特許第5886870号(P5886870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5886870所定のエステルベースの溶媒を含有する電解質溶液および当該電解質溶液を含有する電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886870
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】所定のエステルベースの溶媒を含有する電解質溶液および当該電解質溶液を含有する電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20160303BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20160303BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20160303BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20160303BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20160303BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0567
   H01M10/0568
   H01M10/052
   H01M10/0565
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-544702(P2013-544702)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-503964(P2014-503964A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011064681
(87)【国際公開番号】WO2012082760
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/423,147
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウズン,オクタイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ,ディーン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,デイビット,アール.
(72)【発明者】
【氏名】シャンカー,ラヴィ,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン,デイビット,ジェー.
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−517188(JP,A)
【文献】 特表2004−523073(JP,A)
【文献】 特開平06−020719(JP,A)
【文献】 特開2009−289414(JP,A)
【文献】 特表2012−513666(JP,A)
【文献】 特開平08−250153(JP,A)
【文献】 特開平09−213366(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0087161(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0076887(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0081062(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0241699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0569
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01M 10/0565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、またはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物と、
(3)成分(2)および(3)の総合重量に基づいて、0.5から20重量%のビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロエチレンカーボネートまたはそれらの2つまたはそれ以上の混合物と
を含む非水性電池電解質溶液。
【請求項2】
0から30重量%の追加の溶媒を含有し、前記追加の溶媒が、アルキルエーテルとしてのジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、およびテトラヒドロフラン;環状エステルとしてのγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、およびδーバレロラクトン;モノニトリルとしてのアセトニトリルおよびプロピオニトリル、ジニトリルとしてのグルタロニトリル;対称スルホンとしてのジメチルスルホン、およびジエチルスルホン;非対称スルホンとしてのエチルメチルスルホン、およびプロピルメチルスルホン;対称もしくは非対称スルホンの誘導体としてのメチルメトキシエチルスルホン、エチルメトキシエチルスルホン;およびスルホランとしてのテトラメチレンスルホランから選択される、請求項1に記載の電池電解質溶液。
【請求項3】
0から30重量%のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはそれらの混合物を含有する、請求項1または2に記載の電池電解質溶液。
【請求項4】
5重量%以下のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはそれらの混合物を含有する、請求項に記載の電池電解質溶液。
【請求項5】
非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)前記リチウム塩を溶解させるために十分な量にある、12個までの炭素原子を有する2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートであって、前記アルコキシ基は1から7個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよく、前記アルキル基は1から7個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてもよい、2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートと、さらに、
(3)成分(2)および(3)の総合重量に基づいて0.5から10重量%のビニレンカーボネートまたは4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン
を含む非水性電池電解質溶液。
【請求項6】
前記アルコキシ基および前記アルキル基が、それぞれ1から3個の炭素原子を含有する、請求項に記載の非水性電池電解質溶液。
【請求項7】
前記アルコキシ基および前記アルキル基が、それぞれ1もしくは2個の炭素原子を含有する、請求項に記載の非水性電池電解質溶液。
【請求項8】
前記2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートまたは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート化合物は、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテートまたはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、請求項に記載の電池電解質溶液。
【請求項9】
前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSOおよびLi[(CFSON]の内の少なくとも1つである、請求項1からのいずれかに記載の電池電解質溶液。
【請求項10】
カソード保護剤、リチウム塩安定剤、リチウム分解改善剤、イオン溶媒和強化剤、腐食防止剤、湿潤剤および粘度低下剤から選択される少なくとも1つの他の添加物をさらに含む、請求項1からのいずれかに記載の電池電解質溶液。
【請求項11】
アノード、カソード、前記アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータ、ならびに前記アノードおよびカソードと接触している電解質溶液を含み、前記電解質溶液は請求項1から10のいずれかに記載の電池電解質溶液である電池。
【請求項12】
二次電池である、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
リチウムイオン、リチウム硫黄、リチウム金属またはリチウムポリマー電池である、請求項11または12に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/423147号からの恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は、非水電解質溶液および非水電解質溶液を含有する電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池は、自動車や多数のタイプの電子機器のための一次および二次電池として広く使用されている。これらの電池は、高いエネルギーおよび出力密度を有することが多い。リチウム電池中の電解質溶液は、必然的に非水型である。非水電解質溶液は、一般に高誘電率を有する有機溶媒または有機溶媒の混合液中のリチウム塩の溶液である。
【0004】
溶媒は、数多くの要求を満たさなければならず、そのために実用性を有する溶媒系は極めて少ないことが見いだされている。あらゆる候補溶媒が満たさなければならない幾つかの基本的要件がある。これらには、作動温度の全範囲にわたって溶液中にリチウム塩を維持する能力;高誘電率;該溶液の残りの成分の存在下での化学的安定性;および作動電圧にわたる電気化学的安定性が含まれる。さらに、溶媒は、広い温度範囲にわたって低蒸気圧液体でなければならない;電池にとって有用な作動温度範囲は該溶媒系(またはその成分)の融点および沸点によって制約されることが多い。
【0005】
上記の基準はあらゆる実用的溶媒系の必要な属性であるが、それらはリチウム電解質溶液中で良好に機能する溶媒系を完全には規定しない。これら全ての属性を有する多くの溶媒系が適正に機能する訳ではない。その結果として、本質的に全ての実用的リチウム電解質溶液は、ごく一握りのカーボネート化合物、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートをベースとする。これまでのところエチレンカーボネートおよびエチレンカーボネートとジエチルカーボネートおよび/またはエチルメチルカーボネートとの混合物が最も有力な溶媒系である。
【0006】
カーボネート溶媒を選択する主要な理由は、それらがリチウム電池のグラファイトアノードで安定性の固体電解質界面(SEI)を形成することにある。SEI層の主要成分は、分解した溶媒および塩である。SEI層は、初期電池充電サイクル中に形成される。このため、他の必要な属性全てに加えて、有機溶媒は、安定性および機能的の両方であるSEI層を形成できなければならない。SEI層は、電気絶縁性でなければならないが、リチウムイオンがSEI層を通って移動することを許容するという意味においてイオン伝導性でなければならない。SEI層の形成は、電池の性能にとって決定的に重要である。SEI層が形成されない場合、またはSEI層が緻密もしくは安定性でない場合は、電池はたとえ作動するとしても不良にしか作動しない。カーボネート溶媒間でさえSEI形成には大きな差がある。エチレンカーボネートは相当に優れたSEI形成材であるが、他のカーボネートは余り優れたSEI形成材ではない。これらのカーボネートベースの溶液中でのSEI形成をさらに強化する添加物を含むことは一般的である。ある範囲の化合物がカーボネートベースの溶媒系中でのSEI促進添加物として試みられてきたが、成功度は様々である。
【0007】
カーボネートベースの溶媒系に関する重要な制限は、動作温度である。エチレンカーボネートは37℃で自然に凍結し、ほとんどの使用にとっての通常の動作温度範囲内では固体または粘稠液であるため、そのままで溶媒として使用することはほとんどできない。このため、エチレンカーボネートに他の材料を加えることが、凍結温度を低下させ、より広範囲の動作温度を許容するために通常は不可欠である。ジエチルカーボネートは、通常はこの理由から共溶媒として存在する。エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒系でさえ−20℃以下の温度では極めて粘性または凍結することさえあり、これは電解質を通しての不良なイオン輸送および電池性能の損失を生じさせる。この不良な低温性能は、電池が低温に曝露させられる屋外用途(例えば自動車)または他の用途(例えば宇宙船)におけるこれらの電池の使用における主要な制限である。
【0008】
さらに、エチレンカーボネートは、サイクル中に二酸化炭素を遊離する可能性があり、これは電池の寸法変化(膨潤)を引き起こすことがある。エチレンカーボネートがサイクル中に分解すると、エチレンカーボネートは有意な量の熱を放出し、これは電池寿命を減少させ、さらに安全性に関する懸念を表す。有用な温度範囲を拡張するために、エチレンカーボネートは、通常は所望より低い引火点を有するジアルキルカーボネートと結合される。
【0009】
他の材料を含有する溶媒系が提案されている。特にそれらの他の材料は所定のエステル化合物である。所定のエステル化合物は、動作温度範囲を−20℃未満に拡張することを試みるためにカーボネートベースの溶媒系中での共溶媒として提案されてきた。これに沿った数種のアプローチは米国特許出願公開第2009/0253046号およびその中に言及された参考文献に記載されている。そこでは、所定の特定エステル化合物は、様々な量でエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート溶媒系中に組み込まれる。米国特許出願公開第2009/0253046号に記載されているエステル化合物は、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレートおよびブチルブチレートである。米国特許出願公開第2009/0253046号は、他のエステル、例えばメチルホルメート、メチルアセテートおよびエチルアセテートを多成分電解質調製物中で使用する初期の試みについて報告しており、それらのエステル溶媒が低温では良好な速度能力を生じさせないこと、およびカーボネート溶媒と混合した場合でさえ、25℃を超えると優れた弾力性を提示しないと記載している。
【0010】
米国特許第6492064号は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびメチルアセテートを含有するリチウム電池電解質溶媒、ならびにエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびアルキルもしくはフルオロアルキルエステル化合物を含有する他の溶媒について記載している。
【0011】
米国特許出願公開第2008−0241699号は、リチウム塩の存在下での化学的安定性、それらの大きな電気化学的安全窓、溶融温度、粘度、沸点、引火点、蒸気圧およびコストの基準に基づいて、リチウムイオン電池電解質のための溶媒として5種の特定エステルを提案している。これらのエステルは、γ−バレロラクトン、メチルイソブチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテートおよびジエチルオキサレートである。しかし米国特許出願公開第2008−0241699号は電解質溶媒としてそのようなエステルを使用して製造された電池について記載しておらず、これら5種の特定エステルのいずれかが安定性SEI層を形成できるか、またはどのような条件下で形成できるか、およびこのため、実際に、リチウム電池電解質溶媒として機能して成功を得られるか、またはどのような条件下で成功を得られるかについては指示していない。以下に示すように、これらの内の少なくとも3つは、また別の公知の電解質溶媒およびSEI形成材とブレンドされた場合でさえ、電解質溶媒としては失敗する。米国特許出願公開第2008−0241699号は、エチレンカーボネートをSEI形成材としてのエステル化合物とブレンドすることを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
所望であるのはリチウム電池電解質溶液のための溶媒系であり、該溶媒系は少なくとも−30℃から少なくとも40℃の温度範囲にわたって機能し、安定性SEI層を形成するので優れた電池性能を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、1つの態様では非水性電池電解質溶液であって、
(1)該電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)12個までの炭素原子を有する少なくとも1つのエーテルエステル化合物、8個までの炭素原子を有する少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物、またはそれらの混合物であって、その中に該リチウム塩が少なくとも0.1モル/L(リットル)の程度まで可溶性であり、該エーテルエステル化合物またはモノアルキルエステル化合物は部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい少なくとも1つのエーテルエステル化合物、少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物、またはそれらの混合物と、
(3)成分(2)および(3)の合重量に基づいて、0.5から20重量%のビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロエチレンカーボネートまたはそれらの2つもしくはそれ以上の混合物と
を含む非水性電池電解質溶液である。
【0014】
本発明は、さらにアノード、カソード、該アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータ、ならびに該アノードおよびカソードと接触している本発明の上記の電解質溶液を含む電池である。
【0015】
本出願人らは、ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジロキソラン−2−オンおよび/またはフルオロエチルカーボネートとこれらのエステル溶媒との組み合わせが優れた電池性能を提供することを見いだした。これは、電池電解質溶液が、存在するとしても、少量の非ハロゲン化環状アルキルカーボネートおよび非ハロゲン化直鎖状ジアルキルカーボネート溶媒しか含有していない場合でさえ事実である。本発明の電池電解質溶液中の少量のビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび/またはフルオロエチルカーボネートの存在は、安定性および機能的SEI層の形成を生じさせると思われる。この結果は、従前リチウム電池内でのSEI形成が非ハロゲン化環状アルキルカーボネート化合物、例えばエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートの存在に大きく依存してきたので、驚くべきことである。さらに、本出願人らは、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートベースの溶媒系中において有用であることが公知である他のSEIプロモーターが、大量のエチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネートが存在しない限り、これらのエステル溶媒とともに適正に機能できないことを見いだした。
【0016】
このため、本発明は、それによりエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびジアルキルカーボネートを所定のエステル溶媒と大部分をまたは完全に置換できる手段を提供する。したがって、好ましい実施形態では、電池電解質溶液は、非ハロゲン化アルキレンカーボネート、例えばエチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネートおよび/または非ハロゲン化直鎖状ジアルキルカーボネートまたはそれらの混合物を該溶液の重量に基づいて30%以下、好ましくは20%以下および一層より好ましくは10%以下含有しており、それらの物質を全く含有していなくてもよい。
【0017】
本発明は、これらのエステル溶媒が単純調製物中で特に優れた低温性能を提供する可能性があるという利点を得ることを可能にする。電池電解質溶液は、他の利点、例えばエチレンカーボネートベースの電解質溶液より低いバルク密度、最小ガス発生、および多数のエチレンカーボネートベースの電解質より高い引火点もまた提供する。エステル化合物の多くは分解後に放出する熱がエチレンカーボネートより少なく、これはさらに電池の寿命および安全性に寄与する。電池電解質溶液は、より高い電圧でも安定性であるので、これは5Vまたはそれ以上までの電圧を有する電池の構築を許容する。
【0018】
本発明は、他の態様では非水性電池電解質溶液であって、
(1)該電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)該リチウム塩を溶解させるために十分な量にある、12個までの炭素原子を有する2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートであって、該アルコキシ基は1から7個、好ましくは1から3個、およびより好ましくは1もしくは2個の炭素原子を含有し、部分的もしくは完全にフッ素化されてよく、該アルキル基は1から7個、好ましくは1から3個およびより好ましくは1もしくは2個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートと
を含む非水性電池電解質溶液である。本発明は、さらにアノード、カソード、該アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータを、該アノードおよびカソードと接触している本電池電解質溶液とともに含む電池である。
【0019】
2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートおよび2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート化合物は、非水性電解質溶液のために特に有益な溶媒である。これらの材料は、広い温度範囲にわたって、非ハロゲン化アルキレンカーボネート化合物、例えばエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートならびに非ハロゲン化ジアルキルカーボネート化合物の非存在下またはほぼ非存在下においてさえ優れた電池性能を提供する。2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートおよび2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート化合物は、高引火点、低凝固点を有し、それらが電池サイクル中に分解する場合に放出する熱はエチレンカーボネートより少ない。2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートおよび2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート化合物はさらにエチレンカーボネートよりはるかに低いバルク密度を有するので、それらの使用は電池重量の有意な低下をもたらすことができる。該2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートおよび2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート溶媒のさらにまた別の利点は、電池電解質溶液および該電解質溶液を含有する電池が少量の水(例えば、該電池電解質溶液の重量に基づいて1000ppmまたはそれ以上までの水)の存在下でより安定性である点である。50ppmという少量の水を含有する場合に容量保持の損失を示すエチレンカーボネートベースの電池電解質溶液とは相違して、本発明の電池電解質溶液を含有する電池は、1,000ppmまでまたはそれ以上の水という多量の含水量でさえ素晴らしい容量保持を示す。
【0020】
本発明は、他の態様では非水性電池電解質溶液であって、
(1)該電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)構造IおよびIIのいずれかによって表されるエーテルエステル化合物であって、
構造Iは
【化1】
(式中、Rは、水素、1から5個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR−O−R−基(式中、Rはアルキルであり、Rアルキレンであり、RおよびRは一緒に5個までの炭素元素を有する)である、Rは、1から7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレン基である、およびRは、1から3個の炭素原子を有する分枝状もしくは直鎖状アルキル基であり、このときR、RおよびRは一緒に12個までの炭素原子を有し、R、RおよびRの内の少なくとも1つは少なくとも部分的にフッ素化されている)であり、
および構造IIは、
【化2】
(式中、Rは、水素、1から6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR−O−R−基(式中、Rはアルキルであり、Rはアルキレンであり、RおよびRは一緒に6個までの炭素原子を有している)、およびRは6個までの炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基であり、このときRおよびRの内の少なくとも1つは少なくとも部分的にフッ素化されており、さらにRおよびRは一緒に7個までの炭素原子を有する)であるエーテルエステル化合物と
を含む非水性電池電解質溶液である。本発明は、さらにアノード、カソード、該アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータを、該アノードおよびカソードと接触している本電池電解質溶液とともに含む電池である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による2つの電池(実施例1および2)ならびに比較電池(比較電池A)についてのフルサイクル放電曲線(full cycle discharge curves)のグラフを示す。
【0022】
図2】本発明による電池(実施例1)ならびに2つの比較電池(比較電池AおよびB)についてのサイクル能力放電曲線のグラフを示す。
【0023】
図3】本発明による5つの電池(実施例3Aから3E)ならびに2つの比較電池(比較電池AおよびB)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0024】
図4】本発明による電池(実施例4)ならびに比較電池(比較電池A)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0025】
図5】本発明による2つの電池(実施例5および6)ならびに4つの比較電池(比較電池A、C、DおよびE)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0026】
図6】5つの比較電池(比較電池A、G、H、IおよびJ)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0027】
図7】本発明による3つの電池(実施例7、8および9)ならびに比較電池(比較電池A)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0028】
図8】本発明による3つの電池(実施例10、11および12)ならびに6つの比較電池(比較電池A、K、L、M、NおよびO)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0029】
図9】4つの比較電池(比較電池A、P1、P2およびP3)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0030】
図10】本発明による3つの電池(実施例13、14および15)ならびに3つの比較電池(比較電池A、Q1およびQ2)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0031】
図11】4つの比較電池(比較電池A、R1、R2およびR3)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【0032】
図12】本発明による2つの電池(実施例16および17)ならびに2つの比較電池(比較電池AおよびS)についてのフルサイクル放電曲線のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
リチウム塩は、リチウム塩、例えばLiAsF、LiPF、LiPF(C)、LiPF(C、LiBF、LiB(C、LiBF(C)、LiClO、LiBrO、LiIO、LiB(C、LiCHSO、LiN(SO、およびLiCFSOを含む電池使用のために適合するリチウム塩であってよい。LiPF、LiPF(C)、LiBF、LiB(C、LiCFSO、およびLiN(SOCFが好ましいタイプであり、LiPFが特に好ましいリチウム塩である。上記のリチウム塩のいずれか2つまたはそれ以上の混合物もまた使用できる。
【0034】
電池電解質溶液は、少なくとも0.1モル/L(0.1M)、好ましくは少なくとも0.5モル/L(0.5M)、より好ましくは少なくとも0.75モル/L(0.75M)、好ましくは3モル/L(3.0M)まで、およびより好ましくは1.5モル/L(1.5M)までのリチウム塩濃度を有する。
【0035】
電池電解質溶液は、12個までの炭素原子を有する少なくとも1つのエーテルエステル化合物、および/または8個までの炭素原子を有する少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物を含有しており、該エステル化合物中では、該リチウム塩はエステル化合物1L当たり少なくとも0.1モルの程度まで可溶性である。該エーテルエステル化合物またはモノアルキルエステル化合物は、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよいが、これは炭素原子に結合した水素の一部または全部(完全フッ素化の場合)がフッ素と置換されていてよいことを意味する。
【0036】
エーテルエステル化合物は、構造I:
【化3】
(式中、Rは、水素、1から5個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR−O−R−基(式中、Rはアルキルである、Rはアルキレンである、ならびにRおよびRは一緒に5個までの炭素原子を有する)によって表すことができる。Rは、1から7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレン基であり、Rは1から3個の炭素原子を有する分枝状もしくは直鎖状アルキル基である。R、RおよびRは、一緒に12個までの炭素原子、好ましくは9個までの炭素原子、およびより好ましくは7個までの炭素原子を有する。R、R、およびRのいずれかまたは全部は、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい。
【0037】
は、好ましくは部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい1から3個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。Rは、最も好ましくはメチル、エチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、またはトリフルオロメチルである。
【0038】
は、好ましくは部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい2から3個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基である。Rは、最も好ましくはエチレン(−CH−CH−)、2−メチルエチレン(−CH−CH(CH)−)、1−メチルエチレン(−CH(CH)−CH−)、プロピレン(−CH−CH−CH−)、または2,2−ジフルオロプロピレン(−CH−CF−CH−)である。
【0039】
は、好ましくは1から3個の炭素原子を有する部分的もしくは完全にフッ素化された直鎖状もしくは分枝状アルキル基であってよい、1から3個の炭素原子を有する直鎖状アルキルである。Rは、より好ましくは1または2個の炭素原子を有する。Rは、最も好ましくはメチル、エチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、または2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0040】
好ましいエーテルエステル化合物には、12個までの炭素原子を有する2−アルコキシエチルアセテート、2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートおよび2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート、例えば、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−エチルアセテート2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチルアセテート、2−メトキシエチルフルオロアセテート、2−エトキシエチルフルオロアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルフルオロアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルフルオロアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルフルオロアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルフルオロアセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−エチルフルオロアセテート、2−メトキシエチルジフルオロアセテート、2−エトキシエチルジフルオロアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルジフルオロアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルジフルオロアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルジフルオロアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルジフルオロアセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−エチルジフルオロアセテート、2−メトキシエチルトリフルオロアセテート、2−エトキシエチルトリフルオロアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルトリフルオロアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルトリフルオロアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルトリフルオロアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルトリフルオロアセテート、もしくは2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−エチルトリフルオロアセテートまたはそれらの2つまたはそれ以上の混合物が含まれる。
【0041】
他の有用なエーテルエステル化合物には、2−メトキシエチルプロピオネート、2−エトキシエチルプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−エチルプロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチルプロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシエチル2−フルオロプロピオネート、2−エトキシエチル2−フルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−フルオロプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−フルオロプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−フルオロプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−フルオロプロピオネート、2−メトキシエチル2,2−ジフルオロプロピオネート、2−エトキシエチル2,2−ジフルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル2,2−ジフルオロプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル2,2−ジフルオロプロピオネート、2−メトキシエチル3−フルオロプロピオネート、2−エトキシエチル3−フルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル3−フルオロプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル3−フルオロプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル3−フルオロプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル3−フルオロプロピオネート、2−メトキシエチル3,3−ジフルオロプロピオネート、2−エトキシエチル3,3−ジフルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル3,3−ジフルオロプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル3,3−ジフルオロプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル3,3−ジフルオロプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル3,3−ジフルオロプロピオネート、2−メトキシエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、2−エトキシエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、2−メトキシエチル2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−エトキシエチル2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−メトキシエチル2−メトキシアセテート、2−エトキシエチル2−メトキシアセテート、2−メトキシエチル2−エトキシアセテート、2−エトキシエチル2−エトキシアセテート、2−メトキシエチル2−メトキシプロピオネート、2−エトキシエチル2−メトキシプロピオネート、2−メトキシエチル2−エトキシプロピオネート、2−エトキシエチル2−エトキシプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル2,2−ジフルオロプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル2,2−ジフルオロプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−メトキシアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−メトキシアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−メトキシアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−メトキシアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−エトキシアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−エトキシアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−エトキシアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−エトキシアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル2−メトキシアセテート、2−メトキシエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル2−エトキシアセテート、2−エトキシエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル2−メトキシプロピオネート、2−メトキシエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル2−エトキシプロピオネート、2−エトキシエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチル2−メトキシアセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチル2−メトキシアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチル2−エトキシアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチル2−エトキシアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−メチルエチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネートなどが含まれる。
【0042】
モノアルキルエステル化合物は、構造II:
【化4】
(式中、Rは、水素、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい1から6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR−O−R−基(式中、Rはアルキル、Rはアルキレンであり、RおよびRは一緒に6個までの炭素原子を有する、およびRは部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい6個までの炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基である)である)によって表すことができる。RおよびRは一緒に7個までの炭素原子を有し、好ましくは一緒に3から6個の炭素原子を含有する。Rは、好ましくは少なくとも1つの炭素原子を含有する。
【0043】
適切なモノアルキルエステル化合物の例には、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、イソプロピルホルメート、ブチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、イソプロピルプロピオネート、イソブチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソプロピルブチレート、メチルバレレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、エチルヘキサノエート、メチルヘキサノエート、2,2,2−トリフルオロエチルホルメート、2,2,2−トリフルオロエチルアセテート、2,2,2−トリフルオロエチルプロピオネート、2,2,2−トリフルオロエチルブチレート、2,2,2−トリフルオロエチルバレレート、2,2,2−トリフルオロエチルイソバレレート、2,2,2−トリフルオロエチルヘキサノエート、メチルフルオロアセテート、エチルフルオロアセテート、プロピルフルオロアセテート、ブチルフルオロアセテート、アミルフルオロアセテート、ヘキシルフルオロアセテート、メチル2,2−ジフルオロプロピオネート、エチル2,2−ジフルオロプロピオネート、プロピル2,2−ジフルオロプロピオネート、ブチル2,2−ジフルオロプロピオネート、ペンチル2,2−ジフルオロプロピオネート、メチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、エチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、プロピル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、ブチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、ペンチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート、メチル2,2−ジフルオロブチレート、エチル2,2−ジフルオロブチレート、プロピル2,2−ジフルオロブチレート、メチルバレレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、エチルヘキサノエート、メチルヘキサノエート、メチル2−メトキシアセテート、エチル2−メトキシアセテート、プロピル2−メトキシアセテート、イソプロピル2−メトキシアセテート、ブチル2−メトキシアセテート、メチル2−エトキシアセテート、エチル2−エトキシアセテート、プロピル2−エトキシアセテート、イソプロピル2−エトキシアセテート、ブチル2−エトキシアセテート、メチル2−メトキシプロピオネート、エチル2−メトキシプロピオネート、プロピル2−メトキシプロピオネート、イソプロピル2−メトキシプロピオネート、ブチル2−メトキシプロピオネート、メチル2−エトキシプロピオネート、エチル2−エトキシプロピオネート、プロピル2−エトキシプロピオネート、イソプロピル2−エトキシプロピオネート、ブチル2−エトキシプロピオネート、(2,2,2−トリフルオロエチル)2−メトキシアセテート、2,2−ジフルオロプロピル2−メトキシアセテート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−メチルエチル2−メトキシアセテート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−(トリフルオロメチル)エチル2−メトキシアセテート、2−フルオロブチル2−メトキシアセテート、2,2−ジフルオロブチル2−メトキシアセテート、メチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、メチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)2−エトキシアセテート、エチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、プロピル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、イソプロピル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−メチルエチル2−エトキシアセテート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−(トリフルオロメチル)エチル2−エトキシアセテート、ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)アセテート、2−フルオロブチル2−エトキシアセテート、2,2−ジフルオロブチル2−エトキシアセテート、(2,2,2−トリフルオロエチル)2−メトキシプロピオネート、2,2−ジフルオロプロピル2−メトキシプロピオネート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−メチルエチル2−メトキシプロピオネート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−(トリフルオロメチル)エチル2−メトキシプロピオネート、2−フルオロブチル2−メトキシプロピオネート、2,2−ジフルオロブチル2−メトキシプロピオネート、メチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、メチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)2−エトキシプロピオネート、エチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、プロピル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、イソプロピル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−メチルエチル2−エトキシプロピオネート、(2,2,2−トリフルオロ)−1−(トリフルオロメチル)エチル2−エトキシプロピオネート、ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロピオネート、2−フルオロブチル2−エトキシプロピオネート、2,2−ジフルオロブチル2−エトキシプロピオネートなどが含まれる。2つもしくはそれ以上のエーテルエステル化合物および/またはモノアルキルエステル化合物の混合物を使用できる。
【0044】
一般には、エーテルエステル化合物またはモノアルキルエステル化合物は、各々2000未満、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは200ppm未満、一層より好ましくは50ppm未満、および一層より好ましくは30ppm未満の水およびアルコール化合物を含有するのが好ましいが、上述したように、本発明の電池電解質溶液の利点は、それが過度の容量保持損失を伴わずにこれらのレベルの水の存在を許容できる点にある。
【0045】
上記のエーテルエステルおよびモノアルキルエステル化合物は、ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび/またはフルオロエチレンカーボネートと結合された場合に優れた電解質溶媒であり、該電池電解質溶液中に追加の電解質溶媒を含むことは必要とされない。特に、該電池電解質溶液中に(その化合物が存在する場合は、フルオロエチルカーボネート以外の)カーボネート化合物を含むことは必要ではないが、所望であればそれらが存在してもよい。驚くべきことに、カーボネート化合物、特に非ハロゲン化アルキレンカーボネートおよび非ハロゲン化ジアルキルカーボネートの存在は、本発明の電池電解質溶液中には必要とされず、詳細には、該電解質溶液を含有する電池は安定性SEI層を形成し、これらのカーボネート化合物の非存在下でさえ良好に機能する。このため一部の実施形態における電池電解質溶液は、20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、または0.5%以下の非ハロゲン化アルキレンカーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、および/または非ハロゲン化ジアルキルカーボネートを含有しており、これらの化合物が欠如していてもよい。
【0046】
さらに、他の溶媒は、それらが存在する比率でエーテルエステル化合物またはモノアルキルエステル中に可溶性であることを前提に存在してよい。これらの他の溶媒の例には、例えば、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを含むアルキルエーテル類;環状エステル類、例えばγ−ブチローラクトン、γ−バレロラクトン、δーバレロラクトンなど;モノニトリル類、例えばアセトニトリルおよびプロピオニトリル;ジニトリル類、例えばグルタロニトリル;対称スルホン類、例えばジメチルスルホン、ジエチルスルホンなど;非対称スルホン、例えばエチルメチルスルホン、プロピルメチルスルホンなど;そのような対称もしくは非対称スルホンの誘導体、例えばメチルメトキシエチルスルホン、エチルメトキシエチルスルホンなど;スルホラン、例えばテトラメチレンスルホランなどが含まれる。凝集体中のそのような追加の溶媒は、該電解質溶液の総重量の30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下、一層より好ましくは1%以下、および最も好ましくは0.5%以下を構成するのが好ましい。電解質溶液は、そのような追加の溶媒を含んでいなくてもよい。
【0047】
本発明の一部の態様における電池電解質溶液は、ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロエチレンカーボネートまたはこれらの1つもしくはそれ以上の混合物を含有している。ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび/またはフルオロエチレンカーボネートは、それらにエーテルエステル化合物および/またはモノアルキルエステルを加えた合重量の0.5から20%を構成しなければならない。原理的にはより多くの量を使用できるが、そのようにする利点は小さい。約0.5重量%未満の量は、良好な電池性能を生成することに無効である傾向がある。好ましいレベルは、少なくとも1重量%である。好ましい上限は5重量%、およびより好ましい上限は2.5重量%であるが、これはこれらの量が、特に電解質体積(μL(マイクロリットル))対電池容量(mA/h(ミリアンペア/時))が10より大きい小型電池では一般に優れた電池性能を得るために十分なためである。電解質体積(μL)対電池容量(mA/h)の比率が10未満である大型の電池では、好ましい下限は少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%であり、好ましい上限は20重量%、より好ましくは15重量%、一層より好ましくは12重量%である。
【0048】
電池電解質溶液中には、既に言及した成分に加えて様々な他の添加物が存在してよい。これらには、例えば、様々なカソード保護剤、リチウム塩安定剤、リチウム分解改善剤、イオン溶媒和強化剤、腐食防止剤、湿潤剤、難燃剤(または熱散逸阻害剤)、および粘度低下剤を含むことができる。これらのタイプの多数の添加物は、Zhang in 「A review on electrolyte additives for lithium-ion batteries」, J. Power Sources 162 (2006) 1379-1394に記載されている。
【0049】
適切なカソード保護剤には、例えばN,N−ジエチルアミノ−トリメチルシランおよびLiB(Cが含まれる。リチウム塩安定剤には、LiF、トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスファイト、1−メチル−2−ピロリジノン、フッ素化カルバメートおよびヘキサメチルーホスホルアミドが含まれる。リチウム分解改善剤の例には、二酸化硫黄、ポリスルフィド、二酸化炭素、界面活性剤、例えばテトラアルキルアンモニウムクロライド、パーフルオロオクタンスルホネートのリチウムおよびテトラエチルアンモニウム塩、様々なパーフルオロポリエーテルなどが含まれる。クラウンエーテルは、様々なボレート、ホウ素およびボロール化合物と同様に適切なイオン溶媒和強化剤であってよい。LiB(CおよびLiFは、アルミニウム腐食防止剤の例である。シクロヘキサン、トリアルキルホスフェート、および所定のカルボン酸エステルは、湿潤剤および粘度低下剤として有用である。難燃剤もしくは「熱散逸阻害剤」の例には、様々なホスフィンオキシド(O:PR)、ホスフィナイト(P(OR)R)、ホスホナイト(P(OR)R)、ホスファイト(P(OR))、ホスフィネート(O:P(OR)R)、ホスホネート(O:P(OR)R)、およびホスフェート(O:P(OR))、例えばトリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスフェート化合物(式中、各Rは独立して水素または12個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である)、ならびにホスファゼン(−N=PR2−化合物(式中、各Rは、独立してハロゲン、12個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基、12個までの炭素原子を有するヒドロカルビルアミノ基、もしくは12個までの炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ基であり、xは3、4または5である)、ならびに構造I:
【化5】
(式中、Aは1つまたはそれ以上の芳香族環を有するラジカルである;各Rは、独立して1、2または3個の炭素原子を含有していてよい、および該A基の芳香族環の1つの炭素原子へ直接結合されているアルキレンジラジカルである;各Rは、独立して水素、ハロゲン、OH、12個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基または12個までの炭素原子を有するアルコキシル基である;またはリン原子に結合した2つのR基は、一緒に該リン原子を含む環状構造を形成してよい;およびxは、少なくとも1、好ましくは2または3である)によって表される芳香族リン化合物である。
【0050】
様々な他の添加物は、難燃剤/熱散逸阻害剤を除いて、一緒に該電池電解質溶液の総重量の20%まで、好ましくは10%までを構成してよい。難燃剤/熱散逸阻害剤は、該電池電解質溶液の80重量%までを構成してよい。
【0051】
電池電解質溶液は、それが0.5重量%以下の水を含有することを意味する非水性である。結果として生じる電池電解質溶液の水およびアルコールの含量は、できる限り低くなければならない。2000ppmもしくはそれ以下、または1000ppmもしくはそれ以下の結合した水およびアルコール含量が望ましい。本発明の利点は、本発明の電池電解質溶液を含有する電池が容量保持の有意な損失を伴わずにそのような水およびアルコールのレベルを許容できることである。より好ましい結合した水およびアルコールの含量は、100ppmまたはそれ以下、50ppmまたはそれ以下、または30ppmまたはそれ以下である。様々な成分は、電解質溶液を形成する前に乾燥もしくは処理することができる、および/または調製した電解質溶液は残留水および/またはアルコールを除去するために乾燥させるかまたは他の方法で処理することができる。選択された乾燥または処理法は、該電解質溶液の様々な成分を劣化または分解させてはならず、それらの間の望ましくない反応を促進してもならない。熱的方法は、乾燥剤、例えばモレキュラーシーブを使用できるように使用できる。
【0052】
電池電解質溶液は、便宜的にはリチウム塩、ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンもしくはフルオロエチレンカーボネートおよび該エステル化合物中に使用できるような任意の他の添加物を溶解または分散させる工程によって調製される。混合する順序は、一般には余り重要ではない。
【0053】
電池は任意のタイプ、例えばナトリウムイオン、リチウムイオン、リチウム硫黄、リチウム金属、リチウムポリマー電池またはリチウム空気電池であってよい。
【0054】
本発明の電池電解質溶液を含有する電池は、任意の有用な構造であってよい。典型的な電池構造には、アノードおよびカソードを、該アノードおよびカソードの間の電解質溶液を通ってイオンが移動できるように該アノードおよびカソードの間に挿入されるセパレータおよび電解質溶液とともに含んでいる。この組立体は、一般にケース内に詰められる。電池の形状は、限定されない。電池は、渦巻き形シート電極およびセパレータを含有する円筒型であってよい。電池は、ペレット電極およびセパレータの組み合わせを含む裏返し構造を有する円筒型であってよい。電池は、重ね合わされている電極およびセパレータを含有するプレート型であってよい。
【0055】
適切なアノード材料としては、例えば、炭質材料、例えば天然もしくは人造グラファイト、炭化ピッチ、炭素繊維、黒鉛化中間相ミクロスフェア、ファーネスブラック、アセチレンブラック、および様々な他の黒鉛化材料が挙げられる。炭質材料は、結合剤、例えばポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、スチレンーブタジエンコポリマー、イソプレンゴム、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリエチレン、またはニトロセルロースを使用して一緒に結合できる。適切な炭質アノードおよび同一物を構築するための方法は、例えば、米国特許第7169511号に記載されている。
【0056】
他の適切なアノード材料としては、リチウム金属、リチウム合金、他のリチウム化合物、例えばリチウムチタネートおよび金属酸化物、例えばTiO、SnCおよびSiOが挙げられる。
【0057】
適切なカソード材料としては、遷移金属酸化物、遷移金属/リチウム複合酸化物、リチウム/遷移金属複合リン酸塩、遷移金属硫化物、金属酸化物、遷移金属ケイ酸塩、硫黄、多硫化物および空気が挙げられる。遷移金属酸化物の例には、MnO、V、V13、およびTiOが含まれる。遷移金属/リチウム複合酸化物の例には、それらの塩基組成がほぼLiCoOであるリチウム/コバルト複合酸化物、それらの塩基組成がほぼLiNiOであるリチウム/ニッケル複合酸化物およびそれらの塩基組成がほぼLiMnまたはLiMnOであるリチウム/マンガン複合酸化物が含まれる。これらの場合の各々において、リチウム、コバルト、ニッケルまたはマンガンの一部は、1つまたは2つの金属、例えばAl、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、GaまたはZrと置換することができる。リチウム、コバルト、ニッケルまたはマンガンの一部が1つまたはそれ以上の金属、例えばAl、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、GaまたはZrと置換されている遷移金属/リチウム複合酸化物には、さらに式Lix+yMn2−y−zを有するリチウム挿入化合物もまた含まれ、該挿入化合物はスピネル様結晶構造を有し、式中、Mは、金属、例えば、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、GaまたはZrであり、xは0またはそれ以上および1未満の数であり、yはゼロまたはそれ以上および0.33未満の数であり、zはゼロまたはそれ以上および約1未満の数であり、リチウム挿入化合物の電位はLi/Liに対して約4.5V(ボルト)より高い。リチウム/遷移金属複合リン酸塩としては、リン酸リチウム鉄、リン酸マンガンリチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸鉄マンガンリチウムなど、ならびに例えば国際公開第2009/127901号パンフレットおよび同第2009/144600号パンフレットに記載されているものが挙げられる。有用な金属ケイ酸塩の例には、オルトケイ酸リチウム鉄が含まれる。
【0058】
電極は、各々一般には電流コレクタと電気的接触しているか、または電流コレクタ上に形成される。アノードのために適切な電流コレクタは、金属または金属合金、例えば銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、チタンなどである。カソードのために適切な電流コレクタには、アルミニウム、チタン、タンタル、これらの2つまたはそれ以上の合金などが含まれる。
【0059】
セパレータは、該アノードおよびカソードの間に該アノードおよびカソードが相互に接触して短絡することを防止するために配置される。セパレータは、便宜的には非導電材料である。セパレータは、作動条件下では電解質溶液または該電解質溶液の成分のいずれかと反応性またはいずれかに可溶性であってはならない。ポリマーセパレータは、一般に好適である。セパレータを形成するために適切なポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホンなどが含まれる。
【0060】
電解質溶液は、セパレータを透過できなければならない。このために、セパレータは、一般に多孔性であり、多孔性シート、不織布または織布などの形態にある。セパレータの多孔性は、一般に20%またはそれ以上、90%という高さまでである。好ましい多孔性は、30から75%である。孔は、一般には0.5ミクロン以下であり、好ましくはそれらの最長寸法において0.05ミクロンまでである。セパレータは、典型的には厚さ少なくとも1ミクロンであり、厚さ50ミクロンまでであってよい。好ましい厚さは、5から30ミクロンである。
【0061】
電池は、好ましくは二次(再充電可能)電池、より好ましくは二次リチウム電池である。そのような電池では、放電反応にはアノードから電解質溶液内へのリチウムイオンの溶解または脱リチオ化およびカソード内へのリチウムイオンの同時取り込みが含まれる。充電反応は、逆に、電解質溶液からアノード内へのリチウムイオンの組み込みを含んでいる。充電後、リチウムイオンはアノード側で還元され、同時に、カソード材料内のリチウムイオンは電解質溶液中に溶解する。
【0062】
本発明の電池は、工業的用途、例えば電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、航空宇宙機および装置、電動自転車などにおいて使用できる。本発明の電池は、多数の電気装置および電子装置、例えば特にコンピュータ、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、PDA、MP3およびその他のミュージックプレイヤー、ツール、テレビ、玩具、ビデオゲームプレイヤー、家庭用用途、医療器具、例えばペースメーカーおよび除細動器を作動させるためにも有用である。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されているが、本発明の範囲を限定することは意図されていない。全ての部およびパーセンテージは、他に特に指示しない限り重量による。
【0064】
実施例1から2および比較電池AおよびB
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物中でLiPFの1.0M溶液から成る対照電池電解質溶液は、高出力Li1.1(Ni1/3Mn1/3Co1/30.9(NMC)カソード、グラファイトアノード、およびポリオレフィンセパレータを有する2025ボタン電池内に導入する。該ボタン電池は比較電池Aと指定する。該電解質溶液のバルク密度は、25℃で1.3g/mLである。比較電池Aについてのフルサイクル放電曲線は、Maccor 4000バッテリテスターを、(SEI形成サイクルに従った)順番に0.5C、0.1C、0.33C、1C、2C、3C、5C、8C、10C、12C、15C、20C、および最後に0.1Cの放電率を使用して生成する。その試験からの代表的な放電曲線は、図1において曲線「A」として示す。
【0065】
第2の同一電池を調製する(同様に比較電池Aと指定する)。サイクル能力試験を実施し、この電池の放電曲線は、同一テスターを使用し、初期0.1C放電率を使用し、その後に100放電サイクルが実施されるまで25回の1C放電サイクル、その後にまた別の0.1C放電サイクルのパターンを繰り返すことによって生成する。そのサイクル能力試験からの代表的な放電曲線は、図2において曲線「A」として示す。
【0066】
比較電池Bは、電解質溶液が98部のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、同一方法で調製される。サイクル能力試験は、比較電池Aと同一方法で実施する。そのサイクル能力試験からの代表的な放電曲線は、図2において曲線「B」として示す。
【0067】
電池実施例1は、電解質溶液が98重量%のメトキシエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。フルサイクル放電試験は、電池実施例1上で比較電池Aと同一方法で実施する。フルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、図1において曲線1として示す。サイクル能力試験は、比較電池AおよびBと同一方法で実施する。そのサイクル能力試験からの代表的な放電曲線は、図1において曲線1として示す。
【0068】
電池実施例2は、電解質溶液が98重量%のエトキシエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。フルサイクル放電試験は、電池実施例2上で比較電池Aと同一方法で実施する。フルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、図1において曲線2として示す。
【0069】
図1に示したように、電池実施例1(メトキシエチルアセテートに加えて溶媒としての2%ビニレンカーボネートを含有する)は、フルサイクル放電試験上で比較電池Aと同等またはより良好に機能する。比容量は3C未満の放電率では比較電池Aについてより電池実施例1についての方が大きく、全てのより高い放電率では比較電池Aに極めて近いか同等である。この結果は、比較電池Aのエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒混合物はリチウム電池における最先端技術を表しているため、および比較電池A内の成分とは相違して、メトキシエチルアセテートはSEI層を形成するためには公知ではないために、高度に驚くべきことである。電池実施例2は、5Cおよびそれ以下の放電率では電池実施例1と極めて同様に機能する。
【0070】
図2は、電池実施例1がサイクル能力試験にわたって比較電池のいずれかよりも良好な比容量を保持することを証明している。本試験では、比較電池Aはサイクル能力試験の早期(第20サイクルより前)にわずかに高い比容量を示すが、その比容量は電池実施例1より迅速に低下する。約50サイクル後、電池実施例1の比容量は、比較電池Aの比容量を上回る。第38サイクルから第100サイクルまで、電池実施例1はその比容量の0.49%しか損失しないが、他方比較電池Aはその期間にわたってその容量の2.86%を損失する。本試験では、電池実施例1は、同等またはより優れた比容量で比較電池Aより長い耐用年数を有することが示される。
【0071】
比較電池Bについての結果は、2%ビニレンカーボネートをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒系に加えた場合の作用を示している。比容量は、比較電池Aおよび電池実施例1の両方の比容量より低く、容量損失の比率は有意に高い。比較電池Bからの結果は、ビニレンカーボネートのエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒系内への添加が、ビニレンカーボネートはSEI形成添加物として機能すると理解されているにもかかわらず、電池性能を実際に傷つけることを証明している。
【0072】
実施例3
電池実施例3Aから3Eは、電解質溶液がメトキシエチルアセテートおよびビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。これらの実施例についてのメトキシエチルアセテートおよびビニレンカーボネートの比率は以下の通りである:
実施例3A:99.5%メトキシエチルアセテートおよび0.5%ビニレンカーボネート。
実施例3B:99%メトキシエチルアセテートおよび1%ビニレンカーボネート。
実施例3C:98%メトキシエチルアセテートおよび2%ビニレンカーボネート。
実施例3D:95%メトキシエチルアセテートおよび5%ビニレンカーボネート。
実施例3E:90%メトキシエチルアセテートおよび10%ビニレンカーボネート。
フルサイクル放電サイクリングは、上述した方法で電池実施例3Aから3Eの各々について実施する。これらの電池各々のフルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、図3において各々曲線3Aから3Eとして示す。
【0073】
比較電池AおよびBに類似する電池を製造し、参照のために試験する。これらの比較電池各々のフルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、図3において曲線AおよびBとして示す。
【0074】
曲線3Aから3Eは、メトキシエチルアセテート電池電解質溶液にビニレンカーボネートを加える作用を示している。より高い量のビニレンカーボネートの添加が全試験サイクルにわたってはるかに高い電池容量をもたらす。この結果は、ビニレンカーボネートがエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶液に加えられた場合に(比較電池Bにおけると同様に)得られた結果とは対照的であり、このとき放電容量における利得は見られない。図3に示したように、1%ビニレンカーボネートのメトキシエチルアセテート電解質溶液への添加は、0.5%ビニレンカーボネートの場合に比して極めて有意な改善をもたらす。ビニレンカーボネートの2%へのさらなる倍増は、また別の極めて実質的な改善をもたらす。ビニレンカーボネート含量における10%へのさらなる増加は、本試験における比容量のより小さな改善を提供する。実施例3Aから3Eに類似するが、ビニレンカーボネートを含有しない電池は、充電に失敗し、本質的に比容量を示さない。
【0075】
実施例4
電池実施例4は、電解質溶液が98重量%の2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートは、水および残留アルコール含量各々を50ppm未満へ低下させるために蒸留されている市販で入手できる材料Dowanol(商標)PMAである。この材料は、−87℃の凝固点、エチレンカーボネートより10℃高い引火点を有し、エチレンカーボネートの1.321g/mLの密度と比較してたった0.97g/mLのバルク密度を有する。該電解質溶液のバルク密度は、1.1g/mLに過ぎない。電池実施例4および比較電池Aについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように生成し、代表的曲線は図4において各々「4」および「A」として示す。
【0076】
図4に示したように、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート(2%ビニレンカーボネートを備える)とエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの1:1混合物との置換は、匹敵する性能を備える電池をもたらす。
【0077】
実施例5から9および比較電池CからJ
電池実施例5は、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0078】
電池実施例6は、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%の4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0079】
比較電池Cは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のビニルアセテートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0080】
比較電池Dは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のアリルメチルカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0081】
比較電池Eは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のプロパルギルベンゼンスルホネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0082】
比較電池Fは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のメチルクロロホルメートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0083】
電池実施例5および6ならびに比較電池A、C、D、およびEについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得る。代表的曲線は、図5において各々曲線5、6、A、C、D、およびEとして示す。比較電池Fは、4.2Vでは電荷を保持しないので、試験されていない。
【0084】
図5に示した結果は、SEI添加物の選択がエステルベースの電解質溶液中での性能にとっていかに重要であるかを示している。ビニレンカーボネートおよび4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンは極めて良好に機能し、電解質溶液内にそれらを含有する電池は、最先端技術を表す比較電池Aと同等に機能する。残留しているSEI添加物は、メチルクロロホルメートを除く全てがビニレンカーボネートおよび4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンと同様に重合可能なタイプである場合でさえ優れた電池性能をもたらさない。これらの結果は、メトキシエチルアセテート電解質溶液中のSEI添加物の性能が容易には予測可能ではないことを示しており、優れた電池性能をもたらす機序はエステルベースの溶媒系を用いても明確には理解されていない。
【0085】
比較電池GからJは、各場合における電解質溶液が以下のような溶媒混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一方法で形成する。
【0086】
比較電池G:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で90/10の混合物。
【0087】
比較電池H:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で95/5の混合物。
【0088】
比較電池I:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で98/2の混合物。
【0089】
比較電池J:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で99/1の混合物。
【0090】
比較電池GからJについてのフルサイクル放電曲線は上述したように得る。代表的曲線は、図6において各々曲線G、H、I、およびJとして示す。比較電池Aについての代表的な放電曲線もまた示す。
【0091】
表6に示した結果は、米国特許出願公開第2008−0241699号における提言とは対照的に、エチレンカーボネート自体が、エステル溶媒系に少量で加えられた場合にSEI形成材としては不良に機能すると思われることを示している。不良なSEI形成は、比較電池GからJの低比容量によって明らかになる。
【0092】
電池実施例7から9は、各場合における電解質溶液が以下のような溶媒混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一方法で形成する。
【0093】
電池実施例7:100部のメトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で50/50の混合物を2部のビニレンカーボネートと混合する。
【0094】
電池実施例8:100部のメトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で75/25の混合物を2部のビニレンカーボネートと混合する。
【0095】
電池実施例9:100部のエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの重量で50/50の混合物を10部のメトキシエチルアセテートおよび2部のビニレンカーボネートと混合する。
【0096】
電池実施例7から9についてのフルサイクル放電曲線は上述したように得た。代表的曲線は、図7において各々曲線7、8、および9として示す。比較電池Aについての代表的な放電曲線もまた示す。
【0097】
表7に示した結果は、カーボネート溶媒、例えばエチレンカーボネートとエステル、例えばメトキシエチルアセテートの混合物が、SEI形成材、例えばビニレンカーボネートもまた存在する場合に有用な電池電解質溶液を形成できることを示している。しかし、電池実施例7から9の性能は本発明の実施例1、2、3C、4、または5の性能ほど良好ではなく、これは環状アルキレンカーボネートの包含が余り好ましくないことを示唆している。
【0098】
実施例10から12および比較電池KからO
電池実施例10は、電解質溶液が、水および残留アルコール含量各々を50ppm未満に減少させるために蒸留されている95重量%のDowanol(商標)PMA 2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートと5重量%のビニレンカーボネートとの混合物中の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0099】
電池実施例11は、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%の4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0100】
電池実施例12は、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のフルオロエチレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0101】
比較電池Kは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%の1,3−プロパンスルトンの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0102】
比較電池Lは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のプロパルギルベンゼンスルホネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0103】
比較電池Mは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のアリルメチルカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0104】
比較電池Nは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%の1,3−プロパンスルトンの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0105】
比較電池Oは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のビニルアセテートの混合物中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0106】
電池実施例10から12ならびに比較電池A、およびKからOについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得た。代表的曲線は、図8において各々曲線10、11、12、A、K、L、M、NおよびOとして示す。
【0107】
図8に示した結果は、SEI添加物の選択が2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートベースの電解質溶液中での性能にとっていかに重要であるかを示している。ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンおよびフルオロエチレンカーボネートは極めて良好に機能し、電解質溶液内にそれらを含有する電池は、最先端技術を表す比較電池Aと同等に機能する。残留しているSEI添加物は、優れた電池性能をもたらさない。これらの結果は、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート電解質溶液中のSEI添加物の性能が容易には予測可能ではないことを示しており、優れた電池性能をもたらす機序はこの溶媒系を用いても明確には理解されない。
【0108】
比較電池P1、P2およびP3
比較電池P1は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびメチルイソブチリルアセテートの体積で75/25の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0109】
比較電池P2は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびメチルイソブチリルアセテートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0110】
比較電池P3は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびメチルイソブチリルアセテートの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0111】
比較電池AおよびP1からP3についてのフルサイクル放電曲線は上述したように得る。代表的曲線は、図9において各々曲線A、P1、P2およびP3として示す。
【0112】
これらの結果は、メチルイソブチリルアセテートが、公知の電池電解質溶媒(エトキシメチルエチルスルホン)およびビニレンカーボネートと結合して使用した場合でさえ電池性能を強度に低下させることを示しており、候補溶媒性能の予測不可能性を強調している。
【0113】
実施例13から15および比較電池Q1およびQ2
電池実施例13は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよび2−エトキシエチルアセテートの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0114】
電池実施例14は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよび2−エトキシエチルアセテートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0115】
電池実施例15は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよび2−エトキシエチルアセテートの体積で75/25の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0116】
比較電池Q1は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびジエチルオキサレートの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0117】
比較電池Q2は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびジエチルオキサレートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0118】
電池実施例13から15ならびに比較電池A、Q1およびQ2についてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得る。代表的曲線は、図10において各々曲線13、14、A、Q1およびQ2として示す。
【0119】
これらの結果は、ジエチルオキサレートが、公知の電池電解質溶媒(エトキシメチルエチルスルホン)およびビニレンカーボネートと結合して使用した場合でさえ電池性能を強度に低下させることを示している。他方、2−エトキシエチルアセテートは、エトキシメチルエチルスルホンおよびビニレンカーボネートと組み合わせると良好に機能する。
【0120】
比較電池R1、R2およびR3
比較電池R1は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびγ−バレロラクトンの体積で75/25の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0121】
比較電池R2は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびγ−バレロラクトンの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0122】
比較電池R3は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびγ−バレロラクトンの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0123】
比較電池AおよびR1からR3についてのフルサイクル放電曲線は上述したように得る。代表的曲線は、図11において各々曲線A、R1、R2およびR3として示す。
【0124】
これらの結果は、γ−バレロラクトンが、公知の電池電解質溶媒(エトキシメチルエチルスルホン)およびビニレンカーボネートと結合して使用した場合でさえ電池性能を強度に低下させることを示している。これらの結果は、さらに候補溶媒性能の予測不可能性を強調している。
【0125】
実施例16から17および比較電池S
電池実施例16は、電解質溶液が98部のブチルアセテートおよび2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0126】
電池実施例17は、電解質溶液が98部のヘキシルアセテートおよび2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0127】
電池実施例Sは、電解質溶液が98部のオクチルアセテートおよび2部のビニレンカーボネート中のLiPFの1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0128】
電池実施例16および17ならびに比較電池AおよびSについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得る。代表的曲線は、図12において各々曲線16、17、AおよびSとして示す。
【0129】
これらの結果は、ビニレンカーボネートと結合したブチルアセテートが最先端技術のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートベースの電解質溶液と同等に機能することを示している。ビニレンカーボネートと結合したヘキシルアセテートは、わずかに不良に機能する。しかしオクチルアセテートは、ビニレンカーボネートが存在する場合でさえ、一層より不良に機能する。
【0130】
実施例18から22および比較サンプルT
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物中のLiPFの1.0M溶液から成る対照電池電解質溶液は、18650渦巻き形電池内に導入する。この電池は、比較電池Tと指定する。この電池は、4,000μLの電池電解質溶液を含有しており、2,000mAhの容量を有する。
【0131】
電池実施例18は、電解質溶液が98重量%のメトキシエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例18は、比較電池Tより良好には機能せず、サイクリング中の一部の気体の発生を証明している。
【0132】
電池実施例19は、電解質溶液が98重量%の乾燥したDowanol(商標)PMAおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例19は電池実施例18と同様に機能する。
【0133】
電池実施例20は、電解質溶液が98重量%の容積で4:1のDowanol(商標)PMA:エチレンカーボネートブレンドおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例20は比較電池Tと同等に機能する。
【0134】
電池実施例21は、電解質溶液が90重量%の乾燥したDowanol(商標)PMAおよび10重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例21は電池実施例18と同様に機能する。この実施例は実施例19と一緒に、電解質体積:容量が約2の比率を有する大型電池では、良好なSEI形成および電解質安定性を得るためにはより多量のビニレンカーボネートが必要とされることを示している。
【0135】
電池実施例22は、電解質溶液が98重量%の乾燥したDowanol(商標)PMAおよび10重量%の4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例22は比較電池Tと同様に機能し、さらに大型電池において優れたSEI形成および電解質安定性を得るためにはより多量のビニレンカーボネートが必要とされる可能性があることを示唆している。
【0136】
実施例23および比較電池U
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物中でLiPFの1.0M溶液から成る対照電池電解質溶液は、高出力Li1.1(Ni1/3Mn1/3Co1/30.9(NMC)カソード、グラファイトアノード、およびポリオレフィンセパレータを有する2025ボタン電池内に導入する。この電池電解質溶液の含水量は、約1,000ppmである。該ボタン電池は比較電池Uと指定する。
【0137】
電池実施例23は、電解質溶液が98重量%のDowanol PMAおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。この電解質溶液の含水量もまた、約1,000ppmである。
【0138】
サイクル能力試験は、先行実施例と同様に比較電池Uおよび電池実施例23上で実施する。比較電池Uは、たった100サイクル後にその容量を約12%損失する。電池実施例23は、100サイクル後にその容量を約3.5%しか損失しない。
【0139】
実施例24から27
電池実施例24では、2,2,2−トリフルオロエチルアセテート中のLiPFの1.0M溶液から成る電池電解質溶液のサイクリック・ボルタンメトリー(電流密度μA/cm対電位、V対Li/Li)は、白金作用電極、リチウム箔対極および基準電極を用いて記録される。走査速度は50mV/sであり、電圧安定性は300μA/cmの電流密度で計算される。電圧安定性は、4.89Vであると見いだされている。
【0140】
電池実施例25は、電解質溶液がエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、実施例24と同一方法で実施する。電圧安定性は、4.67Vであると見いだされている。
【0141】
電池実施例26は、電解質溶液がメチル2−フルオロアセテート中のLiPFの1.0M溶液から成ることを除いて、実施例24と同一方法で実施する。電圧安定性は、4.79Vであると見いだされている。
【0142】
電池実施例27は、電解質溶液が2−メトキシ−1−メチルエチル2−メトキシアセテート中のLiPF6の1.0M溶液から成ることを除いて、実施例24と同一方法で実施する。電圧安定性は、4.58Vであると見いだされている。
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
[1]非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)12個までの炭素原子を有する少なくとも1つのエーテルエステル化合物、8個までの炭素原子を有する少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物、またはそれらの混合物であって、その中に前記リチウム塩が少なくとも0.1モル/Lの程度まで可溶性であり、前記エーテルエステル化合物またはモノアルキルエステル化合物が部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい少なくとも1つのエーテルエステル化合物、少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物、またはそれらの混合物と、
(3)成分(2)および(3)の結合重量に基づいて、0.5から20重量%のビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロエチレンカーボネートまたはそれらの2つまたはそれ以上の混合物と
を含む非水性電池電解質溶液。
[2]0から30重量%の追加の溶媒を含有する、上記[1]に記載の電池電解質溶液。
[3]0から30%を含有する、上記[1]または[2]に記載の電池電解質溶液。CTEの調整は、大部分は追加の充填剤粒子から行われる。RFC繊維はACMに近いCTEを有し、生体内溶解性繊維はACMより高いCTEを有し、小さな板状体(例、アルミナ)の大多数もまたACMより高いCTEを有する。私は、後のセクションにおいてあなたが特性を調整するための補助粒子について話す予定であると考えている。これは、一部の強化が自然にCTEを低下させる可能性があるために堅実な戦略である可能性がある。さもなければ、追加量のセラミック粒子が加えられなければならない。重量でエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアルキルカーボネートまたはそれらの混合物。
[4]5重量%以下のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアルキルカーボネートまたはそれらの混合物を含有する、上記[3]に記載の電池電解質溶液。
[5]成分2には、12個までの炭素原子を有する少なくとも1つの2−アルコキシエチルアセテート、2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートまたは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートが含まれる、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[6]成分2は、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテートまたはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[7]成分2は、2−メトキシエチルプロピオネート、2−エトキシエチルプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテート、またはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[8]成分2は、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、メチルバレレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、エチルヘキサノエート、メチルヘキサノエート、またはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[9]非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)前記リチウム塩を溶解させるために十分な量にある、12個までの炭素原子を有する2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートであって、前記アルコキシ基は1から7個、好ましくは1から3個、およびより好ましくは1もしくは2個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよく、前記アルキル基は1から7個、好ましくは1から3個およびより好ましくは1もしくは2個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてもよい、2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートと
を含む非水性電池電解質溶液。
[10]さらに(3)成分(2)および(3)の結合重量に基づいて0.5から10重量%のビニレンカーボネートまたは4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを含有する、上記[9]に記載の電池電解質溶液。
[11]前記2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートまたは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート化合物は、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテートまたはそれらの2つまたはそれ以上の混合物である、上記[8]または[9]に記載の電池電解質溶液。
[12]非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)構造IおよびIIのいずれかによって表されるエーテルエステル化合物であって、
構造Iは
【化6】
(式中、R1は、水素、1から5個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR4−O−R5−基(式中、R4はアルキルであり、R5アルキレンであり、R4およびR5は一緒に5個までの炭素元素を有する)であり、R2は、1から7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレン基であり、およびR3は、1から3個の炭素原子を有する分枝状もしくは直鎖状アルキル基であり、このときR1、R2およびR3は一緒に12個までの炭素原子を有し、R1、R2およびR3の内の少なくとも1つは少なくとも部分的にフッ素化されている)であり、
および構造IIは、
【化7】
(式中、R6は、水素、1から6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR8−O−R9−基(式中、R8はアルキルであり、R9はアルキレンであり、R8およびR9は一緒に6個までの炭素原子を有している)であり、およびR7は6個までの炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基であり、このときR6およびR7の内の少なくとも1つは少なくとも部分的にフッ素化されており、さらにR6およびR7は一緒に7個までの炭素原子を有する)であるエーテルエステル化合物と
を含む非水性電池電解質溶液。本発明は、さらにアノード、カソード、前記アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータを、前記アノードおよびカソードと接触している本電解質溶液とともに含む電池である。
[13]前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3およびLi[(CF3SO3)2N]の内の少なくとも1つである、上記[1]から[12]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[14]カソード保護剤、リチウム塩安定剤、リチウム分解改善剤、イオン溶媒和強化剤、腐食防止剤、湿潤剤および粘度低下剤から選択される少なくとも1つの他の添加物をさらに含む、上記[1]から[13]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[15]アノード、カソード、前記アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータ、ならびに前記アノードおよびカソードと接触している電解質溶液を含み、前記電解質溶液は上記[1]から[14]のいずれかに記載の電池電解質溶液である電池。
[16]二次電池である、上記[15]に記載の電池。
[17]リチウムイオン、リチウム硫黄、リチウム金属またはリチウムポリマー電池である、上記[15]または[16]に記載の電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12