには、逆止弁26及び流量調整弁27が設けられている。流量調整弁27は、開度調整可能な電動弁によって構成されている。なお、第2実施形態では、第1開閉弁V1が省略されている。また、コントローラ22では、切換制御部22bが省略されている。
【0062】
第7流路16kの一端部は、貯留部20の流出側部に接続されており、第7流路16kの他端部は、第1流路16aにおける流入端16e(又は逆止弁26)と圧縮機18の吸入部との間の部位に接続されている。したがって、貯留部20から流出した水素ガスは、第7流路16kを流れた後、第1流路16aを通って圧縮機18に導入される。第7流路16kには、第7開閉弁V7が設けられている。
【0063】
第6流路16jの一端部は、第1流路16aにおける流入端16eに接続されており、第6流路16jの他端部は、貯留部20の流入側部に接続されている。
【0064】
第6流路16jには、圧縮機18よりも低圧の吐出圧で水素ガスを吐出する他の圧縮機35が設けられている。以下、本実施形態では、圧縮機18を「第1圧縮機18」といい、圧縮機35を「第2圧縮機35」という。第1圧縮機18および第2圧縮機35はガス流通路16の流入端16eと貯留部20とを結ぶ経路(すなわち、第1流路16a、第2流路16b及び第6流路16j)において互いに並列に配列される。
【0065】
第6流路16jにおける第2圧縮機35よりも上流側には絞り弁V6が設けられている。絞り弁V6は、ガス供給源25から供給される水素ガスが所定値以上の高圧である場合に、第2圧縮機35に吸入される前に減圧するための弁である。
【0066】
第2流路16bの一端部は、第1圧縮機18の吐出部に接続され、第2流路16bの他端部は、第6流路16jにおける第2圧縮機35の下流側の部位に接続されている。なお、第2流路16bの他端部は、貯留部20に直接接続されていてもよい。
【0067】
第3流路16cの一端部は、第2流路16bにおける第2開閉弁V2よりも上流側の部位に接続されている。第3流路16cの他端部には、蓄圧器12aを接続可能な流出端16hが設けられている。なお、
図3には、1つの蓄圧器12aが接続された構成を示しているが、第1実施形態と同様、複数の蓄圧器が接続された構成としてもよい。この場合、第3流路16cは、その途中で複数の流路に分岐した構成となる。
【0068】
貯留部20は、複数の容器を有している。したがって、貯留部20に導入された水素ガスは、順次各容器に貯留されることになる。
【0069】
運転制御部22aは、貯留部20に水素ガスを貯留する貯留運転及び蓄圧器12aへ水素ガスを充填する充填運転を行う制御を実行可能である。
【0070】
貯留運転では、ガス供給源25から導入された水素ガスを第1圧縮機18及び第2圧縮機35のそれぞれが圧縮しつつ貯留部20に貯留する。特に、第2圧縮機35は、専ら貯留部20に供給されるガスを圧縮するために使用される。ガス供給源25から供給される水素ガスの圧力は、例えば20〜40MPaである。
【0071】
充填運転は、貯留部20の水素ガスを蓄圧器12aとの間の圧力差によって蓄圧器12aに充填する運転と、貯留部20に貯留されている水素ガスを第1圧縮機18で圧縮して蓄圧器12aに充填する運転とを含む。以下、この2つの運転を区別するため、貯留部20と蓄圧器12aとの間の圧力差を利用した充填運転を「差圧充填運転」と呼び、第1圧縮機18による水素ガスの圧縮を利用した充填運転を「圧縮充填運転」と呼ぶ。
【0072】
差圧充填運転及び圧縮充填運転では、何れにおいても、第7開閉弁V7及び第3開閉弁V3が開放される一方、第2開閉弁V2が閉鎖される。すなわち、差圧充填運転及び圧縮充填運転の何れでも、貯留部20から流出した水素ガスが第1圧縮機18を通過するが、差圧充填運転においては、第1圧縮機18において水素ガスが実質的に圧縮されることはなく、圧縮充填運転においては、第1圧縮機18において圧縮される。なお、差圧充填運転中も第1圧縮機18は駆動されているが、差圧充填運転においては、吸入側の圧力が吐出側の圧力よりも高い状態での運転となるため、水素ガスが実質的に圧縮されない状態での運転となる。
【0073】
ここで、第2実施形態に係るガス充填装置10の動作制御について説明する。ガス充填装置10が以下のように動作することにより、蓄圧器12aにガスを充填するためのガス充填方法が実施される。
【0074】
図4に示すように、ガス充填方法は
図2のステップST2〜ST4を除き
図2と同様である。また、
図5に示すように、第2実施形態では補給運転を行うステップ(ST24)が含まれる。
【0075】
まず、開始前貯留運転では、ガス供給源25から第6流路16jに導入された水素ガスが絞り弁V6にて圧力を調整されつつ第2圧縮機35に吸込まれ、圧縮されて貯留部20に導入される。同時に、第1流路16aに導入された水素ガスが第1圧縮機18で圧縮され、第2流路16bを通して貯留部20に導入される。なお、第3開閉弁V3及び第7開閉弁V7は閉鎖されている。貯留運転中は、第1センサ31によって貯留部20内のガス圧力が検出されている。第1センサ31によって検出された圧力が予め定められた第1の所定圧力(例えば、45MPa)に達すると、開始前貯留運転を終了する。
【0076】
その後、ディスペンサからの供給指令を受けると、差圧充填運転を開始する(ステップST21)。差圧充填運転では、第3開閉弁V3及び第7開閉弁V7が開放される一方、第2開閉弁V2が閉鎖される。第1圧縮機18では、シリンダ(図示省略)の吸入弁及び吐出弁が開放された状態となっており、第1流路16a内の水素ガスが実質的に圧縮されることなく蓄圧器12aに充填される。差圧充填運転においては、流量調整弁27の開度が調整されている。なお、実際には、差圧充填運転においても、第1圧縮機18は所定の回転数にて駆動している。
【0077】
ところで、上述の差圧充填運転に並行して、ガス供給源25から供給された水素ガスを第2圧縮機35において昇圧して貯留部20へ充填する補給運転が行われる(
図5:ステップST24)。後述の第1圧縮機18による圧縮充填運転においても補給運転が継続される。補給運転では、第1センサ31によって検出された圧力P1が予め定められた所定圧力(例えば、45MPa)に達したか否かが判定されており(ステップST12)、所定圧力に達した場合には補給運転を終了する。貯留部20内のガス圧力が低下した場合には、再び補給運転が行われる。
【0078】
ガス充填装置10では、水素ガスを蓄圧器12aに充填する運転に並行して補給運転を行うことにより、貯留部20の容量が小さい場合や、蓄圧器12aからの充填要求量が多い場合にも貯留部20内のガス量が急峻に低下してしまうことが抑制され、ガス充填装置10の連続運転時間を長くすることができる。
【0079】
第1圧縮機18の吸込側の圧力よりも吐出側の圧力が大きくなると、シリンダの吸込弁及び吐出弁が閉じるため、差圧充填運転から圧縮充填運転に移行する(ステップST22)。
【0080】
圧縮充填運転では、水素ガスが貯留部20から第7流路16kを通して第1圧縮機18に吸入されて圧縮される。第1圧縮機18から吐出された水素ガスは第3流路16cを通して蓄圧器12aに充填される。
【0081】
圧縮充填運転においては、第1センサ31により、貯留部20内のガス圧力が検出されるとともに、第2センサ32により、流出端16hにおけるガス圧力が検出されており、第1センサ31の検出値P1に対する第2センサ32の検出値P2の比P2/P1が、貯留開始閾値(本実施形態では圧縮比限界Pr)よりも低いか否かが判断される(ステップST5)。比P2/P1が貯留開始閾値未満であれば、ステップST6に移る。
【0082】
ステップST6において、第2センサ32の検出値P2が目標圧力に相当する所定値(図例では、90MPa)になると、圧縮充填運転を終了する。
【0083】
一方、前記のステップST5において、比P2/P1が貯留開始閾値以上になると、ステップST7に移り、圧縮充填運転を中断して、開始後貯留運転を行う。この開始後貯留運転は、ステップST1の開始前貯留運転と同様の運転であり、供給源25から導入された水素ガスが第2圧縮機35及び第1圧縮機18のそれぞれにて圧縮され、貯留部20へ供給される。このように、第2圧縮機35による補給運転のみでは貯留部20への水素ガスの導入量が不足してしまう場合に、第1圧縮機18からも水素ガスが導入される。そして、第1センサ31の検出値P1が予め設定された所定値である下限値Pmin(図例では、45MPa)に達したか否かが判断される(ステップST8)。検出値P1が下限値Pmin以上の値に達すると、開始後貯留運転を終了して、圧縮充填運転を再開する(ステップST4)。このようにして、流出端16hにおけるガス圧力が目標圧力になるまで、圧縮充填運転が行われる。
【0084】
以上説明したように、第2実施形態では、貯留運転において第2圧縮機35及び第1圧縮機18により貯留部20への水素ガスの供給が行われることにより、第2圧縮機35のみにて水素ガスを供給する場合に比べて貯留運転の時間を短縮することができる。特に、第1圧縮機18として、吐出流量が第2圧縮機35よりも大きなものが利用されることにより、貯留運転の時間をより短縮することができる。また、オーバーホール等の点検時に貯留部20の容器を空の状態としても、点検後に速やかに貯留部20に水素ガスを充填することができる。
【0085】
第2実施形態では、蓄圧器12aへのガスの供給を行うにあたり、圧力差を利用したガス供給と第1圧縮機18による圧縮を行うガス供給を同時に行うことがないため、ガス充填装置10による蓄圧器12aへのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。また、ガス充填装置10では、圧縮充填運転のみを行う場合に比べて第1圧縮機18における昇圧幅を抑えることができ、第1圧縮機18の小型化を図ることができる。
【0086】
図6は第2実施形態に係るガス充填装置10の他の動作例を示す図である。蓄圧器12aには、水素ガスの供給に関し、充填時間と目標圧力(又は目標流量)との関係が定められている場合がある(例えば、蓄圧器12aが燃料電池車のタンクである場合)。蓄圧器12aに水素ガスを充填する際に、差圧充填運転から圧縮充填運転への移行時において、貯留部20から蓄圧器12aへの水素ガスの供給量が低下することにより、目標圧力(又は目標流量)を下回ってしまう可能性がある。
【0087】
これに対し、ガス充填装置10では、ステップST21の差圧充填運転時に第1センサ31及び第2センサ32にて第1圧縮機18の吸込側及び吐出側の圧力が繰り返し検出されており、第1センサ31による検出値から第2圧力センサによる検出値を差し引いた圧力差ΔPが、予め定められた所定値(図例では、5MPa)以下になると(ステップST23)、第1圧縮機18の回転数を上昇させる制御を行う。第1圧縮機18の回転数を上げることにより、第1圧縮機18から吐出される水素ガスの圧力(又は流量)が僅かに増大する。その結果、差圧充填運転から圧縮充填運転への移行時に、蓄圧器12aへの水素ガスの供給圧(又は供給量)が目標圧力(又は目標流量)を下回ってしまうことが防止される。そして、第1センサ31の検出値よりも第2センサ32の検出値が大きくなると、第1圧縮機18の吐出弁及び吸込弁が閉じた状態にて水素ガスの圧縮が行われる(ステップST23)。なお、第1圧縮機18の回転数を上昇させる上記制御は、圧縮充填運転の一部と捉えることもでき、差圧充填運転の一部と捉えることもできる。
【0088】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態を示す図である。第3実施形態では、貯留部20が、第1タンク部20aと、第1タンク部20aよりも高圧のガスを貯留する第2タンク部20bとを有する構成となっている。第3実施形態では、第2タンク部20bからの差圧充填運転のみにより蓄圧器12a,12bへの水素ガスの充填が行われる。ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0089】
第1流路16aには、流量調整弁27が設けられている。流量調整弁27は、開度調整可能な電動弁によって構成されている。
【0090】
第1タンク部20aは、第2流路16bの端部に接続されるとともに、第4流路16dの端部にも接続されている。第2タンク部20bは、一端部が第2流路16bに接続された第8流路16lの端部に接続されるとともに、一端部が第4流路16dに接続された第9流路16mの端部に接続されている。第8流路16lには、第8開閉弁V8が設けられ、第9流路16mには、第9開閉弁V9が設けられている。
【0091】
第1タンク部20aには、第1タンク部20a内のガス圧力を検出する第1センサ31が設けられており、第2タンク部20bには、第2タンク部20b内のガス圧力を検出する第3センサ33(第1圧力検出器)が設けられている。第1タンク部20aには、例えば、45MPa程度の水素ガスが貯留され、第2タンク部20bには、例えば90MPa程度の水素ガスが貯留される。
【0092】
第3実施形態での貯留運転には、第1貯留運転と第2貯留運転とが含まれている。第1貯留運転は、ガス供給源25から導入された水素ガスを圧縮機18で圧縮しつつ貯留部20の第1タンク部20aに貯留する運転であり、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が開放される一方、第3開閉弁V3、第4開閉弁V4、第8開閉弁V8及び第9開閉弁V9が閉鎖される。第2貯留運転は、第1タンク部20aに貯留された水素ガスを圧縮機18に送り該圧縮機18で圧縮して、貯留部20の第2タンク部20bに貯留する運転である。第2貯留運転では、第4開閉弁V4及び第8開閉弁V8が開放される一方、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第9開閉弁V9が閉鎖される。
【0093】
差圧充填運転は、圧縮機18による水素ガスの圧縮を行うことなく、貯留部20の第2タンク部20bに貯留されている水素ガスを蓄圧器12a,12bに供給する運転である。
【0094】
差圧充填運転では、第9開閉弁V9および第3開閉弁V3が開放される一方、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第4開閉弁V4及び第8開閉弁V8が閉鎖される。
【0095】
ここで、第3実施形態に係るガス充填装置10の動作制御について
図8を参照しつつ説明する。ガス充填装置10が以下のように動作することにより、蓄圧器12a,12bにガスを充填するためのガス充填方法が実施される。
【0096】
まず、第1貯留運転(ステップST31)では、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が開放される一方、第3開閉弁V3、第4開閉弁V4、第8開閉弁V8及び第9開閉弁V9が閉鎖され、圧縮機18が駆動される。そして、水素ガスはガス供給源25から第1流路16aを通って圧縮機18にて圧縮され、第2流路16bを通して第1タンク部20aに導入される。
【0097】
第1貯留運転中は、第1センサ31によって第1タンク部20a内のガス圧力が監視されている(ステップST32)。第1センサ31によって検出された圧力が予め定められた第1の所定圧力(例えば、45MPa)に達すると、第2貯留運転に移行する(ステップST33)。
【0098】
第2貯留運転では、第4開閉弁V4及び第8開閉弁V8が開放される一方、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第9開閉弁V9が閉鎖される。圧縮機18が駆動されることにより、第1タンク部20aに貯留された水素ガスが第4流路16dから第1流路16aに流れて圧縮機18に吸入される。水素ガスは圧縮機18にて昇圧され、第8流路を流れて第2タンク部20bに貯留される。
【0099】
第2貯留運転中は、第3センサ33によって第2タンク部20b内のガス圧力が監視されている(ステップST34)。第3センサ33によって検出された圧力が予め定められた第2の所定圧力(例えば、90MPa)に達すると、第2貯留運転を終了する。第2貯留運転が終了すると、差圧充填運転(ステップST35)に移行する。
【0100】
差圧充填運転では、第2タンク部20bから流出した水素ガスは、流量調整弁27により流量が調整されつつ第9流路16m、圧縮機18及び第3流路16cへと流れ、蓄圧器12a,12bに充填される。ただし、圧縮機18では、吸込弁及び吐出弁が開放されており、水素ガスの圧縮は行われない。
【0101】
差圧充填運転では、第2センサ32によって流出端16hの圧力P2が監視されており(ステップST36)、第2センサ32の検出値が所定値(図例では、90MPa)になると、差圧充填運転を終了する。
【0102】
以上説明したように、第3実施形態では、差圧充填運転のみが行われる。つまり、蓄圧器12a,12bへのガスの供給を行うにあたり、圧力差を利用したガス供給と圧縮機18による圧縮を行うガス供給を同時に行うことがない。このため、第1及び第2実施形態と同様にガス充填装置10による蓄圧器12a,12bへのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。また、貯留部20が圧力の異なるタンク部20a,20bを有することにより、1つのタンク部へ水素ガスを貯留する際に圧縮機18に必要な昇圧幅を抑えることができる。このため、貯留部20内のガス圧力を直接所定圧力(第2の所定圧力に相当する圧力)まで昇圧させる構成に比べて、圧縮機18の圧縮室の段数を抑えることができる。
【0103】
第3実施形態では、差圧充填運転を行っている途上において、第2タンク部20bのガス圧力が蓄圧器12a,12bにおけるガス圧力よりも下回ろうとした場合、第2貯留運転(ステップST33)に戻り、第2タンク部20bに水素ガスが再度貯留されてもよい。また、第2貯留運転を行っている途上において、圧縮機18の圧縮比が圧縮比限界Prを超えようとした場合、第1貯留運転(ステップST31)に戻り、第1タンク部20aに水素ガスが再度貯留されてもよい。
【0104】
図9は第3実施形態の他の例を示す図である。ガス充填装置10は、第5開閉弁V5が設けられた第5流路16iを備えていてもよい。第5流路16iは、貯留部20の第2タンク部20bと第3流路16cとを接続している。一方で、第9流路16mは省略されている。
【0105】
前記第3実施形態では、差圧充填運転において、第9開閉弁V9が開放される制御が行われたが、この形態では、差圧充填運転において、第5開閉弁V5が開放されて水素ガスが蓄圧器12a,12bへ供給される。流量調整弁27は、圧縮機18の吸入側ではなく、第5流路16iまたは第5流路16iよりも下流側(すなわち、蓄圧器12a,12b側)に設けられる。
【0106】
図9に示す場合においても、差圧充填運転のみが行われることにより、ガス充填装置10による蓄圧器12a,12bへのガス充填制御が煩雑となってしまうことを抑制することができる。なお、第3流路16cにおける第2流路16b及び第8流路16lと、第5流路16iとの間に開閉弁が設けられる場合には、第2タンク部20bから蓄圧器12a,12bへの水素ガスの充填に並行してガス供給源25から圧縮機18を介して第1タンク部20aへの水素ガスの貯留、すなわち、第1貯留運転が行われてもよい。
【0107】
本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、ディスペンサを介して車両に水素ガスを供給するための蓄圧器12a,12bに接続可能な構成としたが、これに限られるものでない。燃料電池車等のタンク搭載装置内に設けられたタンクが蓄圧器として機能するものであってもよい。つまり、ガス流通路16にディスペンサが設けられており、ガス流通路16の流出端16hが、タンク搭載装置内に設けられたタンクに繋がる流路に接続可能な構成であってもよい。
【0108】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、供給源25から送られた水素ガスが第1圧縮機18にて圧縮され、蓄圧器12aに充填される第1圧縮充填運転と、貯留部20から送られた水素ガスが第1圧縮機18にて圧縮されて蓄圧器12aに充填される第2圧縮充填運転とが行われてもよい。この場合、第1圧縮充填運転の後に、第2圧縮充填運転が行われる。第2実施形態では、貯留部20が大容量の1つの容器のみにて構成されてもよい。
【0109】
第3実施形態では、差圧充填運転の途上において、貯留部20の第2タンク部20b内のガス圧が大きく低下した場合に、圧縮機18によって水素ガスを圧縮して蓄圧器12a,12bに充填してもよい。すなわち、貯留部20に溜められたガスを圧力差によって流出端16hから蓄圧器12a,12bへと流出させる差圧充填運転が行われた後に、貯留部20に溜められたガスを圧縮機18によって圧縮して流出端16hから流出させる圧縮充填運転が行われてもよい。
【0110】
前記第1〜第3実施形態では、第1センサ31が貯留部20に設けられる構成としたが、これに限られない。例えば、第1センサ31は、貯留部20に近接した位置で第2流路16b又は第4流路16dに設けられていてもよい。
【0111】
前記第1〜第3実施形態では、第2センサ32が流出端16hにおけるガス圧力を検出する構成としたが、これに限られない。例えば、第2センサ32が蓄圧器12a,12b内のガス圧力を検出する構成としてもよい。
【0112】
第1実施形態では、圧縮比限界よりも小さい値を貯留開始閾値として設定し、この閾値に基づいて、第2圧縮充填運転が開始後貯留運転に切り替えられてもよい。また、目標圧力を圧縮比限界Prで除した値である下限値Pmin以上の値を貯留開始閾値として設定し、第1センサ31の圧力P1に基づき開始後貯留運転を行ってもよい。第2実施形態における圧縮充填運転と開始後貯留運転との切り替えにおいても同様である。第3実施形態では、1つもしくは複数のタンク部において、水素ガスを第1の所定圧力まで圧縮機18で圧縮して貯留した後、この水素ガスを圧縮機18にて第2の所定の圧力まで圧縮して再度貯留してもよい。