(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5886874
(24)【登録日】2016年2月19日
(45)【発行日】2016年3月16日
(54)【発明の名称】静電集塵器の高電圧部品近くの構造物のための電気的遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/45 20060101AFI20160303BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20160303BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20160303BHJP
B03C 3/47 20060101ALI20160303BHJP
【FI】
B03C3/45 A
B03C3/40 A
B03C3/41 A
B03C3/47
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-546774(P2013-546774)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-504547(P2014-504547A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】IB2011003043
(87)【国際公開番号】WO2012090041
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】10197252.9
(32)【優先日】2010年12月29日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(72)【発明者】
【氏名】ペア ベングト ダニエル ヨハンソン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス オロフ バック
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04233037(US,A)
【文献】
特開2008−023490(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第3324888(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/45
B03C 3/40
B03C 3/41
B03C 3/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電集塵器において、
該静電集塵器内の垂直面内で互いに平行に配置された少なくとも2つの集塵極板を含み、前記集塵極板の間に空間を形成する集塵極板アセンブリと、
前記空間内に、前記集塵極板アセンブリの支持構造部を横切る状態で挿入される放電電極アセンブリと、
前記放電電極アセンブリに対向する前記支持構造部の領域に配置されている、スパークの発生を防止するための電気的遮蔽装置と
を備えており、
前記電気的遮蔽装置は、丸型形状または弓型形状を有しており、前記支持構造部のエッジを覆うように、前記支持構造部の領域に取り付けられている、
静電集塵器。
【請求項2】
前記電気的遮蔽装置は金属構造部を有している、請求項1記載の静電集塵器。
【請求項3】
前記電気的遮蔽装置は、前記電極アセンブリに対向する外面を有するように配置された少なくとも1つのハーフパイプで形成され、細長い形状を有する、請求項1記載の静電集塵器。
【請求項4】
少なくとも1つの電気的遮蔽装置が、前記支持構造部に取り付けられたブラケットと一体的に接続されている、請求項1記載の静電集塵器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電集塵器に関するものであり、当該静電集塵器は、静電集塵器内の垂直板内に実質的に互いに平行に配置された少なくとも2つの電極板を含み、かつ、集塵極板間に空間を形成する集塵極板アセンブリと、当該空間内に挿入された放電電極アセンブリとを含み、この電極アセンブリは、集塵極板アセンブリの、少なくとも支持構造部を横切る。
【背景技術】
【0002】
静電集塵器は従来技術において周知のものであり、例として、特許文献1は、剛性フレームタイプの静電集塵器を開示している。静電集塵器の動作中、混入している微粒子物質を含むガスは、静電界と、2つの接地された集塵極の間に配置された放電電極の周りに形成されたコロナ放電とを横切る。ガス中の粒子はコロナ放電を通過する時に荷電されるようになり、静電界の影響下で、放電電極の側面に位置する接地された集塵極に向かって移動して、その集塵極に堆積する。
【0003】
典型的に、各集塵極は、一列に並んで配置され、垂直面において集塵器の筐体の頂部からつり下げられた1つ以上の細長い板で形成されている。複数のこのような集塵極は、集塵器を通るガスの流れの方向に平行に、間隔の空いた複数の垂直板内に、集塵器ケーシングの幅を横切る方向にわたって配置されている。
【0004】
一般的に剛性フレーム静電集塵器と称するものの中には、複数の放電電極フレームで構成されたフレームワークが、集塵器の幅全体に対する、隣接する複数の集塵極間に垂直に配置された放電電極の列を提供するために、集塵器筐体の頂部において絶縁体からつり下げられている。コロナ放電と関連する静電界とを生成するために、電圧が放電電極に印加される。
【0005】
放電フレームパイプが、静電集塵器の頂部において、接地された集塵極の支持ビームを横切る静電集塵器の設計は以前から知られている。支持ビームは、通常、IビームまたはUビームで形成される。しかしながら、構造物の部品間の火花発生に起因して、静電集塵器に入力される電力が低くなってしまっていた。従来技術において、IビームまたはUビームは、局所的なカットアウトを提供されることにより、放電パイプとビームとの間の距離を増加させていた。このようなカットアウトは、近年の高電圧試験においては不適当であることが見いだされており、カットアウトがあるにもかかわらずスパークが発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,725,289号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、静電集塵器の高電圧部品近くの構造物のための電気的遮蔽装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、導入部で説明した静電集塵器によって達成され、この静電集塵器は、支持構造部が、少なくとも、電極アセンブリに対向する支持構造部の領域において電気的遮蔽装置を提供されていることを特徴とする。電気的遮蔽装置によって、この領域において、スパークが多少除去される。
【0009】
好ましくは、電気的遮蔽装置は、本質的に丸型形状または弓型形状を有する。これにより、スパークが発生する可能性がある点を形成する傾向がある鋭いエッジが除去される。丸型形状または弓型形状は、例えば、15mm〜100mmの半径を有する。
【0010】
一実施形態において、電気的遮蔽装置は、支持構造部と一体化される。これにより、上記課題が支持構造部の寸法調整で解決される。
【0011】
別の実施形態において、電気的遮蔽装置は、支持構造部に取り付けられる。このことは、既存の支持構造部においても上記課題を同様に解決する。
【0012】
好ましい実施形態において、電気的遮蔽装置は、細長い形状を有し、少なくとも、電極アセンブリに対向する外面を有するように配置されたハーフパイプで形成されている。これにより、単純かつ経済的な遮蔽装置が、既存の支持構造部または新規の支持構造部の両方に配置可能である。
【0013】
別の実施形態において、少なくとも1つの電気的遮蔽装置は、支持構造部に取り付けられているブラケットと一体的に接続されている。これにより、支持構造部への取り付けが容易になる。
【0014】
本発明は、本発明の好ましい実施形態を例として図示する添付の概略図を参照して、以下に、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、好ましい実施形態に従う静電集塵器の上部を部分的に図示する概略的斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の静電集塵器の側部から見た概略図である。
【
図3】
図3は、
図1の静電集塵器の上部から見た概略図である。
【
図4】
図4は、好ましい実施形態に従う静電集塵器の下部を部分的に描く概略的斜視図である。
【
図5】
図5は、好ましい実施形態に従う静電集塵器の1つの集塵極板アセンブリの下部を部分的に描く、後方からの概略的斜視図である。
【
図6】
図6は、代替的実施形態に従う静電集塵器の1つの集塵極板アセンブリの上部を部分的に描く概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
静電集塵器は、吸気口(図示せず)と、排気口(図示せず)と、吸気口と排気口との間に配置された沈降チャンバとを有する筐体(図示せず)を一般的に有している。清浄されるべき微粒子含有の排煙ガスは、ガス吸気口から沈降チャンバを通ってガス排気口へとつながる集塵器の筐体(図示せず)を、清浄で相対的に微粒子のない気体として通過する。
【0017】
ここで図面、特に
図1および
図4を参照すると、静電集塵器1の基本的構成が描かれており、静電集塵器1は、典型的には剛性フレームタイプ静電集塵器と呼ばれる。上部支持ビーム7と下部支持ビーム12とを含む接地された支持構造部8は、一緒に集塵極板アセンブリ2を形成している複数の実質的に長方形の集塵極板3を保持し、これらの複数の集塵極板3は、静電集塵器1内の垂直面において実質的に平行に間隔を空けた関係で配置されている。この配置により、集塵極板3の各対の間に、空間5が形成されている。複数の集塵極板3の間の空間5には、複数の放電電極フレーム6が挿入されており、複数の放電電極フレーム6が一緒になって放電電極アセンブリ4を形成する。集塵極板3および放電電極フレーム6は、共に、静電集塵器1の吸気口から排気口まで、静電集塵器1を通るガスの流れの方向に平行となるように位置合わせされ、かつ、その方向に延びている。
【0018】
各集塵極板3は、
図1および
図6に示されているように、静電集塵器1の上部に配置されたI形状上部支持ビーム7またはU形状上部支持ビーム7からつり下げられ、かつ、これらに支持されている。
図4に示されているように、つり下げられた複数の集塵極板3の各々の下端14は、静電集塵器1の底部に配置されたL形状下部支持ビーム12に固定することにより、横方向の移動が制限される。
【0019】
集塵極板3は、単なる例示の目的で、かつ、制限することなく、特定の断面であるように図中に示されている。本実施形態が、集塵極板3の表面において最適な沈降効率を与えるように、個別の基準に基づいて選択される任意の所与の状況下で利用される特定の設計を伴う多数の断面の設計のうちの任意の設計の集塵極板を利用することも企図されていることが理解されるべきである。
【0020】
図4に最良に示されているように、個別の放電電極フレーム6は、それぞれ、フレームを形成するように一緒に組み合わされた垂直支持部材9と一対の水平支持バー10とで形成されている。多数の個別の放電電極ワイヤ(図示せず)が一緒になって、そして、支持バーと共に放電電極フレームアセンブリを形成し、支持バーから、個別の電極ワイヤが支持され、つり下げられている。
【0021】
放電電極フレーム6の各区画内には、複数の垂直放電電極ワイヤ(図示せず)が据え付けられ、複数の垂直放電電極ワイヤは、静電集塵器1の長さ方向に沿った静電界およびコロナ放電を提供するように、ガス流の方向に沿って間隔を空けて配置されている。任意の数の放電電極ワイヤ設計が利用されるが、典型的な電極は、その長さ方向に沿って均等に分配されるコロナ放電を生成するために、平坦で薄く長方形の断面のストリップ状要素またはワイヤ状要素を備えている。放電電極ワイヤは、らせん状に巻かれていても良い。
【0022】
動作中、微粒子含有ガス(particular laden gas)は、集塵器の吸気口を通って、集塵器のケーシング(図示せず)に流入し、沈降チャンバを通って排気口まで流れる。静電集塵器1を横断する際、微粒子含有ガスは、複数の集塵極板3と、複数の集塵極板3間に配置された放電電極ワイヤとの間を流れる。放電電極において形成されるコロナの挙動および放電電極と集塵極板3との間に広がる静電界に起因して、ガス内の微粒子はイオン化され、集塵極板3まで移動して、集塵極板3に堆積する。
【0023】
静電集塵器1は、放電電極アセンブリ4の垂直支持部材9が静電集塵器1の頂部において、接地された集塵極支持ビーム7を横切り、静電集塵器1の底部に配置されたL形状下部支持ビーム12を横切るように設計されている。支持ビーム7は、通常、IビームまたはUビームで形成されている。従来技術では、IビームまたはUビームは、カットアウトを提供されることにより、放電電極アセンブリとビームとの間の距離を増大させる。最近では、好ましくは金属構造部を有する遮蔽装置11が、このカットアウトと置き換えられることにより、スパークが発生する前に、より高電圧に達することを可能にしている。電気的遮蔽装置11は、表面の曲率を増大させるため、および、いかなるスパークにも耐えられるように、本質的に丸型形状または弓型形状を有する。電気的遮蔽装置11は、Iビーム、UビームまたはLビームの鋭いエッジを覆うために、支持構造部と一体化されるか、または、支持構造部に取り付けられている。好ましくは、電気的遮蔽装置11は、細長い形状を有し、少なくとも、放電電極アセンブリ4の垂直支持部材9に対向する平滑な外面を有して配置されたハーフパイプで形成されている。この形状は、Iビーム、UビームまたはLビームに適合された適切なスロットを切断することによって標準のパイプから作製される。パイプの半径は、本質的には、Iビーム、UビームまたはLビームのフランジの厚さよりも大きい。例として、フランジが8mmの厚さを有するとき、遮蔽装置11の半径は好ましくは15mm〜100mmの間にあり、好ましくは、約20mmである。代替の実施形態において、少なくとも1つの電気的遮蔽装置11は、支持構造部8に取り付けられたブラケット15または17と、一体的に接続されている。
【0024】
例として、500mmの集塵極と事前に既知のカットアウトとの間に空間を有する高電圧試験リグにおいて、カットアウトにスパークが発生する前に、50mAで123kVの電圧に到達した。図面に開示されているような、細長い形状を有し、カットアウトを覆うために少なくとも1つのハーフパイプの形状で設計されている遮蔽装置11を用いて、スパークが発生する前に85mAで150kVの電圧に到達した。しかしながら、静電集塵器1の放電電極アセンブリ4と集塵極板アセンブリ2との間でスパークが発生した。
【0025】
図1〜
図3を参照すると、上部支持ビーム7への遮蔽装置11の断続的溶接は、図面に示されている設計において収集システム懸垂ビーム7内に高い型抜き加速力が存在しないので、パイプまたはハーフパイプをIビームに固定するためには十分である。当然、遮蔽装置11は、溶接、ハンダ付け、または他の適切な方法(例えば、接着、プレス加工、クランプ留めなど)での固定によって、支持ビーム7と完全に一体化される。Iビームのカットアウトを有する設計と比較した場合の本設計の更なる利点は、Iビームがカットアウトにより弱くならないので、より小型のIビームが使用可能であることである。
【0026】
静電集塵器1の下部ショックバーまたは下部支持ビーム12にカットアウトを有する同様の設計が使用されてきた。
図4および
図5に見られる本設計において、静電集塵器1の型抜きの間に、ショックバーまたは下部支持ビーム12の大きな加速により、溶接による遮蔽装置11の固定は適切ではない。代わりに、遮蔽デバイス11は、ねじ継ぎ手13、好ましくは外部集塵極板3のためのものと同じねじ継ぎ手13が、下部支持ビーム12に取り付ける際に使用可能である。この実施形態では、ブラケット15を有する遮蔽装置11が、遮蔽装置11のハーフパイプ形状に一体的に接続されている。
【0027】
図6を参照すると、型抜きが静電集塵器の頂部で行われる場合、この遮蔽装置11もまた、頂部で集塵極板3を保持する同一のねじ継ぎ手16を用いて取り付けられる。図面に示された設計において、遮蔽装置11は、細長い形状を有する2つのハーフパイプを一体的に接続するブラケット17を提供される。
【0028】
まとめると、静電集塵器1は、集塵極板アセンブリ2と、放電電極アセンブリ4とを有し、集塵極板アセンブリ2は、静電集塵器1内の垂直面に互いに実質的に平行に配置された少なくとも2つの電極板3を含み、複数の集塵極板3の間に空間5を形成し、放電電極アセンブリ4は、この空間5に挿入され、電極アセンブリ4は、集塵極板アセンブリ2の、少なくとも支持構造部8を横切る。支持構造部8は、少なくとも、電極アセンブリ4に対向する支持構造部8の領域において電気的遮蔽装置11を提供されている。
【0029】
本発明が、多くの好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な変化がなされ、均等物が、本発明の要素と置き換え可能であることを当業者は理解するだろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または物質を本発明の教示に適応するために、多くの変更がなされる。それゆえ、本発明は、本発明を実行するように企図された最良のモードとして開示された特定の実施形態に限定されると意図されず、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内の全ての実施形態を含むものであると意図される。さらに、用語「第1」「第2」などの使用は、いかなる順序または重要性を示すものではなく、むしろ、用語「第1」「第2」は、1つの要素を別の要素と区別するために使用される。