【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されているが、本発明の範囲を限定することは意図されていない。全ての部およびパーセンテージは、他に特に指示しない限り重量による。
【0064】
実施例1から2および比較電池AおよびB
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物中でLiPF
6の1.0M溶液から成る対照電池電解質溶液は、高出力Li
1.1(Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3)
0.9O
2(NMC)カソード、グラファイトアノード、およびポリオレフィンセパレータを有する2025ボタン電池内に導入する。該ボタン電池は比較電池Aと指定する。該電解質溶液のバルク密度は、25℃で1.3g/mLである。比較電池Aについてのフルサイクル放電曲線は、Maccor 4000バッテリテスターを、(SEI形成サイクルに従った)順番に0.5C、0.1C、0.33C、1C、2C、3C、5C、8C、10C、12C、15C、20C、および最後に0.1Cの放電率を使用して生成する。その試験からの代表的な放電曲線は、
図1において曲線「A」として示す。
【0065】
第2の同一電池を調製する(同様に比較電池Aと指定する)。サイクル能力試験を実施し、この電池の放電曲線は、同一テスターを使用し、初期0.1C放電率を使用し、その後に100放電サイクルが実施されるまで25回の1C放電サイクル、その後にまた別の0.1C放電サイクルのパターンを繰り返すことによって生成する。そのサイクル能力試験からの代表的な放電曲線は、
図2において曲線「A」として示す。
【0066】
比較電池Bは、電解質溶液が98部のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、同一方法で調製される。サイクル能力試験は、比較電池Aと同一方法で実施する。そのサイクル能力試験からの代表的な放電曲線は、
図2において曲線「B」として示す。
【0067】
電池実施例1は、電解質溶液が98重量%のメトキシエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。フルサイクル放電試験は、電池実施例1上で比較電池Aと同一方法で実施する。フルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、
図1において曲線1として示す。サイクル能力試験は、比較電池AおよびBと同一方法で実施する。そのサイクル能力試験からの代表的な放電曲線は、
図1において曲線1として示す。
【0068】
電池実施例2は、電解質溶液が98重量%のエトキシエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。フルサイクル放電試験は、電池実施例2上で比較電池Aと同一方法で実施する。フルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、
図1において曲線2として示す。
【0069】
図1に示したように、電池実施例1(メトキシエチルアセテートに加えて溶媒としての2%ビニレンカーボネートを含有する)は、フルサイクル放電試験上で比較電池Aと同等またはより良好に機能する。比容量は3C未満の放電率では比較電池Aについてより電池実施例1についての方が大きく、全てのより高い放電率では比較電池Aに極めて近いか同等である。この結果は、比較電池Aのエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒混合物はリチウム電池における最先端技術を表しているため、および比較電池A内の成分とは相違して、メトキシエチルアセテートはSEI層を形成するためには公知ではないために、高度に驚くべきことである。電池実施例2は、5Cおよびそれ以下の放電率では電池実施例1と極めて同様に機能する。
【0070】
図2は、電池実施例1がサイクル能力試験にわたって比較電池のいずれかよりも良好な比容量を保持することを証明している。本試験では、比較電池Aはサイクル能力試験の早期(第20サイクルより前)にわずかに高い比容量を示すが、その比容量は電池実施例1より迅速に低下する。約50サイクル後、電池実施例1の比容量は、比較電池Aの比容量を上回る。第38サイクルから第100サイクルまで、電池実施例1はその比容量の0.49%しか損失しないが、他方比較電池Aはその期間にわたってその容量の2.86%を損失する。本試験では、電池実施例1は、同等またはより優れた比容量で比較電池Aより長い耐用年数を有することが示される。
【0071】
比較電池Bについての結果は、2%ビニレンカーボネートをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒系に加えた場合の作用を示している。比容量は、比較電池Aおよび電池実施例1の両方の比容量より低く、容量損失の比率は有意に高い。比較電池Bからの結果は、ビニレンカーボネートのエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶媒系内への添加が、ビニレンカーボネートはSEI形成添加物として機能すると理解されているにもかかわらず、電池性能を実際に傷つけることを証明している。
【0072】
実施例3
電池実施例3Aから3Eは、電解質溶液がメトキシエチルアセテートおよびビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。これらの実施例についてのメトキシエチルアセテートおよびビニレンカーボネートの比率は以下の通りである:
実施例3A:99.5%メトキシエチルアセテートおよび0.5%ビニレンカーボネート。
実施例3B:99%メトキシエチルアセテートおよび1%ビニレンカーボネート。
実施例3C:98%メトキシエチルアセテートおよび2%ビニレンカーボネート。
実施例3D:95%メトキシエチルアセテートおよび5%ビニレンカーボネート。
実施例3E:90%メトキシエチルアセテートおよび10%ビニレンカーボネート。
フルサイクル放電サイクリングは、上述した方法で電池実施例3Aから3Eの各々について実施する。これらの電池各々のフルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、
図3において各々曲線3Aから3Eとして示す。
【0073】
比較電池AおよびBに類似する電池を製造し、参照のために試験する。これらの比較電池各々のフルサイクル放電試験からの代表的な放電曲線は、
図3において曲線AおよびBとして示す。
【0074】
曲線3Aから3Eは、メトキシエチルアセテート電池電解質溶液にビニレンカーボネートを加える作用を示している。より高い量のビニレンカーボネートの添加が全試験サイクルにわたってはるかに高い電池容量をもたらす。この結果は、ビニレンカーボネートがエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート溶液に加えられた場合に(比較電池Bにおけると同様に)得られた結果とは対照的であり、このとき放電容量における利得は見られない。
図3に示したように、1%ビニレンカーボネートのメトキシエチルアセテート電解質溶液への添加は、0.5%ビニレンカーボネートの場合に比して極めて有意な改善をもたらす。ビニレンカーボネートの2%へのさらなる倍増は、また別の極めて実質的な改善をもたらす。ビニレンカーボネート含量における10%へのさらなる増加は、本試験における比容量のより小さな改善を提供する。実施例3Aから3Eに類似するが、ビニレンカーボネートを含有しない電池は、充電に失敗し、本質的に比容量を示さない。
【0075】
実施例4
電池実施例4は、電解質溶液が98重量%の2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートは、水および残留アルコール含量各々を50ppm未満へ低下させるために蒸留されている市販で入手できる材料Dowanol(商標)PMAである。この材料は、−87℃の凝固点、エチレンカーボネートより10℃高い引火点を有し、エチレンカーボネートの1.321g/mLの密度と比較してたった0.97g/mLのバルク密度を有する。該電解質溶液のバルク密度は、1.1g/mLに過ぎない。電池実施例4および比較電池Aについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように生成し、代表的曲線は
図4において各々「4」および「A」として示す。
【0076】
図4に示したように、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート(2%ビニレンカーボネートを備える)とエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの1:1混合物との置換は、匹敵する性能を備える電池をもたらす。
【0077】
実施例5から9および比較電池CからJ
電池実施例5は、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0078】
電池実施例6は、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%の4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0079】
比較電池Cは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のビニルアセテートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0080】
比較電池Dは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のアリルメチルカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0081】
比較電池Eは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のプロパルギルベンゼンスルホネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0082】
比較電池Fは、電解質溶液が95重量%のメトキシエチルアセテートおよび5重量%のメチルクロロホルメートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0083】
電池実施例5および6ならびに比較電池A、C、D、およびEについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得る。代表的曲線は、
図5において各々曲線5、6、A、C、D、およびEとして示す。比較電池Fは、4.2Vでは電荷を保持しないので、試験されていない。
【0084】
図5に示した結果は、SEI添加物の選択がエステルベースの電解質溶液中での性能にとっていかに重要であるかを示している。ビニレンカーボネートおよび4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンは極めて良好に機能し、電解質溶液内にそれらを含有する電池は、最先端技術を表す比較電池Aと同等に機能する。残留しているSEI添加物は、メチルクロロホルメートを除く全てがビニレンカーボネートおよび4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンと同様に重合可能なタイプである場合でさえ優れた電池性能をもたらさない。これらの結果は、メトキシエチルアセテート電解質溶液中のSEI添加物の性能が容易には予測可能ではないことを示しており、優れた電池性能をもたらす機序はエステルベースの溶媒系を用いても明確には理解されていない。
【0085】
比較電池GからJは、各場合における電解質溶液が以下のような溶媒混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一方法で形成する。
【0086】
比較電池G:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で90/10の混合物。
【0087】
比較電池H:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で95/5の混合物。
【0088】
比較電池I:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で98/2の混合物。
【0089】
比較電池J:メトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で99/1の混合物。
【0090】
比較電池GからJについてのフルサイクル放電曲線は上述したように得る。代表的曲線は、
図6において各々曲線G、H、I、およびJとして示す。比較電池Aについての代表的な放電曲線もまた示す。
【0091】
表6に示した結果は、米国特許出願公開第2008−0241699号における提言とは対照的に、エチレンカーボネート自体が、エステル溶媒系に少量で加えられた場合にSEI形成材としては不良に機能すると思われることを示している。不良なSEI形成は、比較電池GからJの低比容量によって明らかになる。
【0092】
電池実施例7から9は、各場合における電解質溶液が以下のような溶媒混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一方法で形成する。
【0093】
電池実施例7:100部のメトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で50/50の混合物を2部のビニレンカーボネートと混合する。
【0094】
電池実施例8:100部のメトキシエチルアセテートおよびエチレンカーボネートの重量で75/25の混合物を2部のビニレンカーボネートと混合する。
【0095】
電池実施例9:100部のエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの重量で50/50の混合物を10部のメトキシエチルアセテートおよび2部のビニレンカーボネートと混合する。
【0096】
電池実施例7から9についてのフルサイクル放電曲線は上述したように得た。代表的曲線は、
図7において各々曲線7、8、および9として示す。比較電池Aについての代表的な放電曲線もまた示す。
【0097】
表7に示した結果は、カーボネート溶媒、例えばエチレンカーボネートとエステル、例えばメトキシエチルアセテートの混合物が、SEI形成材、例えばビニレンカーボネートもまた存在する場合に有用な電池電解質溶液を形成できることを示している。しかし、電池実施例7から9の性能は本発明の実施例1、2、3C、4、または5の性能ほど良好ではなく、これは環状アルキレンカーボネートの包含が余り好ましくないことを示唆している。
【0098】
実施例10から12および比較電池KからO
電池実施例10は、電解質溶液が、水および残留アルコール含量各々を50ppm未満に減少させるために蒸留されている95重量%のDowanol(商標)PMA 2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートと5重量%のビニレンカーボネートとの混合物中の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0099】
電池実施例11は、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%の4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0100】
電池実施例12は、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のフルオロエチレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0101】
比較電池Kは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%の1,3−プロパンスルトンの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0102】
比較電池Lは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のプロパルギルベンゼンスルホネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0103】
比較電池Mは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のアリルメチルカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0104】
比較電池Nは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%の1,3−プロパンスルトンの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0105】
比較電池Oは、電解質溶液が95重量%の蒸留したDowanol(商標)PMAおよび5重量%のビニルアセテートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0106】
電池実施例10から12ならびに比較電池A、およびKからOについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得た。代表的曲線は、
図8において各々曲線10、11、12、A、K、L、M、NおよびOとして示す。
【0107】
図8に示した結果は、SEI添加物の選択が2−メトキシ−1−メチルエチルアセテートベースの電解質溶液中での性能にとっていかに重要であるかを示している。ビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンおよびフルオロエチレンカーボネートは極めて良好に機能し、電解質溶液内にそれらを含有する電池は、最先端技術を表す比較電池Aと同等に機能する。残留しているSEI添加物は、優れた電池性能をもたらさない。これらの結果は、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート電解質溶液中のSEI添加物の性能が容易には予測可能ではないことを示しており、優れた電池性能をもたらす機序はこの溶媒系を用いても明確には理解されない。
【0108】
比較電池P1、P2およびP3
比較電池P1は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびメチルイソブチリルアセテートの体積で75/25の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0109】
比較電池P2は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびメチルイソブチリルアセテートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0110】
比較電池P3は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびメチルイソブチリルアセテートの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0111】
比較電池AおよびP1からP3についてのフルサイクル放電曲線は上述したように得る。代表的曲線は、
図9において各々曲線A、P1、P2およびP3として示す。
【0112】
これらの結果は、メチルイソブチリルアセテートが、公知の電池電解質溶媒(エトキシメチルエチルスルホン)およびビニレンカーボネートと結合して使用した場合でさえ電池性能を強度に低下させることを示しており、候補溶媒性能の予測不可能性を強調している。
【0113】
実施例13から15および比較電池Q1およびQ2
電池実施例13は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよび2−エトキシエチルアセテートの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0114】
電池実施例14は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよび2−エトキシエチルアセテートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0115】
電池実施例15は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよび2−エトキシエチルアセテートの体積で75/25の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0116】
比較電池Q1は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびジエチルオキサレートの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0117】
比較電池Q2は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびジエチルオキサレートの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0118】
電池実施例13から15ならびに比較電池A、Q1およびQ2についてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得る。代表的曲線は、
図10において各々曲線13、14、A、Q1およびQ2として示す。
【0119】
これらの結果は、ジエチルオキサレートが、公知の電池電解質溶媒(エトキシメチルエチルスルホン)およびビニレンカーボネートと結合して使用した場合でさえ電池性能を強度に低下させることを示している。他方、2−エトキシエチルアセテートは、エトキシメチルエチルスルホンおよびビニレンカーボネートと組み合わせると良好に機能する。
【0120】
比較電池R1、R2およびR3
比較電池R1は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびγ−バレロラクトンの体積で75/25の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0121】
比較電池R2は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびγ−バレロラクトンの体積で50/50の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0122】
比較電池R3は、電解質溶液が98部のエトキシメチルエチルスルホンおよびγ−バレロラクトンの体積で25/75の混合物および2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0123】
比較電池AおよびR1からR3についてのフルサイクル放電曲線は上述したように得る。代表的曲線は、
図11において各々曲線A、R1、R2およびR3として示す。
【0124】
これらの結果は、γ−バレロラクトンが、公知の電池電解質溶媒(エトキシメチルエチルスルホン)およびビニレンカーボネートと結合して使用した場合でさえ電池性能を強度に低下させることを示している。これらの結果は、さらに候補溶媒性能の予測不可能性を強調している。
【0125】
実施例16から17および比較電池S
電池実施例16は、電解質溶液が98部のブチルアセテートおよび2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0126】
電池実施例17は、電解質溶液が98部のヘキシルアセテートおよび2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0127】
電池実施例Sは、電解質溶液が98部のオクチルアセテートおよび2部のビニレンカーボネート中のLiPF
6の1.0M溶液であることを除いて、比較電池Aと同一の一般方法で調製される。
【0128】
電池実施例16および17ならびに比較電池AおよびSについてのフルサイクル放電曲線は、上述したように得る。代表的曲線は、
図12において各々曲線16、17、AおよびSとして示す。
【0129】
これらの結果は、ビニレンカーボネートと結合したブチルアセテートが最先端技術のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートベースの電解質溶液と同等に機能することを示している。ビニレンカーボネートと結合したヘキシルアセテートは、わずかに不良に機能する。しかしオクチルアセテートは、ビニレンカーボネートが存在する場合でさえ、一層より不良に機能する。
【0130】
実施例18から22および比較サンプルT
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成る対照電池電解質溶液は、18650渦巻き形電池内に導入する。この電池は、比較電池Tと指定する。この電池は、4,000μLの電池電解質溶液を含有しており、2,000mAhの容量を有する。
【0131】
電池実施例18は、電解質溶液が98重量%のメトキシエチルアセテートおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例18は、比較電池Tより良好には機能せず、サイクリング中の一部の気体の発生を証明している。
【0132】
電池実施例19は、電解質溶液が98重量%の乾燥したDowanol(商標)PMAおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例19は電池実施例18と同様に機能する。
【0133】
電池実施例20は、電解質溶液が98重量%の容積で4:1のDowanol(商標)PMA:エチレンカーボネートブレンドおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例20は比較電池Tと同等に機能する。
【0134】
電池実施例21は、電解質溶液が90重量%の乾燥したDowanol(商標)PMAおよび10重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例21は電池実施例18と同様に機能する。この実施例は実施例19と一緒に、電解質体積:容量が約2の比率を有する大型電池では、良好なSEI形成および電解質安定性を得るためにはより多量のビニレンカーボネートが必要とされることを示している。
【0135】
電池実施例22は、電解質溶液が98重量%の乾燥したDowanol(商標)PMAおよび10重量%の4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。電池実施例22は比較電池Tと同様に機能し、さらに大型電池において優れたSEI形成および電解質安定性を得るためにはより多量のビニレンカーボネートが必要とされる可能性があることを示唆している。
【0136】
実施例23および比較電池U
エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの体積で50/50の混合物中でLiPF
6の1.0M溶液から成る対照電池電解質溶液は、高出力Li
1.1(Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3)
0.9O
2(NMC)カソード、グラファイトアノード、およびポリオレフィンセパレータを有する2025ボタン電池内に導入する。この電池電解質溶液の含水量は、約1,000ppmである。該ボタン電池は比較電池Uと指定する。
【0137】
電池実施例23は、電解質溶液が98重量%のDowanol PMAおよび2重量%のビニレンカーボネートの混合物中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、同一方法で製造される。この電解質溶液の含水量もまた、約1,000ppmである。
【0138】
サイクル能力試験は、先行実施例と同様に比較電池Uおよび電池実施例23上で実施する。比較電池Uは、たった100サイクル後にその容量を約12%損失する。電池実施例23は、100サイクル後にその容量を約3.5%しか損失しない。
【0139】
実施例24から27
電池実施例24では、2,2,2−トリフルオロエチルアセテート中のLiPF
6の1.0M溶液から成る電池電解質溶液のサイクリック・ボルタンメトリー(電流密度μA/cm
2対電位、V対Li/Li
+)は、白金作用電極、リチウム箔対極および基準電極を用いて記録される。走査速度は50mV/sであり、電圧安定性は300μA/cm
2の電流密度で計算される。電圧安定性は、4.89Vであると見いだされている。
【0140】
電池実施例25は、電解質溶液がエチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、実施例24と同一方法で実施する。電圧安定性は、4.67Vであると見いだされている。
【0141】
電池実施例26は、電解質溶液がメチル2−フルオロアセテート中のLiPF
6の1.0M溶液から成ることを除いて、実施例24と同一方法で実施する。電圧安定性は、4.79Vであると見いだされている。
【0142】
電池実施例27は、電解質溶液が2−メトキシ−1−メチルエチル2−メトキシアセテート中のLiPF6の1.0M溶液から成ることを除いて、実施例24と同一方法で実施する。電圧安定性は、4.58Vであると見いだされている。
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
[1]非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)12個までの炭素原子を有する少なくとも1つのエーテルエステル化合物、8個までの炭素原子を有する少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物、またはそれらの混合物であって、その中に前記リチウム塩が少なくとも0.1モル/Lの程度まで可溶性であり、前記エーテルエステル化合物またはモノアルキルエステル化合物が部分的もしくは完全にフッ素化されていてよい少なくとも1つのエーテルエステル化合物、少なくとも1つのモノアルキルエステル化合物、またはそれらの混合物と、
(3)成分(2)および(3)の結合重量に基づいて、0.5から20重量%のビニレンカーボネート、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フルオロエチレンカーボネートまたはそれらの2つまたはそれ以上の混合物と
を含む非水性電池電解質溶液。
[2]0から30重量%の追加の溶媒を含有する、上記[1]に記載の電池電解質溶液。
[3]0から30%を含有する、上記[1]または[2]に記載の電池電解質溶液。CTEの調整は、大部分は追加の充填剤粒子から行われる。RFC繊維はACMに近いCTEを有し、生体内溶解性繊維はACMより高いCTEを有し、小さな板状体(例、アルミナ)の大多数もまたACMより高いCTEを有する。私は、後のセクションにおいてあなたが特性を調整するための補助粒子について話す予定であると考えている。これは、一部の強化が自然にCTEを低下させる可能性があるために堅実な戦略である可能性がある。さもなければ、追加量のセラミック粒子が加えられなければならない。重量でエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアルキルカーボネートまたはそれらの混合物。
[4]5重量%以下のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジアルキルカーボネートまたはそれらの混合物を含有する、上記[3]に記載の電池電解質溶液。
[5]成分2には、12個までの炭素原子を有する少なくとも1つの2−アルコキシエチルアセテート、2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートまたは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートが含まれる、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[6]成分2は、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテートまたはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[7]成分2は、2−メトキシエチルプロピオネート、2−エトキシエチルプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−1−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−エトキシ−2−メチルエチルプロピオネート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテート、またはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[8]成分2は、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、ヘキシルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、メチルバレレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、エチルヘキサノエート、メチルヘキサノエート、またはそれらのいずれか2つまたはそれ以上の混合物である、上記[1]から[4]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[9]非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)前記リチウム塩を溶解させるために十分な量にある、12個までの炭素原子を有する2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートであって、前記アルコキシ基は1から7個、好ましくは1から3個、およびより好ましくは1もしくは2個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてよく、前記アルキル基は1から7個、好ましくは1から3個およびより好ましくは1もしくは2個の炭素原子を含有しており、部分的もしくは完全にフッ素化されていてもよい、2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートもしくは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテートと
を含む非水性電池電解質溶液。
[10]さらに(3)成分(2)および(3)の結合重量に基づいて0.5から10重量%のビニレンカーボネートまたは4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンを含有する、上記[9]に記載の電池電解質溶液。
[11]前記2−アルコキシ−1−アルキルエチルアセテートまたは2−アルコキシ−2−アルキルエチルアセテート化合物は、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−メトキシ−2−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−1−メチルエチルアセテート、2−エトキシ−2−メチルエチルアセテートまたはそれらの2つまたはそれ以上の混合物である、上記[8]または[9]に記載の電池電解質溶液。
[12]非水性電池電解質溶液であって、
(1)前記電池電解質溶液中のリチウム塩の少なくとも0.1M溶液を提供する量にある少なくとも1つのリチウム塩と、
(2)構造IおよびIIのいずれかによって表されるエーテルエステル化合物であって、
構造Iは
【化6】
(式中、R1は、水素、1から5個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR4−O−R5−基(式中、R4はアルキルであり、R5アルキレンであり、R4およびR5は一緒に5個までの炭素元素を有する)であり、R2は、1から7個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレン基であり、およびR3は、1から3個の炭素原子を有する分枝状もしくは直鎖状アルキル基であり、このときR1、R2およびR3は一緒に12個までの炭素原子を有し、R1、R2およびR3の内の少なくとも1つは少なくとも部分的にフッ素化されている)であり、
および構造IIは、
【化7】
(式中、R6は、水素、1から6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基、またはR8−O−R9−基(式中、R8はアルキルであり、R9はアルキレンであり、R8およびR9は一緒に6個までの炭素原子を有している)であり、およびR7は6個までの炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基であり、このときR6およびR7の内の少なくとも1つは少なくとも部分的にフッ素化されており、さらにR6およびR7は一緒に7個までの炭素原子を有する)であるエーテルエステル化合物と
を含む非水性電池電解質溶液。本発明は、さらにアノード、カソード、前記アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータを、前記アノードおよびカソードと接触している本電解質溶液とともに含む電池である。
[13]前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3およびLi[(CF3SO3)2N]の内の少なくとも1つである、上記[1]から[12]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[14]カソード保護剤、リチウム塩安定剤、リチウム分解改善剤、イオン溶媒和強化剤、腐食防止剤、湿潤剤および粘度低下剤から選択される少なくとも1つの他の添加物をさらに含む、上記[1]から[13]のいずれかに記載の電池電解質溶液。
[15]アノード、カソード、前記アノードおよびカソードの間に配置されたセパレータ、ならびに前記アノードおよびカソードと接触している電解質溶液を含み、前記電解質溶液は上記[1]から[14]のいずれかに記載の電池電解質溶液である電池。
[16]二次電池である、上記[15]に記載の電池。
[17]リチウムイオン、リチウム硫黄、リチウム金属またはリチウムポリマー電池である、上記[15]または[16]に記載の電池。