特許第5886841号(P5886841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886841
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】フッ素化オレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/357 20060101AFI20160303BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20160303BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160303BHJP
【FI】
   C07C17/357
   C07C21/18
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-516706(P2013-516706)
(86)(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公表番号】特表2013-529640(P2013-529640A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】US2011041323
(87)【国際公開番号】WO2011163285
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年6月13日
(31)【優先権主張番号】12/822,365
(32)【優先日】2010年6月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−115234(JP,A)
【文献】 特開昭63−088145(JP,A)
【文献】 特開2009−221202(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/030440(WO,A1)
【文献】 米国特許第05087777(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00−21/22
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
CHXCHZCF (I)
の少なくとも1種類の化合物を式(II):
CHX=CZCF (II)
(上式中、X及びZは、それぞれ独立してH又はFであり、但しXとZは同一ではない)
の少なくとも1種類の化合物に転化させることを含み、
転化工程が、式(I)の化合物を、1種類以上の金属オキシフッ化物触媒、金属フッ化物又は金属オキシフッ化物担体上の第VIII族貴金属、及びこれらの組合せからなる群から選択される脱水素化触媒又は複数の脱水素化触媒の組合せに曝露することを含む、フッ素化有機化合物の製造方法。
【請求項2】
1種類以上の第VIII族貴金属が、Pt、Rh、Ru、Pd、Ir、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属フッ化物及び金属オキシフッ化物が、Ni、Co、Mg、Zr、Al、Ga、Cr、La、Y、Fe、及びこれらの組合せのフッ化物及びオキシフッ化物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属フッ化物及び金属オキシフッ化物触媒が、Ni、Co、Mg、及びこれらの組合せのフッ化物及びオキシフッ化物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
転化工程が、式(I)の化合物を、O、CO、NO、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種類以上の酸化剤に曝露することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年6月24日出願の米国出願12/822,365(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)に対する35USC§119(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
[0001]本発明は、フッ素化有機化合物の新規な製造方法、特にフッ素化オレフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]ヒドロフルオロカーボン(HFC)、特にテトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)及び1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)など)のようなヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、有効な冷媒、消火剤、熱伝達媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体状誘電体、滅菌剤キャリア、重合媒体、粒状物除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤、及び動力サイクル作動流体であることが開示されている。クロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)(いずれも地球オゾン層を損傷する可能性がある)とは異なり、HFCは塩素を含まず、したがってオゾン層を脅威にさらさない。
【0004】
[0003]フッ素化アルカンからフッ素化オレフィンを製造するための幾つかの方法が公知である。例えば、米国特許7,560,602においては、CFCF=CHF(HFO−1225ye)及びHFO−1234yfを、1種類以上のフッ素化金属酸化物、金属フッ化物、炭素担持遷移金属、及びこれらの組合せからなる群から選択される脱フッ化水素化触媒上で、それぞれCFCHFCHF及びCFCHFCHFを気相脱フッ化水素化することによって製造することができることが開示されている。米国公開2009/0099395においては、ジルコニウム化合物担持触媒を用いる接触プロセスによるCFCHCHFの気相脱フッ化水素化によってHFO−1234zeを製造することができることが開示されている。米国公開2009/0043138においては、HFO−1234ze及びCFCH=CF(HF−1225zc)を、マグネシウム、亜鉛、及びマグネシウムと亜鉛の混合物の酸化物、フッ化物、及びオキシフッ化物を用いるCFCHCHF及びCFCHCFの脱フッ化水素化から製造することができることが開示されている。
【0005】
[0004]アルカンをアルケンへ脱水素化する方法は公知である。1つのかかる方法は、脱水素化触媒として混合金属酸化物を用いる。例えば、米国特許2,500,920においては、アルミナ担体上の酸化クロム触媒によってアルカンのアルケンへの脱水素化を触媒することができることが開示されている。同様に、米国特許6,239,325によって開示されているように、Mo−Sb−W又はCr−Sb−W、並びにV、Nb、K、Mg、Sn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を有する混合金属酸化物触媒によって、プロパンのプロペンへの酸化的脱水素化を促進することができる。
【0006】
[0005]しかしながら、本出願人らは、上記で言及した混合金属酸化物は、ヒドロフルオロカーボンと反応して金属酸化物が金属オキシフッ化物又は更には金属フッ化物に転化して触媒構造が崩壊するそれらの傾向のために、ヒドロフルオロカーボンの脱水素化において用いるのには好適ではないことを認識するに至った。
【0007】
[0006]本出願人らはまた、上述の方法に関連して大きな欠点が存在し、かかる方法は、特定のフッ素化アルカン及びアルケンからHFO−1234yf及びHFO−1234zeのようなHFOを製造するためには好適ではないことも認識するに至った。例えば、本出願人らは、これらの触媒の存在下で2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HFO−254eb)及び1,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HFO−254fb)を脱フッ化水素化することによって、副生成物の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1234zf)が形成されることを見出した。HFO−1234zfは可燃性の気体であるので、かかる化合物をHFO−1234yf又はHFO−1234zeのような所望の生成物と混合することは好ましくない。本出願人らはまた、HFO−1234zfはHFO−1234yfと近い沸点を有し、特定の条件下で共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成することも認識するに至った。したがって、HFO−1234yfからHFO−1234zfを分離することは困難であり、HFO−1234yfへの精製中に収率損失を引き起こす可能性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許7,560,602
【特許文献2】米国公開2009/0099395
【特許文献3】米国公開2009/0043138
【特許文献4】米国特許2,500,920
【特許文献5】米国特許6,239,325
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0007]したがって、本出願人らは、フッ素化アルカンからHFOを製造する方法、特にHFC−254eb及びHFC−254fbからHFO−1234yf及びHFO−1234zeを製造し、HFO−1234zfの形成を大きく制限する方法に対する必要性が存在することを認識するに至った。本発明はとりわけこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0008]本発明の一形態において、本出願人らは、好ましくは式(I):
CHXCHZCF (I)
の少なくとも1種類の化合物を、式(II):
CHX=CZCF
(上式中、X及びZは、独立してH又はFであり、但しXとZは同一ではない)
の少なくとも1種類の化合物に転化させることを含む、一般にHFO、特定の態様においてはテトラフルオロプロペンなどのフッ素化有機化合物を製造する方法を開発した。
【0011】
[0009]幾つかの態様においては、本発明の転化工程は、式(I)の少なくとも1種類の化合物を、好ましくは脱水素化又は酸化的脱水素化によって接触反応させることを含む。接触反応工程は、好ましくは、式(I)の少なくとも1種類の化合物を、好ましくは金属フッ化物又は金属オキシフッ化物担体上に担持されている1種類以上の第VIII族貴金属を含む脱水素化触媒又は複数の脱水素化触媒の組合せに曝露することを含む。幾つかの好ましい態様においては、転化工程は、式(I)の少なくとも1種類の化合物を、好ましくはO、CO、NO、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種類以上の酸化剤に曝露することを更に含む。
【0012】
[0010]他の形態においては、本発明は、少なくとも1種類のペンタフルオロプロペンを含む反応流を、少なくとも1種類のペンタフルオロプロパン及び式(I)の化合物の混合物を含む生成物流に転化させ、式(I)の化合物の少なくとも一部を生成物流から分離し、生成物流から分離される式(I)の化合物を式(II)の少なくとも1種類の化合物に転化させることを含むフッ素化有機化合物の製造方法に関する。好ましい態様においては、この方法は、式(I)の化合物の3,3,3−トリフルオロプロペンへの転化を実質的に最小にし、好ましくは実質的に排除することを更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0011]本発明の一形態は、脱水素化又は酸化的脱水素化によって、隣接する炭素上に少なくとも2つの水素を有するヒドロフルオロカーボンからHFOを製造する方法に関する。1つの好ましい形態においては、本発明は、接触脱水素化又は接触酸化的脱水素化によってテトラフルオロプロパンをテトラフルオロプロペンへ転化させることに関する。本発明方法は、好ましくは、式(I)の化合物をHFO、好ましくはC−HFO、より好ましくは式(II)の化合物に転化させることを含む。非常に好ましい態様においては、本発明は、HFC−254eb及び/又はHFC−254fbをHFO−1234yf及び/又はHFO−1234zeに転化させることを含む。
【0014】
式(I)の化合物の転化:
[0012]本発明の1つの有利な面は、比較的高い転化率及び高い選択率の反応を達成する能力をもって、式(I)の化合物のようなヒドロフルオロカーボンを式(II)の化合物のようなHFOに転化させることができることである。本発明の好ましい転化工程は、式(I)の化合物の転化、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約30%、更により好ましくは少なくとも約50%、更により好ましくは約90%の転化を達成するのに有効な条件下で行う。また、転化工程によって、式(II)の化合物への少なくとも約50%の選択率、より好ましくは少なくとも約70%の選択率、更により好ましくは少なくとも約90%の選択率を有する反応生成物を達成することができる。幾つかの態様においては、少なくとも約95%のテトラフルオロプロペンへの選択率を達成することができる。
【0015】
[0013]転化工程は、液相中、又は気相中、或いは気相と液相の組合せの中で行うことができ、反応は、バッチ式、連続式、又はこれらの組合せで行うことができると意図される。好ましくは、幾つかの態様においては、反応は気相反応として行う。転化工程は単一又は多重管であってよい任意の好適な反応容器又は反応器内で行うことができると意図される。好ましい態様においては、転化工程は固定床反応器内で行う。
【0016】
[0014]気相反応は、例えば気体形態の式(I)の化合物、好ましくはHFC−254eb、HFC−254fb、及びこれらの混合物を、好適な反応容器又は反応器中に導入することによって行うことができる。好ましくは、容器は、ハステロイ、インコネル、モネル、及び/又はステンレススチールのような耐腐食性の材料で構成する。好ましい態様においては、容器は、触媒、好ましくは脱水素化又は酸化的脱水素化触媒を含み、反応混合物を所望の反応温度に加熱するのに好適な手段が取り付けられている。
【0017】
[0015]好ましい態様においては、式(I)の少なくとも1種類の化合物は、当業者に容易に明らかであるように、純粋形態、不純形態のいずれかで、又は窒素、アルゴンなどのような随意的な不活性ガス希釈剤と一緒に反応器中に導入する。好ましくは、式(I)の少なくとも1種類の化合物は、反応器に導入する前に予め気化するか又は予め加熱する。或いは、式(I)の化合物は反応器の内部で気化させることができる。
【0018】
接触脱水素化:
[0016]本発明の一形態においては、転化工程は、式(I)の少なくとも1種類の化合物を、脱水素化触媒又は複数の脱水素化触媒の組合せに曝露する脱水素化によって行う。好ましくは、式(I)の化合物を含む供給流を、場合によっては水素流と一緒に、脱水素化触媒を充填した脱水素化反応器中に、式(II)の少なくとも1種類の化合物を含む生成物流を生成させるのに有効な条件下で供給する。
【0019】
[0017]好ましくは、脱水素化触媒は、(1)金属フッ化物又は金属オキシフッ化物担体上に担持されている1種類以上の第VIII族貴金属、又は(2)1種類以上の金属オキシフッ化物触媒を含む。第VIII族貴金属の非限定的な例としては、当業者に明らかなように、Pt、Rh、Ru、Pd、Irなどが挙げられる、幾つかの態様においては、触媒は、約0.05〜約10重量%、好ましくは約0.1〜約5重量%、より好ましくは約0.2〜約1重量%の量の貴金属を含む。有用な金属フッ化物及び金属オキシフッ化物の非限定的な例としては、Ni、Co、Mg、Zr、Al、Ga、Cr、La、Y、Fe、及びこれらの混合物のフッ化物及びオキシフッ化物が挙げられる。幾つかの好ましい態様においては、本発明の金属フッ化物及び金属オキシフッ化物は、Mg、Ni、Co、及びこれらの組合せからなる群から選択される。本明細書に含まれる教示を考慮して、特定の態様の要求事項に応じて多くの他の触媒を用いることができる。これらの触媒の2以上、又はここで挙げていない他の触媒を組み合わせて用いることができる。
【0020】
[0018]理論に縛られることは望まないが、幾つかの金属フッ化物及び金属オキシフッ化物、特にMg、Ni、及びCoのフッ化物及びオキシフッ化物は、脱ハロゲン化水素化触媒としての制限された活性を有する脱水素化触媒として作用すると考えられる。したがって、本発明の触媒は、HFC−254eb及び/又はHFC−254fbのHFO−1234zfへの脱フッ化水素化を制限しながら、HFC−254eb及び/又はHFC−254fbをHFO−1234yf及び/又はHFO−1234zeに脱水素化するのに有用である。
【0021】
[0019]用いる触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の反応温度を用いることができると意図されるが、反応温度は約400℃〜約800℃であることが一般に好ましい。好ましい反応温度は、約500℃〜約700℃、より好ましくは約550℃〜約650℃の範囲であってよい。
【0022】
[0020]一般に、用いる具体的な触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の反応圧力を用いることができるとも意図される。反応圧力は、例えば大気圧以上、大気圧、又は真空下であってよく、幾つかの好ましい態様においては約0.1〜約5気圧である。
【0023】
[0021]同様に、用いる触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の反応物質と触媒との接触時間を用いることができると意図される。しかしながら、幾つかの好ましい態様においては、反応時間は約0.5秒間〜約120秒間の範囲であってよい。
【0024】
接触酸化的脱水素化:
[0022]本発明の一形態においては、転化工程は、式(I)の少なくとも1種類の化合物を酸化的脱水素化触媒又は複数の酸化的脱水素化触媒の組合せに曝露する酸化的脱水素化によって行う。好ましくは、式(I)の化合物を含む供給流を、純粋か又は希釈した酸化剤の流れと一緒に、酸化的脱水素化触媒を含む脱水素化反応器中に、式(II)の少なくとも1種類の化合物を含む生成物流を生成させるのに有効な条件下で供給する。
【0025】
[0023]好ましくは、酸化的脱水素化触媒は、金属フッ化物又は金属オキシフッ化物担体上に担持されている1種類以上の第VIII族貴金属、又は1種類以上の金属オキシフッ化物触媒を含む。かかる触媒の非限定的な例は上記に記載しており、当業者には明らかである。幾つかの態様においては、触媒は、約0.05〜約10重量%、好ましくは約0.1〜約5重量%、より好ましくは約0.2〜約1重量%の量の貴金属を含む。
【0026】
[0024]酸化剤としては、酸素原子を速やかに移動させる化合物、又はレドックス化学反応において電子を獲得する物質が挙げられる。酸化剤の非限定的な例としては、当業者に明らかなように、O、CO、及びNOなどが挙げられる。幾つかの態様においては、供給材料中の酸化剤の濃度は、約0.1〜20重量%、好ましくは約0.5〜10重量%、より好ましくは約1〜5重量%、更により好ましくは約2〜約3重量%の範囲である。
【0027】
[0025]本明細書に含まれる教示を考慮して、特定の態様の要求事項に応じて多くの他の触媒を用いることができると予測される。勿論、これらの触媒の2以上、又はここに挙げていない他の触媒を組み合わせて用いることができる。
【0028】
[0026]用いる触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて、接触酸化的脱水素化において広範囲の反応温度を用いることができると意図されるが、反応温度は約300℃〜約700℃であることが一般に好ましい。好ましい反応温度は、約400℃〜約600℃、より好ましくは約450℃〜約550℃の範囲であってよい。
【0029】
[0027]一般に、ここでも用いる具体的な触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の反応圧力を用いることができるとも意図される。反応圧力は、例えば大気圧以上、大気圧、又は真空下であってよく、幾つかの好ましい態様においては約0.1〜約5気圧である。
【0030】
[0028]同様に、用いる触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の反応物質と触媒との接触時間を用いることができると意図される。しかしながら、幾つかの好ましい態様においては、反応時間は約0.5秒間〜約120秒間の範囲であってよい。
【0031】
触媒の製造:
[0029]本発明の触媒の製造は当該技術において公知の任意の手段によって行うことができると意図されるが、一態様においては、触媒は好ましくは、(a)少なくとも1種類の金属塩、少なくとも1種類の溶媒、及び金属フッ化物又は金属オキシフッ化物を接触させてスラリーを形成し;(b)スラリーから溶媒を除去して溶媒を含まない粉末を形成し;(c)場合によっては粉末をか焼し;(d)粉末を担持触媒に変形し;そして(e)担持触媒を、Hを含む気体組成物と接触させて担持触媒を活性化する(ここで、活性化担持触媒は、約90〜約99.5重量%の金属フッ化物又は金属オキシフッ化物、及び約0.05〜約10重量%の金属塩から誘導されるゼロ価の金属を含む);工程を含む方法によって製造する。好ましい態様においては、この方法は、(a)金属成分の塩(例えば、Pd(NO、PdCl、又はPd)を好適な溶媒中に溶解して溶液を形成し;(b)好適な量の金属オキシフッ化物又は金属フッ化物を溶液中に加えてスラリーを形成し;(c)スラリーから溶媒を除去してペーストを形成し;(d)ペーストを乾燥して溶媒を含まない粉末を形成し;(e)溶媒を含まない粉末を、N流中、約300〜約500℃において約2〜約8時間か焼し;(f)か焼した粉末を微粉砕状態に粉砕し;(g)微細粉末を錠剤にペレット化し;そして(h)使用前に、触媒ペレットを、H又は希釈H流中、約150℃〜約250℃において約2〜約4時間還元する;工程を含む。
【0032】
[0030]金属オキシフッ化物触媒組成物を製造する方法は、(a)金属の水酸化物、酸化物、又は炭酸塩の1以上を水と混合してスラリーを形成し;(b)スラリーから水を実質的に除去して固体残渣を形成し;(c)固体残渣組成物を、実質的なか焼を行うのに十分な条件においてか焼し;(d)か焼した試料を微細粉末に粉砕し;(e)微細粉末をペレット化してペレットを形成し;そして(G)ペレットを、金属の水酸化物、酸化物、又は炭酸塩の1以上を金属オキシフッ化物に転化するのに十分な条件下でHFと接触させる;ことを含む。
【0033】
[0031]幾つかの態様においては、接触脱水素化又は接触酸化的脱水素化を金属フッ化物触媒の存在下で進行させることができると考えられる。金属フッ化物触媒を製造する方法は、(a)金属の水酸化物、酸化物、又は炭酸塩の1以上を、フッ化水素の水溶液に加え、反応させて金属フッ化物のスラリーを形成し;(b)スラリーから水を実質的に除去して固体残渣を形成し;(c)固体残渣組成物を、実質的なか焼を行うのに十分な条件下でか焼し;(d)か焼した試料を微細粉末に粉砕し;そして(e)微細粉末をペレット化して触媒組成物のペレットを形成する;ことを含む。
【0034】
触媒の再生:
[0032]接触脱水素化又は接触酸化的脱水素化のいずれにおいても、用いる触媒の量はそれぞれにおいて存在する特定のパラメーターに応じて変化すると考えられる。また、転化工程において一定時間使用した後は、触媒の活性が低下する可能性があるとも考えられる。これが起こる場合には、触媒を再生することができる。触媒の再生は当該技術において公知の任意の手段によって行うことができると意図されるが、触媒は、好ましくは、空気又は窒素で希釈した酸素を、約200℃〜約600℃、好ましくは約350℃〜約450℃の温度において、約0.5時間〜約3日間通し、場合によってはその後に(1)金属オキシフッ化物触媒に関しては、約100℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約350℃の温度におけるHFによる処理、又は(2)第VIII族貴金属触媒に関しては、約100℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約350℃の温度におけるHによる処理のいずれかにかけることによって再生する。幾つかの態様においては、再生のために用いる酸素/窒素流中の酸素濃度は、約0.1〜約25重量%、好ましくは約0.5〜約10重量%、より好ましくは約1〜約5重量%、更により好ましくは約2〜約3重量%の範囲であってよい。
【0035】
3,3,3−トリフルオロプロペンの製造を実質的に制限しながらのペンタフルオロプロペンの式(II)の化合物への転化:
[0033]本発明は、一形態においては、(a)少なくとも1種類のペンタフルオロプロペン、好ましくはCFCF=CHF(HFO−1225ye)を、水素化触媒の存在下で、少なくとも1種類のペンタフルオロプロパン、好ましくはCFCHFCHF(HFC−254eb)を含む第1の反応生成物に転化させ;そして(b)かかる少なくとも1種類のペンタフルオロプロパンを、脱フッ化水素化触媒の存在下で、式(II)の少なくとも1種類の化合物に転化させる;ことを含む、ペンタフルオロプロペンを式(II)の少なくとも1種類の化合物に転化させる方法を包含する。本出願人らは、かかる第1の反応生成物は、工程(a)においてかかるペンタフルオロプロパンの水素化脱フッ素化によって生成する式(I)の化合物を含むことを見出した。本出願人らは、工程(b)において、式(I)の少なくとも1種類の化合物の脱フッ化水素化によって注目すべき量の3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1234zf)が副生成物として形成されることを更に認識するに至った。したがって、本発明の一形態は、ペンタフルオロプロペン、好ましくはHFO−1225yeを式(II)の化合物に転化させ、HFO−1234zfの生成を実質的に制限する方法に関する。
【0036】
[0034]好ましい態様においては、本発明方法は、ペンタフルオロプロペン、好ましくはHFO−1225yeを、式(II)の少なくとも1種類の化合物を含む最終生成物流に処理することを含み、かかる条件は最終生成物流中に存在するHFO−1234zfの濃度を実質的に制限するのに有効なものである。好ましくは、かかる最終生成物流中のHFO−1234zfの濃度は、約100ppm未満、好ましくは約40ppm未満、更により好ましくは約20ppm未満の濃度に実質的に制限される。
【0037】
[0035]幾つかの好ましい態様においては、かかる処理工程は、(a)かかる第1の反応流中のペンタフルオロプロペンを接触水素化して、ペンタフルオロプロパン、好ましくはHFC−254eb、及び式(I)の少なくとも1種類の化合物を含む第1の中間体流を得て;そして(b)かかる第1の中間体流から式(I)の少なくとも1種類の化合物を分離して、分離された中間体流及び第2の中間体流を得る(ここで、かかる分離された中間体流は、第2の中間体流よりも高い濃度の式(I)の少なくとも1種類の化合物を含む);工程を含む。幾つかの好ましい態様においては、この方法は、(c)かかる第2の中間体流を、式(II)の少なくとも1種類の化合物を生成するのに有効な条件下で脱フッ化水素化し;及び/又は(d)かかる分離された中間体流を、式(II)の少なくとも1種類の化合物を含む最終生成物流を生成するのに有効な条件下で転化させる;工程を更に含む。
【0038】
[0036]好ましくは、かかる接触水素化工程(a)は、ペンタフルオロプロペンを水素の存在下で担持水素化触媒に曝露することを含み、かかる担持水素化触媒は好ましくは担体上に堆積させたゼロ価の金属を含む。好適なゼロ価の金属の非限定的な例としては、Pd、Ru、Pt、Rh、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Re、Os、Au、及びこれらの組合せが挙げられる。幾つかの態様においては、担持水素化触媒は、約0.1〜約10重量%の量のゼロ価の金属を含む。ゼロ価の金属がRu、Rh、Pd、Pt、Irなどのような貴金属を含む態様においては、担持水素化触媒は、約0.1〜約5重量%、好ましくは約0.1〜約1重量%の量のかかる金属を含む。好適な担体は、反応中のHFの攻撃に耐性であり、再生中の酸化剤の攻撃に耐性である特徴を有する。かかる担体の非限定的な例としては、α−アルミナ(コランダムアルミナとしても知られる)、金属フッ化物、及び金属オキシフッ化物が挙げられる。用いる触媒のような関連するファクターに応じて広範囲の反応温度を用いることができると意図されるが、反応は、約50℃〜約400℃、好ましくは約100℃〜約300℃、より好ましくは約150℃〜約250℃の温度において行うことができる。また、用いる触媒のような関連するファクターに応じて広範囲の反応圧力を用いることができるとも意図されるが、反応は、大気圧、大気圧以上、又は真空下で変化する圧力において行うことができる。
【0039】
[0037]好ましくは、かかる分離工程(b)は、式(I)の少なくとも1種類の化合物の少なくとも一部、好ましくは少なくとも約50%、更により好ましくは少なくとも約90%を、好ましくは蒸留によってかかる第1の中間体流から取り出すことを含む。幾つかの好ましい態様においては、蒸留工程は、標準的な蒸留カラム内において、大気圧、大気圧以上、又は真空において行う。好ましくは、圧力は約300psig未満、より好ましくは約150psig未満、更により好ましくは100psig未満である。好適な蒸留運転温度は、本明細書に含まれる教示を考慮し、且つ蒸留カラムの圧力のようなこれらの運転条件を考慮して選択することができる。かかる分離方法の更なる例は当業者には明らかであろう。
【0040】
[0038]好ましくは、かかる脱フッ化水素化工程(c)は、かかる第2の中間体流を、強苛性溶液と、或いは脱フッ化水素化触媒の存在下で反応させることを含む。好ましい態様においては、第2の中間体流を、液相反応器内において、KOH、NaOH、Ca(OH)、及びCaOを含む苛性溶液中で昇温温度において反応させる。幾つかの態様においては、苛性溶液は液体(例えば溶液、分散液、エマルジョン、又は懸濁液など)である。幾つかの態様においては、苛性溶液の苛性物質濃度は、約2〜約100重量%、好ましくは約5〜約90重量%、より好ましくは約10〜約80重量%である。用いる触媒のような関連するファクターに応じて広範囲の反応温度を用いることができると意図されるが、反応は、約20℃〜約100℃、より好ましくは約40℃〜約90℃、更により好ましくは約50℃〜約70℃の温度で行うことができる。用いる触媒のような関連するファクターに応じて広範囲の反応温度を用いることができると意図されるが、反応は、大気圧、大気圧以上、又は真空下で行うことができる。他の好ましい態様においては、第2の中間体流を、気相反応器内において、フッ素化Cr、フッ素化Al、及び/又はAlFを含む脱フッ化水素化触媒の存在下、昇温温度において反応させる。
【0041】
[0039]好ましくは、かかる転化工程(d)は、上記で詳細に記載した触媒及び条件を含む接触脱水素化又は接触酸化的脱水素化を含む。
【実施例】
【0042】
[0040]以下の実施例は本発明を例示する目的で与えるものであるが、その範囲を限定するものではない。
実施例1:
[0041]本実施例は、HFC−254ebの接触脱水素化を示す。ステンレススチール管状反応器(OD:0.75”×ID:0.625”×L:23.0”)に、0.5重量%のPt/AlO0.751.50触媒ペレット20ccを充填した。12”のスプリット管状炉によって反応器を加熱した。触媒床を通して挿入した多点熱電対を用いて、触媒床の温度を測定した。通常運転の運転条件は、0.25のHFC−254ebに対するHのモル比、30秒間の接触時間、大気圧、及び600℃の反応温度を含んでいた。オンラインGCによって流出流を分析して、HFC−254eb転化率及びHFO−1234yf選択率を求めた。反応の2時間後、HFC−254eb転化率及びHFO−1234yf選択率は、それぞれ31%及び94%と求められた。
【0043】
実施例2:
[0042]本実施例は、HFC−254ebの接触酸化的脱水素化を示す。ステンレススチール管状反応器(OD:0.75”×ID:0.625”×L:23.0”)に、25重量%のMg0.331.33−75重量%のAlO0.751.50の触媒ペレット20ccを充填した。12”のスプリット管状炉によって反応器を加熱した。触媒床を通して挿入した多点熱電対を用いて、触媒床及び触媒床の頂部における温度を測定した。通常運転の運転条件は、0.5のHFC−254ebに対するOのモル比、30秒間の接触時間、大気圧、及び500℃の反応温度を含んでいた。オンラインGCによって流出流を分析して、HFC−254eb転化率及びHFO−1234yf選択率を求めた。反応の2時間後、HFC−254eb転化率及びHFO−1234yf選択率は、それぞれ15%及び51%と求められた。