特許第5886843号(P5886843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886843コーティング用途での色調整用水性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886843
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】コーティング用途での色調整用水性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20160303BHJP
   D21H 19/46 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 125/10 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 121/02 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 131/04 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 125/14 20060101ALI20160303BHJP
   C09D 123/08 20060101ALI20160303BHJP
   C09B 11/12 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
   C09D201/00
   D21H19/46
   C09D7/12
   C09D5/02
   C09D125/10
   C09D121/02
   C09D131/04
   C09D125/14
   C09D123/08
   C09B11/12
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-517067(P2013-517067)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-534959(P2013-534959A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2011003048
(87)【国際公開番号】WO2012000625
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】10006815.4
(32)【優先日】2010年7月1日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398056207
【氏名又は名称】クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】グレーター−シェーネ・ハイドルン
(72)【発明者】
【氏名】プッディファット・デイビット
【審査官】 中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−092964(JP,A)
【文献】 特表2010−500432(JP,A)
【文献】 特表2010−500429(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/009632(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
D21H19/00− 19/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の色調整のための水性コーティング組成物であって、
(a)式(I)の少なくとも一種の色調整用染料、
【化1】
[式中、
は、H、メチルまたはエチルを示し、
は、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを示し、
Mは、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属、アンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基と線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基との混合物によってジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、または上記の化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す]
(b)少なくとも一種の白色顔料、
(c)少なくとも一種の主バインダー、
(d)任意に、一種またはそれ以上の副バインダー、及び
(e)水、
を含み
燥白色顔料の全重量を基準にして式(1)の化合物0.00001〜0.01重量%を含
ここで、前記主バインダーは、スチレン−ブタジエンポリマー、酢酸ビニルポリマー、スチレンアクリル系ポリマー、ビニルアクリル系ポリマー及びエチレン酢酸ビニルポリマーからなる群から選択される合成ラテックスであり、
前記主バインダーは、白色顔料の全重量を基準にして、2〜25重量%の範囲の量で使用される、前記水性コーティング組成物。
【請求項2】
前記式(I)において、
が、H、メチルまたはエチルを示し、
が、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを示し、
Mが、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属、C−C線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基と線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基との混合物によってジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、または上記化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す、
請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
前記式(I)において、
が、メチルまたはエチルを示し、
が、メチルまたはエチルを示し、
Mが、Li、Na、K、1/2Ca2+、1/2Mg2+、C−C線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基と線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基との混合物によってジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、または上記化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す、
請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
前記式(I)において、
が、メチルを示し、
が、メチルを示し、
Mが、Na、K、トリエタノールアンモニウム、N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム、N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウムまたは上記化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す、
請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
白色顔料10〜70%を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
白色顔料が無機顔料である、請求項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
副バインダーが、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ソイポリマー、ポリビニルアルコールまたはこれらのバインダーの混合物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
前記水性コーティング組成物のpHが5〜13の範囲である、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
紙基材の色調整のための、請求項1に記載の水性コーティング組成物の使用。
【請求項10】
前記コーティング組成物が、予め調製された溶液として使用され、この溶液が、その全重量を基準にして0.001〜30重量%の濃度で式(I)の化合物を含む、請求項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1に記載の水性コーティング組成物を基材上にコーティングする、紙基材の色調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い白色度及び明度を有する色調整(shade)されたコーティングされた基材を供するのに使用することができる、或る種の色調整用染料、白色顔料、主バインダー、任意に及び副バインダーを含む水性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コート紙の白色度及びそれ故魅力を、コーティング組成物に色調整用染料を加えることによって向上できることは周知である。
【0003】
WO0218705A1(特許文献1)は、白色度には有利な効果を有する色調整用染料または顔料の使用が、明度には負の影響があることを教示している(例えばC.I.Direct Violet 35及びC.I.Pigment Violet 23によって例示される)。色調整用染料を使用する時の明度の低下の問題は、広く知られた問題である。
【0004】
コート紙に対するより高い白色度及び明度の要求を満たすために、より効率の高い色調整用組成物への要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO0218705A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、製紙業者が高いレベルの白色度及び明度に到達することを可能にするために、白色顔料、主バインダー、任意に及び副バインダーを含むコーティング組成物に使用することができる、明度には僅かな影響しかないかまたは全く影響がないながらも白色度に対して大きな有利な効果を持つ或る種の色調整用染料がここに見出された。
【0007】
それ故、本発明の目的は、技術水準として把握される色調整用染料(明度の損失)または顔料(より低い白色度発展)の使用が特徴とする欠点を避けながら、増強された高い白色度レベルを与える、或る種の色調整用染料、白色顔料、主バインダー、任意に及び副バインダーを含む、水性コーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それ故、本発明は、基材、好ましくは紙の色調整のための水性コーティング組成物であって、
(a) 次式(I)で表される少なくとも一種の色調整用染料
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、
は、H、メチルまたはエチルを示し、
は、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを示し、
Mは、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属、アンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C 線状もしくは分枝状アルキル基と線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基との混合物によってジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、または上記化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示し、
(b) 少なくとも一種の白色顔料、
(c) 少なくとも一種の主バインダー、
(d) 任意に、一種またはそれ以上の副バインダー、及び
(e) 水
を含む、前記水性コーティング組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
式(I)の好ましい化合物は、
が、H、メチルまたはエチルを示し、
が、パラメトキシフェニル、メチルまたはエチルを示し、
Mが、水素、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属、C−C線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基と線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基との混合物によってジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、または上記の化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す、
ものである。
【0012】
式(I)のより好ましい化合物は、
が、メチルまたはエチルを示し、
が、メチルまたはエチルを示し、
Mが、Li、Na、K、1/2Ca2+、1/2Mg2+、C−C線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基によってモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、C−C線状もしくは分枝状アルキル基と線状もしくは分枝状ヒドロキシアルキル基との混合物によってジ−、トリ−もしくはテトラ置換されたアンモニウム、または上記の化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す、
ものである。
【0013】
式(I)の就中好ましい化合物は、
が、メチルを示し、
が、メチルを示し、
Mが、Na、K、トリエタノールアンモニウム、N−ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム、N−ヒドロキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウムまたは上記化合物の混合物からなる群から選択されるカチオンを示す、
ものである。
【0014】
式(I)の化合物は、典型的には0.00001〜0.01重量%の量で、好ましくは0.00005〜0.005重量%の範囲で使用され、この際、重量%は、乾燥白色顔料の全重量を基準とする。
【0015】
白色顔料を含まないコーティング組成物を製造することは可能であるが、印刷のための最良の白色の基材は、10〜70重量%の白色顔料、好ましくは40〜60重量%の白色顔料を含む不透明のコーティング組成物を用いて作製され、この際、重量%は、コーティング組成物の全重量を基準とする。このような白色の顔料は、通常、無機顔料、例えばケイ酸アルミニウム類(カオリン、他にはチャイナクレーとも知られる)、炭酸カルシウム(チョーク)、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムまたは硫酸カルシウム(石膏)である。好ましくは、10〜20重量%のクレーと30〜40重量%のチョークとの混合物が白色顔料として使用され、この際、重量%は、コーティング組成物の全重量を基準とする。
【0016】
バインダーは、コーティング組成物の製造のために製紙工業で通常使用されるもののうちの任意のものでよく、そして単一のバインダーからなるか、または主バインダーと副バインダーとの混合物からなることができる。
【0017】
唯一のまたは主たるバインダーは、好ましくは、合成ラテックス、典型的にはスチレン−ブタジエンポリマー、酢酸ビニルポリマー、スチレンアクリル系ポリマー、ビニルアクリル系ポリマーまたはエチレン酢酸ビニルポリマーである。好ましい主バインダーはラテックスバインダーである。
【0018】
唯一のまたは主たるバインダーは、典型的には2〜25重量%、好ましくは4〜20重量%の範囲の量で使用され、この際、重量%は、白色顔料の全重量を基準とする。
【0019】
任意選択に使用し得る副バインダーは、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ソイポリマー(soy polymers)、ポリビニルアルコールまたは上記の任意のものの混合物であることができる。場合により使用され得る好ましい副バインダーはポリビニルアルコールバインダーである。
【0020】
該コーティング組成物中に副バインダーとして場合により使用し得るポリビニルアルコールは、好ましくは、60%またはそれ超の加水分解度及び2〜80mPa.sのブルックフィールド粘度(20℃で4%水溶液)を有する。より好ましくは、ポリビニルアルコールは、80%またはそれ超の加水分解度及び2〜40mPa.sのブルックフィールド粘度(20℃で4%水溶液)を有する。
【0021】
場合により使用される時、副バインダーは、典型的には0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜8重量%、より好ましくは0.3〜6重量%の範囲の量で使用され、この際、重量%は、白色顔料の全重量を基準とする。
【0022】
該コーティング組成物のpH値は、典型的には、5〜13、好ましくは6〜11、より好ましくは7〜10の範囲である。コーティング組成物のpHを調節することが必要な場合には、酸または塩基を使用し得る。使用し得る酸の例には、限定はされないが、塩酸、硫酸、ギ酸及び酢酸などが挙げられる。使用し得る塩基の例には、限定はされないが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物または炭酸塩類、アンモニアまたはアミン類などが挙げられる。
【0023】
式(I)の一種またはそれ以上の化合物、一種またはそれ以上の白色顔料、一種またはそれ以上のバインダー、任意選択の一種またはそれ以上の副バインダー、及び水の他に、該コーティング組成物は、式(I)の化合物の製造の間に生ずる副生成物や、他の慣用の紙用添加剤を含み得る。このような添加剤の例は、例えば、凍結防止剤、分散剤、合成もしくは天然増粘剤、キャリア、消泡剤、ワックスエマルション、染料、無機塩、可溶化助剤、防腐剤、錯化剤、抗生剤、架橋剤、顔料、特殊樹脂などである。
【0024】
該コーティング組成物は、式(I)の一種またはそれ以上の化合物を、一種またはそれ以上のバインダー、任意に及び一種またはそれ以上の副バインダー、及び一種またはそれ以上の白色顔料の予め調製した水性分散物に加えることによって製造できる。
【0025】
式(I)の一種またはそれ以上の化合物、任意に及び一種またはそれ以上の副バインダーを、固形物としてまたは予め調製した水溶液として、一種またはそれ以上の白色顔料の予め調製した水性分散物に加えることができる。
【0026】
本発明は更に、紙基材の色調整のための方法であって、式(I)の少なくとも一種の色調整用染料、少なくとも一種の白色顔料、少なくとも一種のバインダー、任意に及び少なくとも一種の副バインダーを含む水性コーティング組成物を使用することを特徴とする前記方法にも関する。
【0027】
予め調製した水溶液として使用する場合には、水中での式(I)の化合物の濃度は、好ましくは0.001〜30重量%、より好ましくは0.01〜25重量%、更により好ましくは0.02〜20重量%であり、この際、重量%は、式(I)の化合物を含む予め調製した水溶液の全重量を基準とする。
【0028】
予め調製した水溶液として使用する場合には、水中での副バインダーの濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%、更により好ましくは5〜30重量%であり、この際、重量%は、副バインダーを含む予め調製した水溶液の全重量を基準とする。
【0029】
以下の例は、本発明をより詳細に説明するものである。本願において、他に記載がなければ、“部”は“重量部”を、“%”は“重量%”を意味する。
【実施例】
【0030】
調製例1
式(1)の化合物50部を、水450部に対し、効率よく攪拌しながら室温でゆっくりと加えることによって、式(1)の化合物を含む水性色調整用溶液(S1)を調製する。得られた溶液を1時間攪拌し、そして濾過して、不溶性の粒子を除去する。生ずる色調整用溶液(S1)は6.0〜7.0の範囲のpHを有し、そして式(I)の化合物10重量%を含む。ここで、重量%は、最終の水性色調整用溶液(S1)の全重量を基準とする。
【0031】
【化2】
【0032】
応用例1
70部のチョーク(OMYAからHydrocarb 90の商品名で商業的に入手可能)、30部のクレー(IMERYSからKaolin SPSの商品名で商業的に入手可能)、42.8部の水、0.6部の分散剤(BASFからPolysalz Sの商品名で商業的に入手可能なポリアクリル酸のナトリウム塩)、20部の50%ラテックス(DowからDL921の商品名で商業的に入手できるスチレンブタジエンコポリマー)、及び98〜99%の加水分解度及び4.0〜5.0mPa.sのブルックフィールド粘度(20℃で4%水溶液)を有する0.8部のポリビニルアルコールを含むコーティング組成物を調製する。このコーティング組成物の固形物含有率を水の添加によって約65%に調節し、そしてpHを水酸化ナトリウムで8〜9に調製する。調製例1に従い調製した水性色調整用溶液(S1)を水で1部から1000部に希釈する。
【0033】
こうして調製した希釈水溶液を、0〜20重量%の濃度範囲(乾燥固形物ベースで式(1)の化合物0〜0.002重量%)で、攪拌した前記コーティング組成物に加える。ここで、重量%は、乾燥顔料の全重量を基準とする。
【0034】
次いでこの色調製されたコーティング組成物を、商業的な75gsm中性サイズ白紙ベースシートに、自動ワイヤ・ワウンド・バー・アプリケータ(wire−wound bar applicator)を用いて標準的な速度設定及び標準的なバー負荷で、塗布する。次いで、コート紙を、熱空気流中で5分間乾燥する。その後、この紙を、状態調節させ(allowed to condition)、次いでキャリブレートしたミノルタスペクトロフォトメータでCIE白色度及び明度について測定する。結果を、それぞれ表1及び2に示す。これらの結果は、本発明が、より高いレベルの白色度を提供しながらも、色調整用染料の最も高い添加レベルでも明度の損失は僅か0.2%であることを明らかに示している。
【0035】
比較応用例1a
水性色調整用溶液(S1)の代わりにC.I.Direct Violet35の10重量%水溶液を用いることのみを違いとして、比較応用例1aを応用例1に記載の通りに行った。ここで、重量%は、C.I.Direct Violet35水溶液の全重量を基準とする。
【0036】
CIE白色度及び明度を、キャリブレートしたミノルタスペクトロフォトメータで測定する。結果をそれぞれ表1及び表2に示す。これらの結果は、従来技術に属する色調整用染料の使用が、より低い白色度レベルをもたらし、その上、最大0.7%の明度の損失の原因となることを明らかに示している。
【0037】
比較応用例1b
水性色調整用溶液(S1)の代わりにC.I.Pigment Violet23の10重量%水性分散物を使用したことのみを違いとして、比較応用例1bを応用例1に記載の通りに行った。ここで、重量%は、C.I.Pigment Violet23水性分散物の全重量を基準とする。CIE白色度及び明度を、キャリブレートしたミノルタスペクトロフォトメータで測定する。結果をそれぞれ表1及び表2に示す。これらの結果は、従来技術に属する色調整用顔料の使用が、かなりより低い白色度レベルを招くことを明らかに示している。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】