特許第5886857号(P5886857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886857
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】粘性クラッチ弁アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16D 35/02 20060101AFI20160303BHJP
【FI】
   F16D35/02 Z
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-524980(P2013-524980)
(86)(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公表番号】特表2013-545039(P2013-545039A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011048263
(87)【国際公開番号】WO2012024497
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年8月8日
(31)【優先権主張番号】61/375,173
(32)【優先日】2010年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506038235
【氏名又は名称】ホートン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ゲバース, ウィリアム, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】サベラ, デレク
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, スコット
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−081466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力トルクを受ける入力部材と、
前記入力部材に固定されて、前記入力部材とともに回転するロータと、
前記ロータに隣接して配置された出力部材と、
前記ロータと前記出力部材との間に画定された作業チャンバと、
剪断流体を保持するように構成されたリザーバと、
前記作業チャンバと前記リザーバとの間に画定された戻り経路と、
磁場を選択的に発生させるための電磁コイルと、
前記リザーバと前記作業チャンバとの間の剪断流体の流れを選択的に制御するように構成された弁アセンブリとを備え、
前記弁アセンブリが、
前記剪断流体が貫通可能となるように孔を画定するオリフィス板と、
前記オリフィス板に対して固定されたリード弁と、
磁性体を含む電機子と、
前記電機子に固定されたアンカーばねと、
補強板とを備え、
前記リード弁が、
前記オリフィス板の前記孔を選択的に覆うように構成された舌部と、
前記舌部の遠位端を揺動する、前記舌部における第1の揺動部とを備え、
前記電機子が、前記電磁コイルにより発生する前記磁場に応じて前記リード弁に選択的に力を加えて、前記第1の揺動部を介して前記舌部の少なくとも前記遠位端を揺動させるように構成され、
第2の揺動部が前記補強板の縁部で前記アンカーばねに画定され、前記第1および第2の揺動部が互いに離間している、粘性クラッチ。
【請求項2】
前記アンカーばねと前記オリフィス板とは前記ロータに固定され、前記弁アセンブリが前記ロータとともに回転する、請求項1に記載の粘性クラッチ。
【請求項3】
前記ロータに固定された止め部をさらに備え、前記止め部は、前記電機子の前記電磁コイル側への移動を制限するように構成される、請求項1に記載の粘性クラッチ。
【請求項4】
前記電機子は、本体部と、前記本体部からの延長部とを備え、前記延長部が作動時に前記リード弁の前記舌部に接触するように構成され、前記延長部から約90°で前記本体部から延びるタブをさらに備える、請求項3に記載の粘性クラッチ。
【請求項5】
前記弁アセンブリは、前記アンカーばねに固定され、前記電機子の縁部から前記第2の揺動部側へ、前記アンカーばねの第1の側に沿って延びる裏板をさらに備える、請求項1に記載の粘性クラッチ。
【請求項6】
前記裏板は前記補強板に少なくとも部分的に重なっている、請求項5に記載の粘性クラッチ。
【請求項7】
前記補強板は前記電機子から間隙Lだけ離間している、請求項1に記載の粘性クラッチ。
【請求項8】
固定シャフトをさらに備え、前記出力部材と前記入力部材とが、それぞれ前記固定シャフトにより回転可能に支持される、請求項1に記載の粘性クラッチ。
【請求項9】
前記電磁コイルが前記リザーバ内に配設される、請求項8に記載の粘性クラッチ。
【請求項10】
磁場を発生させるステップと、
電機子から離間した補強板の、アンカーばねに接触して位置決めされた縁部を使用し、前記電機子に取り付けられたアンカーばねに第2の揺動部を画定するステップと、
前記磁場を使用して、第の揺動部にて電機子を揺動させるステップと、
前記電機子によりリード弁に力を加えるステップと、
前記加えられた力に応じて、前記第の揺動部から離間した前記第1の揺動部にて前記リード弁の少なくとも一部を揺動させるステップと、
前記リード弁で孔を覆って、前記孔を通る流体を制限するステップとを含む、粘性クラッチを操作するための方法。
【請求項11】
力が加えられたときに、前記電機子が前記リード弁に沿って摺動する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電機子に取り付けられたアンカーばねの曲げを裏板により制限するステップをさらに含み、前記第1の揺動部が前記アンカーばねに画定される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記補強板の幅を変化させて、前記アンカーばねのばね定数を調節するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
流体が貫通可能となるように孔を画定するオリフィス板と、
前記オリフィス板に対して固定されたリード弁と、
磁性体を含む電機子と、
前記電機子に固定されたアンカーばねと、
補強板とを備え、
前記リード弁が、
前記オリフィス板の前記孔を選択的に覆うように構成された舌部と、
前記舌部における第1の揺動部とを備え、
前記電機子が、前記舌部の少なくとも一部を前記第1の揺動部にて揺動させるように構成され、
第2の揺動部が前記補強板の縁部で前記アンカーばねに画定され、前記第1および第2の揺動部が互いに離間している、粘性クラッチのための弁アセンブリ。
【請求項15】
前記電機子は、本体部と、前記本体部からの延長部とを備え、前記延長部が作動時に前記リード弁の前記舌部に接触するように構成される、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記電機子は、前記延長部から約90°で前記本体部から延びるタブをさらに備える、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記アンカーばねに固定され、前記電機子の縁部から前記第2の揺動部側へ、前記アンカーばねの第1の側に沿って延びる裏板をさらに備える、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記裏板が前記補強板に少なくとも部分的に重なっている、請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記補強板が前記電機子から間隙Lだけ離間している、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記オリフィス板が前記リード弁に面した凹部を備え、前記第1の揺動部が前記凹部に係合する、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項21】
磁場を選択的に発生させるための電磁コイルと、
前記電磁コイルにより発生する前記磁場に応じて、リザーバと作業チャンバとの間の、孔を通る剪断流体の流れを選択的に制御するように構成された弁アセンブリとを備え、
前記弁アセンブリが、
の揺動部にて揺動するように構成された電機子を備えた第1の弁サブアセンブリと、
リード弁を有し、前記リード弁の少なくとも一部が、前記第の揺動部から離間した第の揺動部にて揺動するように構成され、前記第1の弁サブアセンブリが、第2の弁サブアセンブリに選択的に力を加えて、前記リード弁が前記孔を選択的に覆うように構成された第2の弁サブアセンブリと、
前記電機子に固定されたアンカーばねと、
補強板と、を備え、前記第2の揺動部が前記補強板の縁部で前記アンカーばねに沿って画定され、前記第1および第2の揺動部が互いに離間している、粘性クラッチ。
【請求項22】
さらに前記孔を画定するオリフィス板を備え、
前記オリフィス板は、前記第1の揺動部に含まれるとともに、前記リード弁と前記オリフィス板との接触面積を減らすための凹部が形成されている請求項21に記載の粘性クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、弁に関し、より詳細には、粘性クラッチとともに使用する電磁作動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
粘性クラッチが、種々の適用において、例えば、自動車の適用におけるファン駆動装置として使用される。クラッチは、回転する2つの部品間のトルクを伝達するためにシリコンオイルを使用する。オイルをクラッチの作業領域に入れたり出したりすることにより、クラッチを接続または遮断することができる。弁を使用して、入力ロータと出力ハウジングとの間のオイルの流れを制御する。最近使用されている設計では、運動エネルギーを使用して、クラッチを遮断状態から迅速に接続できるようにするために、クラッチを遮断している間にクラッチの回転入力部にオイルを溜めている。これにより、クラッチは、遮断位置にありながら、非常に低い出力ファン速度を得ることができる。クラッチを電気的(または電磁的)に制御することも一般的になっている。これは、クラッチの制御性を高め、クラッチを種々の冷却の要求に対応可能にするために行われている。考えられる冷却の要求としては、冷却水の温度、吸気温度、空調圧力、およびオイル温度がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、公知の粘性クラッチ弁の公差が、流体シールを提供する弁部品の平坦性等に関して問題となり得る。例えば、十分に平坦でない単一旋回軸の弁レバーを使用する公知の弁アセンブリは、粘性流体がリザーバから流出して作業領域に流入するのを防止する十分なシールを提供することができない。さらに、公知の電磁制御弁アセンブリは、比較的大きな(すなわち、初期状態のばね付勢力に打ち勝つ)作動用の磁力を必要とすることがあり、大きな電磁コイルを必要とするため望ましくない。大きな電磁コイルは、比較的重く、高価で、消費電力が大きいためである。
【0004】
したがって、代わりとなる粘性クラッチおよび関連する弁アセンブリが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による粘性クラッチのための弁アセンブリは、流体が貫通可能となるように孔を画定するオリフィス板と、オリフィス板に対して固定されたリード弁と、磁性体を含む電機子と、電機子に固定されたアンカーばねと、補強板とを備える。リード弁は、オリフィス板の孔を選択的に覆うように構成された舌部と、舌部に沿った第1の揺動部とを有する。第2の揺動部は、補強板の縁部でアンカーばねに沿って画定される。第1および第2の揺動部は互いに離間している。電機子は、リード弁に選択的に力を加えて、舌部の少なくとも一部を第1の揺動部により揺動させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明による粘性クラッチの横断面図である。
図2A図1の粘性クラッチの一部を分離して示す斜視図である。
図2B図2Aの2B−2B線に沿った粘性クラッチの一部の横断面図である。
図3図1〜2Bの粘性クラッチの弁アセンブリの斜視図である。
図4図3の弁アセンブリの分解斜視図である。
図5図3および4の弁アセンブリの側面図である。
図6A】磁場に晒された弁アセンブリの動作モデルを示す、側面からの斜視図であり、補強板を省いた弁アセンブリを示す図である。
図6B】磁場に晒された弁アセンブリの動作モデルを示す、側面からの斜視図であり、補強板を含む弁アセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
前記図面は本発明の1または複数の実施形態を示すが、説明するように他の実施形態も考えられる。あらゆる場合に、この開示は、本発明を図示により限定することなく表す。当業者が、本発明の原理の範囲および精神に含まれる多くの他の修正および実施形態を案出できることを理解されたい。なお、図面は、縮尺通りに描かれたものではない。
【0008】
一般に、本発明は、粘性クラッチとともに使用するのに適した弁アセンブリに関する。例えば、本発明の弁アセンブリは、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2010年11月15日に出願した国際出願第PCT/US2010/056659号および2009年11月17日出願した米国仮特許出願第61/261965号、名称「一体型粘性クラッチ」に開示されたタイプの粘性クラッチとともに使用するのに適している。本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2010年8月19日に出願した米国仮特許出願第61/375173号、名称「粘性クラッチ弁アセンブリ」の優先権を主張するものである。
【0009】
図1は、粘性クラッチ20の一実施形態の横断面図である。粘性クラッチ20は、電磁コイルアセンブリ22、ロータ24、弁アセンブリ26、第1の軸受セット28、シャフト(またはブラケット)30、第2の軸受セット32、保持部材34、リザーバ36、入力部材38(例えば、滑車)、および出力部材40を備える。入力部材38は、入力された力(例えば、ベルトからのトルク)を受け、動力をロータ24に伝達する。出力部材40はロータ24に隣接し、出力部材40とロータ24との間に作業チャンバが画定される。図1に示す実施形態では、出力部材40が複数部分構成を有し、別個のハウジング部40Aおよびカバー部40Bが互いに固定されて、ロータ24を少なくとも部分的に囲む。ファンまたは他の部品(図示せず)を係合させて、出力部材40とともに回転させることができる。シャフト30は、クラッチの部品を取付位置に対して回転自在に支持している。軸受セット28、32を介して、シャフト上の任意の位置にスペーサ、スリーブ等を配設することができる。シャフト30は、自動車(図示せず)のエンジン室等において、クラッチ20を所望の位置に取り付けることができるようにする。シャフト30は固定、すなわち、非回転とすることができる(クラッチ20の「固定」部品を車両の可動部に設置してもよいことを理解されたい)。保持部材34(例えば、ねじ切りナット)は、シャフト30上に支持される部品を固定する。動作時においては、従来タイプのもの(例えば、シリコンオイル)であり得る粘性流体(または剪断流体)の作業チャンバへの導入を切り替えることで、粘性係合によりロータ24と出力部材40との間でトルクを伝達することができる。従来通り、戻り経路(例えば、出力部材40を通る適切な通路)により、粘性流体は作業チャンバからリザーバ36に戻すことができる。リザーバ36は剪断流体の一部または全部を貯えることができ、弁アセンブリ20は、リザーバ36から作業チャンバへの剪断流体の送出を切替制御することができる。
【0010】
図2A図5は、粘性クラッチ20の一部を示す。図2Aは、粘性クラッチ20の一部の斜視図、図2Bは、図2Aの2B−2B線に沿った粘性クラッチ20の一部の横断面図、図3は弁アセンブリ26の斜視図、図4は弁アセンブリ26の分解斜視図、図5は弁アセンブリ26の側面図である。
【0011】
弁アセンブリ26は、補強板50、アンカーばね52、裏板54、電機子56、およびリード弁58を備える。弁アセンブリ26は、リザーバ36から作業チャンバへの流体経路を形成するオリフィス板62の孔60を通る粘性流体の流れを制御する。電磁コイルアセンブリ22に対して通電及び非通電を切り替えることにより、弁アセンブリ26の動作を制御する。電磁コイルアセンブリ22を非通電とすると、弁アセンブリ26はばね付勢されて初期位置に位置することとなり、電磁コイルアセンブリ22を通電すると、弁アセンブリ26は他方位置に移動することとなる。図示した実施形態では、弁アセンブリ26が初期設定では「開」位置にばね付勢され、粘性流体がリザーバ36から作業チャンバへ流れることができるように孔60が露出する。
【0012】
図1の実施形態に示すように、弁アセンブリ26は、電磁コイルアセンブリ22とロータ24との概ね間に位置決めされている。弁アセンブリ26をリザーバ36内に浸入させ、ロータ24に取り付け、ロータ24を介して、入力部材38とともに入力される速度で回転可能である。
【0013】
弁アセンブリ26は、独立して揺動する(つまり片持ちの)2つのサブアセンブリを備え、弁アセンブリ26全体における公差についての許容範囲を大きくする。第1の弁サブアセンブリは、アンカーばね52と、電機子56(補強板50および裏板54も第1の弁サブアセンブリの一部とする)とを備える。第2の弁サブアセンブリは、リード弁58を備える。動作時においては、電機子56はリード弁58に抗して揺動し接触することができ(例えば、磁力、ばね力等により)、リード弁58は当該電機子56により伝達された力によって揺動する。リード弁58は、オリフィス板62を押圧して、孔60を覆い少なくとも部分的に密閉することにより、粘性流体がリザーバ36からオリフィス板62を通って流出することを制限または阻止することができる。このように、電機子56およびリード弁58が、以下でさらに説明するように、離間したそれぞれ異なる揺動位置(すなわち、支点または曲げ位置、あるいはヒンジ)を有していることで、作動中に電機子56がリード弁58に対して摺動する。アンカーばね52を、リード弁58の電機子52側に形成される仮想面から軸方向にオフセット(図5において下方位置に)すると、よりシールしやすくなる。したがって、電機子56の平坦性公差、ならびにアンカーばね52およびオリフィス板62を取り付けるロータ24の機械加工に対する平坦性公差は、電機子に直接取り付けられ電機子とともに移動可能な単一弁レバー、または電機子と一体形成された単一弁レバーのみを有する先行技術のシステムに比べて制限が少ない。
【0014】
また、本発明は、弁アセンブリ26のばね定数の制御を提供する。アンカーばね52は、弁アセンブリ26のばね定数に関係する。アンカーばね52は、弁アセンブリ26において静的な(すなわち、旋回しない)ロータ取付部と、動的な(すなわち、旋回する)第1の弁サブアセンブリとを接続する。アンカーばね52は、補強板50とロータ24との間に(接触して)挟まれ、適切な留め具64(例えば、ボルト、ねじ、リベット)により保持され、反対側の端部が適切な留め具66(例えば、ボルト、ねじ、リベット)により電機子56に取り付けられている。アンカーばねは、弁アセンブリ26内でリード弁58の概ね対称位置に配置される。一実施形態としては、アンカーばね52をばね鋼(例えば、ASTM A109−03)から形成する。
【0015】
補強板50の主な機能は、弁アセンブリ26のばね定数を制御することである。アンカーばね52の揺動部52−1は、補強板50の電機子側縁部に沿って画定される。ばね定数の制御は、電機子56と補強板50との間の間隙Lを調整することにより達成される。この間隙Lは、製造プロセス中に、目盛り付きアセンブリ固定具(図示せず)を用いて弁アセンブリ26をロータ24に固定することにより容易に調整することができる。加えて、任意の条件としてばね定数の増加または減少を必要とする場合、補強板50の幅Wを適切に変化させる(そうすることで間隙Lを相対的に変化させ得る)ことにより、これを達成することができる。このように、弁アセンブリ26はモジュール方式であり、弁アセンブリ26の残りの部品の一部または全部を再利用可能にしつつ、補強板50(および/または裏板54)を修正することにより、弁アセンブリ26を任意の条件に適合させることができる。補強板50は金属材料から形成することができ、アンカーばね52のような可撓性を有するものではなく、比較的剛性を有するように構成する。図示した実施形態では、補強板50は剛性を高めるために、アンカーばね52よりもかなり厚くなっている。
【0016】
裏板54は以下の機能を提供することができる。(1)アンカーばね52の変形形状を制御し、(2)アンカーばね52(またはその一部)が(クラッチ20の回転軸における)軸方向においてリザーバ36側引っ張られるのを防止し、かつ(3)さらなるねじれ剛性を提供する。前記項目(1)に関し、裏板54がないと、図6Aに示すように、磁力の影響により、アンカーばね52が望ましくないS字形をなすこととなる。図6Bに示すように、裏板54は、アンカーばね52の形状変化を矯正して、電機子56と補強板50との間の片持ち曲げ形状(すなわち、S字形のような多方向的ではなく、遠位/自由端にのみ負荷がかかる片持ち梁のような、一方向のみに曲がりやすい曲げ形状)をとる。言い換えると、裏板54は、電機子56の揺動を促し、アンカー板52が複雑な形状に曲がるのに連動して生じ得る電機子56の軸方向の並進(すなわち、粘性クラッチ20の回転軸方向の並進)を抑えるものである。図示した実施形態では、裏板54が、補強板50とは反対側の、アンカーばね52の第1の側に配設される。裏板54は、電機子56の第1の延長部56−2の縁から揺動部52−1側へ、アンカーばね52の第1の側に沿って延びている。図示した実施形態では、裏板54がアンカーばね52の揺動部52−1を超えて延び、裏板54と補強板50とが概ね半径方向において部分的に重なるようになっている(重なり量は、任意の条件に合わせた要求通りに変化させることができる)。この弁アセンブリ26の構成により、電機子56の第1の延長部56−2が、軸方向に引っ張られるのを制限または阻止し、電機子56が電磁コイルアセンブリ22側に引っ張られたときのねじり剛性を高める。裏板54は、一端部で電機子56とアンカーばね52とに取り付けられ、反対側端部はアンカーばね52に取り付けられずに前記の機能を果たすことができる。裏板54は金属材料から形成することができ、アンカーばね52のような可撓性を有するものではなく、比較的剛性を有するように構成することができる。図示した実施形態では、裏板54は、剛性を高めるために、アンカーばね52よりもかなり厚くなっている。
【0017】
電機子56は、電磁コイルアセンブリ22により生じる磁場により動作または移動する可動部分であり、コイルアセンブリ22により発生する磁場の磁路の一部に形成される。電機子56は、低炭素鋼等の、磁力により動作可能な磁性体から形成することができる。
【0018】
動作中、電磁コイルアセンブリ22に通電すると、電機子56は、磁場により軸方向において電磁コイルアセンブリ22側に引っ張られる。電機子56は、電磁コイルアセンブリ22から電機子56へ、かつ電機子56からシャフト30へ磁束が移動する(最終的に磁束がコイルアセンブリ22へ戻る)のを促す。加えて、電機子56は、電磁コイルアセンブリ22側へ引っ張られるとリード弁58を押圧し、リード弁58がオリフィス板62の孔60を覆い、粘性流体がリザーバ36から粘性クラッチ20の作業チャンバへ流れるのを遅らせるか、または停止させるようになっている。図示した実施形態では(例えば、図3参照)、電機子56は、全体として環状である本体部56−1と、本体部56−1から延びてアンカーばね52および裏板54が固定される第1の延長部56−2と、本体部56−1から延びてリード弁58に接触するように構成された第2の延長部56−3とを備える。また、本体部56−1から延びる一対のタブ56−4、56−5が形成されている。図示した実施形態では、第1および第2の延長部56−2、56−3が互いに約180°の位置に配置され、タブ56−4、56−5が互いに約180°の位置に配置され、第1の延長部56−2がタブ56−4から約90°の位置に配置されている。電機子56は、動作中にあまり曲がることのない、すなわち、揺動部分またはヒンジ部とならない比較的剛性を持つ部材とし、生じた磁場、動作状態または動作位置にかかわらず、略平坦な平面形状を概ね維持することができるようになっている。
【0019】
リード弁58は、ロータ24とオリフィス板62との間に配設されている。図示した実施形態では、リード弁58は全体としてT字形で、舌部58−1と、一対の脚部58−2、58−3とを有する。他の実施形態としては、リード弁58が三脚(すなわち、W、MまたはE字)形でもよい。舌部58−1は、舌部58−1の離間した両端部間を、揺動部58−4として画定することができる。さらに、片持ち舌部58−1の遠位端を、舌部58−1の他の領域よりも面積を大きくして、孔60を覆って密閉するのを容易にしている。舌部58−1の遠位端は、揺動部58−4とともに揺動して、孔60を覆ったり、露出させたりする。脚部58−2、58−3は舌部の近位端(すなわち、遠位端の反対側)に配置することができ、適切な留め具(例えば、ボルト、リベット、ねじ)を使用して、リード弁58をオリフィス板62に取り付ける部分である。一実施形態では、リード弁58をばね鋼(例えば、ASTMA109−03)から形成する。動作中においては、電機子56が電磁コイルアセンブリ22側に引っ張られることで、リード弁58はオリフィス板62を密閉状態に切り替える。詳しくは、電機子56の第2の延長部56−3がリード弁58の舌部58−1に接触することで、電機子56がリード弁58を押圧してオリフィス板62の孔60を覆う。また、リード弁58は、弁アセンブリ26全体としてのばね定数を最小限にしながら、先行技術の片持ちシステムよりも速い速度で弁アセンブリ26を開弁する(すなわち、オリフィス板62の孔60を露出させる)のを助けるものである。本発明の弁アセンブリ26により、少なくとも部分的により速く開口する(すなわち、孔60を露出させる)ことができる。これは、リード弁58およびアンカーばね52の両方のばね力により、電機子56を電磁コイルアセンブリ22から引き離し、アンカーばね52の揺動部52−1から離間した位置でリード弁58が電機子56の第2の延長部56−3を付勢することにより、付勢トルクについて力学的に利点が得られるからである。
【0020】
図示した実施形態では、リード弁揺動部58−4がアンカーばね揺動部52−1から離間し、これらの揺動部をクラッチの回転軸の両側に、シャフト30を挟んで対向させて配置している。図示した実施形態では、リード弁揺動部58−4とアンカーばね揺動部52−1とが互いに固定され、クラッチ動作中にこれらの部品間の間隔は変わることがない。
【0021】
オリフィス板62は、リード弁58に隣接して取り付けられ、ロータ24(または他の適切な取付構造)に取り付けることができる。他の実施形態では、脚部58−2、58−3を、オリフィス板62とロータ24の一部との間に挟むことができる。図示した実施形態では、オリフィス板62が、適切な留め具70(図1参照)により、ロータ24の突出部に取り付けられ、ロータ24に沿って空間または溝72が設けられて、リード弁58の舌部58−1がオリフィス板62とロータ24との間の領域内で移動可能となるようにしている。オリフィス板62の設計を修正して、任意の条件に合わせて要求通りに孔60(すなわち、オリフィス)の大きさを変化させることは可能である。この構成により、弁アセンブリ26の部品を変更する必要がなく、オリフィス板62の孔60を任意の条件に合わせることができるため、弁アセンブリ26のモジュール性を高めることができる。
【0022】
オリフィス板62は、ロータ側の面に凹部73(図4および5参照)が形成され、この凹部73にリード弁58の舌部58−1の少なくとも一部を入れることができる。すなわち、舌部58−1の離間した両端部間にある揺動部58−4に近い、舌部58−1の一部を、凹部73に係合させることができる。凹部73によりリード弁58の移動を許容し、舌部58−1とオリフィス板62との接触面積を減らして、望ましくない静摩擦(すなわち、粘性流体の存在により生じ得る部品間の粘着)を減少させる。
【0023】
オリフィス板62は、リード弁58および電機子56に対して停止面としても機能し得る。低温時に、当該オリフィス板62により、電機子56が電磁コイルアセンブリ22に接触するのを防止することができる。
【0024】
クラッチ20は、さらに止め部74を備えており、電機子56の各タブ56−4、56−5のそれぞれに対応して1つの止め部74が設けられている。止め部74は、ある動作状況において、タブ56−4、56−5および電機子56の残りの部分の移動を制限するように構成される。止め部74は、適切な留め具76(例えば、ボルト、ねじ、リベット)等によりそれぞれロータ24に固定される。図示した実施形態では、各止め部74のロータ側の面を、電機子56の第2の延長部56−3に隣接するオリフィス板62のロータ側の面から間隙Gだけずらし(すなわち、非同一平面にして)、止め部74のロータ側の面を、第2の延長部56−3に隣接するオリフィス板62のロータ側の面よりも軸方向に、ロータ24からさらに離間させている。この構成により、高圧状態において、タブ56−4、56−5の少なくとも1つが対応する止め部74に接触することで、当該止め部74が電機子56の移動を制限することとなる。高圧状態とは、コイルアセンブリ22が比較的高いアンペア数で動作させ、比較的大きな磁場を発生させる低温周囲状態等である。電機子56の移動を停止または制限することにより、電機子56が過度に移動してリード弁58を損傷をさせる危険を減らし、かつ、間隙Gのずれによって、通常の動作状態において止め部74とタブ56−4、56−5とが正常な弁動作に干渉する危険を減らすことができる。
【0025】
本発明は多くの利点をもたらすことを当業者は理解するだろう。例えば、本発明の弁アセンブリは、全体としてのばね定数が比較的低いため、比較的小さい電磁コイルを使用することができる。比較的小さい電磁コイルは、比較的省電力で動作可能である。さらに、本発明の弁アセンブリにより、弁アセンブリにおいて流体の流れを制限または防止するように位置決めされるときに比較的良好な密着を行うことができ、着座部品の平坦性公差を十分に調整できる。本発明のさらなる特徴により、高電磁力状態において、比較的低い動作温度で通常生じるような損傷を弁アセンブリに与える危険を低下させる。さらなる特徴および利点が、本発明の開示を考慮することにより当業者に明らかであろう。
【0026】
本明細書で使用する相対的な用語または程度を表す用語である「略」、「約」、「基本的に」、「概ね」等は、本明細書に明記した適用可能な定義または限定に従って解釈すべきである。すべての場合に、本明細書で使用する相対的な用語または程度を表す用語は、関連する開示された実施形態、および、通常の製造上の公差等を含むように、本開示全体を考慮する当業者が理解するであろう範囲または変更を広く含むものと解釈すべきである。
【0027】
例示的な実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、本発明の要素を等価物で置き換えることができることを当業者は理解するだろう。加えて、本発明の基本的範囲を逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に合わせるように、多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の思想および範囲に含まれるすべての実施形態を含むものである。例えば、さらなる実施形態において、1または複数の平衡構造を弁アセンブリに加えてもよい。開示された部品の相対的な形状および大きさは、特定の適用に合わせて希望通りに変更可能である。さらに、補強板および/または裏板を他の実施形態として省いてもよい。加えて、任意の条件に合わせて要求通りに、開示されたある実施形態の特徴を、開示された他の実施形態とともに使用してもよい。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B