【課題を解決するための手段】
【0005】
選択された染料が、極めて高い堅牢性と、(色空間の座標における)所望の色彩特性とを合わせ持つことが見出された。
【0006】
本発明は式(I)の染料を提供する。
【化1】
[式中、
R
1が、水素、アルキル、アルコキシ、トリフルオロメチル、又はハロゲンであり、
Mが、水素、アルカリ金属カチオン、又は任意に置換されたアンモニウムカチオンであり、
R
2及びR
3がそれぞれ独立して、水素、アルキル、又はアルコキシであり、
R
4が、アルキル又はアルコキシであり、
R
5及びR
6がそれぞれ独立して、式−(C
mH
2m)−O−C
nH
2n+1(式中、mが、3〜6、好ましくは3〜4の整数であり、nが、0〜8、好ましくは1〜6の整数である)の残基である]
【0007】
上述の定義において、アルキル基は直鎖であっても、あるいは分岐していてもよく、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシルたとえばn−ヘキシル、ヘプチルたとえばn−ヘプチル、オクチルたとえばn−オクチル若しくはイソオクチル又は2−エチルヘキシル、ノニルたとえばn−ノニル、デシルたとえばn−デシル、ドデシルたとえばn−ドデシル、ヘキサデシルたとえばn−ヘキサデシル、及びオクタデシルたとえばn−オクタデシルを表している。アルコキシ基においても同じ論理が適用される。1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。
【0008】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特にフッ素、塩素又は臭素である。
【0009】
アルカリ金属カチオンは、具体的にはリチウム、ナトリウム又はカリウムカチオン、より好ましくはナトリウムカチオンである。
【0010】
任意選択的に置換されたアンモニウムカチオンは、具体的には、非置換のアンモニウムカチオンか又は、1〜4個の一価の有機残基、特にアルキル及び/又はアリール残基を用いて置換されたアンモニウムカチオンである。
【0011】
R
1が水素である式Iの染料が好ましい。
【0012】
同様に、Mが水素、リチウム、ナトリウム若しくはカリウムカチオン、又は非置換のアンモニウムカチオンである式Iの染料が好ましい。
【0013】
さらに、R
2、R
3及びR
4がそれぞれ独立して、C
1〜C
4アルキル、より具体的にはメチルである式Iの染料が好ましい。
【0014】
さらに、m=3でn=1である式Iの染料、より具体的にはR
5及びR
6がそれぞれ、式−(CH
2)
3−O−CH
3の残基である式Iの染料が好ましい。
【0015】
極めて特に好ましいのは、次の式Iの染料である、すなわち、
R
1が水素であり、
Mが、水素、ナトリウム若しくはカリウムカチオン、又は非置換のアンモニウムカチオンであり、
R
2、R
3及びR
4がそれぞれメチルであり、そして
R
5及びR
6がそれぞれ、式−(CH
2)
3−O−CH
3の残基である。
【0016】
本発明の染料は、たとえば独国特許出願公開第22 16 570A号明細書に記載されているものなどの、一般的な公知の方法によって得ることができる。
【0017】
本発明による方法で式Iの染料を調製するためのプロセスには、常法に従って式IIの化合物と式IIIの化合物とを反応させることが含まれる。
【化2】
[式中、R
1、M、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれ、先に定義された通りである]
【0018】
式II及びIIIの化合物は自体公知であるか、又は自体公知の方法によって得ることができる。式II及びIIIの化合物の例、さらにはそれらの製造方法は、独国特許出願公開第22 16 570A号明細書に見出される。
【0019】
式IIIの化合物は、異なったアミン、R
5−NH
2とR
6−NH
2とを使用して合成することができる。この反応では一般的には位置異性体が生成するが、それをそのまま、式IIの化合物とのカップリング反応に使用することが可能であり、それによって染料混合物が直接得られる。
【0020】
本発明の染料はさらに、溶液又は懸濁液の形態で得ることも可能で、塩析によって単離させることも可能である。それらは噴霧乾燥させることもできるが、溶液又は懸濁液を蒸発させることもまた可能である。
【0021】
本発明の染料は一般的には、固形物又は液体配合物の形態で存在する。固形物の形態においては、それらには一般的に、水溶性染料の場合には典型的である電解質塩たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウムを含む。
【0022】
本発明はさらに、本発明による式Iの複数の染料の間の混合物、及びさらには、式Iの1種又は複数種の染料と、1種又は複数種のそれらと混和性のある染料との混合物もまた提供する。それぞれの混合比は、広い許容範囲内で変化させることができる。
【0023】
本発明による式Iの染料は、ポリマーの着色に直接使用することもできるし、あるいはそれらを仕上げ加工にかける、すなわち、市販のための染料調製物に転化させることもできる。
【0024】
仕上げ加工は、式Iの単一の染料から、又は2種以上の式Iの染料の混合物から、又は1種又は複数種の式Iの染料と他の染料タイプの染料との混合物から、任意選択的に助剤たとえば表面変性剤及び分散剤の助けを借りて、液体状又は固体状のキャリヤー物質の中に分散、懸濁又は溶解させ、さらに任意選択的に、所望の色強度(color strength)及び所望の色相に標準化させ、そして任意選択的に、そのようにして得られた調製物を乾燥させる進行で実施することができる。
【0025】
添加剤の例は、市販の染料において慣用される助剤、たとえば水溶液中でpHを3〜7の間に設定することを可能とする緩衝剤である。その例は、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、三クエン酸ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムである。
【0026】
慣用される助剤のさらなる例は、通常少量で使用される乾燥剤、又は殺生剤たとえば抗菌活性剤である。それらは、液体配合物の中で使用するのが好ましい。染料配合物にはさらに、たとえば捺染糊として使用される配合物の場合においては、増粘剤が含まれていてもよい。
【0027】
式Iの染料を含む調製物にはさらに、粘度/流動性を調節するための助剤が含まれ得る。
【0028】
そのタイプの適切な助剤は、たとえば米国特許第6,605,126号明細書に記載されている。好適な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ラクトン、及び炭酸エステルが挙げられる。
【0029】
したがって、本発明はさらに、1種又は複数種の式Iの染料と、さらに1種又は複数種の慣用される助剤とを含む染料調製物も提供する。
【0030】
それらの染料調製物には、いずれも染料調製物を基準にして、5〜100重量%の量の1種又は複数種の式Iの染料と、0〜95重量%の量の1種又は複数種の慣用される助剤とを含んでいるのが好ましい。
【0031】
本発明はさらに、極性基を含む材料を染色又は捺染するための式Iの染料の使用も提供する。
【0032】
極性基の例としては以下のものが挙げられる、すなわち、カルボキサミド、ヒドロキシル、アミノ、アンモニウム、カルボキシル、スルホン酸、エステル、ウレタン、又は尿素基。
【0033】
極性基を有する材料の例は、そのような基を有するポリマー、たとえばポリアミド、ポリウレタン又はセルロース又は紙又は皮革又は絹又は羊毛である。
【0034】
本発明による式Iの染料の有用な性能特性は、カルボキサミド含有及び/又はヒドロキシル含有又はアミノ含有材料を染色又は捺染する際に特に明らかとなる。それらの材料は、たとえばシート様の構造、たとえば、紙、皮革又はポリマーフィルムたとえばポリアミドフィルムなどとすることができる。
【0035】
しかしながら、本発明による式Iの染料は、大量着色のため、たとえば極性基を有するポリマー、たとえばポリアミド材料、又はたとえばポリウレタン材料、特に上述の材料の繊維の形態にあるものの大量着色のために使用することもできる。
【0036】
本発明に従った使用は、式Iの染料を、着色するべきポリマーと混合することによって実施することができる。
【0037】
本発明の染料は、粉末状又は顆粒状染料の形態で、その粉末状又は顆粒状物質を基準にして、5〜80重量%の含量を有しているのが好ましい。顆粒は具体的には、その粒径が50〜500μmである。染料が液体配合物中に含まれている場合、それらの液体、好ましくは水溶液の全染料含量は、最高で約50重量%まで、たとえば5〜50重量%の間であるが、この場合、その水溶液中の電解質塩の含量は、水溶液を基準にして、10重量%未満であるのが好ましい。
【0038】
本発明の染料は特に、ポリアミド繊維又はポリアミドと綿若しくはポリアミドとポリエステル繊維とのブレンド布地を染色又は捺染するために有用である。
【0039】
本発明の染料を用いて織物又は紙を捺染することもまた可能であるが、その場合、各種の捺染プロセス、具体的にはインクジェットプロセスを使用することができる。
【0040】
したがって、本発明は、上述の材料を染色又は捺染するため本発明の染料の使用もまた提供するが、それは、本発明の染料を着色剤として使用し、常法に従ってそのような材料を染色又は捺染するためのプロセスである。
【0041】
有利なことには、本発明による染料の合成したままの溶液を、任意選択的に少なくとも1種の緩衝剤を添加してから、そして任意選択的に濃縮又は希釈してから、染色のための液状調製物として直接使用することができる。
【0042】
上述の材料は、繊維材料の形態、特に織物繊維又は編織布(textile fabrics)たとえば織布(wovens)、又は糸の形態か、あるいはかせ若しくは巻いたパッケージの形態で使用するのが好ましい。
【0043】
好適に使用されるカルボキサミド含有材料としては、たとえば、合成及び天然のポリアミド及びポリウレタン、特に、繊維の形状のもの、たとえば羊毛その他の動物の毛、絹、皮革、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−11、及びナイロン−4などがあげられる。
【0044】
本発明の染料は、上記の基材、特に上述の繊維材料の上に、水溶性染料特に酸性染料のための公知の染着技術を用いることによって、染着及び固着させることができる。
【0045】
非フェルト仕上げ又は低フェルト仕上げをした羊毛は極めて良好な堅牢性に染色することができる(そのような仕上げについては、たとえば、H.Rath、『Lehrbuch der Textilchemie』(Springer−Verlag)第3版、第295〜299頁、特にハーコセットプロセスによる仕上げ(第298頁);J.Soc.Dyers and Colorists,1972年,第93〜99頁及び1975年,第33〜44頁を参照されたい)。本明細書においては、羊毛に対する染色プロセスは、常法に従って、酸性媒体中で実施する。たとえば染浴に、酢酸及び/又は酢酸アンモニウム、又は酢酸と硫酸アンモニウム若しくは酢酸ナトリウムを添加して、所望のpHとすることができる。受容可能な均染性を有する染色とするためには、通常使用される均染剤を添加することが推奨されるが、そのようなものとしては、たとえば、シアヌル酸塩化物と3倍モル量のアミノベンゼンスルホン酸及び/又はアミノナフタレンスルホン酸との反応生成物をベースにした均染剤、又はたとえばステアリルアミンとエチレンオキシドの反応生成物をベースにした均染剤などが挙げられる。たとえば、本発明の染料混合物は、pH調節下で約3.5〜5.5のpHを有する酸性の染浴からの吸尽プロセスに最初にかけるのが好ましい。
【0046】
本明細書に記載した方法は、他の天然ポリアミド又は合成ポリアミド及びポリウレタンからなる繊維材料を染色する場合にも適用される。それらの材料は、文献記載で当業者公知の、慣用される染色及び捺染プロセスを用いて染色することができる(たとえば、H.−K.Rouette『Handbuch der Textilveredlung』(Deutscher Fachverlag GmbH、Frankfurt/Main)参照)。
【0047】
それらの染液及び捺染糊には、染料及び水に加えて、さらなる添加剤が含まれていてもよい。添加物の例を挙げれば、湿潤剤、消泡剤、均染剤、並びに織物材料の性質に影響する添加剤、たとえば柔軟化剤、難燃剤、防汚剤、防水剤、防油剤、又は水軟化剤などがある。特に捺染糊にはさらに、天然又は合成の増粘剤、たとえばアルギネート及びセルロースエーテルが含まれていてもよい。染浴及び捺染糊における染料の量は、所望の色濃度に合わせた広い範囲内で変化させることができる。一般的には、染色する材料又は捺染糊を基準にして、0.01〜15重量%の量、特に0.1〜10重量%の量で染料を存在する。
【0048】
本発明の染料は、良好な固着性、極めて良好なビルドアップ性、さらには光及び汗−光に対する高い堅牢性並びに高い艶を特徴としている。
【0049】
本発明の染料を用いてポリアミド上に得られる染色物及び捺染物は特に、高い色強度、及び酸性領域及びアルカリ性領域の両方における高い繊維−染料結合安定性、さらには良好な耐光堅牢性及び極めて良好な湿潤堅牢性、たとえば洗濯、水、海水、過染色及び汗に対する堅牢性、並びにさらにはプリーツ加工、ホットプレス及びクロッキングに対する良好な堅牢性を有している。
【0050】
本発明はさらに、捺染インキ中、又は織物捺染のため、特にデジタル織物捺染のため、最も好ましくはインクジェットプロセスによる織物捺染のための糊中における上述の染料の使用もまた提供する。
【0051】
本発明において使用される捺染インキ中に存在する上述の染料の量は、インキの全重量を基準にして、たとえば0.1〜50重量%の範囲、好ましくは1〜30重量%の範囲、より好ましくは1〜15重量%の範囲である。それらのインキにおいても同様に、上述の染料と織物捺染に使用されるその他の酸性染料との組合せを含んでいてもよい。連続流動プロセスにおいてそれらのインキを使用するために、電解質を添加して導電率を0.5〜25mS/mの範囲に設定することもできる。
【0052】
たとえば硝酸リチウム及び/又は硝酸カリウムが電解質として有用である。
【0053】
本発明において使用される染料インキには、全量で1〜50重量%、好ましくは5〜3
0重量%までの有機溶媒を含んでいてもよい。
【0054】
好適な有機溶媒の例としては、以下のものが挙げられる、すなわち、アルコール、ポリアルキレングリコール、多価アルコールの低級アルキルエーテル、アミン、尿素若しくは尿素誘導体、アミド、ケトン若しくはケトアルコール、環状エーテル、又はさらにはスルホラン、ジメチルスルホラン、メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ジメチルスルホン、ブタジエンスルホン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、N−シクロヘキシルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、1,3−ビスメトキシメチルイミダゾリジン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−プロポキシエトキシ)エタノール、ピリジン、ピペリジン、ブチロラクトン、トリメチルプロパン、1,2−ジメトキシプロパン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレンジアミン四酢酸塩、エチルペンチルエーテル、1,2−ジメトキシプロパン、トリメチルプロパン。
【0055】
本発明において使用される捺染インキには、慣用的に使用される物質をさらに含んでいてもよく、たとえば粘度調整剤を用いて、温度範囲20〜50℃における粘度を1.5〜40.0mPasの範囲とする。好ましいインキの粘度は1.5〜20mPas、特に好ましいインキの粘度は1.5〜15mPasである。
【0056】
適切な粘度調整剤は、レオロジー添加物であって、たとえば以下のものである、すなわち、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン及びさらにはそれらのコポリマー、ポリエーテルポリオール、連合増粘剤、ポリ尿素、ポリウレタン、アルギン酸ナトリウム、変性ガラクトマンナン、ポリエーテル尿素、ノニオン性セルロースエーテルなどである。
【0057】
さらなる添加物としては、本発明のインキには、界面張力を20〜65mN/mの範囲に設定するための界面活性剤を含んでいてもよいが、それらは任意に、使用されるプロセス(加熱式、ピエゾ式)に応じて合わせる。
【0058】
適切な界面活性剤の例は、各種の界面活性剤、好ましくはノニオン性界面活性剤のブチルジグリコール、1,2−ヘキサンジオールである。
【0059】
これらのインキには、通常使用される添加物たとえば真菌や細菌の成長を抑制するための物質を、インキの全重量を基準にして0.01〜1重量%の量でさらに含んでいてもよい。
【0060】
これらのインキは、常法に従って、それらの成分を水に混合させることによって得ることができる。
【0061】
本発明において使用される染料インキは、広く各種の予備仕上げ材料、たとえば絹、皮革、羊毛、各種のセルロース系繊維材料及びポリウレタン、特にポリアミド繊維を捺染するためのインクジェット捺染プロセスにおいて特に有用である。本発明の捺染インキはまた、混紡布地、たとえば綿、絹、羊毛とポリエステル繊維又はポリアミド繊維との混合物の中に存在している、予備処理したヒドロキシル含有及び/又はアミノ含有繊維を捺染するのにも有用である。
【0062】
本発明において使用される染料を用いてポリアミドの上に得られる捺染物は特に、高い色強度、及び酸性領域及びアルカリ性領域の両方における高い繊維−染料結合安定性、さらには良好な耐光堅牢性及び極めて良好な湿潤堅牢性、たとえば洗濯、水、海水、過染色及び汗に対する堅牢性、並びにさらにはプリーツ加工、ホットプレス及びクロッキングに対する良好な堅牢性を有している。
【0063】
以下の実施例を用いて本発明を説明するが、本発明がそれらの実施例に限定される訳ではない。特に断らない限り、部は重量部であり、パーセントは重量パーセントである。重量部と容積部の関係は、キログラムとリットルの関係と同じである。
【0064】
実施例中で記載する化合物は、遊離の酸の形態で示している。しかしながら、一般的にはそれは、そのアルカリ金属塩、たとえばリチウム、ナトリウム又はカリウム塩の形態で調製され、単離され、その塩の形態で染色のために使用されるであろう。